説明

厚さ測定方法

【課題】厚さ測定方法に関し、より詳細には、透明な薄膜層と基底層との境界面に対する干渉光の位相変化を測定し、マイクロ以下の単位の厚さを有する透明な薄膜層の厚さを正確に測定できる厚さ測定方法を提供すること。
【解決手段】干渉計を用いて基底層上に積層された対象層の厚さを測定するための厚さ測定方法であって、前記対象層と実質的に同じ材質で設けられ、互いに異なる厚さを有したサンプル層から前記サンプル層の厚さに対する位相差の相関式を取得するステップと、空気層と前記基底層との境界面で、前記基底層に入射される光軸方向に対する第1の干渉信号を求めるステップと、前記対象層と前記基底層との境界面で、前記光軸方向に対する第2の干渉信号を求めるステップと、前記光軸方向に対して実質的に同じ高さで、前記第1の干渉信号の位相と前記第2の干渉信号の位相との間の位相差を求めるステップと、前記位相差を前記相関式に代入して、前記対象層の厚さを決定するステップとを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さ測定方法に関し、より詳細には、透明な薄膜層と基底層との境界面に対する干渉光の位相変化を測定し、マイクロ以下の単位の厚さを有する透明な薄膜層の厚さを正確に測定できる厚さ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工程及びFPD工程において、品質を決定する種々の要因のうち、薄膜層の厚さの制御が占める比重が大きいため、これを工程中に直接モニタリングすることが必須であるといえる。「薄膜層」とは、基底層、すなわち、基板の表面に形成させた極めて微細な厚さを有する層であって、一般的に、厚さが数十Å〜数μmの範囲をいう。これらの薄膜層を特定の用途で応用するためには、薄膜層の厚さ、組成、照度、及びその他、物理的、光学的な特性を知る必要がある。特に、最近には、半導体素子の集積度を高めるために、基板上に超薄膜層を多層で形成することが一般的な傾向である。このような高集積半導体素子を開発するためには、特性に大きな影響を与える因子である薄膜層の厚さを含む膜の物性を正確に制御しなければならない。
半導体工程及びその他の応用工程などで使用する薄膜層の厚さを測定するには、種々の方式があるが、探針(stylus)を用いた機械的な方法、光学的な方法などが最も一般的である。光学的方法のうち、白色光干渉計(white light interferometer)を用いて薄膜層の厚さを決定することができる。
【0003】
図1は、従来の厚さ測定方法の一例を示した図である。
【0004】
同図に示すように、基底層10上に厚さ測定の対象層20である透明な薄膜層が積層され、対象層20の上側には空気層30が存在する。第1の面21は、空気層30と対象層20との境界面を含み、第2の面11は、対象層20と基底層10との境界面を含む。対象層20は、傾斜しており、線形の厚さを有する。
【0005】
一般的な白色光干渉計を用いて相対的に対象層20の厚さが厚い第1の面21の一方の位置22に向けて干渉光を照射すると、第1の面の位置22から生じる干渉信号41及び第2の面の位置12から生じる干渉信号42を得ることができる。第1の面の干渉信号41と第2の面の干渉信号42とは、空間的に十分に離れて分離可能であるため、両干渉信号41、42の最高値の差を利用してその位置22での対象層20の厚さを求めることができる。
【0006】
しかし、相対的に対象層20の厚さが薄い位置23は、上記のような方法によって対象層20の厚さを求めることが不可能である。すなわち、相対的に対象層20の厚さが薄い第1の面の他方の位置23に向けて干渉光を照射すると、第1の面の位置23から生じる干渉信号と第2の面の位置13から生じる干渉信号とが重なりつつ、1つの干渉信号43が形成される。このように、厚さが薄い位置で生じ得る重なった干渉信号43では、対象層20の厚さを求め出すことのできる両方の最高値を抽出することができないため、薄い厚さを有した透明な対象層20に対しては、干渉信号を用いることができないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、このような従来の問題点を解決するためのものであって、予め設けられたサンプルを用いて、透明な薄膜層の厚さに対して透明な薄膜層と基底層との境界面で位相差の相関式を求め、この相関式を利用してマイクロ以下の単位の厚さを有する透明な薄膜層の厚さを正確に測定できる厚さ測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記の目的を達成するための本発明の厚さ測定方法は、干渉計を用いて基底層上に積層された対象層の厚さを測定するための厚さ測定方法であって、前記対象層と実質的に同じ材質で設けられ、互いに異なる厚さを有したサンプル層から前記サンプル層の厚さに対する位相差の相関式を取得するステップと、空気層と前記基底層との境界面で、前記基底層に入射される光軸方向に対する第1の干渉信号を求めるステップと、前記対象層と前記基底層との境界面で、前記光軸方向に対する第2の干渉信号を求めるステップと、前記光軸方向に対して実質的に同じ高さで、前記第1の干渉信号の位相と前記第2の干渉信号の位相との間の位相差を求めるステップと、前記位相差を前記相関式に代入して、前記対象層の厚さを決定するステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る厚さ測定方法において、望ましくは、前記第1の干渉信号の位相と前記第2の干渉信号の位相との間の位相差を求めるステップが、前記第1の干渉信号で基準になる第1の信号値を設定し、前記光軸方向に対して前記第1の信号値が得られる高さを第1の高さとして設定し、前記第1の信号値の位相を第1の位相として設定するステップと、前記第1の高さと実質的に同じ高さで得られる第2の干渉信号の信号値を第2の信号値として設定し、前記第2の信号値の位相を第2の位相として設定するステップと、前記第1の位相と前記第2の位相との間の位相差を求めるステップとを含む。
【0010】
本発明に係る厚さ測定方法において、望ましくは、前記第1の干渉信号及び前記第2の干渉信号が光強度であり、前記第1の信号値が前記第1の干渉信号の最高値である。
【0011】
本発明に係る厚さ測定方法において、望ましくは、前記相関式を取得するステップは、一方の厚さを有するサンプル層を設けるステップと、前記空気層と前記基底層との境界面で、前記光軸方向に対する第3の干渉信号を求めるステップと、前記サンプル層と前記基底層との境界面で、前記光軸方向に対する第4の干渉信号を求めるステップと、前記光軸方向に対して実質的に同じ高さで、前記第3の干渉信号の位相と前記第4の干渉信号の位相との間の位相差を求めるステップと、他方の厚さを有するサンプル層を設け、そのサンプル層に対して第3の干渉信号を求めるステップと、前記第4の干渉信号を求めるステップと、前記位相差を求めるステップとを繰り返すステップと、複数の厚さ情報及び複数の位相差情報を利用して曲線合わせ(fitting)し、前記サンプル層の厚さに対する位相差の相関式を決定するステップとを含む。
【0012】
本発明に係る厚さ測定方法において、望ましくは、前記位相差を求めるステップが、前記第3の干渉信号で基準になる第3の信号値を設定し、前記光軸方向に対して前記第3の信号値が得られる高さを第3の高さとして設定し、前記第3の信号値の位相を第3の位相として設定するステップと、前記第3の高さと実質的に同じ高さで得られる第4の干渉信号の信号値を第4の信号値として設定し、前記第4の信号値の位相を第4の位相として設定するステップと、前記第3の位相と前記第4の位相との間の位相差を求めるステップとを含む。
【0013】
本発明に係る厚さ測定方法において、望ましくは、前記第3の干渉信号及び前記第4の干渉信号が光強度であり、前記第3の信号値が前記第3の干渉信号の最高値である。
【0014】
本発明に係る厚さ測定方法において、望ましくは、前記相関式が線形部または非線形部を備える。
【0015】
本発明に係る厚さ測定方法において、望ましくは、前記対象層の厚さが連続的に変わる方向に沿って前記空気層と前記基底層との境界面及び前記対象層と前記基底層との境界面の複数の位置で、前記第1の干渉信号を求めるステップと、前記第2の干渉信号を求めるステップと、前記位相差を求めるステップとを繰り返すステップと、前記複数の位置に対して、前記位相差のグラフを算出するステップと、前記グラフの不連続点の位相差に2πの倍数を加減して位相復元(phase unwrapping)し、位相復元された位相差を求めるステップとをさらに含み、前記対象層の厚さを決定するステップが、前記位相復元された位相差を前記相関式に代入して、前記対象層の厚さを決定する。
【0016】
本発明に係る厚さ測定方法において、望ましくは、前記位相復元された位相差を求めるステップが、前記空気層と前記基底層との境界面での位相差を基準とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、空気層と基底層との境界面での干渉信号の位相と透明な薄膜層と基底層との境界面での干渉信号の位相との間の位相差を用いて薄膜層の厚さを測定することにより、マイクロ以下の単位の厚さを有する透明な薄膜層の厚さを正確に測定できる厚さ測定方法が提供される。
【0018】
また、測定しようとする透明な薄膜層と同じ材質からなり、互いに異なる厚さを有するサンプル層を用いて厚さと位相差との間の相関式を求めると、測定しようとする透明な薄膜層と基底層との境界面での位相と空気層と基底層との境界面での位相との間の位相差を求めるだけでも薄膜層の厚さを測定することが可能であるため、厚さ測定にかかる手続及び時間を低減できる厚さ測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の厚さ測定方法の一例を示した図である。
【0020】
【図2】本発明に係る厚さ測定方法を実現するための干渉計の一例を示した図である。
【0021】
【図3】本発明の一実施形態に係る厚さ測定方法のフローチャートである。
【0022】
【図4】対象層と実質的に同じ材質で設けられ、互いに異なる厚さを有するサンプル層及び基底層に干渉光を照射して取得した干渉信号を示した図である。
【図5】対象層と実質的に同じ材質で設けられ、互いに異なる厚さを有するサンプル層及び基底層に干渉光を照射して取得した干渉信号を示した図である。
【0023】
【図6】サンプル層の厚さに対して位相差の相関式をグラフで示した図である。
【0024】
【図7】図3の厚さ測定方法が適用される透明な薄膜層を概略的に示した図である。
【0025】
【図8】図3の厚さ測定方法の第1の干渉信号を求めるステップ及び第2の干渉信号を求めるステップを説明するための図である。
【0026】
【図9】対象層の厚さが連続的に変わる方向に沿って対象層と基底層との境界面で複数の位置に対する位相差をグラフで示した図である。
【0027】
【図10】図9のグラフの不連続点の位相差を位相復元し、位相復元された位相差をグラフで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る厚さ測定方法の実施形態を添付した図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図2は、本発明に係る厚さ測定方法を実現するための干渉計の一例を示した図である。
【0030】
同図に示すように、前記干渉計100は、透明な薄膜層の厚さを測定するのに一般的に用いられるミラウ干渉計の構成を採用する。前記干渉計100は、白色光源101を備え、白色光源101としては、ハロゲンランプなどを含む多様なソースのランプが用いられ得る。白色光源101から入射された光をスペクトル特性を変えずに、単に輝度のみを減らすために、灰色フィルタ(ND filter、Neutral Density filter)102が設けられる。前記干渉計100は、灰色フィルタ102を通過した光を集中させる集光レンズ103を備える。集光レンズ103を通過した光は、その光を平行光に作るコリメーター104(collimator)を通過する。
【0031】
コリメーター104を通過した光は、光分割器111により反射されて反射光53を形成し、反射光53は、対物レンズ131側に入射される。
ここで、光分割器111は、反射率と透過率が50:50であるものを用いる。対物レンズ131から入射される光は、光分割器132によってさらに反射光57と透過光55とに分割される。前記透過光55は、測定光であって、透明な薄膜層である対象層20及び基底層10側に照射され、前記反射光57は、基準光であって、基準ミラー133に照射される。前記光分割器132は、基準ミラー133から反射された基準光57と、対象層20と基底層10との境界面により反射された測定光55とを集めて干渉光を作るためのものである。また、前記基準ミラー133は、光分割器132から入射される基準光57を反射させて、さらに光分割器132に入射させるためのものである。
【0032】
前記干渉計100は、光分割器111から入射される干渉光59を結像させる結像レンズ121と、干渉光59から干渉信号を検出する検出器122とを備える。一般的に、検出器122としては、測定しようとする領域に適した画素数を有するCCD(Charge Coupled Device)カメラが用いられる。
【0033】
また、前記干渉計100は、測定点を基底層10と交差する方向、すなわち、光軸方向に微小間隔移動しつつ、干渉信号を取得する駆動部140を備える。対物レンズ131を収容する鏡筒130は、駆動部140に装着されて、駆動部140の作動により対物レンズ131の光軸方向への移動が可能になる。ここで、基底層10に入射される垂直な光軸方向Aを図2のz軸として定義する。このように、対物レンズ131をz軸方向に沿って測定点の上下に数十nm間隔で移動しつつ、検出器122を介して強い干渉信号が検出される位置を探すようになる。
【0034】
以下、上述したように構成された干渉計100を用いて、本発明に係る厚さ測定方法の実施形態について、図3〜図10を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態に係る厚さ測定方法のフローチャートであり、図4及び図5は、対象層と実質的に同じ材質で設けられ、互いに異なる厚さを有するサンプル層及び基底層に干渉光を照射して取得した干渉信号を示した図であり、図6は、サンプル層の厚さに対して位相差の相関式をグラフで示した図であり、図7は、図3の厚さ測定方法が適用される透明な薄膜層を概略的に示した図であり、図8は、図3の厚さ測定方法の第1の干渉信号を求めるステップ及び第2の干渉信号を求めるステップを説明するための図であり、図9は、対象層の厚さが連続的に変わる方向に沿って対象層と基底層との境界面で複数の位置に対する位相差をグラフで示した図であり、図10は、図9のグラフの不連続点の位相差を位相復元し、位相復元された位相差をグラフで示した図である。
【0036】
前記干渉計100を用いて基底層10上に積層された対象層20の厚さを測定するために、まず、互いに異なる厚さd1、d2を有する複数のサンプル層20a、20bからサンプル層20a、20bの厚さに対する位相差の相関式を取得する(S110)。ここで、サンプル層20a、20bは、今後測定する透明な薄膜層である対象層20と同じ材質で構成される。
【0037】
前記相関式150を取得するために、まず、一方の厚さd1を有するサンプル層20aを設ける(S111)。前記サンプル層20aの厚さ情報は既に知られている情報であって、別に厚さ測定器を利用して測定する必要はないが、検証された他の厚さ測定器で測定して厚さ情報を得ることもできる。
【0038】
以後、図4に示すように、空気層30と基底層10とが当接する境界面13の一方の位置で、基底層10に入射される垂直な光軸方向A、すなわち、z軸方向に対して第3の干渉信号51を求める(S112)。本実施形態において、第3の干渉信号51は、空気層30と基底層10とが当接する境界面13に向けて照射された干渉光の光強度の変化信号である。また、サンプル層20aと基底層10とが当接する境界面11の一方の位置で、z軸方向に対して第4の干渉信号61を求める(S113)。第3の干渉信号51と同様に、本実施形態において、第4の干渉信号61は、サンプル層20aと基底層10とが当接する境界面11に向けて照射された干渉光の光強度の変化信号である。
【0039】
次いで、z軸方向に沿って実質的に同じ高さで第3の干渉信号51の位相と第4の干渉信号61の位相との間の位相差を求める(S114)。
【0040】
第3の干渉信号51を求めた後、第3の干渉信号51で基準になる光強度である第3の信号値53を設定するが、望ましくは、第3の干渉信号51である光強度の最高値を第3の信号値53として設定する。そして、z軸方向に対して第3の信号値53が得られる高さを第3の高さとして設定し、第3の信号値53の位相を第3の位相として設定する(S117)。また、第4の干渉信号61を求めた後、z軸方向に対して第3の高さと実質的に同じ高さに対応する第4の干渉信号61の値を第4の信号値63として設定する。そして、第4の信号値63が得られる位相を第4の位相として設定する(S118)。このように設定された第3の位相と第4の位相との間の差を第3の干渉信号51の位相と第4の干渉信号61の位相との間の位相差として設定する(S119)。
【0041】
次に、図5に示すように、他方の厚さd2を有するサンプル層20bを設け、そのサンプル層20bに対して第3の干渉信号51を求めるステップ(S112)と、第4の干渉信号71を求めるステップ(S113)と、第3の干渉信号51の位相と第4の干渉信号71の位相との間の位相差を求めるステップ(S114)とを繰り返す(S115)。上記のようなステップを互いに異なる厚さd1,d2を有する複数個のサンプル層20a,20bに対して繰り返すようになると、複数の厚さ情報と複数の位相差情報とを取得することができる。後述する相関式をより正確に決定するために、サンプル層の数量は多ければ多いほど良い。
【0042】
このように得られた複数の厚さ情報と複数の位相差情報とを利用して曲線合わせ(fitting)し、図6に示すように、サンプル層の厚さに対する位相差の相関式150を決定する(S116)。相関式150は、線形部または非線形部を備え、その相関式は、次の(1)式で表される。
【0043】
[数1]
y=(a×x+b)+g(x)・・・(1)
【0044】
ここで、xは第3の干渉信号51の位相と第4の干渉信号61、71の位相との間の位相差であり、yはサンプル層20a、20bの厚さである。線形部と非線形部の定数値を決定する最適化アルゴリズムとしては、非線形最小二乗法(nonlinear least square method)を利用することができ、Levenberg−Marquardtの非線形最小二乗法を利用することもできる。
【0045】
前記相関式150を取得した後、図7及び図8に示すように、実際の厚さを測定しようとする対象層20を含む測定物に対して厚さを測定する過程を行う。測定物は、対象層20が基底層10上に積層され、対象層20上に空気層30がある部位と、対象層20なしで空気層30と基底層10とが直接当接する部位と、両部位の間で対象層20の厚さが0から所定厚さd11まで連続的に変わる傾斜部25とを備える。ここで、対象層20は、空気層30と対象層20との境界面での干渉信号の最高値と、対象層20と基底層10との境界面での干渉信号の最高値とが重なる程度の薄い厚さを有し、実質的には、1μm以下である透明な薄膜層である。
【0046】
対象層20の厚さd11を測定するために、まず、空気層30と基底層10との境界面13の一方の位置で、基底層10に垂直な光軸方向A、すなわち、z軸方向に対して第1の干渉信号161を求める(S120)。本実施形態において、第1の干渉信号161は、空気層30と基底層10とが当接する境界面13に向けて照射された干渉光の光強度の変化信号である。また、対象層20と基底層10とが当接する境界面11の一方の位置で、z軸方向に対して第2の干渉信号171を求める(S130)。第1の干渉信号161と同様に、本実施形態において、第2の干渉信号171は、対象層20と基底層10とが当接する境界面11に向けて照射された干渉光の光強度の変化信号である。
【0047】
次いで、z軸方向に沿って実質的に同じ高さで第1の干渉信号161の位相と第2の干渉信号171の位相との間の位相差を求める(S140)。
【0048】
第1の干渉信号161を求めた後、第1の干渉信号161で基準になる光強度である第1の信号値163を設定するが、望ましくは、第1の干渉信号161である光強度の最高値を第1の信号値163として設定する。そして、z軸方向に対して第1の信号値163が得られる高さを第1の高さとして設定し、第1の信号値163の位相を第1の位相として設定する(S141)。また、第2の干渉信号171を求めた後、z軸方向に対して第1の高さと実質的に同じ高さに対応する第2の干渉信号171の値を第2の信号値173として設定する。そして、第2の信号値173が得られる位相を第2の位相として設定する(S142)。このように設定された第1の位相と第2の位相との間の差を第1の干渉信号161の位相と第2の干渉信号171の位相との間の位相差として設定する(S143)。
【0049】
第1の干渉信号161の位相と第2の干渉信号171の位相との間の位相差を相関式150にすぐ代入する前に、その位相差を位相復元(phase unwrapping)した後、位相復元された位相差を相関式150に代入することが好ましい。
【0050】
対象層20の厚さが連続的に変わる方向、すなわち、図7に示された「B」方向に沿って空気層30と基底層10との境界面13及び対象層20と基底層10との境界面11の複数の位置で、第1の干渉信号161を求めるステップ(S120)と、第2の干渉信号171を求めるステップ(S130)と、第1の干渉信号161の位相と第2の干渉信号171の位相との間の位相差を求めるステップ(S140)とを繰り返すようになると(S151)、複数の位相差情報を求めることができる。
【0051】
前記複数の位相差情報を利用して「B」方向に対する位相差のグラフを算出すれば、図9に示されたグラフ181を得ることができる(S152)。ここで、空気層30と基底層10との境界面13での位相を基準値とし、その値を0に設定する。図9に示すように、第1の信号値163の位相と第2の信号値173の位相との間の位相差は、−π〜+π範囲内で値が決定されるので、−π位相差近辺または+π位相差近辺で不連続点を有するようになる。このような不連続点での位相差は、実際の位相差を反映するのではなく、−π〜+π範囲内で位相差が決定されることに基づいて不連続点が発生する。対象層20の厚さが連続的に変わる方向(「B」方向)に沿って位相差の変化を求めるようになると、たとえ、グラフ181上では、下位の不連続点182と上位の不連続点183とが一致しないが、対象層20の傾斜部25形状に基づいて、下位の不連続点182と上位の不連続点183とが一致する点であることを推論することができる。
【0052】
したがって、グラフ181の下位の不連続点182の位相差に2πを足して上位の不連続点183と一致させる位相復元を行い、図10に示すように、位相復元された位相差を求める(S153)。ここで、位相復元時には、空気層30と基底層10との境界面13での位相差を基準とする。すなわち、空気層30と基底層10との境界面13での位相差を含むグラフ部位をそのまま置いた状態で、対象層20と基底層10との境界面11での位相差を含むグラフ部位の各々の位相差に2πを足して位相復元する。このような位相復元によって測定した全ての位置で実際の位相差を反映するグラフ185を求めることができるようになる。グラフの形状によって不連続点に4πまたは6πのように、2πの倍数値を足して位相復元過程を行うこともできる。
【0053】
次に、位相差を相関式150に代入して、対象層20の厚さd11を決定する(S160)。望ましくは、位相復元された位相差を相関式150に代入する(S161)。
【0054】
上述したように構成された本実施形態に係る厚さ測定方法は、干渉信号で互いに異なる最大値を抽出して薄膜層の厚さを測定するのではなく、空気層と基底層との境界面での干渉信号の位相と透明な薄膜層と基底層との境界面での干渉信号の位相との間の位相差を利用して薄膜層の厚さを測定することにより、マイクロ以下の単位の厚さを有する透明な薄膜層の厚さを正確に測定できる効果を得ることができる。
【0055】
また、予め設けられた複数個のサンプルを用いて透明な薄膜層の厚さと透明な薄膜層及び基底層の境界面で位相差間の相関式を一応求めるようになると、サンプルと同じ材質からなる薄膜層の位相差を求めるだけでも薄膜層の厚さを測定することが可能であるため、厚さ測定にかかる手続及び時間を低減できる効果を得ることができる。
【0056】
本発明の権利範囲は上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲内で様々な形態の実施形態によって実現できる。特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有した者であれば誰でも変形可能な多様な範囲まで本発明の請求の範囲の記載の範囲内にあるものとみなす。
【符号の説明】
【0057】
10 基底層
20 対象層
30 空気層
100 干渉計
150 相関式
161 第1の干渉信号
163 第1の信号値
171 第2の干渉信号
173 第2の信号値
S110 サンプル層の厚さに対する位相差の相関式を取得するステップ
S120 光軸方向に対する第1の干渉信号を求めるステップ
S130 光軸方向に対する第2の干渉信号を求めるステップ
S140 第1の干渉信号の位相と第2の干渉信号の位相との位相差を求めるステップ
S160 対象層の厚さを決定するステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉計を用いて基底層上に積層された対象層の厚さを測定するための厚さ測定方法であって、
前記対象層と実質的に同じ材質で設けられ、互いに異なる厚さを有したサンプル層から前記サンプル層の厚さに対する位相差の相関式を取得するステップと、
空気層と前記基底層との境界面で、前記基底層に入射される光軸方向に対する第1の干渉信号を求めるステップと、
前記対象層と前記基底層との境界面で、前記光軸方向に対する第2の干渉信号を求めるステップと、
前記光軸方向に対して実質的に同じ高さで、前記第1の干渉信号の位相と前記第2の干渉信号の位相との間の位相差を求めるステップと、
前記位相差を前記相関式に代入して、前記対象層の厚さを決定するステップと、
を含むことを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項2】
前記第1の干渉信号の位相と前記第2の干渉信号の位相との間の位相差を求めるステップが、
前記第1の干渉信号で基準になる第1の信号値を設定し、前記光軸方向に対して前記第1の信号値が得られる高さを第1の高さとして設定し、前記第1の信号値の位相を第1の位相として設定するステップと、
前記第1の高さと実質的に同じ高さで得られる第2の干渉信号の信号値を第2の信号値として設定し、前記第2の信号値の位相を第2の位相として設定するステップと、
前記第1の位相と前記第2の位相との間の位相差を求めるステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の厚さ測定方法。
【請求項3】
前記第1の干渉信号及び前記第2の干渉信号が光強度であり、
前記第1の信号値が前記第1の干渉信号の最高値であることを特徴とする請求項2に記載の厚さ測定方法。
【請求項4】
前記相関式を取得するステップが、
一方の厚さを有するサンプル層を設けるステップと、
前記空気層と前記基底層との境界面で、前記光軸方向に対する第3の干渉信号を求めるステップと、
前記サンプル層と前記基底層との境界面で、前記光軸方向に対する第4の干渉信号を求めるステップと、
前記光軸方向に対して実質的に同じ高さで、前記第3の干渉信号の位相と前記第4の干渉信号の位相との間の位相差を求めるステップと、
他方の厚さを有するサンプル層を設け、そのサンプル層に対して第3の干渉信号を求めるステップと、前記第4の干渉信号を求めるステップと、前記位相差を求めるステップとを繰り返すステップと、
複数の厚さ情報及び複数の位相差情報を利用して曲線合わせ(fitting)し、前記サンプル層の厚さに対する位相差の相関式を決定するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の厚さ測定方法。
【請求項5】
前記位相差を求めるステップが、
前記第3の干渉信号で基準になる第3の信号値を設定し、前記光軸方向に対して前記第3の信号値が得られる高さを第3の高さとして設定し、前記第3の信号値の位相を第3の位相として設定するステップと、
前記第3の高さと実質的に同じ高さで得られる第4の干渉信号の信号値を第4の信号値として設定し、前記第4の信号値の位相を第4の位相として設定するステップと、
前記第3の位相と前記第4の位相との間の位相差を求めるステップと、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の厚さ測定方法。
【請求項6】
前記第3の干渉信号及び前記第4の干渉信号が光強度であり、
前記第3の信号値が前記第3の干渉信号の最高値であることを特徴とする請求項5に記載の厚さ測定方法。
【請求項7】
前記相関式が線形部または非線形部を備えることを特徴とする請求項4に記載の厚さ測定方法。
【請求項8】
前記対象層の厚さが連続的に変わる方向に沿って前記空気層と前記基底層との境界面及び前記対象層と前記基底層との境界面の複数の位置で、前記第1の干渉信号を求めるステップと、前記第2の干渉信号を求めるステップと、前記位相差を求めるステップとを繰り返すステップと、
前記複数の位置に対して、前記位相差のグラフを算出するステップと、
前記グラフの不連続点の位相差に2πの倍数を加減して位相復元(phase unwrapping)し、位相復元された位相差を求めるステップと、
をさらに含み、
前記対象層の厚さを決定するステップが、前記位相復元された位相差を前記相関式に代入して、前記対象層の厚さを決定することを特徴とする請求項1に記載の厚さ測定方法。
【請求項9】
前記位相復元された位相差を求めるステップが、前記空気層と前記基底層との境界面での位相差を基準とすることを特徴とする請求項8に記載の厚さ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−506996(P2011−506996A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539271(P2010−539271)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【国際出願番号】PCT/KR2008/001833
【国際公開番号】WO2009/096633
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(509170165)エスエヌユー プレシジョン カンパニー,リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SNU PRECISION CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Dong−a town #201, Bong−chun 7−dong 1692−2,Kwanak−gu,Seoul 152−818(KR)
【Fターム(参考)】