説明

反射防止方法及び反射防止構造並びに反射防止構造を有する反射防止構造体及びその製造方法

【課題】反射防止方法及び反射防止構造に関し、周期的な二次元格子を境界面に形成した場合と同等の反射防止特性をより低コストで実現できるようにする。
【解決手段】異なる屈折率na,nbを有する媒質間の境界面に、JIS B 06011994で定義される凹凸の算術平均粗さをRa、凹凸の平均間隔をSmとしたとき、0.001μm<Ra<0.5μm、且つ、0.001μm<Sm<0.5μm、且つ、0.01<Ra/Sm<2.0の関係を満たす複数の凹凸を無作為に形成することによって反射防止構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率の異なる媒質間の境界面における反射防止技術に関し、特に、情報技術産業分野の製品において反射防止性能を必要とする部材に用いて好適の反射防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明材質の光線透過率を向上させる方法として、透明材質の表面反射を低減させる方法が用いられている。表面反射は屈折率の異なる層間でその屈折率差に比例して増大するので、表面反射を抑えるためには層間での屈折率差を小さくすることが有効であり、従来は以下のような反射防止方法1〜3が採用されてきた。
【0003】
従来方法1.高屈折率の基材表面に空気よりも屈折率が大きく、かつ基材よりも屈折率の小さい透明材料をコーティングする。例えば屈折率Naを有する媒質aから屈折率Nbを有する媒質bに垂直に光が入射した場合の反射率は下記の数式(数1)を用いて計算することができる。
【0004】
【数1】

【0005】
ただし、R(%):反射率を百分率で表したもの。
a:媒質aの屈折率。
b:媒質bの屈折率。
空気中から入射する光の反射率を計算すると、Na=1.0、Nb=1.50の場合、Rab=4%となる。ここで、Nb=1.30の媒質を選択してコーティングすれば、Rab=1.7%となり反射率を低減することができる。
【0006】
従来方法2.透明材質の表面に無機材質を薄く多層して各層間での反射光の干渉により打ち消し合って反射を防止する。この無機多層膜構造の反射防止膜を形成する具体的な方法としては、真空装置中でCaF2,ZnS,SiO2等の無機材料を繰り返し蒸着することが知られている。例えば、文献「薄膜・光デバイス 吉田、矢島著 東京大学出版会」には、MgF2とSiOを組み合わせた例が報告されている。
【0007】
従来方法3.媒質表面の屈折率を連続的に変化させる屈折率傾斜型の構造によって反射率を低減する。この傾斜屈折率型の反射防止膜を形成する具体的な方法としては、ガラスをイオン交換したり、不純物を拡散したりする方法が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の従来の反射防止方法1〜3にはいずれにも以下のような課題があった。
まず、従来方法1では、屈折率が所要の条件を満たす透明材料を選択する必要がある。ところが、適用できる透明材料の種類は有限であるため、基材の材質(屈折率)によっては、うまく条件を満たすような屈折率を有する透明材料を選択することができず、十分に反射率を低減することができない虞がある。
【0009】
これに対し、従来方法2,3は、多層膜構造による各層間での反射光の干渉や屈折率の連続的な変化によって全体の反射率を低減させるものであるので、従来方法1よりも確実に反射率を低減することができる。しかしながら、従来方法2では、各層を成膜する際に最適に設計された膜厚を保持する必要があり、煩雑な工程が要求されるために高コストになるという課題があった。また、従来方法3でも、傾斜屈折率型の反射防止膜の製造に煩雑な工程が要求されるため従来方法2と同様に高コストになるという課題があった。
【0010】
このようなコスト上の課題により、従来方法2,3にかかる無機多層膜構造の反射防止膜或いは傾斜屈折率型の反射防止膜は特殊な用途にしか使用することができなかった。例えば、近年の情報技術の発達に伴って、携帯電話に代表される携帯情報端末が世間一般に広く普及している。これら携帯情報端末の性能に対する要求の中で、その視認性の改良は強く求められるものであったが、上記のように従来方法2,3にかかる反射防止膜はそのコスト上の課題からこれら携帯情報端末に使用することは難しかった。
【0011】
また、近年、その構造上、従来の反射防止方法を適用することができない製品も出現している。例えばタッチパネル,LCD,有機電界発光素子用(有機EL)等のように、表面に透明電極であるITOが積層されている製品の場合、このITO上に無機や有機のコーティング膜を付けてしまうと表面の導電性が損なわれてしまうため、表面に異なる材質をコーティングする従来方法1〜3を適用することはできない。
【0012】
以上のような課題が従来方法1〜3にはあることから、近年では、比較的低いコストで実現できるとともに、かつ、製品への適用上の制約が少ない反射防止方法の案出が望まれていた。そこで、発明者らはこの要望に答えるため、本発明の創案過程において、まず、以下の反射防止方法を案出した。
まず、表面に周期がΛの繰り返し構造を持つ格子を考える。Λがこの格子に入射する電磁波の波長λより十分に小さい領域での電磁波の回折現象は、有効屈折率領域での現象として古くから研究されている。例えば、図7に示すように特に回折格子がピラミッドのような四角錐あるいは円錐構造を持った二次元格子で、Λがλに比べて十分小さい領域では、良好な反射防止特性を有することが知られている(文献「Y. Ono, et al, Antireflection effect in ultrahigh spatial-frequency holographic relief gratings, Appl. Opt. , vol.26, no.6, pp.1142-1146,1987」、「E. B. Grann, et al, Optimal design for antireflective tapered two-dimensional subwavelength grating structure, J. Opt. Soc. Am. A, vol.12, no.2, pp.333-339, 1995」参照)。
【0013】
この領域での厳密な解析はRigorous Coupled Wave Theory(文献「M. G. Moharam et al, Diffraction analysis of dielectric surface-relief gratings, J. Opt. Soc. Am., vol.72, no.10, pp.1385-1392, 1982」、「K. Yokomori, Appl. Opt. , vol.23, no.14, pp.2303-2310,1984」参照)等のベクトル回折計算により行われるが、等価屈折率を求める有効屈折率法で議論しても、大きな相違はないということが報告されている(前出の文献「Y. Ono, et al, Antireflection effect in ultrahigh spatial-frequency holographic relief gratings, Appl. Opt. , vol.26, no.6, pp.1142-1146,1987」参照)。
【0014】
有効屈折率法に従うと、図7のような周期的な回折格子が異なる屈折率na,nbを有する媒質間に形成された場合、図8(a),図8(b)に示すように、格子領域内の屈折率は一方の媒質の屈折率naから他方の媒質の屈折率nbへ単調に連続的に変化する。この格子領域を近似的に多層膜から構成されていると考えると、屈折率が単調に連続的に変化していることから、隣り合うi番目の層とi+1番目の層との間の屈折率差ΔnはΔn=ni+1−ni≒0と考えることができる(ni:i番目の層の屈折率、ni+1:i+1番目の層の屈折率)。つまり、有効屈折領域での二次元格子は、近似的な多層膜構造によって反射防止特性を示すのである。
【0015】
したがって、このような周期的な二次元格子を上記のような屈折率の異なる媒質間の境界面に形成すれば、境界面における反射を効率良く防止することができる。そして、この周期的な二次元格子を用いた反射防止方法によれば、従来方法のように反射防止膜等をコーティングする必要がないため、表面に透明電極であるITOが積層されている製品にも問題無く適用することができると考えられる。
【0016】
しかしながら、このような周期的な表面構造の形成は、近年の半導体集積回路作成技術の発展により実現された微細成型技術によって十分に可能ではあるが、現実的には、多くの手間とコストが必要となる。つまり、上述した周期的な二次元格子を用いた反射防止方法では、製品への適用上の制約が少なく、かつ良好な反射防止特性が得られるものの、比較的低いコストでの実現という要望には現段階では十分に応えることができない。
【0017】
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、周期的な二次元格子を境界面に形成した場合と同等の反射防止特性をより低コストで実現できるようにした、反射防止方法及び反射防止構造、並びに、それを用いた反射防止構造体とその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明者らは、上記の周期的な二次元格子に関する議論の延長として、必ずしも周期的な構造ではなくランダムな表面微細構造でも反射防止効果が得られる可能性があると考えた。つまり、図1(a),図1(b)に示すように、電磁波の波長λよりも十分に小さい境界面構造を有する媒質間に電磁波が入射した場合、有効屈折率法によりその媒質間における屈折率は、一方の媒質の屈折率naから他方の媒質の屈折率nbへ連続的に変化すると考えられる。この場合の屈折率の変化は、図8に示すような周期的な構造の場合と異なって単調な変化ではないが、この場合でも近似的に多層膜から構成されると考えると、隣り合うi番目の層とi+1番目の層との間では屈折率差Δn=ni+1−ni≒0と考えることができる。したがって、このようなランダムな表面微細構造であっても、周期的な構造の場合と同様に反射防止特性が発現すると考えられる。
【0019】
そして、発明者らは鋭意検討した結果、表面に以下の方法で凹凸を施すことにより、光の表面反射を効果的に防止できることを見いだしここに発明を完成した。
すなわち、本発明の反射防止方法は、屈折率の異なる媒質間の境界面における表面反射を防止する反射防止方法であって、上記境界面に、JIS B 06011994で定義される凹凸の算術平均粗さをRa、凹凸の平均間隔をSmとしたとき、0.001μm<Ra<0.5μm、且つ、
0.001μm<Sm<0.5μm、且つ、
0.01<Ra/Sm<2.0の関係を満たす複数の凹凸を無作為に形成することを特徴としている。
【0020】
したがって、粗面の凹凸のような無作為に形成された凹凸であっても、上記の3つの関係を満たしているならば、周期的な表面構造と同等の反射防止特性を得られることができ、有効な反射防止構造として機能する。
すなわち、本発明の反射防止構造は、凹凸を有する粗面からなる反射防止構造であって、上記の凹凸が、JIS B 06011994で定義される凹凸の算術平均粗さをRa、凹凸の平均間隔をSmとしたとき、
0.001μm<Ra<0.5μm、且つ、
0.001μm<Sm<0.5μm、且つ、
0.01<Ra/Sm<2.0の関係を満たしていることを特徴としている。
【0021】
上記の反射防止構造は、以下の具体的な反射防止構造体として提供することもできる。
まず、本発明の反射防止構造体(第1の反射防止構造体)は、樹脂ないしガラス製の基板の表面に微細成形加工が施され、上記の微細成形加工が施された基板表面によって上記の反射防止構造が形成されていることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の別の反射防止構造体(第2の反射防止構造体)は、平滑な基板の表面に透明電極が積層され、上記透明電極の表面に現れる上記透明電極の成分である金属もしくは金属酸化物の粒子によって上記の反射防止構造が形成されていることを特徴としている。
さらに、本発明の別の反射防止構造体(第3の反射防止構造体)は、平滑な基板の表面に樹脂もしくは無機質の粒子を含む層が積層され、上記層の表面に現れる樹脂もしくは無機質の粒子によって上記の反射防止構造が形成されていることを特徴としている。なお、第2,第3の反射防止構造体における基板には、単一の媒質からなるもののみならず、複数の媒質が積層されたものも含まれる。したがって、第1の反射防止構造体における樹脂ないしガラス製の基板の表面に材質の異なる層が積層されたものでもよい。また、ここでいう平滑とは、完全な鏡面状態を意味するものではなく、上記凹凸のスケールにおいて略平滑とみなすことができる程度であればよい。
【0023】
上記の第1の反射防止構造体においては、上記基板がガラス転移温度150度以上の樹脂で形成されていることが好ましく、特に、メタクリル系樹脂で形成されていることが好ましい。上記メタクリル系樹脂の中でも、特に、下記成分AないしBを単独もしくは複合して含有してなるものがより好ましい。
成分A:構造式(I)で表される含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート
成分B:構造式(II)で表されるイオウ含有(メタ)アクリレート
構造式(I)
【0024】
【化5】

【0025】
構造式(II)
【0026】
【化6】

【0027】
また、上記の第2の反射防止構造体においては、上記透明電極がインジウムとスズの酸化物であるITOであることが好ましい。そして、上記金属もしくは金属酸化物の粒子が、ITOを上記基板上にスパッタで成膜する際もしくは成膜後に150℃以上の温度で上記基板を加熱することにより得られるITOの微結晶よりなることがより好ましい。
【0028】
また、上記の第2,第3の反射防止構造体においては、上記平滑基板がガラス転移温度150度以上の樹脂で形成されていることが好ましい。特に、メタクリル系樹脂で形成されていることが好ましい。上記メタクリル系樹脂の中でも、特に、下記成分AないしBを単独もしくは複合して含有してなるものがより好ましい。
成分A:構造式(I)で表される含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート
成分B:構造式(II)で表されるイオウ含有(メタ)アクリレート
構造式(I)
【0029】
【化7】

【0030】
構造式(II)
【0031】
【化8】

【0032】
さらに、本発明は、上記の反射防止構造体の製造方法も提供する。
まず、本発明の反射防止構造体の製造方法(第1の製造方法)は、微細な凹凸をもつ型の表面を樹脂ないしガラス製の基板の表面に転写することにより、上記基板の表面に上記の反射防止構造を形成するようにしたものである。この方法によれば、上記の第1の反射防止構造体を得ることができる。
【0033】
この第1の製造方法において、上記型の表面にある微細な凹凸は、平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下である微粒子を圧縮ガスと共に上記型の表面に噴出することによって形成することができる。また、平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下である微粒子を圧縮ガス及び液体と共に上記型の表面に噴出することによって形成されたものであってもよい。
【0034】
さらに、上記型が金属製の型である場合には、上記型の表面にある微細な凹凸は、上記型の表面にレジスト液をコーティングした後、マスクをかけて露光し、エッチングすることによって形成することができる。また、無電解メッキによっても形成することができる。一方、上記型がガラスないし金属ないし樹脂製の型である場合には、上記型の表面にある微細な凹凸は、平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下である有機ないし無機の微粒子を溶媒可溶性の樹脂に均一に分散させた分散液を上記型の表面に塗布した後、上記分散液中の溶媒を除去することにより形成することもできる。
【0035】
また、本発明の別の反射防止構造体の製造方法(第2の製造方法)は、平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下である微粒子を圧縮ガスと共に樹脂ないしガラス製の基板の表面に噴出することにより、上記基板の表面に上記の反射防止構造を形成するようにしたものである。この方法によっても、上記の第1の反射防止構造体を得ることができる。
【0036】
また、本発明の別の反射防止構造体の製造方法(第3の製造方法)は、平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下である微粒子を圧縮ガス及び液体と共に樹脂ないしガラス製の基板の表面に噴出することにより、上記基板の表面に上記の反射防止構造を形成するようにしたものである。この方法によっても、上記の第1の反射防止構造体を得ることができる。
【0037】
さらに、本発明の別の反射防止構造体の製造方法(第4の製造方法)は、酸ないしアルカリ液ないし有機溶媒によって樹脂ないしガラス製の基板の表面をエッチングすることにより、上記基板の表面に上記の反射防止構造を形成するようにしたものである。この方法によっても、上記の第1の反射防止構造体を得ることができる。
【0038】
また、本発明の別の反射防止構造体の製造方法(第5の製造方法)は、平滑な基板上に透明電極をスパッタにより成膜し、成膜中或いは成膜後に上記平滑基板を加熱して上記透明電極中に金属もしくは金属酸化物の粒子を生成させることにより、上記平滑基板上に上記の反射防止構造を形成するようにしたものである。この方法によれば、上記の第2の反射防止構造体を得ることができる。この場合、好ましくは、ガラスないし樹脂製の平滑な基板上にインジウムとスズの酸化物であるITOをスパッタにより成膜し、成膜中或いは成膜後に上記平滑基板を150℃以上の温度で加熱してITO中に微結晶を生成させることによって上記平滑基板上に上記の反射防止構造を形成する。
【0039】
また、本発明の別の反射防止構造体の製造方法(第6の製造方法)は、平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下である有機質ないし無機質の微粒子を溶媒可溶性の樹脂に均一に分散させた分散液をガラスないし樹脂製の平滑な基板上に塗布した後、上記分散液中の溶媒を除去することにより、上記平滑基板上に上記の反射防止構造を形成するようにしたものである。この方法によれば、上記の第3の反射防止構造体を得ることができる。
【0040】
なお、上記の反射防止構造体は、タッチパネル,有機電界発光素子,液晶表示パネル及びカラーフィルタ等に用いて好適であり、具体的には、上記の第1〜第3の反射防止構造体のいずれかを用いてタッチパネル用基板,有機電界発光素子用基板,液晶表示パネル用基板或いはカラーフィルタ等を製作することによって、透過率が高く視認性に優れたタッチパネル,有機電界発光素子,液晶表示パネル及びカラーフィルタ等を得ることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の反射防止方法及び反射防止構造によれば、表面に反射防止膜などをコーティングすることなしに表面反射を防止することが可能であり、且つ、周期的な二次元格子に比較して低コストで高い反射防止効果を得ることができる。特に、本発明の反射防止構造を備えた反射防止構造体をタッチパネル用基板,有機電界発光素子用基板,液晶表示パネル用基板或いはカラーフィルタ等に備えた場合には、表面の反射防止構造によって反射率が抑えられる結果、透過率を高め視認性を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(イ)第1実施形態
本実施形態は、樹脂ないし無機質の粒子を平滑な基板上にコーティングすることによって、反射防止構造体を製造することを特徴としている。図2は、このような方法により得られる反射防止構造体の構成と粗面の微細構造(反射防止構造)を示す概念図である。以下、図2を用いて本実施形態にかかる反射防止構造体の製造方法について説明する。
【0043】
本実施形態にかかる製造方法(コーティング法)は、透明な樹脂製の平滑基板1上に、ガラスないし樹脂製のビーズ(好ましくは、直径100〜1000nmのビーズ)10を分散させたバインダー樹脂11を含んだ溶液を塗布(コーティング)する工程と、塗布後にバインダー樹脂11を所定の方法で硬化させる工程とからなる。
【0044】
バインダー樹脂11を硬化させる方法は、バインダー樹脂11の種類によって好適な方法が決まる。例えば、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などの透明樹脂の場合には、溶媒に溶かして基板1上に塗布した後に溶媒を乾燥させることによって硬化させる溶媒キャスティング方法が用いられる。また、バインダー樹脂11が透明エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂モノマーの場合には、ビーズ10を分散させた後に平滑基板1上に塗布し、塗布したバインダー樹脂11を加熱することによって硬化(熱硬化)させる方法が用いられる。さらに、バインダー樹脂11が光硬化性のモノマーの場合には、ビーズ10を分散させた後に基板1上に塗布し、塗布したバインダー樹脂11に活性光線を照射することによって硬化(光硬化)させる方法が用いられる。
【0045】
以上の処理により基板1上に凹凸面を有するコーティング層2が積層され、反射防止機能を備えた積層板(本発明の第3の反射防止構造体)3が完成する。ただし、このとき、ビーズ10の屈折率と、基板1の屈折率と、コーティングで用いるバインダー樹脂11の屈折率とは厳密に調整する必要がある。さもないとコーティング層2中で屈折率差が生じ、光の反射や屈折によって積層板3の光線透過率が低下する虞があるからである。また、コーティング層2の厚みは、表面がJIS B 06011994で定義された凹凸の算術平均粗さRaが0.001μm<Ra<0.5μmの範囲で、かつ凹凸の平均間隔Smが0.001μm<Ra<0.5μmである粗面になるように調整する。
【0046】
さらに、以上の処理に加えて、コーティング層2の表面にITO9を薄く真空スパッタしてもよい。これにより、表面の凹凸を残したまま積層板3に導電性を付与することが可能になる。
このような積層板3は、例えば、タッチパネル,有機電界発光素子,液晶表示パネル及びカラーフィルタに用いて好適である。タッチパネル,有機電界発光素子及び液晶表示パネルは、それぞれガラスもしくは樹脂製の透明基板上にITO層を含む複数の薄膜を積層した構造であり、これら透明基板や薄膜を通って光が外部に取り出されるようになっている。また、カラーフィルタもガラスもしくは樹脂製の透明基板上に薄膜が積層される場合がある。したがって、この積層板3をタッチパネル,有機電界発光素子及び液晶表示パネルの基板(透明基板を含む基体)として用いたり、カラーフィルタそのものとして用いたりすることにより、表面の反射防止構造によって反射率が抑えられる結果、透過率を高め視認性を向上させることが可能になる。
【0047】
(ロ)第2実施形態
本実施形態は、表面に凹凸を備えた型(スタンパ)を基板に転写することによって、反射防止構造体を製造することを特徴としている。図3は、このような方法により得られる反射防止構造体の構成と粗面の微細構造(反射防止構造)を示す概念図である。以下、図3を用いて本実施形態にかかる反射防止構造の製造方法について説明する。
【0048】
まず、表面に凹凸を有する型4を製作する方法としては、比較的簡単には例えば次の5つの方法が挙げられる。
方法1.金属板を電解エッチングする方法。
方法2.金属板に無電解メッキする方法。
方法3.金属板の表面を微粒子(好ましくは、平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下の微粒子)を含む圧縮空気でブラスト処理するサンドブラスト方法。
【0049】
方法4.微粒子(好ましくは、平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下の微粒子)を液体に懸濁させて圧縮空気でブラスト処理するウェットブラスト方法。
方法5.金属やガラスなどの表面をバイス等で削り凹凸を作る方法。
なお、いずれの方法においても、型4の表面がJIS B 06011994で定義された凹凸の算術平均粗さRaが0.001μm<Ra<0.5μmの範囲で、かつ凹凸の平均間隔Smが0.001μm<Ra<0.5μmである粗面になるように製作する。
【0050】
このようにして製作した型4の表面形状を転写することによって表面に凹凸を備えた樹脂基板(反射防止構造体)5を形成することができる。そして、この型4の表面形状の転写方法には、例えば次の4つの方法が挙げられる。
方法1.上記のいずれかの方法で作成した型4を室温もしくは必要に応じて加熱し、そこに平滑な面を持った透明樹脂基板5を所定圧力で押しつけることにより、型4の表面形状を樹脂基板5に転写させる方法(プレス法)。
【0051】
方法2.上記のいずれかの方法で作成した型4を射出成型機に取り付け、射出成形により溶融した透明樹脂を射出して型4から脱型することにより、型4の表面の形状転写した樹脂基板5を形成する方法(射出成形法)。
方法3.上記のいずれかの方法で作成した型4を所定の厚みになるようにスペーサをかませて平滑な板と対向させ、その空隙に熱硬化性の透明樹脂モノマーないしオリゴマーを重合開始剤とともに注入した後に加熱硬化させることにより、型4の表面形状を転写した樹脂基板5を形成する方法(加熱硬化法)。
【0052】
方法4.上記のいずれかの方法で作成した型4を所定の厚みになるようにスペーサをかませてガラスなどの平滑な透明板と対向させ、その空隙に光硬化性の透明樹脂モノマーないしオリゴマーを重合開始剤とともに注入した後に紫外線などの活性光線を照射して硬化させることにより、型4の表面形状を転写した樹脂基板5を形成する方法(光硬化法)。
【0053】
上記のいずれの方法を採用するかは、樹脂基板5を形成する材料(樹脂)の性質により決まる。このうち光硬化法は、透明性と耐熱性、及び製造工程の短時間化において特に有利である。このようにして作られた樹脂基板5は、タッチパネルや有機電界発光素子や液晶表示パネルの透明基板として用いたり、カラーフィルタそのものとして用いたりするのに好適であり、表面の反射防止構造によって反射率が抑えられる結果、透過率を高め視認性を向上させることが可能になる。
【0054】
なお、型4の製作方法として、第1実施形態においてコーティング層の形成に用いた方法を適用してもよい。すなわち、微粒子(好ましくは、平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下の微粒子)をバインダー樹脂中に均一に分散させて平板(ガラス,金属,樹脂のいずれでも可)の表面に塗布した後、バインダー樹脂中の溶媒を除去することによって平板表面に微細な凹凸を形成させて型4とする。
【0055】
(ハ)第3実施形態
本実施形態は、加熱により透明電極中の金属もしくは金属酸化物の粒子を成長させることによって、反射防止構造体を製造することを特徴としている。図4は、このような方法により得られる反射防止構造体の構成と粗面の微細構造(反射防止構造)を示す概念図である。以下、図4を用いて本実施形態にかかる反射防止構造の製造方法について説明する。
【0056】
本実施形態では、特に、透明電極としてインジウムとスズの酸化物であるITO8を用い、このITO8の表面を粒子化することによって凹凸を生じさせている。具体的には、透明な樹脂基板1上に数百Å、好ましくは200〜300Åの厚みのITO8を100℃でスパッタ法により成膜し、このITO8を数百度、好ましくは150〜200℃で加熱する。これによりITO8の結晶化に伴う微粒子化が生じ、本発明の目的とする範囲内にある100〜1000Åの微細な凹凸が表面に形成される。
【0057】
以上の処理により基板1上に凹凸面を有するITO8の層が積層され、反射防止機能を備えた積層板(本発明の第3の反射防止構造体)7が完成する。このような積層板7は、第1実施形態と同様に、タッチパネル,有機電界発光素子,液晶表示パネルの基板として用いたり、カラーフィルタとして用いたりするのに好適であり、表面の反射防止構造によって反射率が抑えられる結果、透過率を高め視認性を向上させることが可能になる。なお、上記の加熱処理はスパッタ成膜と同時に行うことも可能である。また、ITO8を成膜した後、プラズマ処理などの物理的手法もしくはアルカリ処理などの化学的手法により表面を粗面化して凹凸を形成してもよい。
【0058】
(ニ)透明基板を形成する樹脂
上記の各実施形態において基板1,5に使用される樹脂(透明樹脂)としては特別な制約はないが、以下に述べる樹脂を用いるのが望ましい。
透明高分子の例としては、多価アクリレート,多価メタクリレート,モノアクリレート,モノメタクリレートから選ばれるモノマーから重合して得られるアクリル系樹脂,あるいはポリカーボネート系樹脂,エポキシ系樹脂,または環状ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
【0059】
その中でも光照射によって重合硬化し、透明な重合体を形成するものが低複屈折性から好適に用いられる。特に限定されないが、一般には、(メタ)アクリレート系化合物が適している。その中でも、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート,2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル〕プロパン,2,2−ビス〔4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニルプロパン,ビス(オキシメチル)トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカン=ジメタクリレート,p−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレン,4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルホン,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ウレタンアクリレート,エポキシアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類,及びこれらのモノマーと共重合可能な単官能モノマーとの混合物,又はこれらの多官能(メタ)アクリレート化合物と付加重合可能なポリチオールとの混合物があげられる。
【0060】
単官能モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート,ベンジル(メタ)アクリレート,ポリチオールとしては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート),トリス〔2−(β−チオプロピオニルオキシ)エチル〕トリイソシアヌレート等が挙げられる。単官能モノマーを用いても、単一分子内に複数の官能を有する多官能モノマーを用いても良いが多官能モノマーが好適に用いられる。中でも二官能性(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0061】
上記の特性をバランスよく実現するために、下記成分AないしBを単独もしくは複合して含有して樹脂が好適に用いられる。
成分Aは、上記の構造式(I)で示される脂環式炭化水素骨格ビス(メタ)アクリレートである.
構造式(I)で示される脂環式炭化水素骨格ビス(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート,ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート,ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[2.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物,ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジアクリレート,ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート,ビス(ヒドロキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのトリシクロデカン化合物及びペンタシクロデカン化合物は、群内及び(又は)群間で2種以上併用してもよい。
【0062】
成分Bは、上記の構造式(II)で表されるイオウ含有(メタ)アクリレートは芳香族基と硫黄原子を含む組成物である。
構造式(II)で示されるイオウ含有(メタ)アクリレートを具体的に例示すれば、p−ビス(β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ)キシレン,m−ビス(β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ)キシレン,α,α’−ビス(β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ)−2,3,5,6−テトラクロロ−p−キシレン,4,4’−ジ(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)ジフェニルスルフィド,4,4’−ジ(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ)ジフェニルスルホン,4,4’−ジ(β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルフィド,4,4’−ジ(β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン,4,4’−ジ(β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトン,2,4’−ジ(β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルケトン,4,4’−ジ(β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ)−3,3’,5,5’−テトタブロモジフェニルケトン,β,β’−ビス(p−(メタ)アクリロイルオキシフェニルチオ)ジエチルエーテル,β,β’−ビス(p−(メタ)アクリロイルオキシフェニルチオ)ジエチルチオエーテル等があげられる。中でも4,4−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホンは高屈折率を有し好適に用いられる。
【0063】
(ホ)その他
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、反射防止構造体の製造方法としては、平滑な透明基板の表面に直接サンドブラスト方法やウェットブラスト方法にて凹凸を形成してもよい。酸,アルカリないし有機溶媒にて平滑な透明基板の表面をエッチングして凹凸を形成してもよい。
【0064】
また、本発明により得られた反射防止構造体の用途は、上述の実施形態で例示したもののみならず、境界面における表面反射の防止が要求される用途全般に広く適用することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
<実施例1>
本実施例では、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=ジメタクリレート94部、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=モノメタクリレート6部のアクリレート組成物にペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6部、光開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF社製「ルシリンTPO」)0.1部、ベンゾフェノン0.1部を均一に撹拌混合した後、脱泡して組成物を得た。
【0066】
そして、この組成物を厚さ1.0mmのシリコン板をスペーサとしてかました光学研磨したガラスの型に注液し、ガラス面より距離40cm離して上下に配置した出力80W/cmのメタルハライドランプの間にて5分間紫外線を照射した。そして、紫外線照射後に脱型し、160℃で1時間加熱して硬化物(両方の面が平滑な樹脂基材)を得た。この樹脂基材の片面に、スパッタ装置(徳田製作所;CFS−4ES)にてITOを180℃で成膜した。その後、この積層体を180℃の熱風オーブンで2時間加熱して表面にITO結晶を生じさせた。
【0067】
この積層体のITO表面を原子間力顕微鏡(AFM セイコー電子工業製;SPA300/SPI3700)で観察した。ITO膜の厚みは200Åであり,Raは0.053μm,Smは0.17μmであった。得られた導電性積層体の表面抵抗値は500Ω/□であった。この積層体を100℃で3時間加熱しても光線透過率に変化は無く、耐熱性の良い安定なITO付き基板を得た。
【0068】
得られたITO付き基板の反射率を評価するために、凹凸の付いた面側から光線を入射し、各波長における光線透過率を下記の数式(数2)にて計算した。測定には島津製作所製の自記分光光度計UV−3100Sを使用した。
【0069】
【数2】

ただし、I0:サンプルに入射する光線強度。
I1:サンプルから出射した光線強度。
【0070】
測定された各波長における光線透過率は図5中に線aで示すとおりである。この結果から、後に述べる比較例に比べて表面の反射が低く抑えられているため、光線透過率が向上していることが確認できる。
<実施例2>
本実施例では、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン=ジメタクリレート100部、光開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF社製「ルシリンTPO」)0.05部、ベンゾフェノン0.05部を均一に攪拌混合した後、脱泡して組成物を得た。
【0071】
実施例1記載のITO付き基板のITO面と光学研磨したガラスとを一組とし、スペーサとして厚さ1.0mmのシリコン板を用いて1.0mmの空隙を開けて対向させた型に上記の組成物を注液し、ガラス面より距離40cm上にある出力80W/cmのメタルハライドランプの下にて10分間紫外線を照射した。そして、紫外線の照射後に脱型し、160℃で1時間加熱して硬化物を得た。
【0072】
この硬化物について、実施例1記載の方法で光線透過率と表面粗度を測定した。表面粗度はRa=0.041μm,Sm=0.25μmであった。このサンプルの光線透過率を各波長において測定した結果を図6中に線aで示す。後に述べる比較例に比べて表面の反射が低く抑えられているため、光線透過率が向上していることが確認できる。
【0073】
<比較例1>
実施例2記載の方法で、光学研磨したガラス2枚をシリコンゴムのスペーサを挟んで対面させ、その間に実施例2記載の組成物を注入してUV光下で硬化させて硬化物を作成した。そして、この硬化物の光線透過率と表面粗度を実施例1記載の方法で測定した。このサンプルの光線透過率を各波長において測定した結果を図5中に線bで示す。また、表面粗度はRa=0.007μm,Sm=0.3μmであった。
【0074】
<比較例2>
実施例2記載の方法においてITO付き基板のかわりに表面を光学研磨したガラス2枚を一組とした型を用いた。他の方法は実施例2記載の通りである。このようにして得られたサンプルを実施例1記載の方法で光線透過率と表面粗度を測定した。このサンプルの光線透過率を各波長において測定した結果を図6中に線bで示す。また、表面粗度はRa=0.0065μm,Sm=0.42μmであった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の原理を説明するための図であり、(a)は本発明にかかる表面構造の断面図、(b)は媒質中の屈折率変化を膜厚方向Zに対して示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる反射防止構造体の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる反射防止構造体の構成を示す概略図である。
【図4】本発明の第3実施形態にかかる反射防止構造体の構成を示す概略図である。
【図5】実施例1と比較例1とで光透過率の特性を比較して示す図である。
【図6】実施例2と比較例2とで光透過率の特性を比較して示す図である。
【図7】周期的な二次元格子を示す斜視図である。
【図8】周期的な二次元格子による反射防止の原理を説明するための図であり、(a)は周期的な二次元格子の断面図、(b)は媒質中の屈折率変化を膜厚方向Zに対して示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 基板
2 コーティング層
3 積層板(反射防止構造体)
4 型
5 基板(反射防止構造体)
7 積層板(反射防止構造体)
8 ITO
9 ITO
10 ビーズ
11 バインダー樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率の異なる媒質間の境界面における表面反射を防止する反射防止方法であって、
上記境界面に、JIS B 06011994で定義される凹凸の算術平均粗さをRa、凹凸の平均間隔をSmとしたとき、
0.001μm<Ra<0.5μm、且つ、
0.001μm<Sm<0.5μm、且つ、
0.01<Ra/Sm<2.0の関係を満たす複数の凹凸を無作為に形成する
ことを特徴とする、反射防止方法。
【請求項2】
凹凸を有する粗面からなる反射防止構造であって、
上記の凹凸が、請求項1記載の反射防止方法により形成されたものである
ことを特徴とする、反射防止構造。
【請求項3】
樹脂ないしガラス製の基板の表面に微細成形加工が施され、上記の微細成形加工が施された表面によって請求項2記載の反射防止構造が形成されている
ことを特徴とする、反射防止構造体。
【請求項4】
平滑な基板の表面に透明電極が積層され、上記透明電極の表面に現れる上記透明電極の成分である金属もしくは金属酸化物の粒子によって請求項2記載の反射防止構造が形成されている
ことを特徴とする、反射防止構造体。
【請求項5】
平滑な基板の表面に樹脂もしくは無機質の粒子を含む層が積層され、上記層の表面に現れる樹脂もしくは無機質の粒子によって請求項2記載の反射防止構造が形成されている
ことを特徴とする、反射防止構造体。
【請求項6】
上記基板がガラス転移温度150度以上の樹脂で形成されている
ことを特徴とする、請求項3記載の反射防止構造体。
【請求項7】
上記の樹脂がメタクリル系樹脂である
ことを特徴とする、請求項6記載の反射防止構造体。
【請求項8】
上記メタクリル系樹脂が下記成分AないしBを単独もしくは複合して含有してなる
ことを特徴とする、請求項7記載の反射防止構造体。
成分A:構造式(I)で表される含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート
成分B:構造式(II)で表されるイオウ含有(メタ)アクリレート
構造式(I)
【化1】

構造式(II)
【化2】

【請求項9】
上記透明電極がインジウムとスズの酸化物であるITOである
ことを特徴とする、請求項4記載の反射防止構造体。
【請求項10】
上記金属もしくは金属酸化物の粒子が、ITOを上記基板上にスパッタで成膜する際もしくは成膜後に150℃以上の温度で上記基板を加熱することにより得られるITOの微結晶よりなる
ことを特徴とする、請求項9記載の反射防止構造体。
【請求項11】
上記平滑基板がガラス転移温度150度以上の樹脂で形成されている
ことを特徴とする、請求項4又は5記載の反射防止構造体。
【請求項12】
上記の樹脂がメタクリル系樹脂である
ことを特徴とする、請求項11記載の反射防止構造体。
【請求項13】
上記メタクリル系樹脂が下記成分AないしBを単独もしくは複合して含有してなる
ことを特徴とする請求項12記載の反射防止構造体。
成分A:構造式(I)で表される含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート
成分B:構造式(II)で表されるイオウ含有(メタ)アクリレート
構造式(I)
【化3】

構造式(II)
【化4】

【請求項14】
微細な凹凸をもつ型の表面を樹脂ないしガラス製の基板の表面に転写することにより、上記基板の表面に請求項2記載の反射防止構造を形成する
ことを特徴とする、反射防止構造体の製造方法。
【請求項15】
平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下である微粒子を圧縮ガスと共に樹脂ないしガラス製の基板の表面に噴出することにより、上記基板の表面に請求項2記載の反射防止構造を形成する
ことを特徴とする、反射防止構造体の製造方法。
【請求項16】
平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下である微粒子を圧縮ガス及び液体と共に樹脂ないしガラス製の基板の表面に噴出することにより、上記基板の表面に請求項2記載の反射防止構造を形成する
ことを特徴とする、反射防止構造体の製造方法。
【請求項17】
酸ないしアルカリ液ないし有機溶媒によって樹脂ないしガラス製の基板の表面をエッチングすることにより、上記基板の表面に請求項2記載の反射防止構造を形成する
ことを特徴とする、反射防止構造体の製造方法。
【請求項18】
上記型の表面にある微細な凹凸が、平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下である微粒子を圧縮ガスと共に上記型の表面に噴出することによって形成されたものである
ことを特徴とする、請求項14記載の反射防止構造体の製造方法。
【請求項19】
上記型の表面にある微細な凹凸が、平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下である微粒子を圧縮ガス及び液体と共に上記型の表面に噴出することによって形成されたものである
ことを特徴とする、請求項14記載の反射防止構造体の製造方法。
【請求項20】
上記型が金属製の型であり、上記型の表面にある微細な凹凸が、上記型の表面にレジスト液をコーティングした後、マスクをかけて露光し、エッチングすることによって形成されたものである
ことを特徴とする、請求項14記載の反射防止構造体の製造方法。
【請求項21】
上記型がガラスないし金属ないし樹脂製の型であり、上記型の表面にある微細な凹凸が、平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下である有機ないし無機の微粒子を溶媒可溶性の樹脂に均一に分散させた分散液を上記型の表面に塗布した後、上記分散液中の溶媒を除去することにより形成されたものである
ことを特徴とする、請求項14記載の反射防止構造体の製造方法。
【請求項22】
平滑な基板上に透明電極をスパッタにより成膜し、成膜中或いは成膜後に上記平滑基板を加熱して上記透明電極中に金属もしくは金属酸化物の粒子を生成させることにより、上記平滑基板上に請求項2記載の反射防止構造を形成する
ことを特徴とする、反射防止構造体の製造方法。
【請求項23】
平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下である有機質ないし無機質の微粒子を溶媒可溶性の樹脂に均一に分散させた分散液をガラスないし樹脂製の平滑な基板上に塗布した後、上記分散液中の溶媒を除去することにより、上記平滑基板上に請求項2記載の反射防止構造を形成する
ことを特徴とする、反射防止構造体の製造方法。
【請求項24】
請求項3〜13のいずれかの項に記載の反射防止構造体を備えた
ことを特徴とする、タッチパネル用基板。
【請求項25】
請求項3〜13のいずれかの項に記載の反射防止構造体を備えた
ことを特徴とする、有機電界発光素子用基板。
【請求項26】
請求項3〜13のいずれかの項に記載の反射防止構造体を備えた
ことを特徴とする、液晶表示パネル用基板。
【請求項27】
請求項3〜13のいずれかの項に記載の反射防止構造体を備えた
ことを特徴とする、カラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−343758(P2006−343758A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175421(P2006−175421)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【分割の表示】特願2001−86069(P2001−86069)の分割
【原出願日】平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】