説明

可撓性管継手の製造方法

【課題】金型などへのセットが簡単にでき、硬度差のある材料を用いても成形後の変形を防止できるとともに、外径をコンパクトにすることができる可撓性管継手の製造方法を提供すること。
【解決手段】両端部に連結部を有する管本体と、この外周に設けられる螺旋状の線状補強部材12とからなり,これら管本体と線状補強部材の硬度が異なる可撓性管継手を製造する場合に、線状補強部材を、螺旋状部と連通するランナー14を介して合成樹脂で一体成形した後、ランナーで線状補強部材を位置決め固定し、管本体を合成樹脂で一体成形する。これにより、線状補強部材の成形に用いたランナーをそのまま残して管本体の成形の際の位置決め固定に利用することで、金型などへのセットを容易とし、しかもランナーによって剛性を高めて成形後の硬度差による変形を防止できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は住宅用の排水管などの接続に使用される可撓性管継手の製造方法に関し、螺旋状やリング状の線状補強部材を成形型に簡単かつ正確に位置決めでき、変形を抑えて効率的に管本体と一体成形できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
マンションなどの集合住宅や一個建て住宅などの住宅用の雑排水用の配管の継手として可撓性管継手が用いられており、配管同士の芯ずれの吸収や曲がり部分の接続、あるいは地震時の破損防止や免震のために用いられている。
【0003】
従来、可撓性管継手としては、蛇腹構造とされ、管の内外壁面を凹凸状にすることで、可撓性を持たせるようにしたものが一般的であり、内壁面の凹凸により内径がその分小さくなるとともに、排水の流量が少ない場合に排水や固形物等が凹部に溜まりやすく、悪臭などが発生し易いものであった。
【0004】
そこで、内壁面を平滑にして排水の滞留などを防止できる可撓管継手が種々提案されており、例えば、内壁面を平滑にした軟質筒状本体と、この筒状本体の外周面に硬質リングを軸方向に離間して一体に形成した可撓管継手が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、図4に示すように、軟質の管主体1とその外周に螺旋状に埋め込んだ補強部材2とで構成した可撓管も提案されている(特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開2005−172186号公報
【特許文献2】特開2001−241574号公報
【特許文献3】実公昭47−33851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このような可撓管継手を製造する場合には、ブロー成形や射出成形、もしくは押出し成形で、予め硬質リングや螺旋状の補強部材を合成樹脂などで成形した後、これらの硬質リングや螺旋状の補強部材を成形用の金型にセットし、軟質筒状本体用の合成樹脂などを充填して成形することが行なわれており、螺旋状の補強部材の場合には、金型へのセットは簡単にできるものの、硬質リングを用いる場合には、金型へのセットを必要本数分繰り返して行なわなければならず工数が多く、効率的に製造することができないという問題がある。
【0007】
また、軟質の筒状本体の外周に硬質のリングや螺旋状の補強部材を一体に成形すると、樹脂などの材料の硬度差によって成形後に変形が生じ易く、特に硬質リングを平行に設ける場合には、一本に繋がっている螺旋状の補強部材に比べてリング同士が独立し連結されていないことから一層変形が生じ易いという問題がある。
【0008】
さらに、硬質リングを平行に配置した可撓管継手では、硬質のリングと軟質の筒状本体の接着性向上のため、硬質のリングに軸方向貫通孔や突起を設けて軟質の筒状本体の樹脂材料が入り込むようにしており(特許文献1参照)、軸方向貫通孔や突起の分だけ内径が小さくなることから、必要な内径を確保すると、可撓管継手の外径が大きくなるという問題もある。
【0009】
この発明は、かかる従来技術の課題に鑑みてなされたもので、金型などへのセットが簡単にでき、硬度差のある材料を用いても成形後の変形を防止できるとともに、外径をコンパクトにすることができる可撓性管継手の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来技術の課題を解決するためこの発明の請求項1記載の可撓性管継手の製造方法は、両端部に連結部を有する管本体と、この管本体の外周に設けられる螺旋状または複数のリング状の線状補強部材とからなりこれら管本体と線状補強部材の硬度が異なる可撓性管継手を製造するに際し、
前記線状補強部材を、螺旋状部または各リング状部と連通するランナーを介して合成樹脂で一体成形した後、当該ランナーで前記線状補強部材を位置決め固定し、前記管本体を合成樹脂で一体成形するようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
この可撓性管継手の製造方法によれば、両端部に連結部を有する管本体と、この管本体の外周に設けられる螺旋状または複数のリング状の線状補強部材とからなりこれら管本体と線状補強部材の硬度が異なる可撓性管継手を製造するに際し、
前記線状補強部材を、螺旋状部または各リング状部と連通するランナーを介して合成樹脂で一体成形した後、当該ランナーで前記線状補強部材を位置決め固定し、前記管本体を合成樹脂で一体成形するようにしており、線状補強部材の成形に用いたランナーをそのまま残して管本体の成形の際の位置決め固定に利用することで、金型などへのセットを容易とし、しかもランナーによって剛性を高めて成形後の硬度差による変形を防止できるようにしている。
【0012】
また、この発明の請求項2記載の可撓性管継手の製造方法は、請求項1記載の構成に加え、前記線状補強部材に連結用の孔および/または溝を形成しておき、これら連結用の孔および/または溝に前記管本体の合成樹脂を充填するようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
この可撓性管継手の製造方法によれば、前記線状補強部材に連結用の孔および/または溝を形成しておき、これら連結用の孔および/または溝に前記管本体の合成樹脂を充填するようにしており、連結用の孔または溝、あるいは孔と溝によって線状補強部材と管本体との接着性を向上し、連結用の孔または溝、あるいは孔と溝を線状部材自体に形成することで、コンパクトにできるようにしている。
【発明の効果】
【0014】
この発明の請求項1記載の可撓性管継手の製造方法によれば、両端部に連結部を有する管本体と、この管本体の外周に設けられる螺旋状または複数のリング状の線状補強部材とからなりこれら管本体と線状補強部材の硬度が異なる可撓性管継手を製造するに際し、前記線状補強部材を、螺旋状部または各リング状部と連通するランナーを介して合成樹脂で一体成形した後、当該ランナーで前記線状補強部材を位置決め固定し、前記管本体を合成樹脂で一体成形するようにしたので、線状補強部材の成形に用いたランナーをそのまま残して管本体の成形の際の位置決め固定に利用することで、金型などへのセットを容易とし、しかもランナーによって剛性を高めて成形後の硬度差による変形を防止することができる。
【0015】
また、この発明の請求項2記載の可撓性管継手の製造方法によれば、前記線状補強部材に連結用の孔および/または溝を形成しておき、これら連結用の孔および/または溝に前記管本体の合成樹脂を充填するようにしたので、連結用の孔または溝あるいは孔と溝によって線状補強部材と管本体との接着性を向上し、連結用の孔または溝あるいは孔と溝を線状部材自体に形成することで、コンパクトにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の可撓性管継手の製造方法の一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1〜図3は、この発明の可撓性管継手の製造方法の一実施の形態にかかり、図1は製造された可撓性管継手の一部分を切り欠いて示す直線状及び直角状の正面図、図2は線状補強部材の成形後の概略斜視図、図3は管本体の成形時の線状補強部材の概略斜視図である。
【0018】
この発明の可撓性管継手の製造方法で製造される可撓性管継手10は、例えば住宅用の排水管同士の継手や排水管と器具などの継手として用いられるもので、通常口径が30〜90mmの範囲の配管などに用いられる。
【0019】
この可撓性管継手10は、内外面が平滑な管本体11を備え、管本体11の両端部には、配管との連結部11aが設けられ、例えば配管の外側に装着してバンドで固定するように配管より僅かに大径に形成してある。この管本体11の外周に管本体に比べ硬度が高い材料で形成された螺旋状の線状補強部材12が設けられて可撓性管継手10が構成されている。
【0020】
この管本体11は、例えば軟質塩化ビニル樹脂で形成され、肉厚が1〜3mmとされるとともに、両端部の連結部11aとともに一体成形される。
【0021】
なお、連結部11aとしては、管の外側に挿入してバンドなどで押える形式に限らず、一端部を細径のテーパ状とし、他端部を太径のテーパ状として互いを嵌合・接着する形式など他の形式であっても良い。
【0022】
この管本体11の厚みが1mm未満であると、破れたりするなどの破損の可能性があるとともに、耐久性が劣る。一方、厚みが3mを超えて厚くなると、可撓性が低下してしまう。
【0023】
この管本体11の外周に設けられる線状補強部材12は、例えば硬質塩化ビニル樹脂で形成され、硬度差がJISK6253タイプAデュロメータで50〜20程度硬く形成されるとともに、両端部を環状に連結したリング部12aを有する螺旋状に形成してある。
【0024】
このような可撓性管継手10は、例えば図1(b)に示すように、直角に配置された配管P、P間に設けられ、管本体11及び線状補強部材12を軸方向に押し縮めるようにして、両端部の連結部11aを配管P、Pに被せるように挿入し、外周にバンドを巻き掛けて締め付けて固定することで使用する。
【0025】
こうして可撓性管継手10を直角の曲がり部分に取り付けた状態では、曲がり部分の内側の線状補強部材12の螺旋12bの間隔が狭くなる一方、外側の螺旋12bの間隔が広がるように変形するが、この可撓性管継手10では、管本体11と線状補強部材12とが硬度が異なる材料で成形され、管本体11が柔らかく、線状補強部材12が硬くしてあるので、管本体11がつぶれることもなく曲がった状態にすることができるとともに、曲がり部分の内側の管本体11の壁面11bが外側に押し出されるように突出して重なり、管継手の内面をほぼ平坦に保つことができる。これにより、内部を流れる排水などが溜まることがなく、悪臭の原因となることもない。
【0026】
次ぎに、このような可撓性管継手10の製造方法について具体的に説明すると、まず、線状補強部材12を、例えば射出成形した後、これを成形型内に設置し、管本体11となる合成樹脂で射出成形することで、線状補強部材12と管本体11とを一体にすることで成形される。
【0027】
すなわち、線状補強部材12の成形用の図示しない金型に、リング部12a及び螺線12bの成形部とともに、螺旋12bの成形部の両側にそれぞれゲート13、各ゲート13に連通する両側のランナー14及び樹脂充填口15を形成しておき、線状補強部材12用の硬度の大きい合成樹脂、例えば硬質塩化ビニル樹脂を用いて射出成形する。
【0028】
すると、成形後の中間線状補強部材12Aは、図2に示すように、樹脂充填口15から充填された硬質塩化ビニル樹脂で線状補強部材12の両側にゲート13で連結された棒状のランナー14、14と、樹脂充填口15から一方のランナー14までの樹脂が一体となった不要な部分が付いた状態となっている。
【0029】
通常、線状補強部材12を得るために、成形後の中間線状補強部材12Aから余分な部分を取り除いて次ぎの成形に用いるが、ここでは、図3に示すように、螺旋12bの両側のゲート13及びこれらを連結する棒状のランナー14,14をそのまま残した状態とし、樹脂充填口15からその先端のランナー14に到る部分のみを除去する。
【0030】
こうして両側に棒状のランナー14、14を備えた線状補強部材12は、ランナー14、14を支持棒と兼用し、管本体11の成形用の図示しない金型にセットし、線状補強部材12の内周部分に管本体11となる硬度の低い合成樹脂、例えば軟質塩化ビニル樹脂を射出して一体化する。
【0031】
この管本体11と線状補強部材12とを一体化する射出成形の際に、線状補強部材12の両側にランナー14,14を残したままとしてあるので、線状補強部材12が所定位置に固定され、射出圧により中心軸回りに回転したり、螺旋の間隔が変化することもなく、所定形状に成形することができる。
【0032】
また、管本体11の射出成形後、成形型から取り出した場合に、管本体11と線状補強部材12との硬度差によって変形しようとするが、この可撓性管継手10の製造方法では、線状補強部材12の両側のランナー14、14が支持棒として機能し、線状補強部材12の剛性を高めることができ、硬度差による成形後の変形を防止することができ、これにより、所定の形状に成形することができる。
【0033】
さらに、この可撓性管継手10の製造方法では、管本体11と線状補強部材12とを同一合成樹脂である塩化ビニル樹脂で構成し、可塑剤の添加量をかえることで硬度差を持たせるようにしたので、管本体11と線状補強部材12との接着性を高めて一体化することができる。これにより、線状補強部材12の剛性を有効に利用して成形後の変形を一層防止できる。
【0034】
なお、この可撓性管継手10の製造方法は、塩化ビニル樹脂により硬度差を持たせて管本体11および線状補強部材12を構成する場合に限らず、管本体11と線状補強部材12とを異なる合成樹脂で構成したり、ゴムやエラストマなどの他の素材を用いるようにしても良く、硬度差を持つようにできれば良い。
【0035】
さらに、この可撓性管継手10の製造方法では、図2及び図3に示すように、線状補強部材12に連結用の溝16及び孔17が形成してある。この可撓性管継手10には、ゲート13に対応する位置の内周側に凹状の溝16が対向して形成されるとともに、これと直交する位置の外周側に凹状の長い溝16とこの長い溝16に連通する内外周を貫通する孔17が形成してある。これにより、管本体11の成形の際に、管本体11の合成樹脂を射出・充填すると、これら連結用の溝16及び孔17に樹脂が入り込んで線状補強部材12と管本体11との接着性を向上することができる。
【0036】
この可撓性管継手10の製造方法では、連結用の溝16及び孔17を線状補強部材部材12自体である内外周方向の高さ部分に形成してあるので、これら溝16及び孔17によって管本体11の内径が小さくなることや線状補強部材12の外径が大きくなることがなく、可撓性管継手10自体をコンパクトにすることができる。
【0037】
なお、上記実施の形態では、線状補強部材12に連結用の溝16と孔17の両方を形成して管本体11との接着性を向上するようにしたが、いずれか一方だけを形成するようにしても良い。
【0038】
また、線状補強部材12として螺旋状のもので両端部にリング部を備える場合を例に説明したが、これに限らず、リング部のない螺旋状のものや複数のリング状のものを間隔をあけて配置するようにしたもので構成することもでき、この複数のリングを用いる場合にも可撓性管継手として必要個数をゲート及びランナーで一体に成形し、ランナーを支持棒と兼用するようにすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の可撓性管継手の製造方法の一実施の形態にかかる製造された可撓性管継手の一部分を切り欠いて示す直線状及び直角状の正面図である。
【図2】この発明の可撓性管継手の製造方法の一実施の形態にかかる線状補強部材の成形後の概略斜視図である。
【図3】この発明の可撓性管継手の製造方法の一実施の形態にかかる管本体の成形時の線状補強部材の概略斜視図である。
【図4】従来の可撓性管継手の一部分を切り欠いた断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 可撓性管継手
11 管本体
11a 連結部
11b 壁面
12 補強部材
12a リング部
12b 螺旋
13 ゲート
14 ランナー
15 樹脂充填口
16 連結用の溝
17 連結用の孔
P,P 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に連結部を有する管本体と、この管本体の外周に設けられる螺旋状または複数のリング状の線状補強部材とからなりこれら管本体と線状補強部材の硬度が異なる可撓性管継手を製造するに際し、
前記線状補強部材を、螺旋状部または各リング状部と連通するランナーを介して合成樹脂で一体成形した後、当該ランナーで前記線状補強部材を位置決め固定し、前記管本体を合成樹脂で一体成形するようにしたことを特徴とする可撓性管継手の製造方法。
【請求項2】
前記線状補強部材に連結用の孔および/または溝を形成しておき、これら連結用の孔および/または溝に前記管本体の合成樹脂を充填するようにしたことを特徴とする請求項1記載の可撓性管継手の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−284744(P2008−284744A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130483(P2007−130483)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【出願人】(300086193)三和化成工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】