説明

印刷装置および印刷方法、印刷マスク、並びに印刷マスクの製造方法

【課題】 撓みを生じ易い低剛性の印刷マスクを用いる場合でも印刷対象物の被印刷面の全体にわたって良好な印刷品質を得ることができる印刷装置、印刷方法、印刷マスク、及び印刷マスクの製造方法を提供する。
【解決手段】 印刷マスク2を基板1に対して傾けるように印刷マスク2を揺動可能に支持する支持手段を備える。印刷マスク2の複数の開口部201は、クリーム半田3の抜け方向にいくに従って次第に広がったテーパー状の内側壁201aを有する。印刷マスク2の複数の開口部201のテーパー角度θtは、上記揺動の支点である回転軸411に近い開口部ほど大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷対象物の被印刷面に印刷物質を印刷する印刷装置および印刷方法、印刷マスク、並びに印刷マスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板などの印刷対象物上に設けられたパッド電極などの被印刷面に導電性ペースト等の印刷物質を印刷する方法として、印刷対象物に装着した印刷マスクの開口部に、充填部材としてのスキージを用いて印刷物質を充填した後、印刷対象物と印刷マスクとを離すことにより印刷物質を印刷対象物の被印刷面に印刷する印刷方法及び印刷装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−177098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子部品の小型化に伴い、上記特許文献1に示すような印刷方法及び印刷装置では、プラスチック材に高精細な微少ピッチで開口部が形成されたプラスチック製の印刷マスクを用いて導電性ペースト等の印刷物質が印刷されるようになってきている。
【0005】
ところが、上記高精細な微少ピッチで開口部が形成されたプラスチック製の印刷マスクを用いて微細なピッチの印刷を行う場合、印刷対象物の被印刷面の中央付近の印刷品質を端部付近の印刷品質よりも悪化させたり、場合によっては中央付近に印刷抜けを生じさせたりするという問題があった。すなわち、上記導電性ペースト等の印刷物質を印刷マスクの各開口部に充填した後、その印刷マスクと印刷対象物とを離間させようとすると、印刷マスクの中央付近が印刷対象物の被印刷面から離れ難く、印刷対象物側に撓んでしまう。このように印刷マスクが撓んだ状態で、印刷マスクと印刷対象物とは、両者の接触面の周縁部から中央部に向けて徐々に離間していく。そして、周縁部より遅れて印刷対象物から離間する印刷マスクの中央付近には、その張力の増加により印刷対象物とは反対方向に向かう過剰な加速度が発生する。このため、印刷マスクと印刷対象物との離間速度は印刷マスクの中央に近い部分ほど速くなり、印刷マスクの中央付近にある開口部内に印刷物質が残留し易くなる。この結果、印刷マスクの中央付近に対応する印刷対象物の被印刷面において印刷物質の一部欠け、変形、印刷抜け等が生じ、印刷品質が低下してしまう。なお、このような印刷品質の低下の問題は、プラスチック製の印刷マスクに限らず、撓みを生じ易い低剛性の印刷マスクを用いる場合に生じ得る。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、撓みを生じ易い低剛性の印刷マスクを用いる場合でも印刷対象物の被印刷面の全体にわたって良好な印刷品質を得ることができる印刷装置、印刷方法、印刷マスク、及び印刷マスクの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の開口部が形成された印刷マスクを印刷対象物上にセットし、該印刷マスクの開口部に印刷物質を充填した後、該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させることにより、該印刷対象物の被印刷面に該印刷物質を印刷する印刷装置であって、上記印刷マスク及び上記印刷対象物の一方を他方に対して傾けるように該印刷マスク又は該印刷対象物を揺動可能に支持する支持手段を備え、上記印刷マスクの複数の開口部は、上記印刷物質の抜け方向にいくに従って次第に広がったテーパー状の内側壁を有することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の印刷装置において、上記印刷マスクの複数の開口部のテーパー角度は、上記揺動の支点である回転軸に近い開口部ほど大きいことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の印刷装置において、上記揺動の支点である回転軸と上記印刷マスクの開口部との距離は、該印刷マスクと該印刷対象物との離間時における該開口部の内側壁の移動軌跡と該開口部に充填されている印刷物質とが干渉しない程度に設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの印刷装置において、上記支持手段に支持された上記印刷マスク又は上記印刷対象物を、上記回転軸を支点として揺動させるように駆動する駆動手段と、該駆動手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の印刷装置において、上記支持手段は、上記印刷マスク又は上記印刷対象物を、上記揺動可能に支持するとともに、該印刷対象物の被印刷面に垂直な方向に沿って直線状に移動可能に支持し、上記駆動手段は、上記印刷マスク又は上記印刷対象物を、上記揺動とともに、該印刷対象物の被印刷面に垂直な方向に沿って直線状に移動させるように駆動可能なものであり、上記制御手段は、上記印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させる向きに予め設定した所定の回転角度だけ該印刷マスク又は該印刷対象物を揺動させ、その後、該印刷対象物の被印刷面に垂直な方向に沿って該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させる向きに該印刷マスク又は該印刷対象物を直線状に移動させるように、上記駆動手段を制御することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項4又は5の印刷装置において、上記印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させるときの該印刷マスク又は該印刷対象物の速度が、該印刷マスクの開口部の総数又は密度に応じて設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項4又は5の印刷装置において、上記印刷マスクの開口部の総数又は密度を検知する開口部検知手段を備え、上記制御手段は、上記印刷マスクの開口部の総数又は密度の検知結果に基づいて、該印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させるときの該印刷マスク又は該印刷対象物の速度を制御することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項4乃至7のいずれかの印刷装置において、上記印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させるときの該印刷マスク又は該印刷対象物の速度が、該印刷マスクのテンションに応じて設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項4乃至7のいずれかの印刷装置において、上記印刷マスクのテンションを検知するテンション検知手段を備え、上記制御手段は、上記テンション検知手段した印刷マスクのテンションに基づいて、上記印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させるときの該印刷マスク又は該印刷対象物の速度を制御することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかの印刷装置において、上記印刷マスクにおける上記複数の開口部が形成されている開口部形成領域の外縁から該印刷マスクが取り付けられるマスク取付部材までの距離を、該印刷マスクの開口部の総数又は密度に応じて設定したことを特徴とするものである。
【0008】
請求項11の発明は、複数の開口部が形成された印刷マスクを印刷対象物上にセットし、該印刷マスクの開口部に印刷物質を充填した後、該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させることにより、該印刷対象物の被印刷面に該印刷物質を印刷する印刷方法であって、上記印刷マスクとして、その複数の開口部が上記印刷物質の抜け方向にいくに従って次第に広がったテーパー状の内側壁を有するものを用い、上記印刷マスク及び上記印刷対象物の一方を他方に対して傾けるように該印刷マスク又は該印刷対象物を揺動させることを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項11の印刷方法において、上記印刷マスクの複数の開口部のテーパー角度は、上記揺動の支点である回転軸に近い開口部ほど大きいことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項11の印刷方法において、上記揺動の支点である回転軸と上記印刷マスクの開口部との距離は、該印刷マスクと該印刷対象物との離間時における該開口部の内側壁の移動軌跡と該開口部に充填されている印刷物質とが干渉しない程度に設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項11乃至13のいずれかの印刷方法において、上記印刷マスクのすべての開口部から上記印刷物質が抜ける程度まで該印刷マスク又は上記印刷対象物を揺動させ、その後、該印刷対象物の被印刷面に垂直な方向に沿って該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させる向きに該印刷マスク又は該印刷対象物を直線状に移動させることを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、請求項11乃至14のいずれかの印刷方法において、上記印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させるときの該印刷マスク又は該印刷対象物の速度を、該印刷マスクの開口部の総数又は密度に応じて設定することを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、請求項11乃至15のいずれかの印刷方法において、上記印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させるときの該印刷マスク又は該印刷対象物の速度を、該印刷マスクのテンションに応じて設定することを特徴とするものである。
また、請求項17の発明は、請求項11乃至16のいずれかの印刷方法において、上記印刷マスクの開口部の形成領域端部から該印刷マスクが取り付けられるマスク取付部材までの距離を、該印刷マスクの開口部の総数又は密度に応じて変更することを特徴とするものである。
【0009】
請求項18の発明は、複数の開口部が形成された印刷マスクであって、上記複数の開口部はそれぞれ、印刷物質の抜け方向にいくに従って次第に広がったテーパー状の内側壁を有し、該開口部のテーパー角度は、当該印刷マスクの一端部側から他端部側へいくにしたがって大きくなっていることを特徴とするものである。
また、請求項19の発明は、請求項18乃至21のいずれかの印刷マスクにおいて、上記複数の開口部の総数又は密度に応じて該印刷マスクのマスク取付部材の取り付け位置が設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項20の発明は、複数の開口部が形成された印刷マスクの製造方法であって、上記複数の開口部それぞれを、印刷物質の抜け方向にいくに従って次第に広がったテーパー状の内側壁を有し、そのテーパー角度が、当該印刷マスクの一端部側から他端部側へいくにしたがって大きくなるように形成することを特徴とするものである。
また、請求項21の発明は、請求項20の印刷マスクの製造方法において、上記印刷マスクの材料としてプラスチック材を用い、上記複数の開口部を、照射条件の設定変更が可能なレーザの照射によって形成することを特徴とするものである。
また、請求項22の発明は、請求項20又は21の印刷マスクの製造方法において、上記複数の開口部の総数又は密度に応じて該印刷マスクのマスク取付部材の取り付け位置を設定することを特徴とするものである。
【0011】
請求項1の印刷装置及び請求項11の印刷方法では、複数の開口部が形成された印刷マスクを印刷対象物上にセットし、印刷マスクの開口部に印刷物質を充填した後、印刷マスク及び印刷対象物の一方を他方に対して傾けるように印刷マスク又は印刷対象物を揺動させる。この揺動により、印刷マスクの一端部側から他端部側へ向けて印刷マスクと印刷対象物とを少しずつ離間させていくことができるため、印刷マスクが撓みにくくなり、従来のように傾けずに離間させる場合とは異なり、印刷マスクが大きく撓んで中央部が過剰な加速度で印刷対象物から離間することがない。
更に、上記印刷マスクの複数の開口部が、印刷物質の抜け方向にいくに従って次第に広がったテーパー状の内側壁を有することにより、上記揺動による離間時における各開口部の内側壁表面と印刷物質との接触抵抗が低下し、各開口部内に印刷物質が残留しにくい。
よって、撓みを生じ易い低剛性の印刷マスクを用いる場合でも、印刷対象物の被印刷面上で印刷物質の一部欠けや印刷抜けが生じにくく、印刷対象物の被印刷面の全体にわたって良好な印刷品質を得ることができる。
【0012】
また、請求項2の印刷装置及び請求項12の印刷方法では、上記印刷マスクの揺動による離間時に印刷対象物に対して相対移動する開口部の内側壁の移動軌跡と開口部内の印刷物質とが干渉しやすい上記揺動の支点である回転軸に近い開口部については、その開口部の内側壁のテーパー角度を大きくすることにより、上記印刷マスクの揺動による離間時における開口部の内側壁表面と印刷物質との接触抵抗を低下させて印刷物質の一部欠けや印刷抜けを防止する。そして、上記開口部の内側壁の移動軌跡と開口部内の印刷物質とが干渉しにくい上記回転軸から遠い開口部については、その開口部の内側壁のテーパー角度を小さくすることにより、互いに独立して隣り合う印刷物質からなる個別印刷パターン同士の接触を回避し、個別印刷パターンの密度を高めることができるとともに、印刷に使用される印刷物質の量を低減することができる。
【0013】
また、請求項3の印刷装置及び請求項13の印刷方法では、上記揺動の支点である回転軸と印刷マスクの開口部との距離が、印刷マスクと印刷対象物との離間時における開口部の内側壁の移動軌跡と開口部に充填されている印刷物質とが干渉しない程度に設定されているため、上記離間時に印刷面上の印刷物質が開口部の内側壁で掻き取られるのを回避し、印刷物質の一部欠けを確実に防止することができる。
なお、上記印刷マスクに形成されている複数の開口部それぞれのテーパー角度が互いに等しい場合は、それらの複数の開口部のうち上記回転軸に一番近い最近接開口部と、その回転軸との距離を、上記離間時における最近接開口部の内側壁の移動軌跡とその開口部に充填されている印刷物質とが干渉しない程度に設定すればよい。
【0014】
また、請求項4の印刷装置では、上記駆動手段で印刷マスク又は印刷対象物を揺動させることにより、オペレータによる操作で揺動させる場合とは異なり、予め設定された所定の離間速度による印刷マスクと印刷対象物との安定した離間動作を実現できる。
【0015】
また、請求項5の印刷装置及び請求項14の印刷方法では、第1の離間動作として、印刷マスクに形成されている複数の開口部から印刷物質がちょうど抜け終る程度まで印刷マスク又は印刷対象物を揺動させ、各開口部内に印刷物質が残留するのを防止することができる。そして、その印刷物質が抜け終った後、第2の離間動作として、印刷対象物の被印刷面に垂直な方向に沿って印刷マスクと印刷対象物とを離間させる向きに印刷マスク又は印刷対象物を直線状に移動させることにより、印刷マスクと印刷対象物との離間動作を速やかに終了させ、印刷工程のタクトの短縮を図ることができる。
【0016】
また、上記印刷装置において、印刷マスクの開口部の総数又は密度が大きくなるほど、印刷物質が充填された開口部と印刷対象物との密着力が大きくなり、印刷マスクと印刷対象物との離間時に印刷マスクが撓みやすくなる。
そこで、請求項6の印刷装置及び請求項15の印刷方法では、印刷マスクの開口部の総数又は密度に応じて、その総数又は密度が大きいほど上記離間時の印刷マスク又は印刷対象物の速度を小さくするように設定することにより、印刷マスクの撓みの発生を抑制し、印刷マスクの撓みに起因した過剰な離間速度の発生を防止できる。
【0017】
また、請求項7の印刷装置では、印刷マスクの開口部の総数又は密度の検知結果に基づいて、その総数又は密度の検知結果が大きいほど上記離間時の印刷マスク又は印刷対象物の速度を小さくするように制御することにより、印刷マスクの撓みの発生を抑制し、印刷マスクの撓みに起因した過剰な離間速度の発生を防止できる。しかも、上記速度の制御に用いる印刷マスクの開口部の総数又は密度を開口部検知手段で検知しているので、印刷マスクの開口部の総数又は密度をオペレータが事前に調べておく必要がない。
【0018】
また、上記印刷装置において、印刷マスクのテンションが小さくなるほど、印刷物質が充填された開口部と印刷対象物との密着力が大きくなり、印刷マスクと印刷対象物との離間時に印刷マスクが撓みやすくなる。
そこで、請求項8の印刷装置及び請求項16の印刷方法では、印刷マスクのテンションに応じて、そのテンションが小さいほど上記離間時の印刷マスク又は印刷対象物の速度を小さくするように設定することにより、印刷マスクの撓みの発生を抑制し、印刷マスクの撓みに起因した過剰な離間速度の発生を防止できる。
【0019】
また、請求項9の印刷装置では、印刷マスクのテンションの検知結果に基づいて、そのテンションの検知結果が小さいほど上記離間時の印刷マスク又は印刷対象物の速度を小さくするように制御することにより、印刷マスクの撓みの発生を抑制し、印刷マスクの撓みに起因した過剰な離間速度の発生を防止できる。しかも、上記速度の制御に用いる印刷マスクのテンションをテンション検知手段で検知しているので、印刷マスクのテンションをオペレータが事前に調べておく必要がない。
【0020】
また、上記印刷装置において、印刷マスクにおける複数の開口部が形成されている開口部形成領域の外縁から印刷マスクが取り付けられるマスク取付部材までの距離が長くなるほど、印刷物質が充填された開口部と印刷対象物との密着力が大きくなり、印刷マスクと印刷対象物との離間時に印刷マスクが撓みやすくなる。
そこで、請求項10の印刷装置及び請求項17の印刷方法では、印刷マスクの開口部の総数又は密度に応じて、開口部の総数又は密度が大きいほど上記印刷マスクの開口部形成領域の外縁からマスク取付部材までの距離を短くするように設定することにより、印刷マスクの撓みの発生を抑制し、印刷マスクの撓みに起因した過剰な離間速度の発生を防止できる。
【0021】
請求項18の印刷マスクでは、その印刷マスク又は印刷対象物を揺動させて両者を離間させるときに印刷対象物に対して相対移動する開口部の内側壁の移動軌跡と開口部内の印刷物質とが干渉しやすい上記揺動の支点である回転軸に近い開口部については、その開口部の内側壁のテーパー角度を大きくすることにより、開口部の内側壁表面と印刷物質との接触抵抗を低下させて印刷物質の一部欠けや印刷抜けを防止する。そして、上記開口部の内側壁の移動軌跡と開口部内の印刷物質とが干渉しにくい上記回転軸から遠い開口部については、その開口部の内側壁のテーパー角度を小さくすることにより、互いに独立して隣り合う印刷物質からなる個別印刷パターン同士の接触を回避し、個別印刷パターンの密度を高めることができるとともに、印刷に使用される印刷物質の量を低減することもできる。
また、請求項19の印刷マスクでは、その印刷マスクの開口部の総数又は密度に応じて、開口部の総数又は密度が大きいほど開口部形成領域の外縁からマスク取付部材までの距離を短くするように設定することにより、印刷マスクの撓みの発生を抑制し、印刷マスクの撓みに起因した過剰な離間速度の発生を防止できる。
【0022】
請求項20の印刷マスクの製造方法では、その製造方法で製造した印刷マスク又は印刷対象物を揺動させて両者を離間させるときに印刷対象物に対して相対移動する開口部の内側壁の移動軌跡と開口部内の印刷物質とが干渉しやすい上記揺動の支点である回転軸に近い開口部については、上記開口部の内側壁のテーパー角度を大きくすることにより、開口部の内側壁表面と印刷物質との接触抵抗を低下させて印刷物質の一部欠けや印刷抜けを防止する。そして、上記開口部の内側壁の移動軌跡と開口部内の印刷物質とが干渉しにくい上記回転軸から遠い開口部については、その開口部の内側壁のテーパー角度を小さくすることにより、互いに独立して隣り合う印刷物質からなる個別印刷パターン同士の接触を回避し、個別印刷パターンの密度を高めることができるとともに、印刷に使用される印刷物質の量を低減することもできる。
また、請求項21の印刷マスクの製造方法では、上記印刷マスクの材料としてプラスチック材を用い、そのプラスチック材に対して照射条件を変えながらレーザを照射することにより、様々なテーパー角度のテーパー状の内側壁を有する複数の開口部を形成することができる。
ここで、上記レーザとして紫外レーザ(例えばエキシマレーザ)を用いた場合は、印刷マスクに形成される開口部の内側面の表面粗さが小さくなり、開口部からの印刷物質の抜け性を高めることができる。
なお、印刷マスクの材料に対して放電加工条件を変えながら放電加工を行うことにより、様々なテーパー角度のテーパー状の内側壁を有する複数の開口部を形成してもよい。また、印刷マスクの材料に対してプレス加工条件を変えながらプレス加工を行うことにより、様々なテーパー角度のテーパー状の内側壁を有する複数の開口部を形成してもよい。
また、請求項22の印刷マスクの製造方法では、印刷マスクの開口部の総数又は密度に応じて、開口部の総数又は密度が大きいほど開口部形成領域の外縁からマスク取付部材までの距離を短くするように設定することにより、印刷マスクの撓みの発生を抑制し、印刷マスクの撓みに起因した過剰な離間速度の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、開口部に印刷物質が充填された印刷マスクと印刷対象物とを離間させる際に、印刷マスク及び印刷対象物の一方を他方に対して傾けるように印刷マスク又は印刷対象物を揺動させることにより、印刷マスクの一端部側から他端部側へ向けて印刷マスクと印刷対象物とを少しずつ離間させ、印刷マスクの撓みの発生を抑制するとともに、その離間速度は、印刷マスクの一端部側から他端部側の全体にわたってほぼ等しくなり、印刷マスク及び印刷対象物のいずれも傾けずに離間させる場合とは異なり、印刷マスクの中央部が過剰な加速度で印刷対象物から離間することがない。しかも、その印刷マスクに形成されている複数の開口部が、印刷物質が抜ける方向にいくに従って次第に広がったテーパー状の内側壁を有するので、上記揺動による離間時における各開口部の内側壁表面と印刷物質との接触抵抗が低下し、各開口部内に印刷物質が残留しにくい。以上により、撓みを生じ易い低剛性の印刷マスクを用いる場合でも、印刷対象物の被印刷面上で印刷物質の一部欠けや印刷抜けの発生を抑え、印刷対象物の被印刷面の全体にわたって良好な印刷品質を得ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る印刷方法を採用した印刷工程を含む基板製造方法全体の一例を示す工程図である。また、図2(a)及び(b)はそれぞれ、本実施形態の基板製造方法で製造する電子回路基板1の断面構造の一例を示す説明図及び平面図である。
基板1は、図2(a)に示すように第1の電子部品としての表面実装用の樹脂外装部品(以下、「樹脂外装チップ」という。)1bと、第2の電子部品としての表面実装用のベアチップ部品(以下、単に「ベアチップ」という。)1cとが実装された電子回路基板である。樹脂外装チップ1bは、樹脂で封止された半導体IC、抵抗、コンデンサー等の部品であり、ベアチップ1cは、樹脂で封止する前の裸の半導体ICチップである。基板1とベアチップ1cとの間には、ベアチップ1cが基板1上に安定して固定されるように樹脂55が充填されている。一方、基板1と樹脂外装チップ1bとの間には樹脂が充填されていない。
【0025】
また、上記基板1は、図2(b)に示すように所定の機能を有する同じ形状及び回路の仕様を有する個別基板100を多数(例えば数10個〜数100個)並べて一括形成された基板である。この基板1は、上記樹脂外装チップ1bやベアチップ1cが実装され所定の機能検査が行われた後、各個別基板100に分離される。これらの分離された個別基板100の一つ一つが所定の機能を有する回路モジュール部品として用いられる。
【0026】
図1に示す基板製造方法においては、まず、樹脂外装チップ1bやベアチップ1cが実装される前の基板1に、導電性の印刷物質(印刷剤)としてのクリーム半田3を印刷する半田印刷工程(P1)を実行される。この半田印刷工程の後、同一の1台の部品装着装置により、上記樹脂外装チップ1bを基板1の所定位置に装着する第1のマウント工程(P2)と、上記ベアチップ1cを基板1の所定箇所に装着する第2のマウント工程(P3)とが実行される。なお、第1のマウント工程と第2のマウント工程の順序は逆でもよい。
次に、上記樹脂外装チップ1b及びベアチップ1cのマウント工程の後、リフロー工程(P4)を実行する。このように2つのマウント工程(P2,P3)を実行した後に、リフロー工程を実行することにより、基板1上の電子部品に対する加熱回数を低減することができる。
次に、上記リフロー工程の後、基板1とベアチップ1cとの隙間に、その隙間を埋める充填剤としての樹脂55を充填する、アンダーフィル処理工程(P5)を実行する。
以上により、アンダーフィル処理を施さない外装チップ1bとアンダーフィル処理を施すベアチップ1cとを、同一の基板1上に混在実装することができる。
【0027】
以上、本実施形態の基板製造方法によれば、基板1上に実装した電子部品に対する加熱回数を低減することができるので、これら電子部品に与えるヒートショック回数を低減することができる。また、従来では個別に実施されていた樹脂外装部品1bのリフロー工程とベアチップ1cのリフロー工程とを同時に実施するので、処理工程数を低減して作業性を向上させることができる。
【0028】
上記基板製造方法を実現することができる基板製造システムは、例えば、基板1の所定の電極上にクリーム半田3を印刷する印刷装置と、基板1の所定位置に部品を位置決めして装着する部品装着装置としてのマウント装置と、ベアチップ1c及び樹脂外装チップ1bが装着された基板1を加熱するリフロー装置と、ベアチップ1cと基板1との隙間に樹脂55を充填するアンダーフィル装置とを用いて構成することができる。
【0029】
次に、上記基板製造方法の各工程のうち印刷対象物としての基板1の所定の電極上に印刷物質(印刷剤)としてのクリーム半田を印刷する印刷方法(半田印刷工程)及びそれに用いる印刷装置について説明する。
【0030】
図3は、本発明の実施形態に係る印刷方法(半田印刷工程)に用いることができる印刷装置の一例を示す概略構成図である。この印刷装置は、シート状のプラスチック材からなる孔版マスクである印刷マスク2を用いて、導電性の印刷物質(印刷剤)としてのクリーム半田3を基板1に印刷するものである。印刷マスク2は、所定の印刷パターンに応じて形成された厚さ方向に貫通した複数の開口部201を備え、所定のテンションでマスク取付部材としての四角形のマスク取付枠20に、紗膜を使用せずに直接貼り合わせられている。このマスク取付枠20に取り付けられた印刷マスク2は、回転軸を支点として揺動できるように支持手段で支持されている。この支持手段は、例えば図3に示すように、印刷マスク2のマスク取付枠20が装着される1組のマスク枠保持部材41,42を用いて構成されている。
【0031】
上記揺動中心側のマスク枠保持部材41は、マスク取付枠20の互いに対向する2辺の一方を保持するようにネジ止めされるプレート状の固定部材410と、図示しない装置本体側の軸受け部に回転自在に取り付けられる回転軸411を備えている。この回転軸411の軸中心が印刷マスク2の揺動の支点となる。
【0032】
一方、上記揺動先端側のマスク枠保持部材42は、マスク取付枠20の互いに対向する上記2辺のもう一方を保持するようにネジ止めされるプレート状の固定部材420と、駆動手段としてのマスク駆動ユニット6からの駆動力を受ける被駆動部421とを備える(図4参照)。被駆動部421には印刷マスク2の面方向に延びた長穴422が形成され、この長穴422に、マスク駆動ユニット6の駆動伝達可動部材600の先端に設けられた円柱状の突起部601が、長穴422の長手方向に沿って移動可能に挿入されている。揺動先端側のマスク枠保持部材42がマスク駆動ユニット6の駆動伝達可動部材600で持ち上げられるときには、その駆動伝達可動部材600の突起部601が長穴422の長手方向の内側端部から外側端部に向って移動する。
【0033】
上記マスク駆動ユニット6は、例えば、揺動先端側のマスク枠保持部材42に連結される駆動伝達可動部材600の端部に接続されたピストンがシリンダチューブ内部の内圧変化によって変位するシリンダ駆動機構を用いて構成することができる。また、マスク駆動ユニット6は、上記駆動伝達可動部材600をソレノイドで移動させるように構成してもよい。
【0034】
また、上記基板1は、電極が形成されている電極形成面(被印刷面)が上面になるようにステージ5上に保持されている。このステージ5の下面には、基板1の電極形成面(被印刷面)に垂直な上下方向に沿ってステージ5を直線状に進退移動させる駆動手段としての基板駆動ユニット7が設けられている。この基板駆動ユニット7は、正逆回転可能なステッピングモータ700と、ボールネジ及びモータ700で回転駆動される図示しないナット等からなるステージ上下動機構701とを用いて構成されている。このステッピングモータ700を回転制御することにより、上記ステージ5を上下方向に駆動し、基板1を、印刷マスク2に接触する所定の印刷位置まで上昇させたり、印刷マスク2から離間させるように下降させたりすることができる。
【0035】
また、上記印刷位置に移動したステージ5の上方には、印刷マスク2の開口部201にクリーム半田3を充填する充填手段が設けられている。この充填手段は、印刷マスク2の開口部201にクリーム半田3を刷り込むための充填部材としてのスキージ8、そのスキージ8を駆動ベルト等によって図中左右方向に駆動するための図示しないスキージ駆動ユニット等により構成されている。
【0036】
上記マスク駆動ユニット6、基板駆動ユニット7及びスキージ駆動ユニットは、CPU、RAM、ROMなどの備えるコンピュータ装置で構成された制御手段としての主制御部100によって制御される。主制御部100は、入力装置101からオペレータが入力した処理指示に基づいて、ハードディスクなどで構成された記憶装置102からプログラムや各種制御用データを読み込み、読み込んだプログラムを実行することにより、所定の印刷工程を行うように、上記マスク駆動ユニット6、基板駆動ユニット7及びスキージ駆動ユニット等を制御する。
【0037】
上記基板1上に印刷されるクリーム半田は、印刷対象物である基板1や半田付けされる電子部品の種類に応じて、所定の半田や添加物を含有するものが用いられる。例えば、上記微細パターンの印刷マスク2を用いて印刷するときに用いるクリーム半田としては、例えば半田の平均粒径が10μm以下であり、フラックス成分の含有率が11質量%程度のものが好ましい。
【0038】
図5は、上記印刷装置で用いる印刷マスク2の一例を示す拡大部分断面図である。印刷用マスク2には、各種電子部品が実装される電極にそれぞれ対応する複数の開口部201が設けられている。この開口部201は、印刷マスクの厚さ方向に貫通した貫通孔であり、その印刷面方向における形状及び寸法は、印刷対象の電極の寸法や形状等に応じて設定される。例えば微小印刷パターンの印刷を行う場合、開口部201の寸法及び形状は、一辺が100〜200μm程度の四角形や、同様な寸法の直径を有する円形である。
【0039】
また、上記印刷マスク2の複数の開口部201は、印刷物質としてのクリーム半田の抜け方向にいくに従って次第に広がったテーパー状の内側壁201aを有している。この印刷マスク2のテーパー状の内側壁201aを有する開口部(以下、「テーパー開口部」という。)201にクリーム半田を充填した後、印刷マスク2を揺動させて基板1から離間させるとき、テーパーがない円柱状の開口部(以下、「ストレート開口部」とう。)の場合に比して、各テーパー開口部201の内側壁表面とクリーム判断との接触抵抗が低下しているため、各テーパー開口部201内にクリーム半田が残留しにくい。
【0040】
また、図6(a)及び(b)に示すように、上記テーパー開口部201の場合は、印刷マスク2を揺動させて基板1から離間させるときに、テーパー開口部201の内側壁が基板1上に印刷されたクリーム半田3の上縁部や側壁部の一部を削り取ってしまうことなく、所定形状のクリーム半田からなる印刷パターンを確実に形成することができる。
これに対し、図7(a)及び(b)に示すように、上記ストレート開口部210の場合は、印刷マスク2を揺動させて基板1から離間させるときに、ストレート開口部210の内側壁の移動軌跡と、基板1上に印刷されたクリーム半田3の一部とが重なってしまい、クリーム半田3の上縁部301や側壁部の一部302がストレート開口部210の内側壁で削り取られてしまい、所定形状のクリーム半田からなる印刷パターンを形成することができない。
【0041】
なお、図5に示すように、上記印刷マスク201に形成される複数の開口部201それぞれのテーパー角度θtは、上記マスク駆動ユニットで駆動する印刷マスク2の揺動の支点がある回転軸411に近い開口部ほど大きくするのが好ましい。
【0042】
ここで、各開口部201のテーパー角度θtは、開口部201の中心が移動する移動軌跡を含む仮想面で切断された断面における内側壁面のテーパー角度θtであり、例えば、開口部201と回転軸411との距離La、すなわち回転軸411を中心とした開口部201の移動軌跡の曲率半径に応じて設定する。より具体的には、例えば印刷マスク2の開口部形成領域(印刷パターン領域)に形成されている複数の開口部201のうち、上記揺動の回転軸411から遠い開口部すなわち上記距離La(曲率半径)が長い開口部201については、テーパー角度θtを11°に設定する。また、開口部形成領域(印刷パターン領域)の中央に形成される開口部すなわち上記距離La(曲率半径)が中程度の開口部201についてはテーパー角度θtを13°に設定する。そして、上記揺動の回転軸411に近い開口部すなわち上記距離La(曲率半径)が短い開口部201についてはテーパー角度θtを16°に設定する。なお、このように各開口部201のテーパー角度θtを設定した場合、上記揺動の回転軸411に最も近い開口部201と回転軸411との距離La(最短曲率半径)は200〜300mmの範囲内に設定するこができ、より具体的には例えば265mmに設定される。
【0043】
また、上記各開口部201のテーパー角度θtは、上記開口部形成領域(印刷パターン領域)を上記回転軸411からの距離に応じて予め分割して設定した複数の領域(区画)ごとに設定してもよい。例えば、図8に示すように、上記開口部形成領域(印刷パターン領域)202を上記回転軸411からの距離に応じて、回転軸411から遠い第1領域202aと、中央の第2領域202bと、回転軸411に近い第3領域202cとに分割する。そして、第1領域202aの開口部201については相対的に小さめのテーパー角度θt(例えば11°)で形成し、第2領域202bの開口部201については中程度のテーパー角度θt(例えば13°)で形成し、第3領域202cの開口部201については大きめのテーパー角度θt(例えば16°)で形成する。
【0044】
以上のように、印刷マスク3の揺動による離間時に開口部201の内側壁の移動軌跡とその開口部201内のクリーム半田3とが干渉しやすい、回転軸により近い開口部201については、その開口部201の内側壁のテーパー角度θtを大きくすることにより、印刷マスク3の揺動による離間時における開口部201の内側壁表面とクリーム半田との接触抵抗を低下させてクリーム半田の一部欠けや印刷抜けを防止する。そして、上記開口部201の内側壁の移動軌跡とその開口部201内のクリーム半田3とが干渉しにくい、回転軸411から遠い開口部201については、その開口部201の内側壁のテーパー角度θtを小さくすることにより、互いに独立して隣り合うクリーム半田からなる個別印刷パターン同士の接触を回避し、印刷パターンの密度を高めることができるとともに、印刷に使用されるクリーム半田の量を低減することができる。
【0045】
また、上記各開口部201のテーパー角度θtは、印刷マスク2を基板1から離間させるように揺動させるときに開口部201の内側壁面の移動軌跡と、その開口部201に充填されたクリーム半田30とが干渉しない程度に設定するのが好ましい。この場合は、上記印刷マスク2の離間時に基板1の印刷面上のクリーム半田3が開口部201の内側壁で掻き取られるのを回避し、クリーム半田の一部欠けを確実に防止することができる。
【0046】
ここで、印刷マスク2に形成されている複数の開口部201それぞれのテーパー角度θtが互いに等しい場合は、それらの複数の開口部201のうち上記回転軸411に一番近い最近接開口部のテーパー角度θtを、上記離間時における最近接開口部の内側壁の移動軌跡とその開口部に充填されている印刷物質とが干渉しない程度に設定すればよい。
【0047】
また、例えば図8に示すように各開口部201のテーパー角度θtを複数の領域(区画)202a〜202cごとに設定する場合は、各領域それぞれにおいて、その領域内にある複数の開口部201のうち上記回転軸411に一番近い最近接開口部のテーパー角度θtを、上記離間時における最近接開口部の内側壁の移動軌跡とその開口部に充填されている印刷物質とが干渉しない程度に設定すればよい。
【0048】
また、印刷マスク2の各開口部201のテーパー角度θtが自由に変更して設定できず、他の何らかの理由によって所定の角度になっている場合は、それらの複数の開口部201のうち上記回転軸411に一番近い最近接開口部と回転軸411との距離(最短曲率半径)La(図5参照)を、上記離間時における最近接開口部の内側壁の移動軌跡とその開口部に充填されている印刷物質とが干渉しない程度に設定してもよい。
【0049】
また、印刷マスク2と基板1との離間時における印刷マスク2の撓み量に影響を与える要因として、(1)印刷総面積、(2)印刷マスク2のテンション、(3)クリーム半田3のフラックス含有量、及び(4)印刷条件(例えばスキージの印圧・アタック角度・速度等)が考えられる。これらの要因を考慮して上記離間時の印刷マスク2の速度(回転角速度)すなわち版離れ速度を切り換えるのが好ましい。
【0050】
例えば、図9(a)に示すように印刷総面積S1が広いと、図9(b)に示すようにクリーム半田3と印刷対象物である基板1との粘着力が強くなり、印刷マスク2が基板1側に引っ張られる引っ張り力F1が強くなるため、印刷マスク2の撓み量δ1が大きくなる。逆に、図10(a)に示すように印刷総面積S2が狭いと、図10(b)に示すようにクリーム半田3と印刷対象物である基板1との粘着力が弱くなり、印刷マスク2が基板1側に引っ張られる引っ張り力F2が弱くなるため、印刷マスク2の撓み量δ2が小さくなる。このように印刷総面積が増すほど、クリーム半田3と印刷対象物である基板1との粘着力が強くなり、印刷マスク2が基板1側に強い引っ張り力で引っ張られ、版離れの際の撓み量が大きくなる。(図11参照)。
【0051】
上記印刷総面積に関連するパラメータとしては、印刷マスク2の開口部201の総数や密度が挙げられる。この印刷マスク2の開口部201の総数又は密度が大きくなるほど、クリーム半田3と開口部201の内側壁との密着力が大きくなり、印刷マスク2と基板1との離間時に印刷マスク2が撓みやすくなる。そこで、図12(a)及び(b)に示すように、印刷マスク2の開口部201の総数又は密度に応じて、その総数又は密度が大きいほど上記離間時の印刷マスク2の速度(回転角速度)を小さくするように設定してもよい。この場合は、印刷総面積が広いとき、すなわち印刷マスク2の開口部201の総数又は密度が大きいときの印刷マスク2の撓みの発生を抑制し、印刷総面積すなわち印刷マスク2の開口部201の総数又は密度にかかわらず印刷マスク2の撓みに起因した過剰な離間速度及びバウンド現象の発生を抑制し、印刷のばらつきを防止できる。
【0052】
例えば、印刷マスク2の開口部201の総数又は密度の情報を取得する開口部情報取得手段を設け、その取得した情報に基づいて、その総数又は密度が大きいほど上記離間時の印刷マスク2の速度(回転角速度)を小さくするように、上記主制御部100で制御してもよい。上記開口部情報取得手段は、例えば、印刷マスクの製造に用いる後述のコントローラ900に接続される加工データ処理装置(コンピュータ装置)で構成することができる。そして、上記開口部201の総数又は密度の情報は、例えば上記加工データ処理装置(コンピュータ装置)において印刷マスク製造用の数値制御(NC:Numerical Control)データから算出することにより、取得することができる。
【0053】
また、印刷マスク2の開口部201の総数又は密度を検知する検知装置(開口部検知手段)を設け、その検知装置の検知結果に基づいて、その総数又は密度の検知結果が大きいほど上記離間時の印刷マスク2の速度(回転角速度)を小さくするように、上記主制御部100で制御してもよい。この場合は、印刷マスク2の開口部の総数又は密度をオペレータが事前に調べておく必要がない。
【0054】
上記印刷マスク2の開口部201の総数又は密度を検知する検知装置(開口部検知手段)は、例えば図13(a)及び(b)に示すように光を透過や反射を用いて検知するように構成することができる。図13(a)の検知装置では、ハロゲンランプや発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等の光源801により照射された光が印刷マスク2の所定領域の開口部201を通過し、この開口部201を通過した透過光をCCD(Charge-Coupled Devices)などの受光装置802で受光する。この受光した透過光の光量は開口部201の総数又は密度に応じて変化するので、受光装置802は開口部201の総数又は密度に応じた信号を出力することができる。また、図13(b)の検知装置では、光源803で印刷マスク2の開口部201が形成されている領域に光を照射しつつ、その光が照射されている領域をラインセンサカメラ804で走査することにより、開口部形成領域の光反射像を測定することができる。この開口部201で反射される光反射像の濃度、光量、コントラストなどは開口部201の総数又は密度に応じて変化するので、ラインセンサカメラ804の出力データに基づいて所定のデータ処理を行うことにより総数又は密度を示すデータを取得することができる。
【0055】
また、上記マスク取付枠20に取り付けられている印刷マスク2のテンションが小さくなるほど、クリーム半田3と開口部201との密着力が大きくなり、印刷マスク2と基板1との離間時に印刷マスク2が撓みやすくなる。そこで、図14に示すようにマスク取付枠20に取り付けられている印刷マスク2のテンションに応じて、そのテンションが小さいほど上記離間時の印刷マスク2の速度(回転角速度)を小さくするように、予め設定してもよい。この場合は、印刷マスク2のテンションが小さいときの印刷マスク2の撓みの発生を抑制し、印刷マスク2のテンションにかかわらず印刷マスク2の撓みに起因した過剰な離間速度及びバウンド現象の発生を抑制し、印刷のばらつきを防止できる。
【0056】
例えば、印刷マスク2のテンションを検知する例えばテンションゲージからなる検知装置(テンション検知手段)を設け、その検知装置の検知結果に基づいて、そのテンションの検知結果が小さいほど上記離間時の印刷マスク2の速度(回転角速度)を小さくするように、主制御部100で制御してもよい。この場合は、印刷マスクのテンションをオペレータが事前に調べておく必要がない。
【0057】
また、図15(a)に示すようにクリーム半田3のフラックス3aの含有量a(%)が多いと、クリーム半田3内のフラックス3aが開口部201の周辺ににじむ領域(半径R1)が広くなる。そのため、図15(b)に示すようにクリーム半田3と印刷対象物である基板1との粘着力が強くなり、印刷マスク2が基板1側に引っ張られる引っ張り力F1が強くなるため、印刷マスク2の撓み量δ1が大きくなる。逆に、図16(a)に示すようにクリーム半田3のフラックス3aの含有量b(%)が少ないと、クリーム半田3内のフラックス3aが開口部201の周辺ににじむ領域(半径R2)が狭くなる。そのため、図16(b)に示すようにクリーム半田3と印刷対象物である基板1との粘着力が弱くなり、印刷マスク2が基板1側に引っ張られる引っ張り力F2が弱くなるため、印刷マスク2の撓み量δ2が小さくなる。このようにクリーム半田3のフラックス含有量が増えると、クリーム半田3内のフラックス3aが開口部201の周辺ににじみやすくなり、開口部201の周辺ににんじんだフラックス3aは、印刷マスク2と印刷対象物である基板1との密着力を大きくするように作用し、印刷マスク2と基板1との離間時に印刷マスク2が撓みやすくなる(図17参照)。
【0058】
そこで、図18に示すようにクリーム半田3のフラックス含有量に応じて、そのクリーム半田3のフラックス含有量が多いほど上記離間時の印刷マスク2の速度(回転角速度)を小さくするように、予め設定してもよい。この場合は、クリーム半田3のフラックス含有量が多いときの印刷マスク2の撓みの発生を抑制し、クリーム半田3のフラックス含有量にかかわらず印刷マスク2の撓みに起因した過剰な離間速度及びバウンド現象の発生を抑制し、印刷のばらつきを防止できる。
【0059】
また、クリーム半田3の印刷条件も印刷マスク2の撓みに影響を及ぼす。例えば、クリーム半田3の印刷に用いるスキージの押圧力である印圧が大きくなると、印刷対象物である基板1に転写されるクリーム半田3が多くなる傾向があるとともに、クリーム半田3中のフレックスもにじみ出やすくなり、印刷マスク2の裏側(基板に対向している面側)の開口部201の周辺に裏まわりする。この裏まわりのフラックスの量が増えると、クリーム半田3の基板1に対する粘着力が大きくなり、印刷マスク2と基板1との離間時に印刷マスク2が撓みやすくなる。すなわち、図19に示すように、印圧が大きくなるほど印刷マスク2と基板1との離間時に印刷マスク2が撓みやすくなる。
【0060】
そこで、図20に示すように印刷条件の印圧に応じて、その印圧が大きいほど上記離間時の印刷マスク2の速度(回転角速度)を小さくするように、予め設定してもよい。この場合は、印圧が大きいときの印刷マスク2の撓みの発生を抑制し、印圧の大小にかかわらず印刷マスク2の撓みに起因した過剰な離間速度及びバウンド現象の発生を抑制し、印刷のばらつきを防止できる。
【0061】
また、上記印刷マスク2における複数の開口部201が形成されている開口部形成領域の外縁から印刷マスク2が取り付けられるマスク取付枠20までの距離が長くなるほど、クリーム半田3と開口部201の内側壁との密着力が大きくなり、印刷マスク2と基板1との離間時に印刷マスク2が撓みやすくなる。そこで、印刷マスク2の開口部201の総数又は密度に応じて、開口部201の総数又は密度が大きいほど印刷マスク2の開口部形成領域の外縁からマスク取付枠20までの距離を短くするように設定してもよい。この場合は、印刷マスク2の撓みの発生を抑制し、印刷マスク2の撓みに起因した過剰な離間速度の発生を防止できる。
【0062】
また、上記印刷マスク2における複数の開口部201が形成されている開口部形成領域に面するマスク取付枠20の内側のサイズ(以下「内枠サイズ」という。)は、印刷工程で支障が生じない範囲でなるべく小さく必要最小限に設定するのが好ましい。マスク取付枠20の内枠サイズ(スパン)が小さくなると、以下に示すように印刷マスク2と基板1との離間時のクリーム半田3の粘着力による印刷マスク2の撓み量δが小さくなる(図21参照)。
【0063】
図21において、印刷マスク2の撓み量δは、次式(1)で表される(機械設計便覧参照)。
δ=W・L/(192・E・I) ・・・(1)
W:荷重
E:印刷マスクのヤング率
I:印刷マスクの断面2次モーメント
L:印刷マスクの内枠間のスパン(内枠サイズ)
【0064】
また、上記印刷マスク2の断面2次モーメントIは、次式(2)で表される。
I=bh/12 ・・・(2)
b:印刷マスクの長さ(スパンLに相当)
h:印刷マスクの厚さ
【0065】
上記(1)式及び(2)式により、印刷マスク2の撓み量δは次式(3)で表される。
δ=W・L/(16・E・h) ・・・(3)
【0066】
ここで、上記印刷マスク2の内枠間のスパンLすなわち「内枠サイズ」のみが異なり、他のパラメータW,E,hは同じであるとすると、例えば印刷マスク2の枠サイズがそれぞれ650mm及び380mmの場合の撓み量δ650,δ380の比は次式(4)のようになり、印刷マスク2の枠サイズが650mmから380mmになることで撓み量δが約1/3に減少することがわかる。例えば、枠サイズが650mmのマスク取付枠20で撓み量が5mm程度だったものが、枠サイズが380mmのマスク取付枠20では撓み量が1.7mm程度になる。
δ380/δ650=380/650=0.342 ・・・(4)
【0067】
このようにマスク取付枠20の内枠サイズを小さくすると、印刷マスク2と基板1との離間時(版離れ時)のクリーム半田3の粘着力による印刷マスク2の撓み量δが小さくなるので、版離れ時における印刷マスク2の撓みに起因した過剰な離間速度及びバウンド現象の発生を抑制し、印刷のばらつきを防止できる。
【0068】
なお、印刷装置における印刷マスク2のマスク取付枠20の取り付け部の制約等により、マスク取付枠20の外側のサイズ(以下「外枠サイズ」という。)が所定のサイズに固定されている場合がある。この場合は、マスク取付枠20の外枠サイズは上記所定のサイズに統一するとともに、図22(a)及び(b)に例示するように、印刷領域、スキージングストローク、スキージングサイズなどを考慮しつつ、内枠サイズがなるべく小さくなるように、マスク取付枠20内に桟20aを設ける。
【0069】
また、図23に示すように、上記印刷マスク2の揺動の支点となる回転軸の軸中心Caが、印刷マスク2の基板1に対向する下面を通る仮想マスク基準面Smからずれる、「オフセット」が存在する場合がある。この場合は、回転軸を支点として印刷マスク2を揺動させるときに印刷マスク2の各テーパー開口部201の内壁面とテーパー開口部201に充填されたクリーム半田3とが干渉しやすくなる。従って、上記軸中心Caは仮想マスク基準面Sm上に位置するように構成するのが好ましい。また、上記上記オフセットが存在する場合は、そのオフセットを考慮して、各テーパー開口部201のテーパー角度θtや、各テーパー開口部201と回転軸411との距離Laを設定するのが好ましい。
【0070】
例えば、図23に示すように、上記印刷マスク2の揺動の支点となる回転軸の軸中心Caが仮想マスク基準面Smから下方にオフセットしている場合、テーパー開口部201の四隅の4点a1,a2,a3,a4の移動軌跡の曲率半径Rはそれぞれ、回転軸の軸中心Caを原点(0,0)とした座標系で表すと、次式(5)〜(8)のようになる。
a1点: R=(D1+B)+A ・・・(5)
a2点: R=((D1+D2)/2+B)+(A+T) ・・・(6)
a3点: R=B+A ・・・(7)
a4点: R=((D1−D2)/2+B)+(A+T) ・・・(8)
【0071】
また、上記印刷マスク2の揺動の支点となる回転軸の軸中心Caが仮想マスク基準面Smから上方にオフセットしている場合、テーパー開口部201の四隅の4点a1,a2,a3,a4の移動軌跡の曲率半径Rはそれぞれ、回転軸の軸中心Caを原点(0,0)とした座標系で表すと、次式(5)’〜(8)’のようになる。
a1点: R=(D1+B)+(A+T) ・・・(5)’
a2点: R=((D1+D2)/2+B)+A ・・・(6)’
a3点: R=B+(A+T) ・・・(7)’
a4点: R=((D1−D2)/2+B)+A ・・・(8)’
【0072】
ここで、回転軸の軸中心Caを支点として印刷マスク2を上方に揺動させるときに印刷マスク2の各テーパー開口部201の内壁面とテーパー開口部201に充填されたクリーム半田3とが干渉しないための条件は、テーパー開口部201の四隅の4点a1,a2,a3,a4の移動軌跡の曲率半径をそれぞれR1,R2,R3,R4とすると、次式(9)及び(10)で表される。
R1>R2 ・・・(9)
R4>R3 ・・・(10)
【0073】
そして、上記回転軸の軸中心Caが仮想マスク基準面Smから下方にオフセットしている場合(図23)は、上記条件式(9)を満たしにくく、テーパー開口部201における軸中心Caから遠い側の側壁面がクリーム半田3と干渉しやすくなる。一方、上記回転軸の軸中心Caが仮想マスク基準面Smから上方にオフセットしている場合は、上記条件式(10)を満たしにくく、テーパー開口部201における軸中心Caに近い側の側壁面がクリーム半田3と干渉しやすくなる。
【0074】
例えば、上記仮想マスク基準面Smからのオフセットがなくテーパー開口部201のテーパー角度θtが比較的大きな場合の数値例として、A=0mm、D1=180μm、D2=150μm、B=200mmを上記(5)〜(8)式に代入すると、各点a1,a2,a3,a4の移動軌跡の曲率半径R1,R2,R3,R4はそれぞれ次のような値になる。これらの値は、上記条件式(9)及び(10)を満たし、印刷マスク2の各テーパー開口部201の側壁面とテーパー開口部201に充填されたクリーム半田3とが干渉しないことがわかる。
R1=200.180mm
R2=200.165mm
R3=200.000mm
R4=200.015mm
【0075】
上記回転軸の軸中心Caが仮想マスク基準面Smから下方にオフセットし、テーパー開口部201のテーパー角度θtが比較的小さな場合の数値例として、A=10mm、D1=180μm、D2=178μm、B=200mmを上記(5)〜(8)式に代入すると、各点a1,a2,a3,a4の移動軌跡の曲率半径R1,R2,R3,R4はそれぞれ次のような値になる。この場合は、上記条件式(9)を満たさないので、印刷マスク2のテーパー開口部201の中心Caから遠い側壁面と、テーパー開口部201に充填されたクリーム半田3とが干渉してしまう。
R1=200.430mm
R2=200.431mm
R3=200.250mm
R4=200.253mm
【0076】
上記テーパー開口部201のテーパー角度θtや上記オフセットが予め設定されている場合に、印刷マスク2のテーパー開口部201の側壁面とクリーム半田3との干渉を確実に防止するためには、開口部201と回転軸411との距離La(図23中の距離B+D1/2に相当)を長くするように印刷マスク2の水平方向の位置を調整するようにしてもよい。
【0077】
図24(a)及び(b)は、回転軸411に対する印刷マスク2の位置を調整するように駆動することができる印刷マスク2の駆動機構(マスク駆動手段)の一例を示す説明図である。この駆動機構では、印刷マスク2のマスク取付枠20の回転軸411側の端部が、マスク枠保持部材41のベース部材412と平板状のマスククランパ413とで挟み込むように保持されている。マスク枠保持部材41の長手方向の一方の端部は、直線運動(LM:Linear Motion)ガイド部材414に装着され、他方の端部は、モータ415で回転駆動されたボールネジ416の可動部に装着されている。モータ415を回転駆動することにより、印刷マスク2を図中矢印D方向に直線的に移動させ、印刷マスク2の位置を調整することができる。
【0078】
また、図25〜図29に示すように、上記オフセットをゼロにするように印刷マスク2の高さを調整するマスク高さ調整機構(マスク高さ調整手段)を設けてもよい。
【0079】
図25のマスク高さ調整機構では、印刷マスク2のマスク取付枠を保持するマスク枠保持部材420の下部支持部材420aとベース部材421との間に1組の平行リンク422が設けられている。モータ424により連結部材423を前後方向(矢印E1方向)に移動させると平行リンク422が揺動し、マスク枠保持部材420が矢印E1で示す前後方向に移動するとともに上下方向に(矢印E2方向)に移動するので、印刷マスク2の高さを調整できる。
【0080】
図26のマスク高さ調整機構では、印刷マスク2のマスク取付枠を保持するマスク枠保持部材430の両端部430a,430bがそれぞれ、クロスローラガイド等の摺動機構431を介して側方支持部材432,433に装着されている。マスク枠保持部材430の下面には、モータ434で上下動される上下動機構435の可動部の上端が取り付けられている。モータ434により上下動機構435の可動部を上下方向(矢印F方向)に移動させると、マスク枠保持部材430が上下方向(矢印G方向)に移動するので、印刷マスク2の高さを調整できる。
【0081】
図27のマスク高さ調整機構では、印刷マスク2のマスク取付枠を保持するマスク枠保持部材440の下面が、支持機構441により上下動可能に且つ下方に付勢されるように支持され、マスク枠保持部材440の端部にカムフォロワー442が取り付けられている。このカムフォロワー442には、モータ443で前後方向に駆動される駆動部材444の斜面が接している。モータ443により駆動部材422を前後方向(矢印H方向)に移動させると、その駆動部材422の斜面に接しているカムフォロワー442を介して、マスク枠保持部材440が上下方向(矢印I方向)に移動するので、印刷マスク2の高さを調整できる。
【0082】
図28のマスク高さ調整機構では、印刷マスク2のマスク取付枠を保持するマスク枠保持部材450の両端部の下面それぞれに、ベース部材451に設けられた上下ガイド動機構452の上端部が装着されている。また、マスク枠保持部材450の中央部の下面には、モータ453で回転駆動されるボールネジ454の上端部が取り付けられている。モータ453によりボールネジ454が回転駆動されると、ベース部材451を基準にしてボールネジ454の上端部が上下方向(矢印J方向)に移動し、マスク枠保持部材430が同じく上下方向(矢印K方向)に移動するので、印刷マスク2の高さを調整できる。
【0083】
図29のマスク高さ調整機構では、印刷マスク2のマスク取付枠を保持するマスク枠保持部材460の両端部の下面それぞれに、ベース部材461に設けられたブレーキ462a付きの上下動ガイド機構462の上端部が装着されている。上下動ガイド機構462としては例えばクロスローラを用いることができる。また、マスク枠保持部材460の中央部の下面とベース部材461の上面との間には、図示しないモータで回転駆動される偏心カム453が設けられている。モータによりカム463が図中矢印Lで示すように回転駆動されると、ベース部材461を基準にしてマスク枠保持部材460が上下方向(矢印M方向)に移動するので、印刷マスク2の高さを調整できる。
【0084】
上記構成の印刷装置を用いた印刷工程は例えば次のように行う。まず、印刷マスク2をマスク枠保持部材41,42に固定した後、上記モータ6を回転駆動して基板1を保持したステージ5を上昇させ、印刷マスク2に接触させる。そして、印刷マスク2の上面にクリーム半田3をセットし、スキージ8を図3の矢印A方向に移動させることにより、印刷マスク2の開口部201にクリーム半田3を充填して刷り込む。
次に、上記クリーム半田3を充填した印刷マスク2と基板1とを接触させたままの状態で、印刷条件に基づいて予め設定された待ち時間の計時を開始する。そして、所定の待ち時間が経過しクリーム半田3のタッキング力(粘着力)が高まった状態で、上記マスク枠保持部材41,42で支持された印刷マスク2を回転軸411の軸中心を支点として揺動させる。これにより、図3中の矢印B方向に示すように印刷マスク2が基板1の電極形成面(被印刷面)に対して次第に傾きながら基板1から少しずつ離れていく。この印刷マスク2の揺動により、印刷マスク2の回転軸4cとは反対側の端部側から回転軸側の端部側へ向けて印刷マスク2と基板1とを少しずつ離間させていくことができるため、印刷マスク2が撓みにくくなり、従来のように傾けずに離間させる場合とは異なり、印刷マスク2が大きく撓んでその中央部が過剰な加速度で基板1から離間することがない。
【0085】
また、上記構成の印刷装置を用いた印刷工程における印刷マスク離間動作は、例えば次にように2段階に分けて行ってもよい。まず、第1の離間動作として、印刷マスク2に形成されている複数の開口部9からクリーム半田3がちょうど抜け終る程度まで印刷マスク2を揺動させ、各開口部9内にクリーム半田3が残留するのを防止することができる。
次に、上記印刷マスク2の各開口部201からクリーム半田3が抜け終った後、第2の離間動作として、上記モータ6を回転駆動してステージ5を図3中の矢印C方向に下降させ、基板1の被印刷面に垂直な方向に沿って印刷マスク2と基板1とを離間させる向きに印刷マスク2を下方へ直線的に移動させる。これにより、印刷マスク2と基板1との離間動作を速やかに終了させ、印刷工程のタクトの短縮を図ることができる。
【0086】
以上、本実施形態における印刷マスク2を用いた印刷方法及び印刷装置によれば、開口部201にクリーム半田3が充填された印刷マスク2と基板1とを離間させる際に、印刷マスク2を基板1に対して傾けるように印刷マスク2を揺動させることにより、印刷マスク1の一端部側から回転軸411側の他端部側へ向けて印刷マスク2を少しずつ離間させ、印刷マスク2の撓みの発生を抑制する。また、その印刷マスク2の離間速度は、印刷マスク2の一端部側から他端部側の全体にわたってほぼ等しくなり、印刷マスク及び基板のいずれも傾けずに離間させる場合とは異なり、印刷マスク2の中央部が過剰な加速度で基板1から離間することがない。しかも、その印刷マスク2に形成されている複数の開口部201が、クリーム半田3が抜ける方向にいくに従って次第に広がったテーパー状の内側壁を有するので、上記揺動による離間時における各開口部201の内側壁表面とクリーム半田3との接触抵抗が低下し、各開口部201内にクリーム半田3が残留しにくい。以上により、撓みを生じ易い低剛性の印刷マスク2を用いる場合でも、基板1の電極形成面(被印刷面)上で印刷パターンのクリーム半田の一部欠けや印刷抜けの発生を抑え、基板1の電極形成面(被印刷面)の全体にわたって良好な印刷品質を得ることができる。
【0087】
なお、上記図3に示す印刷装置では、印刷マスク2を間に挟んで回転軸411とは反対側を回転移動させることにより印刷マスク2を揺動させているが、図30に示すように回転軸411を間に挟んで印刷マスク2とは反対側を回転移動させることにより印刷マスク2を揺動させてもよい。図30の印圧装置では、装置本体テーブル650の上面の中央部分に、基板1がセットされるバックアップジグを含むステージ5が装着されている。そして、装置本体テーブル650の上面の端部に回転自在に設けられた回転軸411に、印刷マスク2のマスク取付枠20の端部を支持するマスク枠保持部材470が装着されている。また、この回転軸411を間に挟んで印刷マスク2とは反対側にあるマスク枠保持部材470の端部には、マスク駆動ユニット6の駆動伝達可動部材600の先端が取り付けられている。このマスク駆動ユニット6は、前述の図3の実施形態と同様に、揺動先端側のマスク枠保持部材42に連結される駆動伝達可動部材600の端部に接続されたピストンがシリンダチューブ内部の内圧変化によって変位するシリンダ駆動機構や、ソレノイド等で構成することができる。
【0088】
次に、上記印刷マスク2の製造方法について説明する。
図31は、上記印刷マスク2の製造に用いる印刷マスク加工装置の一例を示す概略構成図である。この装置は、光源としてのエキシマレーザ910、照射光学系920、シャッター機構930、アパチャーマスク940、結像光学系950、加工対象物である印刷マスク材960が載置される加工対象物駆動手段としての載置台962及びX−Yステージ963、制御手段としてのコントローラ900等により構成されている。加工対象物としては、厚さが約150μmの2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)又はポリイミドからなる印刷マスク用プラスチックシート(以下、「プラスチックシート」という。)200を用いている。このプラスチックシート200のレーザービーム入射側の表面(印刷時に印刷対象物に接する側の表面)には、PETよりも熱収縮率が大きい被膜として、上記カーボンを含有させたポリウレタン樹脂からなる導電性被膜を形成してもよい。このように導電性被膜を形成しておくと、本方法で製造した印刷マスク2を用いて印刷する場合に、スキージングや印刷マスクの剥離時の静電気による印刷対象物(基板)上のデバイスの破損を防止することができる。
【0089】
上記エキシマレーザ910は、コントローラ900により制御された駆動回路911から出力される駆動トリガ信号に基づいて、所定の繰り返し周波数(例えば200Hz)で紫外領域(例えば、波長=248nm)のパルスレーザービームLを出射するKrFエキシマレーザである。
【0090】
上記照射光学系920は、光学アッテネータ921、アパチャーマスク940に照射される光の断面形状を調整する断面形状調整手段としてのビーム形状調整光学系922、照射レンズ群923、反射ミラー924等により構成されている。光学アッテネータ921は、表面に多層膜が形成された1組の石英ガラス板により構成され、その石英ガラス板の傾きにより通過するレーザービームのエネルギー密度を変化させることができる。この光学アッテネータ921により、レーザービームのエネルギー密度が、印刷マスク材としてのプラスチックシート200の加工に適した照射エネルギー密度に調整される。例えば、プラスチックシート200の表面における照射エネルギー密度が、0.7J/cm(縮小率M=3)〜2.5J/cm(縮小率M=8)程度に調整される。
【0091】
上記光学アッテネータ921のレーザービーム光路下流側に配置されているビーム形状調整光学系922は、断面が半月状のシリンドリカルレンズや凹レンズ等からなるコリメータ光学素子等により構成されている。このビーム形状調整光学系922により、レーザービームの断面形状が、例えば一辺の寸法が約11〜12mm程度のほぼ正方形の形状に整形される。
【0092】
上記照射レンズ群923は、ビーム形状調整光学系922によって断面形状がほぼ正方形にされたレーザービームをアパチャーマスク940上に集光するものである。この照射レンズ群923からのレーザービームは、反射ミラー924により下方のアパチャーマスク940に向けて反射される。
【0093】
上記シャッター機構930は、アパチャーマスク940に形成されている開口パターンの一部を覆うものであり、レーザービームLの光軸に垂直で互いに直交する2方向(X方向およびY方向)において外側から挟み込むように移動可能な2組のシャッター部材と、そのシャッター部材の移動を制御する駆動制御手段としての駆動モータなどからなる駆動系933とにより構成されている。この駆動系933は、駆動回路934を介してコントローラ900により制御され、各シャッター部材を独立に移動できるようになっている。
【0094】
上記シャッター機構930の開口を通過したレーザービームは、所定形状の開口が形成されているアパチャーマスク940に照射される。このアパチャーマスク940は、レーザービームの照射に対する耐熱性及び耐摩耗性等が優れたステンレス板やガラス基板上に誘電体多層膜を形成したものなどで構成することができ、剛性を有する枠体941に着脱自在に取り付けられている。枠体941は、レーザービームの光軸と直交する水平な平面のX方向及びY方向に移動させることができるとともに、光軸周りに回転駆動することができる保持手段としてのX−Y−θテーブル942上に配設されている。このX−Y−θテーブル942は、アパチャーマスク駆動手段としての駆動モータ等からなる駆動系943で駆動される。この駆動は、駆動回路944を介してコントローラ900により制御される。
【0095】
上記結像光学系950は、アパチャーマスク940の1区画上の光通過パターンを通過した光を、プラスチックシート200上に所定の縮小率(例えば、1/5)で結像するものであり、複数の反射ミラー951,952,953,955及び結像光学素子としての結像レンズ群954等により構成されている。これら複数の反射ミラーのうち反射ミラー952及び953は、図30の左右方向に移動可能に取り付けられ、アパチャーマスク940と結像レンズ群954の中心と間の上流側の光路長L1と、結像レンズ群954の中心と印刷マスク材60との間の下流側の光路長L2との光路長比L2/L1を変える光路長比可変手段を構成している。ここで、上記下流側の光路長L2は固定され、上記反射ミラー952及び953を同時に、例えば図30の右方向に移動させて上記上流側の光路長L1を長くすると、光路長比L2/L1が小さくなる。したがって、プラスチックシート200の1加工パターンの1辺の長さを、アパチャーマスク940上の1区画の1辺の長さで割った値である縮小率を大きく、その縮小率の逆数であるM値(倍率)を小さくすることができる。
【0096】
上記プラスチックシート200はマスク取付枠20に取り付けられ、略水平な載置面を有する載置台962上に載置される。この載置台962は、載置面を、図30の紙面に対して直交する水平な平面のX方向と、Y方向とに移動させることができるX−Yテーブル963上に配設されている。このX−Yテーブル963は、リニアモータ、超音波モータあるいはピエゾ素子などで構成された駆動系964を介して、X−Y方向に駆動される。上記駆動系964は、コントローラ900からの駆動指令に基づいて駆動系の駆動モータに駆動電力を供給する駆動回路965により駆動制御される。
【0097】
図31(a)は、上記エキシマレーザ光の照射によるアブレーション加工の際のプラスチックシート200の加工部分の拡大断面図である。前記照射エネルギー密度の大小は、加工スピードにも影響するが、特に、堀り込み加工された開口部201の内側壁201aのテーパー角度の大小に大きい影響を与える。照射エネルギー密度とテーパー角度θtとの関係は、照射エネルギー密度が大きいときは、テーパー角度θtは小、照射エネルギー密度が小さいときは、テーパー角度θtは大となる。照射エネルギー密度を徐々に上げていき、一定の限度以上に達すると、図31(b)に示すようにテーパー角度θtは小さくなる。図31(b)とは反対に照射エネルギー密度を小さくしていくと、図31(c)に示すようにテーパー角度θtは大きくなる。
【0098】
本実施形態では、比較的小さな照射エネルギー密度の紫外レーザ光を所定回数繰り返し照射することにより、テーパー角度θtが9〜11°(M値=8)、13°(M値=5)、14°(M値=4)、16°(M値=3)、18°(M値=2)程度と大きい開口部201を形成している。この開口部201を形成して製造した印刷マスク1を上下反転して基板1等の印刷対象物に密着させ、前述のようにスキージ8等を用いて印刷を行う。
【0099】
表1は、加工装置の結像レンズ群954の焦点距離の設定を変化させ、紫外レーザ光を所定回数繰り返し照射することによりテーパーを有する開口部201を形成した複数種類の加工例の結果を示している。この加工例では、加工対象のプラスチックシート200として、厚さ25μmのポリイミドからなるプラスチックシートを用いた。なお、表1中のテーパー角度θt(°)は、図33に示すように開口部201の内側壁面201aのレーザ光入射側の「だれ」の部分を除いた直線的なテーパー部分で測定したものである。
【0100】
【表1】

【0101】
なお、上記印刷マスク製造の実施形態では、前述のようにプラスチックシートとしてのPETよりも熱収縮率が大きな上記カーボンを含有させたウレタンからなる導電性被膜200をレーザービーム入射側の表面に形成したプラスチックシート200を用いたり、PETよりも熱膨張率が小さな被膜をレーザービーム入射側の表面に形成したプラスチックシートを用いたりしてもよい。また、レーザービーム入射側とは反対側の裏面に、PETよりも熱収縮率が小さく若しくは熱膨張率が大きい被膜を形成したプラスチックシート200を用いてもよい。例えば、上記裏面にIBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法によってNi,Ti,Al等の金属被膜を形成したプラスチックシート200を用いてもよい。
【0102】
また、上記印刷マスク製造の実施形態では、PET又はポリイミドからなるプラスチックシート200を用いているが、ポリカーボネイト、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン等の他の材料からなるプラスチックシートを用いてもよい。
【0103】
また、上記印刷マスク製造の実施形態では、KrFエキシマレーザから出射されるアブレーション加工可能な紫外レーザービーム(波長:248nm)を用いたが、これに限定されるものではなく、他のエネルギービームを用いた場合にも適用することができる。例えば、ArFレーザ、Fレーザ等のエキシマレーザから出射される紫外レーザービームを用いた場合や、シンクロトロン放射光(SOR)中の加工対象物に対してアブレーション可能な波長成分を用いた場合にも適用することができる。
【0104】
また、紫外レーザ以外のYAGレーザを照射してテーパー開口部201を形成する加工方法及び加工装置を用いたり、放電加工やプレス加工によってテーパー開口部201を形成する加工方法及び加工装置を用いたりしてもよい。放電加工を行う場合は、例えば、テーパー開口部201の形状に対応するようにテーパー加工した放電電極を用いる。また、プレス加工を行う場合は、テーパー開口部201の形状に対応するように先端をテーパー加工したパンチを用いる。
【0105】
なお、上記実施形態では、基板1に対して印刷マスク2を傾けるように揺動(回転)させているが、印刷マスク2に対して基板1を傾けるように揺動(回転)させてもよい。また、基板1及び印刷マスク2をそれぞれ水平の位置からに傾けて両者を徐々に離間させるように揺動(回転)させてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、印刷対象物が基板1である場合について説明したが、本発明は、印刷対象物として基板1以外の半導体ウェーハなどの電子部品の表面に印刷する場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷方法を採用した印刷工程を含む基板製造方法全体の一例を示す工程図。
【図2】(a)及び(b)はそれぞれ同基板製造方法で製造する電子回路基板の断面構造の一例を示す説明図及び平面図。
【図3】本発明の実施形態に係る印刷方法(半田印刷工程)に用いることができる印刷装置の一例を示す概略構成図。
【図4】同印刷装置における揺動先端側のマスク枠保持部材の部分斜視図。
【図5】同印刷装置で用いる印刷マスクの一例を示す拡大部分断面図。
【図6】(a)及び(b)はそれぞれ印刷マスクの揺動前及び揺動中の部分拡大断面図。
【図7】(a)及び(b)はそれぞれ比較例に係る印刷マスクの揺動前及び揺動中の部分拡大断面図。
【図8】他の実施形態に係る印刷マスクの一例を示す拡大部分断面図。
【図9】(a)及び(b)は印刷総面積が広いときの印刷マスクの撓みの様子を示す説明図。
【図10】(a)及び(b)は印刷総面積が狭いときの印刷マスクの撓みの様子を示す説明図。
【図11】印刷総面積と印刷マスクの引っ張り力及び撓みとの関係を示すグラフ。
【図12】(a)及び(b)はそれぞれ印刷マスクの速度(回転角速度)の最適値と印刷マスクの開口部の総数及び密度との関係を示すグラフ。
【図13】(a)及び(b)はそれぞれ印刷マスクの開口部の総数又は密度を検知する検知装置の概略構成を示す説明図。
【図14】印刷マスクの速度(回転角速度)の最適値と印刷マスクのテンションとの関係を示すグラフ。
【図15】(a)及び(b)はクリーム半田のフラックス含有量が多いときの印刷マスクの撓みの様子を示す説明図。
【図16】(a)及び(b)はクリーム半田のフラックス含有量が少ないときの印刷マスクの撓みの様子を示す説明図。
【図17】クリーム半田のフラックス含有量と印刷マスクの引っ張り力及び撓みとの関係を示すグラフ。
【図18】印刷マスクの速度(回転角速度)の最適値とクリーム半田のフラックス含有量との関係を示すグラフ。
【図19】印圧と印刷マスクの引っ張り力及び撓みとの関係を示すグラフ。
【図20】印刷マスクの速度(回転角速度)の最適値と印圧との関係を示すグラフ。
【図21】印刷マスクの撓みのモデル図。
【図22】(a)及び(b)はそれぞれ内部に桟を設けた印刷マスクの構成例を示す説明図。
【図23】印刷マスクの回転中心のオフセットがある場合の印刷マスクのモデル図。
【図24】(a)及び(b)はそれぞれ、回転軸(回転中心)に対する印刷マスクの位置を調整するように駆動することができる印刷マスクの駆動機構の一例を示す平面図及び正面図。
【図25】マスク高さ調整機構の一構成例を示す説明図。
【図26】マスク高さ調整機構の他の構成例を示す説明図。
【図27】マスク高さ調整機構の更に他の構成例を示す説明図。
【図28】マスク高さ調整機構の更に他の構成例を示す説明図。
【図29】マスク高さ調整機構の更に他の構成例を示す説明図。
【図30】他の実施形態に係る印刷装置の概略構成を示す正面図。
【図31】印刷マスクの製造に用いる印刷マスク加工装置の一例を示す概略構成図。
【図32】(a)〜(c)はそれぞれエキシマレーザ光の照射によるアブレーション加工の際のプラスチックシートの加工部分の拡大断面図。
【図33】テーパー開口部におけるテーパー角度θtの測定位置の説明図。
【符号の説明】
【0108】
1 基板
2 印刷マスク
3 クリーム半田
5 ステージ
6 マスク駆動ユニット
7 基板駆動ユニット
8 スキージ
20 マスク取付枠
41 揺動中心側のマスク枠保持部材
42 揺動先端側のマスク枠保持部材
100 主制御部
201 開口部
201a 内側壁
202 開口部形成領域(印刷パターン領域)
410 固定部材
411 回転軸
420 固定部材
421 被駆動部
422 長穴
600 駆動伝達可動部材
601 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部が形成された印刷マスクを印刷対象物上にセットし、該印刷マスクの開口部に印刷物質を充填した後、該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させることにより、該印刷対象物の被印刷面に該印刷物質を印刷する印刷装置であって、
上記印刷マスク及び上記印刷対象物の一方を他方に対して傾けるように該印刷マスク又は該印刷対象物を揺動可能に支持する支持手段を備え、
上記印刷マスクの複数の開口部は、上記印刷物質の抜け方向にいくに従って次第に広がったテーパー状の内側壁を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1の印刷装置において、
上記印刷マスクの複数の開口部のテーパー角度は、上記揺動の支点である回転軸に近い開口部ほど大きいことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1の印刷装置において、
上記揺動の支点である回転軸と上記印刷マスクの開口部との距離は、該印刷マスクと該印刷対象物との離間時における該開口部の内側壁の移動軌跡と該開口部に充填されている印刷物質とが干渉しない程度に設定されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの印刷装置において、
上記支持手段に支持された上記印刷マスク又は上記印刷対象物を、上記回転軸を支点として揺動させるように駆動する駆動手段と、該駆動手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4の印刷装置において、
上記支持手段は、上記印刷マスク又は上記印刷対象物を、上記揺動可能に支持するとともに、該印刷対象物の被印刷面に垂直な方向に沿って直線状に移動可能に支持し、
上記駆動手段は、上記印刷マスク又は上記印刷対象物を、上記揺動とともに、該印刷対象物の被印刷面に垂直な方向に沿って直線状に移動させるように駆動可能なものであり、
上記制御手段は、上記印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させる向きに予め設定した所定の回転角度だけ該印刷マスク又は該印刷対象物を揺動させ、その後、該印刷対象物の被印刷面に垂直な方向に沿って該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させる向きに該印刷マスク又は該印刷対象物を直線状に移動させるように、上記駆動手段を制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項4又は5の印刷装置において、
上記印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させるときの該印刷マスク又は該印刷対象物の速度が、該印刷マスクの開口部の総数又は密度に応じて設定されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項4又は5の印刷装置において、
上記印刷マスクの開口部の総数又は密度を検知する開口部検知手段を備え、
上記制御手段は、上記印刷マスクの開口部の総数又は密度の検知結果に基づいて、該印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させるときの該印刷マスク又は該印刷対象物の速度を制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれかの印刷装置において、
上記印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させるときの該印刷マスク又は該印刷対象物の速度が、該印刷マスクのテンションに応じて設定されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項4乃至7のいずれかの印刷装置において、
上記印刷マスクのテンションを検知するテンション検知手段を備え、
上記制御手段は、上記テンション検知手段した印刷マスクのテンションに基づいて、上記印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させるときの該印刷マスク又は該印刷対象物の速度を制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかの印刷装置において、
上記印刷マスクにおける上記複数の開口部が形成されている開口部形成領域の外縁から該印刷マスクが取り付けられるマスク取付部材までの距離を、該印刷マスクの開口部の総数又は密度に応じて設定したことを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
複数の開口部が形成された印刷マスクを印刷対象物上にセットし、該印刷マスクの開口部に印刷物質を充填した後、該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させることにより、該印刷対象物の被印刷面に該印刷物質を印刷する印刷方法であって、
上記印刷マスクとして、その複数の開口部が上記印刷物質の抜け方向にいくに従って次第に広がったテーパー状の内側壁を有するものを用い、
上記印刷マスク及び上記印刷対象物の一方を他方に対して傾けるように該印刷マスク又は該印刷対象物を揺動させることを特徴とする印刷方法。
【請求項12】
請求項11の印刷方法において、
上記印刷マスクの複数の開口部のテーパー角度は、上記揺動の支点である回転軸に近い開口部ほど大きいことを特徴とする印刷方法。
【請求項13】
請求項11の印刷方法において、
上記揺動の支点である回転軸と上記印刷マスクの開口部との距離は、該印刷マスクと該印刷対象物との離間時における該開口部の内側壁の移動軌跡と該開口部に充填されている印刷物質とが干渉しない程度に設定されていることを特徴とする印刷方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれかの印刷方法において、
上記印刷マスクのすべての開口部から上記印刷物質が抜ける程度まで該印刷マスク又は上記印刷対象物を揺動させ、その後、該印刷対象物の被印刷面に垂直な方向に沿って該印刷マスクと該印刷対象物とを離間させる向きに該印刷マスク又は該印刷対象物を直線状に移動させることを特徴とする印刷方法。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれかの印刷方法において、
上記印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させるときの該印刷マスク又は該印刷対象物の速度を、該印刷マスクの開口部の総数又は密度に応じて設定することを特徴とする印刷方法。
【請求項16】
請求項11乃至15のいずれかの印刷方法において、
上記印刷マスクと上記印刷対象物とを離間させるときの該印刷マスク又は該印刷対象物の速度を、該印刷マスクのテンションに応じて設定することを特徴とする印刷方法。
【請求項17】
請求項11乃至16のいずれかの印刷方法において、
上記印刷マスクの開口部の形成領域端部から該印刷マスクが取り付けられるマスク取付部材までの距離を、該印刷マスクの開口部の総数又は密度に応じて変更することを特徴とする印刷方法。
【請求項18】
複数の開口部が形成された印刷マスクであって、
上記複数の開口部はそれぞれ、印刷物質の抜け方向にいくに従って次第に広がったテーパー状の内側壁を有し、
該開口部のテーパー角度は、当該印刷マスクの一端部側から他端部側へいくにしたがって大きくなっていることを特徴とする印刷マスク。
【請求項19】
請求項18の印刷マスクにおいて、
上記複数の開口部の総数又は密度に応じて該印刷マスクのマスク取付部材の取り付け位置が設定されていることを特徴とする印刷マスク。
【請求項20】
複数の開口部が形成された印刷マスクの製造方法であって、
上記複数の開口部それぞれを、印刷物質の抜け方向にいくに従って次第に広がったテーパー状の内側壁を有し、そのテーパー角度が、当該印刷マスクの一端部側から他端部側へいくにしたがって大きくなるように形成することを特徴とする印刷マスクの製造方法。
【請求項21】
請求項20の印刷マスクの製造方法において、
上記印刷マスクの材料としてプラスチック材を用い、
上記複数の開口部を、照射条件の設定変更が可能なレーザの照射によって形成することを特徴とする印刷マスクの製造方法。
【請求項22】
請求項20又は21の印刷マスクの製造方法において、
上記複数の開口部の総数又は密度に応じて該印刷マスクのマスク取付部材の取り付け位置を設定することを特徴とする印刷マスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2009−6588(P2009−6588A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170314(P2007−170314)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(593128172)リコーマイクロエレクトロニクス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】