説明

反射体

【課題】
従来の反射体に比べて、製造時において従来であれば異物混入や貼り合わせにより発生していた損失を生じることのない、そして製造も容易な、全反射率や正反射率の高い反射体を提供する。
【解決手段】
表面を高平滑処理してなる基材フィルムの表面に、少なくとも、金属又は金属酸化物による金属蒸着層を積層してなる反射体であって、前記高平滑化処理をすることにより、前記基材フィルムの全反射率が80%以上、かつ正反射率が80%以上となること、を特徴とする構成を有した反射体とした。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光源からの光線を反射するために用いられる反射体であって、具体的には、液晶表示装置や照明器具などにおける光線反射用を目的とした金属を蒸着してなる反射体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では携帯電話やコンピューター、テレビなどにおいて液晶表示装置を用いられることが急増している。これが急激に普及する理由の一つとして従来のいわゆるブラウン管ディスプレイに比べてはるかに薄型にできる、また容易に小型にすることが出来る、という利点があるからである、と言われている。特に昨今著しく見られる軽薄短小化への要求の高まりに伴い、この液晶表示装置の利用が求められる場面は急増していると言える。
【0003】
さて、このような液晶表示装置では液晶表示部分が明瞭に視認出来るように通常バックライトが備えられているものであるが、このバックライトにおける光源から発せられる光線が最終的には効率的に液晶表示素子に到達する仕組みが必要である。なぜなら液晶表示装置において表示部分を背面からより強く照らすことで、液晶表示部分がより鮮明になるからである。
【0004】
しかし、この反射体による光線の反射の質が良くなければ、上述したような効率よい利用を実現することは出来ないのである。即ち、この反射体における全反射率は高いものであり、かつ正反射(鏡面反射ともいう。)率も高いものであることが必要であり、もってこのような状態であると光線の反射の質が良いと言える。そしてこのような目的に沿った、そして上述の条件を満たす質の良い反射光を発せられる反射体の開発が強く求められているのである。
【0005】
そこで、例えば特許文献1に記載されたような反射体が提案されている。この特許文献1に記載の反射体は、合成樹脂フィルムの表面に金属薄膜層を有する光反射体と、充填剤を含む合成樹脂フィルムを一軸方向に延伸した光錯乱フィルムとを積層してなるものである。
【0006】
そしてこのように2種類のフィルムを貼り合わせて用いることにより、従来の光反射板に比べて光の反射効率が高く、高輝度が得られ、これまで以上に明るいバックライトを得ることが可能となる、という効果を得られる。
【0007】
【特許文献1】特開平5−229053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載された反射体であれば、光反射体と光錯乱フィルムとを積層することが必要であり、即ち積層するにあたりこれらを重ね合わせる、部分的に接着する、全面を接着する、のいずれかを行わなければならないが、その際に異物が混入してしまう、という問題があった。また2枚の性質の異なるフィルムを貼着させるために、貼り合わせ工程を実行する際にフィルムがカールする、また加工調整時におけるロスの発生、という問題があった。そしてこのような問題のために、特許文献1に記載の反射体を実際に使用するにあたっては様々な困難が生じていたのである。
【0009】
また液晶表示装置に用いるのであれば、無関係、不必要な箇所からの外光侵入を防がなければならないためにある程度の隠蔽性が必要とされるが、この特許文献1に記載の反射体であれば必ずしも隠蔽性が確保されているとは言えない。
【0010】
ならばこのような貼り合わせ工程を実行することなく所望の反射体を得るために、基材フィルムに直接金属薄膜層を積層することが考えられる。そしてその際には、いわゆる白色をした基材フィルムを用いることが考えられ、また検討されている。このような白色をした基材フィルムとして白色のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(以下、単に「白PET」とも言う。)を利用することが考えられる。この白PETフィルムとは、例えば原材料となる樹脂を発泡させた状態でフィルムとすることで、または原材料となる樹脂に白色の顔料を混合させることで、従来の無色なPETフィルムに比して白色を呈するPETフィルムとしたものである。
【0011】
このようにして得られる白PETフィルムを基材として用いれば、基材フィルム自体の隠蔽性が確保され、かつこれに金属薄膜層を直接積層すれば、所望の反射体が得られる、と考えられていた。
【0012】
しかし実際には白PETフィルムを基材とすると、それなりに所望するレベルの全反射率は得られるものの、どうしても正反射率が低い、換言すれば拡散反射率が高い反射体となってしまい、そのためこのような反射体を利用しても本来の目的である液晶表示素子を鮮明にする、ということを実現することができなかった。これは白PETフィルムの表面に微細ではあるものの凹凸が無数に存在するため、その凹凸に沿って金属蒸着層を積層しても、得られる金属蒸着層の表面には白PETフィルムの表面の凹凸と同様の凹凸が生じてしまい、この凹凸が存在するが故に金属蒸着層表面において拡散反射が生じてしまうからである。
【0013】
そこで本発明はこのような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、従来の反射体に比べて、製造時において従来であれば異物混入や貼り合わせにより発生していた損失を生じることのない、そして製造も容易な、隠蔽性を確保した、全反射率や正反射率の高い反射体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載の発明は、表面を高平滑処理してなる基材フィルムの表面に、少なくとも、金属又は金属酸化物による金属蒸着層を積層してなる反射体であって、前記基材フィルムの全光線透過率が50%以下であり、前記基材フィルムの表面の算術平均荒さRaが50nm以下であり、前記反射体の全反射率が80%以上、かつ正反射率が80%以上であること、を特徴とする。
【0015】
本願発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の反射体において、前記基材フィルムの表面と前記金属蒸着層との間にアンダーコート層を設けてなること、を特徴とする。
【0016】
本願発明の請求項3に記載の発明は、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の反射体において、前記金属蒸着層の表面にオーバーコート層を設けてなること、を特徴とする。
【0017】
本願発明の請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の反射体において、前記アンダーコート層又は/及び前記オーバーコート層は、金属酸化物、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、又はメラミン樹脂、の何れか若しくは複数によるものであること、を特徴とする。
【0018】
本願発明の請求項5に記載の発明は、請求項2ないし請求項4の何れか1項に記載の反射体において、前記アンダーコート層又は/及び前記オーバーコート層は、真空蒸着法、スパッタリング法、又はウェットコーティング法のいずれかの手法により積層されてなること、を特徴とする。
【0019】
本願発明の請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の反射体において、前記金属蒸着層が銀又はアルミニウムの何れか若しくは複数によるものであること、を特徴とする。
【0020】
本願発明の請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の反射体において、前記金属蒸着層は、スパッタリング法、又は真空蒸着法の何れかの手法により積層されてなるものであること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本願発明に係る反射体では、得られた反射体の全反射率が80%以上、かつ正反射率が80%以上となるように、最表面がいわゆる高平滑化処理施されたものであるので、これを例えば液晶表示装置に用いることで、光源から発生する光線をより一層効率よく利用することが可能となり、その結果、本願発明にかかる反射体を液晶表示装置に用いることで従来よりもより一層鮮明な画像を得られることが可能となる。また液晶表示装置以外であって、例えば一般の照明器具に用いても、反射効率が非常に優れたものとなるので、照明の効果をより一層高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
本願発明に係る反射体について第1の実施の形態として説明する。
【0024】
本実施の形態に係る反射体は、表面を高平滑処理してなる基材フィルムの表面に、少なくとも、金属又は金属酸化物による金属蒸着層を積層してなる反射体であって、前記基材フィルムの全光線透過率が50%以下であり、前記基材フィルムの表面の算術平均荒さRaが50nm以下であり、前記反射体の全反射率が80%以上、かつ正反射率が80%以上であること、を特徴とするものである。
【0025】
以下、この反射体につきさらに説明をする。
まず基材フィルムについてであるが、本実施の形態における基材フィルムとしては特に制限をするものではない。但し後述する理由により透明でないものでなければならない。そしてその利便性、取扱の容易さ等の観点から、例えば白PETフィルム、白ポリプロピレンフィルムなどが好ましく、中でもPETフィルムを用いることが好適であると言える。そこで本実施の形態では基材フィルムとして白PETフィルムを用いることとするが、本発明はこれに限定されるものではない。また以下の説明では白PETフィルムを用いるものとしているが、上記条件を満たす透明でないフィルムであれば構わないので、例えば外見が略黒色のPETフィルム、略褐色のPETフィルム、というように、白色以外のものであっても構わない。
【0026】
本実施の形態ではこの白PETフィルムの表面を平滑にするのであるが、これはただ単に平滑にするだけではなく、より一層、高度に平滑化されている必要がある。高平滑化する理由については後述するが、その手法については特に制限をするものではなく、公知の手法により高平滑化を実現すればよい。重要なことは、高平滑化処理を行うことにより、その算術平均荒さRaが50nm以下である、という条件を達することである。尚、基材フィルムに求められる条件が上記である、とする理由については後述する。
【0027】
尚、本実施の形態における白PETフィルムとは、前述の従来の技術において説明した塗同様、PETフィルムの原材料となる樹脂を発泡させた状態でこれをフィルム状にする、又はPETフィルムの原材料となる樹脂に白色の顔料を混合させた状態でこれをフィルム状にする、という手法をもって得られるものであるが、これ以外の手法で得られるものであっても構わないことを予め断っておく。
【0028】
このように、基材として表面が高平滑化された白PETフィルムが用意されると、その表面に金属又は金属酸化物による金属薄膜層を積層する。ここで重要なのは本願発明にかかる反射体は、当然ではあるが光線を反射するためのものであるので、積層する金属薄膜層も光線を反射する必要があり、換言すると、いわゆる普通に金属光沢を得る事が出来る金属薄膜層とすることが必要なのである。そして本実施の形態にかかる反射体では、この金属薄膜層は銀かアルミニウムであるものとするが、必ずしもこれに限定されるものではなく、その他、例えば金等のようなものであっても構わないし、金属薄膜層として積層した時に、その層自身で入射光を反射することが可能なものであれば何であっても構わない。
【0029】
この金属薄膜層は、従来より公知である手法により、表面が高平滑化されたPETフィルムの高平滑化された面に積層されるのであるが、例えばスパッタリング法や、真空蒸着法、高周波抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法、と言った手法とすることが考えられる。そして本実施の形態ではスパッタリング法により積層されるものであることとする。
【0030】
尚、このスパッタリング法の条件についても、特段特殊なものではなく、従来公知な条件設定であって構わない。
【0031】
そして前述したように、基材として用いる白PETフィルムの表面は高度に平滑化処理されているために、従来のように微細ではあるものの凹凸が無数存在する、というものではないので、高平滑化処理された表面に従来公知の手法でもって金属薄膜層を積層すると、得られる金属薄膜層の最表面も非常に平滑な状態となっているのである。
【0032】
そして本願発明の目的を達するためには、この非常に平滑になった状態における全光線反射率は80%以上、正反射率は80%以上、となることが必要である。即ちこの数値条件を満たすべく金属蒸着層の表面が高度に平滑化されていればよく、金属蒸着層の表面をここまで高度に平滑化するために、基材となる白PETフィルムの表面を高度に平滑化しておく必要があるのである。
【0033】
この点につきもう少し説明を加えると、本実施の形態にかかる反射体の表面に至った光線は高平滑処理がなされた金属蒸着層の表面に接する。ここで単純に全反射率のみで判断するのであれば、反射する光線の方向に関わりなく、一定の光線量が反射することで全反射率の条件を満たすことが出来るが、反射する方向がバラバラであれば、本願発明の目的である、光線を略同一方向に反射させて、光線を有効に利用する、ということができなくなる。そのため、正反射率を80%以上となるように反射する面を平滑にすることで、入射した光線を略同一方向に反射させることとなり、即ち光線を有効に利用することが出来る、と言えるのである。
【0034】
つまり、反射光線の方向が一方向に向けてまとまっていないと、反射光線を有効に利用することができなくなり、入射した光線を極力効率よく利用することができなくなってしまう。そのため、この表面の凹凸をなくして極力、高度なまでに表面を平滑化することにより、表面凹凸による乱反射の発生を抑制することが必要となるので、本実施の形態における反射体の表面には平滑化処理、それも単純なものではなく高度な平滑化処理がなされていることが必要なのである。そして本実施の形態では平滑化処理がいかに高度になされているかを定めるため、正反射率を80%以上であるもの、としているのである。これは正反射率が高い程、入射光線の多数を略同一方向に反射することが可能である、といえるからなのである。
【0035】
以上説明したとおり、本実施の形態にかかる反射体は、全反射率が80%以上、かつ正反射率が80%である高平滑化処理を施された表面を有する基材フィルムの表面に銀やアルミニウム等の金属による金属蒸着層を備えたものであり、入射光線を効率よく略一方向に反射させることが可能となるので、これを液晶表示装置に用いると、液晶表示部を背面から明度の高い光線で照射することが可能となるので、鮮明な画像を備えた液晶表示装置を得る事が出来るのである。
【0036】
以上、本願発明にかかる反射体につき、その基本的な構成に関して説明をしたが、例えば基材フィルムと金属蒸着層との層間密着力をより向上させるために、例えば基材フィルムの高平滑化処理がなされた表面に、金属蒸着層を積層する前に、アンダーコート層を積層しておくことが考えられる。
【0037】
このアンダーコート層を形成する原材料は、基材フィルムの原材料たる樹脂と金属蒸着層を構成する金属又は金属酸化物との相性を考慮して好適なものを選定すればよく、例えば本実施の形態では金属酸化物、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、等の何れか若しくは複数を利用することが考えられる。
【0038】
またアンダーコート層を積層する手法については、従来公知の手法であってよく、本実施の形態では、真空蒸着法を用いることが好ましいと言えるが、これに限定されるものではなく、例えばスパッタリング法やウェットコーティング法等の手法を用いることも考えられる。
【0039】
さらにまた、得られた反射体のさらに表面に、金属蒸着層を保護する、等の意味においてオーバーコート層を積層することが考えられる。このオーバーコート層として用いる原材料としては、前述のアンダーコート層と同様であって構わないが、必ずしもそれに限定されるものではない。そしてこのオーバーコート層を積層する手法も、やはり前述のアンダーコート層と同様であってよい。
【0040】
尚、上述したアンダーコート層及びオーバーコート層は言うまでもないことであるが、先に説明した反射体としての光線反射を阻害するようなものであってはならず、即ち相応の光線透過率が必要とされるが、これについてはここでは詳述を省略しておく。
【0041】
このように、基本的には基材フィルム/金属蒸着層、という構成を有するのが本願発明にかかる反射体であるが、これ以外の層も目的や使用状況等によって設けても構わず、例えば基材フィルム/アンダーコート層/金属蒸着層、基材フィルム/金属蒸着層/オーバーコート層、基材フィルム/アンダーコート層/金属蒸着層/オーバーコート層、等の構成とすることも考えられる。
【0042】
いずれにせよ、本願発明にかかる反射体においては、基材となるフィルムの表面が一定以上の平滑化がなされていることが重要であり、平滑化されていることにより入射する光線をより一層効率的に利用することが出来るのである。
【0043】
尚、実際の使用にあたっては、金属蒸着層が積層されているのとは反対側の基材フィルム表面に何らかの積層を施すことも考えられ、例えば接着層を設けることにより本願発明にかかる反射体を、例えば照明器具における傘や照明器具それ自体の周囲、等の所望の箇所に設置しやすくすることも出来るが、これについてもここではその詳細な説明は省略する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を高平滑処理してなる基材フィルムの表面に、
少なくとも、金属又は金属酸化物による金属蒸着層を積層してなる反射体であって、
前記基材フィルムの全光線透過率が50%以下であり、
前記基材フィルムの表面の算術平均荒さRaが50nm以下であり、
前記反射体の全反射率が80%以上、かつ正反射率が80%以上であること、
を特徴とする、反射体。
【請求項2】
請求項1に記載の反射体において、
前記基材フィルムの表面と前記金属蒸着層との間にアンダーコート層を設けてなること、
を特徴とする、反射体。
【請求項3】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の反射体において、
前記金属蒸着層の表面にオーバーコート層を設けてなること、
を特徴とする、反射体。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の反射体において、
前記アンダーコート層又は/及び前記オーバーコート層は、金属酸化物、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、又はメラミン樹脂、の何れか若しくは複数によるものであること、
を特徴とする、反射体。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4の何れか1項に記載の反射体において、
前記アンダーコート層又は/及び前記オーバーコート層は、真空蒸着法、スパッタリング法、又はウェットコーティング法のいずれかの手法により積層されてなること、
を特徴とする、反射体。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の反射体において、
前記金属蒸着層が銀又はアルミニウムの何れか若しくは複数によるものであること、
を特徴とする、反射体。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の反射体において、
前記金属蒸着層は、スパッタリング法、又は真空蒸着法の何れかの手法により積層されてなるものであること、
を特徴とする、反射体。


【公開番号】特開2006−126236(P2006−126236A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310470(P2004−310470)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】