説明

反射防止膜形成用組成物およびそれを用いたパターン形成方法

【課題】低い屈折率を有し、スィングカーブがなだらかであり、スィング比が小さい上面反射防止膜を形成するための組成物の提供。
【解決手段】親水性基を含んでなるアントラセン骨格含有化合物と溶媒とを含んでなる上面反射防止膜形成用組成物。この組成物はレジスト膜上に反射防止膜を形成させ、160〜260nmの光を用いてパターンを形成させるフォトリソグラフィーに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上部反射防止膜形成用組成物に関するものである。より詳しくは、液晶表示素子などのフラットパネルディスプレー(FPD)、半導体デバイス、電荷結合素子(CCD)、カラーフィルター等をフォトリソグラフィー法を用いて製造する場合、レジスト膜を露光する際に、レジスト膜の上側に設けられる反射防止膜を形成させるための組成物に関するものである。また、本発明はそのような上部反射防止膜形成用組成物を用いたパターン形成方法、ならびにそれにより形成された上部反射防止膜にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子などのFPD、半導体デバイス、CCD、カラーフィルター製造のため、フォトリソグラフィー法が用いられている。フォトリソグラフィー法を用いた集積回路素子等の製造では、例えば基板上にポジ型或いはネガ型のレジストが塗布され、ベーキングにより溶媒を除去した後、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の各種放射線により露光され、現像されレジストパターンが形成される。
【0003】
しかしながら、用いられる基板には反射率の高いものが多く、レジスト層を通過した露光用の光が基板によって反射され、レジスト層に再入射され、光を照射してはならないレジスト部分に光が到達することにより、所望のパターンが得られないか、または、形成されたパターンに欠陥が生じるという問題があった。また、レジスト層が基板とレジスト層との界面での光の反射により定在波効果を受けて、形状が波形になり、結果的にレジストパターンの線幅制御などに大きな問題を引き起こすこともあった。このような現象は、より微細なパターンを得るために短波長の光により露光する場合に顕著である。
【0004】
このような問題を解決するため、例えば露光用の光の波長領域に吸収を持つ色素をレジストに分散する方法、底面反射防止膜 (BARC)あるいは上面反射防止膜(TARC)を設ける方法、上面結像法(TSI)、多層レジスト法(MLR)など種々の方法が研究、検討されている。これらの中では、底面反射防止膜による方法が、現在最も一般に用いられている方法である。底面反射防止膜には、無機膜および有機膜が知られており、無機膜を形成する方法としては、例えば、無機あるいは金属材料をCVD(Chemica1 Vapor Deposition)法、蒸着法あるいはスパッタリング法などにより被着させる方法が、また有機膜を形成する方法としては、有機ポリマー溶液に色素を溶解または分散したもの、あるいはポリマーに化学的に発色団を結合させた重合体染料の溶液または分散液を基板に塗布する方法などが知られている。
【0005】
一方、上面反射防止膜にも重要な機能を有する。レジストが塗布された基板が露光された場合、(1)入射する光、(2)基板で反射する光、および(3)基板で反射した後、さらにレジストの界面で基板側に反射する光がレジスト膜中に照射され、これらの光路長によりレジストにパターンを形成させる露光量が決まる。一方、(1)〜(3)の光はレジスト膜中で干渉を起こす。このときに上面反射防止膜が存在する場合には適切な露光量が変動する。
【0006】
ここで、横軸にレジスト膜厚、縦軸に所望のパターンが形成することができる露光量(Energy Threshold、以下、Ethということがある)をとったときに得られる曲線をスィングカーブといい、スィングカーブの振幅(すなわち最大値と最小値の差)を露光量の平均値で除した値をスィング比という。このスイングカーブがなだらかなものであるほど、またスィング比が小さいほど優れたレジスト膜が得られる傾向がある。
【0007】
ここで、スィングカーブあるいはスィング比を改善するために上面反射防止膜を使用することが知られている。例えばペルフルオロオクタン酸やペルフルオロオクタンスルホン酸などのフッ素化合物を含む組成物をレジスト膜の上面に塗布して上面反射防止膜を形成させることが知られている。このような上面反射防止膜はレジスト膜厚の変動に起因する光の干渉を低減させ、スィングカーブあるいはスィング比を改良することができるものである。レジストの上部に反射防止膜を用いるとき、スウィングカーブの振幅を低減させるためには上面反射防止膜の屈折率が低くするか、適度な吸収を持たせることが有効である。
【0008】
屈折率が低い反射防止膜を得るためには、それに用いる材料としてフッ素含有材料が使用されることが一般的であるが、それらの化合物は非常に高価であるという問題点がある。
【0009】
一方で、上面反射防止膜に染料を添加することで多重反射を防止する方法も提案されている(特許文献1)。しかし、反射膜中に必要な染料含有率が高いにもかかわらず得られる消衰係数は低く、結果として必要とする上面反射防止膜の膜厚が厚くなりすぎる傾向があり、改良の余地があった。
【特許文献1】特許第3334304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は半導体製造プロセス、特にKrFエキシマーレーザーにより露光をするプロセスで用いられるフォトレジスト膜の膜厚変動によるスウィング効果を低減することができる、高い消衰係数をもつ上面反射防止膜を安価に提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による上面反射防止膜形成用組成物は、160〜260nm、特に248nm、の光を用いてパターンを形成させるフォトリソグラフィーに用いるものであって、前記上面反射防止膜形成用組成物が、親水性基を含んでなるアントラセン骨格含有重合体と溶媒とを含んでなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明によるパターン形成方法は、基板上にレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成させ、前記レジスト膜上に、前記の上面反射防止膜形成用組成物を塗布し、乾燥させ、160〜260nmの光を用いて露光し、現像することを含んでなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低い屈折率を有し、スィングカーブがなだらかであり、スィング比が小さい上面反射防止膜を形成するための組成物を安価に提供することが可能となり、すぐれた形状を有するレジストパターンを安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明による上面反射防止膜形成用組成物は、親水性基を含んでなるアントラセン骨格含有重合体を含んでなる。まず、この化合物はアントラセン骨格を有するためにフォトリソグラフィーにより微細なパターンを形成させるときに用いられるArFまたはKrFエキシマーレーザーの波長域である160〜260nmの波長域に吸収を有しており、反射防止膜として有利に機能する。また、本発明による組成物に含まれるアントラセン骨格含有重合体は、親水性基を有することによって水性溶液等に溶解しやすく、レジストを現像処理したときに容易に除去され得るものである。
【0015】
ここで、アントラセン骨格含有重合体は前記したとおり、アントラセン骨格を有することと親水性基を有することとを必須とするが、そのほかは特に制限されない。例えば、親水性基を有するポリマーの側鎖にアントラセン骨格が付加しているポリマーであってもよいし、ポリマーの主鎖にアントラセン骨格を有し、その連結基またはアントラセン骨格に親水性基が付加しているポリマーであってもよい。また、アントラセンの任意の炭素に親水性基を有するものであってもよい。
【0016】
ここで、アントラセン骨格含有重合体は、親水性基を含むモノマーと、アントラセン骨格を含むモノマーとのコポリマーを用いることが好ましい。ここで、親水性基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種類のモノマーが好ましい。特に、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしては、アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、アクリル酸ポリエチレンオキサイド付加物、メタクリル酸ヒドロキシエチルエステル、メタクリル酸ポリエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0017】
一方、アントラセン骨格含有モノマーとしては、アントラセン骨格を含有し、前記の親水性基と重合反応し得る化合物であれば限定されない。例えば、アントラセン骨格にアクリル酸エステル基、ビニル基などの不飽和結合を有する基が付加したものなどがある。具体的には、そのモノマーが下記一般式(I):
【化1】

[式中、Rは水素またはメチル基であり、
Lは炭素数1〜8の2価の連結基であり、
Aはアントラセン含有基であって、下記式(A):
【化2】

{式中、R〜R10のうち一つはLに結合し、それ以外はそれぞれ独立に、
−H、
−(CHn1OR’ 、
−(CHn1NHR’、
−(OCHCHn2OR’、
−(CHn1SOR”、
−(CHn1COOR”、
−(CHn1CONH、および
−(CHn1SONH
(ここで、n1は0以上4以下の整数であり、n2は1以上40以下の整数であり、
R’は炭素数8以下のアルキル基、炭素数8以下のアシル基またはHであり、
R”は炭素数8以下のアルキル基、またはHである)
からなる群から選ばれる}]
で表される繰り返し単位を構成するモノマーであることが好ましい。
【0018】
このようなコポリマーは、ランダムコポリマーであっても、ブロックコポリマーであってもよい。また、親水性基を含むモノマー、あるいはアントラセン骨格を含むモノマーのいずれか、または両方が、それぞれ2種類以上のモノマーを組み合わせたものであってもよい。
【0019】
親水性基を含むモノマー、あるいはアントラセン骨格を含むモノマーの配合比は特に限定されないが、溶媒あるいは現像液などに対する溶解性を十分に維持するために、親水性基を含むモノマーの配合比が75モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましい。
【0020】
本発明において用いられるアントラセン骨格含有重合体は、前記したとおり親水性基を有することにより、現像液などに対する溶解性が高いものである。より具体的には、本発明によるアントラセン骨格含有重合体は、水に対する溶解度が0.1重量%以上であることが好ましく、0.15重量%以上であることがより好ましく、0.2重量%以上であることが最も好ましい。また、本発明による組成物を用いて形成された上面反射防止膜は現像により除去されることが好ましい。したがって、一般的に現像液として用いられる2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に対する溶解度が1.0重量%以上であることが好ましく、2.0重量%以上であることがより好ましく、5.0重量%以上であることが最も好ましい。組成物に含まれる水などの溶媒に対する溶解度が低いと、望ましい効果を達成するのに十分な反射防止膜の膜厚を得ることができなくなることがあり、また現像液への溶解度が低いと、現像工程において除去しきれずに基板上に残存することがあるので注意が必要である。
【0021】
また、本発明による上面反射防止膜形成用組成物は、溶媒を含んでなる。この溶媒は、前記ナフタレン化合物およびポリマーの他、後述する必要に応じて添加する各種の添加剤を溶解し得るものであれば任意に選択される。しかしながら、本発明による上面反射防止膜形成用組成物は形成済みのレジスト膜の表面に塗布されることが多いため、レジスト膜を侵しにくいものであることが好ましい。このような溶媒として、水または有機溶媒を用いることが好ましい。水を用いる場合には、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理等により、有機不純物、金属イオン等が除去されたものが好ましい。
【0022】
また、有機溶媒としては、(a)炭化水素、例えばn−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン等、(b)アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等、(c)ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン等、および(d)エステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等、(e)エーテル、例えばジエチルエーテル、ジブチルエーテル等、(f)その他の極性溶媒、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、アルキルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート等、などから目的に応じて任意のものを用いることができる。
【0023】
これらの有機溶媒の混合溶媒、あるいは水と有機溶媒との混合溶媒を用いることもできる。また、60重量%以上99.9重量%未満の、炭素数5〜20の炭化水素と、0.1重量%以上40重量%未満の、炭素数1〜20のアルコールとの混合溶媒は、レジスト膜を溶解しにくいので特に好ましい。さらに、エーテル類を50重量%以上含む有機溶媒の混合物も好ましい。特に、炭素数が2〜20のエーテル類が50重量%以上で、残りが炭素数5〜20の炭化水素および/または炭素数1〜20のアルコールである混合溶媒も、レジスト膜を溶解しにくいので好ましいものである。また、90重量%以上の水と、低級アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、またはイソプロピルアルコールとの混合物も好ましい。
【0024】
また、本発明による上面反射防止膜形成用組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で塩基性化合物を含むことができる。このような塩基性化合物は、アントラセン骨格含有重合体が酸基を有する場合、その酸基に作用して塩形成し、溶解度を改良することができる。すなわち、塩基性化合物を用いることにより、組成物中のアントラセン骨格含有重合体の含有率を上昇させ、さらに膜厚の厚い上面反射防止膜の形成が可能になる。このような塩基性化合物としては、アンモニア、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン、アルキルアミン、芳香族アミンなどのアミン類、水酸化テトラメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0025】
本発明による上面反射防止膜形成用組成物は、さらに他の添加剤を含んでもよい。ここで、これらの成分は、組成物のレジスト上への塗布性を改良すること、形成される反射防止膜の物性を改良することなどを目的に用いられる。このような添加剤の一つとして界面活性剤が挙げられる。用いられる界面活性剤の種類としては、(a)陰イオン性界面活性剤、例えばアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ならびにアルキル硫酸、およびそれらのアンモニウム塩または有機アミン塩など、(b)陽イオン性界面活性剤、例えばヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなど、(c)非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル(より具体的には、ポリオキシエチルラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなど)、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、アセチレングリコール誘導体など、(d)両性界面活性剤、例えば2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなど、が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、その他の添加剤としては、増粘剤、染料などの着色剤、酸および塩基などを添加剤として用いることができる。これらの添加剤の添加量は、それぞれの添加剤の効果などを考慮して決定されるが、一般に組成物全体の重量を基準として、0.01〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0026】
本発明による上面反射防止膜形成用組成物は、従来の上面反射防止膜形成用組成物と同様に用いることができる。言い換えれば、本発明による上面反射防止膜形成用組成物を用いるにあたって、製造工程を大幅に変更する必要はない。具体的に本発明による上面反射防止膜形成用組成物を用いたパターン形成方法を説明すると以下の通りである。
【0027】
まず、必要に応じて前処理された、シリコン基板、ガラス基板等の基板の表面に、レジスト組成物をスピンコート法など従来から公知の塗布法により塗布して、レジスト組成物層を形成させる。レジスト組成物の塗布に先立ち、レジスト下層に下層反射防止膜が塗布形成されてもよい。このような下層反射防止膜は本発明による組成物によって形成された上面反射防止膜とあいまって断面形状および露光マージンを改善することができるものである。
【0028】
本発明のパターン形成方法には、従来知られている何れのレジスト組成物を用いることもできる。本発明のパターン形成方法に用いることができるレジスト組成物の代表的なものを例示すると、ポジ型では、例えば、キノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とからなるもの、化学増幅型レジスト組成物などが、ネガ型では、例えば、ポリケイ皮酸ビニル等の感光性基を有する高分子化合物を含むもの、芳香族アジド化合物を含有するもの或いは環化ゴムとビスアジド化合物からなるようなアジド化合物を含有するもの、ジアゾ樹脂を含むもの、付加重合性不飽和化合物を含む光重合性組成物、化学増幅型ネガ型レジスト組成物などが挙げられる。
【0029】
ここでキノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とからなるポジ型レジスト組成物において用いられるキノンジアジド系感光剤の例としては、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸、これらのスルホン酸のエステル或いはアミドなどが、またアルカリ可溶性樹脂の例としては、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、アクリル酸あるいはメタクリル酸のコポリマーなどが挙げられる。ノボラック樹脂としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール等のフェノール類の1種又は2種以上と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒド類の1種以上から製造されるものが好ましいものとして挙げられる。
【0030】
また、化学増幅型のレジスト組成物は、ポジ型およびネガ型のいずれであっても本発明のパターン形成方法に用いることができる。化学増幅型レジストは、放射線照射により酸を発生させ、この酸の触媒作用による化学変化により放射線照射部分の現像液に対する溶解性を変化させてパターンを形成するもので、例えば、放射線照射により酸を発生させる酸発生化合物と、酸の存在下に分解しフェノール性水酸基或いはカルボキシル基のようなアルカリ可溶性基が生成される酸感応性基含有樹脂からなるもの、アルカリ可溶樹脂と架橋剤、酸発生剤からなるものが挙げられる。
【0031】
基板上に形成されたレジスト組成物層は、例えばホットプレート上でプリベークされてレジスト組成物中の溶媒が除去され、フォトレジスト膜とされる。プリベーク温度は、用いる溶媒或いはレジスト組成物により異なるが、通常20〜200℃、好ましくは50〜150℃程度の温度で行われる。
【0032】
このレジスト膜上に、スピンコート法などにより本発明による上面反射防止膜形成用組成物を塗布し、溶媒を蒸発させて上面反射防止膜を形成させる。このとき、形成される上面反射防止膜の厚さは、一般に3〜50nm、好ましくは10〜45nm、より好ましくは10〜40nmである。
【0033】
なお、レジスト膜を塗布後、完全に乾燥せずに上面反射防止膜形成用組成物を塗布し、前記のプリベークにより上面反射防止膜形成用組成物の溶媒を除去することも可能である。
【0034】
このように形成された上面反射防止膜は、一般に1.40〜1.60、好ましくは1.45〜1.55の屈折率を達成できるものである。本発明による上面反射防止膜は、特に160〜260nmの短波長においても、このような低屈折率を達成することができる。具体的には、248nmにおいて好ましくは1.60以下、より好ましくは1.55以下の屈折率を達成できる。また、本発明による上面反射膜は、160〜260nmの短波長において消衰係数が高く、248nmにおいて、好ましくは0.1〜0.5、より好ましくは0.15〜0.4の消衰係数を達成できる。このような屈折率または消衰係数を有する、本発明による上面反射防止膜は、低い屈折率を有する上面反射防止膜として優れた特性を示すものである。
【0035】
レジスト膜はその後、160〜260nmの波長の光、好ましくはKrFエキシマレーザー、を用い、必要に応じマスクを介して露光が行われる。
【0036】
露光後、必要に応じベーキングを行った後、例えばパドル現像などの方法で現像が行われ、レジストパターンが形成される。レジスト膜の現像は、通常アルカリ性現像液を用いて行われる。ここで、本発明による上面反射防止膜形成用組成物に含まれるアントラセン骨格含有化合物は親水性基を有しているため、現像液により容易に除去される。従来、底面反射膜に対してアントラセン骨格含有化合物が用いられていた例もあるが、それらは現像処理による除去を考慮に入れていないものであった。本発明においては、溶媒、特にレジスト膜を侵しにくい溶媒に対する溶解性を高めた上面反射防止膜を提供するものであって、底面反射防止膜を意図した従来技術とは一線を画すものである。
【0037】
本発明において現像に用いられるアルカリ性現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などの水溶液或いは水性溶液が用いられる。現像処理後、必要に応じてリンス液、好ましくは純水、を用いてレジストパターンのリンス(洗浄)が行われる。なお、形成されたレジストパターンは、エッチング、メッキ、イオン拡散、染色処理などのレジストとして用いられ、その後必要に応じ剥離される。
【0038】
レジストパターンの膜厚などは用いられる用途などに応じて適宜選択されるが、一般に 0.1〜2.5μm、好ましくは0.2〜1.5μm、の膜厚が選択される。
【0039】
本発明によるパターン形成方法により得られたレジストパターンは、引き続き用途に応じた加工が施される。この際、本発明によるパターン形成方法を用いたことによる制限は特になく、慣用の方法により加工することができる。
【0040】
このように本発明の方法により形成されたパターンは、液晶表示素子などのフラットパネルディスプレー(FPD)、半導体デバイス、電荷結合素子(CCD)、カラーフィルターなどに、従来の方法で製造されたパターンと同様に適用することができる。
【0041】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
実施例1
式(Ia)のアントラセン骨格含有化合物:
【化3】

とメタクリル酸とをモル比9.4:90.6(重量比25:75)の割合で配合し、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル/プロピレングリコールモノメチルエーテル混合溶媒中で重合反応させ、得られた固形分を再結晶し、乾燥することでアントラセン骨格含有ポリマーAを得た。
【0042】
ポリマーAを、0.03重量%のモノエタノールアミンと15重量%のエチルアルコールとを純水に混合した、水−有機溶媒混合物中に1.5重量%の濃度で溶解して上面反射防止膜形成用組成物を調製した。得られた上面反射膜形成用組成物を、シリコン基板上にMark8型スピンコーター(商品名、東京エレクトロン株式会社製)により回転数1500rpmで塗布し、90℃で60秒間ソフトベーキング処理を行い、厚さ28nmの被膜を形成させた。得られた被膜について、VUV302型エリプソメーター(商品名、ジェーエーウーラム・ジャパン株式会社製)を用いて、波長248nmにおける屈折率はおよび消衰係数を測定したところ、それぞれ1.514および0.302であった。
【0043】
実施例1A
シリコン基板上にMark8型スピンコーター(東京エレクトロン株式会社製)により光酸発生剤とポリヒドロキシスチレンポリマーを種骨格とする樹脂とを含有するポジ型化学増幅型レジスト組成物(DNC−5(商品名)、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を膜厚が740nmから830nmの間で10nm間隔になるように、回転数を変更して塗布し、130℃で60秒間ソフトベーキング処理することにより、レジスト塗布済み基板を10枚得た。
【0044】
得られた膜厚の異なる10枚のレジスト塗布済み基板上に、前記の上面反射防止膜形成用組成物をMark8型スピンコーター(東京エレクトロン株式会社製)により、膜厚が36nmとなるように回転数を調整して塗布することにより、試料を作成した。
【0045】
実施例1B〜1G
上面反射膜形成用組成物の塗布条件を変更した他は実施例1Aと同様にして、上面反射膜の厚さが、それぞれ32、28、24、18.5、15、および13.5nmである実施例1B〜1Gの試料を形成させた。
【0046】
比較例1
モノエタノールアミンと、下記式(x)
−[CHCF(OCFCFCFCOOH)]− (x)
で表される重量平均分子量6200のフッ素含有重合体を含む水溶液とを用いて、フッ素含有重合体に含まれるカルボキシル基(酸)と、モノエタノールアミン(塩基)とのモル比が1:0.1となるように混合した。このようにして得られた部分的にモノエタノールアミン塩とされたフッ素含有重合体に純水を加え、さらに界面活性剤としてアルキルスルホン酸(アルキル基の炭素数は10〜18の混合物)の水溶液を加えて、部分的に塩とされたフッ素含有重合体を2.1重量%、アルキルスルホン酸を0.1重量%、水を97.8重量%含む、上面反射膜形成用組成物を調製した。得られた上面反射膜形成用組成物を、シリコン基板上にMark8型スピンコーター(商品名、東京エレクトロン株式会社製)により回転数1500rpmで塗布し、90℃で60秒間ソフトベーキング処理を行い、厚さ44nmの被膜を形成させた。得られた被膜について、VUV302型エリプソメーター(商品名、ジェーエーウーラム・ジャパン株式会社製)を用いて、波長248nmにおける屈折率はおよび消衰係数を測定したところ、それぞれ1.445および0であった。
【0047】
また、得られた上面反射膜形成用組成物を用いて、膜厚を43nmに変更した以外は実施例1Aと同様にして、比較例1の試料を形成させた。
【0048】
参照例1
参照例1として、上面反射防止膜を形成させないDNC−5レジスト膜を形成させた。シリコン基板上にMark8型スピンコーター(東京エレクトロン株式会社製)によりDNC−5を膜厚が740nmから830nmの間で10nm間隔になるように、回転数を変更して塗布し、130℃で60秒間ソフトベーキング処理することにより、レジスト塗布済み基板を10枚得た。
【0049】
スィングカーブおよびスイング比の測定
実施例1A〜1G、比較例1、および参照例1について、それぞれ全面露光し、120℃60秒で露光後のベーキング処理を行い、引き続いて現像した。現像後の基板を用いてEthを測定した。得られたスィングカーブは図1に示す通りであった。また、それから得られるスィング比は表1に示すとおりであった。スィング比は膜厚に応じて変化し、この例では膜厚15nm付近で極小となることがわかった。
【0050】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1A〜1G、比較例1および参照例1のスィングカーブを示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
160〜260nmの光を用いてパターンを形成させるフォトリソグラフィーに用いる上面反射防止膜形成用組成物であって、前記上面反射防止膜形成用組成物が、親水性基を含んでなるアントラセン骨格含有重合体と溶媒とを含んでなることを特徴とする、上面反射防止膜形成用組成物。
【請求項2】
前記アントラセン骨格含有重合体が、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種類のモノマーとアントラセン骨格含有モノマーとのコポリマーである、請求項1に記載の上面反射防止膜形成用組成物。
【請求項3】
前記アントラセン骨格含有重合体が、下記一般式(I):
【化1】

[式中、Rは水素またはメチル基であり、
Lは炭素数1〜8の2価の連結基であり、
Aはアントラセン含有基であって、下記式(A):
【化2】

{式中、R〜R10のうち一つはLに結合し、それ以外はそれぞれ独立に、
−H、
−(CHn1OR’ 、
−(CHn1NHR’、
−(OCHCHn2OR’、
−(CHn1SOR”、
−(CHn1COOR”、
−(CHn1CONH、および
−(CHn1SONH
(ここで、n1は0以上4以下の整数であり、n2は1以上40以下の整数であり、
R’は炭素数8以下のアルキル基、炭素数8以下のアシル基またはHであり、
R”は炭素数8以下のアルキル基、またはHである)
からなる群から選ばれる}]
で表される繰り返し単位を含むポリマーである、請求項1に記載の上面反射防止膜形成用組成物。
【請求項4】
前記アントラセン骨格含有重合体以外のポリマーをさらに含んでなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の上面反射防止膜形成用組成物。
【請求項5】
前記溶媒が、水、有機溶媒、または水と有機溶媒との混合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の上面反射防止膜形成用組成物。
【請求項6】
基板上にレジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成させ、前記レジスト膜上に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の上面反射防止膜形成用組成物を塗布し、乾燥させ、160〜260nmの光を用いて露光し、現像することを含んでなることを特徴とする、パターン形成方法。
【請求項7】
形成される上面反射防止膜の膜厚が3nm以上50nm以下であり、248nmにおけるが0.1〜0.5である、請求項6に記載のパターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−157080(P2009−157080A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334891(P2007−334891)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(504435829)AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社 (79)
【Fターム(参考)】