説明

合成樹脂製気泡シートの製造方法

【課題】気泡シートの気泡面同士を張り合わせる際に、気泡部の位置合わせを確実に行う。
【解決手段】凹凸シート13と平坦シート14とが接合され、気体が密閉された多数の気泡部11と気泡部11に囲まれた平面部12とが形成されている合成樹脂製気泡シート10を、気泡部(11)が形成された面同士が対向するように折曲げ部15にて半折りにし、半折りにされた合成樹脂製気泡シート10を両外側から加圧し、加圧された状態の合成樹脂製気泡シート10を融点以上に加熱して、半折された合成樹脂製気泡シート10の対向する面同士を融着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の気泡部が形成された合成樹脂製気泡シートを半折する合成樹脂製気泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多数の突起部が形成された凹凸シートに平坦シートが接合され、気体が密閉された多数の気泡部が形成された合成樹脂製気泡シートが知られている(特許文献1参照)。このような気泡シートは、気泡部の存在によって緩衝効果に優れており、包装材料として多く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−129366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気泡シートはその構造上、面内に気泡部と気泡部が形成されていない平面部が交互に連続しており、気泡部が形成されていない平面部では緩衝効果を発揮することができない。これに対し、2枚の気泡シートを気泡部が形成された気泡面同士を対向させ、一方のシートの気泡部が他方のシートの気泡部間に入り込むように張り合わせることで、一方の気泡シートの気泡部が他方のシートの平面部に位置することとなり、気泡シートにおける気泡部が存在しない面積を極力小さくすることができる。
【0005】
このように2枚の気泡シートを張り合わせる場合、2枚の気泡シートを気泡面同士が対向するように2本の加圧ロール間に供給し、2枚の気泡シートの気泡面同士を張り合わせることが考えられる。しかしながら、2枚の気泡シートを2本の加圧ロール間に供給する場合、一方の気泡シートの気泡部の位置と他方の気泡シートの気泡部の位置とを完全に同調させることは困難であり、2枚の気泡シートの気泡面同士を張り合わせる際に気泡部の位置合わせが難しいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記点に鑑み、気泡シートの気泡面同士を張り合わせる際に、気泡部の位置合わせを確実に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の発明では、凹凸シート(13)と平坦シート(14)とが接合され、気体が密閉された多数の気泡部(11)と前記気泡部(11)に囲まれた平面部(12)とが形成されている合成樹脂製気泡シート(10)を前記気泡部(11)が形成された面同士が対向するように折曲げ部(15)で半折りにする半折工程(20)と、半折りにされた前記合成樹脂製気泡シート(10)を両外側から加圧する加圧工程(40、41)と、加圧された状態の前記合成樹脂製気泡シート(10)を融点以上に加熱して、半折された前記合成樹脂製気泡シート(10)の対向する面同士を融着させる加熱工程(50)とを備えている。
【0008】
このように、1枚の気泡シート(10)を半折して気泡面同士を重ね合わせることで、対向する面に形成された気泡部(11)の位置合わせを精度よく行うことができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、前記気泡部(11)のシート面に垂直な方向から見た断面形状は、前記平面部(12)の形状に対応しており、前記折曲げ部(15)を境に前記気泡部(11)と前記平面部(12)の位置が対応していることを特徴としている。
【0010】
このような構成の気泡シート(10)を用いることで、気泡シート(10)の折曲げ部(15)を境にして形成された気泡部(11)が対向面の気泡部(11)間に入り込むことができる。これにより、折曲げ部(15)を境にした一方の領域の平面部(12)の位置には他方の領域の気泡部(11)が存在することになる。このため、気泡シート(10)のシート面には、気泡部(11)が存在しない部位がほとんどなくなり、シート面のいずれの部位においても緩衝効果を発揮させることができる。
【0011】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は本発明の実施形態の気泡シートを示す平面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】気泡シートを半折する半折装置の概念図である。
【図3】(a)は半折された気泡シートを示す平面図であり、(b)は(a)のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図1〜図3に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の気泡シート10を示しており、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。なお、図1(a)において、斜線で示した部位が気泡部11を示している。
【0015】
図1(a)に示すように、気泡シート10には、気体が封入された気泡部11が多数形成されている。本実施形態の気泡部11は四角柱状に構成されている。気泡シート10のシート面には、気泡部11に加えて、気泡部11に囲まれた部位である平面部12が設けられており、平面部12は気泡部11が形成されていない部位として構成されている。図1(a)に示す例では、平面部12は少なくとも二方向から気泡部11に囲まれるようになっている。気泡シート10では、気泡部11と平面部12とが、市松模様のように2次元的に交互に形成されている。
【0016】
図1(b)に示すように、気泡シート10は、多数の凹凸状突起部が形成された凹凸シート(キャップフィルム)13と、平坦シート(バックフィルム)14とから構成される2層構造の合成樹脂製気泡シートとなっている。凹凸シート13には、多数の四角柱突起部がエンボス加工されており、凹凸シート13の突起部開口側に平坦シート14が接合されている。これにより、凹凸シート13と平坦シート14との間で空気が密閉され、気泡部11が形成される。本実施形態の気泡部11の断面形状(シート面に垂直な方向からみた形状)は、正方形となっている。平面部12は、凹凸シート13と平坦シート14とが接合された部位として構成されている。平面部12は、気泡部11の断面形状と同一形状をしており、本実施形態では、四角形(正方形)となっている。
【0017】
気泡シート10を構成する合成樹脂として、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができ、本実施形態ではポリエチレンを用いている。本実施形態の気泡シート10は、柔軟性を有する薄肉シートから構成され、単位面積当り重量(目付重量)を20〜300グラム/m2としている。
【0018】
図1(a)に示すように、気泡シート10の中央には、気泡部11が形成されていない直線状の部位が設けられており、この直線状部位が折曲げ部15を構成している。折曲げ部15は、気泡シート10のシート幅方向(図1(a)の左右方向)中央付近において、シート長さ方向(図1(a)の上下方向)に沿って設けられている。気泡シート10は、折曲げ部15を境にして2つの領域に区画されている。図1の左側に存在する第1領域Lと図1の右側に存在する右側の第2領域Rは、気泡部11の位置が対称ではなく、第1領域Lの気泡部11aは第2領域の平面部12と対称位置に設けられ、第1領域Lの気泡部11bは第2領域Rの平面部12と対称位置に設けられている。つまり、第1領域Lと第2領域Rでは、気泡部11の位置が1個分ずつずれている。
【0019】
気泡シート10は、折曲げ部15を境にして第1領域Lと第2領域Rの気泡部11同士が対向するように折曲げ可能となっている。このとき、気泡シート10は一方の領域の気泡部11が他方の領域の平面部12に対応する位置に形成されているので、第1領域Lと第2領域Rを重ね合わせる際に、一方の領域の気泡部11が他方の領域の平面部12に入り込むことができる。
【0020】
図2は、気泡シート10を半折する半折装置を示している。図2に示すように、半折装置は、三角板20と一対の送りロール30、31と一対の加圧コンベア40、41と加熱装置50とを備えている。なお、図2では、加熱装置50を破線で示している。
【0021】
半折装置には、気泡シート10がロール状に巻かれた原反供給部16から気泡シート10が供給される。三角板20は、略正三角形の板状部材であり、1つの角部20a(図1における奥側に位置する角部)が原反供給部16から供給された気泡シート10に当接する。三角板20の角部20aは、気泡シート10の幅方向における中央付近の折曲げ部15に当接するようになっており、折り曲げ部15を境にして気泡シート10を二つ折りするようになっている。気泡シート10は、気泡部11同士が対向するように折曲げられる必要があるので、三角板20には、気泡シート10における気泡部11が形成された気泡面側が当接するようになっている。
【0022】
送りロール30、31は、原反供給部16から気泡シート10を引き出すとともに、シート流れ下流側の加圧コンベア40、41に気泡シート10を連続的に供給するものである。送りロール30、31は、三角板20のシート流れ下流側に設けられており、平行に配置された円柱状の一対のロールから構成されている。本実施形態の送りロール30、31は、金属あるいは樹脂からなる芯材の表面に摩擦係数が高い材料(例えばゴム)からなるシートが表面に貼り付けられたニップロールとして構成されている。一対の送りロール30、31は、二つ折りされた気泡シート10を挟み込んだ状態で互いに反対方向に同期回転するように構成されている。
【0023】
加圧コンベア40、41は、送りロール30、31のシート流れ下流側に設けられており、気泡シート10を挟んで対向する位置に配置されており、二つ折りされた気泡シート10を両外側から加圧しながらシート流れ下流側に送り出すように構成されている。加圧コンベア40、41は、それぞれ一対のコンベアロール40a、40b、41a、41bとコンベアベルト40c、41cを備えており、上側に位置する加圧コンベア40のコンベアベルト40aと下側に位置する加圧コンベア41のコンベアベルト41bは、二つ折りされた気泡シート10を挟み込んだ状態で互いに反対方向に同期回転するように構成されている。
【0024】
加熱装置50は、加圧コンベア40、41と同じ位置に設けられており、加圧コンベア40、41で挟み込まれた状態の気泡シート10を加熱するように構成されている。加熱装置50としては、加熱炉(オーブン)や熱風炉を用いることができる。本実施形態では、加熱装置50による加熱温度を、気泡シート10を構成するポリエチレンの融点(120℃)より高い温度としている。加熱装置50による加熱時間は、加圧コンベア40、41の回転速度によって適宜調整される。
【0025】
ここで、本実施形態の半折装置の作動を説明する。まず、送り出し工程と半折工程を行う。一対の送りロール30、31を作動させ、気泡シート10を連続的に下流側に送り出す。
【0026】
送りロール30、31により原反供給部16から引き出された気泡シート10は、三角板20で進行方向を変え、シート流れ方向に沿って、送りロール30、31に向かって流れる。
【0027】
そして、三角板20における気泡シート10が当接する角部20aにより、気泡シート10のシート幅方向中央付近の折曲げ部15で折り目が形成される。三角板20により長さ方向に沿って折り目が形成された気泡シート10は、二つ折りにされた状態で一対の送りロール30、31の間に引き込まれ、さらに送りロール30、31の下流側に送り出される。
【0028】
次に、加圧工程と加熱工程を行う。送りロール30、31の下流側に送り出された気泡シート10は、一対の加圧コンベア40、41の間に供給される。折曲げ部15で二つ折りにされた気泡シート10は、一対の加圧コンベア40、41で加圧されることで、第1領域Lの気泡部11aが第2領域Rの気泡部11b間に入り込み、第2領域Rの気泡部11bが第1領域Lの気泡部11a間に入り込み、第1領域Lと第2領域Rとが重なり合う。
【0029】
加圧コンベア40、41で加圧された状態の気泡シート10は、第1領域Lと第2領域Rとが重なり合った状態で、加熱装置50により加熱される。これにより、気泡シート10の表面層が溶融し、第1領域Lと第2領域Rとが融着される。加熱装置50内を移動する過程で対向する面同士が融着した気泡シート10は、加熱装置50から外部に排出された後で冷却される。
【0030】
図3は、第1領域Lと第2領域Rとが融着した状態の気泡シート10を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B断面図を示している。図3(a)、図3(b)に示すように、折曲げ部15で二つ折りされた気泡シート10は、第1領域Lの気泡部11aと第2領域Rの気泡部11bが交互に並んでいる。つまり、第1領域Lの平面部12の位置には第2領域Rの気泡部11bが存在し、第2領域Rの平面部12の位置には第1領域Lの気泡部11aが存在している。このため、気泡シート10のシート面には、気泡部11が存在しない部位がほとんどなくなり、シート面のいずれの部位においても緩衝効果を発揮させることができる。
【0031】
また、本実施形態では、1枚の気泡シート10を二つ折りして気泡面同士を重ね合わせることで、対向する面に形成された気泡部11の位置合わせを精度よく行うことができる。この結果、気泡シート10が半折され、第1領域Lと第2領域Rとが重なり合う際に、気泡シート10の折曲げ部15を境に形成された気泡部11(11a、11b)がずれることなく対向面の気泡部11間に確実に入り込むことができる。
【0032】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【0033】
例えば、上記実施形態では、気泡部11の断面形状を正方形としたが、気泡部11の断面形状は気泡部11に挟まれた平面部12の形状と同一であればよく、例えば、菱形等の正方形以外の四角形とすることでき、あるいは三角形のような四角形以外の形状とすることができる。
【0034】
また、上記実施形態の半折装置では、三角板20を用いて気泡シート10を半折するように構成したが、三角板以外の手段で気泡シート10を半折するように構成してもよい。
【0035】
また、上記実施形態の気泡シート10を構成する凹凸シート13と平坦シート14を単一材料からなる一層のシートとして構成したが、これに限らず、凹凸シート13と平坦シート14を多層シートとして構成してもよい。例えば表面層にポリオレフィン性樹脂材料を用いて融着性を確保した上で、中間層にガスバリア性フィルムを用いることで、気泡部11からのガス漏れを低減することができる。ガスバリア性フィルムとしては例えばナイロンやEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)を用いることができる。
【0036】
また、上記実施形態では、気泡シート10の気泡部11を折曲げ部15を境にして位置をずらして形成し、気泡部11(11a、11b)が対向面の気泡部11間に入り込むように構成したが、これに限らず、気泡シート10の気泡部11を折曲げ部15を境にして対称位置に形成し、気泡部11同士を接合してもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、柔軟性を有する気泡シート10を二つ折りにして融着させるように構成したが、これに限らず、本発明は曲げ剛性を有する合成樹脂製気泡シート(気泡ボード)にも適用可能である。この場合、単位面積当り重量(目付重量)が300〜3000グラム/m2となる。
【符号の説明】
【0038】
10…気泡シート、11…気泡部、12…平面部、13…凹凸シート、14…平坦シート、15…折曲げ部、20…三角板、40、41…加圧コンベア、50…加熱装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸シート(13)と平坦シート(14)とが接合され、気体が密閉された多数の気泡部(11)と前記気泡部(11)に囲まれた平面部(12)とが形成されている合成樹脂製気泡シート(10)を、前記気泡部(11)が形成された面同士が対向するように折曲げ部(15)で半折りにする半折工程(20)と、
半折りにされた前記合成樹脂製気泡シート(10)を両外側から加圧する加圧工程(40、41)と、
加圧された状態の前記合成樹脂製気泡シート(10)を融点以上に加熱して、半折された前記合成樹脂製気泡シート(10)の対向する面同士を融着させる加熱工程(50)とを備える合成樹脂製気泡シートの製造方法。
【請求項2】
前記気泡部(11)のシート面に垂直な方向から見た断面形状は、前記平面部(12)の形状に対応しており、前記折曲げ部(15)を境に前記気泡部(11)と前記平面部(12)の位置が対応していることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製気泡シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−284858(P2010−284858A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139845(P2009−139845)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】