説明

回路パターン検査装置、および回路パターン検査方法

【課題】半導体ウェーハに形成された半導体チップのメモリマット部の最周辺部まで高感度に欠陥判定できる検査装置およびその検査方法を提供する。
【解決手段】所定パターンがX方向,Y方向ないしXY両方向に所定のピッチで繰返し形成された回路パターンの形成領域を備えるダイの画像を取得して欠陥を判定する回路パターン検査装置において、前記取得された回路パターンの画像を記憶する画像メモリと、該画像メモリに記憶された画像を、当該画像データを前記X方向,前記Y方向ないし前記XY両方向のいずれかの方向に加算平均して得られる加算平均画像と比較して差分画像を生成し、該差分画像の差分値が予め定められたしきい値より大きい領域を欠陥と判定するプロセッサエレメントと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置や液晶などの回路パターンを有する基板を電子線又は光を用いて検査する検査装置およびその検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線を用いた検査装置は、検査対象の半導体ウェーハに電子線を照射し、発生する二次電子を検出し画像化することで、半導体ウェーハの欠陥を検出するものである。微細な構造を画像化するためには、電子レンズで電子線を細く絞り、半導体ウェーハ上で電子線をスキャンし、二次電子画像を得、検出した画像を同一のパターンに相当する参照画像と比較し、差が大きい領域あるいは場所を欠陥として判定するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような半導体ウェーハの全面を検査する方法では、非常に長い時間がかかり、製造工程のモニタリングとしては使用できない。そこで、半導体ウェーハの二次元的な繰返し性を有する場所と、X方向やY方向のみの繰返し性を有する部分が混在しているパターンが複数存在する対象物の場合は、着目点と繰返しピッチ分だけ離れた比較点との十字比較を行い、何れとも差がある部分のみを欠陥候補として抽出することで、時間の短縮をはかる技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、欠陥がある画像と欠陥のない参照画像を平均化するRIA(Reference Image Averaging)技術により、ノイズを低減することも知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
検査装置の対象とする回路パターンは3年間に4倍の勢いで単位面積当たりの機能を増やしている。これは、パターンを微細化することで実現しており、欠陥が微細である場合には、正常なパターンの信号に含まれるノイズと判別がつきにくくなり、欠陥と正常なパターンとの差異をとったときの欠陥の検出が困難になっている。例えば、メモリデバイスのメモリマット部は、メモリ1ビットに1個のメモリセルを割り当てる必要から、パターンの微細化は極限まで進行している。メモリマット部は冗長回路技術により、微細な欠陥が検出できなくてもデバイス全体としては正常に動作するため、より一層、微細化に拍車がかかっている。一方、メモリマット部以外の周辺回路は、1か所でも不良があるとデバイスとして不良品になる。したがって、周辺回路は、欠陥を発生させないようにすることと、発生した欠陥を必ず検出する必要があるために、パターン寸法はメモリマット部ほど微細化されていない。従って、パターン欠陥の発生個所の分布をみると、周辺回路よりもメモリマット部の方が発生割合が高くなっている。特にメモリマット部の最周辺では、パターン密度が急激に変化することから、露光時の設計寸法からの乖離など製造が極めて困難であり、パターン欠陥の発生率が極めて高くなっている。
【0005】
従来の検査装置は、半導体ウェーハ上には複数の同一パターンを持ったダイがある点に着目し、ダイのパターン同士を比較するダイ比較方式を採用している。ダイ比較の特徴はダイ全体を欠陥判定できるが、一方、ウェーハ上で10mm程度離れた場所同士のパターンを比較することになるので、形成されたパターンが多少異なっているために、欠陥判定性能がやや劣る特徴がある。
【0006】
一方、メモリマット部の繰り返し性に着目し、繰り返しピッチ分離れたパターンを比較するセル比較を採用している。セル比較は繰り返し性を利用しているために、繰り返し性の無い周辺回路、及び繰り返しの端の部分が検査できない欠点があるものの、繰り返しピッチしか離れていない場所同士を比較する為にパターンの類似性は極めて高く、欠陥判定は高感度である特徴がある。また、繰り返し性を利用して複数方向と比較する十字比較方式は、繰り返し性が無い部分を含めて繰り返し性を仮定して検査する為に、繰り返し性が無い正常部が多数欠陥候補点として出力されるために、高い処理能力を持った画像処理システムを要求するため、パフォーマンスに関して十分な配慮がされているとは言えない。
このような状況下では、メモリマット部の最周辺まで高感度に検査することが必要不可欠であるが、従来の検査装置ではこれらの点については十分には配慮されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−258703号公報
【特許文献2】特開平10−89931号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H.Okuda et al.,“Robust Defect Detection Method Using Reference Image Averaging for High Throughput SEM Wafer Pattern Inspection System”, SPIE Vol.6152 61524F-1(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、半導体ウェーハに形成された半導体チップのメモリマット部の最周辺部まで高感度に欠陥判定できる検査装置およびその検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様は、半導体ウェーハに形成されたダイの回路パターンの画像を取得して欠陥を判定する回路パターン検査方法において、回路パターンの繰り返し性に基づいて画像のデータを複数の画像メモリに分配して格納し、画像メモリに格納された画像のデータを繰り返し性の方向に加算平均した合成参照画像と比較して差分画像を生成し、差分画像の差分値が予め定められたしきい値より大きい領域を欠陥と判定し、欠陥の画像のデータと欠陥の座標を含む欠陥情報の複数を統合して出力する構成とする。
【0011】
また、ダイの回路パターンのうち、複数のメモリセルを有するメモリマットの矩形領域の角部の領域で欠陥と判定されたメモリセルは、欠陥とはみなさない構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、メモリマット部の最外周部まで含めて高感度に欠陥判定可能な回路パターン検査装置およびその検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】回路パターン検査装置の全体構成図。
【図2】欠陥判定部における信号処理の内容を示す機能ブロック図。
【図3】半導体ウェーハの平面図。
【図4】回路パターン検査装置を使用するときの手順を示すフローチャート。
【図5】試し検査における画像処理の説明図。
【図6】FR−RIA技術の説明図。
【図7】差分の演算を説明する差画像と差分のグラフ。
【図8】図3に示したメモリマットの一部を切り出した平面図を用いたフローチャート。
【図9】出力された欠陥情報が表示されたGUIの一例を示す画面図。
【図10】試し検査における画像処理の説明図。
【図11】2方向セル比較技術を説明するダイのメモリマットの平面図。
【図12】ダイのメモリマットの平面図。
【図13】ダイのメモリマットの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明の実施態様を説明する。なお、以下の説明では、電子線を用いた回路パターンの検査装置の場合を例示したが、画像比較処理と欠陥判定処理については、回路パターンの光学式検査装置の場合でも同様であるので、説明を省略する。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明による第1の実施例を図面を参照しながら説明する。図1は、回路パターン検査装置の全体構成図である。図1において、回路パターン検査装置は、走査型電子顕微鏡を応用した装置であって、その主要な構成は、内部が真空に保持される電子光学カラム1,電子2を発生する電子源11,電子2を偏向する偏向器3,電子2を絞る対物レンズ4,電界強度を制御する帯電制御電極5,回路パターンを持った半導体ウェーハ6をXY方向に移動させるXYステージ7,半導体ウェーハ6の高さを計測する高さセンサ8,半導体ウェーハ6を保持する試料台9,電子2の照射により半導体ウェーハ6から発生した二次電子や反射電子等の二次信号10を収束させる収束光学部12,二次信号を検出するセンサ13,センサ13で検出された信号をデジタル信号14に変換するAD変換器15,デジタル信号14を画像処理し欠陥情報16を抽出する欠陥判定部17,マイクロプロセッサとメモリを備え欠陥判定部17から送られた欠陥情報16を受け取るとともに、装置全体を制御する全体制御部18,ユーザの指示を全体制御部18に伝えるとともに装置や欠陥等に関する情報を表示するコンソール19,半導体ウェーハ6の光学像を撮像する光学顕微鏡20,電子光学条件の詳細調整をするために半導体ウェーハ6とほぼ同一の高さに設定された標準試料片21で構成されている。
【0016】
なお、図が煩雑になるため、全体制御部18からの制御信号線を一部省略して記載しているが、全ての部分を制御できる構成としている。また、電子2を細く絞るために対物レンズ4の他に設けられる収束レンズ、半導体ウェーハ6で発生した二次信号10の軌道を変える偏向器,電子光学カラム1の内部を真空に保持するための真空排気装置,半導体ウェーハ6を電子光学カラム1の外部から内部へ搬送させるための搬送装置は省略している。
【0017】
図2は、欠陥判定部17における信号処理の内容を示す機能ブロック図である。デジタル信号14はデジタル値の列であるが、欠陥判定部17は、デジタル信号14を二次元のデジタル画像のように取り扱う。欠陥判定部17は、マイクロプロセッサ,LSI(Large Scale Integration),FPGA(Field Programmable Gate Array)などの演算素子とメモリとから構成されている。そして、本発明の実施例では、デジタル信号14を記憶しておく画像メモリ30,画像メモリ30に記憶したディジタル画像を領域情報に従って分配する画像分配部31,分配された部分的な画像情報を処理して部分領域に存在する欠陥を判定する複数のPE(Processor Element)32,複数のPE32で処理された部分欠陥情報33を統合して欠陥情報16を出力する情報統合部34で構成されている。
【0018】
図3は、半導体ウェーハの平面図である。図3(a)に示すように、半導体ウェーハ6は、直径200mmから300mm、厚さ1mm程度の円盤形状で、表面に同時に数百から数千個の製品が形成される。図では、簡略化のために、ダイとよぶ半導体チップの大きさを大きくして記載している。図3(b)に示すように、回路パターンは、ダイ40と呼ばれる1個の製品分の矩形の中に形成されており、一般的なメモリデバイスの場合、ダイ40のパターンレイアウトは、メモリマット群41が例えば4個で構成されている。図3(c)に示すように、メモリマット群41は、100×100個程度のメモリマット42で構成されている。さらに、図3(d)に示すように、メモリマット42は、二次元方向に繰り返し性を持った数100万個のメモリセル43で構成されている。
【0019】
図4は、回路パターン検査装置を使用するときの手順を示すフローチャートである。図4(a)と図1を用いて、検査手順や条件を定めるレシピを作成する手順を説明する。はじめに、オペレータが図1に示すコンソール19で指令することで、全体制御部18に予め定められた標準レシピを読込み、半導体ウェーハ6をロードし、試料台9に搭載する(ステップ401)。次に、電子光学系の条件を設定する(ステップ402)。電子光学系の条件は、例えば、電子源11,偏向器3,対物レンズ4,帯電制御電極5,収束光学部12,センサ13,AD変換器15の制御値である。標準試料片21の画像を生成し、標準レシピで設定されている制御値に補正を加えて所望の値にする。
【0020】
次に、アライメント用のパターンとその座標を登録し、アライメント条件を設定する(ステップ403)。例えば、半導体ウェーハ6には、予め座標が既知である半導体ウェーハ6のアライメント用のパターンが形成されており、その座標を入力する。あるいは、図3(a)に示した半導体ウェーハ6の周端に近いダイを4個選択し、そのダイに形成されているアライメント用のパターンを、コンソール19の画面に表示された半導体ウェーハ6の模式図であるウェーハマップ上で指定する。
【0021】
次に、検査対象とする検査領域情報を設定する(ステップ404)。半導体ウェーハ単位に検出光量がばらつくので、一定の条件で検査する為に、検出光量のキャリブレーションに適切な画像を取得する座標点を選択することで、初期ゲインとキャリブレーション座標点を設定する(ステップ405)。次に、オペレータがコンソール19で検査領域,画素寸法,加算回数を選択し、これらの条件が全体制御部18に設定される(ステップ406)。検査領域の指定方法は、例えば、特開平10−162143号公報の図12から図14に記載されたように、コンソール19の画面に表示された標準試料片21の画像または半導体ウェーハの模式的な図形の矩形領域をパーソナルコンピュータのマウスをドラックするように行う。例えば、図3(d)に示したメモリセル43の繰り返しがある領域として、メモリマット42のレイアウトを長方形で指定し、図3(c)に示したメモリマット42の長方形の繰り返しとしてメモリマット群41を設定する。
【0022】
次に、設定条件の正しさを確認する目的で、試し検査を行う(ステップ407)。図5は、試し検査における画像処理の説明図で、ダイの平面図と画像メモリ30のデータ記憶領域を模式的に表したものである。試し検査の動作は、図5を用いて説明する。指定ダイの前後1ダイ分の計3ダイ分の移動長さを持ち、図1に示した偏向器3で走査可能な幅を有する細長い長方形の領域を、ストライプ領域51とよび、斜線で示す。オペレータが試し検査を行う試し検査座標50を指定する。図1に示した全体制御部18は、XYステージ7を試し検査座標50を含むストライプ領域51で移動させ、この移動に同期して偏向器3を走査させて、半導体ウェーハ6で発生する二次信号10がセンサ13で検出される。この時、高さセンサ8で検出した半導体ウェーハ6の高さに基づいて、対物レンズ4の励磁電流値を制御することにより、焦点位置を補正する。センサ13で検出されたアナログ信号は、AD変換器15でデジタル信号14に変換され、欠陥判定部17で欠陥の有無の情報である欠陥情報16が判定される。判定された欠陥情報16は、全体制御部18の図示しない記憶装置に一旦格納し、欠陥の分布をコンソール19上にマップ形式で表示する。
【0023】
欠陥判定部17は、以下の手順で動作する。即ち、図5に示すストライプ領域51から得られたデジタル信号14を、図2に示した画像メモリ30にダイごとに格納する。格納されたデータは、例えば幅が128画素の8個のチャンネルに分割されている。非特許文献1に記載された画像メモリ30のメモリセルの繰り返し性を利用した画像の平均化技術FR−RIA(Full Region-Reference Image Averaging)技術を利用し、画像メモリ30の各チャンネルの同一領域に、ダイ内の指定領域のデータを1対1に格納する。画像分配部31は、チャンネル内のダイ内の座標が、一定値(X0)から128ライン分の画像データ53A,53B,53Cを同一のPE32に領域52A,52B,52Cに対応させて分配する。ダイ内座標が同一の指定領域の画像は同一であり、欠陥がなければ画像データの差をとっても欠陥が抽出されない。3つの指定領域のうちのどれかに欠陥があれば、画像データの差をとると欠陥が抽出され、どの差により欠陥が抽出されたかによって、3つのうちのどの画像データに欠陥があるのかがわかる。
【0024】
図6は、FR−RIA技術の説明図で、図3に示したメモリマット42の平面図と、その一部を切り出した平面図を用いたフローチャートである。メモリマット42を定義する長方形領域に対して、L寸法61だけ拡張した領域62,領域62からM寸法63だけ縮小した領域を考える。L寸法61は、設定した領域がずれる可能性のある上限を示し、M寸法63は、L寸法61の2倍とする。領域62は、3つの領域に分割できる。すなわち、領域62の角からM寸法63内にある角領域64a,64b,64c,64d、上下の辺からM寸法内にある上下端領域65a,65b、その他の領域66である。角領域64は、領域のずれを考慮すると、メモリマット42内の角が、領域内の任意の場所に移動する可能性があり、繰り返し性が期待できない領域である。上下端領域65は、少なくともX方向には繰り返し性が期待できる領域である。その他の領域66は、Y方向には繰り返し性が期待できる領域である。
【0025】
PE32に分配された「128画素×128ライン」の検出画像68が、領域A67の場合には、分配された画像の全ての画素はY方向に繰り返し性を持っている。そこで、Y方向に繰り返しピッチ分の画像を加算平均した画像を一旦作成し、加算平均した画像を再配置することで、加算平均画像69を生成するY−RIA処理を行う。Y−RIA処理は、FR−RIA処理をY方向へ限定したものである。また、PE32に分配された「128画素×128ライン」の検出画像68が、領域B71の場合には、分配された画像の全ての画素はX方向に繰り返し性を持っている。そこで、X方向に繰り返しピッチ分の画像を加算平均した画像を一旦作成し、加算平均した画像を再配置することで、加算平均画像69を生成するX−RIA処理を行う。X−RIA処理は、FR−RIA処理をX方向へ限定したものである。検出画像68と加算平均画像69との差分として、差画像73を求める演算を行う。差画像73の差分値のうち、設定された欠陥判定しきい値より大きい領域を欠陥74として判定する。
【0026】
図7は、差分の演算を説明する差画像73と差分のグラフである。差分の演算を、図7で説明する。差画像73には、欠陥74aと、欠陥ではないが差分の大きい74bの2つの領域が含まれているとする。断面X1−X2について、差分値のグラフを作成すると図7に示すようになる。画像のひとつの画素は、黒から白までの階調値で表され、縦軸は検出画像の階調値の差分である。予め設定された欠陥判定しきい値75より大きい差分値76の領域を欠陥と判定する。欠陥74aの位置すなわちXY座標と、差分値76の情報を、図2に示した部分欠陥情報33として出力する。これにより、図6に示した角領域64a,64b,64c,64d以外の領域62に含まれる領域は、欠陥の有無を判定することが可能となる。
【0027】
ダイ比較による欠陥判定の例を、図8を用いて説明する。図8は、図3に示したメモリマット42の一部を切り出した平面図を用いたフローチャートである。連続して隣接する3個のダイについて、座標が同一の領域のメモリマットの差分を演算する。すなわち、連続する3個のダイの、ダイ原点からの距離がX0である3枚の「128画素×128ライン」の検出画像80A,80B,80Cが、同一のPE32に分配されている。分配に関しては、図5で説明したとおりである。検出画像80Aと検出画像80Bの差画像81A、及び、検出画像80Bと検出画像80Cの差画像81Bを演算する。差画像81A,81Bについて、図7で説明したように欠陥判定しきい値より大きい差分値の領域を欠陥と判定する。図8の例では、差画像81A,81Bの両方に欠陥が検出されたので、欠陥は検出画像80Bに存在することがわかる。判定結果を、図2に示した部分欠陥情報33として出力する。
【0028】
図2に示した情報統合部34は、全てのPE32から送られた部分欠陥情報33を集計し、FR−RIA処理、又は、ダイ比較のいずれかで欠陥と判定された欠陥の情報を、欠陥情報16として出力する。
【0029】
図9は、出力された欠陥情報が表示されたGUIの一例を示す画面図である。図5に示したストライプ領域51の画像に対応した模式図が画面の左側に、縦方向に複数表示され、この画面の領域をストライプマップ90とよぶ。このストライプマップ90は、検出画像や差画像ではなく、欠陥の位置を示すために便宜的に生成された模式的な図である。ストライプマップ90には、検出された欠陥74の位置が、記号化されて表示されている。
画面の右側には、画像表示領域91が設けられ、欠陥74の記号をクリック等で指定すると、その欠陥の検出画像,参照画像,差画像が表示される。前述のFR−RIA技術を用いて画像の平均化を行うことにより、検出画像,参照画像のノイズが低減され、ノイズの少ない画像同士で差分を行うので、欠陥を認識し易い差画像を得ることができる。画像表示領域91に隣接して欠陥情報表示領域が設けられ、画像表示領域91に表示されている欠陥の座標,投影長,差分値,濃淡差,背景光量等の情報が数値化されて表示される。また、欠陥の種類を自動分類した場合、またはオペレータが分類を入力した場合には、その分類が表示される。ストライプマップ90に表示された欠陥74の記号の形状または色は、分類によって分けられているので、オペレータは、目視で欠陥の分類がただちに認識できる。
【0030】
図7に示した欠陥判定は、検出画像を用いた演算処理なので、差分値の欠陥判定しきい値75を変更して、その結果を図9に示す画面に表示させることができる。オペレータが表示しきい値調整ツールバー93を移動させることで、欠陥判定しきい値75の値を変更できる。
【0031】
一定量の分類をした後、表示しきい値調整ツールバー93で表示しきい値を変更し、表示しきい値以上の差分値を持った欠陥のみを表示する。表示しきい値調整ツールバー93で変更したしきい値に変更して検査をすれば、表示されている欠陥のみを検出可能になる特性を持たせてあり、容易に正しいしきい値を知ることができる。メモリマット部のすぐ外周部分に、メモリマットのピッチの例えば4倍のピッチのパターンが存在し、この部分で正常部を欠陥と判定した場合には、判定条件設定タブを選択して判定条件設定領域94を表示し、状況に応じ、M寸法,M寸法内部の場合の繰り返しピッチのメモリマット内部に対するピッチ倍数等を変更し、正しい設定をする。
【0032】
図4(a)に戻り、手順を説明すると、以上述べた作業により検査条件を確認し(ステップ408)、検査条件が満足できるものであるか判定し(ステップ409)、不足であればステップ406へ戻り、満足できるものであれば基準累積情報を確定して確認作業を終了し(ステップ410)、レシピを保存し、半導体ウェーハを回路パターン検査装置からアンロードして、レシピ作成を終了する(ステップ411)。
【0033】
次に、検査手順を、図4(b)を用いて説明する。検査は、図4(a)に示した手順で作成したレシピに従って行われる。オペレータがコンソール19で検査の実行を指令すると、全体制御部18は検査対象の半導体ウェーハ6の属性に適切なレシピを選択し、全体制御部18の図示しないマイクロプロセッサの演算メモリにそのレシピを読み込む(ステップ412)。半導体ウェーハ6を回路パターン検査装置へロードし、試料台9に搭載する(ステップ413)。電子源11,偏向器3,対物レンズ4,帯電制御電極5,収束光学部12,センサ13,AD変換器15の光学系条件を設定し(ステップ414)、標準試料片21の画像を検出し、レシピに基づく適正値に補正する。レシピに設定された条件で半導体ウェーハ6のアライメントを行い(ステップ415)、キャリブレーション用の画像を取得し、光量不足や光量過多などの発生しない適切な光量になるようにセンサ13のゲインなどの画像取得条件が設定される(ステップ416)。
【0034】
次に、オペレータにより予め設定された検査領域について、画像検出を行い欠陥判定を行う。レシピの設定条件に基づき、XYステージ7の移動に同期して偏向器3を走査し、半導体ウェーハ6から発生する二次信号10をセンサ13で検出する。この時、高さセンサ8で検出した半導体ウェーハ6の高さに基づいて、対物レンズ4の励磁電流値を制御することで焦点位置を補正する。センサ13で検出したアナログ信号をAD変換器15でデジタル信号14に変換し、検出画像を得る。取得した検出画像から、レシピ作成時の試し検査と同様な手順で差画像を生成し、差分値を求め、欠陥判定を行う(ステップ417)。欠陥が検出されたら、欠陥の信号を累積し、欠陥を選別し、欠陥が真の欠陥かどうかの判定や分類を行う(ステップ418)。欠陥判定結果である欠陥情報16と検査条件を図示しない記憶装置へ格納し(ステップ419)、半導体ウェーハ6をアンロードし、検査を終了する(ステップ420)。
【0035】
図6に示した例では、検査領域を、角領域64,上下端領域65、その他の領域66の3つの領域に分割したが、4つの領域に分割してもよい。すなわち、その他の領域66を、領域62の外周からM寸法以内の領域とそれ以外の領域に分割するものである。領域62の外周からM寸法以内の領域はY方向のみに繰り返し性があり、それ以外の領域はX方向及びY方向の2方向に繰り返し性がある。加算動作を2方向に繰り返し性がある場合には2方向の繰り返し性を利用して加算平均することで、ノイズ成分を低減させ、より高感度な検査が可能となる。
【0036】
以上述べた本発明の第1の実施例によれば、FR−RIA技術を用いてメモリマット部の角部を除いて欠陥判定するので、差画像を生成するときのノイズの影響を最小限にすることができ、極めて高感度にメモリマット周辺まで欠陥判定を行うことができる。また、ダイ比較で欠陥判定した結果と合わせることで、メモリマット角部や周辺回路を含めたダイ全面の検査ができ、検査不可能な領域が無くなるという優れた効果をもたらす。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明の第2の実施例を、図面を参照しながら説明する。回路パターン検査装置の全体構成は第1の実施例で説明した回路パターン検査装置の全体構成,欠陥判定部の構成,検査手順は同一であるので、以下、第1の実施例と異なる内容を説明する。
【0038】
図10は、図5と同じく、試し検査における画像処理の説明図で、ダイの平面図と画像メモリ30のデータ記憶領域とストライプ領域の画像取得部を模式的に表したものである。はじめに、図5において、試し検査を行う試し検査座標50を指定して、XYステージ7を試し検査座標50を含むストライプ領域51で移動させ、画像信号を取得する。図1に示した欠陥判定部17は、ストライプ領域51のデジタル信号14を図2に示した画像メモリ30に格納する。格納されたデータは、幅が128画素の8個のチャンネルに分割されている。画像メモリ30のメモリセルの繰り返し性を利用した2方向セル比較技術を利用し、画像メモリ30の各チャンネルの同一領域に、ダイ内の指定領域のデータを1対1に格納する。図10(c)に示すストライプ領域51から、メモリマット42の3個分を含むP寸法100の長さの画像データ101を、図2に示した画像分配部31は、PE32に分配する。P寸法100のピッチは、メモリマット42のピッチに一致させる。これを、図5に示したように、隣接したダイの領域52A,52B,52Cについて行う。
ダイ内座標が同一の指定領域の画像は同一であり、欠陥がなければ画像データの差をとっても欠陥が抽出されない。3つの指定領域のうちのどれかに欠陥があれば、画像データの差をとると欠陥が抽出され、どの差により欠陥が抽出されたかによって、3つのうちのどの画像データに欠陥があるのかがわかる。
【0039】
図11は、2方向セル比較技術を説明するダイのメモリマットの平面図である。メモリセル43が配列したメモリマット42を定義する長方形の領域に対して、L寸法61だけ拡張した領域62を考える。図中の74は欠陥である。L寸法61は、設定した領域がずれる可能性のある上限を示している。PE32に分配された「128画素×Pライン」を分割した「128画素×128ライン」の検出画像は、パターン110,111,112,113の4種類のパターンに分類できる。即ち、パターン110は、X方向に繰り返し性は有るがY方向に繰り返し性が無いX方向繰り返しパターン、パターン111は、Y方向に繰り返し性は有るがX方向に繰り返し性が無いY方向繰り返しパターン、パターン112は、X方向にもY方向にも繰り返し性が無い非繰り返しパターン、パターン113は、X方向にもY方向にも繰り返し性を有するXY方向繰り返しパターンである。したがって、各パターンの繰り返し性に応じて、比較する参照画像を選択する。
【0040】
本実施例では、ひとつの画像に4個のメモリセル43が含まれるとして、メモリセルのX方向の繰り返しピッチの4倍の寸法をQx、Y方向の繰り返しピッチの4倍の寸法をQyとすると、A領域はパターン110であるので、繰り返しピッチQxの寸法分のX方向のパターンを参照画像として比較する。パターン111,113のB領域では、繰り返しピッチQyの寸法分のY方向のパターンを参照画像として比較する。パターン112は、いずれの方向も参照画像としてよい。
【0041】
図12は、図11と同じくダイのメモリマットの平面図である。角部の領域121では、本来比較できないパターンと比較しているので、正常部であるにもかかわらず差分の大きい領域120が発生する。この差分の大きい領域120は、角部からX方向は寸法L+Qx、Y方向は寸法L+Qyの角部の領域121の内部である。角部の領域121で発生した差分が大きい領域は欠陥とはみなさないように決める。一方、領域121に含まれない真の欠陥122は、部分欠陥情報33として出力される。
【0042】
図13は、ダイのメモリマットの平面図で、メモリセルの比較を行うマット比較の手順を示す。図2に示した画像メモリ30に画像データを分配するときは、マットピッチR130を基準とすることにより、PE32に3個のメモリマットの画像データが分配される。これらのパターンは、欠陥がなければ同一なので、3個の画像データ内の同一の個所を比較することにより、メモリセルの比較ができる。すなわち、図13に示すように、比較A131,比較B132,比較C133を行い、図7に示したような欠陥判定しきい値75以上の差分値の画像を欠陥として判定し、部分欠陥情報33として出力する。
【0043】
図2に示した情報統合部34は、全部のPE32からの部分欠陥情報33を集計し、2方向セル比較、又はマット比較のいずれかで欠陥と判定された欠陥の情報を、欠陥情報16として出力する。出力された欠陥情報が表示されるGUI画面や、検査条件の設定動作は、第1の実施例と同一であるので、説明を省略する。
【0044】
本発明の第2の実施例によれば、2方向セル比較技術によりメモリマット部の角部を除いて欠陥判定できるので、メモリマット周辺まで欠陥判定が可能となる。また、マット比較で欠陥判定した結果と合わせて出力するので、メモリマット角部を含めたメモリマット部全面の検査を行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 電子光学カラム
6 半導体ウェーハ
16 欠陥情報
17 欠陥判定部
18 全体制御部
19 コンソール
30 画像メモリ
31 画像分配部
32 PE
33 部分欠陥情報
34 情報統合部
40 ダイ
41 メモリマット群
42 メモリマット
43 メモリセル
50 試し検査座標
51 ストライプ領域
53 画像データ
68,80 検出画像
69 加算平均画像
74 欠陥
75 欠陥判定しきい値
76 差分値
81 差画像
90 ストライプマップ
91 画像表示領域
92 欠陥情報表示領域
93 表示しきい値調整ツールバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定パターンがX方向,Y方向ないしXY両方向に所定のピッチで繰返し形成された回路パターンの形成領域を備えるダイの画像を取得して欠陥を判定する回路パターン検査装置において、
前記取得された回路パターンの画像を記憶する画像メモリと、
該画像メモリに記憶された画像を、当該画像データを前記X方向,前記Y方向ないし前記XY両方向のいずれかの方向に加算平均して得られる加算平均画像と比較して差分画像を生成し、該差分画像の差分値が予め定められたしきい値より大きい領域を欠陥と判定するプロセッサエレメントと、を備えることを特徴とする回路パターン検査装置。
【請求項2】
所定パターンがX方向,Y方向ないしXY両方向に所定のピッチで繰返し形成された回路パターンの形成領域を備えるダイの画像を取得して欠陥を判定する回路パターン検査方法において、
前記取得された回路パターンの画像を画像メモリに格納し、
該画像メモリに格納された画像を、当該画像データを前記X方向,前記Y方向ないし前記XY両方向のいずれかの方向に加算平均して得られる加算平均画像と比較して差分画像を生成し、該差分画像の差分値が予め定められたしきい値より大きい領域を欠陥と判定することを特徴とする回路パターン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−19220(P2012−19220A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167981(P2011−167981)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【分割の表示】特願2008−57153(P2008−57153)の分割
【原出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】