説明

可変ノズル型過給構造

【課題】過給性能低下の原因になる未燃HCの堆積固着を、内燃機関の運転状態の変化に応じて防止することができる、構造が簡単で安価な可変ノズル型過給構造を提供する。
【解決手段】タービンハウジング内の可変ノズルベーンと、タービンハウジング外から前記可変ノズルベーンを開閉するアクチュエータと、タービンハウジングを貫通するブッシュを通じ前記可変ノズルベーンとアクチュエータとを連動させるシャフトとを備えた可変ノズル型過給構造は、回転シャフトの可変ノズルベーンを開閉する回転に連動して、回転シャフトとブッシュとの間でタービンハウジング内から排気ガスを流出させる通路を開閉する開閉手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気ガスの流入容量を調整することにより過給圧を可変にする可変ノズル型過給構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の可変ノズル型過給構造は、一般に、タービンの外回りに配した複数のノズルベーンを回動することによってノズルベーンの間を通りタービンに至る排気ガスの流入容量を可変にする。このためにノズルベーンは、タービンハウジング外のアクチュエータとタービンハウジングを貫通するブッシュを通じ回転シャフトにより連結される。下記特許文献1は、ノズルベーンの熱膨張による摺動弊害に対応する排気ガス漏れに起因した過給効率低下に対応すべく、ノズルベーンをタービンハウジングの摺動面にばねで圧接させてシール性を高める技術を開示している(特許文献1参照)。
【0003】
また、下記特許文献2は、ブッシュと回転シャフトとの間の隙間からタービンハウジング外に排気ガスが漏れるのを防止するため、波ワッシャを回転シャフトのまわりでその外端に連結した駆動リンクとブッシュ外端間に働かせて、外部の大気圧よりも高いタービンハウジング内の排気ガスの圧力に併せ、回転シャフトの端に連結した従動リンクがブッシュ内端に圧接させるなどしてシール性を高め、排気ガスが外部に流出する量を極力少なくする技術を開示している。
【0004】
下記特許文献3は、特許文献2でのブッシュ内端の従動リンクによるシール構造でも、内燃機関から排出される排気ガスの温度が比較的低温のときには、タービンハウジング内の排気ガスの圧が低く十分なシール圧が得られないため、排気ガスが従動リンクとブッシュ内端間からブッシュと回転シャフトとの間へと抜け、この排気ガスに含まれている未燃HC(Hydro Carbon)が駆動リンクとブッシュとの隙間やブッシュと回転シャフトの隙間に付着し、排気ガスが高温のときに、付着した未燃HCが焼き固められて固着してしまい(以後「デポジット」ともいう。)、回転シャフトの回動が妨げられる旨を指摘している。
【0005】
すなわち、固着したデポジットにより駆動リンクのフリクションが増大してしまい、リンク機構の作動応答性が低下して操作性が悪化してしまうという点に注目している。特に、インジェクタにより排気通路内に燃料を噴射するポスト噴射を行い排気ガス後処理装置の温度を上昇させて排気ガスの処理効率を高めるようにした内燃機関では、ポスト噴射によってより多くの未燃HCが生じてしまい、前述の各隙間に、より多くのデポジットが付着してしまうという問題があったとしている。
【0006】
その対策として、特許文献3は、図9にその一部分の断面図を示すような可変ノズル型過給構造を提案している。この可変ノズル型過給構造は、従動リンク97とブッシュ98との間に設けられ回転シャフト96が貫通する貫通孔99cを有し、前記ブッシュ98に当接することにより、排気ガスが前記ブッシュ98と前記回転シャフト96との間の隙間から流出するのを抑制する環状のシールリング99を備えている。そして、前記シールリング99が、低温時に前記ブッシュ98に当接する第1の状態と、高温時に前記ブッシュ98から離隔する第2の状態との間で変形することにより、前記ブッシュ98と前記シールリング99の間の隙間を調整するように構成されている。
【0007】
この構成により、低温時には、シールリング99とブッシュ98とが当接して、排気ガスが、シールリング99によりブッシュ98と回転シャフト96の隙間90(ブッシュ−シャフト隙間)へ侵入することが抑制されるので、未燃HCの隙間への堆積が防止されるとしている。また、高温時には、シールリング99とブッシュ98との間に隙間ができ、高温の排気ガスが、シールリング99とブッシュ98との間から隙間90に流入するので、隙間90やブッシュ98と駆動リンク101の隙間91(ブッシュ−リンク隙間)に堆積したデポジット94を焼ききることができる。すなわち、デポジットの付着による作動応答性の悪化を未然に防止することができるとしている。
【0008】
特許文献3は、排気ガスの温度に応動するシールリングとして、例えば、温度変化により結晶構造の変態を伴って変形する形状記憶材料によるものと、バイメタルによるものとを挙げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭63−014843号公報
【特許文献2】特開2005−351089号公報
【特許文献3】特開2009−257090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献3が開示するデポジットの堆積固着の防止および焼ききり技術は、シールリング99の形状記憶特性やバイメタルの特性に依存して、排気ガスの温度に応動して働くので、排気ガスの温度が変化しても、速やかには変形または元の形状に復帰できない。そのため、シールリング99は、排気ガスの温度に応じて応答性良くブッシュ98に当接したり、ブッシュ98から離隔したりすることが困難になる。その結果、排気ガスがちょうど高温・高圧になった際には、隙間90や91に排気ガスを導入できない場合もあり、デポジットの焼ききりを適切に行えないという課題がある。
【0011】
さらに、形状記憶材料やバイメタル等で構成されるシールリング99は、ブッシュ98とシールリング99の間の隙間を精度良く調整するのは困難である。一方、シールリング99を形状記憶材料やバイメタル等で構成すると、部品コストが高くなる。
【0012】
上述の問題に鑑みて、本発明は、過給性能低下の原因になる未燃HCの堆積固着の問題を、内燃機関の運転状態の変化に応答性良く防止することができる、構造が簡単で安価な可変ノズル型過給構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る可変ノズル型過給構造は、タービンハウジング内の可変ノズルベーンと、タービンハウジング外から前記可変ノズルベーンを開閉するアクチュエータと、タービンハウジングを貫通するブッシュを通じ前記可変ノズルベーンとアクチュエータとを連動させるシャフトとを備えた可変ノズル型過給構造であって、回転シャフトの可変ノズルベーンを開閉する回転に連動して、回転シャフトとブッシュとの間でタービンハウジング内から排気ガスを流出させる通路を開閉する開閉手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
ここで、回転シャフトの可変ノズルベーンを開閉する回転に連動して、回転シャフトとブッシュとの間でタービンハウジング内から排気ガスを流出させる通路を開閉する開閉手段は、可変ノズルベーンを開く方向に回転シャフトを回転させれば、回転シャフトとブッシュとの間でタービンハウジング内から排気ガスを流出させる通路を開き、可変ノズルベーンを閉じる方向に回転シャフトを回転させれば、回転シャフトとブッシュとの間でタービンハウジング内から排気ガスを流出させる通路を閉じることを意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、過給性能の操作妨害の原因になる、デポジットの堆積、固着を、過給器内に侵入する排気ガスで焼失させるために、ノズルベーンを開閉する回転シャフトの回動に応じた機械的な連動で、排気ガスをデポジット堆積部分に導入する弁を設けたので、排気ガスが高温高圧になった時に、適時かつ確実にデポジットを焼ききることができるという効果を奏する。
【0016】
また、回転シャフトの回動に連動して排気ガスをブッシュ−シャフト隙間やブッシュ−リンク隙間に導入するので、排気ガスが比較的低温・低圧である場合は、弁を閉じ、できるだけデポジットの堆積を抑制するという効果も奏する。
【0017】
また、本発明の可変ノズル型過給構造は、構造が簡単であるため、安価に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る可変ノズルベーン機構を有する可変ノズル型過給構造の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る可変ノズルベーン機構において、ブッシュと駆動リンクのプレートとの間が密閉された状態を示す拡大断面図である。
【図3】図2の可変ノズルベーン機構において、ブッシュと駆動リンクのプレートとの間が開放された状態を示す拡大断面図である。
【図4】ブッシュと駆動リンクのプレートとの間の開閉手段の一例である立体カムの斜視図である。
【図5】可変ノズルベーンの開度と、エンジン負荷、排気ガスの温度、ポスト量との相関を示すグラフである。
【図6】本発明の可変ノズルベーン機構に対する、エンジンコントロールユニットによる制御を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態の変形例に係る可変ノズルベーン機構において、ブッシュとリンクシャフトとの隙間が拡大された状態を示す拡大断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の他の変形例に係る可変ノズルベーン機構において、ブッシュとリンクシャフトとの隙間が拡大された状態を示す拡大断面図である。
【図9】従来の可変ノズル型過給構造の可変ノズルベーン機構の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1、図2、図3、図4、図5及び図6を参照して、本発明の実施の形態に係る可変ノズルベーン機構を有する可変ノズル型過給構造について説明する。まず、図1を参照して、可変ノズル型過給器40の全体構造を示す。可変ノズル型過給器40は、エンジンからの排気を受け回転するタービンインペラ41を有するタービンホイール42と、タービンホイール42に一端が固定される回転軸43と、回転軸43の他端に固定されたコンプレッサホイール45とそれらを収納するハウジング44で構成され、それぞれのホイールが排気管および吸気管内に配置されるように構成されている。
【0020】
エンジンから排気された排気ガスは、スクロール通路49を通り、環状ガス流路46からタービンインペラ41に当たり、タービンホイール42を回転させる。排気ガスは排気ガス通路47から排気管側に流れる。
【0021】
タービンホイール42の回転によって回転軸43を介してコンプレッサホイール45が回転し、加圧された吸気48によってシリンダへの吸気圧が上昇する。可変型ノズル機構1は、排気ガスがタービンホイール42に当たる前に配置されている。
【0022】
図2は、可変型ノズル機構1の拡大図である。図2に示すように、可変型ノズル機構1は、タービンハウジング10のタービンインペラ41にその外まわりから排気ガスを向かわせる環状ガス流路46内に配置された複数のノズルベーン11と、ノズルベーン11を軸12を介して回動可能に支持するノズルプレート13と、各軸12の端部に固定された受動アーム14を介して軸12を回動させるユニゾンリング15と、一端部でユニゾンリング15に回動可能に係合し、他端部でリンクシャフト16のタービンハウジング10内の端部に固定された従動リンク17と、センターハウジング21を貫通して設けられ回転シャフトとしてのリンクシャフト16を回動可能に支持するブッシュ18と、一端部でリンクシャフト16に固定され、他端部でアクチュエータ24の連結部24bに固定された駆動リンク22とを含んで構成されている。駆動リンク22は、前記一端部にプレート23を備える。
【0023】
また、ユニゾンリング15は、複数のノズルベーン11と軸12を介し一体回動する受動アーム14の自由端とも係合している。これにより、リンクシャフト16の往復回動に連動して従動リンク17を介してユニゾンリング15を往復回転させることにより、ノズルベーン11を開き方向若しくは閉じ方向に回動させてノズルベーン11間の開度が変わるよう構成されている。
【0024】
このユニゾンリング15は、従動リンク17、リンクシャフト16および駆動リンク22を介してアクチュエータ24に連結されており、このアクチュエータ24の動作によりノズルベーン11の開度が変わるようになっている。タービンハウジング10の環状ガス流路46から流入してくる排気ガスは、ノズルベーン11の開度の変化によって各タービンインペラ41に衝突する流速が変わる。
【0025】
すると、タービンホイール42の回転速度が変わり、コンプレッサホイール45の回転速度が変わるので、コンプレッサにより圧縮される吸気48の過給圧が変わるようになっている。つまり、複数のノズルベーン11により、排気ガスの流入速度を可変にする複数のベーンノズルが構成されており、この複数のベーンノズルを通って排気ガスがタービンのスクロール通路49から各タービンインペラ41に向けて流入するようになっている。
【0026】
また、可変ノズル型過給器40においては、エンジンコントロールユニットECUにより、車両の運転状態、つまりエンジンの回転数等に応じてノズルベーン11間の開口面積を制御することによって過給効率を上げ、最適な過給圧を発生させる。エンジンが低回転の状態では、ベーンノズルの開口面積を小さくすることにより過給効率を上げ、エンジンが高回転の状態では、ベーンノズルの開口面積を大きくすることにより排気圧力を下げる。
【0027】
図5には、エンジンの運転状態とベーンノズルの開口面積の関係を示す。縦軸は各種運転状態を表し、任意単位である。横軸はベーンノズルの開口面積(「VN開度」と表記した。)を表す。右へいくほど開口面積が広いことを示す。エンジン負荷若しくは排気温度が低い時は、VN開度を狭くし過給圧を上げ、高くなった場合は、VN開度を広くして過給圧を下げる。また、ポスト噴射は、排気温度若しくはエンジン負荷が低い場合に多く行われ、排気温度若しくはエンジン負荷が高くなるとポスト噴射は少なくなる。
【0028】
したがって、VN開度の狭い時は、ポスト量が多く、排気温度やエンジン負荷は低い状態となっている。このような場合は、デポジットを燃焼させるのは非効率的である。排気温度が低い上に、ポスト噴射量が多いからである。一方、VN開度の広い時は、ポスト量が少なく、排気温度やエンジン負荷が高い状態である。このような場合は、デポジットを燃焼させやすい。排気温度が高い上に、ポスト量も少ないからである。したがって、VN開度の広い時に、デポジットが堆積しやすい部分に排気ガスを導入するように機械的に制御すれば、効果的にデポジットを焼失させることができる。
【0029】
上述のようなVN開度の制御は前述のエンジンコントロールユニットECUの指令により、アクチュエータ24を駆動し、駆動リンク22を介しリンクシャフト16を開き側または閉じ側に回動させ、これに機械的に応動する。
【0030】
図6には、制御の流れを概念的に示す。ECU30には、アクセル開度、エンジン回転数、車両速度、過給圧、冷却水温度といった情報が入力される。これによって、ECUは現在の車両の運転状況を把握し、過給圧を変更するか否かを決定する。過給圧を変更する場合は、可変ノズルコントローラ31に可変ノズル開度の変更を要求する(Cvn)。可変ノズルコントローラ31は、可変ノズル開度の変更を要求されたら、適切なノズル開度になるようにアクチュエータ24のDCモータを駆動する信号(駆動電流を含む)を出力する(Cd)。
【0031】
可変ノズル型過給器ではアクチュエータ24が、駆動指示Cdに応じてノズルプレート13を回動させノズルベーン11を回動させる。各ノズルベーン11が同時に同じ方向に回動し、各ノズルベーン11間に形成されている排気ガスの流路が拡縮変化され、排気ガスの流路を流通する排気ガスの流速が可変される。すなわち、ノズルベーン11の開度が制御される。
【0032】
ノズルプレート13の回動量は、可変ノズル開度(Svn)として、可変ノズルコントローラ31に返される。そして、可変ノズルコントローラ31は、モータステータス信号(Sm)をECU30に返す。ECU30は、モータステータス信号(Sm)によって、可変ノズル開度が支持通り変更されたか否かを把握する。
【0033】
上記のように、可変ノズル型過給器では、VN開度の広い時に、デポジットが堆積しやすい部分に排気ガスを導入するように機械的に制御すれば、効果的にデポジットを焼失させることができることを説明した。本発明では、これを実施するために、リンクシャフト16が可変ノズルベーン11を開閉する回転に連動して、リンクシャフト16とブッシュ18との間でタービンハウジング10内から排気ガスを流出させる通路を開閉する開閉手段を設けている。
【0034】
これにより、ブッシュ−回転シャフト間に堆積するデポジットを、高温・高圧の排気ガスを導入させることにより焼失、排出させる。本発明によれば、ノズルベーン11を開閉させるリンクシャフト16の回動運動に機械的に連動する開閉手段を用いるので、上記で説明した可変ノズル型過給構造の制御に、完全に同期して排気ガスをデポジットに当て、デポジットを焼失させることができる。
【0035】
図2を参照して、この開閉手段は、ブッシュ18のタービンハウジング外端面10aからの突出部18aに、リンクシャフト16の軸方向移動によって、前記ブッシュ18の突出部18a側の外端面18dを開閉する弁である。図2、図3に示すのはこの弁の一例であり、ノズルベーン11を開く際のリンクシャフト16の回動に応じ、プレート23が開き側に移動する端面カムである。
【0036】
なお、リンクシャフト16側から見た図2(b)を参照してリンクシャフト16と駆動リンク22は、リンクシャフト16側には、受け溝16pが形成され、駆動リンク22には、受け溝16pに係合するように係合爪22qが形成されている。この構造によって、駆動リンク22はリンクシャフト16を回動させつつ、リンクシャフト16の軸方向に移動することができる。
【0037】
リンクシャフト16を回動させる駆動リンク22にはブッシュ18との間にプレート23が配置され、プレート23とブッシュ18の外端面18dのそれぞれの対向面は、リンクシャフト16に軸線に対して傾斜する角度が付与されている。リンクシャフト16がノズルベーン11を開く方向に回転すると、プレート23は、ブッシュ18の外端面18dの傾斜面を登り、開き側に移動する(図3)。
【0038】
つまり、ブッシュ18のハウジング外端18dは端面カムをなし、プレート23の対向面は、リンクシャフト16と一体に回転する際に端面カムに従動して該端面カムに対し離接させられるカムフォロワをなしている。このカムフォロワを端面カムに従動させるのに、リンクシャフト16は、アクチュエータ24の連結部24bに設けられた付勢手段24cによって、ユニゾンリング15側に付勢されている。図示例では、プレート23の位置によって、ブッシュ18とプレート23との係合面間の距離が変化するように構成されている。
【0039】
図2に示す状態では、エンジンが低回転の状態で排気ガスの温度が低く、ベーンの開度が小さい場合である。ブッシュ18とプレート23との係合面間の距離は小さく、排気ガスの侵入が抑制される。その結果、排気ガス中のデポジットの隙間35への堆積が抑制される。
【0040】
図3に示す状態は、エンジンが高回転の状態で排気ガスの温度が高く、ベーンの開度が大きい場合である。この時、ブッシュ18とプレート23との係合面間の距離は大きく、高温の排気ガスが、ブッシュ18とプレート23との隙間16aを流通するので、ブッシュ18の外端部18dや隙間35に堆積し煤化したデポジット94を焼ききることができる。
【0041】
その結果、堆積したデポジットを排除できる。また、図示されたように、ブッシュ18とプレート23との係合面間の距離は一方に向かって大きくなっているので、高温の排気ガスを大量に流通させることができ、またプレート23とブッシュ18の外端面18dで形成される弁は、大気側に開くため、酸素の供給も容易であるので、堆積したデポジット94を確実に焼ききることができる。
【0042】
図4に示すのは、単純に角度を付け斜面とした図2、図3の場合の変形例であって、端面カム18a及びカムフォロワ23aのそれぞれの端面18e、23eを周方向に波形にしている。これによって端面カム18a、カムフォロワ23aは、周方向複数位置で接触して安定に離接する。
【0043】
図7に示す例では、図2、図3に示す例の場合に加え、さらにブッシュ18bの内周面の端面カム側に形成した溝18fとリンクシャフト16bの外周面の従動リンク17側に形成した溝16fとが、カムフォロワが端面カムから所定量以上離れる時点以降互いに軸線方向にオフセットして通じ合い、ブッシュ18b、リンクシャフト16b間の通常隙間よりも広い通路で排気ガスをより多く流出させて堆積、固着したデポジットの焼失、排出に有利にしている。
【0044】
図8に示す例は、図7での溝16f、18fのみを踏襲しながらリンクシャフト16cの回転に連動した軸線方向移動を省略できるようにしている。具体的には、まずブッシュ18cの従動リンク17側に形成した溝18gと、リンクシャフト16cの途中の駆動リンク22側が小径となる段差部の大径側外周に、溝18gの駆動リンク22側と軸方向にオフセットし、かつリンクシャフト16cの小径側に開放する溝16gを形成している。
【0045】
そしてこれら溝18g、16g同士は、リンクシャフト16cの回転によって、リンクシャフト16cの回転に連動したノズルベーン11の所定の開き度時点で周方向位置が一致して通じ合うようにしている(二点差線参照)。
【0046】
これによりブッシュ18cとリンクシャフト16cとの間の溝18g、16g同士と、ブッシュ18cの内周とリンクシャフト16cの小径部との間が形成する広い通路によって多くの排気ガスを流出させ、堆積、固着した未燃HCの焼失、排出に有利にしている。すなわち、これらはより積極的に高温高圧の排気ガスをデポジット形成部分に導入しようという技術思想の具体化である。本例では特に、カム機構、付勢手段が不要となり、構造のさらなる簡略化と一層のコスト低減が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、可変ノズル型過給構造の、過給性能低下の原因になる未燃HCの堆積固着の、内燃機関の運転状態の変化に応じた防止に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 可変型ノズル機構
10 タービンハウジング
11 ノズルベーン
12 軸
15 ユニゾンリング
16 リンクシャフト
17 従動リンク
18 ブッシュ
22 駆動リンク
23 プレート
24 アクチュエータ
30 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンハウジング内の可変ノズルベーンと、タービンハウジング外から前記可変ノズルベーンを開閉するアクチュエータと、タービンハウジングを貫通するブッシュを通じ前記可変ノズルベーンとアクチュエータとを連動させるシャフトとを備えた可変ノズル型過給構造であって、
回転シャフトの可変ノズルベーンを開閉する回転に連動して、回転シャフトとブッシュとの間でタービンハウジング内から排気ガスを流出させる通路を開閉する開閉手段を設けたことを特徴とする可変ノズル型過給構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−47090(P2012−47090A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189338(P2010−189338)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】