説明

半硬化状シリコーン樹脂シート

【課題】光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を呈し、かつ、その状態を維持できるシリコーン樹脂シート、該シートの製造方法、該シートを含む光半導体素子封止材料、及び該シート又は該封止材料により封止されている光半導体装置を提供すること。
【解決手段】両末端シラノール型シリコーンオイル、アルケニル基含有ケイ素化合物、オルガノハイドロジェンシロキサン、縮合触媒、及びヒドロシリル化触媒を含有してなるシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより得られる半硬化状のシリコーン樹脂シートであって、前記縮合触媒がアルキルアンモニウムヒドロキシドを含み、シート硬度が0.5〜10であることを特徴とする、半硬化状のシリコーン樹脂シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半硬化状のシリコーン樹脂シートに関する。さらに詳しくは、光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を有し、かつ、半硬化状態の保存安定性に優れるシリコーン樹脂シート、該シートの製造方法、該シートを含む光半導体素子封止材料、及び該シート又は該封止材料により封止されている光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般照明装置への応用が検討されている高出力白色LED装置には、耐光性と耐熱性に優れた封止材料が求められており、近年、いわゆる「付加硬化型シリコーン」が多用されている。
【0003】
この付加硬化型シリコーンは、主鎖にビニル基を有するシリコーン誘導体と、主鎖にSiH基を有するシリコーン誘導体を主成分とする混合物を、白金触媒の存在下で熱硬化させることにより得られるものであり、例えば、特許文献1では、組成物にオルガノポリシロキサンを導入して、組成物中のケイ素に結合する水素原子とアルケニル基のモル比を特定の範囲に設定することによって、透明性及び絶縁特性に優れる硬化物が得られる樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2では、1分子中にケイ素原子に結合した少なくとも2個のアルケニル基を有するシリコーンレジンと、1分子中にケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を有するオルガノハイドロジェンシラン及び/又はオルガノハイドロジェンシロキサンを含有する樹脂組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3では、SiH基を有するシリコーン樹脂成分として、直鎖状で、ケイ素原子結合水素原子(Si−H基)を分子鎖途中に有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、直鎖状で、Si−H基を分子鎖両末端に有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンとを特定量で併用することにより、優れた強度を備えた硬化物を与える組成物が開示されている。
【0006】
一方、封止材によるLED素子の封止方法としては、液状の封止材をLED素子が配置されたカップ内に注入し、加熱硬化して封止するポッティング方法や、予めシート状に調製した封止材をLED素子上に静置し、加圧下で加熱成型を行うシート封止方法が挙げられる。
【0007】
このシート成型に適した樹脂シートとしては、成型前はLED素子を物理的に損傷させない程度の柔軟性(低硬度)を有し、成型時には速やかにLED素子を包埋して封止することができる半硬化状を呈し、かつ、封止後には完全硬化してその形状を保持することができる硬度を有するものが好ましい。
【0008】
しかしながら、付加硬化型シリコーン樹脂は、通常、活性の高い白金触媒を用いるために、一度、硬化反応が始まると途中で反応を停止させることが極めて難しく、半硬化状態(Bステージ)を形成することは困難である。そこで、白金触媒の触媒活性を低下させるために、反応抑制剤として、リン、窒素、硫黄化合物やアセチレン類を添加することが有効であることが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−198930号公報
【特許文献2】特開2004−186168号公報
【特許文献3】特開2008−150437号公報
【特許文献4】特開平6−118254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術を参照して、付加硬化型シリコーンを用いて半硬化状の樹脂シートを調製することは可能であるが、反応抑制剤を用いたとしても、付加硬化型シリコーンの硬化反応は徐々に進行するので、半硬化状態を維持することができない。
【0011】
また、反応抑制剤として知られている化合物は、樹脂の耐久性に影響を及ぼすことから、さらなる反応制御の方法が要求される。
【0012】
本発明の課題は、光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を呈し、かつ、その状態を維持できるシリコーン樹脂シート、該シートの製造方法、該シートを含む光半導体素子封止材料、及び該シート又は該封止材料により封止されている光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、縮合反応に関するシリコーン成分と付加反応に関するシリコーン成分の両成分を含有する組成物を縮合反応させる際に、縮合触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを用いることにより、得られる樹脂シートが半硬化状態を呈し、かつ、その状態を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、
〔1〕 両末端シラノール型シリコーンオイル、アルケニル基含有ケイ素化合物、オルガノハイドロジェンシロキサン、縮合触媒、及びヒドロシリル化触媒を含有してなるシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより得られる半硬化状のシリコーン樹脂シートであって、前記縮合触媒がアルキルアンモニウムヒドロキシドを含み、シート硬度が0.5〜10であることを特徴とする、半硬化状のシリコーン樹脂シート、
〔2〕 両末端シラノール型シリコーンオイル、アルケニル基含有ケイ素化合物、オルガノハイドロジェンシロキサン、アルキルアンモニウムヒドロキシド、及びヒドロシリル化触媒を含有してなるシリコーン樹脂用組成物を20〜200℃で加熱する工程を含む、半硬化状のシリコーン樹脂シートの製造方法、
〔3〕 前記〔1〕記載のシリコーン樹脂シートを含んでなる光半導体素子封止材料、ならびに
〔4〕 前記〔1〕記載のシリコーン樹脂シート、又は前記〔3〕記載の光半導体素子封止材料を用いて光半導体素子を封止してなる、光半導体装置
に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシリコーン樹脂シートは、半硬化状態であるために光半導体素子の封止加工を簡便に行うことができ、かつ、半硬化状態を維持できるという優れた効果を奏する。その結果、LED封止に適用可能な期間が長くなるため、製品寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のシリコーン樹脂シートは、両末端シラノール型シリコーンオイル、アルケニル基含有ケイ素化合物、オルガノハイドロジェンシロキサン、縮合触媒、及びヒドロシリル化触媒を含有するシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより得られる半硬化状のシートであって、前記縮合触媒がアルキルアンモニウムヒドロキシドを含むことに大きな特徴を有する。
【0017】
一般的なエポキシ樹脂等の半硬化状態(以下、Bステージともいう)は、通常、熱硬化条件を制御することによって達成される。具体的には、例えば、80℃で加熱してモノマーの架橋反応を一部進行させることにより、Bステージのペレットが調製される。そして、得られたペレットは、所望の成型加工を施した後に、150℃で加熱して完全に硬化させる。一方、付加硬化型シリコーン樹脂は、主鎖にビニル基を有するシリコーン誘導体と、主鎖にSiH基を有するシリコーン誘導体とをヒドロシリル化反応させて得られるが、通常、活性の高い白金触媒を用いるために、一度、硬化反応が始まると途中で反応を停止させることが極めて難しく、Bステージを形成することは困難である。反応抑制剤によって反応を制御する方法も知られているが、本発明においては、Aステージ(未硬化状態)からBステージ(半硬化状態)への硬化(一段階目の硬化)と、Bステージ(半硬化状態)からCステージ(全硬化状態)への硬化(二段階目の硬化)を別々の反応、即ち、一段階目の硬化を縮合反応、二段階目の硬化を付加反応によって行うことにより、両反応の反応温度条件が異なることを利用して反応を制御し、それぞれの硬化を段階的に進めて、一段階目の硬化が終了した半硬化状態の樹脂シートを得ることができる。さらに、二段階目の硬化反応が自然要因ではなく外的要因によって進行するものであるので、一段階目の硬化が終了した時点の状態、即ち、半硬化状態を維持することが可能となる。なお、本明細書において、半硬化物、即ち、半硬化状態(Bステージ)の物とは、溶剤に可溶なAステージと、完全硬化したCステージの間の状態であって、硬化、ゲル化が若干進行し、溶剤に膨潤するが完全に溶解せず、加熱によって軟化するが溶融しない状態である物のことを意味し、全硬化物(完全硬化物)とは、完全に硬化、ゲル化が進行した状態である物のことを意味する。
【0018】
また、本発明においては、前記縮合反応の触媒としてアルキルアンモニウムヒドロキシドを用いるが、アルキルアンモニウムヒドロキシドは、縮合反応の触媒作用だけでなく、ヒドロシリル化触媒の安定化効果をも有することから、その結果、ヒドロシリル化反応が生じるまでは半硬化状態を安定して維持することが可能となる。
【0019】
本発明のシリコーン樹脂シートは、両末端シラノール型シリコーンオイル、アルケニル基含有ケイ素化合物、オルガノハイドロジェンシロキサン、縮合触媒、及びヒドロシリル化触媒を含有するシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより得られる。
【0020】
(1)両末端シラノール型シリコーンオイル
本発明における両末端シラノール型シリコーンオイルとしては、ポリオルガノシロキサンの分子鎖両末端にシラノール基を有するものであれば特に限定はないが、各成分との相溶性の観点から、式(I):
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、Rは1価の炭化水素基を示し、nは1以上の整数であり、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表される化合物が好ましい。
【0023】
式(I)で表される化合物は、両末端にシラノール基を有する直鎖状高分子である。シラノール基は、ケイ素原子に結合したヒドロキシ基であり、縮合反応により−Si−O−Si−結合を形成するため、本発明においては、両末端シラノール型シリコーンオイルを縮合反応系モノマーという。なお、式(I)で表される化合物は直鎖状高分子であるが、例えば、アルケニル基含有ケイ素化合物と縮合反応することにより3次元網目構造を形成することができる。
【0024】
式(I)におけるRは、1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製のしやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性、耐熱性、及び耐光性の観点から、メチル基が好ましい。なお、式(I)において、全てのRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基であることが好ましい。
【0025】
式(I)中のnは、1以上の整数を示すが、安定性や取り扱い性の観点から、好ましくは1〜10000、より好ましくは1〜1000の整数である。
【0026】
かかる式(I)で表される化合物としては、両末端シラノール型ポリジメチルシロキサン、両末端シラノール型ポリメチルフェニルシロキサン、両末端シラノール型ポリジフェニルシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rが全てメチル基、nが1〜1000の整数である化合物が好ましい。
【0027】
式(I)で表される化合物は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0028】
式(I)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1000,000、より好ましくは100〜100,000である。なお、本明細書において、シリコーン誘導体の分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0029】
両末端シラノール型シリコーンオイルにおける式(I)で表される化合物の含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0030】
両末端シラノール型シリコーンオイルの含有量は、組成物中、1〜99重量%が好ましく、50〜99重量%がより好ましく、80〜99重量%がさらに好ましい。
【0031】
(2)アルケニル基含有ケイ素化合物
本発明におけるアルケニル基含有ケイ素化合物は、アルケニル基を含む官能基がケイ素原子に結合した化合物であり、該アルケニル基がヒドロシリル化反応を起こして樹脂化を行うことから、ヒドロシリル化反応に関するモノマーである。また、アルケニル基以外の置換基は、特に限定されないが、縮合反応に関する官能基である場合には、アルケニル基含有ケイ素化合物は、縮合反応に関するモノマーとヒドロシリル化反応に関するモノマーのいずれとも反応し得る化合物となり、該化合物を介して両反応系の樹脂が結合して、耐熱性により優れる硬化物が得られることになる。なお、本明細書において、縮合反応に関する官能基とは、両末端シラノール型シリコーンオイルのOH基と縮合反応し得る官能基のことを意味し、具体的には、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アセトキシ基等が挙げられる。
【0032】
このような観点から、本発明におけるアルケニル基含有ケイ素化合物としては、式(II):
−Si(X) (II)
(式中、Rは置換又は非置換のアルケニル基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、又はアセトキシ基を示し、但し、3個のXは同一でも異なっていてもよい)
で表される、アルケニル基と縮合反応に関する官能基を有する化合物が好ましい。なお、ケイ素原子に結合した3個の縮合反応に関する官能基は、それぞれ、両末端シラノール型シリコーンオイルと縮合反応することにより、3次元架橋が形成されて、この化合物は架橋点となる。
【0033】
式(II)におけるRは、置換又は非置換のアルケニル基を示し、アルケニル基を骨格に含む有機基である。該有機基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基等が例示される。なかでも、ヒドロシリル化反応に対する反応性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0034】
式(II)におけるXはハロゲン原子、アルコキシ基、又はアセトキシ基を示し、これらはいずれも縮合反応に関する官能基である。ハロゲン原子としては、反応性の観点から、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。アルコキシ基としては、反応性及び取り扱い性の観点から、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシロキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。なお、式(II)において、3個のXは同一でも異なっていてもよいが、全てメトキシ基であることが好ましい。
【0035】
かかる式(II)で表される化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリブロモシラン、ビニルトリヨードシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン、ノルボルネニルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rがビニル基、Xが全てメトキシ基である、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0036】
式(II)で表される化合物は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0037】
アルケニル基含有ケイ素化合物における式(II)で表される化合物の含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0038】
アルケニル基含有ケイ素化合物の含有量は、組成物中、0.01〜90重量%が好ましく、0.01〜50重量%がより好ましく、0.01〜10重量%がさらに好ましい。
【0039】
また、アルケニル基含有ケイ素化合物の含有量は、両末端シラノール型シリコーンオイル100重量部に対して、得られる硬化物の強度の観点から、0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
【0040】
本発明の一態様として、アルケニル基含有ケイ素化合物のXが縮合反応に関する官能基である場合、両末端シラノール型シリコーンオイルのSiOH基と、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiX基とを過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比(SiOH/SiX)が、20/1〜0.2/1が好ましく、10/1〜0.5/1がより好ましい。前記モル比が、20/1以下であれば、本発明の組成物を半硬化させた際に適度な強靭性を有する半硬化物が得られ、0.2/1以上であれば、アルケニル基含有ケイ素化合物が多くなりすぎず、得られる樹脂の耐熱性が良好となる。
【0041】
(3)オルガノハイドロジェンシロキサン
本発明におけるオルガノハイドロジェンシロキサンとしては、特に限定はないが、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物が好ましく、ヒドロシリル基の結合位置としては、末端、主鎖、側鎖のいずれでもよい。具体的には、各成分との相溶性の観点から、式(III):
【0042】
【化2】

【0043】
(式中、A、B及びCは構成単位であり、Aが末端単位、B及びCが繰り返し単位を示し、Rは1価の炭化水素基、aは0又は1以上の整数、bは2以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、及び式(IV):
【0044】
【化3】

【0045】
(式中、Rは1価の炭化水素基、cは0又は1以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なお、本発明においては、オルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基がヒドロシリル化反応を起こすことから、オルガノハイドロジェンシロキサンをヒドロシリル化反応に関するモノマーという。また、オルガノハイドロジェンシロキサンとは、オルガノハイドロジェンジシロキサンやオルガノハイドロジェンポリシロキサン等、低分子量の化合物から高分子量の化合物まで全ての化合物の総称を意味する。
【0046】
式(III)で表わされる化合物は、構成単位A、B及びCによって構成され、Aが末端単位、B及びCが繰り返し単位であり、水素が繰り返し単位に含まれている化合物である。
【0047】
式(III)におけるR、即ち、構成単位AにおけるR、構成単位BにおけるR、及び構成単位CにおけるRは、いずれも1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、透明性及び耐熱性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性、耐熱性、及び耐光性の観点から、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。なお、式(III)において、全てのRは同一でも異なっていてもよく、構成単位に関係なく、それぞれ独立して上記炭化水素基を示す。
【0048】
構成単位Aは末端単位であり、式(III)中に2個含まれる。
【0049】
構成単位Bの繰り返し単位数、即ち、式(III)中のaは、0又は1以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは1〜1000、より好ましくは1〜100の整数である。
【0050】
構成単位Cの繰り返し単位数、即ち、式(III)中のbは、2以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは2〜10000、より好ましくは2〜1000の整数である。
【0051】
かかる式(III)で表される化合物としては、メチルハイドロジェンシロキサン、ジメチルポリシロキサン-CO-メチルハイドロジェンシロキサン、エチルハイドロジェンシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサンCO-メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rがメチル基、aが1以上の整数、bが2以上の整数である化合物、Rがエチル基、aが1以上の整数、bが2以上の整数である化合物が好ましい。
【0052】
式(III)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1,000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。
【0053】
式(IV)で表される化合物は、水素を両末端に有する化合物である。
【0054】
式(IV)におけるRは、1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、透明性及び耐熱性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性、耐熱性、及び耐光性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。なお、式(IV)において、全てのRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0055】
式(IV)中のcは、0又は1以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは1〜10,000、より好ましくは1〜1,000の整数である。
【0056】
かかる式(IV)で表される化合物としては、両末端ヒドロシリル型ポリジメチルシロキサン、両末端ヒドロシリル型ポリメチルフェニルシロキサン、両末端ヒドロシリル型ポリジフェニルシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rが全てメチル基、cが1〜1,000の整数である化合物、Rが全てエチル基、cが1〜1,000の整数である化合物が好ましい。
【0057】
式(IV)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1,000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。
【0058】
式(III)及び式(IV)で表される化合物としては、市販品を用いても、公知の方法に従って合成したものを用いてもよい。
【0059】
オルガノハイドロジェンシロキサンにおける、式(III)及び式(IV)で表される化合物の総含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0060】
オルガノハイドロジェンシロキサンの含有量は、組成物中、0.1〜99重量%が好ましく、0.1〜90重量%がより好ましく、0.1〜80重量%がさらに好ましい。
【0061】
また、アルケニル基含有ケイ素化合物とオルガノハイドロジェンシロキサンの重量比は、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiR基とオルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基を過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比(SiR/SiH)が、20/1〜0.1/1が好ましく、10/1〜0.2/1がより好ましく、10/1〜0.5/1がさらに好ましく、実質的に当量(1/1)であることがさらに好ましい。前記モル比が、20/1以下であれば、本発明の組成物を半硬化させた際に適度な強靭性があり、0.1/1以上であれば、オルガノハイドロジェンシロキサンが多くなりすぎず、得られる樹脂の耐熱性及び強靭性が良好となる。
【0062】
両末端シラノール型シリコーンオイルとオルガノハイドロジェンシロキサンの重量比(両末端シラノール型シリコーンオイル/オルガノハイドロジェンシロキサン)は、シート化した際の粘弾性の観点から、99.9/0.1〜1/99が好ましく、99.9/0.1〜50/50がより好ましく、99.9/0.1〜90/10がさらに好ましい。
【0063】
(4)縮合触媒
本発明における縮合触媒としては、両末端シラノール型シリコーンオイルのシラノール基同士の縮合反応を、また、アルケニル基含有ケイ素化合物のXが縮合反応に関する官能基である場合は、両末端シラノール型シリコーンオイルのシラノール基と、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiXとの縮合反応を触媒する化合物であれば特に限定はないが、相溶性及び熱分解性の観点から、アルキルアンモニウムヒドロキシドを含むものが好ましく、実質的に、アルキルアンモニウムヒドロキシドからなることがより好ましい。アルキルアンモニウムヒドロキシドは、150℃以上でアルコールとアルキルアミンに分解して揮発するため、硬化後の樹脂に不純物として残存しにくく、樹脂の耐久性に影響を及ぼさないため好ましい。また、縮合反応に関与しないアルキルアンモニウムヒドロキシドによって、ヒドロシリル化反応を促進させるヒドロシリル化触媒、例えば、白金触媒が不活化されることもなく安定に保たれるため好ましい。
【0064】
アルキルアンモニウムヒドロキシドとしては、アルキル基の炭素数が好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4のアルキルアンモニウムヒドロキシドが挙げられるが、触媒活性や入手し易さの観点から、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドが好ましく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドがより好ましい。
【0065】
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドは、固体状態のものをそのまま用いてもよいが、取り扱い性の観点から、水溶液又はメタノール溶液として用いることが好ましく、樹脂の透明性の観点から、メタノール溶液を用いることがより好ましい。
【0066】
また、本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、アルキルアンモニウムヒドロキシド以外の他の縮合触媒を含有してもよい。他の縮合触媒としては、塩酸、酢酸、ギ酸、硫酸等の酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム等の塩基;アルミニウム、チタン、亜鉛、スズ等の金属系触媒が例示される。縮合触媒における、アルキルアンモニウムヒドロキシドの含有量は、20重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。
【0067】
組成物における縮合触媒の含有量は、両末端シラノール型シリコーンオイル100モルに対して、0.1〜50モルが好ましく、1.0〜5モルがより好ましい。
【0068】
(5)ヒドロシリル化触媒
本発明におけるヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシラン化合物とアルケンとのヒドロシリル化反応を触媒する化合物であれば特に限定はなく、白金黒、塩化白金、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体、白金−アセチルアセテート等の白金触媒;パラジウム触媒、ロジウム触媒等が例示される。なかでも、相溶性、透明性及び触媒活性の観点から、白金−1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体等の白金−オレフィン錯体が好ましい。
【0069】
組成物におけるヒドロシリル化触媒の含有量は、例えば、白金触媒を用いる場合には、反応速度の観点から、白金含有量が、オルガノハイドロジェンシロキサン100重量部に対して、1.0×10-4〜0.5重量部が好ましく、1.0×10-3〜0.05重量部がより好ましい。
【0070】
本発明におけるシリコーン樹脂用組成物は、前記(1)〜(5)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含有することができる。例えば、エポキシ基含有ケイ素化合物等の接着助剤、シリカ、ガラス繊維等の無機質充填剤、イットリウムアルミニウムガーネット等の無機蛍光体、シリカ粒子、硫酸バリウム等の光拡散体等が例示される。
【0071】
またさらに、前記以外に、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤、クリープハードニング防止剤、可塑剤、チクソ性付与剤、防カビ剤等の添加剤を含有してもよい。
【0072】
本発明におけるシリコーン樹脂用組成物は、(1)両末端シラノール型シリコーンオイル、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、(3)オルガノハイドロジェンシロキサン、(4)縮合触媒としてアルキルアンモニウムヒドロキシド、及び(5)ヒドロシリル化触媒の各成分を、好ましくは0〜60℃で1〜600分攪拌混合すれば調製することができるが、本発明においては、縮合反応とヒドロシリル化反応の各反応機構に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させる観点から、以下の工程(1)〜(3)で調製することが好ましい。
【0073】
工程(1)では、縮合反応に関する成分の混合を行う。具体的には、(1)両末端シラノール型シリコーンオイル、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、及び(4)アルキルアンモニウムヒドロキシド、必要に応じて、有機溶媒などの添加剤を、好ましくは0〜60℃、より好ましくは20〜45℃で、好ましくは1〜600分、より好ましくは60〜180分攪拌することにより行うことができる。なお、アルケニル基含有ケイ素化合物は、縮合反応、ヒドロシリル化反応のいずれにも関する場合もあるが、縮合反応の方がヒドロシリル化反応より低温で反応が開始されることから、(1)両末端シラノール型シリコーンオイルと同時に混合されることが好ましい。
【0074】
有機溶媒としては、特に限定はないが、シリコーン誘導体と縮合触媒の相溶性を高める観点から、2−プロパノールが好ましい。
【0075】
有機溶媒の存在量は、両末端シラノール型シリコーンオイル及びアルケニル基含有ケイ素化合物の総量100重量部に対して、3〜20重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。3重量部以上であると反応進行性が良好であり、20重量部以下であると組成物の硬化段階における発泡が低減される。
【0076】
なお、上記混合によって、両末端シラノール型シリコーンオイルのSiOH基と、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiX基との縮合反応の一部が開始されてもよく、縮合反応の進行度は、H−NMR測定によって、SiOH基に由来するピークの消失程度によって確認することができる。
【0077】
また、工程(1)では、得られた混合物の揮発成分を除去する観点から、得られた混合物を減圧下、好ましくは0.1〜30mmHg下で5〜120分間濃縮を行ってもよい。
【0078】
次に、工程(2)を行う。工程(2)では、工程(1)で得られた混合物に、(3)オルガノハイドロジェンシロキサンを攪拌混合する。混合温度は、0〜60℃が好ましく、20〜45℃がより好ましい。混合時間は、1〜600分が好ましく、60〜180分がより好ましい。
【0079】
さらに、工程(3)を行う。具体的には、工程(2)で得られた混合物に、(5)ヒドロシリル化触媒を攪拌混合する。混合温度は、0〜60℃が好ましく、20〜45℃がより好ましい。混合時間は、1〜600分が好ましく、60〜180分がより好ましい。
【0080】
得られたシリコーン樹脂用組成物の25℃における粘度は、好ましくは10〜100000mPa・s、より好ましくは1000〜20000mPa・sである。本明細書において、粘度は、B形粘度計を用いて測定することができる。
【0081】
本発明では、かくして得られたシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより、本発明のシリコーン樹脂シートが得られる。
【0082】
具体的には、前記シリコーン樹脂用組成物を、例えば、表面を剥離処理した離型シート(例えば、ポリエチレン基材等の有機ポリマーフィルム、セラミックス、金属等)の上にキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに塗工し、溶媒の除去が可能な程度の温度で加熱することによりシート状に成形することができる。加熱温度は、使用される溶媒の種類によって一概には決定されないが、本発明においては、この加熱によって、溶媒の除去に加えて縮合反応を完結させて、半硬化状(Bステージ)のシリコーン樹脂シートを調製することから、20〜200℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。加熱時間は、0.1〜120分が好ましく、0.5〜60分がより好ましい。なお、本明細書において、「反応の完結」とは、反応に関与する官能基の80%以上が反応した場合のことを意味し、縮合反応においては、例えば、前述のH−NMRによってSiOH基に由来するピークの消失程度によって確認することができる。
【0083】
かくして本発明のシリコーン樹脂シートを調製することができることから、本発明はまた、本発明のシリコーン樹脂シートの製造方法を提供する。
【0084】
本発明のシリコーン樹脂シートの製造方法としては、前記シリコーン樹脂用組成物を縮合反応させる工程を含む方法であれば特に限定はない。具体的には、例えば、前記(1)〜(5)成分を含有するシリコーン樹脂用組成物を、好ましくは20〜200℃、より好ましくは80〜150℃の温度で攪拌しながら反応させる工程を含む方法等が挙げられる。
【0085】
本発明のシリコーン樹脂シートの厚さは特に限定されないが、光半導体封止性の観点から、100〜5000μmが好ましく、100〜2000μmがより好ましい。
【0086】
また、本発明のシリコーン樹脂シートは、縮合反応に関する成分とヒドロシリル化反応に関する成分を構成成分とし、前記成分のうち縮合反応に関する成分のみを反応させて得られたものであることから、半硬化状態を安定して維持することが出来るため、シート硬度が0.5〜10、好ましくは1.0〜2であることも一つの特徴である。なお、本明細書において、シート硬度は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0087】
また、本発明のシリコーン樹脂シートは、経済性及び取り扱い性の観点から、半硬化状態のまま5℃で48時間以上保存できることが好ましく、5℃で48時間保存後の本発明のシリコーン樹脂シートは、保存前の硬度を100%とした場合、好ましくは100〜300%、より好ましくは100〜200%の硬度を有することが望ましい。
【0088】
本発明のシリコーン樹脂シートは、光半導体素子の上にそのまま静置して用いることもできるが、公知の樹脂がポッティングされたLED素子上に静置して用いることもできる。よって、本発明は、本発明のシリコーン樹脂シートを含む光半導体素子封止材料を提供する。
【0089】
ポッティング樹脂としては、従来から光半導体封止に用いられる樹脂であれば特に限定はなく、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等の透光性樹脂が挙げられ、これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐久性、耐熱性、及び耐光性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。
【0090】
本発明のシリコーン樹脂シートは、例えば、光半導体素子の上にそのまま又は公知の樹脂をポッティングした上に静置して封止加工した後、高温で加熱して樹脂シートを完全に硬化させることにより光半導体装置を調製することができる。従って、本発明はまた、本発明のシリコーン樹脂、本発明のシリコーン樹脂シートを用いて光半導体素子を封止した光半導体装置を提供する。この樹脂シートの完全硬化は、付加反応に関する成分が反応することにより実施される。
【0091】
シートを基板に静置させてから封止加工する方法は、特に限定はないが、例えば、ラミネーターを用いて、好ましくは100〜200℃、0.01〜10MPaで、より好ましくは120〜160℃、0.1〜1MPaで、5〜600秒間加熱する方法が例示される。また、凹型金型や平板金型を用いて封止加工してもよい。
【0092】
封止加工後の加熱温度は、120℃超250℃以下が好ましく、150〜200℃がより好ましい。加熱時間は、0.5〜24時間が好ましく、2〜6時間がより好ましい。本発明では、この加熱により樹脂シートの完全硬化が行われる。なお、さらにポストキュアを行ってもよく、例えば、好ましくは100〜150℃の温度の乾燥機で、好ましくは15分〜6時間放置して行うことができる。
【0093】
付加反応の進行度は、例えば、IR測定において、オルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基に由来するピークの吸収程度によって確認することができ、吸収強度が初期値(硬化反応前)の20%を下回った場合に、ヒドロシリル化反応が完結して全硬化していると判断することができる。
【0094】
かくして、本発明のシリコーン樹脂シートを用いることにより、光半導体装置の封止加工が容易となる。また、本発明のシリコーン樹脂シートは、耐熱性と耐光性に優れるシリコーン誘導体を主成分として含有するために、光半導体素子の封止材料として好適に用いられる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例及び参考例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0096】
〔シリコーン誘導体の分子量〕
ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算にて求める。
【0097】
実施例1
<シリコーン樹脂用組成物>
両末端シラノール型シリコーンオイル(平均分子量11500)300g(26mmol)と、ビニルトリメトキシシラン2.58g〔17.4mmol、両末端シラノール型シリコーンオイルのSiOH基とビニルトリメトキシシランのメトキシ基のモル比(SiOH/メトキシ基)=52/52〕の混合物に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの10%メタノール溶液143μL(0.13mmol、両末端シラノール型シリコーンオイル100モルに対して0.5モル)を加え、40℃で1時間攪拌混合した。その後、反応溶液を40℃、減圧(0.5mmHg)の条件下で1時間攪拌して、揮発成分を留去した。次に、得られたオイルに、オルガノハイドロジェンポリシロキサン7.31g〔ビニルトリメトキシシランのビニル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基のモル比(ビニル基/SiH)=1/3〕を添加して40℃で1時間攪拌混合後、さらに、白金(ジビニルテトラメチルジシロキサン)錯体溶液(白金濃度2重量%)18.8μL(白金含有量は両末端シラノール型シリコーンオイル300gに対して0.38mg)を加えて攪拌混合し、シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0098】
<シリコーン樹脂シート>
得られたシリコーン樹脂用組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ニッパ社製、SS4C)上に樹脂厚600μmで塗工し、135℃で3〜10分加熱して、半硬化状のシリコーン樹脂シートを調製した。
【0099】
実施例2
<シリコーン樹脂用組成物>
両末端シラノール型シリコーンオイル(平均分子量11500)300g(26mmol)、ビニルトリメトキシシラン2.32g〔15.6mmol、両末端シラノール型シリコーンオイルのSiOH基とビニルトリメトキシシランのメトキシ基のモル比(SiOH/メトキシ基)=52/47〕、及び、任意成分として(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン0.41g(1.74mmol)の混合物に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの10%メタノール溶液143μL(0.13mmol、両末端シラノール型シリコーンオイル100モルに対して0.5モル)を加え、40℃で1時間攪拌混合した。その後、反応溶液を40℃、減圧(0.5mmHg)の条件下で1時間攪拌して、揮発成分を留去した。次に、得られたオイルに、オルガノハイドロジェンポリシロキサン6.58g〔ビニルトリメトキシシランのビニル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基のモル比(ビニル基/SiH)=1/3〕を添加して40℃で1時間攪拌混合後、さらに、白金(ジビニルテトラメチルジシロキサン)錯体溶液(白金濃度2重量%)18.8μL(白金含有量は両末端シラノール型シリコーンオイル300gに対して0.38mg)を加えて攪拌混合し、シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0100】
<シリコーン樹脂シート>
前記で得られたシリコーン樹脂用組成物を用いる以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂シートを調製した。
【0101】
実施例3
実施例2において、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの10%メタノール溶液の使用量を472μL(0.52mmol、両末端シラノール型シリコーンオイル100モルに対して2.0モル)に変更し、白金(ジビニルテトラメチルジシロキサン)錯体溶液の使用量を75μL(白金含有量は両末端シラノール型シリコーンオイル300gに対して1.5mg)に変更する以外は、実施例2と同様にしてシリコーン樹脂シートを調製した。
【0102】
実施例4
実施例2において、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの使用量を2.19g〔ビニルトリメトキシシランのビニル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基のモル比(ビニル基/SiH)=1/1〕に変更する以外は、実施例2と同様にしてシリコーン樹脂シートを調製した。なお、ヒドロシリル化触媒の白金含有量は両末端シラノール型シリコーンオイル300gに対して0.38mgであった。
【0103】
実施例5
実施例1において、縮合触媒として、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの10%メタノール溶液143μL(0.13mmol、両末端シラノール型シリコーンオイル100モルに対して0.5モル)を添加して40℃で1時間攪拌混合する代わりに、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの10%メタノール溶液0.34g(0.13mmol、両末端シラノール型シリコーンオイル100モルに対して0.5モル)を添加して50℃で3時間攪拌混合する点と、揮発成分の減圧留去温度を40℃から50℃に変更する点と、さらに、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを添加して攪拌混合する温度を40℃から50℃に変更する点以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂シートを調製した。
【0104】
比較例1
実施例1において、縮合触媒として、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの10%メタノール溶液143μL(0.13mmol、両末端シラノール型シリコーンオイル100モルに対して0.5モル)を添加して40℃で1時間攪拌混合する代わりに、ジ-n-ブチルジアセトキシスズ(純度95%)36μL(0.13mmol、両末端シラノール型シリコーンオイル100モルに対して0.5モル)を添加して50℃で5時間攪拌混合する点と、揮発成分の減圧留去温度を40℃から50℃に変更する点と、さらに、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを添加して攪拌混合する温度を40℃から50℃に変更する点以外は、実施例1と同様にしてシリコーン樹脂シートを調製した。
【0105】
また、得られたシートを用いて、以下の方法に従って光半導体装置を製造した。なお、市販の二液混合型シリコーンエラストマー(旭化成ワッカーシリコーン社製)のA液150gとB液150gを混合したものを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(SS4C)上に樹脂厚600μmで塗工し、80℃で7分加熱して得られた半硬化状のシリコーン樹脂シートを参考例1として用いた。
【0106】
光半導体装置の作製例1
得られたシリコーン樹脂シートを5℃で168時間保存したものについて、1cm×1cm小片を基板に実装されたLED素子上に静置し、0.1MPaの圧力下で160℃で5分間加熱して封止加工後、150℃で5時間加熱することにより、樹脂を完全に硬化させて光半導体装置を作製した。
【0107】
得られたシリコーン樹脂シート及び光半導体装置について、以下の試験例1〜3に従って、特性を評価した。結果を表1〜2に示す。
【0108】
試験例1(硬度)
調製直後のシリコーン樹脂シートについて、デジタル測長計(MS-5C、ニコン社製)を用いて、センサーヘッドで7g/mm2の荷重をかけた際に、シート表面からセンサーヘッドが沈んだ距離を測定し、以下の式に基づいてシート硬度を求めた。なお、シート硬度の値が大きいほど硬いものであることを示す。
シート硬度=[1−{センサーヘッドが沈んだ距離(μm)/荷重をかけていない時の厚み(μm)}]×100
【0109】
試験例2(保存安定性)
各シリコーン樹脂シートを5℃で48時間又は168時間保存後に、試験例1と同様にしてシート硬度を測定した。得られたシート硬度と調製直後のシート硬度を比較して、シート硬度の比率(保存後/調製直後×100)を硬度保持率(%)として算出し、以下の評価基準に従って保存安定性を評価した。
【0110】
〔保存安定性の評価基準〕
○:硬度保持率が100〜300%
△:硬度保持率が300%超、500%以下
×:硬度保持率が500%超
【0111】
試験例3(封止性)
各光半導体装置の封止前後の状態を光学顕微鏡で観察し、光半導体素子が樹脂シートで完全に包埋され、ボンディングワイヤーに変形、損傷がなく、LEDが点灯するものを「○」、点灯しないものを「×」とした。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
結果、実施例1〜5のシリコーン樹脂シートは、5℃168時間保存後においても、シート硬度が殆ど変化せず、安定して半硬化状態を呈し、光半導体装置を良好に封止できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の半硬化状のシリコーン樹脂シートは、例えば、LED発光装置を光源とする表示用装置や照明器具、ディスプレイ等のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイや広告看板等の半導体素子を製造する際に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両末端シラノール型シリコーンオイル、アルケニル基含有ケイ素化合物、オルガノハイドロジェンシロキサン、縮合触媒、及びヒドロシリル化触媒を含有してなるシリコーン樹脂用組成物を縮合反応することにより得られる半硬化状のシリコーン樹脂シートであって、前記縮合触媒がアルキルアンモニウムヒドロキシドを含み、シート硬度が0.5〜10であることを特徴とする、半硬化状のシリコーン樹脂シート。
【請求項2】
アルキルアンモニウムヒドロキシドがテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含む、請求項1載のシリコーン樹脂シート。
【請求項3】
5℃で48時間保存後のシート硬度が、保存前のシート硬度を100%とした場合、100〜300%である、請求項1又は2記載のシリコーン樹脂シート。
【請求項4】
両末端シラノール型シリコーンオイル、アルケニル基含有ケイ素化合物、オルガノハイドロジェンシロキサン、アルキルアンモニウムヒドロキシド、及びヒドロシリル化触媒を含有してなるシリコーン樹脂用組成物を20〜200℃で加熱する工程を含む、半硬化状のシリコーン樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3いずれか記載のシリコーン樹脂シートを含んでなる光半導体素子封止材料。
【請求項6】
請求項1〜3いずれか記載のシリコーン樹脂シート、又は請求項5記載の光半導体素子封止材料を用いて光半導体素子を封止してなる、光半導体装置。

【公開番号】特開2012−82320(P2012−82320A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229736(P2010−229736)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】