説明

可変吸気装置

【課題】吸気管からのシール部材の脱落を低減し、閉弁時の弁体と吸気管との間の気密性を長期に亘って維持可能な可変吸気装置を提供する。
【解決手段】吸気管15および吸気管16は、互いに接続され、吸気通路14を形成する。弁体30は、吸気通路14を横切るようにして設けられる軸部31、および軸部31から板状に延出されて当該軸部31を中心として回転し吸気通路14を開閉する弁部32を有する。シール部材40は、弾性を有する材料からなり、吸気管15と吸気管16との接続部分に設けられている。また、シール部材40は、弁部32が回転することで当該弁部32に当接し吸気通路14を閉塞可能となるよう前記「接続部分」の内側へ向けて延出された延出部42を有する。さらに、シール部材40は、吸気管15と吸気管16との間に挟持される挟持部41を有し、当該挟持部41から延出部42が延出されて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(以下、内燃機関を「エンジン」という。)の可変吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの回転数に応じて吸気通路の長さを変更することにより、エンジンのトルクを向上する可変吸気装置が知られている。このような可変吸気装置では、例えば吸気管に通路長の異なる吸気通路が二方に分岐して形成され、分岐した吸気通路の一方を弁手段で開閉することにより、吸気通路を切り替えている。この構成では、エンジンの回転数が低いときは吸気通路の長さを長くし、回転数が高いときは吸気通路の長さを短くすることにより、エンジンの回転数にかかわらずトルクを向上させることができる。
【0003】
特許文献1には、吸気管の内側(吸気通路)に形成された段部に、回転する板状のバルブを当接させることにより吸気通路を閉じる弁手段が開示されている(特許文献1の図1および6参照)。この弁手段の場合、バルブ、および段部を形成する吸気管は、樹脂または金属により形成されている。そのため、閉弁時にバルブが段部に当接したとき、バルブと段部との間の気密性を確保するのが困難になるおそれがある。バルブと段部との間の気密性が低いと、閉弁時にもかかわらず、弁手段の上流側の空気の一部がバルブと段部との間を経由して弁手段の下流側へ流れてしまう。よって、このような弁手段の構成を上記可変吸気装置の弁手段の構成として採用した場合、エンジンのトルク向上の効果が低減するおそれがある。
【0004】
一方、特許文献2には、上記問題を解決する弁手段として、吸気管の内側へ突出する隔壁に弾性体からなるガスケットを設けた弁手段が開示されている(特許文献2の図6参照)。この弁手段では、バルブの閉弁時、バルブとガスケットとを当接させることにより、バルブと隔壁との間の気密性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−329028号公報
【特許文献2】特開平10−220231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された弁手段では、ガスケットが吸気管の隔壁に形成された溝に嵌め込まれている。そのため、ガスケットに対し、弁手段を通過する空気が衝突したり、吸気の圧力脈動が印加された場合など、ガスケットが隔壁から脱落するおそれがある。ガスケットが隔壁から脱落すると、閉弁時のバルブと隔壁との間の気密性が失われてしまう。また、脱落したガスケットがエンジンの燃焼室に入り込んだ場合、エンジンに異常をきたすおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、吸気管からのシール部材の脱落を低減し、閉弁時の弁体と吸気管との間の気密性を長期に亘って維持可能な可変吸気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明では、第1吸気管および第2吸気管によって吸気通路が形成される。この吸気通路を開閉するための弁体は、軸部および弁部を有している。軸部は、吸気通路を横切るようにして設けられ、弁部は、軸部から板状に延出されている。例えば、吸気通路の断面が略円形である場合、弁部は、吸気通路に合わせて軸部から延びる略円形の板状部材であることが考えられる。この弁部が、軸部を中心として回転し吸気通路を開閉する。例えば、弁部が管軸方向に垂直に近い状態となると吸気通路が閉塞され、反対に、弁部が管軸方向に平行に近い状態となると吸気通路が開放されるという具合である。
【0009】
本発明では、シール部材が、第1吸気管と第2吸気管との接続部分に設けられている。このシール部材は、弁部が回転することで当該弁部に当接する延出部を有している。この延出部に対し弁部が当接することで、吸気通路が閉塞されるようになっている。また、シール部材は、弾性を有する材料により形成されている。そのため、弁体の閉弁時、弁体に当接するシール部材は、弁体の回転による押圧によって当接箇所が弾性変形する。これにより、弁体とシール部材との当接を密にすることができる。したがって、本発明では、閉弁時の弁体と第1吸気管および第2吸気管との間の気密性を高くすることができる。
【0010】
ここで特に、シール部材は、上記延出部が延出される挟持部を有している。そして、この挟持部が、第1吸気管と第2吸気管との間に挟持される。つまり、吸気通路を2つの吸気管(第1吸気管、第2吸気管)から構成し、これら両吸気管でシール部材を挟むのである。このようにすれば、シール部材が吸気管から脱落するのを低減することができる。したがって、閉弁時の弁体と吸気管との間の気密性を長期に亘って維持することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、シール部材の延出部は、第1吸気管または第2吸気管の管軸方向へ突出する当接部を有している。そして、本発明では、弁体は、弁部が当接部に当接することにより吸気通路を閉じる。弁部が当接部に当接するとき、弁部の回転による移動の方向は、第1吸気管と第2吸気管との接続部分において、前記管軸方向と概ね平行となる。つまり、本発明の当接部は、弁部の回転による移動の方向と概ね平行な方向である前記管軸方向へ突出するように形成されているのである。すなわち、当接部は、弁部が当接部に当接するとき、弁部の回転による押圧によって弾性変形し易い構成であるといえる。したがって、本発明では、閉弁時の弁体と吸気管との間の気密性を向上することができる。
ところで、シール部材の延出部に当接部が形成されない場合、あるいは延出部から当接部が単に一方向へ小さく突出して形成される場合、延出部が吸気流に対する抵抗となって、第1吸気管の内壁近傍または第2吸気管の内壁近傍の吸気の流れに乱れが生じるおそれがある。この場合、吸気圧の損失等を招くことが懸念される。
【0012】
そこで、請求項3に記載の発明では、シール部材の当接部は、延出部の挟持部とは反対側の端縁部から第1吸気管または第2吸気管の管軸方向へ突出するとともに当該突出部分の先端が第1吸気管の内壁または第2吸気管の内壁へ向かって延びるように形成されている。つまり、当接部は、延出部の端縁部と第1吸気管の内壁または第2吸気管の内壁との間において、管軸に対して傾斜する壁面を形成している。これにより、第1吸気管の内壁近傍または第2吸気管の内壁近傍の吸気は、前記傾斜する壁面に沿って滑らかに流れる。したがって、本発明では、延出部に当接部が形成されない場合等に比べ、吸気圧の損失を低減することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、第1吸気管および第2吸気管の少なくとも一方は、接続部分側端部の内壁からその内側へ突出する突出部を有している。当該突出部は、弁体の弁部がシール部材の延出部に当接したとき、延出部を係止することにより弁体の回転を規制可能である。これにより、吸気管が突出部を有しない場合に比べ、閉弁時の弁体と延出部との当接圧をより高めることができる。その結果、閉弁時の弁体と吸気管との間の気密性を向上することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、第1吸気管および第2吸気管の少なくとも一方は、接続部分側の端面に溝部を有する。また、シール部材は、前記溝部に嵌り込むように形成される嵌込部を有する。これにより、嵌込部が溝部に係止され、吸気管に対するシール部材の「ずれ」が低減される。このように、本発明の2つの吸気管は、間にシール部材を挟み込み、さらに溝部によってシール部材の「ずれ」を低減しているのである。したがって、吸気管からのシール部材の脱落を低減する効果をより高めることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、第1吸気管および第2吸気管には、弁部の延出方向と延出部の延出方向とが概ね平行になった状態で弁部と延出部とが当接するよう、両吸気管の接続部分側端部に、管軸方向の段差が形成されている。この構成により本発明では、弁体の閉弁時、弁体と延出部とは、互いの当接箇所のどの部分においても概ね均一の接触圧で当接する。そのため、弁体と延出部とが当接するとき、弁体と延出部との間に隙間が形成されるのを低減することができる。したがって、閉弁時の弁体と吸気管との間の気密性を向上することができる。
【0016】
請求項7に記載の発明では、弁体の弁部は、軸部から延出する第1弁部、および軸部から第1弁部とは反対側へ延出する第2弁部から構成されている。そして、第1弁部および第2弁部は、弁部の延出方向と延出部の延出方向とが概ね平行になった状態で弁部と延出部とが当接するよう、軸部に対し段違いに設けられている。この構成により本発明では、弁体の閉弁時、弁体と延出部とは、互いの当接箇所のどの部分においても概ね均一の接触圧で当接する。そのため、弁体と延出部との当接時、両部材の間に隙間が形成されるのを低減することができる。したがって、閉弁時の弁体と吸気管との間の気密性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態による可変吸気装置の一部を示す断面図。
【図2】本発明の第1実施形態による可変吸気装置を示す断面図。
【図3】本発明の第1実施形態による可変吸気装置の一部を示す斜視図であって、(A)は閉弁時の状態を示す図、(B)は開弁時の状態を示す図。
【図4】本発明の第2実施形態による可変吸気装置の一部を示す断面図。
【図5】本発明の第3実施形態による可変吸気装置の一部を示す断面図。
【図6】本発明の第4実施形態による可変吸気装置の一部を示す断面図。
【図7】本発明の第5実施形態による可変吸気装置の一部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態は、エンジンの吸気系に設置される可変吸気装置に適用したものである。図2に示すように、可変吸気装置1はインテークマニホールド10を備えている。インテークマニホールド10は、エアコネクタ11とエンジン本体20のシリンダとを連通している。
【0019】
図示しない吸入ダクトから吸入された吸気は、図示しないエアクリーナおよびスロットルバルブを経由してエアコネクタ11へ流入し、サージタンク12を経由してインテークマニホールド10が形成する吸気通路13および吸気通路14へ分配される。インテークマニホールド10は、図示しないスロットルバルブに連通しているエアコネクタ11の出口側のサージタンク12からエンジン本体20のシリンダ数に対応して分岐している。
【0020】
低回転用の吸気通路13は、エンジン本体20までの全長が高回転用の吸気通路14よりも長く形成されている。分岐した低回転用の吸気通路13と高回転用の吸気通路14とは、吸気の流れ下流側すなわちエンジン本体20側で再び合流している。高回転用の吸気通路14には吸気通路14を開閉し断面積を変更する弁体30が設置されている。弁体30が吸気通路14を閉塞すると、吸気は低回転用の吸気通路13を経由してエンジン本体20へ供給される。一方、弁体30が吸気通路14を開放すると、吸気はより流通抵抗の小さな高回転用の吸気通路14を経由してエンジン本体20へ供給される。すなわち、吸気通路14を流れる吸気の流量を変更することにより、吸気が流れる吸気通路の全長が変更される。
【0021】
インテークマニホールド10は、低回転用の吸気通路13と高回転用の吸気通路14との合流箇所の吸気の流れ上流側において、2つに分割されている。すなわち、インテークマニホールド10は、第1吸気管としての吸気管15、および第2吸気管としての吸気管16の2つの吸気管が互いに接続されることにより構成されている。つまり、吸気通路13および吸気通路14は、吸気管15と吸気管16とが接続されることにより形成される吸気通路である。弁体30は、吸気管15と吸気管16との接続部分において吸気通路14に設けられている。本実施形態では、弁体30は、インテークマニホールド10の分岐数、すなわちエンジン本体20のシリンダ数と同数設けられている。
【0022】
図1では、吸気通路13および吸気通路14を形成する吸気管15および吸気管16のうち、吸気通路14を形成する部分のみを示している。図1に示すように、可変吸気装置1は、上述した吸気管15および吸気管16、弁体30およびシール部材40等を備えている。
吸気管15および吸気管16は、それぞれ、例えばポリアミド系の樹脂により形成されている。吸気管15の端部150と吸気管16の端部160とは、図示しない接続手段により互いに接続されている。以下、吸気管15と吸気管16との接続部分、すなわち端部150および端部160近傍を「接続部分」とする。吸気管15および吸気管16は、「接続部分」近傍において、管軸に垂直な面による断面の形状が略円形となるよう形成されている(図3参照)。そのため、吸気通路14も、「接続部分」近傍において、管軸に垂直な面による断面の形状が略円形となっている。
【0023】
弁体30は、「接続部分」に設けられている。弁体30は、略円柱状の軸部31、および略円板状の弁部32を有している。軸部31および弁部32は、例えばポリアミド系の樹脂により一体に形成されている。弁部32は、第1弁部としての弁部321、および第2弁部としての弁部322を有している。弁部321は、軸部31から略半円の板状に延出されている。弁部322は、軸部31から弁部321とは反対方向へ略半円の板状に延出されている。本実施形態では、弁部321および弁部322は、同一の仮想平面上に設けられている。
【0024】
弁体30には、軸部31を軸方向に貫くようにして棒状のシャフト50が設けられている。本実施形態では、1本のシャフト50は、複数の弁体30の軸部31を串刺し状態に貫くようにして設けられている。シャフト50は、例えば金属により形成されている。シャフト50は、吸気管15と吸気管16との間、すなわち「接続部分」で軸受されている。また、シャフト50は、吸気通路14の略円形の断面を概ね半分に分断する位置に設けられている。これにより、弁体30の軸部31は、吸気通路14を横切るようにして設けられている。弁体30とシャフト50とは、例えばインサート成形により結合している。これにより、シャフト50が回転すると、弁体30は、軸部31を中心として回転する。また、シャフト50の端部には、図示しない駆動装置が接続されている。当該駆動装置は、図示しない電子制御装置(以下、「ECU」とする)によって制御され、シャフト50を回転駆動する。
【0025】
弁部32の外径は、吸気管15および吸気管16の「接続部分」近傍における内径よりもやや小さく設定されている。そのため、弁部32は、吸気通路14で回転し管軸方向に対し概ね垂直な状態(図1の実線で示す状態)になると、吸気通路14を閉塞する(図3(A)参照)。一方、弁部32は、管軸方向に対し概ね平行な状態(図1の破線で示す状態)になると、吸気通路14を開放する(図3(B)参照)。すなわち、本実施形態では、弁体30は、所謂バタフライバルブとして構成されている。
【0026】
シール部材40は、例えばゴムなど弾性を有する材料により形成されている。シール部材40は、「接続部分」に設けられている。シール部材40は、挟持部41および延出部42を有している。挟持部41は、略環状に形成され、吸気管15と吸気管16との間に挟持されている。このように、シール部材40は、吸気管15と吸気管16との間に挟持されることによって、両吸気管からの脱落が抑制されている。
【0027】
延出部42は、第1延出部としての延出部421、および第2延出部としての延出部422を有している。延出部421は、挟持部41から当該挟持部41の内側へ向かって延出している。つまり、延出部421は、「接続部分」の内側へ向けて延出されている。本実施形態では、延出部421は、挟持部41の内側において、軸部31の一方の端部近傍から他方の端部近傍に亘って弧を描くようにして形成されている。すなわち、延出部421は、吸気通路14へ円弧状に張り出すようにして形成されている。したがって、弁体30が管軸方向に対し概ね垂直な状態となるまで回転すると、弁部321の外縁部は、延出部421に吸気管16側から当接する。
【0028】
延出部422は、延出部421と同様、挟持部41から当該挟持部41の内側へ向かって延出している。また、延出部422は、概ね延出部421と同様の形状に形成され、軸部31を挟んで延出部421とは反対側に設けられている。これにより、弁体30が管軸方向に対し概ね垂直な状態となるまで回転すると、弁部322の外縁部は、延出部422に吸気管15側から当接する。
【0029】
延出部421は、挟持部41とは反対側の端縁部から管軸方向の吸気管16側へ突出する当接部425を有している。当接部425は、延出部421の前記端縁部に沿って略円弧状に形成されている。そのため、弁体30が回転して延出部421に当接するとき、弁部321の外縁部は、当接部425に当接する。
一方、延出部422は、挟持部41とは反対側の端縁部から管軸方向の吸気管15側へ突出する当接部426を有している。当接部426は、当接部425と同様、延出部422の前記端縁部に沿って略円弧状に形成されている。そのため、弁体30が回転して延出部422に当接するとき、弁部322の外縁部は、当接部426に当接する。
【0030】
図1および図3に示すように、吸気管15は、端部150の内壁からその内側へ突出する突出部151を有している。突出部151は、延出部421の当接部425とは反対側の面に当接するよう形成されている。すなわち、突出部151は、吸気通路14へ円弧状に張り出すようにして形成されている。吸気管16は、端部160の内壁からその内側へ突出する突出部161を有している。突出部161は、延出部422の当接部426とは反対側の面に当接するよう形成されている。すなわち、突出部161は、突出部151と同様、吸気通路14へ円弧状に張り出すようにして形成されている。
【0031】
吸気管15は、端部150の吸気管16側端面に溝部152を有している。溝部152は、弁体30の軸部31の一方の端部近傍から他方の端部近傍に亘って弧を描くようにして形成されている。吸気管16は、端部160の吸気管15側端面に溝部162を有している。溝部162は、溝部152と同様、弁体30の軸部31の一方の端部近傍から他方の端部近傍に亘って弧を描くようにして形成されている。
【0032】
シール部材40は、溝部152および溝部162のそれぞれに嵌り込むようにして形成される嵌込部411および嵌込部412を有している。嵌込部411および嵌込部412は、シール部材40の挟持部41の外縁部に沿って弧を描くようにして形成されている。
続いて、シャフト50の形状およびシャフト50の軸受等について、さらに詳細に説明する。
【0033】
シャフト50は、軸部31の内部において軸方向の一部が、矩形の断面形状となるように形成されている(図1参照)。これにより、シャフト50と弁体30との相対的な回転が規制されている。一方、シャフト50の軸部31に覆われていない部分は、略円形の断面形状となるように形成されている(図3参照)。また、シャフト50には、2つのリング部材51が、弁体30の軸部31を間に挟むようにして挿通されている。
【0034】
リング部材51は、例えば金属により略円筒状に形成されている。図1に示すように、リング部材51は、吸気管15と吸気管16との「接続部分」に設けられている。吸気管15の端部150および吸気管16の端部160のそれぞれには、リング部材51の外壁の形状に対応する形状の凹部153および凹部163が形成されている。リング部材51は、凹部153と凹部163との間に位置し、吸気管15と吸気管16とにより挟持されている。リング部材51の内径は、シャフト50の外径よりもやや大きく設定されている。そのため、シャフト50とリング部材51とは、滑らかに摺動可能である。このようにして、シャフト50は、リング部材51を経由して吸気管15および吸気管16によって軸受けされている。
【0035】
吸気管15と吸気管16とは、端部150および端部160とシール部材40の挟持部41とが所定の圧力で面接触するように接続されている。シール部材40は、挟持部41の一部が薄い平板状に形成されている。そして、この平板状の部分は、リング部材51と吸気管16の凹部163との間に挟み込まれている。また、リング部材51の凹部163とは反対側の外壁は、凹部153と密に接している。この構成により、吸気管15および吸気管16は、「接続部分」の全周に亘って内側と外側との気密性が確保されている。また、リング部材51と吸気管16との間にシール部材40が挟み込まれているため、例えば弁体30に吸気脈動が印可されて弁体30およびリング部材51が振動したとしても、この振動をシール部材40により吸収することができる。
【0036】
次に、可変吸気装置1の作動について説明する。
ECUは、エンジンの回転数に応じて駆動装置を経由して弁体30を回転させ、吸気通路14を流れる吸気の流量を変更する。すなわち、ECUは、エンジンの回転数に応じて弁体30の目標回転角度を算出し、弁体30が目標の回転角度となるよう駆動装置を制御する。
【0037】
例えばエンジンの回転数が高いとき、ECUが弁体30の目標回転角度として「全開位置」を算出すると、駆動装置は、弁体30を管軸方向に対し概ね平行となるよう回転させる。これにより、吸気通路14が開放され、吸気は、主に高回転用の吸気通路14を流通する。
一方、例えばエンジンの回転数が低いとき、ECUが弁体30の目標回転角度として「全閉位置」を算出すると、駆動装置は、弁体30を管軸方向に対し概ね垂直となるよう回転させる。このとき、弁体30の弁部32は、シール部材40の延出部42に当接する。これにより、吸気通路14が閉塞され、吸気は、低回転用の吸気通路13を流通する。
【0038】
本実施形態では、弁部32が延出部42に当接したとき、吸気管15の突出部151および吸気管16の突出部161は、延出部42を係止することにより弁体30の回転を規制する。また、このとき、延出部42は、弁体30の回転による押圧によって、特に当接部425および当接部426が弾性変形する。これにより、弁体30とシール部材40とは、密に当接する。そのため、本実施形態では、閉弁時の弁体30と吸気管15および吸気管16との間の気密性が高い。なお、このときの当接部425および当接部426の弾性変形量は、当接部425および当接部426の軸部31から遠い部分よりも軸部31に近い部分の方が大きい。
【0039】
また、本実施形態では、閉弁時の弁体30と吸気管(吸気管15および吸気管16)との間の気密性を、弁体30の外縁部とシール部材40の延出部42との当接によって確保している。そのため、弁体30の閉弁時、弁体30の外縁部と吸気管の内壁との間には、隙間が形成されていてもよい。つまり、本実施形態では、吸気管の内壁および弁体30の外縁部は、高精度な加工を必要としない。よって、製造コストを低減することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、シール部材40は、弾性を有する材料により形成されている。そのため、弁体30の閉弁時、弁体30に当接するシール部材40は、弁体30の回転による押圧によって当接箇所が弾性変形する。これにより、弁体30とシール部材40との当接を密にすることができる。したがって、閉弁時の弁体30と吸気管15および吸気管16との間の気密性を高くすることができる。
【0041】
また、シール部材40は、挟持部41が、吸気管15と吸気管16との間に挟持されている。つまり、本実施形態では、吸気通路14を2つの吸気管(吸気管15、吸気管16)から構成し、これら両吸気管でシール部材40を挟んでいる。これにより、例えば吸気管またはシール部材40に吸気脈動が印加されたり、弁体30とシール部材40との当接が繰り返されたりしても、シール部材40が吸気管から脱落するのを低減することができる。したがって、閉弁時の弁体30と吸気管との間の気密性を長期に亘って維持することができる。
【0042】
また、シール部材40の延出部42は、吸気管15または吸気管16の管軸方向へ突出する当接部425および当接部426を有している。この構成により、弁体30が延出部42に当接するとき、当接部425および当接部426は、弁体30の回転による押圧によって弾性変形し易い。したがって、閉弁時の弁体30と吸気管との間の気密性をより向上することができる。
【0043】
また、本実施形態では、吸気管15および吸気管16は、「接続部分」側端部の内壁からその内側へ突出する突出部151および突出部161を有している。突出部151および突出部161は、弁体30の弁部32がシール部材40の延出部42に当接したとき、延出部42を係止することにより弁体30の回転を規制可能である。これにより、閉弁時の弁体30と延出部42との当接圧を高めることができる。その結果、閉弁時の弁体30と吸気管との間の気密性をより向上することができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、吸気管15および吸気管16は、「接続部分」側の端面に溝部152および溝部162を有する。また、シール部材40は、溝部152および溝部162に嵌り込むように形成される嵌込部411および嵌込部412を有する。これにより、嵌込部411および嵌込部412が溝部152および溝部162に係止され、吸気管に対するシール部材40の「ずれ」が低減される。このように、本実施形態の2つの吸気管は、間にシール部材40を挟み込み、さらに溝部152および溝部162によってシール部材40の「ずれ」を低減している。したがって、吸気管からのシール部材40の脱落を低減する効果をより高めることができる。
【0045】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による可変吸気装置の一部を図4に示す。第2実施形態では、シール部材の延出部に形成される当接部の形状が第1実施形態と異なる。
第2実施形態では、シール部材40の延出部421および延出部422は、それぞれ当接部435および当接部436を有している。当接部435は、延出部421の挟持部41とは反対側の端縁部から管軸方向の吸気管16側へ突出するとともに当該突出部分の先端が吸気管16の内壁へ向かって延びるように形成されている。また、当接部435は、延出部421の前記端縁部に沿って略円弧状に形成されている。
【0046】
一方、当接部436は、延出部422の挟持部41とは反対側の端縁部から管軸方向の吸気管15側へ突出するとともに当該突出部分の先端が吸気管15の内壁へ向かって延びるように形成されている。また、当接部436は、当接部435と同様、延出部422の前記端縁部に沿って略円弧状に形成されている。
また、当接部435は、延出部421の端縁部と吸気管16の内壁との間において、管軸に対して弧を描きつつ傾斜する壁面437を形成している。一方、当接部436は、延出部422の端縁部と吸気管15の内壁との間において、管軸に対して弧を描きつつ傾斜する壁面438を形成している。これにより、吸気管15の内壁近傍または吸気管16の内壁近傍の吸気は、壁面437および壁面438に沿って滑らかに流れる。したがって、本実施形態では、吸気通路14の吸気圧の損失を低減することができる。
【0047】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による可変吸気装置の一部を図5に示す。第3実施形態では、第2吸気管(吸気管16)の内壁の形状が第2実施形態と異なる。
第3実施形態では、吸気管15の内壁にのみ突出部151が形成されている。すなわち、吸気管16の内壁には、突出部151のような突出部は形成されていない。これにより、本実施形態では、吸気管16の端部160の肉厚を低減できるため、吸気管16の材料費および加工費を低減することができる。なお、本実施形態においても、突出部151により閉弁時の弁体30の回転を効果的に規制することが可能である。
【0048】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による可変吸気装置の一部を図6に示す。第4実施形態は、第1吸気管および第2吸気管の「接続部分」に管軸方向の段差が形成されている点で、第1実施形態と異なる。
第4実施形態では、吸気管15の端部150に管軸方向の段差を形成する段差面154が形成されている。段差面154は、吸気管15と吸気管16との「接続部分」においてシャフト50により分断される領域の一方側に形成されている。また、吸気管16の端部160にも、管軸方向の段差を形成する段差面164が形成されている。段差面164は、「接続部分」においてシャフト50により分断される領域の他方側に形成されている。
【0049】
本実施形態では、シール部材40が吸気管15と吸気管16とにより挟持されることにより、延出部421および延出部422は、管軸方向に互いに段違いとなるよう形成されている。段差面154および段差面164は、弁体30の閉弁時、弁部32の延出方向と延出部421および延出部422の延出方向とが概ね平行になった状態で弁部32と延出部42とが当接するように形成されている。
【0050】
上述の第1実施形態では、弁体30が延出部42に当接するとき、延出部42の弾性変形量は、延出部42の軸部31に近い部分よりも軸部31から遠い部分の方が小さい。そのため、延出部42の軸部31から遠い部分は、弁体30との接触圧が小さくなると考えられる。その結果、延出部42の軸部31から遠い部分において弁体30との間に隙間が生じ、気密性が低下することが懸念される。
【0051】
一方、第4実施形態では、上述した構成により、弁体30の閉弁時、弁体30と延出部42とは、互いの当接箇所のどの部分においても概ね均一の接触圧で当接する。そのため、弁体30と延出部42とが当接するとき、弁体30と延出部42との間に隙間が形成されるのを低減することができる。したがって、閉弁時の弁体30と吸気管との間の気密性をより向上することができる。
【0052】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態による可変吸気装置の一部を図7に示す。第5実施形態は、弁体の弁部が弁軸に対し段違いに設けられる点で、第1実施形態と異なる。
第5実施形態では、第1実施形態と同様、弁部322が軸部31から弁部321とは反対方向へ板状に延出されている。しかしながら、第5実施形態では、弁部321および弁部322は、軸部31に対し段違いに設けられている。つまり、弁部321および弁部322は、第1実施形態と違い、それぞれ異なる仮想平面上に設けられている。なお、当該2つの仮想平面は、互いに平行な位置関係にある。
【0053】
また、弁部321および弁部322は、弁体30の閉弁時、弁部321および弁部322の延出方向と延出部42の延出方向とが概ね平行になった状態で弁部32と延出部42とが当接するように形成されている。この構成により、第5実施形態では、第4実施形態と同様、弁体30の閉弁時、弁体30と延出部42とは、互いの当接箇所のどの部分においても概ね均一の接触圧で当接する。そのため、弁体30と延出部42とが当接するとき、弁体30と延出部42との間に隙間が形成されるのを低減することができる。したがって、閉弁時の弁体30と吸気管との間の気密性をより向上することができる。
【0054】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、シール部材の延出部は、当接部を有しない構成としてもよい。本発明では、シール部材は弾性を有するため、延出部が当接部を有さずとも、弁体と吸気管との間の気密性を確保することができる。
また、本発明の他の実施形態では、第1吸気管ではなく、第2吸気管のみが、吸気通路へ突出する突出部を有する構成としてもよい。さらに、第1吸気管および第2吸気管のいずれも、突出部を有しない構成としてもよい。2つの吸気管が突出部を有さずとも、シール部材の延出部により、弁体の回転を規制することは可能である。
【0055】
また、本発明の他の実施形態では、上述の複数の実施形態を組み合わせた構成としてもよい。例えば、第4実施形態または第5実施形態のシール部材の当接部の形状を、第2実施形態の当接部の形状と同様に形成してもよい。また、第4実施形態および第5実施形態を組み合わせ、第1吸気管および第2吸気管の「接続部分」に管軸方向の段差を形成するとともに弁体の弁部を弁軸に対し段違いに設け、弁部の延出方向と延出部の延出方向とが概ね平行になった状態で弁部と延出部とが当接するよう構成してもよい。
【0056】
また、本発明の他の実施形態では、単気筒エンジンの可変吸気装置としても適用できる。この場合、弁体は1つ設けられる。さらに、本発明の弁構造は、吸気の流量を調節するスロットル装置の弁構造として採用することも可能である。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0057】
1:可変吸気装置、14:吸気通路、15:吸気管(第1吸気管)、16:吸気管(第2吸気管)、30:弁体、31:軸部、32:弁部、40:シール部材、41:挟持部、42:延出部、150:端部(第1吸気管、接続部分)、160:端部(第2吸気管、接続部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1吸気管と、
前記第1吸気管に接続され前記第1吸気管とともに吸気通路を形成する第2吸気管と、
前記吸気通路を横切るようにして設けられる軸部、および前記軸部から板状に延出されて当該軸部を中心として回転し前記吸気通路を開閉する弁部を有する弁体と、
弾性を有する材料からなり、前記第1吸気管と前記第2吸気管との接続部分に設けられ、前記弁部が回転することで当該弁部に当接し前記吸気通路を閉塞可能となるよう前記接続部分の内側へ向けて延出された延出部を有するシール部材と、を備え、
前記シール部材は、前記第1吸気管と前記第2吸気管との間に挟持される挟持部を有し、当該挟持部から前記延出部が延出されて形成されていることを特徴とする可変吸気装置。
【請求項2】
前記延出部は、前記接続部分における前記第1吸気管または前記第2吸気管の管軸方向へ突出する当接部を有し、
前記弁体は、前記弁部が前記当接部に当接することにより前記吸気通路を閉じることを特徴とする請求項1に記載の可変吸気装置。
【請求項3】
前記当接部は、前記延出部の前記挟持部とは反対側の端縁部から前記管軸方向へ突出するとともに当該突出部分の先端が前記第1吸気管の内壁または前記第2吸気管の内壁へ向かって延びるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の可変吸気装置。
【請求項4】
前記第1吸気管および前記第2吸気管の少なくとも一方は、前記接続部分側端部の内壁からその内側へ突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記弁部が前記延出部に当接したとき、前記延出部を係止することにより前記弁体の回転を規制可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の可変吸気装置。
【請求項5】
前記第1吸気管および前記第2吸気管の少なくとも一方は、前記接続部分側の端面に溝部を有し、
前記シール部材は、前記溝部に嵌り込むように形成される嵌込部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の可変吸気装置。
【請求項6】
前記第1吸気管および前記第2吸気管には、前記弁部の延出方向と前記延出部の延出方向とが概ね平行になった状態で前記弁部と前記延出部とが当接するよう、前記接続部分側端部に、管軸方向の段差が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の可変吸気装置。
【請求項7】
前記弁部は、前記軸部から延出する第1弁部、および前記軸部から前記第1弁部とは反対側へ延出する第2弁部からなり、
前記第1弁部および前記第2弁部は、前記弁部の延出方向と前記延出部の延出方向とが概ね平行になった状態で前記弁部と前記延出部とが当接するよう、前記軸部に対し段違いに設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の可変吸気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−261359(P2010−261359A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112656(P2009−112656)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】