説明

同軸型真空アーク蒸着源を用いた金属材料の埋め込み方法

【課題】微細な開口部、かつ高アスペクト比を持つトレンチ又はホール内を金属材料で埋め込む方法の提供。
【解決手段】円筒状トリガ電極13と蒸発材料部材12aを有する円柱状カソード電極12とが、円筒状絶縁碍子15を介して同軸状に隣接して固定されて配置され、カソード電極の周りに同軸状にアノード電極11が離間して配置されている同軸型真空アーク蒸着源1を用い、トリガ電極とカソード電極との間にトリガ放電を発生させ、カソード電極とアノード電極との間に間欠的にアーク放電を誘起させ、蒸発材料部材から生成される荷電粒子を真空チャンバー内に放出させ、トレンチ又はホール内へ金属材料を埋め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸型真空アーク蒸着源を用いた金属材料の埋め込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置に配線パターンを形成する際には、スパッタ法やCVD法やメッキ法により、CuやAlのような金属をトレンチやホールへ埋め込む技術が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の場合、CVD法により第1の銅膜を形成し、その上にこの第1の銅膜を電極とした電解メッキ法により第2の銅膜を形成している。
【0003】
しかし、配線パターンの微細化が進むにつれ、スパッタ法やCVD法による埋め込みの場合には、開口部が微細で、かつ3程度のアスペクト比を有するトレンチ又はホールであっても、その内部への埋め込みが困難となり、また、メッキ法による埋め込みの場合には、処理面上に溶剤の残留物が残り、その除去工程が必要になるという問題が生じている。例えば、スパッタ法による埋め込みの場合、埋め込まれた基板の断面SEM像を観察すると、スパッタされて得られる金属粒子の有するエネルギーが小さいために、粒子に成長するものと島状になるものとが観察される。
【0004】
また、配線の微細化に伴い、配線パターンの開口部が小さくなるので、アスペクト比が高くなるほど、メッキ法では、金属材料がトレンチやホールの底部に入り込み難くなってしまい、その結果、配線の信頼性が欠けてしまうという問題も生じている。さらに、スパッタ法では、金属材料で埋め込んでいくにつれて、開口部が塞がれてくると共に、ボイドが発生し、金属材料でトレンチやホールを完全に埋め込むことが出来ないといった問題もある。
【0005】
さらに、高アスペクト比の穴の埋め込みを、誘導結合RF支援マグネトロンを備えたメタル配線スパッタ装置を用いて行う技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この場合、被処理基板にバイアスを印加して、スパッタされた粒子を高アスペクト比の穴内に導入し、穴の埋め込みを行っている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−282572号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平10−204634号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、真空中で、金属材料をトレンチ又はホール内へ埋め込む方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属材料の埋め込み方法は、被処理基板上のトレンチ又はホール内を金属材料で埋め込む方法において、円筒状のトリガ電極と、前記金属材料からなる蒸発材料部材を有する円柱状のカソード電極とが円筒状の絶縁碍子を介して同軸状に隣接して固定されて配置され、前記円柱状のカソード電極の周りに同軸状に円筒状のアノード電極が離間して配置されている同軸型真空アーク蒸着源を備えた真空チャンバーからなる蒸着装置を用い、前記トリガ電極とカソード電極との間にトリガ放電を発生させ、前記カソード電極とアノード電極との間に間欠的にアーク放電を誘起させて、前記蒸発材料部材から生成される荷電粒子を前記真空チャンバー内に放出させ、前記真空チャンバー内に載置した基板上のトレンチ又はホール内を金属材料で埋め込むことを特徴とする。
【0009】
本発明では、同軸型真空アーク蒸着源を用いて、被処理基板上の絶縁膜などへ形成されたトレンチ又はホール内を金属材料で埋め込んでいる。この同軸型真空アーク蒸着源は、スパッタ法に比べて、生成する荷電粒子の持つエネルギーが高いために、荷電粒子がホールなどの深部まで入り込むことができ、開口部が小さく、かつ高アスペクト比のトレンチ部、ホール部へも容易に金属材料を埋め込むことが可能となる。
【0010】
前記金属材料の埋め込み方法において、被処理基板を熱源で加熱することなく、被処理基板上のトレンチ又はホール内を金属材料で埋め込むことを特徴とする。
【0011】
また、前記金属材料の埋め込み方法において使用する金属材料は、C、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、及びWから選ばれた少なくとも1種の材料であることを特徴とする。
【0012】
本発明の金属材料の埋め込み方法はまた、真空雰囲気中で、被処理基板を熱源で加熱することなく、この被処理基板上の絶縁膜に形成されているトレンチ又はホール内を、C、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、及びWから選ばれた少なくとも1種の金属材料で埋め込む方法であって、円筒状のトリガ電極と、前記金属材料からなる蒸発材料部材を有する円柱状のカソード電極とが円筒状の絶縁碍子を介して同軸状に隣接して固定されて配置され、前記円柱状のカソード電極の周りに同軸状に円筒状のアノード電極が離間して配置されている同軸型真空アーク蒸着源を備えた真空チャンバーからなる蒸着装置を用い、前記トリガ電極とカソード電極との間に60V以上400V以下の電圧を印加してトリガ放電を発生させ、前記カソード電極とアノード電極との間にコンデンサと直流電源とを接続して放電電圧を印加して間欠的にアーク放電を誘起させて、前記蒸発材料部材から生成される荷電粒子を前記真空チャンバー内に放出させ、前記真空チャンバー内に載置した基板上のトレンチ又はホール内を前記金属材料で埋め込むことを特徴とする。
【0013】
カソード電極に印加する電圧が60V未満であるとアーク放電しなくなり、400Vを超えると膜応力が大きくなり、剥離が生じてしまう。
【0014】
本発明の金属材料の埋め込み方法はまた、真空雰囲気中で、被処理基板を熱源で加熱することなく、この被処理基板上の絶縁膜に形成されているトレンチ又はホール内を、C、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、及びWから選ばれた少なくとも1種の金属材料で埋め込む方法であって、円筒状のトリガ電極と、前記金属材料からなる蒸発材料部材を有する円柱状のカソード電極とが円筒状の絶縁碍子を介して同軸状に隣接して固定されて配置され、前記円柱状のカソード電極の周りに同軸状に円筒状のアノード電極が離間して配置されている同軸型真空アーク蒸着源を備えた真空チャンバーからなる蒸着装置を用い、前記トリガ電極とカソード電極との間にトリガ放電を発生させ、前記カソード電極とアノード電極との間に間欠的にアーク放電を誘起させて、前記蒸発材料部材から生成される荷電粒子を前記真空チャンバー内に放出させ、前記真空チャンバー内に載置した基板上のトレンチ又はホールの底部及び側面の一部を前記金属材料で埋め込んで下地層を形成した後に、メッキ法によりトレンチ又はホール内の残りの部分を前記金属材料で埋め込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蒸着源として同軸型真空アーク蒸着源を用いることにより、トレンチ又はホール内を金属材料で容易に埋め込むことが出来るという効果を奏する。
【0016】
また、本発明によれば、蒸着源として同軸型真空アーク蒸着源を用いることにより、被処理基板を加熱することなく、トレンチ又はホール内を金属材料で容易に埋め込むことが出来るという効果を奏する。
【0017】
さらに、本発明によれば、同軸型真空アーク蒸着源を用いてトレンチ又はホールを埋め込む際に、真空排気された真空チャンバー内で実施するので、溶剤を使用する必要がなく、残留溶媒などの不純物のない低抵抗の膜を作製出来るという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る金属材料の埋め込み方法の実施の形態によれば、真空雰囲気中で、被処理基板を熱源で加熱することなく、この被処理基板上の絶縁膜に形成されているトレンチ又はホール内を、C、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、及びWから選ばれた少なくとも1種の金属材料を埋め込む方法であって、円筒状のトリガ電極と、これらの金属材料から構成されている蒸発材料部材を有する円柱状のカソード電極とが円筒状の絶縁碍子を介して同軸状に隣接して固定されて配置され、円柱状のカソード電極の周りに同軸状に円筒状のアノード電極が離間して配置されている同軸型真空アーク蒸着源を備えた真空チャンバーからなる蒸着装置を用い、トリガ電極とカソード電極との間に60V以上400V以下の電圧を印加してトリガ放電を発生させ、カソード電極とアノード電極との間に、360〜9000μFの容量を有するコンデンサと直流電源とを接続し、放電電圧を印加して間欠的にアーク放電を誘起させて、蒸発材料から生成される荷電粒子を真空チャンバー内に放出させ、真空チャンバー内に載置した被処理基板上のトレンチ又はホール内を金属材料で埋め込むものである。
【0019】
コンデンサ容量が360〜9000μFの範囲内であれば、所望のアーク放電を誘起させて、トレンチ又はホール内を金属材料で埋め込むことが出来る。この場合、同軸型真空アーク蒸着源をコンパクトにするためには、コンデンサ容量を1800μF以下とすることが好ましく、この容量であっても、ショット数を上げることは出来、ナノ粒子の生成は可能である。
【0020】
蒸着源として同軸型真空アーク蒸着源を用いて金属材料でトレンチ又はホールを埋め込むことにより、スパッタ法により埋め込む場合と比べて、金属粒子の持つエネルギーが高いために、トレンチ又はホールの深部まで入り込むことができるので、開口部が小さく、かつ高アスペクト比の微細なトレンチ又はホールの底部から上部へと容易に金属材料で埋め込むことが可能となる。また、真空中で成膜するので、溶剤を使用する必要もなく、残留溶媒などの不純物のない低抵抗の膜を作製出来る。この開口部が小さく、かつ高アスペクト比の微細なトレンチ又はホールとは、例えば、開口部が20〜5000nm程度で、アスペクト比が0.5〜6程度のものである。
【0021】
本発明で用いる同軸型真空アーク蒸着源の一構造例について、図1を参照して、以下説明する。
【0022】
同軸型真空アーク蒸着源1は、円筒状のアノード電極11と円柱状のカソード電極12と円筒状のトリガ電極13とを有し、カソード電極12とトリガ電極13とは、アノード電極11の内部にアノード電極の内周面と離間して同軸状に配置されている。
【0023】
カソード電極12は、円柱状であり、一端が蒸発材料部材12aで構成され、他端が棒状電極12bで構成されている。この蒸発材料部材12aは、上記した埋め込み用金属材料で構成されており、棒状電極12bの先端に取りつけられ、真空チャンバー(図示せず)内への放出口14側に配置されている。このカソード電極12は、円筒状のトリガ電極13と円筒状の絶縁碍子(以下、ハット型絶縁碍子と呼ぶ)15とに挿通されている。
【0024】
かくして、本発明で用いる同軸型真空アーク蒸着源は、円筒状のトリガ電極13と円柱状のカソード電極12とが円筒状のハット型絶縁碍子15を介して同軸状に隣接して固定されて配置され、円柱状のカソード電極12の周りに同軸状に円筒状のアノード電極11が離間して配置されているように構成されている。
【0025】
ハット型絶縁碍子15は、蒸発材料部材12aとトリガ電極13との間に配置されており、放出口14側から、蒸発材料部材12a、ハット型絶縁碍子15、トリガ電極13の順序で並び、棒状電極12bは、トリガ電極13よりも放出口14から遠い位置に配置されている。
【0026】
なお、カソード電極12とハット型絶縁碍子15とトリガ電極13との3つの部品は、密着させ、図示していないが、ネジなどで固定させて取り付けられている。アノード電極11はステンレス製である。
【0027】
アノード電極11とトリガ電極13とカソード電極12とは、相互に絶縁されており、カソード電極12(棒状電極12b)とアノード電極11との間には、直流電圧源16aとコンデンサユニット16bとを有するアーク電源16が接続され、トリガ電極13にはトリガ電源17が接続され、各電極11、12、13には異なる電圧が印加できるように構成されている。
【0028】
コンデンサユニット16bの両端は、アノード電極11とカソード電極12とに接続され、コンデンサユニット16bと直流電圧源16aとは、並列接続されている。
【0029】
直流電圧源16aは400Vで数Aの電流を流す能力を有しており、コンデンサユニット16bは、一定の充電時間で直流電圧源16aによって充電されるように構成されている。図1には3つのコンデンサを示してあるが、コンデンサの数は、適宜、増減可能である。
【0030】
トリガ電源17は、パルストランスからなり、入力200Vのμ秒のパルス電圧を約17倍に昇圧して3.4kV(数μA)にして出力できるように構成されており、昇圧された電圧を、カソード電極12に対して正の極性で、トリガ電極13に印加できるように接続されている。
【0031】
上記したように構成されている同軸型真空アーク蒸着源1は、図示していないが、所定の真空排気系(例えば、ターボ分子ポンプとロータリポンプとで構成されている。)を有する真空チャンバーの壁面に、放出口14をチャンバー内へ向けて取り付けられ、本発明の金属材料の埋め込みに用いられる。この同軸型真空アーク蒸着源1は、1つでも複数でも、適宜、設置すれば良い。
【0032】
本発明によれば、真空排気し、所定の真空雰囲気が形成されている真空チャンバー内へ、同軸型真空アーク蒸着源1の作動により生成した金属材料の荷電粒子を放出口14から放出して、真空チャンバー内に載置されている被処理基板上へ供給して、被処理基板上のトレンチ部やホール部内に金属材料を埋め込む。アノード電極11と真空チャンバーとは接地電位に接続されている。
【0033】
以下、本発明で用いる同軸型真空アーク蒸着源1の動作例について説明する。
【0034】
先ず、コンデンサユニット16bの容量を1800μFに設定し、直流電圧源16aから200Vの電圧を出力し、その電圧でコンデンサユニット16bを充電し、アノード電極11とカソード電極12との間にコンデンサユニット16bの充電電圧を印加する。蒸発材料部材12aには、棒状電極12bを介して、コンデンサユニット16bが出力する負電圧が印加される。
【0035】
上記したような電圧印加の状態で、トリガ電源17から3.4kVのパルス状のトリガ電圧を出力し、カソード電極12とトリガ電極13との間に印加すると、ハット型絶縁碍子15の表面でトリガ放電(沿面放電)が発生する。カソード電極12とハット型絶縁碍子15のつなぎ目からは電子が放出される。
【0036】
このトリガ放電によってアノード電極11とカソード電極12との間の耐電圧が低下し、アノード電極11の内周面とカソード電極12の外周面(側面)との間にアーク放電が誘起される。
【0037】
コンデンサユニット16bに充電された電荷の放電により、尖頭電流が1800A以上であるアーク電流が200μ秒程度の時間流れ、カソード電極12(すなわち、蒸発材料部材12a)の側面から金属蒸気が放出され、金属のプラズマが形成される。この時、金属の原子状イオンや、クラスタ化した金属により、数ナノメータのナノ粒子が形成される。
【0038】
上記したように、カソード電極12の蒸発材料部材12aと棒状電極12bとはアノード電極11の中心軸線上に配置されており、アーク電源16が、カソード電極12の蒸発材料部材12aとは反対側の棒状電極12bの端部に接続されているので、アーク電流は、棒状電極12bの中心軸線上を流れ、アノード電極11内に磁界が形成される。アノード電極11内に放出された電子は、アーク電流によって形成される磁界により、電流が流れる向きとは逆向きのローレンツ力を受け、放出口14から真空チャンバー内に放出される。
【0039】
カソード電極12の側面から放出された金属蒸気にはイオン(荷電粒子)と中性粒子とが含まれているが、電荷質量比の小さい(電荷が質量に比べて小さい)液滴などの巨大荷電粒子や中性粒子は直進し、アノード電極11の壁面に衝突するが、電荷質量比の大きな荷電粒子は、クーロン力によって電子に引き付けられ、アノード電極11の放出口14から真空チャンバー内に放出される。
【0040】
アノード電極11の放出口14から所定の距離離れた場所には、被処理基板が載置されており、真空チャンバー内に放出された金属蒸気イオンが被処理基板の表面に到達すると、ナノメータオーダーの金属粒子が被処理基板上のトレンチやホールを埋め込む。同軸型真空アーク蒸着源を用いると、メッキ法の場合と異なり、トレンチやホール内部を主体的に埋め込み、その周辺部に付着する量は少ないというメリットがある。
【0041】
以上では、同軸型真空アーク蒸着源を用いれば、ヒーターなどの加熱手段である熱源で被処理基板を加熱することなく、開口部が小さく、かつアスペクト比が高い微細なトレンチやホール内を金属材料で埋め込むことが出来るということについて説明したが、熱源により所定の温度(例えば、常温〜350℃)に加熱した被処理基板を用いる場合でも、加熱することなく埋め込んだ場合と同様に、トレンチやホール内を金属材料で埋め込むことは出来る。
【0042】
1回のトリガ放電でアーク放電が一回誘起され、アーク電流が300μ秒流れる。上記コンデンサユニット16bの充電時間が約1秒である場合、1Hzの周期でアーク放電を誘起させることができる。アーク放電を所定の回数誘起させて、所定のショット数でトレンチやホールを埋め込む。この際、スパッタ法やEB法による埋め込みの場合と比べて、トレンチやホールの周辺部分には、上記したように、ごくわずかな金属膜が形成されるだけであり、それらの余分な金属膜は容易に除去可能である。
【0043】
本発明によれば、上記したようにしてトレンチやホール内を所望の金属材料で埋め込むことが出来るが、この埋め込み工程を途中で止めて、トレンチ又はホールの底部及び側面の一部を埋め込んで下地層を形成した後に、メッキ法により残りの部分を埋め込んでも良い。開口部が小さく、かつアスペクト比が高い微細なトレンチ又はホールを埋め込む場合でも、下地層を形成した後にメッキ法を用いれば、トレンチ又はホールの底部に入り込み難いというメッキ法の問題は、初めからメッキ法により埋め込む場合と比べて少ない。
【0044】
このメッキ法には、電解メッキ法及び無電解メッキ法があるが、電解メッキ法の場合には、下地に電極としてのシード層が必要になる。いずれのメッキ法の場合も、本発明で用いる場合には、公知のメッキ条件で行えば良い。
【0045】
例えば、同軸型真空アーク蒸着源を用いて被処理基板上のトレンチやホールの底部及び側面の一部を金属材料で埋め込み、トレンチ又はホール内に下地層を形成した基板を、所定の温度の無電解メッキ浴(例えば、金属材料がCuの場合は、硫酸銅を主成分とする公知のメッキ浴)中に所定の時間浸漬し、トレンチ又はホールの内部の残りの部分を埋め込めば良い。或いはまた、シード層としての下地層を形成した基板を、公知のメッキ液を使用して、所定の処理温度、所定の電流密度及び所定の処理時間などの条件により、電解メッキ法でトレンチ又はホール内の残りの部分を埋め込めば良い。
【0046】
また、本発明においては、トレンチ又はホール内に金属材料を埋め込む際に、基板にバイアスを印加して、トレンチ又はホール内に金属材料を誘導して埋め込むこともできる。
【0047】
以下、実施例を挙げて、本発明について詳細に説明する。以下の実施例では、金属材料にCu、Al、Wを選び、Si被処理基板上にパターニングされたトレンチ部、ホール部への埋め込みを行った。金属材料も被処理基板も、これらに限定されるものではなく、同様に埋め込みが可能である。
【実施例1】
【0048】
同軸型真空アーク蒸着源((株)アルバック製:ARL−300)を用いて、Si被処理基板上にパターニングされたトレンチ部(開口部(幅):200nm、深さ:1.1μm、アスペクト比(A/R):5.5)へCuを埋め込んだ。この被処理基板を熱源で加熱せずに埋め込みを行い、放電条件は、200V、1800μFに設定した。
【0049】
かくして得られた成膜後の被処理基板の断面SEM像を図2に示す。図2から明らかなように、高アスペクト比を持つトレンチ部へのCu埋め込みが完全に出来ていることが確認できた。
【実施例2】
【0050】
実施例1と同様の手法に従ってAlを埋め込み、被処理基板の断面SEM像を観察したところ、実施例1の場合と同様に埋め込まれていることが確認できた。
【実施例3】
【0051】
実施例1と同様の手法に従ってWを埋め込み、被処理基板の断面SEM像を観察したところ、実施例1の場合と同様に埋め込まれていることが確認できた。
【実施例4】
【0052】
実施例1と同様に、同軸型真空アーク蒸着源((株)アルバック製:ARL−300)を用いて、Si被処理基板上にパターニングされたホール部(開口部(直径):200nm、深さ:1.1μm、アスペクト比:5.5)へのCu埋め込みを行った。この際の放電条件は、実施例1と同様に、200V、1800μFに設定した。
【0053】
かくして得られた成膜後の被処理基板の断面SEM像を確認したところ、実施例1の場合と同様にホール部へのCu埋め込みが完全に出来ていることが確認できた。
【0054】
(比較例1)
スパッタ法を用いて、Si被処理基板上にパターニングされたトレンチ部(開口部(幅):500nm、深さ:1μm、アスペクト比:2)へのCuの埋め込みを行った。
【0055】
かくして得られた成膜後の被処理基板の断面SEM像を図3に示す。図3から明らかなように、Cuがトレンチ部の上部を覆ってしまい、また、トレンチ内にボイドが形成されていることが分かった。開口部が大きく、アスペクト比の低いパターンにおいての上記結果から判断して、さらに微細で、かつ高アスペクト比のトレンチの場合には、埋め込みの早い段階でトレンチ内にボイドが形成されてしまい、埋め込むことが容易ではなくなってしまうことが予想される。
【実施例5】
【0056】
実施例1と同様の手法に従って、トレンチ部の側面の一部及び底部をCuで埋め込み、トレンチ内に下地層を形成した基板(トレンチ部の側面の一部及び底部を埋め込んだ被処理基板の断面SEM像を図4に示す)を、無電解メッキ浴(硫酸銅を主成分とする公知のメッキ浴)中に所定の時間浸漬し、トレンチ内部の残りの部分を埋め込んだ。被処理基板の断面SEM像を観察したところ、実施例1の場合と同様に埋め込まれていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、半導体装置において微細化配線の形成された基板、すなわち、開口部の小さい、かつ高アスペクト比を持つ微細なトレンチやホールの形成された基板でも、トレンチやホール内を不純物の少ない金属材料で容易に埋め込むことが可能であるので、本発明は、例えば次世代半導体装置における配線技術への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明で用いる同軸型真空アーク蒸着源の一構成例を示す模式的構成図。
【図2】同軸型真空アーク蒸着源を用いてトレンチ部内をCuで埋め込んだ場合の被処理基板の断面SEM像を示す写真。
【図3】スパッタ法によりトレンチ部内をCuで埋め込んだ場合の被処理基板の断面SEM像を示す写真。
【図4】トレンチ部の側面の一部及び底部をCuで埋め込んだ場合の被処理基板の断面SEM像を示す写真。
【符号の説明】
【0059】
1 同軸型真空アーク蒸着源 11 アノード電極
12 カソード電極 12a 蒸発材料部材
12b 棒状電極 13 トリガ電極
14 放出口 15 ハット型絶縁碍子
16 アーク電源 16a 直流電圧源
16b コンデンサユニット 17 トリガ電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板上のトレンチ又はホール内を金属材料で埋め込む方法において、円筒状のトリガ電極と、前記金属材料からなる蒸発材料部材を有する円柱状のカソード電極とが円筒状の絶縁碍子を介して同軸状に隣接して固定されて配置され、前記円柱状のカソード電極の周りに同軸状に円筒状のアノード電極が離間して配置されている同軸型真空アーク蒸着源を備えた真空チャンバーからなる蒸着装置を用い、前記トリガ電極とカソード電極との間にトリガ放電を発生させ、前記カソード電極とアノード電極との間に間欠的にアーク放電を誘起させて、前記蒸発材料部材から生成される荷電粒子を前記真空チャンバー内に放出させ、前記真空チャンバー内に載置した基板上のトレンチ又はホール内を金属材料で埋め込むことを特徴とする金属材料の埋め込み方法。
【請求項2】
前記被処理基板を熱源で加熱することなく、被処理基板上のトレンチ又はホール内を金属材料で埋め込むことを特徴とする請求項1記載の金属材料の埋め込み方法。
【請求項3】
前記金属材料が、C、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、及びWから選ばれた少なくとも1種の材料であることを特徴とする請求項1又は2記載の金属材料の埋め込み方法。
【請求項4】
真空雰囲気中で、被処理基板を熱源で加熱することなく、この被処理基板上の絶縁膜に形成されているトレンチ又はホール内を、C、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、及びWから選ばれた少なくとも1種の金属材料で埋め込む方法であって、円筒状のトリガ電極と、前記金属材料からなる蒸発材料部材を有する円柱状のカソード電極とが円筒状の絶縁碍子を介して同軸状に隣接して固定されて配置され、前記円柱状のカソード電極の周りに同軸状に円筒状のアノード電極が離間して配置されている同軸型真空アーク蒸着源を備えた真空チャンバーからなる蒸着装置を用い、前記トリガ電極とカソード電極との間に60V以上400V以下の電圧を印加してトリガ放電を発生させ、前記カソード電極とアノード電極との間にコンデンサと直流電源とを接続して放電電圧を印加して間欠的にアーク放電を誘起させて、前記蒸発材料部材から生成される荷電粒子を前記真空チャンバー内に放出させ、前記真空チャンバー内に載置した基板上のトレンチ又はホール内を前記金属材料で埋め込むことを特徴とする金属材料の埋め込み方法。
【請求項5】
真空雰囲気中で、被処理基板を熱源で加熱することなく、この被処理基板上の絶縁膜に形成されているトレンチ又はホール内を、C、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、及びWから選ばれた少なくとも1種の金属材料で埋め込む方法であって、円筒状のトリガ電極と、前記金属材料からなる蒸発材料部材を有する円柱状のカソード電極とが円筒状の絶縁碍子を介して同軸状に隣接して固定されて配置され、前記円柱状のカソード電極の周りに同軸状に円筒状のアノード電極が離間して配置されている同軸型真空アーク蒸着源を備えた真空チャンバーからなる蒸着装置を用い、前記トリガ電極とカソード電極との間にトリガ放電を発生させ、前記カソード電極とアノード電極との間に間欠的にアーク放電を誘起させて、前記蒸発材料部材から生成される荷電粒子を前記真空チャンバー内に放出させ、前記真空チャンバー内に載置した基板上のトレンチ又はホールの底部及び側面の一部を前記金属材料で埋め込んで下地層を形成した後に、メッキ法によりトレンチ又はホール内の残りの部分を前記金属材料で埋め込むことを特徴とする金属材料の埋め込み方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−242825(P2009−242825A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88134(P2008−88134)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】