説明

反射防止物品

本発明は、新規ペルフルオロポリエーテルシラン類、該新規ペルフルオロポリエーテルシラン類を含有する組成物類、並びに基材、特に、セラミックス又はガラスなどの硬質表面を有する基材を処理して、それらに撥水性、撥油性、防染性、及び/又は防汚性を与える方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ペルフルオロポリエーテルシラン類(novel perfluoropolyether silanes)、該新規ペルフルオロポリエーテルシラン類を含有する組成物類、並びに基材、特に、セラミックス又はガラスなどの硬質表面を有する基材を処理して、それらに撥水性、撥油性、防染性、及び/又は防汚性(dirt repellent)を与える方法に関する。本発明はまた、このような方法にて使用する組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素化シラン類、即ち、ガラス及びセラミックスなどの基材に、撥油性及び撥水性を与えるためのフッ素化基を1つ以上有するシラン化合物類の使用が既知である。例えば、米国特許第5,274,159号は、水溶液から適用可能な壊れやすいフッ素化アルコキシシラン界面活性剤類について記載している。PCT国際公開特許第02/30848は、セラミックスに撥油性及び撥水性を与えるためのフッ素化ポリエーテルシラン類を含む組成物について記載している。
【0003】
欧州特許第797111号は、防汚層を光学構成成分上に形成するためのペルフルオロポリエーテル基含有アルコキシシラン化合物類の組成物について開示している。更に、米国特許第6,200,884号は、改善された撥水性及び撥油性並びに防染性を有するフィルムへと硬化する、ペルフルオロポリエーテルで修飾されたアミノシラン類の組成物について開示している。
【0004】
欧州特許第789050号は、複合フィルムコーティングを作製するためのフッ素化ポリエーテルシラン類の使用について開示している。米国特許第3,646,085号は、ガラス表面又は金属表面に、撥油性及び撥水性を与えるためのフッ素化ポリエーテルシラン類について教示している。PCT国際公開特許第99/37720号は、ガラス又はプラスチックなどの基材上の反射防止(Antireflective)表面へ防汚コーティングを提供するためのフッ素化ポリエーテルシラン類について開示している。米国特許第3,950,588号は、浴室タイル又は調理器具などのセラミック表面へ、撥水性及び/又は撥油性を与えるためのフッ素化ポリエーテルシラン類の使用について開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次式の新規ペルフルオロポリエーテルシラン類を提供する:
[−R−C−S−R−Si(Y)(R3−x(式中、
は、一価又は二価のペルフルオロポリエーテル基であり、
は、共有結合、−O−、又は二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、該アルキレン基は1つ以上のカテナリー(catenary)酸素原子を含有してもよく、
は、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、該アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル又はアリール基であり、xは、1、2又は3、好ましくは3であり、
yは、1又は2である)。
【0006】
撥油性及び撥水性を与える基材処理のための多数のフッ素化シラン組成物が当技術分野において既知であるが、基材処理、特に、セラミックス、ガラス及び石などの硬質表面を有する基材に撥水性及び撥油性を付与し、容易に洗浄できるようにするために、更に改善された組成物を提供するという要望が引き続き存在している。
【0007】
ガラス及び硬質表面としてのプラスチック(特に、眼科領域における)を処理して、それらに、防汚性、即ち、防染性、防泥性、耐油性及び/又は耐水性(oil and/or water resistant)を付与するという要望もまた存在する。望ましくは、このような組成物及びそれらを用いる方法は、改善された性質を有するコーティングを生み出すことができる。特に、コーティングの改善された磨耗耐性を含む、コーティングの耐久性を改善することが好ましい。更に、より少量の洗剤、水、又はより少ない手作業でありながら、このような基材の洗浄の容易さを向上することは、最終消費者の要望であるだけでなく、環境に対してもプラスの効果を有する。該組成物は、容易かつ安全な方法で都合良く適用されることができ、また現在の製造方法と相性が良い。好ましくは、該組成物は、要処理基材を作製するために実施される製造プロセスに容易に適合する。該組成物は、好ましくはまた、生態学的に好ましくない構成成分の使用を避ける。
【0008】
本発明は更に、ペルフルオロポリエーテルシランを有し、そこへ防汚コーティングを提供するための基材、特に硬質基材をコーティングする方法を提供する。一実施形態では、本発明は、ペルフルオロポリエーテルシランを蒸発させること及びそれを例えば蒸着技術によって基材上に堆積させることを含む、ペルフルオロポリエーテルシランを基材上に堆積する方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、ペルフルオロポリエーテルシラン及び溶媒を含むコーティング組成物を含み、それによって、コーティング組成物を基材に適用して、そこへ防汚コーティングを付与する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、新規ペルフルオロポリエーテルシラン類、及びペルフルオロポリエーテルシラン類のコーティングを有する基材を提供する。シラン類は、次式:
[−R−C−S−R−Si(Y)(R3−x(式中、
は、一価又は二価のペルフルオロポリエーテル基であり、
は、共有結合、−O−、又は二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、該アルキレン基は1つ以上のカテナリー(鎖中)酸素原子を含有してもよく、
は、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、該アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル又はアリール基であり、xは、1、2又は3、好ましくは3であり、
yは、1又は2である)である。
【0010】
は、一価又は二価のペルフルオロポリエーテル基を表す。ペルフルオロポリエーテル基は、線状、分枝状、及び/又は環状構造を含むことができ、飽和又は不飽和であってよい。それは、ペルフルオロ化基であり、すなわち、本質的に全てのC−H結合が、C−F結合によって置き換えられている。好ましくは、それは、−(C2n)−、−(C2nO)−、−(CF(Z))−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)C2nO)−、−(C2nCF(Z)O)−、−(CFCF(Z)O)−及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロ化繰返し単位を含む。これらの繰返し単位において、Zは、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、又はペルフルオロエーテル基であって、これらの全ては、直鎖、分岐鎖、又は環状であることができ、好ましくは、約1個〜約9個の炭素原子及び約0個〜約4個の酸素原子を有する。「n」は、少なくとも1であり、好ましくは1〜4である。これらの反復単位を含有するペルフルオロポリエーテルの例は、米国特許第5,306,758号(ペレリット(Pellerite))に開示されている。
【0011】
一価のペルフルオロポリエーテル基(上記式(I)において、式中、yは1である)の場合、末端基は、(C2n+1)−、(C2n+1O)−又は(X’C2nO)−であることができ、これは、直鎖又は分岐鎖であってよく、かつここでX’は、例えばH、Cl、又はBrである。好ましくは、これらの末端基はペルフルオロ化されている。これらの繰返し単位又は末端基において、nは、1以上であり、好ましくは1〜8である。二価のフッ素化ポリエーテル基の好ましい平均的構造としては概ね、−CO−、C−FO−、−C10O−、−C12O−、
−CFO(CFO)(CO)CF−(式中、m及びpの平均値が0〜50であり、m及びpは同時に0にならないものとする)、
−CFO(CO)CF−、−CF(CF)O−(CFCF(CF)O)−CO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−及び−(CFO(CO)(CF−(式中、各pの平均値は、1〜50である)が挙げられる。
【0012】
これらのうちで、特に好ましい平均的構造は概ね、−CFO(CFO)(CO)CF−、−CFO(CO)CF−及び−CF(CF)O−(CFCF(CF)O)−CO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−である。一価のペルフルオロポリエーテル基の特に好ましい平均的構造類としては概ね、CO(CF(CF)CFO)CF(CF)−及びCFO(CO)CF−(式中、pの平均値は、1〜50である)が挙げられる。合成された際、これらの化合物は通常、ポリマー混合物を含む。
【0013】
二価のR基及びR基は、独立して、アルキレン、アリーレン及びこれらの組み合わせ(アラルキレン及びアルカリーレンなど)を含む、飽和又は不飽和であり得る線状、分枝状、又は環状構造を含むことができる。R基及びR基は、1つ以上のカテナリーヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、又はイオウ)を含有することができる。該基はまた、ハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子で置換されることもできるが、これによって化合物が不安定になることもあるので、望ましいものではない。
【0014】
好ましくは、R基及びR基は、炭化水素基であり、好ましくは、線状炭化水素基であり、1つ以上のカテナリーヘテロ原子を含有してもよい。R基及びR基の例としては、式:−(C2m)−のアルキレン類(式中、mは約2〜約20である)が挙げられ、1つ以上の非隣接−CH−基が、エーテル酸素原子、例えば−(C2m)−O−(Cm’2m’)−によって置き換えられている(式中、mは2〜20であり、m’は0〜20でありかつm+m’は2〜20である)。
【0015】
Yは、式(I)中の加水分解性基、例えばハロゲン化物、C〜Cのアルコキシ基、アシルオキシ基、又はポリオキシアルキレン基(米国特許第5,274,159号に開示されているようなポリオキシエチレン基)などを表す。加水分解性とは、Y基が、水と交換反応を生じて、Si−OH部分を形成し、これが更に反応してシロキサン基を形成することを意味する。加水分解性基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基、塩素及びアセトキシ基が挙げられる。
【0016】
は、一価のアルキル又はアリール基であり、かつ一般に、非加水分解性である。
【0017】
本発明の基材処理のための組成物類に適している、式Iの化合物類は、少なくとも約200、好ましくは少なくとも約1,000の分子量(数平均)を有する。好ましくは、それらは約10,000以下である。
【0018】
好ましいペルフルオロポリエーテルシランの例としては、次の平均的構造類が概ね挙げられるが、これらに限定されない。繰返し単位数であるn及びmは変わり得るが、nは1〜50、一般には3〜30であり、n+mは30以下である。
【0019】
O[CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCSCSi(OCH
O[CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCSCSi(OC
O[CF(CF)CFO]CF(CF)COSCSi(OCH
O[CF(CF)CFO]CF(CF)COC3HSCSi(OC
(CHO)SiCSCOCHCF(OC(OCF)nCFCHOCSCSi(OCH
(CO)SiCSCOCHCF(OC(OCF)nCFCHOCSCSi(OC
(CHO)SiCSCOCHCF(CF)[OCFCF(CF)]OCO[(CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCSCSi(OCH
(CO)SiCSCOCHCF(CF)[OCFCF(CF)]OCO[(CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCSCSi(OC
O[CF(CF)CFO]CF(CF)CHCHSCSi(OCH
O[CF(CF)CFO]CF(CF)CHCHSCSi(OC
O[CF(CF)CFO]CF(CF)CFOCSCSi(OCH
O[CFCFCFO]CHOCSCSi(OCH
O[CFCFCFO]CHCHSCSi(OCH
式Iの化合物類は、標準的な技術を使用して合成されることができる。例えば、次のスキームに示すように、市販の又は容易に合成される、式:HS−R−Si(Y)(R3−xのメルカプトシランと、式:R−R−CH=CHのエチレン系不飽和ペルフルオロポリエーテル化合物とが混ぜ合わせられてよい。式Iのジシリル化合物類(式中、yは2)をまた、これらの同一の一般的方法によって調製してもよい。
【0020】
スキームI
−R−CH=CH(II)+HS−R−Si(Y)(R3−x(III)→R−R−C−S−R−Si(Y)(R3−x(I)、
(式中、R、R、R、R、Y及びxは、式Iについて既に定義された通りである)。スキーム1の付加反応について言えば、エチレン系不飽和基の炭素原子(−C−基が、−CH(CH)−又は−CHCH−の構造のものである)の一方にイオウを付加してよい。
【0021】
メルカプトシラン(III)の該エチレン系不飽和化合物(II)への付加を、フリーラジカル反応開始剤を使用して実施してよい。有用なフリーラジカル反応開始剤としては、無機及び有機過酸化物類、ヒドロペルオキシド類、過硫酸塩類、アゾ化合物類、酸化還元系(例えば、KとNaとの混合物)、並びに「コーティング、インク及びペイントのUV&EB形成の化学&技術(Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings, Inks & Paints)」(K.K.ディエトリカー(K.K. Dietliker)著、第3巻、276〜298ページ、SITAテクノロジー社(SITA Technology Ltd.)、ロンドン、1991年)によって記載されているようなフリーラジカル光開始剤が挙げられる。代表的実施例としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過安息香酸t−ブチル、クメンヒドロペルオキシド、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(VAZO 67)、並びにアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)が挙げられる。当業者は、反応開始剤の選択が、特定の反応条件、例えば溶媒の選択に依存することを理解するであろう。
【0022】
エチレン系不飽和基を有するペルフルオロポリエーテル化合物類、例えば式IIを、当該技術分野において既知の手段によって調製してよい。例えば、一般式:R−CH−OHのペルフルオロ化ジヒドロアルコール(対応するペルフルオロ化アシルフッ化物又はエステル、の還元によって調製される)を、臭化アリルなどのオメガ−ハロアルケンと反応させてよい。
【0023】
【化1】

【0024】
あるいは、ペルフルオロ化アシルフッ化物を、フッ化物イオンで触媒させた付加反応によってオメガ−ハロアルケンへと反応させてよい。
【0025】
【化2】

【0026】
その他のエチレン系不飽和ペルフルオロポリエーテルを、ペルフルオロポリエーテルヨウ化物の反応(過酸化ベンゾイルなどのフリーラジカル触媒を使用して、65℃にて無溶媒下で、ヨウ化リチウムを使用して180℃にてポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)をエチレンと反応させることにより(J.L.ハウエル(Howell)らの「フッ素化学雑誌(J. Fluorine Chem)」(第125巻、1513ページ、2004年)に記載))によって調製することができる。次に、得られた一級又は二級ヨウ化物は、例えば、メタノール中のナトリウムメトキシドを使用してジヒドロヨウ素化して、エチレン系不飽和ペルフルオロポリエーテル前駆体を形成することができる。
【0027】
【化3】

【0028】
ペルフルオロポリエーテル化合物を、ペルフルオロポリエーテルフッ化カルボニルを生じるヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)のオリゴマー化によって得ることができる。このフッ化カルボニルを、当業者に周知の反応によって、酸、酸性塩、エステル、アミド又はアルコールに変換させてよい。次に、フッ化カルボニル若しくはカルボニル酸、エステル又はそれから誘導されたアルコールを更に反応させ、既知の手順に従って、所望の基を導入してよい。
【0029】
式(I)によるペルフルオロポリエーテル類の混合物を使用して、フルオロケミカル(fluorochemical)組成物のフッ素化ポリエーテル化合物を調製してよいことが、当業者には明らかであろう。一般に、本発明の式(I)によるペルフルオロポリエーテルの製造方法によって、異なった分子量を有し、かつ、(1)約750グラム/モル未満の分子量を有するペルフルオロ化ポリエーテル部分を有するフッ素化ポリエーテル化合物も、(2)10,000グラム/モル超の分子量を有するペルフルオロポリエーテル部分を有するフッ素化ポリエーテル化合物も含まないペルフルオロポリエーテルの混合物が得られる。
【0030】
約10,000グラム/モルを超える分子量に相当するペルフルオロポリエーテルを使用すると、プロセス上の問題が引き起こされる可能性がある。これらの問題は、典型的には、高分子量材料が不溶性の懸念をもたらすという事実に起因し、加えて、これら高分子量化合物の低蒸気圧ゆえのCVDコーティングなどの適用方法における困難に起因する。更に、高分子量フッ素化ポリエーテル誘導体の存在が、分留による材料の分離プロセスの効率に多大な影響を与え得る。
【0031】
フルオロケミカル組成物は、望ましくは、750グラム/モル未満の分子量を有するペルフルオロポリエーテル部分、及び5,000グラム/モルを超える分子量を有するそれらの部分を含まないか、又は実質的に含まない。用語「実質的に含まない」とは、分子量範囲の外側の特定のペルフルオロポリエーテル部分が、10重量%以下、好ましくは5重量%以下の量にて存在し、かつそれが組成物中のペルフルオロポリエーテル部分の全重量に基づくことを意味する。これらの部分を含まないか、又は実質的に含まない組成物が好ましいが、これはそれらの有益な環境特性及び更なる反応工程におけるそれらの加工性(processability)ゆえである。
【0032】
式Iの化合物を蒸着法によって適用することが望ましい場合、ペルフルオロポリエーテル部分の分子量は、好ましくは10,000グラム/モル未満、より好ましくは1,000〜5,000グラム/モルである。
【0033】
式Iのペルフルオロポリエーテルシランから誘導されるコーティング材(Coating)は、各種基材、特に硬質基材に適用されて、それらに撥油性、撥水性、及び防汚性を付与し得る。このコーティングは、例えば1〜50分子層と非常に薄くすることができるが、実際には、有用なコーティングはそれより厚い場合がある。
【0034】
本願発明者らは、理論に束縛されることを望むものではないが、上記式Iの化合物は、基材表面との縮合反応を生じて、式Iの加水分解性の「Y」基の加水分解又は変位によって、シロキサン層を形成すると考えられている。この文脈中、「シロキサン」とは、−Si−O−Si−結合を示し、そこにRセグメント(即ち、本明細書中の式I中にあるようなペルフルオロポリエーテルセグメント)が、有機連結基(例えば、本明細書中の式I中のR基及びR基のようなもの)を介してシリコン原子に結合している。
【0035】
式Iの化合物類を含むペルフルオロポリエーテルシランコーティング組成物から調製されるコーティング材は、それ自体、ペルフルオロポリエーテルシランを含み、加えて、予め選択された基材の表面への結合から生じたシロキサン誘導体を含む。コーティング材はまた、未反応又は未縮合の「Si−Y」基も含むことができる。組成物はまた、オリゴマーペルフルオロポリエーテルモノハイドライドなどの非シラン材料、出発材料及びペルフルオロポリエーテルアルコール及びエステルを更に含有してもよい。同様に、蒸着されたペルフルオロポリエーテルシランは、式Iのシランそれ自体を含んでよく、加えて、基材表面との反応から生じるシロキサン誘導体を含んでよい。
【0036】
一実施形態では、本発明は、ペルフルオロポリエーテルシラノール、溶媒、並びに水及び酸を含むコーティング組成物を提供してもよい。多くの基材、例えばセラミックスに対して、良好な耐久性を得るためには、本発明の組成物は、好ましくは水を含む。従って、本発明は、基材を式Iのペルフルオロポリエーテルシランを含むコーティング組成物及び溶媒と接触させる工程を含むコーティング法を提供する。コーティング組成物は、水及び酸を更に含んでよい。一実施形態では、本方法は、基材を式Iのシランを含むコーティング組成物及び溶媒と接触させることと、続いて該基材を水性酸(aqueous acid)と接触させることと、を含む。
【0037】
存在する場合、水分量は、典型的には、式Iのシランの重量に対して、0.1重量%〜20重量%、好ましくは0.5重量%〜15重量%、より好ましくは1重量〜10重量%である。
【0038】
水に加えて、本発明の組成物はまた、有機酸又は無機酸を含んでもよい。有機酸としては、酢酸、クエン酸、ギ酸など;フッ素化有機酸、例えば、CFSOH、CCOK又は式R[−(L)−Z](IV)により表すことができるようなもの(式中、Rは、一価又は二価のペルフルオロアルキル若しくはペルフルオロポリエーテル基を表し、Lは、有機の二価結合基を表し、Zは、酸性基、例えばカルボン酸基、スルホン酸基若しくはホスホン酸基を表し;aは0若しくは1であり、bは1若しくは2である)が挙げられる。
【0039】
好適なR基の例としては、上記のRについてのようなものが挙げられる。式(IV)の有機酸の例としては、CO(CF(CF)CF10−30CF(CF)COOH(デュポンから市販されている)又はCF(CFOCF(CF)COOHが挙げられる。無機酸の例としては、硫酸、塩酸などが挙げられる。酸は、一般に、組成物中にシラン重量に対して、約0.01重量%〜10重量%、より好ましくは0.05重量%〜5重量%の量で含まれる。
【0040】
酸は、コーティング組成物それ自体へと処方されるか、又はペルフルオロポリエーテルシランと共にコーティングした後で処方されてよく、コーティング基材は、酸溶液に浸漬されて、シロキサン層の形成をもたらす。
【0041】
数多くの基材のための本発明のコーティング組成物は、1つ以上の有機溶媒を含んでよい。使用される有機溶媒又は有機溶媒のブレンドは、少なくとも0.01重量%の、式Iのペルフルオロポリエーテルシランを溶解させることができなければならない。更に、溶媒又は溶媒の混合物は、少なくとも0.1重量%の水に対する溶解度及び少なくとも0.01重量%の酸に対する溶解度を有してよい。有機溶媒又は有機溶媒の混合物がこれらの基準を満たさない場合、フッ素化シラン、溶媒、並びに任意の水及び酸の均質混合物を得ることが不可能な場合がある。このような非均質組成物を基材処理に使用することもあるが、そこから得られるコーティングは一般に、所望の撥油性/撥水性を有さず、かつ十分な耐久性を持たない。
【0042】
好適な有機溶媒又は溶媒の混合物は、アルカン、芳香族溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコール類;アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン類;エチルアセテート、ギ酸メチルなどのエステル類、並びにジイソプロピルエーテルなどのエーテル類から選択されることができる。
【0043】
ペルフルオロポリエーテルシランの溶解度を向上させるために、フッ素化溶媒を、単独で又は有機溶媒と組み合わせて使用してよい。このようなフッ素化溶媒は一般に、それら単独での使用には適していないが、これは水や酸が存在する場合、溶解性への要求が満たされないためである。通常は、ペルフルオロポリエーテルシランは最初に、フッ素化溶媒からコーティングされてよく、次に引き続いて水性酸と接触させられてよい。
【0044】
フッ素化溶媒の例としては、スリーエム(3M)から入手可能なペルフルオロヘキサン又はペルフルオロオクタンなどのフッ素化炭化水素類;ソルベイ(Solvay)から入手可能なペンタフルオロブタンなどの部分フッ素化炭化水素類、又はデュポン(DuPont)から入手可能なCFCFHCFHCFCF;メチルペルフルオロブチルエーテル又はエチルペルフルオロブチルエーテル(それぞれ、ノヴェック(NOVEC)(商標)HFE−7100及びノヴェック(商標)HFE−7200としてスリーエムから入手可能)などのアルキルペルフルオロアルキルエーテルを含むハイドロフルオロエーテル類が挙げられる。これらの材料と有機溶媒との種々のブレンドを用いることが可能である。
【0045】
特に好ましい基材は、反射防止基材である。反射防止(AR)表面は、金属酸化物の真空蒸着(vacuum deposition)又はスパッタリングによって調製される基材であり、ガラス又はプラスチック製基材上の薄いフィルムは、眼科領域のデバイス及び電子装置の表示デバイスにおいて有用である。このような金属酸化物フィルムは、比較的多孔質であり、相対的に粗いプロファイルを形成する粒子のクラスターで構成される。このようなコーティングは、グレア(glare)及び反射を低減するのに役立つ。それらが眼科用メガネにて使用される場合、それらは眼精疲労を低減する。それらが導電性コーティングである場合、それらはまた静電放電及び電磁放射線を減少させる上でも役立つ。このため、これらコーティングの一用途は、コンピュータ用モニタのような表示デバイスの可読性を向上させるための、コントラスト向上及び反射防止性を提供することである。反射防止基材は、米国特許第5,851,674号に記載されている。
【0046】
反射防止コーティング材のための各種防汚性コーティング材が知られている。例えば、米国特許第6,906,115号(ハナザワ(Hanazawa)ら)及び同第6,183,872号(タナカ(Tanaka)ら)は、共に眼科用メガネなどの反射防止基材に適用され得るシリコン含有有機フルオロポリマーについて記載している。しかし、このような防汚性コーティングが、眼科用メガネ製造における研磨作業に悪影響を及ぼすことが知られている。米国特許公報第2003/004937号(エシロール・インターナショナル(Essilor International)に譲渡)は、たとえ最も効率的な疎水性及び/又は撥油性コーティングの場合であったとしても、インターフェースパッド(interface pad)/凸面での接着が変更又は脆弱化する点を指摘している。同一参考文献では、少なくとも15mJ/mの表面エネルギーを有する一時的保護コーティングを提供して、レンズを研磨作業の間滑らないようにすることにより、これら市販のコーティングに固有の問題を克服しようと試みている。
【0047】
多くの実施形態では、本発明は更に、現在利用可能なコーティングの既知の欠陥を克服するが、ここで、米国特許公報第2003/004937号にて記載されているように、反射防止レンズは、本発明のペルフルオロポリエーテルシランでコーティングされ、レンズ用縁切り/研磨装置内に固定され、それによって一時的な層の必要性を事前に排除してよい。このため、本発明は、反射防止コーティング及びその上に式Iのペルフルオロポリエーテルシランのコーティングを有する眼科用メガネを提供すること、レンズをブロックすること、並びに該レンズの縁切りをすることにより、眼科用メガネの縁切り方法を提供する。該方法を、一時的な保護コーティングを使用せずに実施してよい。
【0048】
スパッタリングされた金属酸化物反射防止コーティングは一般に、耐久性がありかつ均一である。また、それらの光学特性は制御可能であって、それらを非常に望ましいものにする。これらはまた、非常に高い表面エネルギーと非常に大きな屈折率を有する。しかし、スパッタリングされた金属酸化物表面の高表面エネルギーは、表面を有機不純物(皮膚の油など)によって汚染されやすくする。表面汚染物質の存在は、金属酸化物コーティングの反射防止性を大きく劣化させる。更に、高屈折率ゆえに、表面汚染は、エンドユーザーにとって非常に目障りである。
【0049】
本発明は、撥油性、撥水性、及び防汚性コーティングを、比較的耐久性があり、かつ汚染に対してより耐性を示す、反射防止表面上に提供し、そして、エッジ研磨プロセスに関する従来技術のコーティング類の欠陥を克服する。本発明は、一実施形態では、反射防止表面を有する基材及び厚さ約200オングストローム未満でその上に堆積させた防汚コーティングを含む反射防止物品の調製に用いられる、方法及び組成物を提供する。防汚コーティングは、反射防止物品の反射防止特性を実質的に変更しないような厚さのペルフルオロポリエーテルシロキサンフィルムを含む。
【0050】
防汚コーティングの総コーティング厚さは一般に、単分子層(典型的には、厚さ約15オングストロームを超える)を超える。即ち、本発明の防汚コーティングは、少なくとも厚さ約20オングストロームであり、好ましくは少なくとも厚さ約30オングストロームであってよい。一般に、それは、厚さ約200オングストローム未満であり、好ましくは厚さ約100オングストローム未満である。コーティング材料は通常、反射防止物品の反射防止特性を実質的に変更しないような量、即ち、ペルフルオロポリエーテルシランコーティング無しの同一物品の反射防止性よりも、約0.5%単位未満異なる反射防止性となるような量で存在する。
【0051】
本発明の方法によって作製された光学物品は、ガラス又は有機ポリマー基材などの基材であって、プライム化表面を有してもよく、その上に任意の接着強化コーティングをコーティングされている基材;反射防止組成物;及び式Iのペルフルオロポリエーテルシランから誘導される防汚コーティングを含む。
【0052】
反射防止物品のための好適な透明基材としては、ガラス並びにポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリチオウレタン、ポリスチレンなどの透明熱可塑性材料;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー及びアクリロニトリル−スチレンコポリマーなどのスチレンコポリマー;セルロースエステル、特にセルロースアセテート及びセルロースアセテート−ブチレートコポリマー;ポリ塩化ビニル;ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリイミド;ポリフェニレンオキサイド;並びにポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが挙げられる。用語「ポリ(メタ)アクリレート」(あるいは「アクリル樹脂」)には、一般にキャストアクリルシート材料(cast acrylic sheeting)、延伸アクリル樹脂、ポリ(メチルメタクリレート)「PMMA」、ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−コ−エチルアクリレート)などと呼ばれている材料が含まれる。基材厚さはさまざまであるが、可撓性有機フィルム用は、通常約0.1mm〜約1mmである。更に、有機ポリマー基材を、種々の異なった方法によって製造することができる。例えば、熱可塑材料を押出加工して、所望の寸法へ切断することができる。これを所望の形状と寸法に成形することができる。また、セルキャスト(cell cast)を行い、かつ引き続いて加熱及び延伸して、有機ポリマー基材を形成することができる。
【0053】
反射防止コーティングを堆積させる基材は、プライム化表面を含んでよい。プライム化表面は、アクリル樹脂層のような化学プライマー層を適用することにより、あるいは化学的エッチング、電子ビーム照射、コロナ処理、プラズマエッチング、又は接着促進(adhesion promoting)層との同時押出によって得ることができる。このようなプライム化基材は市販されている。例えば、水性アクリレートラテックスによってプライム化したポリエチレンテレフタレート基材は、インペリアル・ケミカル・インダストリーズ・フィルムズ社(Imperial Chemical Industries Films)(ノースカロライナ州ホープウェル)から入手可能である。
【0054】
基材はまた、反射防止コーティングと基材との間の接着を向上させるために、接着強化(adhesion-enhancing)コーティングを含んでもよい。このようなコーティング材は、市販されている。接着強化コーティングは、可撓性有機ポリマー基材上で使用するのに特に望ましい。プライム化又は非プライム化有機ポリマー基材への反射防止コーティングの接着強化に加えて、反射防止コーティングの引掻抵抗を向上させることによって、接着強化コーティングはまた、可撓性有機ポリマー基材上の反射防止コーティングに増大した耐久性を提供し得る。
【0055】
スプレーコーティング、ナイフコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、メニスカスコーティング(meniscus coating)、フローコーティング、ロールコーティングなどの多種多様なコーティング方法を使用して、本発明の組成物を任意の基材へと適用することができる。本発明のペルフルオロポリエーテルシラン混合物の適用のための好ましいコーティング方法としては、スプレー適用が挙げられる。コーティングされている基材を、典型的には室温(典型的には、約20℃〜25℃)にて、コーティング組成物に接触させることができる。
【0056】
コーティング組成物を、例えば60℃〜150℃の温度に予熱された基材に適用することができる。これは、例えば、セラミックタイルを生産ラインの終わりにてベーキングオーブン直後に処理できる工業生産にとって、特別な関心事である。適用後、処理された基材を、乾燥させるのに十分な時間にわたり室温又は高温、例えば40℃〜300℃で乾燥させ硬化させることができる。該プロセスはまた、過剰な材料を除去するための研磨工程も必要とする場合がある。
【0057】
基材が、例えば光学レンズにおけるような反射防止コーティングである場合、ペルフルオロポリエーテルシランを、溶液コーティング技術に加えて、蒸着技術によって堆積してよい。ペルフルオロポリエーテルシランが蒸発する条件は、防汚性ペルフルオロポリエーテルシランの構造及び分子量によって変化し得る。本発明の幾つかの実施形態では、蒸発は、約1.33Pa(0.01トール)未満の圧力にて、約0.013Pa(10−4トール)未満の圧力にて、又は更に0.0013Pa(10−5トール)の圧力にて生じうる。本発明の実施形態では、蒸発は、少なくとも約100℃、又は200℃超、又は300℃超の温度にて生じ得る。有利には、ペルフルオロポリエーテルシランを、米国特許第6,991,826号(ペレリットら)に開示されているもののような、他の防汚性コーティング材よりも低温にて蒸着し得るということが見出されている。
【0058】
蒸着法は、付加的な取り扱い及び環境への露出による反射防止物品表面の汚染の可能性、それによって収率が低下するという可能性を低減し得る。更に、反射防止コーティングは一般に、蒸着によって適用されるので、ペルフルオロポリエーテルシランを同一プロセスによって同一真空槽内で適用することがより効率的である。このため、本発明の方法は、業界でその他の用途のために使用されているのと同様のプロセス条件下にて、少ない設備投資コスト及び使用する溶剤の必要性を排除して、防汚性組成物の反射防止レンズへの適用を可能にする。
【0059】
一実施形態では、蒸発は、ペルフルオロポリエーテルシラン及び反射防止基材をチャンバ内に置くこと、チャンバ内の圧力を低下させること、及びペルフルオロポリエーテルシランを加熱することを含む。ペルフルオロポリエーテルシランは通常、るつぼ(crucible)内にて保持されるが、幾つかの実施形態では、シランは多孔質マトリックス、例えばセラミックペレット内に吸収され、そしてペレットは真空槽内にて加熱される。好ましい実施形態では、反射防止基材は、反射防止眼科用メガネを含む。更に、反射防止眼科用メガネは、ポリカーボネート樹脂及び該ポリカーボネート樹脂表面上の反射防止コーティングを含んでよい。
【0060】
本発明はまた、式Iのペルフルオロポリエーテルシランを蒸発させること及びペルフルオロポリエーテルシランを反射防止コーティングされた眼科用メガネ上に堆積させること(ここで、ペルフルオロポリエーテルシランを第一チャンバ内に置き、そして反射防止コーティングされた眼科用メガネを該第一チャンバと連結された第二チャンバ内に置き、第一チャンバからの蒸発されたペルフルオロポリエーテルシランを第二チャンバ内の反射防止コーティングされた眼科用メガネの上に堆積できるようにした)からなる、ペルフルオロポリエーテルシランを反射防止コーティングされた眼科用メガネ上に堆積する方法も提供する。本発明の別の態様では、第一チャンバが加熱されている間、第二チャンバを周囲温度に維持してもよい。
【0061】
本発明はまた、シラン及び反射防止基材を同一チャンバ内に置くこと、ペルフルオロポリエーテルシランを加熱すること、及びチャンバ内圧力を低下させることを含み得る、ペルフルオロポリエーテルシランを反射防止基材上に堆積する方法を提供する。幾つかの条件下では、幾つかの基材と共に、反射防止基材及びペルフルオロポリエーテルシランを、同一温度まで加熱してよい。
【0062】
更なる態様では、本発明は、反射防止層を透明基材の表面上に堆積すること、及び式Iのペルフルオロポリエーテルシランを該反射防止層の表面上に蒸着させること(ここで、ペルフルオロポリエーテル部分の平均分子量は、約750〜約5,000グラム/モル、好ましくは1,000〜3,000グラム/モル)を含む、反射防止物品の調製方法を提供する。
【0063】
他の有用な基材としては、セラミックス、ガラス、金属、天然及び人工石、熱可塑性材料(ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリルコポリマーのようなスチレンコポリマー、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなど)、塗料(アクリル樹脂をベースにしたようなものなど)、粉末コーティング材(ポリウレタン又はハイブリッド粉体コーティング材など)、並びに木材が挙げられる。各種物品を、本発明のペルフルオロポリエーテル溶液で効果的に処理して、その上に撥水性かつ撥油性のコーティングを提供することができる。例としては、セラミックタイル、バスタブ又はトイレット、ガラスシャワーパネル、建設用ガラス、車両用各種部品(ミラー又はウィンドスクリーンなど)、ガラス、及びセラミック又はエナメル陶器材料が挙げられる。
【0064】
ペルフルオロポリエーテルシランコーティング組成物と共に処理することができる好適な基材としては、好ましくは、式(I)によるペルフルオロポリエーテルシランと反応可能な官能基を備えた硬質表面を有する基材が挙げられる。好ましくは、基材表面のこのような反応性は、活性水素原子によって提供されることが好ましい。このような活性水素原子が存在しない場合、ペルフルオロポリエーテルシランと反応させるために、基材を最初に、プラズマ含有酸素又はコロナ雰囲気中で処理してよい。
【0065】
有用な基材としては、セラミックス、グレーズドセラミックス(glazed ceramics)、ガラス、コンクリート、モルタル、グラウト並びに天然及び人工石を含む石英質基材のようなものが挙げられる。各種物品を、本発明のペルフルオロポリエーテルシランで効果的に処理して、その上に撥水性かつ撥油性のコーティングを提供することができる。例としては、セラミックタイル、バスタブ又はトイレット、ガラスシャワーパネル、建設用ガラス、車両用各種部品(ミラー又はウィンドスクリーンなど)、及びセラミック又はエナメル陶器材料が挙げられる。眼科用途、例えばメガネレンズに用いられるガラスを、本発明の組成物で処理することが、特に有利である。
【0066】
基材を処理することによって、処理表面に撥油性及び撥水性が付与されるので、処理表面は汚れにくくなり、かつより簡単に汚れを除去することができるようになる。これらの望ましい特性は、本発明の組成物を通して得ることができるような処理表面の高い耐久度のゆえに、長い暴露又は使用及び繰返し洗浄にもかかわらず維持される。
【0067】
最適な特性、特に耐久性を得るために、本発明の組成物を適用する前に基材を清浄する場合がある。即ち、コーティングされている基材の表面は、コーティング前に、有機汚染物質を実質的に含んではならない。クリーニング技術は基材のタイプに応じて異なり、例えば、アセトン又はエタノールなどの有機溶媒による溶媒洗浄工程を含む。
【0068】
コーティング組成物は通常は、相対的希釈溶液であり、0.01重量%〜50重量%のペルフルオロポリエーテルシランを含有し、より好ましくは、0.03重量%〜3重量%のペルフルオロポリエーテルシランを含有し、最も好ましくは、0.05重量%〜1.0重量%のペルフルオロポリエーテルシランを含有する。溶媒と、任意の水及び酸との比を、均質混合物が得られるように選択すべきである。
【0069】
製造し易さ及びコスト要因ゆえに、本発明のコーティング組成物は一般的に、使用直前に、式(I)のペルフルオロポリエーテルシランの濃縮物を希釈することによって調製される。該濃縮物は一般に、有機溶媒中の、水及び/酸がこのような濃縮物中に存在しない、式(I)のペルフルオロポリエーテルシランの濃縮溶液を含む。該濃縮物は、数週間、好ましくは少なくとも1ヶ月間、より好ましくは少なくとも3ヶ月間、安定していなければならない。式(I)のペルフルオロポリエーテルシランが、有機溶媒中にて高濃度で速やかに溶解されることができるということが見出されている。
【0070】
先に記載した蒸着技術に加えて、スプレーコーティング、ナイフコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、メニスカスコーティング、フローコーティング、ロールコーティングなどの多種多様なコーティング方法を使用して、本発明の組成物を適用することができる。ペルフルオロポリエーテルシランコーティング組成物を適用するための1つのコーティング方法は、スプレー適用である。ロールコーティングは、ドクターブレードへコーティング組成物を供給すること、コーティング組成物をドクターブレードからグラビアロールまで移送すること、及びコーティング組成物をグラビアロールから基材の反射防止面に塗布することを含んでよい。ソフトロールを基材表面の反対表面に適用することを更に含む、防汚コーティング組成物をコーティングする工程を更に含んでよい。
【0071】
コーティングされているべき基材を、典型的には室温(典型的には、約25℃〜200℃)にて、コーティング組成物に接触させることができる。あるいは、混合物を、例えば60℃〜150℃の温度に予熱されている基材に適用することができる。これは、例えばセラミックタイルを生産ラインの終わりに、ベーキングオーブン直後に処理することができる工業生産にとって、特別な関心事である。適用後、処理された基材は、乾燥させるのに十分な時間にわたり室温又は高温、例えば、40℃〜300℃で乾燥させ硬化させることができる。該プロセスはまた、過剰な材料を除去するための研磨工程も必要とする場合がある。
【実施例】
【0072】
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した特許請求の範囲の範囲に限定するものではない。
【0073】
特に記載のない限り、実施例及びこれ以降の明細書に記載されるパーツ、パーセンテージ、比率等は全て、重量による。使用される溶媒及びその他の試薬は、特に記載のない限り、シグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス))より入手した。
【0074】
試験方法
核磁気共鳴(NMR)
H及び19F NMRスペクトルを、バリアン社製ユニティプラス(UNITYplus)400・フーリエ変換NMRスペクトロメーター(バリアンNMRインスツルメンツ社(Varian NMR Instruments)(カルフォルニア州パロアルト)から入手可能)にて測定した。
【0075】
ガスクロマトグラフィー/質量分析(GCMS)
GCMS試料を、例えば、フィニガン(Finnigan)社製TSQ7000質量分析計(サーモ・エレクトロン社(Thermo Electron Corporation)(マサチューセッツ州ウォルサム)から入手可能)にて測定した。
【0076】
ガスクロマトグラフィー(GC)
GC試料を、ヒューレット・パッカード社(Hewlett Packard)6890シリーズ・ガスクロマトグラフ(アジレント・テクノロジー社(カリフォルニア州パロアルト)から入手可能)にて測定した。
【0077】
赤外線分光分析(IR)
IRスペクトルを、サーモ・ニコレー社(Thermo-Nicolet)製、アバター(Avatar)370 FTIR(サーモ・エレクトロン社(マサチューセッツ州ウォルサム)から入手可能)にて測定した。
【0078】
(実施例1)
O[CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCSCSi(OCHの調製
中間体アルコールを、次のようにして調製した:イソプロピルアルコール(200グラム)を、オーバーヘッド攪拌機、温度センサー及び添加漏斗を装着した2L・三つ口丸底フラスコ内に入れ、水/氷浴を使用して、<10℃まで冷却した。ホウ化水素ナトリウム(34グラム、0.9モル)を、幾つかの小口にして添加した。CO[CF(CF)CFO]CF(CF)COCH(900グラム、M=1262、0.71モル)を、窒素下で撹拌しながら滴加した。温度を0℃〜10℃の間に維持した。エステル添加を、約1時間以内に完了した。エステル添加完了後、温度を0℃〜10℃の間に維持しつつ、反応物を連続的に攪拌した。次に、反応混合物を室温まで暖めて、一晩攪拌した。
【0079】
600mLの塩化アンモニウムの20重量%水溶液を、室温で濃縮させた混合物へと滴加した。添加が完了したら、冷却槽を使用して、温度を45℃未満に維持した。NHCl溶液を全て添加した後、混合物を室温で約30分間攪拌し、次に相を分離させた。上方の水層を除去し、低級アルコール相を500mL部の脱イオン水にて3回洗浄した。残留溶媒を蒸留によって減圧下でロータリーエバポレーターを使用して60℃にて除去し、884グラムの中間体(無色の油)を得た。
【0080】
中間体アリルエーテルを、次のようにして調製した:
O[CF(CF)CFO]CF(CF)CHOH(200グラム、M=1234、0.16モル)を、撹拌棒、温度センサー及び冷却管(condenser)を装着した2L・三つ口丸底フラスコ内に入れた。t−ブチルアルコール(400グラム)を添加し、続いてカリウムt−ブトキシド(20グラム、0.18モル)を少しずつ添加した。反応混合物を、窒素下にて40℃まで加熱した。最初は濁っていた混合物は、澄んで透明な溶液になった。アリルブロミド(21.6グラム、0.18モル)を、1回で添加した。次に、濁った反応混合物を40℃まで窒素下で18時間加熱し、次に、未溶解塩を含有する反応混合物を室温まで冷却し、500mL脱イオン水で希釈し、続いて250mLの2N HCl及び500mLの脱イオン水で希釈した。混合物を30分間攪拌し、層を分離させた。水相をデカントした。有機相を更に2回、1Lの脱イオン水にて洗浄した。250mLのHFE−7100ノヴェック(商標)HFE−7100流体にて、3M社(ミネソタ州セントポール)から入手可能)を添加して、生成物を溶解させた。分液漏斗内の残留水から有機相を分離し、過剰HFE−7100を減圧下にて回転蒸発によって60℃で除去して、212グラムの無色の油を得たが、生成物は、アリルエーテル:CO[CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCHCH=CHであった。
【0081】
生成物たるアリルエーテル(24グラム、0.019モル、M=1274、約3〜約8の範囲のn値を持つオリゴマー化合物の混合物からなる)、HSCSi(OCH(3.7グラム、0.019モル、アルファ・エイサー(Alfa Aesar)(マサチューセッツ州ワードヒル)から入手)、エチルアセテート(60グラム)及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(バゾ(Vazo)(商標)64、0.12グラム、デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(Du Pont de Nemours & Co.)(デラウェア州ウィルミントン)から入手)を、熱電対温度プローブ、電磁攪拌棒及び水で満たされた冷却管を装着した250mLの丸底フラスコ内で、窒素雰囲気下にて混ぜ合わせた。次に、混合物を4回脱気させ、加熱し還流させ、その温度にて16時間保持したが、その間に反応溶液は完全に均質となった。溶液を、ドライアイス/アセトン槽内にて冷却し、相分離させた。上方のエチルアセテート相を除去し、残留する下側の相をFC72(商標)にて抽出して(ペルフルオロヘキサン、3M社(ミネソタ州セントポール)から入手)、下層にあるフルオロケミカル相を残留エチルアセテートから分離し、続いてFC72(商標)を回転蒸発によって除去した。IRスペクトル(サーモ・ニコレー社製、アバター370 FTIR、サーモ・エレクトロン社(マサチューセッツ州ウォルサム)から入手可能)は、予測されたたシランのものと一致した。
【0082】
(実施例2)
O[CF(CF)CFO]CF(CF)COSCSi(OCHの調製
基本的には、米国特許第3,242,218号に記載されているように、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをオリゴマー化して、酸フッ化物混合物(CO[CF(CF)CFO]CF(CF)COF)を得て、そして、同第6,923,921号に記載されているように、分留して低沸点オリゴマー類を除去した。アリルアルコール(12.8グラム、0.22モル)を該酸フッ化物混合物(87グラム、M=1180)へと1回で添加し、そして、該混合物を室温で(最初の発熱後)18時間攪拌した。該反応混合物をアセトンで希釈し、不溶性フルオロケミカル相の下層を分離し、更に1回、等容積のアセトンにて洗浄した。フルオロケミカル相中の残留アセトンを回転蒸発によって除去し、81.1グラムの油を得た。IRスペクトルは、アリルエステルのカルボニルバンドを1787.4cm−1にて示した。GC(ヒューレット・パッカード社6890シリーズ・ガスクロマトグラフ(アジレント・テクノロジー社(カリフォルニア州パロアルト)から入手可能))による混合物の分析は、出発物質たる酸フッ化物構成成分が完全に消失し、アリルエステル(CO[CF(CF)CFO]CF(CF)COCHCH=CH)の一連の新規ピークが出現したことを示した。約8%の一連のオリゴマー類(COF基が水素で置換されている)が存在していたが、この材料を更に精製することなく、次工程にて使用した。
【0083】
O[CF(CF)CFO]CF(CF)COCHCH=CH(50グラム、0.041モル)、HSCSi(OCH(9.6グラム、0.049モル、アルファ・エイサー(マサチューセッツ州ワードヒル)から入手)、2−ブタノン(60グラム)及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(バゾ(商標)64、0.16グラム、デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(デラウェア州ウィルミントン)から入手)を、熱電対温度プローブ、電磁攪拌棒及び水で満たされた冷却管を装着した250mLの丸底フラスコ内で、窒素雰囲気下にて混ぜ合わせた。脱気後、混合物を76℃まで16時間加熱し、次に室温まで冷却した。FC72(商標)(約50mL)を添加し、下相を分離し、アセトンにて1回洗浄して、過剰なメルカプトシランを除去した。溶媒を回転蒸発によって除去し、50.1グラムの淡黄色の油を得た。この生成物をH−NMR(バリアン社製ユニティプラス400フーリエ変換NMRスペクトロメーター(バリアンNMRインスツルメンツ社(カリフォルニア州パロアルト)から入手可能))にて分析したが、45%のエステル/シラン及び40%の出発物質たるアリルエステルと、15%の対応する水素化物との混合物であることが判明した。該混合物を引き続いて20グラム以上のメルカプトシランにて、上記と同一反応条件下で処理して、81%の所望のシラン、0.6%の出発物質たるアリルエステル及び18%の水素化物である、最終組成物を得た。
【0084】
(実施例3)
(CHO)SiCSCOCHCF(OC)n(OCF)nCFCHOCSCSi(OCHの調製
フォムブリン(FOMBLIN)(商標)ZDOLペルフルオロポリエーテルジオール(157グラム、EW=950、ソルヴェイ・ソレクシス(Solvay Solexis)(テキサス州ヒューストン)から入手)をHFE(商標)7100(150mL)とジメトキシエタン(100mL、シグマ−アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)(ミズーリ州セントルイス)から入手)との混合物中に溶解させ、熱電対、添加漏斗及びオーバーヘッド攪拌機を装着した1Lの3口丸底フラスコ内に入れた。この混合物へ、水酸化カリウム(14.0グラム、9mLの水の中に溶解させた)を添加し、該混合物を40℃〜50℃の間に加熱し、1時間攪拌した。テトラブチルアンモニウムブロミド(3.0グラムを1mLの水に溶解)を添加し、続いて臭化アリル(31グラム、シグマ−アルドリッチ社(ミズーリ州セントルイス)から入手)を約1時間かけて滴下して加えた。次に、反応混合物を16時間、45℃にて攪拌した。蒸留ヘッドを取り付けて、ポット温度が約120℃に到達するまで、溶媒及び水を蒸留した。次に、反応混合物を冷却し、1.99kPa(0.02気圧(15mmHg))の真空を適用し、温度を再び約120℃まで上げた。混合物を約1時間にわたってこの温度で維持した。室温まで冷却後、HFE(商標)7100(250mL)を添加し、焼結ガラス製漏斗を通して混合物を減圧下にて濾過し、固形分を除去した。固形分を75mLのHFE(商標)7100にて更に洗浄した。ろ液を1%塩酸水溶液にて1回洗浄し、下層にあるフルオロケミカル相を分離し、溶媒を回転蒸発によって除去して、158グラムの琥珀色で透明なビス−アリルエーテルの液体を得た。IRスペクトルは、アルコールバンドが完全に消失したことを示した。
【0085】
ビス−アリルエーテル(35.8グラム、0.017モル)、HSCSi(OCH(13.5グラム、0.067モル)、エチルアセテート(100グラム)及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(バゾ(商標)64、0.16グラム)を、熱電対温度プローブ、電磁攪拌棒及び水で満たされた冷却管を装着した250mLの丸底フラスコ内で、窒素雰囲気下にて混ぜ合わせた。実施例1にあるように脱気した後、混合物を70℃まで、16時間加熱した。溶媒を回転蒸発によって除去し、過剰なメルカプトシラン出発物質を真空蒸留によって0.27kPa(0.002気圧(2mmHg))にて除去し、39.6グラムの所望の生成物を得た。
【0086】
(実施例4)
(CHO)SiCSCOCHCF(CF)[OCFCF(CF)]OCO[(CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCSCSi(OCHの調製
このシランを、以下の変更点を除いて、実施例3のように調製した。
【0087】
米国特許第3,574,770号に記載のように調製したフルオロケミカルジオール、ヒドロキシルEW=610:100グラム;HFE(商標)7100:150mL;ジメトキシエタン:100mL;9mLの水に溶解したKOH:14グラム;1mLの水に溶解したテトラブチルアンモニウムブロミド:3グラム;アリルブロミド:31グラム(0.26モル)。反応条件及び精密検査手順は、実施例3と同一であって、92グラムの所望のビス(アリル)エーテルの黄褐色の液体を得た。
【0088】
ビス(アリル)エーテル(20グラム、0.015モル)を、HSCSi(OCH(14グラム、0.07モル)、エチルアセテート(40グラム)及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(バゾ(商標)64、0.045グラム)と共に、熱電対温度プローブ、電磁攪拌棒及び水で満たされた冷却管を装着した250mLの丸底フラスコ内で、窒素雰囲気下にて混ぜ合わせた。脱気後、混合物を70℃まで、16時間加熱した。溶媒を回転蒸発によって除去し、過剰なメルカプトシランを真空蒸留によって0.27kPa(0.002気圧(2mmHg))にて除去し、25.6グラムの所望の生成物を得た。IRスペクトルは、所望のビス(シラン)と一致した。
【0089】
(実施例5)
O[CF(CF)CFO]CF(CF)CHCHSCSi(OCHの調製
O[CF(CF)CFO]CF(CF)CH=CHを、CO[CF(CF)CFO]CF(CF)CHCHIをナトリウムメトキシドと共にメタノール中にて還流状態で反応させることによって調製した。CO[CF(CF)CFO]CF(CF)Iをエチレンと共に、65℃にて過酸化ベンゾイルを反応開始剤として使用して反応させて、順次ヨウ化物を調製した。ビニル化合物(28.5グラム、0.026モル、約76%純度)を、HSCSi(OCH(10.2グラム、0.05モル)、2−ブタノン(約60グラム)及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(バゾ(商標)64、0.1グラム)と共に、熱電対温度プローブ、電磁攪拌棒及び水で満たされた冷却管を装着した250mLの丸底フラスコ内で、窒素雰囲気下にて混ぜ合わせた。脱気後、混合物を70℃まで、16時間加熱した。溶媒を回転蒸発によって除去し、残留物をペルフルオロペンタン、PF5050(商標)(3M(商標)パフォーマンスフルーイドPF−5050として3M社(ミネソタ州セントポール)から入手可能)にて回収し、2−ブタノンで洗浄して、出発物質の過剰シランを除去し、溶媒を回転蒸発によって除去して、30.5グラムのシランを得た。
【0090】
(実施例6)
O[CF(CF)CFO)CF(CF)CFOCSCSi(OCHの調製
中間体CO[CF(CF)CFO)]CF(CF)CFOCHCH=CHを、次のようにして調製した:CO[CF(CF)CFO]CF(CF)COF(M=1180、実施例2に記載されているように調製、170グラム、0.14モル)、無水ジグリム(354グラム)、ヨウ化カリウム(0.5グラム)、フッ化カリウム(12.8グラム、0.22モル)、アドゲン(Adogen)(商標)464(9.3グラムの無水ジグリムの49重量%溶液)及び臭化アリル(54グラム、0.44モル)を、オーバーヘッド攪拌機、冷却管及び熱電対温度プローブを装着した1Lの三口丸底フラスコ内で混ぜ合わせ、混合物を窒素雰囲気下にて72時間撹拌しながら75℃まで加熱した。次に、74グラムの臭化アリルを追加で添加し、混合物を75℃にて更に72時間加熱した。この時点での反応混合物の組成は、約44%が出発物質たる酸フッ化物であり、41%が所望のアリルエーテルであり、そして10%がアリルエステルであった。反応混合物を濾過して、固形分を除去し、ジグリム溶液から相分離した。次に、フルオロケミカル相をエチルアセテートで洗浄して、残留する有機溶媒及び試薬を除去した。フルオロケミカル相をHFE(商標)7100で希釈し、続いて含水水酸化カリウム(aqueous potassium hydroxide)との反応をフェノールフタレイン終点まで行うことによって更に精製した。(乳化された反応混合物を冷凍することによって行う)相分離後、得られたフルオロケミカル相を蒸留し、留出物を以下の手順で使用した。留出物の組成は、約34%のアリルエーテルと57%のCO[CF(CF)CFO]CFHCFであった。
【0091】
上記のように調製したアリルエーテルを、AIBN反応開始剤(0.15グラム)を使用して、2−ブタノン溶媒(125mL)中のHSCSi(OCH(14.0グラム)で処理し、脱気させた。この反応混合物を70℃まで16時間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物をペルフルオロペンタンで処理して生成物を抽出し、引き続き、ペルフルオロペンタン溶液を2−ブタノンにて洗浄して、過剰なシランを除去した。
【0092】
処理及び試験方法
ディップコーティングによる眼科用メガネの処理:
HFE−7100(商標)中の選択したフルオロケミカルシランの0.1%溶液を、ディップコーター(dip coater)のガラス容器内に入れた。きれいなレンズを15mm/秒の速度で溶液内に浸漬し、2秒間浸かったままにした。次に、レンズを溶液から15mm/秒の速度で引き上げた。コーティングしたレンズを30分間空気中で乾燥させ、次に0.1%HCl溶液内に類似の浸漬速度及び引き上げ速度にて浸漬した。任意の過剰な酸を、窒素ガスで吹き飛ばした。レンズをアルミニウムパン内に入れ、オーブン内にて30分間60℃で硬化させた。
【0093】
眼科用メガネの化学蒸着(CVD)による処理:
きれいなレンズは、選択した本発明のフルオロケミカルシランのそれぞれによって、加えて比較用シラン(ECC−1000(商標)、イージー・クリーン・コーティング(Easy Clean Coating)−1000(商標)、(CHO)SiCNHCOCF(OC)n(OCF)nCFCONHCSi(OCH、3M社(ミネソタ州セントポール)から入手)によって、蒸着チャンバ内にて、3.9E−5Pa(3×10−7トール)の圧力下で処理した。シランの蒸発温度は、下表1にて示したように、350〜500℃の範囲であった。
【0094】
表1にて報告しているCVD(化学蒸着)実験結果は、メルカプト連結基を備えた本発明のシランが、効果的な堆積のために、低蒸発温度を必要とすることを示す。例えば、実施例3のシラン、
(CHO)SiCSCOCHCF(OC)n(OCF)nCFCHOCSCSi(OCHのCVDプロセス温度は、類似のペルフルオロポリエーテル骨格鎖を備えるがカルボキシアミド連結基を持つECC−1000(商標)の温度よりも約50℃低い。
【0095】
【表1】

【0096】
ドレイン時間試験:
この試験において、処理済み眼科用メガネからの液体ドレイン時間は、ディップコーターを使用して決定した。処理済みレンズを液体(オレイン酸又はイソプロパノール(IPA)のいずれか)中に浸漬し、続いてそこから引き上げる。試験のための引き上げ速度は、毎秒5cm(2インチ)であった。液体が完全に流れ去るために必要な時間を、タイマーにて測定した。
【0097】
表2は、CVDコーティング及びディップコーティングしたポリカーボネートレンズにおいて、イソプロパノールとオレイン酸とについての測定したドレイン時間についてまとめている。データによれば、一般的に、レンズのCVDコーティングでは、ディップコーティングよりも、IPAとオレイン酸との両方について、より短いドレイン時間となった。データはまた、コーティング方法と無関係に、メルカプト連結基を持つシラン類は、たとえそれらが類似のフルオロケミカル鎖を有するとしても(実施例3対ECC−1000FTM)、カルボキシアミド連結基よりもより短いドレイン時間をもたらすことも示す。
【0098】
【表2】

【0099】
クリザール(商標)(エシロール・インターナショナル(Essilor International)(フロリダ州セントピーターズバーグ)から入手)
アリゼ(商標)(エシロール・インターナショナル(フロリダ州セントピーターズバーグ)から入手)
比較例Aのシランは、式:CO[CF(CF)CFO]CF(CF)CONHCSi(OCHを有する。
【0100】
比較例Bのシランは、実施例4のシランに類似しているが、それはカルボキシアミドシランである。
【0101】
静的及び動的接触角:
静的、前進及び後退(static, advancing and receding)接触角試験は、コーティング材料の表面特性についての迅速かつ正確な予測を提供する。
【0102】
処理済み(乾燥及び硬化後)レンズ接触角は、クルス(Kruss)G120及びAST VCA 2500 XEビデオ接触角システム(ASTプロダクツ社(AST Products, Inc.))(両方とも、制御及びデータプロセス(date process)のためのコンピュータを装着している)を使用して測定した。水及びn−ヘキサデカンの両方について、データを収集した。表3は、CVDコーティングとディップコーティングプロセスの両方を使用して、各種シランにて処理したレンズの、静的、前進及び後退接触角についてまとめている。測定した接触角は、全ての処理済みレンズについて大きかったが、一般に、ディップコーティングによって処理したレンズは、わずかであるがより大きな接触角となる。CVDコーティングしたレンズの接触角は、ディップコーティングしたレンズの接触角に非常に似通ったものであり、それによってCVDコーティングを問題なく適用したことが示されたことは注目に値すべきものであった。
【0103】
【表3】

【0104】
処理済みレンズのヒステリシス(Hysteresis):
最大(前進)接触角値と最小(後退)接触角値との差は、接触角ヒステリシスと呼ばれる。ヒステリシスの持つ意味についての分析のために、多大な研究が行われてきた:ヒステリシスは、表面の不均質性、粗度及び移動度の解析を手助けするために使用されてきた。要約すると、均質でない表面については、接触線の動きに対するバリアとなるドメインが表面上にある。化学的不均質性の場合、これらのドメインは、周囲表面よりも異なった接触角を持つ領域を表す。例えば、水で濡らした場合、液体が前進し、これにより接触角が増大する際の接触線の動きを、疎水性ドメインが遮る。水が後退する際、親水性ドメインは、接触線のドレインの動き、つまり接触角の減少を抑制する。コーティングした表面のクリーニング性能の高さは、接触角ヒステリシスと関連している可能性がある。接触角ヒステリシスがより小さい場合、性能もより高くなる。表4は、幾つかの処理済みレンズのヒステリシスを示す。
【0105】
【表4】

【0106】
耐久性試験:
レンズ上の耐久性シラン処理を、以下の方法で決定した:処理済みレンズには、レンズ・イレーサー・アブレーション・テスター(Lens Eraser Abrasion Tester)(コルツ・ラボラトリーズ社(Colts Laboratories, Inc.)(フロリダ州クリアウォーター)から入手)及び3M高性能クロス(スコッチ−ブライト(Scotch-Brite)(商標)マイクロファイバー・ダスティング・クロス、3M社(ミネソタ州セントポール)から入手)を使用して、22.2N(5ポンド)荷重にて500サイクルの摩耗試験を実施した。次に、摩耗試験に続いて、上記方法を使用して処理済みレンズの接触角を再度測定した。表5は、磨耗耐性試験後の処理済みレンズの接触角データを示す。摩耗試験の前(表3)及び後(表5)における実施例3の接触角データの対比は、実施例3の材料が優れた耐久性を有していたことを示した。
【0107】
【表5】

【0108】
接着及びエッジング試験:
この試験は、パッドがレンズをエッジャー(edger)内の適切な位置に切断作業中保持する能力を決定するために実施する。リープパッドIII(Leap Pad III)(3M社(ミネソタ州セントポール)から入手)の片面から、シーリング紙を剥離し、コーティングされたレンズの中央へ適用した(レンズは、30cm(12 1/4インチ)バーを備えたトルク器具へしっかりと貼り付けられている)。ブロック(レンズが回転する間、レンズを適切な位置に保持するデバイス)を、該リープパッドIIIの反対側に適用した。パッド及びレンズを備えた該トルク器具を、エッジャー内へ挿入し(ブロックフランジのブロッカー内への位置合わせは重要である)、0.29MPa(2.86気圧(42psi))の圧力にてパッド上にしっかりと押し付けた。トルク器具の先端をトルクはかり上で0度に揃え、ばねばかりを使用して26.7N(6ポンド)の水平力を1分間適用し、そしてトルクはかり上でのトルク器具の新しい位置を零点位置からの目盛りで記録した。トルク目盛りが5以下である場合、エッジングプロセスにおいてレンズを保持するための適切な接着及び能力を有すると考えられる。アリゼを用いた本発明のシラン処理の試験結果を表6に示す。アリゼレンズのトルク目盛りは、>15であったが、エッジングプロセスのために、特別な一時的コーティングを必要とする。本発明にて記載された新しいシラン処理は全てが、実施例3(トルク目盛りが8であった)を除いて、このトルク試験(<5)に合格した。実施例3のCVDでコーティングしたレンズを、トルク試験前に最初にイソプロパノールで洗浄した場合、接着が向上し、試験に合格した。従って、本発明のシラン処理は、エッジングプロセスのための特別な一時的コーティングを必要としない。
【0109】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射防止表面を有する基材及びその上にペルフルオロポリエーテルシランのコーティングを含む反射防止物品であって、前記ペルフルオロポリエーテルシランが次式:
[−R−C−S−R−Si(Y)(R3−x(式中、
は、一価又は二価のペルフルオロポリエーテル基であり、
は、共有結合、−O−、若しくは二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
は、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル又はアリール基であり、xは、1、2又は3、好ましくは3であり、
yは、1又は2である)である、物品。
【請求項2】
が、−(C2n)−、−(C2nO)−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)C2nO)−、−(C2nCF(Z)O)−、−(CFCF(Z)O)−、及びこれらの組み合わせ(式中、nは1〜4であり、Zはペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、又はペルフルオロエーテル基である)からなる群から選択されるペルフルオロ化繰返し単位を含むペルフルオロポリエーテル基である、請求項1に記載のペルフルオロポリエーテルシラン。
【請求項3】
Yが、ハロゲン、C〜Cのアルコキシ基、又はC〜Cのアシルオキシ基である、請求項1に記載のペルフルオロポリエーテルシラン。
【請求項4】
前記ペルフルオロポリエーテル部分が、少なくとも750グラム/モルの分子量を有する、請求項1に記載のペルフルオロポリエーテルシラン。
【請求項5】
前記ペルフルオロポリエーテル部分が、−CFO(CFO)(CO)CF−(式中、m及びpの平均値が0〜50であり、ここでm及びpは同時に0にはならない)、並びに−CF(CF)−、−CFO(CO)CF−、−CF(CF)O−(CFCF(CF)O)−CO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−及び−(CFO(CO)(CF−(式中、pの平均値は、1〜50である)から選択される、請求項1に記載のペルフルオロポリエーテルシラン。
【請求項6】
前記反射防止表面が、1つ以上の金属酸化物を有する金属酸化物フィルムを含む、請求項1に記載の反射防止物品。
【請求項7】
前記反射防止表面が、真空蒸着された金属酸化物フィルムを含む、請求項6に記載の反射防止物品。
【請求項8】
前記ペルフルオロポリエーテルシランコーティングが厚さ15オングストロームを超える、請求項1に記載の反射防止物品。
【請求項9】
前記ペルフルオロポリエーテルシランコーティングが厚さ約200オングストローム以下である、請求項1に記載の反射防止物品。
【請求項10】
ペルフルオロポリエーテルシランコーティング無しの同一物品の反射防止率と、約0.5パーセント単位未満の違いの第1表面反射防止率を有する、請求項1に記載の反射防止物品。
【請求項11】
ペルフルオロポリエーテルシランが、蒸着によってコーティングされている、請求項1に記載の反射防止物品。
【請求項12】
第1表面及び第2表面を有する透明基材、第1表面の少なくとも一部の上の反射防止コーティング、及び反射防止コーティングの上に配置されるペルフルオロポリエーテルシランのコーティングを含む、請求項1に記載の反射防止物品。
【請求項13】
前記透明基材が、可撓性有機ポリマー材料を含む、請求項12に記載の反射防止物品。
【請求項14】
前記可撓性有機ポリマー基材と前記反射防止コーティングとの間に配置された接着強化コーティングを更に含む、請求項13に記載の反射防止物品。
【請求項15】
前記反射防止コーティングが、1つ以上の金属酸化物を有する金属酸化物フィルムを含む、請求項12に記載の反射防止物品。
【請求項16】
前記反射防止表面が、真空蒸着された金属酸化物フィルムを含む、請求項15の反射防止物品。
【請求項17】
反射防止表面を有する基材への防汚コーティング適用方法であって、ペルフルオロポリエーテルシランコーティング組成物を有する反射防止表面を適用することを含む方法であり、前記組成物が次式:
[−R−C−S−R−Si(Y)(R3−x(式中、
は、一価又は二価のペルフルオロポリエーテル基であり、
は、共有結合、−O−、若しくは二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
は、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル又はアリール基であり、xは、1、2又は3、好ましくは3であり、
yは、1又は2である)のペルフルオロポリエーテルシランを少なくとも1つ含む、方法。
【請求項18】
前記コーティング組成物が、アルカン、芳香族溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、フッ素化炭化水素、ハイドロフルオロエーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
形成される防汚性ペルフルオロポリエーテルシランコーティングが、少なくとも厚さ約15オングストロームである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
形成される防汚性ペルフルオロポリエーテルシランコーティングが、厚さ約150オングストローム以下である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記処理工程が、前記組成物を室温でコーティングし、続いてコーティングした前記組成物を少なくとも約100℃の温度にて加熱すること含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記ペルフルオロポリエーテルシランを含む前記コーティング組成物が、0.01重量%〜50重量%のペルフルオロポリエーテルシランを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記適用工程が、前記組成物を基材上へ連続的にロールコーティングすることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記適用工程が、スプレーコーティング、ナイフコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、メニスカスコーティング、フローコーティング、及びロールコーティングから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
請求項17の方法によって作製される反射防止物品。
【請求項26】
反射防止表面を有する基材への防汚コーティングの適用方法であって、前記反射防止表面の少なくとも一部分上にペルフルオロポリエーテルシランを蒸着することを含む方法であり、前記ペルフルオロポリエーテルシランが次式:
[−R−C−S−R−Si(Y)(R3−x(式中、
は、一価又は二価のペルフルオロポリエーテル基であり、
は、共有結合、−O−、若しくは二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
は、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、前記アルキレン基は1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル又はアリール基であり、xは、1、2又は3、好ましくは3であり、
yは、1又は2である)である、方法。
【請求項27】
約1.33Pa(0.01トール)未満の圧力及び少なくとも約80℃の温度にて、前記蒸着が発生する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ペルフルオロポリエーテルシラン及び前記反射防止基材をチャンバ内に置くこと、前記ペルフルオロポリエーテルシランを加熱すること、並びにチャンバ内圧力を減少させることを含む、請求項26に記載の方法。

【公表番号】特表2010−503020(P2010−503020A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526791(P2009−526791)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/075256
【国際公開番号】WO2008/027698
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】