説明

印刷データ受信装置、印刷データ受信方法および印刷データ受信プログラム

【課題】消費電力の低減かつ印刷データの効率的な受信が可能である印刷データ受信装置、印刷データ受信方法および印刷データ受信プログラムを提供する。
【解決手段】外部からの印刷データを受信する印刷データ受信装置120であって、印刷データを保存するための第1記憶装置138を少なくとも制御するための第1演算部132と、第1演算部132の作動を停止させる節電モード下において、外部からの印刷データの受信を検出した場合に第1演算部132に起動命令を発し、かつ、受信した印刷データを一時的に保存するための第2記憶装置156を制御するための第2演算部152と、を有する。第2演算部152は、第1演算部132より消費電力が小さく、かつ、第2記憶装置156の空き容量が第1演算部132の起動完了時になくなるように、印刷データの受信速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷データ受信装置、印刷データ受信方法および印刷データ受信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
省電力の要求が高まっている中、プリンタ等の画像形成装置においては、一定時間動作しない場合、定着装置への電力供給を停止させることで不必要な電力消費を防止している。しかし、電力消費の大きな他の部分、例えば、プリンタコントローラの演算部は、ネットワークからの印刷データの受信等の外部イベントを検出するため、電力供給が継続されるので、消費電力の低減に限界があった。
【0003】
そのため、ネットワークを監視し、印刷データの受信時にメイン演算部を起動させるサブ演算部を搭載することで、メイン演算部への電力供給を停止可能としているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−94679
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ネットワークからの印刷データは、メイン演算部の起動が完了するまで、サブ演算部の記憶装置によって一時的に保持する必要があるが、その容量には限りがあるため問題を有する。例えば、印刷データの受信速度が大きい場合、受信した印刷データが記憶装置からオーバーフローする虞があり、また、オーバーフローを避けるため、受信速度を小さくする場合、印刷データの送り側でタイムアウトが発生し、通信が中断する虞がある。一方、印刷データの受信速度を予め調節しても、メイン演算部の起動時間は同じとは限らないので、印刷データを効率的に受信することが困難である。
【0006】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、消費電力の低減かつ印刷データの効率的な受信が可能である印刷データ受信装置、印刷データ受信方法および印刷データ受信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0008】
(1)外部からの印刷データを受信する印刷データ受信装置であって、
前記印刷データを保存するための第1記憶装置を少なくとも制御するための第1演算部と、
前記第1演算部の作動を停止させる節電モード下において、外部からの前記印刷データの受信を検出した場合に前記第1演算部に起動命令を発し、かつ、受信した前記印刷データを一時的に保存するための第2記憶装置を制御するための第2演算部と、を有し、
前記第2演算部は、前記第1演算部より消費電力が小さく、かつ、前記第2記憶装置の空き容量が前記第1演算部の起動完了時になくなるように、前記印刷データの受信速度を制御する
ことを特徴とする印刷データ受信装置。
【0009】
(2)前記受信速度の制御は、前記印刷データを構成するパケットを受け取ってから、ackを返すまでの時間によって定義される応答間隔を調整することによって実行されることを特徴とする上記(1)に記載の印刷データ受信装置。
【0010】
(3)前記応答間隔は、前記第1記憶装置の仕様に基づいて調整されることを特徴とする上記(2)に記載の印刷データ受信装置。
【0011】
(4)前記第1記憶装置は、リムーバブルであり、
前記応答間隔の初期値は、前記第1記憶装置が装着されていない状態での前記第1演算部の起動が完了するまでの標準時間と、前記第1記憶装置の容量とから算出されることを特徴とする上記(3)に記載の印刷データ受信装置。
【0012】
(5)前記応答間隔は、前記第1記憶装置に保存されているファイル数に基づいて調整されることを特徴とする上記(2)に記載の印刷データ受信装置。
【0013】
(6)前記第1記憶装置は、固定式のハードディスク装置からなり、
前記受信速度の初期値は、前記印刷データの送り側でタイムアウトが発生しない最低速速に設定されることを特徴とする上記(5)に記載の印刷データ受信装置。
【0014】
(7)前記応答間隔は、前記第1演算部の起動途中の実績時間に基づいて調整されることを特徴とする上記(2)に記載の印刷データ受信装置。
【0015】
(8)前記第2記憶装置に保存された前記印刷データは、前記第1演算部の起動完了後、前記第1記憶装置に転送されることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の印刷データ受信装置。
【0016】
(9)前記第2演算部は、前記節電モード下のみにおいて作動することを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の印刷データ受信装置。
【0017】
(10)外部からの印刷データを受信する印刷データ受信方法であって、
前記印刷データを保存するための第1記憶装置を少なくとも制御するための第1演算部の作動を停止させる節電モード下において、外部からの前記印刷データの受信を検出した場合に、前記第1演算部より消費電力が小さい第2演算部によって、前記第1演算部に起動命令を発し、かつ、受信した前記印刷データを一時的に保存するための第2記憶装置を制御するステップを有し、
前記ステップにおいて、前記第2記憶装置の空き容量が前記第1演算部の起動完了時になくなるように、前記印刷データの受信速度が制御される
ことを特徴とする印刷データ受信方法。
【0018】
(11)前記受信速度の制御は、前記印刷データを構成するパケットを受け取ってから、ackを返すまでの時間によって定義される応答間隔を調整することによって実行されることを特徴とする上記(10)に記載の印刷データ受信方法。
【0019】
(12)前記応答間隔は、前記第1記憶装置の仕様に基づいて調整されることを特徴とする上記(11)に記載の印刷データ受信方法。
【0020】
(13)前記第1記憶装置は、リムーバブルであり、
前記応答間隔の初期値は、前記第1記憶装置が装着されていない状態での前記第1演算部の起動が完了するまでの標準時間と、前記第1記憶装置の容量とから算出されることを特徴とする上記(12)に記載の印刷データ受信方法。
【0021】
(14)前記応答間隔は、前記第1記憶装置に保存されているファイル数に基づいて調整されることを特徴とする上記(11)に記載の印刷データ受信方法。
【0022】
(15)前記第1記憶装置は、固定式のハードディスク装置からなり、
前記受信速度の初期値は、前記印刷データの送り側でタイムアウトが発生しない最低速速に設定されることを特徴とする上記(14)に記載の印刷データ受信方法。
【0023】
(16)前記応答間隔は、前記第1演算部の起動途中の実績時間に基づいて調整されることを特徴とする上記(11)に記載の印刷データ受信方法。
【0024】
(17)前記第2記憶装置に保存された前記印刷データは、前記第1演算部の起動完了後、前記第1記憶装置に転送されることを特徴とする上記(10)〜(16)のいずれか1項に記載の印刷データ受信方法。
【0025】
(18)前記第2演算部は、前記節電モード下のみにおいて作動するように制御されることを特徴とする上記(10)〜(17)のいずれか1項に記載の印刷データ受信方法。
【0026】
(19)外部からの印刷データを受信し、前記印刷データを保存するための第1記憶装置を少なくとも制御するための第1演算部と、前記印刷データを一時的に保存するための第2記憶装置を制御するための第2演算部と、を有しており、かつ、前記第2演算部は、前記第1演算部より消費電力が小さい印刷データ受信装置を制御する印刷データ受信プログラムであって、
前記第1演算部の作動を停止させる節電モード下において、外部からの前記印刷データの受信を検出した場合に、前記第2演算部によって、前記第1演算部に起動命令を発し、かつ、前記第2記憶装置を制御して、受信した前記印刷データを一時的に保存する手順を有する処理を、前記印刷データ受信装置に実行させ、
前記手順において、前記第2記憶装置の空き容量が前記第1演算部の起動完了時になくなるように、前記印刷データの受信速度が制御される
ことを特徴とする印刷データ受信プログラム。
【0027】
(20)前記受信速度の制御は、前記印刷データを構成するパケットを受け取ってから、ackを返すまでの時間によって定義される応答間隔を調整することによって実行されることを特徴とする上記(19)に記載の印刷データ受信プログラム。
【0028】
(21)前記応答間隔は、前記第1記憶装置の仕様に基づいて調整されることを特徴とする上記(20)に記載の印刷データ受信プログラム。
【0029】
(22)前記第1記憶装置は、リムーバブルであり、
前記応答間隔の初期値は、前記第1記憶装置が装着されていない状態での前記第1演算部の起動が完了するまでの標準時間と、前記第1記憶装置の容量とから算出されることを特徴とする上記(21)に記載の印刷データ受信プログラム。
【0030】
(23)前記応答間隔は、前記第1記憶装置に保存されているファイル数に基づいて調整されることを特徴とする上記(20)に記載の印刷データ受信プログラム。
【0031】
(24)前記第1記憶装置は、固定式のハードディスク装置からなり、
前記受信速度の初期値は、前記印刷データの送り側でタイムアウトが発生しない最低速速に設定されることを特徴とする上記(23)に記載の印刷データ受信プログラム。
【0032】
(25)前記応答間隔は、前記第1演算部の起動途中の実績時間に基づいて調整されることを特徴とする上記(20)に記載の印刷データ受信プログラム。
【0033】
(26)前記第2記憶装置に保存された前記印刷データは、前記第1演算部の起動完了後、前記第1記憶装置に転送されることを特徴とする上記(19)〜(25)のいずれか1項に記載の印刷データ受信プログラム。
【0034】
(27)前記第2演算部は、前記節電モード下のみにおいて作動するように制御されることを特徴とする上記(19)〜(26)のいずれか1項に記載の印刷データ受信プログラム。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る印刷データ受信装置、印刷データ受信方法および印刷データ受信プログラムによれば、第2演算部は、第2記憶装置の空き容量が第1演算部の起動完了時になくなるように印刷データの受信速度を制御するため、印刷データのオーバーフローを避けながら、印刷データを短時間で受信することができる。また、第2演算部は、第1演算部より消費電力が小さいため、消費電力を削減することが可能である。したがって、消費電力の低減かつ印刷データの効率的な受信が可能である印刷データ受信装置、印刷データ受信方法および印刷データ受信プログラムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態1に係る印刷システムを説明するためのブロック図である。
【図2】図1に示されるプリンタを説明するためのブロック図である。
【図3】図2に示されるメインボード部に搭載されるCPUによる節電モード制御を説明するためのフローチャートである。
【図4】図2に示されるサブボード部に搭載されるCPUによる受信速度制御を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4に示されるステップS129の応答間隔設定処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5に示されるステップS142の1次調整の条件を説明するためのテーブルである。
【図7】図5に示されるステップS143の2次調整の条件を説明するためのテーブルである。
【図8】メインボード部にリムーバブル記憶装置が装着されていない場合における受信速度の推移を説明するためのグラフである。
【図9】メインボード部にリムーバブル記憶装置が装着されていない場合におけるサブボード部のRAMの空き容量の推移を説明するためのグラフである。
【図10】メインボード部にリムーバブル記憶装置が装着されている場合における受信速度の推移を説明するためのグラフである。
【図11】メインボード部にリムーバブル記憶装置が装着されている場合におけるサブボード部のRAMの空き容量の推移を説明するためのグラフである。
【図12】実施形態2に係るプリンタを説明するためのブロック図である。
【図13A】図12に示されるメインボード部に搭載されるCPUによる節電モード制御を説明するためのフローチャートである。
【図13B】図13Aに続くフローチャートである。
【図14A】図12に示されるサブボード部に搭載されるCPUによる受信速度制御を説明するためのフローチャートである。
【図14B】図14Aに続くフローチャートである。
【図15】図14Bに示されるステップS229の1次調整処理の条件を説明するためのテーブルである。
【図16】メインボード部のHDDに保存されたファイル数が少ない場合における受信速度の推移を説明するためのグラフである。
【図17】メインボード部のHDDに保存されたファイル数が少ない場合におけるサブボード部のRAMの空き容量の推移を説明するためのグラフである。
【図18】メインボード部のHDDに保存されたファイル数が多い場合における受信速度の推移を説明するためのグラフである。
【図19】メインボード部のHDDに保存されたファイル数が多い場合におけるサブボード部のRAMの空き容量の推移を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0038】
図1は、実施形態1に係る印刷システムを説明するためのブロック図である。
【0039】
実施形態1に係るプリンタ100は、ネットワーク400を経由して接続されるクライアント端末300から送信される印刷データを受信して、印刷処理を行うために使用され、消費電力の低減かつ印刷データの効率的な受信が可能である。
【0040】
ネットワーク400は、イーサネット(登録商標)、トークンリング、およびFDDI(Fiber−Distributed Data Interface)等の規格によりコンピュータやネットワーク機器同士を接続する構内情報通信網(LAN:Local Area Network)、LAN同士を専用線で接続した広域情報通信網(WAN:Wide Area Network)、インターネット、これらの組み合わせ等の各種のネットワークからなる。ネットワークプロトコルは、例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)である。ネットワーク400に接続される機器の種類および台数は、図1に示される構成に限定されない。
【0041】
クライアント端末300は、本体部、ディスプレイおよび入力装置を有するコンピュータ装置によって構成され、各種のアプリケーションがインストールされている。アプリケーションは、例えば、電子文書を作成するための文書作成プログラムや、電子文書を印刷するためのドライバープログラムである。電子文書の規格は、例えば、XPS(XML Paper Specification)や、PDF(Portable Document Format)である。
【0042】
ドライバープログラムは、プリンタ100が対応可能な記述言語形式による印刷データを作成し、これをプリントジョブとしてネットワーク400を介してプリンタ100に送信する。記述言語形式は、PostScript(登録商標)やクライアント端末300(Printer Control Language)等のPDL(ページ記述言語:Page Description Language)である。
【0043】
図2は、図1に示されるプリンタ100を説明するためのブロック図である。
【0044】
プリンタ100は、プリントエンジン110およびプリンタコントローラ120を有しており、これらは、電源ユニット170から電力が供給される。プリントエンジン110は、帯電、露光、現像、転写および定着工程を含む電子写真式プロセス等の作像プロセスを用いて、記録媒体である用紙上に画像を形成するエンジンを有している。
【0045】
プリンタコントローラ120は、メインボード部130およびサブボード部150を有する基板回路からなる。
【0046】
メインボード部130は、クライアント端末300からの印刷データ(例えば、PDLデータ)をラスターデータに変換し、プリントエンジン110に転送するために使用され、CPU132、ROM134、RAM136、リムーバブル記憶装置138、エンジンインターフェース140および復帰条件監視部142を有しており、これらは、バス122を経由して相互に接続されている。
【0047】
CPU132は、プログラムにしたがって上記各部の制御や各種の演算処理を実行するマイクロプロセッサ等から構成されるメイン演算部であり、メインボード部130の各機能は、それに対応するプログラムをCPU132が実行することにより発揮される。
【0048】
ROM134は、各種プログラムおよび各種データを保存するための読取り専用の記憶装置である。ROM134に保存されるプログラムには、メインボード部130のCPU132の消費電力を低減するための節電モード制御のためのプログラムや、受信した印刷データ(クライアント端末300から転送されたPDLデータ)をRIP処理(ラスタライズ処理:Raster Image Processing)するためのプログラム等が含まれる。RAM136は、作業領域として一時的にプログラムおよびデータを記憶する高速のランダムアクセス記憶装置であり、リムーバブル記憶装置138が装着されない場合には、印刷データを保存するために使用される。
【0049】
リムーバブル記憶装置138は、例えば、HDD(ハードディスク装置)、CF(Compact Flash)カード、USBメモリからなり、各種データや各種プログラムを保存するために使用されるオプションの記憶装置である。
【0050】
エンジンインターフェース140は、プリントエンジン110と通信するための専用インタフェース(VIF:ビデオインタフェース)である。
【0051】
復帰条件監視部142は、CPU132に対する電源がオフ(電力供給が停止)されている場合においても作動可能に構成されており、サブボード部150のCPU152からの起動命令に応じて、CPU132に対する電力供給を再開させ、CPU132を起動させるために使用される。
【0052】
サブボード部150は、メインボード部130のCPU132の節電モード下における印刷データの効率的な受信のために設けられており、CPU152、ROM154、RAM156、通信インターフェース158および復帰条件監視部160を有しており、これらは、バス122を経由して相互に接続されている。
【0053】
CPU152は、プログラムにしたがって上記各部の制御や各種の演算処理を実行するマイクロプロセッサ等から構成されるサブ演算部であり、サブボード部150の各機能は、それに対応するプログラムをCPU152が実行することにより発揮される。
【0054】
ROM154は、各種プログラムおよび各種データを保存するための読取り専用の記憶装置である。ROM154に保存されるプログラムには、印刷データを効率的に受信するための受信速度制御のためのプログラム等が含まれる。
【0055】
受信速度は、メインボード部130のCPU132の起動完了時に、RAM156の空き容量がなくなるように制御され、印刷データを送信したクライアント端末300に対する応答間隔を調整することにより変更される。応答間隔は、クライアント端末300から印刷データを構成するパケットを受け取ってから、ackを返すまでの時間によって定義され、応答間隔が短くなると受信速度が増加し、応答間隔が長くなると受信速度が減少する関係にある。クライアント端末300からの再送の判断となるタイムアウトは、例えば、3秒である場合、応答間隔の設定可能範囲は、0〜3秒となる。
【0056】
応答間隔は、起動途中の実績時間およびリムーバブル記憶装置138の仕様に基づいて調整される。リムーバブル記憶装置138の装着の有無を考慮するのは、OS(オペレーティングシステム)の初期化の処理時間に影響を与え、メインボード部130のCPU132の起動時間を増加させるためである。
【0057】
RAM156は、作業領域として一時的にプログラムおよびデータを記憶する高速のランダムアクセス記憶装置であり、メインボード部130のCPU132が節電モード時に受信される印刷データを一時的に保存(記憶)するために主として使用される。保存された印刷データは、メインボード部130が起動した後で、バス122を経由してメインボード部130に転送される。サブボード部150はネットワーク処理を行うことのみに特化した構成であるので、RAM156の容量は、例えば、数十kbyteである。
【0058】
なお、サブボード部150のRAM156において、印刷データのオーバーフローを避けるためには、メインボード部130のCPU132の起動が完了するまでの期間の間に受信されるパケットのデータ量が、サブボード部150のRAM156において使用可能な容量以下であることが必要である。したがって、RAM156において使用可能な容量をM(byte)、パケットサイズをm(byte)、メインボード部130のCPU132の起動が完了するまでの時間をT(s)、応答間隔をX(s)とする場合、式(X(s)=T/(M/m)が得られる。
【0059】
通信インターフェース158は、所謂LANボードからなる通信部であり、ネットワーク400に接続するための通信機能をプリンタ100に追加する拡張装置である。
【0060】
復帰条件監視部160は、CPU152に対する電源がオフされている場合(CPU152の作動が停止している場合)においても作動可能に構成されており、メインボード部130のCPU132の節電モードの開始通知に応じて、CPU152に対する電力供給を再開させ、CPU152を起動させるために使用される。
【0061】
電源ユニット170は、プリンタ100の各部に独立して電力を供給可能に設定されており、例えば、メインボード部130のCPU132に対する電力供給を停止する一方、サブボード部150のCPU152に電力を供給することが可能である。サブボード部150の消費電力は、例えば、1W程度であり、メインボード部130の消費電力より小さくなるように設定されている。したがって、節電モード中に、メインボード部130に対する電力供給を停止し、サブボード部150だけを起動させて、ネットワークを監視させ、復帰が必要であるか否かを判断させることで、消費電力の抑制が可能である。
【0062】
なお、プリンタ100とクライアント端末300とは、ネットワークを介して接続する形態に限定されず、例えば、USB(Universal Serial Bus)等のシリアルインタフェースやIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1284等のパラレルインタフェースを利用して直接接続することも可能である。また、プリンタコントローラ120のメインボード部130およびサブボード部150は、別体とする形態に限定されない。
【0063】
次に、節電モード制御を詳述する。
【0064】
図3は、図2に示されるメインボード部に搭載されるCPUによる節電モード制御を説明するためのフローチャートである。なお、図3に示されるフローチャートにより示されるアルゴリズムは、ROM134にプログラムとして保存されており、CPU132によって実行される。
【0065】
まず、節電モードの条件を満たしたか否かが判断される(ステップS101)。節電モードの条件は、一定時間処理が実施されていないことであり、例えば、監視タイマーのタイムアウトによって検出される。
【0066】
節電モードの条件を満たしたと判断される場合(ステップS101:Yes)、サブボード部150に対し、メインボード部130のCPU132の節電モードの開始およびリムーバブル記憶装置138に関するオプション情報が通知される(ステップS102およびS103)。オプション情報は、リムーバブル記憶装置138の装着の有無、リムーバブル記憶装置138の仕様(種類および記憶容量)である。また、オプション情報として、起動時の処理に係るその他の情報、例えば、リムーバブル記憶装置138に保存されているファイル数や、起動時におけるリムーバブル記憶装置138へのアクセスの有無を含ませることも可能である。なお、サブボード部150のCPU152は、節電モードの開始が通知されると、ネットワークを監視し、クライアント端末300からの印刷データの受信を待機する。
【0067】
そして、CPU132の全ての機能が停止され、電源がオフされる(ステップS104)。
【0068】
その後、サブボード部150のCPU152からの起動命令の受信の有無が判断される(ステップS105)。なお、起動命令は、サブボード部150のCPU152がクライアント端末300からの印刷データの受信処理を開始する際に発行される。
【0069】
サブボード部150のCPU152からの起動命令の受信が検出された場合(ステップS105:Yes)、節電モードが解除され、起動処理が開始される(ステップS106)。起動処理は、メインボード部130のCPU132の起動、RAM136の初期化、
リムーバブル記憶装置138の初期化、OSの初期化、プリントエンジン110の定着部のウォームアップ等を含んでいる。
【0070】
次に、OSの初期化が完了したか否かが判断される(ステップS107)。OSの初期化の完了が検出された場合(ステップS107:Yes)、サブボード部150のCPU152に対してOSの初期化の完了が通知される(ステップS108)。
【0071】
そして、メインボード部130のCPU132の起動が完了したか否かが判断される(ステップS109)。メインボード部130のCPU132の起動の完了が検出された場合(ステップS109:Yes)、サブボード部150のCPU152に対して起動の完了が通知される(ステップS110)。そして、サブボード部150のRAM156に一時的に保存された印刷データの受信が開始される(ステップS111)。
【0072】
印刷データの受信が完了すると、印刷処理が開始される(ステップS112)。印刷処理においては、印刷データのRIP処理が実行され、RIP処理が完了したラスターデータが、エンジンインターフェース140を介してプリントエンジン110へ転送される。
【0073】
次に、受信速度制御を詳述する。
【0074】
図4は、図2に示されるサブボード部に搭載されるCPUによる受信速度制御を説明するためのフローチャート、図5は、図4に示されるステップS129の応答間隔設定処理を説明するためのフローチャート、図6は、図5に示されるステップS142の1次調整の条件を説明するためのテーブル、図7は、図5に示されるステップS143の2次調整の条件を説明するためのテーブルである。なお、図9および図10に示されるフローチャートにより示されるアルゴリズムは、ROM154にプログラムとして保存されており、CPU152によって実行される。
【0075】
まず、メインボード部130のCPU132の節電モードの開始通知(ステップS102参照)の受信の有無が判断される(ステップS121)。節電モードの開始が検出された場合(ステップS122:Yes)、メインボード部130のCPU132からのリムーバブル記憶装置138に関するオプション情報(ステップS103参照)が受信され(ステップS122)、ネットワークの監視が開始される(ステップS123)。
【0076】
そして、クライアント端末300からの印刷データの受信の有無が判断される(ステップS124)。印刷データの受信が検出される場合(ステップS124:Yes)、メインボード部130のCPU132に対して起動命令(ステップS105参照)が発せられ(ステップS125)、経過時間の測定が開始され(ステップS126)、クライアント端末300からの印刷データの受信が開始され、RAM156に一時的に保存される(ステップS127)。
【0077】
印刷データの受信開始時における応答間隔の初期値Xは、標準応答間隔Xにマージン(例えば、0.5)を付加した値に設定される。標準応答間隔Xは、リムーバブル記憶装置138が装着されていない状態でのメインボード部130のCPU132の起動が完了するまでの実績時間に基づいて算出される。なお、経過時間は、応答間隔設定処理において、応答間隔を調整するために使用される。
【0078】
そして、OSの初期化の完了通知(ステップS108参照)の受信の有無が判断される(ステップS128)。OSの初期化の完了通知が検出される場合(ステップS128:Yes)、応答間隔設定処理が実行される(ステップS129)。
【0079】
応答間隔設定処理は、OSの初期化の完了までの経過時間、リムーバブル記憶装置138の装着の有無、リムーバブル記憶装置138の種類および記憶容量に基づいて、応答間隔を調整する処理である。なお、リムーバブル記憶装置138の記憶容量を考慮するのは、OSの初期化の処理時間は、記憶容量の増加に伴って長くなるため。
【0080】
その後、メインボード部130のCPU132の起動の完了通知(ステップS110参照)の受信の有無が判断される(ステップS130)。起動の完了通知が検出される場合(ステップS130:Yes)、RAM156に一時的に保存されている印刷データが、メインボード部130に対して転送される(ステップS131)。なお、印刷データの受信の停止は、ジョブ単位で実行される。
【0081】
そして、CPU152の全ての機能が停止され、電源がオフされる(ステップS132)。なお、以後のクライアント端末300からの印刷データは、通信インターフェース158を経由し、サブボード部150をパススルーして、メインボード部130に転送される。
【0082】
次に、応答間隔設定処理を説明する。
【0083】
まず、OSの初期化の完了までの経過時間(起動途中の実績時間)Tが取得され(ステップS141)、1次調整が実行される(ステップS142)。1次調整においては、経過時間Tから基準初期化時間Tosを減じた値(差分)に応じて、応答間隔が調整される。基準初期化時間Tosは、リムーバブル記憶装置138が装着されていない状態でのOSの初期化が完了するまでの時間に基づいて算出される。
【0084】
応答間隔、図8に示されるように、差分が0.2秒以下である場合には「0.1」増加させられ、0.2秒を越えかつ0.7秒以下である場合には「0.4」増加させられ、0.7秒を超える場合には「0.7」増加させられる。つまり、経過時間Tが基準初期化時間Tosより大きくなるにしたがって、メインボード部130のCPU132の起動完了時間が遅れることが想定されるため、応答間隔を長くすることで、受信速度を減少させて、印刷データのオーバーフローを避けている。
【0085】
その後、オプション情報に基づいて2次調整が実行される(ステップS143)。2次調整においては、リムーバブル記憶装置138の装着の有無、リムーバブル記憶装置138の種類および記憶容量に応じて、応答間隔がさらに調整される。2次調整後の応答間隔は、Xで参照される。
【0086】
応答間隔は、図7に示されるように、リムーバブル記憶装置138がA(Gbyte)のHDDである場合は「0.01*A」増加させられ、B(Gbyte)のCFカードである場合は「0.05*B」増加させられ、USBメモリである場合は「0.5」増加させられる。また、リムーバブル記憶装置138が装着されていない場合、応答間隔Xが「1.0」減少させられる。HDDは、CFカードに比較し、CPU132の起動完了時間が長く、また、容量が大きくなるにしたがって、メインボード部130のCPU132の起動完了時間が遅れることが想定されるためである。
【0087】
なお、応答間隔を1次調整するための条件および2次調整するための条件は、図6および図7に示される条件に限定されない。
【0088】
次に、受信速度制御の一例を説明する。
【0089】
図8および図9は、メインボード部にリムーバブル記憶装置が装着されていない場合における受信速度およびサブボード部のRAMの空き容量の推移を説明するためのグラフ、図10および図11は、メインボード部にリムーバブル記憶装置が装着されている場合における受信速度およびサブボード部のRAMの空き容量の推移を説明するためのグラフである。
【0090】
例えば、実績の経過時間Tと基準初期化時間Tosとの差がなく、かつ、リムーバブル記憶装置が装着されていない場合、メインボード部130のCPU132の起動は、基準完了時間TMBと略一致すると想定されるため、図8に示されるように受信速度を増加させて(応答間隔が短くなるように調整し)、印刷データを短時間で受信することが可能である。この際、RAM156の空き容量の減少速度は、図9に示されるように、受信速度の増加に伴い、大きくなる。なお、調整後の応答間隔Xは、例えば、残り時間(T−T)=TMB−Tosとなるものとして、パケットサイズと現時点におけるRAM156の空き容量に基づいて算出される。
【0091】
一方、実績の経過時間Tと基準初期化時間Tosとの差が大きい場合および/又はメインボード部130にリムーバブル記憶装置が装着されている場合、メインボード部130のCPU132の起動は、基準完了時間TMBよりも遅くなると想定されるため、受信速度を減少させて、印刷データのオーバーフローを避けることが必要である。そのため、図10に示されるように、受信速度が低下させる(応答間隔が長くなるように調整する)。この際、RAM156の空き容量の減少速度は、図11に示されるように、受信速度の減少に伴い、小さくなる。
【0092】
以上のように、実施形態1においては、サブボード部150のCPU152は、メインボード部130のCPU132の起動完了時に、サブボード部150のRAM156の空き容量がなくなるように印刷データの受信速度を制御するため、印刷データのオーバーフローを避けながら、印刷データを短時間で受信することができる。また、サブボード部150のCPU152は、メインボード部130のCPU132より消費電力が小さいため、消費電力を削減することが可能である。したがって、消費電力の低減かつ印刷データの効率的な受信が可能である印刷データ受信装置、印刷データ受信方法および印刷データ受信プログラムを提供することが可能である。
【0093】
また、実施形態1においては、受信速度の制御を、リムーバブル記憶装置の仕様および起動途中の実績時間を考慮して応答間隔を調整することによって実行しているが、この形態に限定されない。例えば、リムーバブル記憶装置の仕様および起動途中の実績時間の一方のみを考慮したり、プリントエンジンの状況を考慮することも可能である。受信速度は、1度に送るパケットサイズ(データサイズ)を変更することで調整することも可能である。
【0094】
メインボード部130のCPU132に対する電力供給は、完全に停止する形態に限定されず、例えば、スリープモードなどの省電力モードを有する場合、当該省電力モードを利用することで、電力供給を継続しながら、消費電力を低減することが可能である。サブボード部150に、メインボード部130の一部の機能を分担させることで、節電モード以外においても稼働させることも可能である。CPU132およびCPU152を、複数の演算部を有するマルチコアのプロセッサによって一体的に構成することも可能である。
【0095】
次に、実施形態2を説明する。
【0096】
図12は、実施形態2に係るプリンタを説明するためのブロック図である。
【0097】
実施形態2は、メインボード部における印刷データを保存する記憶装置の形態および応答間隔を調整するための形態が異なる点で、実施形態1と概して異なる。なお、実施形態1と同様の機能を有する部材については類似する符号を使用し、重複を避けるため、その説明を省略する。
【0098】
実施形態2に係るメインボード部230は、固定式のHDD238を有する。HDD238は、印刷データの保存に加えて、メインボード部230のCPU232が節電モードから復帰する際に、ログファイルを書き込みために使用される。ログファイルは、後で統計情報としてデバックに使用するログ情報を含んでいる。ログ情報は、節電モードの開始時刻、節電モードの終了時刻、節電モードの期間等の節電に関する情報である。
【0099】
また、メインボード部230のROM254には、実施形態2に係る受信速度制御のためのプログラム等が含まれ、当該受信速度制御においては、応答間隔が、HDD236内のファイル数および起動途中の実績時間(ログ情報の書き込み完了通知までの時間)の影響を考慮して調整される。
【0100】
次に、節電モード制御を説明する。
【0101】
図13Aおよび図13Bは、図12に示されるメインボード部に搭載されるCPUによる節電モード制御を説明するためのフローチャートである。なお、図13Aおよび図13Bに示されるフローチャートにより示されるアルゴリズムは、ROM234にプログラムとして保存されており、CPU232によって実行される。
【0102】
節電モードの条件を満たしたか否かが判断されるステップS201から節電モードが解除されて起動処理が開始されるステップS206までは、実施形態1に係るステップS201からS206までと略一致するため、その説明を省略し、重複を避ける。
【0103】
S206において、節電モードが解除されて起動処理が開始されると、HDD236に保存されているファイル数が計測され(ステップS207)、ファイル数が、サブボード部250のCPU252に対して通知される(ステップS208)。
【0104】
そして、ログ情報がHDD236に書き込まれ(ステップS209)、ログ情報の書き込み完了が、サブボード部250のCPU252に対して通知される(ステップS210)。
【0105】
その後、メインボード部230のCPU232の起動が完了したか否かが判断される(ステップS211)。メインボード部230のCPU232の起動の完了が検出された場合(ステップS211:Yes)、サブボード部250のCPU252に対して起動の完了が通知される(ステップS212)。そして、サブボード部250のRAM256に一時的に保存された印刷データの受信が開始される(ステップS213)。
【0106】
印刷データの受信が完了すると、印刷処理が開始される(ステップS214)。印刷処理においては、印刷データのRIP処理が実行され、RIP処理が完了したラスターデータが、エンジンインターフェース240を介してプリントエンジン210へ転送される。
【0107】
次に、受信速度制御を説明する。
【0108】
図14Aおよび図14Bは、図12に示されるサブボード部に搭載されるCPUによる受信速度制御を説明するためのフローチャート、図15は、図14Bに示されるステップS229の1次調整処理の条件を説明するためのテーブルである。なお、図14Aおよび図14Bに示されるフローチャートにより示されるアルゴリズムは、ROM254にプログラムとして保存されており、CPU252によって実行される。
【0109】
メインボード部230のCPU232の節電モードの開始の受信の有無が判断されるステップS221からクライアント端末からの印刷データの受信が開始されてRAM256に一時的に保存されるステップS227までは、実施形態1に係るステップS121〜S127と略一致するため、その説明を省略し、重複を避ける。
【0110】
なお、応答間隔の初期値は、データの送信側でタイムアウトが起こらない可能な限り最も遅い速度(例えば、3秒)が設定される。これは、メインボード部230が固定式のHDD238を有しており、メインボード部230のCPU232の起動が完了するまでの期間が長くなることが想定されるため、印刷データのオーバーフローが発生するリスクを低減するためである。
【0111】
ステップS227において、クライアント端末からの印刷データの受信が開始され、RAM256に一時的に保存されると、HDD236に保存されているファイル数の通知(ステップS208参照)の受信の有無が判断される(ステップS228)。ファイル数の通知が検出される場合(ステップS228:Yes)、1次調整処理が実行される(ステップS229)。
【0112】
1次調整処理においては、図15に示される条件に基づき、応答間隔がファイル数に対応する値に調整される。この1回目の印刷データの受信速度の見直しは、HDD236に保存されたファイル数がサブボード部250のCPU252に対して通知された時点Tで実行され、ファイル数に基づいて応答間隔を調整することで受信速度が変更される。HDD236に保存されたファイル数を考慮するのは、OSの初期化の処理時間に影響を与え、メインボード部230のCPU232の起動時間を増加させるためである。なお、1次調整処理によって見直された応答間隔をXで参照する。
【0113】
例えば、応答間隔は、ファイル数が100以下の場合には「X」、ファイル数が101以上かつ1000以下の場合には「(X+X)/2」、1001以上の場合には「X」(変化なし)に設定される。なお、応答間隔Xは、HDD236に保存されているファイル数がない状態でのメインボード部230のCPU232の起動が完了するまでの実績時間である。また、1次調整処理の条件(ファイル数と応答間隔との対応関係)は、図15に示される条件に限定されない。
【0114】
そして、ログ情報の書き込み完了通知(ステップS210参照)の受信の有無が判断される(ステップS230)。ログ情報の書き込み完了通知が検出される場合(ステップS230:Yes)、2次調整処理が実行される(ステップS231)。
【0115】
2次調整処理においては、応答間隔が。RAM256の空き容量に対応する値に調整される。この2回目の印刷データの応答間隔の見直しは、ログ情報の書き込み完了がサブボード部250のCPU252に対して通知される時点Tで実行され、サブボード部250のRAM256の空き容量に基づいて応答間隔が調整される。ログ情報の書き込み完了時Tからメインボード部230のCPU232の起動が完了する時点Tまでの期間は、HDD236に保存されたファイル数に影響されない処理が実行され、略一定である。したがって、RAM256の空き容量をM(byte)、パケットサイズをm(byte)とすると、2次調整処理によって見直された応答間隔Xは、式(X=(T−T/(M/m)によって算出される。
【0116】
その後、メインボード部230のCPU232の起動の完了通知(ステップS212参照)の受信の有無が判断される(ステップS232)。起動の完了通知が検出される場合(ステップS232:Yes)、印刷データの保存が停止され、RAM256に一時的に保存されている印刷データが、メインボード部230に対して転送される(ステップS233)。
【0117】
そして、CPU252の全ての機能が停止され、電源がオフされる(ステップS234)。なお、以後のクライアント端末からの印刷データは、通信インターフェース258を経由し、サブボード部250をパススルーして、メインボード部230に転送される。
【0118】
次に、受信速度制御の一例を説明する。
【0119】
図16および図17は、メインボード部のHDDに保存されたファイル数が少ない場合における受信速度の推移およびサブボード部のRAMの空き容量の推移を説明するためのグラフ、図18および図19は、メインボード部のHDDに保存されたファイル数が多い場合における受信速度の推移およびサブボード部のRAMの空き容量の推移を説明するためのグラフである。
【0120】
例えば、メインボード部230のHDD236に保存されたファイル数が少ない場合、ログ情報の書き込みは早期に完了するため、図16に示されるように、ファイル数が通知された時点Tにおいて、受信速度を増加させることが可能である。そのため、応答間隔が短くなるように調整することで、受信速度が増加させる。そして、ログ情報の書き込み完了時Tにおいて、2次調整処理によって見直された応答間隔Xに対応する受信速度までさらに増加させる。したがって、印刷データを短時間で受信することが可能である。なお、RAM256の空き容量の減少速度は、図17に示されるように、受信速度の増加に伴い、大きくなる。
【0121】
一方、例えば、ファイル数が多い場合、ログ情報の書き込みの完了は遅延するため、図18に示されるように、ファイル数が通知された時点Tにおいて、1次調整処理によって応答間隔は変更されず、初期速度のままで継続する。そして、ログ情報の書き込み完了時Tにおいて、2次調整処理によって見直された応答間隔Xに対応する受信速度まで増加させる。したがって、印刷データのオーバーフローを避けることが可能である。なお、RAM256の空き容量の減少速度は、図19に示されるように、受信速度の増加に伴い変化する。
【0122】
以上のように、実施の形態2においては、ファイル数および起動途中の実績時間(ログ情報の書き込み完了通知までの時間)の影響を考慮して応答間隔を変更することにより、消費電力の低減かつ印刷データの効率的な受信が可能である。
【0123】
なお、受信速度の制御を、ファイル数と起動途中の実績時間(ログ情報の書き込み完了通知までの時間)の一方のみを考慮することも可能である。
【0124】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で種々改変することが可能である。例えば、印刷データ受信装置は、プリンタ専用機に付加する形態に限定されず、コピー機能、プリンタ機能およびスキャン機能を有するMFP(Multi−Function Peripheral)に適用することも可能である。
【0125】
なお、本発明に係る手段、方法およびプログラムは、専用のハードウェア回路によっても実現することも可能である。また、プログラムされたコンピュータ装置によって本発明を実現する場合、コンピュータ装置を動作させるプログラムは、USBメモリやCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって提供したり、記録媒体によらず、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供したりすることも可能である。この場合、プログラムは、通常、コンピュータ装置のハードディスク等のランダムアクセス記憶装置に送信されて保存される。また、プログラムは、単独のアプリケーションソフトウェアとして提供されてもよいし、コンピュータ装置の一機能としてそのコンピュータ装置のソフトウェアに組み込むことも可能である。
【符号の説明】
【0126】
100,200 プリンタ、
110,210 プリントエンジン、
120,220 プリンタコントローラ、
120,220 バス、
130,230 メインボード部、
132,232 CPU、
134,234 ROM、
136,236 RAM、
138 リムーバブル記憶装置、
238 HDD、
140,240 エンジンインターフェース、
142,242 復帰条件監視部、
150,250 サブボード部、
152,252 CPU、
154,254 ROM、
156,256 RAM、
158,258 通信インターフェース、
160,260 復帰条件監視部、
170,270 電源ユニット、
300 クライアント端末、
400 ネットワーク、
T,T,T,T 経過時間、
os 基準初期化時間、
X,X,X,X,X 応答間隔、
標準応答間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの印刷データを受信する印刷データ受信装置であって、
前記印刷データを保存するための第1記憶装置を少なくとも制御するための第1演算部と、
前記第1演算部の作動を停止させる節電モード下において、外部からの前記印刷データの受信を検出した場合に前記第1演算部に起動命令を発し、かつ、受信した前記印刷データを一時的に保存するための第2記憶装置を制御するための第2演算部と、を有し、
前記第2演算部は、前記第1演算部より消費電力が小さく、かつ、前記第2記憶装置の空き容量が前記第1演算部の起動完了時になくなるように、前記印刷データの受信速度を制御する
ことを特徴とする印刷データ受信装置。
【請求項2】
前記受信速度の制御は、前記印刷データを構成するパケットを受け取ってから、ackを返すまでの時間によって定義される応答間隔を調整することによって実行されることを特徴とする請求項1に記載の印刷データ受信装置。
【請求項3】
前記応答間隔は、前記第1記憶装置の仕様に基づいて調整されることを特徴とする請求項2に記載の印刷データ受信装置。
【請求項4】
前記第1記憶装置は、リムーバブルであり、
前記応答間隔の初期値は、前記第1記憶装置が装着されていない状態での前記第1演算部の起動が完了するまでの標準時間と、前記第1記憶装置の容量とから算出されることを特徴とする請求項3に記載の印刷データ受信装置。
【請求項5】
前記応答間隔は、前記第1記憶装置に保存されているファイル数に基づいて調整されることを特徴とする請求項2に記載の印刷データ受信装置。
【請求項6】
前記第1記憶装置は、固定式のハードディスク装置からなり、
前記受信速度の初期値は、前記印刷データの送り側でタイムアウトが発生しない最低速速に設定されることを特徴とする請求項5に記載の印刷データ受信装置。
【請求項7】
前記応答間隔は、前記第1演算部の起動途中の実績時間に基づいて調整されることを特徴とする請求項2に記載の印刷データ受信装置。
【請求項8】
前記第2記憶装置に保存された前記印刷データは、前記第1演算部の起動完了後、前記第1記憶装置に転送されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の印刷データ受信装置。
【請求項9】
前記第2演算部は、前記節電モード下のみにおいて作動することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の印刷データ受信装置。
【請求項10】
外部からの印刷データを受信する印刷データ受信方法であって、
前記印刷データを保存するための第1記憶装置を少なくとも制御するための第1演算部の作動を停止させる節電モード下において、外部からの前記印刷データの受信を検出した場合に、前記第1演算部より消費電力が小さい第2演算部によって、前記第1演算部に起動命令を発し、かつ、受信した前記印刷データを一時的に保存するための第2記憶装置を制御するステップを有し、
前記ステップにおいて、前記第2記憶装置の空き容量が前記第1演算部の起動完了時になくなるように、前記印刷データの受信速度が制御される
ことを特徴とする印刷データ受信方法。
【請求項11】
前記受信速度の制御は、前記印刷データを構成するパケットを受け取ってから、ackを返すまでの時間によって定義される応答間隔を調整することによって実行されることを特徴とする請求項10に記載の印刷データ受信方法。
【請求項12】
前記応答間隔は、前記第1記憶装置の仕様に基づいて調整されることを特徴とする請求項11に記載の印刷データ受信方法。
【請求項13】
前記第1記憶装置は、リムーバブルであり、
前記応答間隔の初期値は、前記第1記憶装置が装着されていない状態での前記第1演算部の起動が完了するまでの標準時間と、前記第1記憶装置の容量とから算出されることを特徴とする請求項12に記載の印刷データ受信方法。
【請求項14】
前記応答間隔は、前記第1記憶装置に保存されているファイル数に基づいて調整されることを特徴とする請求項11に記載の印刷データ受信方法。
【請求項15】
前記第1記憶装置は、固定式のハードディスク装置からなり、
前記受信速度の初期値は、前記印刷データの送り側でタイムアウトが発生しない最低速速に設定されることを特徴とする請求項14に記載の印刷データ受信方法。
【請求項16】
前記応答間隔は、前記第1演算部の起動途中の実績時間に基づいて調整されることを特徴とする請求項11に記載の印刷データ受信方法。
【請求項17】
前記第2記憶装置に保存された前記印刷データは、前記第1演算部の起動完了後、前記第1記憶装置に転送されることを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載の印刷データ受信方法。
【請求項18】
前記第2演算部は、前記節電モード下のみにおいて作動するように制御されることを特徴とする請求項10〜17のいずれか1項に記載の印刷データ受信方法。
【請求項19】
外部からの印刷データを受信し、前記印刷データを保存するための第1記憶装置を少なくとも制御するための第1演算部と、前記印刷データを一時的に保存するための第2記憶装置を制御するための第2演算部と、を有しており、かつ、前記第2演算部は、前記第1演算部より消費電力が小さい印刷データ受信装置を制御する印刷データ受信プログラムであって、
前記第1演算部の作動を停止させる節電モード下において、外部からの前記印刷データの受信を検出した場合に、前記第2演算部によって、前記第1演算部に起動命令を発し、かつ、前記第2記憶装置を制御して、受信した前記印刷データを一時的に保存する手順を有する処理を、前記印刷データ受信装置に実行させ、
前記手順において、前記第2記憶装置の空き容量が前記第1演算部の起動完了時になくなるように、前記印刷データの受信速度が制御される
ことを特徴とする印刷データ受信プログラム。
【請求項20】
前記受信速度の制御は、前記印刷データを構成するパケットを受け取ってから、ackを返すまでの時間によって定義される応答間隔を調整することによって実行されることを特徴とする請求項19に記載の印刷データ受信プログラム。
【請求項21】
前記応答間隔は、前記第1記憶装置の仕様に基づいて調整されることを特徴とする請求項20に記載の印刷データ受信プログラム。
【請求項22】
前記第1記憶装置は、リムーバブルであり、
前記応答間隔の初期値は、前記第1記憶装置が装着されていない状態での前記第1演算部の起動が完了するまでの標準時間と、前記第1記憶装置の容量とから算出されることを特徴とする請求項21に記載の印刷データ受信プログラム。
【請求項23】
前記応答間隔は、前記第1記憶装置に保存されているファイル数に基づいて調整されることを特徴とする請求項20に記載の印刷データ受信プログラム。
【請求項24】
前記第1記憶装置は、固定式のハードディスク装置からなり、
前記受信速度の初期値は、前記印刷データの送り側でタイムアウトが発生しない最低速速に設定されることを特徴とする請求項23に記載の印刷データ受信プログラム。
【請求項25】
前記応答間隔は、前記第1演算部の起動途中の実績時間に基づいて調整されることを特徴とする請求項20に記載の印刷データ受信プログラム。
【請求項26】
前記第2記憶装置に保存された前記印刷データは、前記第1演算部の起動完了後、前記第1記憶装置に転送されることを特徴とする請求項19〜25のいずれか1項に記載の印刷データ受信プログラム。
【請求項27】
前記第2演算部は、前記節電モード下のみにおいて作動するように制御されることを特徴とする請求項19〜26のいずれか1項に記載の印刷データ受信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−20515(P2012−20515A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160675(P2010−160675)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.COMPACTFLASH
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】