説明

卒中を治療するための(2R)−2−プロピルオクタン酸のプロドラッグ

卒中の生化学的カスケード中の複数の事象を調節するのに有効であり得る(2R)−2−プロピルオクタン酸のプロドラッグ及び前記化合物を含む医薬組成物が開示されている。本発明の化合物または組成物を投与することによる卒中を患っているかまたは卒中のリスクがある患者の治療方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卒中の治療に有用な(2R)−2−プロピルオクタン酸のプロドラッグ及び本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、卒中を患っているかまたは卒中のリスクがある患者に対して本発明の化合物または医薬組成物を投与することによる前記患者の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
卒中は、脳への正常な血流が分断されると生ずる脳血管事象であり、脳は非常に大量または非常に少量の血液しか受け取らない。卒中は世界中の主要な死亡原因の1つであり、神経障害の最も一般的な原因の1つでもある。
【0003】
卒中の最も一般的なタイプである虚血性卒中は、動脈血の流入が閉塞されることにより血液の脳循環が不十分なために生ずる。常態では、脳血液の十分な供給は脳内の動脈系により確保される。しかしながら、炎症やアテローム性動脈硬化症を含めた各種疾患は血栓(すなわち、血管中に形成される血餅)を引き起こし得る。血栓は動脈血流を妨げて、脳虚血及びその結果神経症状を発症させる恐れがある。また、虚血性卒中は心臓からの塞栓(気泡)が頭蓋内血管に留まることによっても引き起こされ得、脳血流が不十分であると共に灌流圧が低下したり、血液粘度が高まる。塞栓は心房細動やアテローム性動脈硬化症を含めた各種疾患によっても引き起こされ得る。
【0004】
第2のタイプの卒中である出血性卒中は脳につながる動脈の出血または破裂を伴う。出血性卒中により、脳の硬膜外、硬膜下またはクモ膜下腔を含めた脳組織に出血する。出血性卒中は通常動脈高血圧症または血栓症に曝されている動脈硬化性血管が破裂した結果生ずる。
【0005】
急性虚血性卒中の間、すなわち脳血管事象〜該事象から最長24時間の間、動脈閉塞により脳組織の即時型閉塞コアが生じ、コアでは脳血流が大きく、例えば正常な血流の20%未満まで減少する。梗塞コアは重大な細胞死のために不可逆的損傷を受ける。虚血が続いている時間の長さ及び虚血の重症度が損傷の程度に寄与している。虚血性境界域として公知の梗塞コアの周囲の領域ではより軽度の梗塞が遅れて生ずる。例えば、急性卒中の間境界域の血流は正常な血流の約20〜40%に低下する恐れがある。
【0006】
十分に理解されていないが、虚血性卒中の病因は急性神経損傷及び衰えた神経機能をもたらす複数の相互に作用する生化学的事象の複雑なカスケードを含む。虚血によりATPの細胞エネルギー貯蔵が欠乏し、ナトリウム及びカリウムイオンポンプが欠損する。これにより、脳中のニューロンが脱分極して興奮毒性、すなわちグルタメートを含めた興奮性アミノ酸の過剰活性が生じ、その結果ニューロン損傷が生ずる。加えて、前記カスケードにより細胞内カルシウムが増加する。細胞内カルシウムの存在により細胞内酵素が活性化し、ニューロンが死亡する。Lydenら,J.Stroke and Cerebrovasc.Dis.,9(6,補遺2):9−14(2000)。また、興奮毒性により酵素、リン脂質、プロテアーゼ及び一酸化窒素シンターゼが活性化し、酸素フリーラジカルが発生する。これらの事象の各々が卒中のニューロン細胞死の原因である。Nicoteraら,J.Cerebr.Blood Flow & Metab.,19(6):583−591(1999)。
【0007】
卒中における薬理学的治療の1つの機会は卒中のリスクのある患者における卒中のリスクを予防または減ずることである。卒中に関して、血管炎症、アテローム性動脈硬化症、動脈高血圧症、糖尿病、高脂血症及び心房細動を含めた複数の知られている要因がある。リスクのある患者は血圧をコントロールしたり血液脂質レベルを管理するための薬物で治療されており、抗血小板薬(例えば、クロピドゲル)及び抗凝血薬で治療されている。心筋梗塞を患っており、卒中のリスクがある患者はしばしばアンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)またはβ−アドレナリン作動性アンタゴニスト(β−遮断薬)で治療されている。
【0008】
卒中の薬理学的治療の第2の機会は急性卒中を治療することである。しかしながら、急性卒中を治療するための現在の薬理学的治療では卒中から3時間未満の狭い治療時間内で血流を回復させなければならない。急性卒中を治療するのに有効であることが判明している薬物は血栓溶解剤(例えば、rt−PA)及びウロキナーゼだけである。より長い治療時間内で有効である物質が依然として要望されている。
【0009】
卒中の薬理学的治療の別の機会は急性卒中期間後に回復または修復させることである。すなわち、境界域における二次細胞傷害を減少または予防することである。幾つかの神経保護物質が卒中の前臨床動物モデルで有効であることが立証されているが、ヒト臨床トライアルで必ずしも有利な結果がそのまま得られていない。卒中後の二次細胞傷害を減少または予防するのに有効な物質が依然として要望されている。
【0010】
卒中を治療するための上記した機会の1つ以上で使用され得る単一薬物を得ることが望ましい。前記薬物は卒中のリスクがある患者に対して投与され得、急性卒中を患っている患者または急性卒中期間後の回復または修復のために治療を受けている患者に対しても投与され得る。前記薬物はまた、卒中の生化学的カスケードにおける1つ以上の異なるメカニズムを標的とし得る。
【0011】
卒中を治療するために有用であることが公知の神経保護物質の1つのクラスは反応性アストロサイト抑制剤である。アストロサイトは中枢神経系中に存在している細胞のタイプである。アストロサイトは必須基質を供給し、ニューロンの周囲の脳の領域から毒素を除去し、脳中の酸化防止剤の適当なレベルを維持するのに役立つ。Wilsonら,Can.J.Physiol.Pharmacol.,75:1149−1163(1997)を参照されたい。しかしながら、最近の証拠で、アストロサイトが神経ネットワークの調節においてより広い役割を有し得ることが示されている。例えば、アストロサイトは電位依存性イオンチャネル及び神経伝達物質受容体を発現し得る。Bachooら,Proc.Nat’l Acad.Sci.,101:8384−838(2004)。
【0012】
例えば、反応性アストロサイトの産生を抑制し得る化合物は卒中の治療に有用であり得る。反応性アストロサイトの好ましい抑制剤は、米国特許第6,608,221号明細書に記載されている以下に示す
【0013】
【化6】

(2R)−2−プロピルオクタン酸である。
【発明の開示】
【0014】
発明の要旨
1実施態様で、本発明は、卒中の治療に関与する別の物質に結合されている(2R)−2−プロピルオクタン酸からなる卒中の治療用プロドラッグのために有用である化合物に関する。投与すると、本発明の化合物はインビボで修飾されて、(2R)−2−プロピルオクタン酸及び卒中を進行させる生化学的カスケードに関与する追加のメカニズムを標的とする他の物質を形成する。
【0015】
例えば、1実施態様で、本発明は、式(I)
【0016】
【化7】

(式中、Zは、卒中の間生ずる1つ以上の生化学的事象を調節する医薬的に活性な化合物である。)
を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩に関する。Z部分は、インビボで修飾されて生化学的事象を調節する化合物を形成する。
【0017】
は、例えばCOX−2阻害剤、一酸化窒素シンターゼ阻害剤、Rhoキナーゼ阻害剤、アンギオテンシンIIタイプ1受容体アンタゴニスト、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3阻害剤、ナトリウムまたはカルシウムチャネル遮断薬、p38 MAPキナーゼ阻害剤、トロンボキサンAX−シンターゼ阻害剤、スタチン(HMG CoAレダクターゼ阻害剤)、神経保護物質、β−アドレナリン遮断薬、NMDA受容体アンタゴニスト、血小板フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト、トロンビン阻害剤、降圧薬または血管拡張剤であり得る。Zは、神経薬理学的に活性であることが公知であり、或いは卒中の治療に有効であることが公知であるかまたは考えられている化合物、例えばリチウムイオン、バルプロン酸、4−フェニル酪酸ナトリウムまたはウリジンでもあり得る。
【0018】
別の実施態様で、本発明は、式(II):
【0019】
【化8】

(式中、Z及びZは各々上記したように卒中の間生ずる1つ以上の生化学的事象を調節する医薬的に活性な化合物である。)
を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩に関する。Z及びZ部分は、インビボで修飾されて生化学的事象を調節する化合物を形成する。
【0020】
式(II)を有する化合物の別の実施態様では、Zは上記したように卒中の間生ずる1つ以上の生化学的事象を調節する医薬的に活性な化合物であり、Zは好ましい特性(例えば、水性媒体中の溶解度)を式(II)を有する化合物に付与する部分である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明化合物は、卒中及び卒中に起因する神経障害を治療、改善またはコントロールする際に有用である。
【0022】
本明細書中で使用されている用語「卒中」は、神経障害をもたらす脳循環の傷害を含む臨床事象である。典型的には、卒中は部分的神経欠損の急激発生により発現する。卒中は脳の動脈の破裂または(血栓または塞栓によるような)閉塞により生ずる。
【0023】
本明細書中で使用されている用語「虚血性卒中」は、動脈血の流入の閉塞による局所的組織貧血を特徴とする卒中を指す。虚血性卒中は通常主要な脳動脈のアテローム性血栓または塞栓に起因しているが、凝血障害または非アテローム性血管障害に起因することもある。
【0024】
本発明化合物が投与される被験者または患者は通常卒中を治療したい男性または女性のヒトであるが、卒中を治療したい他の哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、家兎、サル、チンパンジーまたは他の類人猿、または霊長類)も含む。
【0025】
本発明化合物が投与され得る患者の第1クラスは卒中のリスクのある患者である。本明細書中で使用されている用語「卒中のリスクのある患者」は、以前卒中を患ったかまたは卒中のリスクファクターを有している個人を意味する。卒中の公知のリスクファクターにはアテローム性動脈硬化症、動脈高血圧症、脂肪硝子変性、高脂血症、高コレステロール血症、心房細動、喫煙、炎症マーカー(C反応性タンパク質を含む)、感染、ホモシステイン、睡眠呼吸障害、皮質下梗塞及び白質脳症を有する脳常染色体性動脈疾患(CADASIL)、偏頭痛、鎌状赤血球貧血、抗リン脂質抗体症候群、動脈切開、コカイン乱用及び肥満が含まれる。
【0026】
本明細書中で使用されている用語「治療」または「治療する」は、本発明化合物の投与を意味し、(1)卒中の症状または症候を経験または呈している動物における卒中または卒中の症状の抑制(すなわち、症状及び/または症候の更なる発生を停止させる。)、または(2)卒中の症状または症候を経験または呈している動物における卒中または卒中の症状の改善(すなわち、症状及び/または症候を退行させる。)を含む。用語「コントロールする」は、卒中の予防、治療、根絶、改善またはその重症度の軽減、或いは卒中のリスクの低下を含む。
【0027】
(卒中の予防を含めた)卒中のコントロール時の努力は、卒中の一時的予防(以前卒中の一過性虚血性発作を患ったことがなく、神経学的症状を有していない患者の治療)及び卒中の二次的予防(以前一過性虚血性発作または卒中を患った患者の治療)に分けられ得る。卒中の一時的予防には非薬理学的処置(例えば、禁煙、健康的な食事パターン、身体的活動の増加及び体重管理)が含まれる。一時的予防には適切ならば特定の薬理学的処置(例えば、血圧コントロール、心房細動の治療及び糖尿病の管理)も含まれる。卒中の一時的予防の一部として、冠動脈心疾患のリスクが高い患者はしばしばアスピリンで治療されている。一時的予防の一部として、低密度リポタンパク質(LDL)の量が多い患者はLDLを適切なレベル(例えば、160mg/dl以下)に低下させるためにしばしば血中脂質の管理を受けている。
【0028】
卒中の二次的予防にはしばしば、一時的予防のために使用されるのと同一の薬理学的及び非薬理学的処置、例えば血圧の管理、心房細動の治療、糖尿病の管理、アスピリンでの治療及び血液脂質管理が含まれる。更に一般的な二次的予防処置には抗血小板薬(例えば、クロピドゲル)、抗凝固薬(例えば、ワルファリン)及び降圧薬(例えば、β−アドレナリン作動性アンタゴニスト)が含まれる。
【0029】
本発明化合物が投与され得る患者の第2クラスは急性卒中患者、すなわち最近7日以内に虚血性卒中を患った患者である。急性卒中患者の1つの好ましいクラスは最近3日以内に卒中を患った患者である。急性卒中患者のより好ましいクラスは最近48時間以内、更により好ましくは最近24時間以内に卒中を患った患者である。卒中を治療する業界で共通するように、患者は卒中が起きた時期に従って分類され得る。例えば、急性卒中患者の1クラスは最近18時間以内に卒中を患った患者である。急性卒中患者の別のクラスは最近12時間以内に卒中を患った患者である。急性卒中患者の別のクラスは最近8時間以内に卒中を患った患者である。急性卒中患者の別のクラスは最近6時間以内に卒中を患った患者である。急性卒中患者の別のクラスは最近4時間以内に卒中を患った患者である。急性卒中患者の別のクラスは最近3時間以内に卒中を被った患者である。
【0030】
急性卒中の治療、すなわち卒中を引き起こす脳事象及びその後7日間の間の治療には血栓溶解剤(例えば、組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rtPA))を用いる治療が含まれる。しかしながら、rtPAは卒中から最初の3時間以内に使用するためにのみ急性卒中の治療用に認可されている。急性卒中を治療するための別の可能性ある物質は神経保護物質のエダラボンであり、これは日本で認可されている。
【0031】
急性虚血性卒中の間、血栓または塞栓により動脈が閉塞されると脳組織の即時型梗塞コアが生じ、このコアでは脳血流が大きく、例えば正常な血流の20%未満に減少している。梗塞コアは重大な細胞死のために不可逆的ダメージを受けている。虚血が持続している時間及び虚血の重症度が梗塞の程度に寄与している。虚血境界域として公知の梗塞コアの周囲の領域では、軽度の梗塞が遅れて生ずる。例えば、急性卒中の間境界域の血流は約20〜40%低下する恐れがある。
【0032】
以前24時間以上卒中を患った患者はしばしば脳浮腫を発症し、通常卒中から1〜5日間に起こる。本明細書中で使用されている用語「脳浮腫」は、細胞膨潤及び血液−脳関門の崩壊のために脳組織中に集まる流体を指す。卒中後脳浮腫は上皮ライニングからの脳脊髄液の浸出、または血餅または組織損傷に起因する浸透圧環境の形成が含まれ得る。浸透圧環境により、水は間質域へ移動する。卒中後脳浮腫が卒中患者の臨床状態を悪化させる要因となることも多い。
【0033】
本発明化合物が投与され得る患者の第3クラスは以前7日間以上卒中を患っており、通常修復治療を要している患者である。
【0034】
用語「化合物の投与」または「化合物を投与する」は、治療を要する個人の身体に治療上有用な形態及び治療上有用な量で導入され得る形態で前記個人に本発明化合物を与えることを意味すると理解されるべきである。
【0035】
用語「有効量」または「治療有効量」は、研究者、獣医師、医者または他の臨床家が求めている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を引き出す本発明化合物の量を意味する。本明細書中で使用されている用語「治療」は、卒中の治療、特に卒中の症状を呈している患者における卒中の治療を指す。
【0036】
本明細書中で使用されている用語「プロドラッグ」は、不活性の分子、すなわち薬理学的に活性でないが、生物系により活性化されると薬理学的活性を有する分子を指す。例えば、プロドラッグは錠剤、カプセル剤または他の医薬組成物の形態では不活性であるが、哺乳動物が摂取するとインビボで修飾され、薬理学的に活性となる化合物である。よって、インビボで修飾されて卒中の治療において薬理学的に活性な化合物を遊離する式(I)及び(II)を有する化合物がプロドラッグである。
【0037】
用語「医薬的に許容され得る塩」は、無機または有機の塩基及び無機または有機の酸を含めた医薬的に許容され得る非毒性の塩基または酸から製造される塩を指す。無機塩基から誘導される塩にはアルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第一鉄、第二鉄、リチウム、マグネシウム、第一マンガン、第二マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等が含まれる。アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩及びナトリウム塩が特に好ましい。固体形態の塩は1つ以上の結晶構造で存在し得、水和物の形態もとり得る。医薬的に許容され得る有機非毒性塩基から誘導される塩の非限定例には第1級,第2級及び第3級アミン、天然に存在する置換アミンを含めた置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂(例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等)の塩が含まれる。本発明化合物が塩基性の場合、塩は無機酸や有機酸を含めた医薬的に許容され得る非毒性酸から製造され得る。前記酸には酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等が含まれる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸及び酒石酸が好ましい。
【0038】
適当なZ及びZ基にはCOX−2阻害剤、一酸化窒素シンターゼ阻害剤、Rhoキナーゼ阻害剤、アンギオテンシンIIタイプ1受容体アンタゴニスト、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3阻害剤、ナトリウムまたはカルシウムチャネルブロッカー、p38 MAPキナーゼ阻害剤、トロンボキサンAX−シンターゼ阻害剤、スタチン(HMG CoAレダクターゼ阻害剤)、神経保護物質(例えば、酸化防止剤、NMDA受容体アンタゴニスト、NR2Bアンタゴニスト、ナトリウムまたはカルシウムチャネルブロッカー及び5−HT1Aアゴニスト)、β−アドレナリン遮断薬、NMDA受容体アンタゴニスト、血小板フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト、トロンビン阻害剤、降圧剤または血管拡張剤が含まれる。適当なZまたはZ基には神経薬理学的に活性であることが公知であり、または卒中の治療に有効であることが公知であるかまたは考えられている化合物(例えば、リチウムイオン、バルプロン酸、4−フェニル酪酸ナトリウムまたはウリジン)が含まれる。
【0039】
以下、化合物の各クラスを更に検討する。
【0040】
COX−2阻害剤
及びZ部分として有用であり得る化合物の1クラスはシクロオキシゲナーゼ−2阻害剤である。COX−2の選択的阻害剤は従来の非ステロイド系抗炎症薬に類似の抗炎症、解熱及び鎮痛特性を有しているが、幾つかのメカニズムベースの副作用を誘発する能力は少ない。特に、選択的COX−2阻害剤の場合胃腸毒性の可能性が少なく、腎副作用の可能性が少なく、出血時間に対する影響が小さく、多分アスピリン感受性喘息被験者において喘息発作を誘発させる可能性が小さい。
【0041】
COX−2阻害剤は虚血に起因する行動不足を改善することが動物研究で立証されており、従って選択的COX−2阻害剤は行動機能を改善するために虚血性発作の治療に使用され得る。Lapchakら,Stroke,32:1220(2001)参照。
【0042】
COX−2阻害剤の例にはロフェコキシブ(VIOXX(商品名)として市販されている)、セレコキシブ(CELEBREX(商品名)として市販されている)、メロキシカム(MOBICOX(商品名)として市販されている)が含まれる。
【0043】
1実施態様では、ZまたはZ部分はフラン−2−オン誘導体COX−2阻害剤及びそのプロドラッグのクラスの1つであり、これらは米国特許第5,733,909号明細書、同第5,849,943号明細書、同第5,925,631号明細書、同第6,020,343号明細書、同第6,057,319号明細書に開示されている。フラン−2−オンCOX−2阻害剤は中大脳動脈閉塞(MCAO)卒中モデルにおいて梗塞容積を減少させることが立証されている。例えば、米国特許第6,020,343号明細書に開示されているDFU(5,5−ジメチル−3−(3−フルオロフェニル)−4−(4−メチルスルホニル−2(5H)−フラノン)は一過性の全虚血事象を呈しているアレチネズミにおける海馬損傷に対して神経保護であることが判明しており(Jalilら,Brain Research,927:212−215(2002))、マウスにおいてエンドトキシンに起因する死亡率を用量依存的に低下させることも判明している(Tunctanら,Pharmacological Res.,48:37−48(2003))。
【0044】
この実施態様において、ZまたはZ部分は下記式(IIl):
【0045】
【化9】

[式中、

(1)−Q−R
(2)3〜8個の環原子を有し、場合によりS、N及びOからなる群から選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する炭素環式基、
(3)−C6−10アリール、及び
(4)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記した炭素環式基,アリール及びヘテロアリールは未置換であるかまたは1個以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、
(c)NO
(d)−C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(e)−C1−6アルコキシ、
(f)−C(=O)−(O)−R
(g)−C(=O)−NR’、
(h)−O−C(=O)−R
(i)−S−C1−6アルキル、
(j)−S(O)
(k)−S(O)NR’、
(1)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(m)−NR’、
(n)−NR−C(=O)−R’、
(o)−P(=O)ROH、
(p)−P(=O)RNH
で置換されており;
Qは
(a)−O−、
(b)−S−、
(c)−SO−、
(d)−NR
からなる群から選択され;
、R及びR’は独立して
(a)水素、
(b)−C1−10アルキル、
(c)−C2−10アルケニル、
(d)−C2−10アルキニル、
(e)3〜8個の環原子を有し、場合によりS、N及びOからなる群から選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する炭素環式基、
(f)−C6−10アリール、及び
(g)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記した炭素環式基,アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びヘテロアリールは未置換であるかまたは1個以上の
(i)ハロゲン、
(ii)シアノ、
(iii)−NO
(iv)−C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(v)−C1−6アルコキシ、
(vi)−C(=O)−(O)−R
(vii)−C(=O)−NR’、
(viii)−O−C(=O)−R
(ix)−S−C1−6アルキル、
(x)−S(O)
(xi)−S(O)NR’、
(xii)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(xiii)−NR’、
(xiv)−NRC−C(=O)−R’、
(xv)−P(=O)ROH、
(xvi)−P(=O)RNH
で置換されており、
及びR’は独立して
(A)水素、
(B)−C1−10アルキル、
(C)−C2−10アルケニル、
(D)−C2−10アルキニル、
(E)3〜8個の環原子を有し、場合によりS、N及びOからなる群から選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する炭素環式基、
(F)−C0−10アルキル−C6−10アリール、及び
(G)ヘテロアリール
からなる群から選択され;

(1)−OR
(2)−NR
からなる群から選択され、R及びR’はR及びR’と同一の群から選択され;
及びRは独立して
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C2−10アルケニル、
(4)−C2−10アルキニル、
(5)−C6−10アリール、または
(6)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びヘテロアリールは未置換であるかまたは1個以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、
(c)−NO
(d)−C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(e)−C1−6アルコキシ、
(f)−C(=O)−(O)−R
(g)−C(=O)−NR’、
(h)−O−C(=O)−R
(i)−S−C1−6アルキル、
(J)−S(O)
(k)−S(O)NR’、
(1)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(m)−NR’、
(n)−NR−C(=O)−R’、
(o)−P(=O)ROH、
(p)−P(=O)RNH
で置換されており;或いは
及びRは結合して3〜8個の環原子を有し、場合によりS、N及びOからなる群から選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する炭素環式基を形成し得、前記炭素環式基は未置換であるかまたは1個以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、
(c)−NO
(d)−C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(e)−C1−6アルコキシ、
(f)−C(=O)−(O)−R
(g)−C(=O)−NR’、
(h)−O−C(=O)−R
(i)−S−C1−6アルキル、
(j)−S(O)
(k)−S(O)NR’、
(1)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(m)−NR’、
(n)−NR−C(=O)−R’、
(o)−P(=O)ROH、
(p)−P(=O)RNH
で置換されており、R及びR’はR及びR’と同一の群から選択され;

(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C2−10アルケニル、
(4)−C2−10アルキニル、
(5)−C0−10アルキル−C(=O)−R
(6)−C2−10アルケニル−C(=O)−R
(7)−C2−10アルキニル−C(=O)−R
(8)−C0−10アルキル−C(=O)−NR’、
(9)−C2−10アルケニル−C(=O)−NR’、及び
(10)−C2−10アルキニル−C(=O)−NR
からなる群から選択され、前記したアルキル、アルケニル及びアルキニルは未置換であるかまたは1個以上の
(a)ハロゲン,
(b)シアノ、
(c)−NO
(d)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(e)C1−6アルコキシ、
(f)−C(=O)−(O)−R
(g)−C(=O)−NR’、
(h)−O−C(=O)−R
(i)−S−C1−6アルキル、
(j)−S(O)
(k)−S(O)NR’、
(1)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(m)−NR’、
(n)−NRC(=O)−R’、
(o)−P(=O)ROH、
(p)−P(=O)RNH
で置換されており、R及びR’はR及びR’と同一の群から選択され;
xは1または2である。]
で示される化合物及びその医薬的に許容され得る塩であり、ただし式IIIはR及びRの1つにおいて(2R)−2−プロピルオクタン酸に結合している。
【0046】
更に、RまたはRの1つが(2R)−2−プロピルオクタン酸の場合、他方は卒中の間生ずる1つ以上の生化学的事象を調節する医薬的に活性な化合物に結合し得る。
【0047】
1実施態様では、Rは未置換であるかまたは1個以上のハロゲン(好ましくは、フルオロ)で置換されているフェニルである。
【0048】
1実施態様では、Rは−ORである。この実施態様では、R
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上の
(a)NR’、
(b)−C(=O)−OR、及び
(c)−C(=O)−O(C1−6アルキル−N(CH
で置換されている。)
からなる群から選択される。
【0049】
特定の実施態様では、R及びRは独立して
(1)水素、及び
(2)−C1−6アルキル
からなる群から選択される。好ましくは、R及びRは各々水素である。
【0050】
一酸化窒素シンターゼ阻害剤
有用なZまたはZ部分であり得る化合物の別のクラスは一酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害剤である。
【0051】
NOSには3つの公知のイソ型、すなわちそれぞれニューロンNOS(n−NOS)及び内皮NOS(e−NOS)と称される1つの誘導型(i−NOS)及び2つの構成型がある。これらの酵素の各々は、各種刺激に応答して一酸化窒素(NO)を生成しながらアルギニンのシトルリンへの変換を実施する。NOSによる過剰NO生成は中枢神経系の疾患(例えば、虚血)の病理に関与していると考えられる。P.E.Chabrierら,Cell Mol Life Sci.,55:1029−1035(1999)を参照されたい。例えば、n−NOSの阻害によりラットにおける近位中大脳動脈閉塞後の梗塞容積は縮小する。J.Cerebr.Blood Flow,25:924−929(1994)を参照されたい。更に、選択的INOS阻害剤はラットにおける焦点脳虚血病巣を大きく縮小させることが判明した。Parmentierら,Brit.J.Pharmacol.,127:546−552(1999)を参照されたい。
【0052】
卒中後の転帰を改善する1つの戦略は、NO合成を減らし、卒中における高濃度のNOの有害な神経毒性及び炎症前影響を制限することである。よって、一酸化窒素シンターゼ阻害剤は卒中の治療において有用である。適当な一酸化窒素シンターゼ阻害剤には非選択的阻害剤、n−NOS阻害剤及びi−NOS阻害剤が含まれる。i−NOS阻害剤が好ましい。
【0053】
本発明において使用するためのi−NOS阻害の例は、構造式:
【0054】
【化10】

を有するN−(3−(アミノメチル)ベンジル)アセトアミド(1400W94)である。
【0055】
Rhoキナーゼ阻害剤
またはZ部分として有用であり得る化合物の別のクラスはRhoキナーゼ阻害剤である。
【0056】
Rhoキナーゼ阻害剤はRhoA〜E及びRhoG(まとめてRhoと称する)として公知のタンパク質のファミリーの活性を阻害する化合物である。タンパク質のRhoファミリーは、細胞運動、軸索ガイダンス、細胞質分裂、並びに細胞形態、形状及び極性の変化を含めた主要な細胞機能のコントロールにおいて重要な部分を発揮する。
【0057】
動物モデルにおけるRhoキナーゼ活性の阻害から、脳虚血を含めたヒト疾患の治療のためにRhoキナーゼ阻害剤が多数の可能性ある薬理学的用途を有し得ることが立証された。例えば、Hitomiら,Life Sci.,67:1929−1939(2000)を参照されたい。
【0058】
好ましいRhoキナーゼ阻害剤は、構造式:
【0059】
【化11】

を有するファスジルである。
【0060】
アンギオテンシンIIタイプ1受容体アンタゴニスト
またはZ部分として有用であり得る化合物の別のクラスは、高血圧症の治療において有用であると公知であるアンギオテンシンII(ATII)受容体ブロッカーである。ATIIは血管収縮の原因となるアルドステロン放出を刺激する。ATIIはアテローム性動脈硬化症につながる心血管組織の増殖も刺激し得る。Expert Opinion Pharmacother.,2(11):1795−1804(2001)を参照されたい。昇圧剤は卒中に関連する死亡率を低下するように作用する。
【0061】
好ましいアンギオテンシンIIタイプ1受容体アンタゴニストにはカンデサルタン(ATACAND(商品名)として市販されている)、ロサルタン(COZAAR(商品名)として市販されている)、イルベサルタン(AVAPRO(商品名)として市販されている)、エプロサルタン(TEVETEN(商品名)として市販されている)、テルミサルタン(MICARDIS(商品名)として市販されている)及びバルサルタン(DIOVAN(商品名)として市販されている)が含まれる。
【0062】
グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)阻害剤
またはZ部分として有用であり得る化合物の別のクラスはグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)阻害剤である。
【0063】
GSK3は、中枢及び末梢神経系において高度に発現するセリン/スレオニンタンパク質キナーゼである。GSK3がτ,B−カテニン、グリコーゲンシンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ及び延長開始因子2b(elF2b)を含めた幾つかの基質をリン酸化することは公知である。インスリン及び成長因子はGSK3をリン酸化するタンパク質キナーゼBを活性化する。
【0064】
最近の研究は、GSK3活性が脳虚血のような神経変性の細胞及び動物モデルにおいて、または成長因子剥奪後増加していることを示している。Bhatら,PNAS,97:11074−11079(2000))を参照されたい。ニューロンアポトーシスを減らすことは卒中の重要な治療目的であり、よってGSK3のニューロン細胞におけるプロアポトーシス因子としての役割によりGSK3が卒中治療薬の治療標的となる。Frameら,Biochem.J.,359:1−16(2001)を参照されたい。従って、GSK3阻害剤は卒中のような神経変性疾患の治療において使用することができる。
【0065】
p38 MAPキナーゼ阻害剤
またはZ部分として有用であり得る化合物の別のクラスはp38 MAPキナーゼ阻害剤である。
【0066】
p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ経路は各種細胞プロセスを有している。動物研究で、p38 MAPキナーゼ阻害剤が心筋損傷を含めた幾つかの疾患モデルの治療において有効であることが判明している。p38 MAPキナーゼ阻害剤は卒中の治療に使用され得ると考えられている。Leeら,Immunopharmacol.,47:185−201(2000)を参照されたい。好ましいp38 MAPキナーゼ阻害剤は、下記構造式:
【0067】
【化12】

を有するSKB 239063である。
【0068】
トロンボキサンA2−シンターゼ阻害剤
またはZ部分として有用であり得る化合物の別のクラスはトロンボキサンA2−シンターゼ(TXA−2)阻害剤である。
【0069】
TXA2は血小板及び単球細胞から誘導され、血小板活性化因子として作用する。TXA2はまた血管収縮を誘発し、有糸分裂誘発を促進し、平滑筋細胞増殖を刺激する。TXA2の過剰産生が一連の疾患で検出されており、TXA2は血小板凝集及び平滑筋収縮を刺激することにより病的状態に寄与すると考えられている。TXA2生合成の増加はしばしば血小板凝集及び平滑筋収縮の最も強力な阻害剤の1つであるプロスタサイクリン形成の刺激を伴っている。TXA2シンターゼ阻害剤のような抗血小板薬が卒中のリスクを減らすのに有用であることは公知である。Tenderaら,Thrombosis Res.,110(5−6):355−359(2003)を参照されたい。
【0070】
本発明で使用するのに適当なTXA2シンターゼ阻害剤には構造式:
【0071】
【化13】

を有するイスボグレル、構造式:
【0072】
【化14】

を有するオザグレル、構造式:
【0073】
【化15】

を有するリドグレル、及び構造式:
【0074】
【化16】

を有するダゾキシベンが含まれる。
【0075】
スタチン
またはZ部分として有用であり得る化合物の別のクラスは3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素A(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤である。
【0076】
スタチンとして公知のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤はHMG−CoAレダクターゼを競合的に阻害する。これはコレステロールの合成における調節反応である。スタチンはLDL受容体活性をアップレギュレートし、LDLの循環への侵入を抑制することにより作用する。スタチンは非脂質低下作用をも有する。例えば、スタチンはeNOSをアップレギュレートし、iNOSを抑制し、脳虚血を伴う炎症性サイトカイン応答を減衰し、脳の虚血性酸化ストレスを緩和し得る。P.Gorelick,Stroke,862−875(2002)を参照されたい。
【0077】
本発明で有用なスタチンの例にはラクトン化またはジヒドロキシ開酸形態のスタチン並びにその医薬的に許容され得る塩及びエステルが含まれ、ロバスタチン(米国特許第4,342,767号明細書参照);シムバスタチン(米国特許第4,444,784号明細書参照);ジヒドロキシ開酸シムバスタチン、特にそのアンモニウムまたはカルシウム塩;プラバスタチン、特にそのナトリウム塩(米国特許第4,346,227号明細書参照);フルバスタチン、特にそのナトリウム塩(米国特許第5,354,772号明細書参照);アトルバスタチン、特にそのカルシウム塩(米国特許第5,273,995号明細書参照);NK−104とも称されるニスバスタチン(国際特許出願公開第97/23200号パンフレット参照);及びロスバスタチン(米国特許第5,260,440号明細書参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
好ましいスタチンは構造式:
【0079】
【化17】

を有するシムバスタチンである。
【0080】
神経保護物質
またはZ部分として有用であり得る化合物の別のクラスは脳組織を損傷から保護するように作用する神経保護物質であり、広範囲の物質である。神経保護物質の例にはフリーラジカルスカベンジャー、カルシウムチャネルブロッカー、興奮性アミノ酸アンタゴニスト、成長因子及び酸化防止剤が含まれる。
【0081】
神経保護物質の1クラスが酸化防止剤である。酸化防止剤を多く含む食事は心血管疾患のリスクを低下させることが判明している。酸化防止剤はLDL−Cの酸化を防止するのに役立ち、これにより内皮損傷を抑制し得る。よって、酸化防止剤は卒中の治療に有用であり得る。P.Gorelick,Stroke,862−875(2002)を参照されたい。
【0082】
本発明において使用するのに好ましい酸化防止剤は構造式:
【0083】
【化18】

を有するエダラボンである。
【0084】
フリーラジカルスカベンジャーであるエダラボンはインビトロで脂質過酸化及び血管内皮細胞傷害を抑制することが判明している。ラット卒中モデルで、エダラボンが脳浮腫、脳梗塞、神経学的症状及び遅延ニューロン死の発生を抑制することが判明している。Kogureら,Life Scieinces,72(4−5):575−581(2002)を参照されたい。
【0085】
本発明において潜在的に有用であり得る他の酸化防止剤にはビタミンC、ビタミンE、構造式:
【0086】
【化19】

を有するTROLOX(商品名)(6−ヒドロキシ−2,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸)、構造式:
【0087】
【化20】

を有するシチコリン、構造式:
【0088】
【化21】

を有するミノシクリン、構造式:
【0089】
【化22】

を有するグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)ミミックBXT−51072である。
【0090】
神経保護物質の別のクラスはNMDA受容体アンタゴニストである。N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体は神経変性疾患に関与するシナプス後受容体である。NMDA受容体はグルタメートにより刺激され、過剰のグルタミン作動性伝達または興奮毒性が神経変性を生ずるという証拠が示されている。よって、NMDA受容体アンタゴニストは神経変性の治療に潜在的に有効であり、公知の神経保護剤である。Bhardwajら,Indian J.Pharmacol.,35:326−327(2003)を参照されたい。NMDA受容体アンタゴニストが急性虚血の治療に有効であり得ると仮定されている。Parsonsら,Neuropharmacol.,38(6):735−767(1999)を参照されたい。本発明で使用するのに好ましい1つのNMDA受容体アンタゴニストは構造式:
【0091】
【化23】

を有するメマンチンである。他の好ましいNMDAアンタゴニストは構造式:
【0092】
【化24】

を有するデキサナビノール、及び構造式:
【0093】
【化25】

を有するトラキソプロジルである。
【0094】
NMDA受容体はサブユニットのヘテロマーアセンブリであり、このうちNR1及びNR2と称される2つの主要サブユニットファミリーがクローン化されている。また、NR2サブユニットファミリーは4つの別個のサブユニットタイプ、すなわちNR2A、NR2B、NR2C及びNR2Dに分割される。T.Ishiiら,J.Biol.Chem.,268:2836−2843(1993)及びD.J.Laurieら,Mol.Brain Res.,51:23−32(1997)は、各種組み合わせにより生理学的及び薬理学的特性(例えば、イオンゲーティング特性、マグネシウム感度、薬理学的プロフィール)並びに解剖学的分布の異なる各種NMDA受容体が生ずることを記載している。NR2Bサブユニットは卒中を含めた各種CNS疾患に対する治療標的として同定された。Chazot,Curr.Med.Chem.,11(3):389−396(2004)を参照されたい。
【0095】
好ましいNR2Bアンタゴニストは構造式
【0096】
【化26】

を有するトラキソプロジルである。
【0097】
本発明において有用な神経保護物質の別のクラスはナトリウムまたはカルシウムチャネルブロッカーである。
【0098】
ナトリウム及びカルシウムチャネルのような電位依存性イオンチャネルにより、電気的に興奮性の細胞は活動電位を発生させ、伝播させ、よって神経及び筋肉機能にとって重大である。ナトリウムチャネルは、活動電位の上昇期を構成し、電位依存性カルシウム及びナトリウムチャネルを活性化する迅速脱分極を媒介する。
【0099】
ナトリウムチャネルは、神経毒、抗不整脈薬、鎮痙薬や局所麻酔薬を含めた各種医薬物質の標的である。動物モデルからの証拠で、ナトリウムチャネルブロッカーが卒中または神経外傷に起因する虚血状態での神経保護のためにも有用であることが示唆されている。Lyskoら,Stroke,25:2476−2482(1994);Aokiら,JPET,29(6):306−311(2001)を参照されたい。
【0100】
ナトリウムチャネルブロッカーの例は構造式
【0101】
【化27】

を有するクロベネチンである。
【0102】
神経保護物質の別のクラスは5−HT1Aアゴニストである。5−HT1A受容体は、虚血性卒中からのニューロン損傷を受ける海馬や大脳皮質を含めた脳の領域で高度に発現する。5−HT1Aアゴニストがラットにおいて神経保護効果を有することが立証されており、卒中の治療において有効であり得る。Semkovaら,Eur.J.Pharmacol.,359(2−3):251−260(1998)を参照されたい。
【0103】
5HT1Aアゴニストの例は構造式:
【0104】
【化28】

を有するレピノタン、及び構造式:
【0105】
【化29】

を有するSUN−N4057である。
【0106】
β−アドレナリン遮断薬
またはZ部分として有用であり得る化合物の別のクラスはβ−アドレナリン遮断薬である。
【0107】
β−アドレナリン遮断薬(β−遮断薬としても公知)は高血圧症、心不整脈及び狭心症の治療の際に通常使用されている薬物である。β−遮断薬は、ノルエピネフリンとエピネフリンの相互作用を調節するアドレナリン受容体であるβ−アドレナリン受容体をブロックすることにより作用する。本発明において使用されるβ−アドレナリン遮断薬の例にはプロパノロール、ナドロール、チモロール、ピンドロール、ラベタロール、メトプロロール、アテノロール、エスモロール及びアセブトロールが含まれる。好ましいβ−アドレナリン遮断薬は構造式:
【0108】
【化30】

を有するアテロールである。
【0109】
血小板フィブリノーゲン受容体(GPIIb/IIIa)アンタゴニスト
またはZ部分として有用であり得る化合物の別のクラスは糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤である。
【0110】
糖タンパク質IIb/IIIa(GPIlb/IIIa)は血液の凝集を調節するダイマー受容体である。GPIlb/IIIa受容体はフィブリノーゲンに対する受容体として作用し、血小板を固定し、血小板凝集を減らす。GPIlb/IIIa受容体の役割を抑制する化合物は抗血栓薬であり、よって卒中の治療に有用である。本発明で使用するための血小板フィブリノーゲン受容体アンタゴニストの例にはアブシキマス(REOPRO(商品名)として市販されている)、エプチフィバチド(INTEGRILIN(商品名)として市販されている)、チロフィバン(AGGRASTA(商品名)として市販されている)及びラリフィバンが含まれる。構造式:
【0111】
【化31】

を有するチロフィバン、及び構造式:
【0112】
【化32】

を有するラミフィバンが好ましい。
【0113】
卒中を治療するのに有効であり得、ZまたはZ部分として有用であり得る他の神経薬理学的に活性な化合物は、血管拡張剤、例えば構造式:
【0114】
【化33】

を有するシクランデレート;降圧薬、例えば構造式:
【0115】
【化34】

を有するエナラプリル;抗血栓薬、例えば構造式:
【0116】
【化35】

を有する
アルガトロバン、構造式:
【0117】
【化36】

を有するガベスチネル、バルプロン酸(2−プロピルペンタノン酸)、4−フェニル酪酸ナトリウム、ウリジン及びリチウムイオンである。
【0118】
有利な物性を付与する部分
式(II)を有する化合物の1実施態様では、Z基は式(II)を有するプロドラッグ化合物に対して有利な物性を付与する部分である。1実施態様では、有利な物性は水性媒体中での高い溶解度である。別の実施態様では、有利な物性は水性媒体中での高い安定性である。
【0119】
水性媒体中での高い溶解度を与え得る1つの部分は第4級アンモニウム基、例えば式(IV)
【0120】
【化37】

(式中、R10、R11及びR12は各々アルキル基(好ましくは、C1−10アルキル)であり、これらはヒドロキシで置換されていてもよい。)
を有する化合物の基である。好ましい第4級アンモニウム基は構造式:
【0121】
【化38】

を有するコリンである。
【0122】
分子に溶解度を付与し得る他の好ましい基にはホスフェート基、例えば下式(V):
【0123】
【化39】

[式中、XはM、MHまたはMH(ここで、MはNa、K、Caのような金属、またはNHのようなカチオンである。)である。]
を有する基が含まれる。本発明において有用なホスフェート基にはジホスフェートが含まれる。
【0124】
分子に対して溶解度を付与し得る他の好ましい基にはアミン塩、例えば下式(VI):
【0125】
【化40】

(式中、R13、R14及びR15は水素、アルキル、アルケニルまたはアルキル−アリールであり、Xはハロゲンのようなアニオンである。)
を有する基が含まれる。好ましいR13、R14及びR15基はC1−10アルキル、C2−10アルケニル及びC1−4アルキル−C6−10アリールである。
【0126】
溶解度を付与し得る他の好ましい基にはスルホン酸、例えば下式(VII):
【0127】
【化41】

(式中、R16はアルキル、アルケニルまたはアルキル−アリールである。)
を有するスルホン酸が含まれる。好ましいR16基はCl−10アルキル、C2−10アルケニル及びC1−4アルキル−C6−10アリールである。
【0128】
本発明化合物の合成
本発明の式(I)及び(II)を有する化合物は、カルボン酸官能基中の(2R)−2−プロピルオクタン酸をZ基に結合することにより形成され得る。また、式(II)を有する化合物中の各種Z及びZ基が当業者に公知の有機合成方法に従って結合され得る。例えば、Z及びZは特定分子中に存在する官能基を用いる一般的方法により結合され得る。よって、合成分野の化学者は酸官能基を用いる一般的化学的方法を使用し得る。例えば、カルボン酸部分を有するZ基はアニオンを形成するように水素を除去することにより結びつけられ得、その後エステル結合が形成されるようにZ基上の適当な官能基と反応させられる。
【0129】
カルボン酸官能基を有する適当な基にはCOX−2阻害剤、例えば式(III)を有する化合物;ATIIタイプ1受容体アンタゴニスト、例えばカンデサルタン、エプロサルタン、テルミサルタン及びバルサルタン;TXA2阻害剤、例えばイスボグレル、オザグレル、リドグレル及びダゾキシベン;スタチン、例えばプラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン及びニスバスタチン;酸化防止剤、例えばTROLOX(登録商標);GPIIb/IIIaアンタゴニスト、例えばチロフィバン及びラミフィバン;並びにその他の化合物、例えばエナラプリル及びバルプロン酸が含まれる。好ましいカルボン酸含有基には式(III)を有する化合物、TROLOX(登録商標)、バルプロエート、4−フェニル酪酸ナトリウム、カンデサルタン及びダゾキシベンが含まれる。
【0130】
第2の実施態様では、利用可能なヒドロキシ官能基を含有する適当なZまたはZ基は酸素アニオンが形成されるようにヒドロキシ基から水素を除去することにより結びつけられ得る。次いで、アニオンを標準化学を用いて第2の基に結合すると、エーテルまたはエステル結合が形成される。
【0131】
例えば、以下に示すように、ヒドロキシ基を有するZ誘導体はアニオンが形成されるように水素原子を除去することにより結びつけられ、その後アニオンをZ基上の適当な官能基と反応させると本発明の単一化合物が形成される。
【0132】
【化42】

【0133】
ヒドロキシ官能基を有する適当な群にはCOX−2阻害剤、例えばメロキシカム;ATIIタイプ1受容体アンタゴニスト、例えばロサルタン;p38 MAPキナーゼ阻害剤、例えばSKB 239063;スタチン、例えばシムバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン及びニスバスタチン;酸化防止剤、例えばエダラボン、シチコリン、ミノシクリン、ビタミンC及びTROLOX(商品名);β−アドレナリン作動性アンタゴニスト、例えばアテロール;NMDA受容体アンタゴニスト、例えばデキサナビノール;GPIIIb/IIIaアンタゴニスト、例えばラミフィバン;並びに他の化合物、例えばシクランデレート及びウリジンが含まれる。好ましいヒドロキシ含有基にはデキサナビノール、ミノシクリン、シチコリン、エダラボン、SKB 239063、ウリジン及びビタミンCが含まれる。
【0134】
及びZ基を結合する別の方法では、合成の当業者はアミン官能基で化合物を結合するための標準化学方法を使用し得る。例えば、アミン基を有するZ誘導体はアニオンが形成されるように水素を除去することにより結びつけられ、その後アニオンをZ基上の適当な官能基と反応させるとアミノ結合を有する単一化合物が形成される。
【0135】
【化43】

上記式中、R及びRは水素または炭化水素部分であり、またはR及びRはこれらが結合している窒素原子と一緒になって環状基を形成する。
【0136】
アミン官能基を有する基の例にはCOX−2阻害剤、例えばセレコキシブ;NOS阻害剤、例えば1400W94;rhoキナーゼ阻害剤、例えばファスジル;酸化防止剤、例えばシチコリン及びミノシクリン;β−遮断薬、例えばアテロール;NMDA受容体アンタゴニスト、例えばメマンチン;並びに他の化合物、例えばアルガトロバンが含まれる。好ましいアミン官能基を有する群には140OW及びファスジルが含まれる。
【0137】
本発明が式(III)を有する化合物に関する場合、その本発明の化合物は下記方法に従って製造され得る。
【0138】
方法A:
【0139】
【化44】

【0140】
上に示したように、方法Aに従って、適切に置換されているアリールブロモメチルケトンを溶媒(例えば、アセトニトリル)中塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下で適切に置換されているアリール酢酸と反応させ、次いで1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)で処理して、ラントンを得る。
【0141】
方法B:
【0142】
【化45】

【0143】
上に示したように、方法Bに従って、アセチレンを適当な触媒の存在下で一酸化炭素及び水と反応させることにより及びその異性体1’の混合物が得られ得る。これらの異性体は当業界で標準的な手順(例えば、クロマトグラフィーまたは結晶化)により分離される。有用な触媒及び条件の例は水性HCl及びEtOH中PdCl、50〜150℃及び50〜150気圧で加熱;または50〜150℃及び20〜300気圧でトリアルキルアミンを含有する水性THF(または、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、EtOH、McOH)中Rh(CO)12(または、Rh(CO)16)である。Takahashiら,Organometallics,10:2493−2498(1991);及びTsujiら,J.Am.Chem.Soc.,88:1289−1292(1966)を参照されたい。
【0144】
方法C:
【0145】
【化46】

【0146】
上記の方法Cに記載されている別の合成方法では、に銅塩の存在下で4−メチルチオフェニル有機金属試薬を1,4−付加し、生じたエノレートを塩化トリアルキルシリル(例えば、TMSClまたはTIPSCl)でトラッピングすると、ケテンアセタールが生ずる。次いで、このケテンアセタールをMeOH中で触媒量のPd(OAc)及びCu(OAc)、Oを用いるItoの方法により、またはPhIO/TMSN及びBuNFを用いるMagnusの方法により置換ブテノリドに酸化し得る。をピリジンの存在下で1で処理することによりヨウ素が導入されると、が生じ得る。を適切なアリールパートナー(例えば、ボロン酸)とパラジウム触媒の存在下でSuzukiまたはStilleカップリングすると、ブテノリドが生ずる。このスルフィドを各種酸化剤(例えば、過酸、MPPM、MMPPまたはH)によりスルホンに酸化すると、所望化合物Iaが得られ得る。Y.Itoら,J.Am.Chem.Soc.,101:494の脚注2(1979)及びP.Magnusら,Tet.Lett.,2933(1992)を参照されたい。
【0147】
方法D:
【0148】
【化47】


【0149】
方法Dはジアリールフラノンを製造する合成方法を記載している。例えば、無水2,3−ジフェニルマレイン酸12は、フェニル酢酸10を環流無水酢酸中でα−オキソフェニル酢酸11(好ましくは、そのカリウム塩)と反応させるFields(J.Org.Chem.,55:5165−70(1990);米国特許第4,596,867号明細書)の方法により製造され得る。
【0150】
フェニルアセトニトリル(例えば、13及び14)からの12の多ステップシーケンスはSmithら,J.Org.Chem.,55:3351−62(1990)に記載されている。
【0151】
Floracら(Tetrahedron,46:445−52(1990)は、α−ブロモフェニルアセトヒドラジド15及び16からの複数ステップでの12の別の合成を記載している。
【0152】
方法E:
【0153】
【化48】


【0154】
方法Eに上記されているように、ラクトンを適当な溶媒(例えば、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフランまたはエーテル)中適当な還元剤(例えば、水素化ジイソブチルアルミニウムまたは水素化アルミニウムリチウム)を用いて対応のジオール17に還元し得る。このジオール17を塩基(例えば、ピリジン、トリエチルアミンまたは水性水酸化ナトリウム)の存在下で無水物または酸クロリドを用いてアシル化すると、所望の異性体18a及び所望でない異性体18bが形成する。異性体18a及び18bはクロマトグラフィーまたは結晶化により分離され得る。化合物18aは試薬(例えば、二酸化マンガンまたはデス・マーチン・ペルヨージナン)によりアルデヒド19に酸化され得る。次いで、アルデヒド19はCr6+試薬、NaClOまたは他の適当な酸化剤を用いて酸20に酸化され得る。20を塩基処理すると塩21が生ずる。
【0155】
(2R)−2−プロピルオクタン酸を20の遊離カルボン酸に付加し得る。医薬的に活性なZ化合物が遊離アルコール(ROH)を含んでいるならば、適当なカップリング条件(例えば、トリフェニホスフィン/アゾジカルボキン酸ジイソプロピルまたはHATU/NMM)を用いてエステル結合を介して20に付加すると、22が生じ得る。医薬的に活性なZ化合物が遊離アミン(RNH)を含んでいるならば、適当なカップリング条件(例えば、HATU/NMM)を用いてアミド結合を介して20に付加させ得る。
【0156】
方法F:
【0157】
【化49】


【0158】
方法Fに上記されているように、ラントンを適当な溶媒(例えば、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフランまたはエーテル)中で適当な還元剤(例えば、水素化ジイソブチルアルミニウムまたは水素化アルミニウムリチウム)を用いて対応のジオール17に還元し得る。ジオール17を塩基の存在下で塩化シリルを用いてシリル化すると、所望の異性体24a及び所望でない異性体24bが形成される。異性体24a及び24bはクロマトグラフィーまたは結晶化により分離され得る。次いで、アルコール24aを適当なカップリング条件(例えば、HATU/NMM)下でカルボン酸(RCOH)とカップリングさせると、エステル25が生じ得る。その後、シリルエーテルをフロリドを用いて脱保護すると遊離アルコール26が生じ、これをCr6+試薬、デス・マーチン・ペルヨージナン/NaClOまたは他の適当な酸化剤を用いて酸化すると酸27が生ずる。エステル28は、27を適当なカップリング条件(例えば、トリフェニルホスフィン/アゾジカルボン酸ジイソプロピルまたはHATU/NMM)下でハロゲン化アルキル(RX)またはアミノ酸含有アルコール(ROH)と反応させることにより製造され得る。或いは、塩29は酸27を適当な塩基と反応させることにより製造され得る。アミド30は、27を適当なカップリング条件(例えば、HATU/NMM)の存在下でアミンと反応させることにより製造され得る。
【0159】
方法G:
【0160】
【化50】

【0161】
ジオールを得る代替方法が、無水ジフェニルマレイン酸31を適当な水素化物還元剤(例えば、水素化ジイソブチルアルミニウムまたは水素化アルミニウムリチウム)を用いてジオール32に還元し得る方法Gに説明されている。還元のために溶媒(例えば、トルエン、テトラヒドロフランまたはエーテル、或いはその混合物)が適当である。
【0162】
本発明化合物は少なくとも1つの不斉中心を有し得る。分子上の各種置換基の種類に応じて追加の不斉中心が存在し得る。不斉中心を有する化合物によりエナンチオマー(光学異性体)及び/またはジアステレオマー(立体配置異性体)が生じ、混合物形態及び純粋または部分的に精製されている化合物としてのエナンチオマー及びジアステレオマーの考えられるすべての異性体が本発明の範囲に含まれると意図される。本発明は、前記化合物の異性体形態すべてを包含することを意味する。
【0163】
エナンチオマーまたはジアステレオマーに富む化合物の独立合成またはそのクロマトグラフ分離は本明細書に開示されている方法を適当に修飾することにより当業界で公知のように達成され得る。絶対立体化学は、結晶性生成物または所要により公知の絶対配置を有する不斉中心を含有する試薬を用いて誘導体化される結晶性中間体をX線結晶学により決定され得る。
【0164】
所望により、各エナンチオマーが単離されるように化合物のラセミ混合物は分離され得る。分離は当業界で公知の方法により、例えばジアステレオマー混合物を形成すべく化合物のラセミ混合物をエナンチオマー的に純粋な化合物にカップリングさせた後標準方法(例えば、分別結晶またはクロマトグラフィー)により各ジアステレオマーに分離することにより実施され得る。カップリング反応はしばしばエナンチオマー的に純粋な酸または塩基を用いる塩の形成である。次いで、ジアステレオマー誘導体は付加キラル残基を開裂することにより純粋なエナンチオマーに変換され得る。化合物のラセミ混合物は、当業界で公知のキラル固定相を用いるクロマトグラフ法により直接分離することもできる。
【0165】
或いは、化合物のエナンチオマーは公知の立体配置を有する光学的に純粋な材料または試薬を用いて当業界で公知の方法による立体選択的合成により得られ得る。
【0166】
医薬組成物及び投与方法
本発明化合物は、典型的には医薬組成物中の活性成分として、投与の意図する剤形及び一般的な医薬プラクティスとの整合にてらして適当に選択される適当な医薬用希釈剤、賦形剤または担体(本明細書中、まとめて「担体」材料と称する)と混合して投与される。
【0167】
本明細書中で使用されている用語「組成物」は、特定成分を所定量または割合で含む製品及び特定量の特定成分の組合せから直接または間接的に生ずる製品を包含すると意図される。医薬組成物に関連して、この用語は1つ以上の活性成分及び任意の不活性成分からなる担体を含む製品;及び2つ以上の成分の組合せ、複合体化または凝集から、1つ以上の成分の解離から、または1つ以上の成分の他のタイプの反応または相互作用から直接または間接的に生ずる製品を包含すると意図される。通常、医薬組成物は活性成分を液体担体及び/または微細担体と均一且つ均密に混合し、その後所要により生成物を所望製剤に成形することにより製造される。活性化合物は医薬組成物中に疾患のプロセスまたは状態に所望の効果を与えるのに十分な量配合される。従って、本発明の医薬組成物は本発明化合物を医薬的に許容され得る担体と混合することにより作成される組成物を包含する。
【0168】
例えば、錠剤またはカプセル剤の形態で経口投与する場合、活性な薬物成分を経口用非毒性の医薬的に許容され得る不活性担体(例えば、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸ジカルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール等)と組み合わされ得る。液体剤形で経口投与する場合、経口用薬物成分は経口用非毒性の医薬的に許容され得る不活性担体(例えば、エタノール、グリセロール、水等)と組み合わされ得る。更に、所望または所要により、適当な結合剤、滑沢剤、崩壊剤及び着色剤を混合物中に配合してもよい。適当な結合剤にはデンプン、ゼラチン、天然糖(例えば、グルコースまたはβ−ラクトース)、コーン甘味料、天然及び合成ガム(例えば、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス等が含まれる。
【0169】
錠剤は、活性成分を錠剤の製造に適している非毒性の医薬的に許容され得る賦形剤と混合して含有し得る。前記賦形剤の例は不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;顆粒化及び崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアカシア;滑沢剤、例えば;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。錠剤にコーティングが被されていなくても、錠剤に胃腸管での崩壊及び吸収を遅らせて長期間にわたり持続作用が得られるように公知技術によりコーティングを被せてもよい。
【0170】
経口用組成物は、活性成分が不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合されてなる硬ゼラチンカプセル剤、または活性成分が水または油性媒体(例えば、落花生油、流動パラフィンまたはオリーブ油)と混合されてなる軟ゼラチンカプセル剤として提供され得る。
【0171】
他の医薬組成物には活性成分が水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合して含有されている水性懸濁液が含まれる。更に、油性懸濁液は活性成分を植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油またはヤシ油)または鉱油(例えば、流動パラフィン)中に懸濁させることにより製剤化され得る。油性懸濁液が各種賦形剤を含有していてもよい。本発明の医薬組成物は、賦形剤(例えば、甘味料及び着香料)を含有していてもよい水中油型エマルジョン形態をとり得る。
【0172】
医薬組成物は、公知技術に従って製剤化され得る滅菌注射可能な水性または油性懸濁液の形態をとり得、または薬物の直腸内投与のための座剤の形態で投与され得る。
【0173】
化合物はまた、適当な鼻腔内ビヒクルを局所使用して鼻腔内剤形で投与するかまたは当業者に公知の経皮パッチの剤形を用いて経皮ルートを介して投与され得る。経皮デリバリーシステムの形態で投与する場合、用量投与は勿論投与中間断的よりもむしろ連続的である。
【0174】
本発明化合物を活性成分が徐放されるように製剤化され得るデポ注射剤またはインプラント製剤の形態で投与してもよい。活性成分をペレットまたは小円筒に圧縮し、デポ注射剤またはインプラントとして皮下または筋肉内に移植することができる。インプラントは不活性材料(例えば、生分解性ポリマーまたは合成シリコーン)を用い得る。
【0175】
本発明化合物をリポソームデリバリーシステム(例えば、単ラメラ小胞、大単ラメラ小胞及び多重ラメラ小胞)の形態で投与してもよい。リポソームは各種リン脂質(例えば、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリン)から形成され得る。
【0176】
本発明化合物を、該化合物分子をカップリングさせる各担体としてモノクローナル抗体を用いて送達してもよい。前記化合物を標的可能な薬物担体としての可溶性ポリマーと結合させてもよい。
【0177】
本発明はまた、本発明化合物の治療上有効な静脈内製剤にも関し、前記製剤は安定で且つヒト血液と等張性の溶液である。好ましくは、静脈内製剤がプラスチックまたはガラス容器中に包装されており、政府の概要(米国の米国薬局方)微粒子基準に適合し、卒中の治療のための有効治療法として使用され得る。
【0178】
静脈内製剤は、該製剤のpHを所望範囲内に維持し得る緩衝剤を含有していてもよい。緩衝剤がガラス容器から浸出する金属イオンを溶解状態に維持するための錯体化剤として作用することも好ましい。低pHを維持し、金属イオンを錯体化化する2つの効果により金属イオンが沈澱するのが防止され、静脈内製剤を許容できる粒状プロフィールで貯蔵及びその後の使用の間維持し得る。
【0179】
本発明の静脈内用医薬製剤は通常、卒中を治療するのに治療有効量の本発明化合物に加えて1つ以上の医薬的に許容され得る賦形剤を含む。前記組成物を液体不活性担体(例えば、水)と一緒に作成することが有利である。適当な液体賦形剤/担体は注射用水(米国薬局方)及び食塩水である。溶液は発熱物質を含有していてはならず、粒子状物質が存在していてはならない。IV流体中に存在し得る粒子状物質(すなわち、気泡以外の外来性移動性不溶性物質)の量の限界が米国薬局方で規定されている。
【0180】
他の適当な賦形剤及び他の添加剤には溶媒、例えばエタノール、グリセロール、プロピレングリコール及びその混合物;安定化剤、例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、クエン酸及びその混合物;抗菌性保存剤、例えばベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン及びその混合物;緩衝剤、例えばクエン酸/クエン酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸水素ナトリウム、酢酸/酢酸ナトリウム、マレイン酸/マレイン酸ナトリウム、フタル酸水素ナトリウム、リン酸/リン酸二水素カリウム、リン酸/リン酸水素ジナトリウム及びその混合物;等張化剤、例えば塩化ナトリウム、マンニトール、デキストロース及びその混合物;流体及び栄養補給剤、例えば合成アミノ酸、デキストロース、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、リンガー液及び他の電解質溶液が含まれる。
【0181】
緩衝系は通常弱酸とその可溶性塩の混合物、例えばクエン酸ナトリウム/クエン酸;または二塩基性酸のモノカチオンまたはジカチオン塩、例えば酒石酸水素カリウム、酒石酸水素ナトリウム、リン酸/リン酸二水素カリウム及びリン酸/リン酸水素ジナトリウムである。緩衝系の使用量は所望pH及び本発明化合物の量に依存する。適当な緩衝剤及び製剤のpHの選択は投与しようとする薬物の溶解度に依存するが、当業者により容易になされる。
【0182】
「医薬的に許容され得る」とは、担体、希釈剤または賦形剤が製剤の他の成分と相容性でなければならず、そのレシピエントにとって有害であってはならないことを意味する。
【0183】
本発明化合物を含む組成物は有利には単位量剤形で提供され得、製薬業界で公知の方法により製造され得る。用語「単位量剤形」は、患者または患者に対して薬物を投与する人が全用量が収容されている1つの容器またはパッケージを開けるだけですみ、2つ以上の容器またはパッケージから成分を合わせて混合する必要がないようにすべての活性成分及び不活性成分が適当なシステム中に組み合わされている1回用量を意味する。単位量剤形の典型例は経口投与用錠剤またはカプセル剤、注射用1回量バイアルまたは直腸内投与用座剤である。この単位量剤形のリストは決して限定的と解されず、単に単位量剤形の典型的な例を表しているにすぎない。
【0184】
本発明化合物を含む組成物は活性または不活性成分、担体、希釈剤等であり得る2つ以上の成分に加えて患者または患者に薬物を投与する人が実際の剤形を作成するための説明書が備えられているキットとして提供されるのが好都合であり得る。前記キットには必要なすべての材料及び成分が収容されて提供されても、または患者または患者に薬物を投与する人が独立して得なければならない材料または成分を使用または作成するための説明書が添付されていてもよい。
【0185】
本発明化合物またはその医薬的に許容され得る塩を経口投与するための具体的剤形は1mg、5mg、10mg、30mg、80mg、100mg、150mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg及び750mgを含む。本発明の経口用医薬組成物は約0.5〜1000mgの活性成分、より好ましくは約0.5〜500mgの活性成分、0.5〜250mgの活性成分、または1〜100mgの活性成分を含むを含む製剤の形態で提供され得る。治療のために有用な具体的経口用医薬組成物は約1mg、5mg、10mg、30mg、80mg、100mg、150mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg及び750mgの活性成分を含み得る。
【0186】
しかしながら、特定患者に対する具体的用量レベル及び投与頻度は変更可能であり、使用する特定化合物の活性、該化合物の代謝安定性及び作用時間、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与モード及び時間、排泄率、薬物の組合せ、特定状態の重症度及び治療を受ける宿主を含めた各種要因に依存する。
【0187】
静脈内治療による正確な用量は被験者の年齢、体型、性別及び状態、治療しようとする疾患の種類及び重症度等により変わる。静脈内液体製剤での本発明化合物の有効用量は約1.5〜3000μg/kg体重であり、有用な範囲は約10〜約200μg/kg体重である。2.5〜10mg/人/日を2〜10時間かけて導入することが有用な静脈内投与レジメンである。
【0188】
静脈内製剤は直接静脈内注射、i.v.ボーラスにより投与しても、または適当な注入溶液(例えば、0.9% 塩化ナトリウムの注射または他の適合性注入溶液)に添加することに注入により投与してもよい。
【0189】
本発明化合物は卒中の治療において1つ以上の他の薬物と組み合わせて使用され得、その薬物の組合せは薬物単独よりも安全であるかまたは有効である。加えて、本発明化合物は、本発明化合物の副作用または毒性を治療、予防、緩解またはそのリスクを軽減する1つ以上の他の薬物と組み合わせて使用され得る。前記した他の薬物は該薬物に対して通常使用されているルート及び量で本発明化合物と同時または順次に投与され得る。従って、本発明の医薬組成物には本発明化合物に加えて1つ以上の他の活性成分を含有するものが含まれる。前記した組合せは単位量剤形の配合製剤の一部として、または1つ以上の追加薬物を治療レジメンの一部として別の剤形で投与する治療プロトコルのキットとして投与してもよい。
【0190】
単位量剤形またはキットの形態での本発明化合物と他の薬物の組合せの例には、効果、安全性または便利さを向上させるかまたは本発明化合物の望ましくない副作用または毒性を低下させる受容体または酵素に影響を与える他の薬物または物質との組合せが含まれる。
【0191】
本発明化合物を製造するための幾つかの方法が本明細書中のスキーム及び実施例に記載されている。出発物質は当業界で公知の手順または本明細書中に説明されている手順に従って作成される。下記実施例は本発明が十分に理解されるように提示されている。これらの実施例は単に例示であつて、本発明を限定するものと決して解釈されるべきでない。
【0192】
明細書を通じて以下の略語を使用する:
Me :メチル、
Et :エチル、
iPr :イソプロピル、
t−Bu:tert−ブチル、
Ac :アセテート、
THF :テトラヒドロフラン、
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン、
LDA :リチウムジイソプロピルアミド、
DMI :1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、
DMF :N,N−ジメチルホルムアミド、
DME :ジメトキシエタン、
TBAH:ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム、
DCC :ジシクロヘキシルカルボジイミド、
TLC :薄層クロマトグラフィー、
HPLC:高速液体クロマトグラフィー。
【0193】
実施例1
(2R)−2−プロピルオクタン酸リチウム
【0194】
【化51】

【0195】
(Bull.Chem.Soc.Japan,73:423−428(2000)及び米国特許第6,608,221号明細書に教示されているように合成した)(R)−2−プロピルオクタン酸(0.10g,0.54ミリモルl)をEtOH(1mL)中に溶解した。水性LiOH(1.0N,0.55mL,0.55ミリモル)を添加し、溶液を30分間攪拌した。混合物を減圧下で濃縮した。残渣を少量の水に溶解し、一晩凍結乾燥して、生成物(実施例1)を白色固体として得た。H−NMR(DO,500MHz)δ 2.41−2.37(m,1H),1.64−1.41(m,14H),1.08−1.03(m,6H)。MS(ESI) 185.2(M−H)。
【0196】
光学純度を測定するために対応のフェナシルエステル(実施例2)を製造した。
【0197】
実施例2
(2R)−2−プロピルオクタン酸2−オキソ−2−フェニルエチル
【0198】
【化52】

【0199】
(R)−2−プロピルオクタン酸(0.05g,0.268ミリモル)をCHC1(5mL)中に溶解した。トリエチルアミン(50μL,0.359ミリモル)及び2−ブロモアセトフェノン(0.06g,0.300)を添加し、反応物を室温で5時間攪拌した。TLCでSMが観察されなくなったら、反応混合物を減圧下で濃縮して、すべてのトリエチルアミンを除去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜10% EtOAc:ヘキサン)により精製して、生成物(実施例2)を得た。HPLC[Chiralcel OJ−RH 4.6×150mm;CHCN/HO=60/40;流速=1mL/分;検出=244nm;保持時間=10.7分(S)及び11.9分(R)]により測定して、Eeは>98.5%であった。H−NMR(CDCl,500MHz)δ 7.91(d,2H),7.61−7.57(m,1H),7.48(t,2H),5.32(s,2H),2.55−2.50(m,1H),1.72−1.68(m,2H),1.52−1.48(m,2H),1.47−1.27(m,10H),0.93(t,3H),0.88(t,3H)。
【0200】
実施例3
(2Z)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−4−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}ブタ−2−エン酸
【0201】
【化53】

【0202】
中間体3A:(2Z)−4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]ブタ−2−エン−オール
【0203】
【化54】

【0204】
米国特許第5,849,943号明細書(実施例10)に記載されているように合成される(Z)−2−(4−メチルスルホニル)フェニル)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−ブテン−1,4−ジオール(5.0g,14.12ミリモル)をCHC1(100mL)中に溶解した。tert−ブチルジメチルシリルクロリド(2.11g,0.014モル)及びトリエチルアミン(1.96mL,0.014モル)を添加し、反応物を室温で一晩攪拌した。反応混合物をシリカゲルに吸着させ、シリカゲルクロマトグラフィー(25〜50% EtOAc:ヘキサン)により精製して、中間体3Aを白色粉末として得た。H−NMR(CDCl,500MHz)δ 7.74(d,2H),7.27(d,2H),6.96−6.89(m,1H),6.85−6.80(m,1H),6.68−6.64(m,1H),4.60(s,2H),4.55(d,2H),3.08(s,3H),2.65(t,1H),0.89(s,9H),0.03(s,6.H)。
【0205】
中間体3B:(2R)−2−プロピルオクタン酸(2Z)−4−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]ブタ−2−エン−1−イル
【0206】
【化55】

【0207】
中間体3A(1.0g,2.10ミリモル)をCHCl(50mL)中に溶解した。(R)−2−プロピルオクタン酸(0.40g,2.10ミリモル)、DCC(0.48g,2.33ミリモル)及びDMAP(0.03g,0.21ミリモル)を添加し、反応物を室温で3時間攪拌した。TLCで判断して出発物質が消失したら、水を添加し、水性層をCHClで3回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜20% EtOAc:ヘキサン)により精製して、中間体3Bを無色油状物として得た。H−NMR(CDCl,500MHz)δ 7.72(d,2H),7.22(d,2H),6.93−6.83(m,2H),6.68−6.64(m,1H),5.10(d,2H),4.60(s,2H),2.99(s,3H),2.29−2.24(m,1H),1.46−1.09(m,14H),0.89−0.78(m,15H),−0.01(s,6H)。
【0208】
中間体3C:(2R)−2−プロピルオクタン酸(2Z)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]ブタ−2−エン−1−イル
【0209】
【化56】

【0210】
中間体3B(0.80g,1.25ミリモル)をTHF(15mL)中に溶解し、0℃に冷却した。HF−ピリジン(1.0mL,6.25ミリモル)を滴下し、反応混合物を室温で2時間攪拌した。TLCで判断して出発物質が消失したら、水性NaHCO(飽和)を滴下することにより溶液を塩基性とした。水性層をEtOAcで3回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(0〜50% EtOAc:ヘキサン)により精製して、中間体3Cを無色油状物として得た。H−NMR(CDCl,500MHz)δ 7.74(d,2H),7.22(d,2H),6.99−6.88(m,2H),6.78−6.74(m,1H),5.20(s,2H),4.62(d,2H),3.07(t,1H),3.00(s,3H),2.26−2.22(m,1H),1.44−1.10(m,14H),0.86(t,3H),0.79(t,3H)。
【0211】
実施例3
(2Z)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−4−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}ブタ−2−エン酸
中間体3C(0.65g,1.24ミリモル)をCHC1(30mL)中に溶解した。デス・マーチン・ペルヨージナン(0.66g,1.55ミリモル)を添加し、反応混合物を室温で1時間攪拌した。水(1mL)を添加し、混合物を室温で更に30分間攪拌した。懸濁液を小さいシリカゲルパッドを介して濾過し、EtOAcで溶離した。濾液を濃縮すると、粗なアルデヒドが生じた。この残渣をTHF:tBuOH(1:1)(20mL)中に溶解した。2−メチル−2−ブテン(5.0mLの2M溶液,10.0ミリモル)を添加した後、NaClO(0.59g,6.53ミリモル)及びNaHPO(1.08g,9.01ミリモル)を水(10mL)中に含む溶液を添加した。TLCでアルデヒドが観察されなくなるまで反応物を1時間攪拌した。EtOAc及びHOを添加し、水性層をEtOAcで3回抽出した。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(10〜75% EtOAc:ヘキサン)により精製して、生成物(実施例3)を粘性油状物として得た。H−NMR(CDCl,500MHz)δ 7.78(d,2H),7.27(d,2H),6.97−6.91(m,2H),6.78−6.75(m,1H),5.37−5.28(m,2H),3.00(s,3H),2.21−2.17(m,1H),1.39−1.00(m,14H),0.85(t,3H),0.75(t,3H)。MS(ESI) 535.0(M−H)。
【0212】
実施例4
臭化2−[((2Z)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−4−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}ブタ−2−エノイル)オキシ]−N,N,N−トリメチルエタナミニウム
【0213】
【化57】

【0214】
実施例3(0.25g,0.47ミリモル)をDMF(5mL)中に溶解した。臭化(2−ブロモエチル)トリメチルアンモニウム(0.29g,1.16ミリモル)及びKCO(0.13g,0.96ミリモル)を添加し、反応混合物を室温で72時間撹拌した。DMF溶液をKCO固体からピペットで移し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(1〜20% MeOH:CHC1)により精製して、実施例7をオフホワイト色残渣として得た。生成物を最小のHO中に溶解し、一晩凍結乾燥して、生成物(実施例4)を白色固体として得た。H−NMR(MeOD,500MHz)δ 7.80(d,2H),7.38(d,2H),7.13−7.07(m,2H),6.92−6.88(m,1H),5.49(s,2H),4.70−4.68(m,2H),3.74−3.71(m,2H),3.06(s,9H),3.05(s,3H),2.17−2.14(m,1H),1.34−1.00(m,14H),0.88(t,3H),0.76(t,3H)。MS(ESI) 624.15(M+H)。
【0215】
実施例5
5−({1−[(2R)−2−プロピルオクタノイル]アゼパン−4−イル}スルホニル)キノリン
【0216】
【化58】

【0217】
(R)−2−プロピルオクタン酸(100mg,0.48ミリモル)をDMF(1mL)中に溶解した。HATU(201mg,0.53ミリモル)及びNMM(64μL,0.58ミリモル)を添加し、溶液を5分間撹拌した。ファスジル(154mg,0.53ミリモル)を添加し、溶液を室温で2時間撹拌した。反応物をTFA(48μL,0.63ミリモル)及びMeOH(1mL)でクエンチし、分取HPLC(50〜100% ACN/水)により精製して、生成物(実施例5)を白色固体として得た。H−NMR(CDCl,500MHz)δ 9.81(s,1H),8.94(d,1H),8.70(d,1H),8.54−8.60(m,2H),7.98(t,1H),7.28(s,1H),3.71−3.76(m,4H),3.45−3.48(m,4H),2.56−2.58(m,1H),2.04−2.07(m,2H),1.59−1.65(m,2H),1.43−1.44(m,2H),1.26−1.29(m,10H),0.86−0.91(m,6H)。MS(ESI) 460(M+H)。
【0218】
実施例6
(2R)−N−{3−[(エタンイミドイルアミノ)メチル]ベンジル}−2−エチルオクタンアミド
【0219】
【化59】

【0220】
(R)−2−プロピルオクタン酸(100mg,0.48ミリモル)をDMF(1mL)中に溶解した。HATU(201mg,0.53ミリモル)及びNMM(192μL,1.73ミリモル)を添加し、溶液を5分間撹拌した。1400−W(94mg,0.528ミリモル)を添加し、溶液を室温で2時間撹拌した。反応物をTFA(142μL,1.87ミリモル)TFA及びMeOH(1mL)でクエンチし、分取HPLC(5〜100%,ACN/水)により精製して、生成物(実施例6)を白色固体として得た。H−NMR(DMSO−d,500MHz)δ 9.80(s,1H),9.22(s,1H),8.76(s,1H),8.37(t,1H),7.34−7.37(m, 1H),7.22−7.29(m,3H),4.47(d,2H),4.42(d,2H),2.18−2.24(m,4H),1.46−1.50(m,2H),1.20−1.31(m,12H),0.84−0.87(m,6H)。MS(EST) 346(M+H)。
【0221】
追加の実施例は、式(III)を有する化合物が以下のように
【0222】
【化60】

(R)−2−プロピルオクタン酸に結合している化合物及び(R)−2−プロピルオクタン酸が以下のように
【0223】
【化61】

デキサナビノールに結合している化合物が含まれる。
【0224】
生物活性を測定するためのアッセイ
本発明化合物を以下のアッセイを用いて試験して、生物活性を測定し得る。
【0225】
代表的なラット足浮腫アッセイ
プロトコル:雄Sprague Dawleyラット(150〜200g)を一晩断食させ、朝にビヒクル(1% メトセル)または試験化合物を経口投与する。1時間後、モニターしようとする足域を規定するために永久マーカーを用いて1つの後足のくるぶしの上の高さで線を引く。足容積(V0h)を水置換の原則に基づいてプレチスモメーター(イタリーのUgo−Basile)を用いて測定する。次いで、25ゲージ針を付けたインスリン注射器を用いて動物の足に50μlの1% カラゲニンの食塩溶液(Sigma Chem)を足底下に注射する(すなわち、500gのカラゲニン/足)。3時間後、足容積(V3h)を測定し、足容積の増加(V3h−V0h)を計算する。足浮腫データをビヒクル対照群と比較して、対照群の値を100%として抑制率を計算する。観察者の偏見をなくすためにすべての治療群をコード化する。
【0226】
雄Sprague−Dawleyラットにおけるラット大動脈平滑フリング
ラット大動脈平滑筋輪の作成 − 雄Sprague−Dawleyラット(マサチューセッツ州ウィルミントンに所在のCharles River Laboratories)を高用量5のペントバルビタールナトリウム(80〜100mg/kg)を腹腔内注射することにより安楽死させる。胸部大動脈を迅速に切除し、直ちに加温した(37℃)酸素化(95% O及び5% CO)クレブス緩衝液(ミリモルあたりの組成:NaCl(119),KCl(4.69),CaC1・HO(2.52),MgSO・7HO(0.57),NaHCO(25),NaHPO・HO(1.01)及びグルコース(11.1))を収容しているペトリ皿中に置く。立体解剖顕微鏡下で大動脈を清浄し、付着している脂肪及び結合組織を除く。組織をそれぞれ約2〜3mmの長さの輪セグメントに切断する。
【0227】
各種条件下での組織の弛緩を調べるための実験の場合、ステンレス鋼組織ホルダー及びU型ステンレスワイアを大動脈輪の内腔に挿入する。組織ホルダーは器官槽の底部で輪を固定し、U型ステンレスワイアの端部はFT−202トランスデューサーに接続されるように細い絹糸で縛る。次いで、組織ホルダー及びスチールワイヤを大動脈輪と共に新鮮なクレブス緩衝液を満たした5ml容量の二重ジャケット付き温度調節ガラス器官槽(カリフォルニア州モンロビアに所在のRadnoti Glass Technology,Inc.)中に懸濁させる。95% Oと5% COの混合物を槽の底部の多孔質焼結ディスク中に通す。輪に1.5gの初期休息緊張を与え、プレパラートを初期緊張で約90分間平衡させる。この平衡期間中、浴流体を15分毎に交換し、新鮮な予め加温した(37℃)クレブス緩衝液と置換する。休息時の大動脈筋の等尺性緊張及び各種刺激に対するその応答を、低ノイズETH−400バイオアンプレファィアー(マサチューセッツ州ミルフォードに所在のCB Sciences,Inc.)を用いて初期増幅させた後MacLab 8/Sコンピューターインターフェース(マサチューセッツ州ミルフォードに所在のCB Sciences,Inc.)を介してPower Macintosh 6100コンピューターに記録する。組織細片の収縮応答性を10TM フェニレフリンで確立し、濃度の定常レベルを確立するために細片を薬物と20分間インキュベートする。弛緩効果を試験するために、試験化合物を組織浴中のフェニレフリン予収縮細片に0.1TM〜0.1mMTの累積濃度で添加する。前の濃度で弛緩が30プラトーレベルに達したときその試験化合物の濃度を増加する。
【0228】
ラットの静脈内投与実験
卒中の生化学的カスケードに関与する2つ以上の異なるメカニズムを標的とする成分物質の遊離での本明細書に開示されている化合物のインビボ効果をラットに投与することにより調べた。簡単に説明すると、適当量の化合物(通常、2〜10mg/Kg)を適当なビヒクル(例えば、水、食塩液、PEG 400またはその混合物)中に溶解し、ラットに静脈内投与した。適当な時点でラットから血液を採取し、出発化合物及び/または1つ以上の所望成分物質について分析した。
【0229】
結果 − ラットに本発明化合物を投与すると、ラット血液中に1つ以上の成分物質が検出され、インビボでの成分の遊離を示した。
【0230】
本発明を特定の具体的実施態様を参照して記載乃至説明してきたが、当業者は本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく手順及びプロトコルに各種の改変、変化、修飾、置換、削除または付加を加え得ることを認識するであろう。従って、本発明は請求の範囲に規定されており、請求の範囲は合理的に広く解釈されると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、Zは、遊離したとき、卒中の間に生ずる1つ以上の生化学的事象を調節する部分である。)
を有する化合物。
【請求項2】
がCOX−2阻害剤である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
【化2】

[式中、

(1)−Q−R
(2)3〜8個の環原子を有し、場合によりS、N及びOからなる群から選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する炭素環式基、
(3)−C6−10アリール、及び
(4)ヘテロアリール,
からなる群から選択され、前記した炭素環式基、アリール及びヘテロアリールは未置換であるかまたは1個以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアン、
(c)NO
(d)−C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(e)−C1−6アルコキシ、
(f)−C(=O)−(O)−R
(g)−C(=O)−NR’、
(h)−O−C(=O)−R
(i)−S−C1−6アルキル、
(j)−S(O)
(k)−S(O)NR’、
(1)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(m)−NR’、
(n)−NR−C(=O)−R’、
(o)−P(=O)ROH、
(p)−P(=O)RNH
で置換されており;
Qは
(a)−O−、
(b)−S−、
(c)−SO−、
(d)−NR
からなる群から選択され;
、R及びR’は独立して
(a)水素、
(b)−C1−10アルキル、
(c)−C2−10アルケニル、
(d)−C2−10アルキニル、
(e)3〜8個の環原子を有し、場合によりS、N及びOからなる群から選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する炭素環式基、
(f)−C6−10アリール、及び
(g)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記した炭素環式基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びヘテロアリールは未置換であるかまたは1個以上の
(i)ハロゲン、
(ii)シアノ、
(iii)−NO
(iv)−C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(v)−C1−6アルコキシ、
(vi)−C(=O)−(O)−R
(vii)−C(=O)−NRRc’、
(viii)−O−C(=O)−R
(ix)−S−C1−6アルキル、
(x)−S(O)
(xi)−S(O)NR’、
(xii)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(xiii)−NR’、
(xiv)−NR−C(=O)−R’、
(xv)−P(=O)ROH、
(xvi)−P(=O)RNO
で置換されており、
及びR’は独立して(A)水素,(B)−C1−10アルキル、(C)−C2−10アルケニル、(D)−C2−10アルキニル、(E)3〜8個の環原子を有し、場合によりS、N及びOからなる群から選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する炭素環式基、(F)−C0−10アルキル−C6−10アリール、及び(G)ヘテロアリールからなる群から選択され;
及びRは独立して
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C2−10アルケニル、
(4)−C2−10アルキニル、
(5)−C6−10アリール、または
(6)ヘテロアリール,
からなる群から選択され、前記したアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びヘテロアリールは未置換であるかまたは1個以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、
(c)NO
(d)−C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(e)−C1−6アルコキシ、
(f)−C(=O)−(O)−R
(g)−C(=O)NR’、
(h)−O−C(=O)−R
(i)−S−C1−6アルキル、
(j)−S(O)
(k)−S(O)NR’、
(1)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(m)−NR’、
(n)−NR−C(=O)R’、
(o)−P(=O)ROH、
(p)−P(=O)RNH
で置換されており;或いは
及びRは結合して、3〜8個の環原子を有し、場合によりS、N及びOからなる群から選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する炭素環式基を形成してもよく、前記した炭素環式基は未置換であるかまたは1個以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、
(c)NO
(d)−C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(e)−C1−6アルコキシ、
(f)−C(=O)−(O)−R
(g)−C(=O)−NR’、
(h)−O−C(=O)−R
(i)−S−C1−6アルキル、
(j)−S(O)
(k)−S(O)NR’、
(1)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(m)−NR’、
(n)−NR−C(=O)−R’、
(o)−P(=O)ROH、
(p)−P(=O)RNH
で置換されており、R及びR’はR及びR’と同一の群から選択され;

(1)水素,
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C2−10アルケニル、
(4)−C2−10アルキニル、
(5)−C0−10アルキル−C(=O)−R
(6)−C2−10アルケニル−C(=O)−R
(7)−C2−10アルキニル−C(=O)−R
(8)−C0−10アルキル−C(=O)NR’、
(9)−C2−10アルケニル−C(=O)NR’、及び
(10)−C2−10アルケニル−C(=O)NR
からなる群から選択され、前記したアルキル、アルケニル及びアルキニルは未置換であるかまたは1個以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアン、
(c)−NO
(d)−C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(e)C1−6アルコキシ、
(f)−C(=O)−(O)−R
(g)−C(=O)−NR’、
(h)−O−C(=O)−R
(i)−S−C1−6アルキル、
(j)−S(O)
(k)−S(O)NR’、
(1)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(m)−NR’、
(n)−NR−C(=O)−R’、
(o)−P(=O)ROH、
(p)−P(=O)RNH
で置換されており、R及びR’はR及びR’と同一の群から選択され;
xは1または2である。]
である請求項1に記載の化合物及びその医薬的に許容され得る塩。
【請求項4】
が一酸化窒素シンターゼ阻害剤、Rhoキナーゼ阻害剤、アンギオテンシンIIタイプ1受容体アンタゴニスト、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3阻害剤、ナトリウムまたはカルシウムチャネルブロッカー、p38 MAPキナーゼ阻害剤、トロンボキサンAX−シンターゼ阻害剤、スタチン、酸化防止剤、β−アドレナリン遮断薬、NMDA受容体アンタゴニスト、血小板フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト、トロンビン阻害剤または血管拡張剤からなる群から選択される、卒中の間に生ずる1つ以上の生化学的事象を調節する医薬的に活性な化合物である請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物を卒中患者に投与することを含む卒中の治療方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項7】
式(II):
【化3】

(式中、ZはZに共有結合しており、Zは卒中の間に生ずる1つ以上の生化学的事象を調節し、Zは卒中の間に生ずる1つ以上の生化学的事象を調節するかまたは式(I)を有する化合物に水性媒体中溶解度を付与する部分である。)
を有する化合物。
【請求項8】
【化4】

[式中、

(1)−Q−R
(2)3〜8個の環原子を有し、場合によりS、N及びOからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子有する炭素環式基、
(3)−C6−10アリール、及び
(4)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記した炭素環式基、アリール及びヘテロアリールは未置換であるかまたは1個以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、
(c)NO
(d)−C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(e)−C1−6アルコキシ、
(f)−C(=O)−(O)−R
(g)−C(=O)NR’、
(h)−O−C(=O)−R
(i)−S−C1−6アルキル、
(j)−S(O)
(k)−S(O)NR’、
(l)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(m)−NR’、
(n)−NR−C(=O)−R’、
(o)−P(=O)ROH、及び
(p)−P(−O)RNH
で置換されており;
Qは
(a)−O−、
(b)−S−、
(c)−SO−、及び
(d)−NR
からなる群から選択され;
、R及びR’は独立して
(a)水素、
(b)−C1−10アルキル、
(c)−C2−10アルケニル、
(d)−C2−10アルキニル、
(e)3〜8個の環原子を有し、場合によりS、N及びOからなる群から選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する炭素環式基、
(f)−C6−10アリール、及び
(g)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記した炭素環式基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びヘテロアリールは未置換であるかまたは1個以上の
(i)ハロゲン、
(ii)シアノ、
(iii)−NO
(iv)−C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(v)−C1−6アルコキシ、
(vi)−C(=O)−(O)−R
(vii)−C(=O)−NR’、
(viii)−O−C(=O)−R
(ix)−S−C1−6アルキル、
(x)−S(O)
(xi)−S(O)NR’、
(xii)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(xiii)−NR’、
(xiv)−NR−C(=O)−R’、
(xv)−P(=O)ROH、
(xvi)−P(=O)RONH
で置換されており、
及びR’は独立して(A)水素、(B)−C1−10アルキル、(C)−C2−10アルケニル、(D)−C2−10アルキニル、(E)3〜8個の環原子を有し、場合によりS、N及びOからなる群から選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する炭素環式基、(F)−C0−10アルキル−C6−10アリール、及び(G)ヘテロアリールからなる群から選択され;
及びRは独立して
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C2−10アルケニル、
(4)−C2−10アルキニル、
(5)−C6−10アリール、または
(6)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びヘテロアリールは未置換であるかまたは1個以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、
(c)NO
(d)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(e)−C1−6アルコキシ、
(f)−C(=O)−(O)−R
(g)−C(=O)NR’、
(h)−O−C(=O)−R
(i)−S−C1−6アルキル、
(j)−S(O)
(k)−S(O)NR’、
(l)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(m)−NR’、
(n)−NR−C(=O)R’、
(o)−P(=O)ROH、
(p)−P(=O)RNH
で置換されており;或いは
及びRは結合して、3〜8個の環原子を有し、場合によりS、N及びOからなる群から選択される1〜3個の環ヘテロ原子を有する炭素環式基を形成してもよく、前記炭素環式基は未置換であるかまたは1個以上の
(a)ハロゲン、
(b)シアノ、
(c)−NO
(d)−C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(e)−C1−6アルコキシ、
(f)−C(=O)−(O)−R
(g)−C(=O)−NR’、
(h)−O−C(=O)−R
(i)−S−C1−6アルキル、
(j)−S(O)
(k)−S(O)NR’、
(l)−S(O)NRC(=O)C1−6アルキル(ここで、アルキルは未置換であるかまたは1個以上のハロゲンで置換されている。)、
(m)−NR−R’、
(n)−NR−C(=O)R’、
(o)−P(=O)ROH、
(p)−P(=O)RNH
で置換されており、R及びR’はR及びR’と同一群から選択され;
xは1または2である。]
である請求項7に記載の化合物化合物及びその医薬的に許容され得る塩。
【請求項9】
がCOX−2阻害剤、一酸化窒素シンターゼ阻害剤、Rhoキナーゼ阻害剤、アンギオテンシンIIタイプ1受容体アンタゴニスト、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3阻害剤、ナトリウムまたはカルシウムチャネルブロッカー、p38 MAPキナーゼ阻害剤、トロンボキサンAX−シンターゼ阻害剤、スタチン、酸化防止剤、β−アドレナリン遮断薬、NMDA受容体アンタゴニスト、血小板フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト、トロンビン阻害剤または血管拡張剤からなる群から選択される請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
が式(I)を有する化合物に対して水性媒体中溶解度を付与する部分である請求項8記載の化合物。
【請求項11】
が第4級アンモニウム塩である請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
請求項8から11のいずれかに記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項8から11のいずれかに記載の化合物を卒中患者に投与することを含む卒中の治療方法。
【請求項14】
【化5】


からなる群から選択される化合物及びその医薬的に許容され得る塩。

【公表番号】特表2008−520569(P2008−520569A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541311(P2007−541311)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/040727
【国際公開番号】WO2006/055381
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】