説明

回転ロールの汚れ除去機構

【課題】回転ロールを洗浄するための洗浄液の使用量を低減する。
【解決手段】回転ロール90に,保持ブロック110を取り付け,保持ブロック110の内部には,回転ロール90の外周面の円周に環状に接触するシールリング111を設ける。保持ブロック110は,移動機構120により回転ロール90の軸方向に移動自在にする。回転ロール90の汚れを除去する際には,保持ブロック110が回転ロール90の一端部側から他端部側に移動する。これにより,シールリング111が回転ロール90の表面の汚れを掻き取って除去する。回転ロール90の他端部側に移動されたシールリング111は,ノズルからの洗浄液により洗浄される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ノズルから基板に塗布液が吐出される前に,ノズルから塗布液が供給される回転ロールの汚れ除去機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば,液晶ディスプレイの製造プロセスのフォトリソグラフィ工程では,ガラス基板上にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布処理が行われている。
【0003】
このレジスト塗布処理は,通常レジスト塗布処理ユニットにおいて行われ,例えばステージ上にガラス基板が載置され,そのガラス基板の上面をノズルが移動しながらレジスト液を吐出することにより行われている。
【0004】
ところで,上述したようなレジスト塗布処理ユニットでは,塗布時のノズルの吐出状態を安定させるため,塗布前にノズルの先端部を回転ロールの上部表面に近づけ,回転ロールを回転させながら,ノズルから回転ロールにレジスト液を試し出しする処理が行われる。
【0005】
また,レジスト液で汚れた回転ロールをそのままにしておくと,次の試し出しの際にノズルが汚れるので,試し出しの終了後に,回転ロールを洗浄する処理が行われている。従来より,この回転ロールの洗浄処理は,タンクに貯留された洗浄液内に回転ロールの下部を浸漬し,回転ロールを回転させることによって行われていた(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平10−76205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,上述したようにタンクに洗浄液を貯留して回転ロールを洗浄する場合,回転ロールが入るような容積の大きいタンクに洗浄の度に毎回洗浄液を入れ替える必要があるので,洗浄液の使用量が著しく多くなっていた。このため,レジスト塗布処理ユニットのランニングコストが高くなっていた。
【0008】
本発明は,かかる点に鑑みてなされたものであり,回転ロールを洗浄する洗浄液の使用量を低減し,レジスト塗布処理ユニットなどの塗布処理ユニットのランニングコストを低減することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は,ノズルから基板に塗布液が吐出される前に,ノズルから塗布液が供給される回転ロールの汚れ除去機構であって,回転ロールの外周面の円周に環状に接触する接触部材と,前記接触部材を前記回転ロールの軸方向に沿って移動させる移動機構と,を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば,接触部材を回転ロールの軸方向に沿って移動させて,回転ロールの表面の汚れを掻き取ることができる。したがって,従来のようにタンクに洗浄液を溜めて回転ロールを洗浄する必要がないので,洗浄液の使用量を低減し,コストを低減できる。
【0011】
前記回転ロールの汚れ除去機構は,前記接触部材の進行方向前方側の前記回転ロールの表面に洗浄液を吐出する洗浄ノズルを有するようにしてもよい。
【0012】
前記洗浄ノズルは,前記回転ロールの上面に洗浄液を吐出できるようにしてもよい。
【0013】
前記洗浄ノズルは,回転ロールの外周面を囲むように複数箇所に設けられていてもよい。
【0014】
前記洗浄ノズルは,前記接触部材の移動方向の両側に設けられていてもよい。
【0015】
前記接触部材は,前記移動機構により回転ロールの軸方向に移動する保持部材によって保持されており,前記洗浄ノズルは,前記保持部材に取り付けられていてもよい。
【0016】
前記接触部材は,前記回転ロールの軸方向に沿って複数設けられていてもよい。
【0017】
前記回転ロールには,2つの接触部材が近接して設けられ,前記2つの接触部材は,その間に隙間が形成されるように配置され,前記2つの接触部材の隙間には,回転ロールの表面に洗浄液を供給する洗浄液供給部が形成されていてもよい。
【0018】
前記洗浄液供給部は,前記回転ロールの外周面の円周に沿って環状に形成されていてもよい。
【0019】
前記洗浄液供給部には,洗浄液供給配管と洗浄液排出配管が接続されていてもよい。
【0020】
前記2つの接触部材は,前記回転ロールの外周面の円周を囲むブロック内に設けられ,前記洗浄液供給部は,前記回転ロールの外周面に対向する前記ブロックの内周面に溝状に形成されていてもよい。
【0021】
前記回転ロールの汚れ除去機構は,前記洗浄液供給部に洗浄液を供給するための負荷を検出し,その検出結果に基づいて,前記接触部材の交換の要否を判断する制御部を有していてもよい。
【0022】
前記ブロックの移動方向の両側面には,前記回転ロールの表面をプリウェットするための洗浄液を当該回転ロールの表面に供給するプリウェット用洗浄液供給部が形成されていてもよい。
【0023】
別の観点による本発明は,ノズルから基板に塗布液が吐出される前に,ノズルから塗布液が供給される回転ロールの汚れ除去機構であって,回転ロールの外周面の円周に沿って当該円周の一部に接触する接触部材と,前記接触部材を前記回転ロールの軸方向に沿って移動させる移動機構と,を有することを特徴とする。
【0024】
発明者らの知見によると,本発明の汚れ除去機構によれば,接触部材が回転ロールの外周面の円周の一部に接触する場合でも,回転ロールを回転させて,接触部材を回転ロールの軸方向に沿って複数回の往復移動をさせることにより,回転ロールの表面の汚れを掻き取ることができる。また,接触部材が回転ロールの外周面の円周の一部のみに接触しているので,接触部材を回転ロールから取り外しやすくなり,接触部材のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0025】
前記回転ロールの汚れ除去機構は,前記接触部材の進行方向前方側の前記回転ロールの表面に洗浄液を吐出する洗浄ノズルを有するようにしてもよい。
【0026】
前記洗浄ノズルは,前記回転ロールの外周面に向けて複数箇所に設けられていてもよい。
【0027】
前記洗浄ノズルは,前記接触部材の移動方向の両側に設けられていてもよい。
【0028】
前記接触部材は,前記移動機構により前記回転ロールの軸方向に移動する保持部材によって保持されており,前記洗浄ノズルは,前記保持部材に取り付けられていてもよい。
【0029】
前記接触部材は,前記回転ロールの軸方向に沿って複数設けられていてもよい。
【0030】
前記回転ロールには,2つの接触部材が近接して設けられ,前記2つの接触部材は,その間に隙間が形成されるように配置され,前記2つの接触部材の隙間には,回転ロールの表面に洗浄液を供給する洗浄液供給部が形成されていてもよい。
【0031】
前記洗浄液供給部は,前記回転ロールの外周面の円周に沿って形成されていてもよい。
【0032】
前記洗浄液供給部には,洗浄液供給配管が接続されていてもよい。
【0033】
前記2つの接触部材は,前記回転ロールの外周面の円周に沿って配置されたブロック内に設けられ,前記洗浄液供給部は,前記回転ロールの外周面に対向する前記ブロックの内周面に溝状に形成されていてもよい。
【0034】
前記回転ロールの汚れ除去機構は,前記洗浄液供給部に洗浄液を供給するための負荷を検出し,その検出結果に基づいて,前記接触部材の交換の要否を判断する制御部を有していてもよい。
【0035】
前記接触部材の移動方向の両側には,ガイド部材が設けられ,前記接触部材とガイド部材は,その間に隙間が形成されるように配置され,前記接触部材とガイド部材との隙間には,前記回転ロールの表面にプリウェット用の洗浄液を供給するプリウェット用洗浄液供給部が形成されていてもよい。
【0036】
前記汚れ除去機構は前記回転ロールの軸方向に沿って複数設けられ,前記回転ロールの軸方向から見たときに,前記複数の汚れ除去機構の接触部材と,前記回転ロールの外周面との接触部分は,前記回転ロールの外周面の全周に及んでいてもよい。
【0037】
前記回転ロールの汚れ除去機構は,前記接触部材を移動させるための負荷を検出し,その検出結果に基づいて,前記接触部材の交換の要否を判断する制御部を有していてもよい。
【0038】
前記回転ロールの汚れ除去機構は,前記接触部材に対し洗浄液を供給する接触部材用洗浄液供給部を有していてもよい。
【0039】
前記接触部材用洗浄液供給部は,回転ロールの軸方向の端部に移動した接触部材に対して洗浄液を吐出するノズルであってもよい。
【0040】
前記接触部材用洗浄液供給部は,前記回転ロールの端部の外周面に形成された環状の溝と,前記溝内に形成された洗浄液吐出口によって構成されていてもよい。
【0041】
前記回転ロールの端部の外周面には,前記接触部材の先端を洗浄するためのブラシが設けられていてもよい。
【0042】
前記接触部材は,シール材により形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば,回転ロールの洗浄液の使用量を低減できるので,例えば塗布処理ユニットのランニングコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下,本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は,本実施の形態にかかる回転ロールの汚れ除去機構が搭載された塗布現像処理装置1の構成の概略を示す平面図である。
【0045】
塗布現像処理装置1は,図1に示すように例えば複数のガラス基板Gをカセット単位で外部に対して搬入出するためのカセットステーション2と,フォトリソグラフィ工程の中で枚葉式に所定の処理を施す各種処理ユニットが配置された処理ステーション3と,処理ステーションに3に隣接して設けられ,処理ステーション3と露光装置4との間でガラス基板Gの受け渡しを行うインターフェイスステーション5とを一体に接続した構成を有している。
【0046】
カセットステーション2には,カセット載置台10が設けられ,当該カセット載置台10は,複数のカセットCをX方向(図1中の上下方向)に一列に載置自在になっている。カセットステーション2には,搬送路11上をX方向に向かって移動可能な基板搬送体12が設けられている。基板搬送体12は,カセットCに収容されたガラス基板Gの配列方向(Z方向;鉛直方向)にも移動自在であり,X方向に配列された各カセットC内のガラス基板Gに対して選択的にアクセスできる。
【0047】
基板搬送体12は,Z軸周りのθ方向に回転可能であり,後述する処理ステーション3側のエキシマUV照射ユニット20や第6の熱処理ユニット群34の各ユニットに対してもアクセスできる。
【0048】
処理ステーション3は,例えばY方向(図1の左右方向)に延びる2列の搬送ラインA,Bを備えている。この搬送ラインA,Bにおいては,コロ搬送やアームによる搬送などにより,ガラス基板Gを搬送できる。処理ステーション3の正面側であるX方向負方向側(図1の下側)の搬送ラインAには,カセットステーション2側からインターフェイスステーション5側に向けて順に,例えばガラス基板G上の有機物を除去するエキシマUV照射ユニット20,ガラス基板Gを洗浄するスクラバ洗浄ユニット21,第1の熱処理ユニット群22,第2の熱処理ユニット群23,ガラス基板Gにレジスト液を塗布するレジスト塗布処理ユニット24,ガラス基板Gを減圧乾燥する減圧乾燥ユニット25及び第3の熱処理ユニット群26が直線的に一列に配置されている。
【0049】
第1及び第2の熱処理ユニット群22,23には,ガラス基板Gを加熱する複数の加熱処理ユニットとガラス基板Gを冷却する冷却処理ユニットが多段に積層されている。第1の熱処理ユニット群22と第2の熱処理ユニット群23との間には,このユニット群22,23間のガラス基板Gの搬送を行う搬送体27が設けられている。第3の熱処理ユニット群26にも同様に,加熱処理ユニットと冷却処理ユニットが多段に積層されている。
【0050】
処理ステーション3の背面側であるX方向正方向側(図1の上方側)の搬送ラインBには,インターフェイスステーション5側からカセットステーション2側に向けて順に,例えば第4の熱処理ユニット群30,ガラス基板Gを現像処理する現像処理ユニット31,ガラス基板Gの脱色処理を行うi線UV照射ユニット32,第5の熱処理ユニット群33及び第6の熱処理ユニット群34が直線状に一列に配置されている。
【0051】
第4〜第6の熱処理ユニット群30,33,34には,それぞれ加熱処理ユニットと冷却処理ユニットが多段に積層されている。また,第5の熱処理ユニット群33と第6の熱処理ユニット群34との間には,このユニット群33,34間のガラス基板Gの搬送を行う搬送体40が設けられている。
【0052】
搬送ラインAの第3の熱処理ユニット群26と搬送ラインBの第4の熱処理ユニット群30との間には,このユニット群26,30間のガラス基板Gの搬送を行う搬送体41が設けられている。この搬送体41は,後述するインターフェイスステーション5のエクステンション・クーリングユニット60に対してもガラス基板Gを搬送できる。
【0053】
搬送ラインAと搬送ラインBとの間には,Y方向に沿った直線的な空間50が形成されている。空間50には,ガラス基板Gを載置して搬送可能なシャトル51が設けられている。シャトル51は,処理ステーション3のカセットステーション2側の端部からインターフェイスステーション5側の端部まで移動自在であり,処理ステーション3内の各搬送体27,40,41に対してガラス基板Gを受け渡すことができる。
【0054】
インターフェイスステーション5には,例えば冷却機能を有しガラス基板Gの受け渡しを行うエクステンション・クーリングユニット60と,ガラス基板Gを一時的に収容するバッファカセット61と,外部装置ブロック62が設けられている。外部装置ブロック62には,基板Gに生産管理用のコードを露光するタイトラーと,ガラス基板Gの周辺部を露光する周辺露光装置が設けられている。インターフェイスステーション5には,上記エクステンション・クーリングユニット60,バッファカセット61,外部装置ブロック62及び露光装置4に対して,ガラス基板Gを搬送可能な基板搬送体63が設けられている。
【0055】
この塗布現像処理装置1においては,カセットステーション2から搬入されたガラス基板Gが,洗浄処理,熱処理,レジスト塗布処理,乾燥処理などを順に行いながら,搬送ラインAを通ってインターフェイスステーション5に搬送される。そして,ガラス基板Gがインターフェイスステーション5から露光装置4に搬送され,露光装置4で露光処理が終了したガラス基板Gが,熱処理,現像処理,熱処理などを行いながら,搬送ラインBを通ってカセットステーション2に戻される。
【0056】
次に,回転ロールの汚れ除去機構を有するレジスト塗布処理ユニット24の構成について説明する。
【0057】
レジスト塗布処理ユニット24には,例えば図2及び図3に示すように搬送ラインAに沿ったY方向に長いステージ70が設けられている。ステージ70の上面には,図3に示すように多数のガス噴出口71が形成されている。ステージ70の幅方向(X方向)の両側には,Y方向に延びる一対の第1のガイドレール72が形成されている。第1のガイドレール72には,ガラス基板Gの幅方向の端部を保持して第1のガイドレール72上を移動する一対の保持アーム73がそれぞれ設けられている。ガス噴出口71からガスを噴出することにより,ガラス基板Gを浮上させ,その浮上したガラス基板Gの両端部を保持アーム73により保持して,ガラス基板Gを搬送ラインAに沿って移動させることができる。
【0058】
レジスト塗布処理ユニット24のステージ70上には,ガラス基板Gにレジスト液を吐出するノズル80が設けられている。ノズル80は,例えば図3及び図4に示すようにX方向に向けて長い略直方体形状に形成されている。ノズル80は,例えばガラス基板GのX方向の幅よりも長く形成されている。ノズル80の下端部には,図4に示すようにスリット状の吐出口80aが形成されている。ノズル80の上部には,レジスト液供給源81に通じるレジスト液供給管82が接続されている。
【0059】
図3に示すようにノズル80の両側には,Y方向に延びる第2のガイドレール83が形成されている。ノズル80は,第2のガイドレール83上を移動するノズルアーム84によって保持されている。ノズル80は,ノズルアーム84の駆動機構により,第2のガイドレール83に沿ってY方向に移動できる。また,例えばノズルアーム84には,昇降機構が設けられており,ノズル80は,所定の高さに昇降できる。かかる構成により,ノズル80は,ガラス基板Gにレジスト液を吐出する吐出位置Eと,それよりY方向負方向側にある後述する回転ロール90及び待機部91との間を移動できる。
【0060】
図2及び図3に示すようにノズル80の吐出位置Eよりも上流側,つまりノズル80の吐出位置EのY方向負方向側には,ノズル80の試し出しが行われる回転ロール90が設けられている。回転ロール90は,回転軸をX方向に向けて,例えばノズル80よりも長く形成されている。この回転ロール90の最上部にノズル80の吐出口80aを近接させ,回転ロール90を回転させながら,吐出口80aから回転ロール90にレジスト液を吐出することにより,ノズル80の吐出口80aにおけるレジスト液の付着状態を整えて,レジスト液の吐出状態を安定させることができる。
【0061】
回転ロール90のさらに上流側には,ノズル80の待機部91が設けられている。この待機部91には,例えばノズル80を洗浄する機能やノズル80の乾燥を防止する機能が設けられている。
【0062】
回転ロール90には,回転ロール90の汚れ除去機構100が設けられている。以下,この回転ロール90の汚れ除去機構100について説明する。
【0063】
回転ロール90には,例えば図5に示すように厚みのある方盤形状の保持部材及びブロックとしての保持ブロック110が設けられている。保持ブロック110は,中央部に貫通孔110aが形成されており,その貫通孔110aに回転ロール90が挿通されている。図6に示すように保持ブロック110の貫通孔110aは,回転ロール90とほぼ同じ径で形成され,保持ブロック110が回転ロール90に対して軸方向(X方向)に移動できるように,貫通孔110aは,回転ロール90の径よりも僅かに大きく形成されている。
【0064】
保持ブロック110の内部には,接触部材としてのシールリング111が設けられている。シールリング111は,図7に示すように薄い板状であって,回転ロール90の周りを囲む環状に形成されている。シールリング111の内周面は,図6に示すようにX方向正方向側の一側面が傾斜した先細形状に形成され,最内周部となる先端部111aは,回転ロール90の外周面の円周に環状に接触している。シールリング111には,例えば耐薬性,耐摩耗性に優れたフッ素系樹脂,ゴム製などのシール材が用いられる。
【0065】
保持ブロック110には,例えば図8に示すように移動機構120が設けられている。例えば回転ロール90の下方のケースJ内には,回転ロール90の軸方向に沿って駆動プーリ121と従動プーリ122が設けられている。駆動プーリ121と従動プーリ122は,例えば回転ロール90の軸方向の端部よりも外側に設けられている。駆動プーリ121には,例えば電源123により駆動するサーボモータ124が接続されている。駆動プーリ121と従動プーリ122との間には,ベルト125が掛けられ,そのベルト125には,スライダ126が固定されている。保持ブロック110は,支持体127を介してスライダ126に固定されている。サーボモータ124により,駆動プーリ121を回転させ,スライダ126をX方向に移動させることにより,保持ブロック110を回転ロール90の軸方向に沿って回転ロール90の両端部間に亘って移動させることができる。
【0066】
例えば保持ブロック110の移動速度や移動タイミングなどの動作は,例えば制御部128により制御されている。なお,本実施の形態において,移動機構120は,駆動プーリ121,従動プーリ122,電源123,サーボモータ124,ベルト125,スライダ126,支持体127及び制御部128により構成されている。
【0067】
回転ロール90のX方向正方向側の端部には,例えば接触部材用洗浄液供給部としてのノズル130が設けられている。ノズル130は,例えば洗浄液供給管131を通じて洗浄液供給装置132に接続されている。ノズル130は,例えば保持ブロック110の内周面と回転ロール90の外周面の隙間に向けられている。X方向正方向側に移動した保持ブロック110と回転ロール90の隙間にノズル130から洗浄液を供給し,保持ブロック110内のシールリング111を洗浄できる。
【0068】
例えば回転ロール90の下方には,回転ロール90から落下した汚れや洗浄液等を回収する受け皿140が設けられている。この受け皿140には,図示しない排出口が形成されており,回収した液体をその排出口を通じて排出できる。
【0069】
次に,以上のように構成された回転ロール90の汚れ除去機構100の動作を,ガラス基板Gのレジスト塗布処理のプロセスと共に説明する。
【0070】
例えばガラス基板Gがレジスト塗布処理ユニット24のステージ70上に搬送される前に,図2に示すようにノズル80が待機部91から回転ロール90上に移動し,ノズル80の吐出口80aが回転ロール90の最上部に近接される。このとき保持ブロック110は,図8に示すように回転ロール90のX方向負方向側の端部に待機している。
【0071】
次に,回転ロール90が回転され,ノズル80の吐出口80aから回転ロール90の表面にレジスト液が吐出されて,レジスト液の試し出しが行われる。こうして,吐出口80aにおけるレジスト液の付着状態が整えられ,ノズル80の吐出状態が安定する。
【0072】
吐出口80aのレジスト液の付着状態が整えられると,ノズル80の吐出が停止され,ノズル80は,図2に示すように所定の吐出位置Eに移動する。ノズル80が吐出位置Eに移動した後,ガラス基板Gがレジスト塗布処理ユニット24のステージ70上を搬送ラインAに沿って搬送される。ガラス基板Gがノズル80の下方を通過する際に,ノズル80からレジスト液が吐出され,ガラス基板Gの表面の全面にレジスト液が塗布される。
【0073】
一方,ノズル80が回転ロール90の最上部から吐出位置Eに移動した後,回転ロール90の汚れの除去処理が開始される。先ず,回転ロール90のX方向負方向側に待機していた保持ブロック110が,図8に示すように移動機構120により,回転ロール90の軸に沿って回転ロール90のX方向正方向側に移動する。この際,図9に示すように回転ロール90の表面に付着しているレジスト液Rが,保持ブロック110のシールリング111により掻き取られる。そして,保持ブロック110が回転ロール90のX方向正方向側の端部付近まで移動すると,回転ロール90の表面の全面のレジスト液Rが除去される。
【0074】
保持ブロック110が回転ロール90のX方向正方向側の端部まで移動し停止した後(図8に点線で示す),ノズル130から洗浄液,例えばレジスト液の溶剤が吐出され,保持ブロック110及びシールリング111が洗浄される。
【0075】
その後,ノズル130からの洗浄液の吐出が停止され,保持ブロック110は,回転ロール90のX方向負方向側の端部付近に戻される。
【0076】
以上の実施の形態によれば,回転ロール90に,回転ロール90の外周面の円周に環状に接触するシールリング111を設け,移動機構120によって,シールリング111を回転ロール90の軸方向に沿って移動できるようにしたので,回転ロール90の表面の汚れをシールリング111によって掻き取ることができる。この場合,従来のようにタンクに洗浄液を貯留する必要がないので,洗浄液にかかるコストを低減できる。
【0077】
また,回転ロール90のX方向正方向側の端部には,洗浄液を吐出するノズル130が設けられたので,回転ロール90のレジスト液を除去して汚れたシールリング111を洗浄することができる。
【0078】
シールリング111にシール材が用いられたので,シールリング111と回転ロール90との気密性が高く,回転ロール90の表面の汚れを適正に除去することができる。
【0079】
以上の実施の形態では,回転ロール90の汚れを除去する際に保持ブロック110をX方向正方向側にのみ移動させていたが,保持ブロック110をX方向負方向側にも移動させ,保持ブロック110を往復移動させてもよい。
【0080】
以上の実施の形態では,ノズル130によりシールリング111を洗浄していたが,例えば図10に示すように回転ロール90のX方向正方向側の端部の外周面に環状の溝150を形成し,その溝150内に,洗浄液吐出口151を形成してもよい。例えば洗浄液吐出口151は,溝150内の複数個所に形成される。洗浄液吐出口151は,回転ロール90の内部を通過する配管152によって洗浄液供給装置153に接続されている。
【0081】
そして,シールリング111がX方向正方向側の端部に移動したときに,シールリング111が回転ロール90の溝150上に位置される。次に洗浄液吐出口151から洗浄液Hが吐出され,例えば溝150内に洗浄液Hが満たされて,シールリング111の先端部111aがその洗浄液Hにより洗浄される。この場合,シールリング111の先端部111aに集中的に直接洗浄液Hを供給できるので,シールリング111の洗浄を効率的に行うことができる。
【0082】
以上の実施の形態では,シールリング111のみで回転ロール90の汚れを除去していたが,回転ロール90に洗浄液を供給してもよい。例えば図11に示すように保持ブロック110のX方向正方向側に,洗浄液を吐出する洗浄ノズル160が設けられる。例えば保持ブロック110のX方向正方向側の側面110bの上部に,支持部材161が取り付けられ,その支持部材161によって洗浄ノズル160は支持されている。洗浄ノズル160は,例えば保持ブロック110よりも僅かにX方向正方向側の回転ロール90の上面に向けられている。洗浄ノズル160は,例えば供給管162を通じて洗浄液供給装置163に接続されている。
【0083】
そして,回転ロール90の汚れを除去する際には,保持ブロック110がX方向正方向側に移動しながら,洗浄ノズル160からシールリング111の進行方向前方側の回転ロール90の上面に洗浄液,例えばレジスト液の溶剤が吐出される。これにより,回転ロール90の表面に洗浄液が供給され,例えば回転ロール90の表面が洗浄される。
【0084】
この実施の形態によれば,シールリング111による汚れの除去に加えて,洗浄液によって回転ロール90が洗浄されるので,シールリング111では除去しきれない例えば回転ロール90の表面の微小な凹凸に入り込んだ汚れも落とすことができる。また,洗浄液がシールリング111の進行方向前方側に供給されるので,シールリング111によってその洗浄液を除去することができる。さらに,洗浄ノズル160が保持ブロック110に固定されているので,洗浄ノズル160を移動させるための機構を別途設ける必要がない。
【0085】
上記実施の形態において,洗浄ノズル160が回転ロール90の上方側にのみ設けられていたが,図12に示すように洗浄ノズル160が回転ロール90の外周面の円周に沿った複数個所,例えば4箇所に配置され,各洗浄ノズル160から回転ロール90に洗浄液を供給するようにしてもよい。また,これらの洗浄ノズル160は,回転ロール90の軸周りの同一円周上に等間隔で配置されてもよい。この場合,回転ロール90の表面の全面に洗浄液を確実に供給することができ,回転ロール90の表面の微小な汚れを確実に除去できる。
【0086】
上述の洗浄ノズル160は,保持ブロック110のX方向正方向側にのみ設けられていたが,図13に示すようにX方向負方向側にも設けてもよい。この場合,X方向負方向側の洗浄ノズル165は,例えば保持ブロック110よりも僅かにX方向負方向側の回転ロール90の上面に向けられる。洗浄ノズル165は,支持部材166によって保持ブロック110に支持されている。そして,回転ロール90の汚れを除去する際には,先ず,X方向正方向側の洗浄ノズル160から洗浄液を吐出しながら,保持ブロック110がX方向正方向側に移動する。保持ブロック110がX方向正方向側の端部に移動した後,今度は,X方向負方向側の洗浄ノズル165から洗浄液を吐出しながら,保持ブロック110がX方向負方向側に移動する。こうすることによって,保持ブロック110を往復移動させる場合であっても,保持ブロック110の進行方向前方側に洗浄液を供給できる。
【0087】
また,この実施の形態において,保持ブロック110の両側の洗浄ノズル160,165から同時に回転ロール90の表面に洗浄液を供給しつつ,保持ブロック110を移動させてもよい。この場合,保持ブロック110の両側から洗浄液が供給されるので,回転ロール90の表面の汚れをより確実に除去することができる。
【0088】
前記実施の形態で記載したように保持ブロック110に洗浄ノズル160や洗浄ノズル165を設けた場合には,当該洗浄ノズルからの洗浄液の供給により,シールリング111を洗浄することもできるので,この場合,回転ロール90のX方向正方向側に上述のノズル130や,溝150及び洗浄液吐出口151を設けなくてもよい。
【0089】
前記実施の形態で記載したシールリング111は,回転ロール90との接触により磨耗するので,適切な時期に取替える必要がある。このシールリング111の取替えの要否については,シールリング111を軸方向に駆動するための負荷を検出し,その負荷に基づいて判定してもよい。例えば,シールリング111の駆動するための負荷を検出し,その負荷が所定の設定値より小さくなった場合に,シールリング111が磨耗しており取り替えの必要があると判断してもよい。例えばシールリング111の駆動の負荷は,シールリング111を一定の速度で移動させる図8に示すサーボモータ124の電流値を計測することによって検出してもよい。このサーボモータ124の電流値の計測は,例えば制御部128により行う。この制御部128により,例えば電流値が予め設定された閾値を超えた場合に,シールリング111が取替えが必要であると判定され,閾値以下の場合に,シールリング111の取替えが必要でないと判定される。こうすることによって,シールリング111の取替え時期を適正に判断できる。なお,シールリング111の駆動源としてはサーボモータ124に限られず,エアアクチュエーターやその他の駆動源が用いられていてもよい。
【0090】
以上の実施の形態では,回転ロール90に,一つのシールリング111が設けられていたが,複数設けられていてもよい。例えば図14に示すように保持ブロック110の内部に,上記シールリング111と同じ構成の2つのシールリング170,171が設けられる。シールリング170,171は,保持ブロック110の2枚の板110a,110bで挟み込まれることで,保持ブロック110の内部に固定されている。X方向正方向側の第1のシールリング170は,先端部170aの傾斜面がX方向正方向側に向けられ,X方向負方向側の第2のシールリング171は,先端部171aの傾斜面がX方向負方向側に向けられている。第1のシールリング170と第2のシールリング171は,5〜10mm程度の隙間を設けて配置されている。第1のシールリング170と第2のシールリング171の隙間の保持ブロック110の内周面には,回転ロール90の外周面を囲む環状の洗浄液供給部としての溝172が形成されている。この溝172と回転ロール90の表面により,洗浄液が流れる環状の流路が形成されている。
【0091】
溝172の最上部には,例えば洗浄液供給配管173が接続されている。洗浄液供給配管173は,例えば保持ブロック110内のシールリング170,171の間を通過し保持ブロック110の外部の洗浄液供給装置174に接続されている。溝172の最下部には,例えば洗浄液排出管175が接続され,その洗浄液排出管175は,保持ブロック110のシールリング170,171の間を通過し保持ブロック110の下部に開口している。なお,洗浄液供給装置174における洗浄液の供給圧の制御は,制御部128により行われている。
【0092】
そして,回転ロール90の汚れを除去する際には,洗浄液供給配管173から溝172に洗浄液Hが供給され,洗浄液排出管175から溝172内の洗浄液Hが排出されて,溝172内に洗浄液Hの流れが形成される。その状態で,保持ブロック110が回転ロール90のX方向負方向側からX方向正方向側に移動する。このとき,進行方向側にある第1のシールリング170によって,回転ロール90の表面の汚れが掻き取られる。また溝172内を通過する洗浄液Hによって,回転ロール90の表面に残った微細な汚れが洗浄される。第2のシールリング171によって,回転ロール90の表面に残る洗浄液Hが取り除かれる。
【0093】
この実施の形態によれば,第1のシールリング170と第2のシールリング171の間の狭小な溝172に洗浄液Hが供給されるので,少ない洗浄液Hで効率的に回転ロール90を洗浄できる。溝172に,洗浄液供給配管173と洗浄液排出配管175が接続されているので,溝172に洗浄液Hの流れを形成し,その洗浄液Hの流れによって回転ロール90の汚れを効果的に落とすことができる。
【0094】
なお,上記実施の形態のシールリングの数は,2つに限られず,3つ以上であってもよい。
【0095】
前記実施の形態のシールリング170,171の取替え時期については,シールリング170,171が磨耗すればするほど,溝172の気密性が低下して,溝172に洗浄液を供給するための負荷が下がるので,その洗浄液の供給の負荷を検出し,その負荷に基づいてシールリング170,171の取替えの要否を判定してもよい。例えば洗浄液の供給のための負荷は,溝172に一定流量の洗浄液を供給する洗浄液供給装置174の供給圧を計測することによって検出してもよい。この洗浄液供給装置174の供給圧の計測は,例えば制御部128により行う。制御部128は,例えば供給圧が予め設定された閾値を超えた場合に,シールリング170,171の取替えが必要であると判定し,閾値以下の場合に,シールリング170,171の取替えが必要でないと判定する。こうすることによって,シールリング170,171の取替え時期を適正に判断できる。
【0096】
前記実施の形態における保持ブロック110の進行方向(図15のX方向)の両側面には,図15に示すように,シールリング170,171が回転ロール90の表面の汚れを掻き取る前に,回転ロール90の表面に洗浄液Hを供給するプリウェット用の洗浄液供給口180,181がそれぞれ形成されていてもよい。洗浄液供給口180,181は,図16に示すように回転ロール90の径と同一幅の長方形の形状を有し,回転ロール90の上方に形成されている。
【0097】
洗浄液供給口180,181には,図15に示すように洗浄液供給配管182,183がそれぞれ接続されている。洗浄液供給配管182,183は,保持ブロック110内を通過し保持ブロック110の外部の洗浄液供給装置174に接続されている。洗浄液供給配管182,183には,制御弁184,185がそれぞれ介設されおり,洗浄液供給部としての溝172に接続されている洗浄液供給配管173には,制御弁176が介設されている。なお,洗浄液供給装置174における洗浄液Hの供給圧の制御,及び制御弁184,185,176の制御は,制御部128により行われている。
【0098】
そして,回転ロール90の汚れを除去する際に,例えば保持ブロック110がX方向正方向に移動する場合には,先ず制御弁184が開けられ,洗浄液Hが洗浄液供給口180から吐出される。洗浄液Hは,保持ブロック110の側面を伝って回転ロール90の表面に供給される。続いて,シールリング170が洗浄液Hで濡れた回転ロール90の表面を移動し,回転ロール90の表面の汚れが掻き取られる。この際,制御弁176が開けられて溝172に洗浄液Hが供給され,回転ロール90の表面に残った微細な汚れが洗浄される。また,保持ブロック110がX方向負方向に移動する場合には,制御弁185が開けられて洗浄液Hが洗浄液供給口181から吐出され,続いてシールリング171により回転ロール90の表面の汚れが掻き取られる。
【0099】
この実施の形態によれば,シールリング170,171が回転ロール90の表面の汚れが掻き取る前に,洗浄液供給口180,181から回転ロール90の表面に洗浄液Hが供給されて,回転ロール90の表面が洗浄液Hで濡れた状態になるので,シールリング170,171が回転ロール90の表面を円滑に移動でき,回転ロール90の表面の汚れを容易に掻き取ることができる。
【0100】
以上の実施の形態では,ノズル130によりシールリング111を洗浄していたが,例えば図17に示すように回転ロール90の端部の外周面に,シールリング11の先端を洗浄するためのブラシ190を設けてもよい。ブラシ190は,保持ブロック110がX方向正方向側の端部に移動したときに,シールリング111の先端とブラシ190が接触する位置に設けられる。
【0101】
そして,保持ブロック110がX方向正方向側の端部に移動して,シールリング111の先端とブラシ190が接触すると,回転ロール90が回転して,ブラシ190でシールリング111を洗浄することができる。
【0102】
以上の実施の形態では,シールリング111,170,171は回転ロール90の外周面の全周に接触して設けられていたが,図18及び図19に示すように,シールリング200は例えば回転ロール90の外周面の下半周に接触して設けられていてもよい。またかかる場合,前記実施の形態では,保持ブロック110は回転ロール90の外周面の全周を囲むように設けられていたが,保持ブロック210は回転ロール90の外周面の下半周に沿って設けられてもよい。
【0103】
保持ブロック210は直方体であって,その上部には下に凹の円弧状の溝210aが形成されている。溝210aは回転ロール90の外周面の下半周に沿って形成され,保持ブロック210が回転ロール90に対して軸方向に移動できるように,溝210aは回転ロール90の径よりも僅かに大きく形成されている。
【0104】
保持ブロック210の内部には,シールリング200が設けられている。シールリング200は,薄い板状であって,回転ロール90の外周面の下半周に沿って半円状に形成されている。シールリング200の内周面は,図20に示すようにX方向の両側面が傾斜した先細形状に形成され,最内周部となる先端部200aは,回転ロール90の外周面の下半周に接触している。
【0105】
そして,回転ロール90の汚れを除去する際には,先ず,保持ブロック210が例えば200mm/sの速度でX方向正方向に移動する。この際,シールリング200が回転ロール90の表面を移動することで,回転ロール90の表面の汚れが掻き取られる。次に,保持ブロック210が回転ロール90の端部に達すると,回転ロール90を例えば3回転半回転させる。その後,保持ブロック210がX方向負方向に移動し,シールリング200により回転ロール90の表面の汚れが掻き取られる。このような保持ブロック210の一連の往復運動が例えば3往復行われ,回転ロール90の表面の汚れが除去される。
【0106】
発明者らの知見によると,この実施の形態によれば,シールリング200が半円形状であっても,回転ロール90を回転させて,シールリング200を往復移動させることで,回転ロール90の表面の汚れを十分に除去することができる。また,シールリング200を有する支持ブロック210が回転ロール90の外周面の下半周に設けられたので,支持ブロック210を回転ロール90から取り外しやすく,シールリング200のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0107】
前記実施の形態における保持ブロック210の内部には,さらにガイド部材201,202が設けられていてもよい。ガイド部材201,202は,図21に示すようにシールリング200のX方向正方向側とX方向負方向側にそれぞれ設けられている。ガイド部材201,202は,薄い板状であって,回転ロール90の外周面の下半周に沿って半円状に形成されている。X方向正方向側のガイド部材201は,先端部201aの傾斜面がX方向正方向側に向けられ,X方向負方向側のガイド部材202は,先端部202aの傾斜面がX方向負方向側に向けられている。
【0108】
シールリング200とガイド部材201の隙間の保持ブロック210の内周面には,回転ロール90の外周面の下半周に沿って溝221が形成されている。シールリング200とガイド部材202の隙間の保持ブロック210にも,溝221と同一形状の溝222が形成されている。この溝221,222と回転ロール90の表面により,洗浄液Hが流れる流路がそれぞれ形成されている。
【0109】
溝221,222の最下部には,例えば洗浄液供給配管223,224がそれぞれ接続されている。洗浄液供給配管223,224は,例えば保持ブロック210内のシールリング200とガイド部材201,202の間を通過し保持ブロック210の外部の洗浄液供給装置230に接続されている。洗浄液供給配管223,224には,例えば制御弁225,226がそれぞれ介設されており,制御弁225,226の開閉によって,溝221あるいは溝222に供給される洗浄液Hが選択的に供給される。
【0110】
以上の構成の汚れ除去機構100を用いて回転ロール90の汚れを除去する際には,先ず,保持ブロック210がX方向正方向に移動する。このとき,制御弁225が開けられ,溝221から回転ロール90の表面に洗浄液Hが吐出される。続いて,シールリング200が洗浄液Hで濡れた回転ロール90の表面を移動することで,回転ロール90の表面の汚れが掻き取られる。次に,保持ブロック210が回転ロール90の端部に達すると,制御弁225が閉じられ,回転ロール90を例えば3回転半回転させる。その後,保持ブロック210がX方向負方向に移動する。このとき,制御弁226が開けられ,溝222から回転ロール90の表面に洗浄液Hが吐出される。そして,シールリング200が洗浄液Hで濡れた回転ロール90の表面を移動することで,回転ロール90の表面の汚れを掻き取られる。このような保持ブロック210の一連の往復運動が例えば3往復行われ,回転ロール90の表面の汚れが除去される。
【0111】
以上の実施の形態では,シールリング200が回転ロール90の表面の汚れを掻き取る前に,溝221,222から回転ロール90の表面に洗浄液Hが供給されて,回転ロール90の表面が洗浄液Hで濡れた状態になるので,シールリング200が回転ロール90の表面を円滑に移動でき,回転ロール90の表面の汚れを容易に掻き取ることができる。
【0112】
以上の実施の形態では,回転ロール90に,1組の保持ブロック210とシールリング200が設けられていたが,複数組の保持ブロック210とシールリング200が設けられていてもよい。例えば図22に示すように,保持ブロック210と同じ構成の2個の保持ブロック210が,回転ロール90の外周面の下半周と上半周にそれぞれ設けられていてもよい。したがって,回転ロール90の軸方向から見たときに,2個のシールリング200と回転ロール90の外周面との接触部分は,回転ロール90の外周面の全周に及んでいてもよい。
【0113】
そして,シールリング200,200がそれぞれ回転ロール90を軸方向に移動することで,回転ロール90の表面の汚れを除去することができる。この実施の形態では,回転ロール90を回転させずに,回転ロール90の表面の汚れを除去することができるので,短時間で汚れを除去することができる。
【0114】
なお,シールリング200の形状は,半円形状より少し大きい,例えば200度の角度を有する略半円形状であってもよい。かかる場合,2個のシールリング200,200が回転ロール90の外周面の全周と確実に接触するので,回転ロール90の汚れをより確実に除去することができる。また,シールリング200の形状は半円形状に限らず,例えば1/3円形状でもよい。かかる場合,シールリング200を回転ロール90に対して3個設けると,回転ロール90を回転させずに,回転ロール90の表面の汚れを除去することができる。
【0115】
以上の実施の形態では,保持ブロック210の内部に,ガイド部材201,202が設けられ,溝221,222が形成されることで,プリウェット用の洗浄液Hが回転ロール90の表面に供給されていたが,溝221,222を形成する代わりに図11に示した前記の洗浄ノズル160を設けて,回転ロール90の表面に洗浄液Hを供給してもよい。また,この洗浄ノズル160は回転ロール90の外周面に向けて複数設けられていてもよく,図13に示した前記の洗浄ノズル165をさらに追加してもよい。
【0116】
以上の実施の形態では,保持ブロック210の内部に,1個のシールリング200が設けられていたが,複数,例えば2個設けられていてもよい。この2個のシールリング200によって,図14に示した前記の溝172が形成され,さらに前記の洗浄液供給配管173と制御部128が設けられることで,回転ロール90の表面に洗浄液Hが供給される。
【0117】
以上の実施の形態では,移動機構120の内部にベルト125を設けていたが,ベルト125に代えてボールネジを用いてもよい。ボールネジを例えばサーボモータで回転させることにより,保持ブロック110,210を回転ロール90の軸方向に沿って回転ロール90の両端部間に亘って移動させることができる。
【0118】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において,各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0119】
例えば以上の実施の形態では,本発明を,レジスト液の試し出しが行われる回転ロールの洗浄に対して適用していたが,現像液などの他の塗布液の試し出しが行われる回転ロールの洗浄に適用してもよい。また,洗浄液も溶剤に限られず,純水など他の液体であってもよい。本発明は,ガラス基板G以外の他のFPD(フラットパネルディスプレイ)やフォトマスク用のマスクレチクル,半導体ウェハなどの他の基板に塗布液を塗布する場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は,回転ロールを洗浄する洗浄液の使用量を低減する際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本実施の形態における塗布現像処理装置の構成の概略を示す平面図である。
【図2】レジスト塗布処理ユニットの構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図3】レジスト塗布処理ユニットの構成の概略を示す平面図である。
【図4】ノズルの説明図である。
【図5】回転ロールに取り付けられた保持ブロックの斜視図である。
【図6】保持ブロックと回転ロールの縦断面図である。
【図7】シールリングの斜視図である。
【図8】保持ブロックの移動機構の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図9】回転ロールの汚れを除去する際の保持ブロックと回転ロールの縦断面図である。
【図10】回転ロールの端部に溝を形成した場合の保持ブロックと回転ロールの縦断面図である。
【図11】洗浄ノズルを取り付けた保持ブロックの縦断面図である。
【図12】洗浄ノズルを複数設けた場合の保持ブロックの正面図である。
【図13】洗浄ノズルを前後に取り付けた保持ブロックの縦断面図である。
【図14】2つのシールリングを備えた場合の保持ブロックと回転ロールの縦断面図である。
【図15】プリウェット用洗浄液供給口が形成された保持ブロックの縦断面図である。
【図16】プリウェット用洗浄液供給口が形成された保持ブロックの側面図である。
【図17】回転ロールの端部にブラシを取り付けた場合の保持部ブロックと回転ロールの縦断面図である。
【図18】保持ブロックが半円形状である場合の回転ロールに取り付けられた保持ブロックの斜視図である。
【図19】保持ブロックと回転ロールの側面図である。
【図20】保持ブロックと回転ロールの縦断面図である。
【図21】プリウェット用洗浄液供給口が形成された保持ブロックと回転ロールの縦断面図である。
【図22】保持ブロックを複数設けた場合の保持ブロックと回転ロールの縦断面図である。
【符号の説明】
【0122】
1 塗布現像処理装置
24 レジスト塗布処理ユニット
90 回転ロール
110 保持ブロック
111 シールリング
120 移動機構
H 洗浄液
G ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから基板に塗布液が吐出される前に,ノズルから塗布液が供給される回転ロールの汚れ除去機構であって,
回転ロールの外周面の円周に環状に接触する接触部材と,
前記接触部材を前記回転ロールの軸方向に沿って移動させる移動機構と,を有することを特徴とする,回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項2】
前記接触部材の進行方向前方側の前記回転ロールの表面に洗浄液を吐出する洗浄ノズルを有することを特徴とする,請求項1に記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項3】
前記洗浄ノズルは,前記回転ロールの上面に洗浄液を吐出できることを特徴とする,請求項2に記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項4】
前記洗浄ノズルは,回転ロールの外周面を囲むように複数箇所に設けられていることを特徴とする,請求項2又は3のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項5】
前記洗浄ノズルは,前記接触部材の移動方向の両側に設けられていることを特徴とする,請求項2〜4のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項6】
前記接触部材は,前記移動機構により回転ロールの軸方向に移動する保持部材によって保持されており,
前記洗浄ノズルは,前記保持部材に取り付けられていることを特徴とする,請求項2〜5のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項7】
前記接触部材は,前記回転ロールの軸方向に沿って複数設けられていることを特徴とする,請求項1〜6のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項8】
前記回転ロールには,2つの接触部材が近接して設けられ,
前記2つの接触部材は,その間に隙間が形成されるように配置され,
前記2つの接触部材の隙間には,回転ロールの表面に洗浄液を供給する洗浄液供給部が形成されていることを特徴とする,請求項7に記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項9】
前記洗浄液供給部は,前記回転ロールの外周面の円周に沿って環状に形成されていることを特徴とする,請求項8に記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項10】
前記洗浄液供給部には,洗浄液供給配管と洗浄液排出配管が接続されていることを特徴とする,請求項8又は9のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項11】
前記2つの接触部材は,前記回転ロールの外周面の円周を囲むブロック内に設けられ,
前記洗浄液供給部は,前記回転ロールの外周面に対向する前記ブロックの内周面に溝状に形成されていることを特徴とする,請求項8〜10のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項12】
前記洗浄液供給部に洗浄液を供給するための負荷を検出し,その検出結果に基づいて,前記接触部材の交換の要否を判断する制御部を有することを特徴とする,請求項8〜11のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項13】
前記ブロックの移動方向の両側面には,前記回転ロールの表面をプリウェットするための洗浄液を当該回転ロールの表面に供給するプリウェット用洗浄液供給部が形成されていることを特徴とする,請求項11又は12に記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項14】
ノズルから基板に塗布液が吐出される前に,ノズルから塗布液が供給される回転ロールの汚れ除去機構であって,
回転ロールの外周面の円周に沿って当該円周の一部に接触する接触部材と,
前記接触部材を前記回転ロールの軸方向に沿って移動させる移動機構と,を有することを特徴とする,回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項15】
前記接触部材の進行方向前方側の前記回転ロールの表面に洗浄液を吐出する洗浄ノズルを有することを特徴とする,請求項14に記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項16】
前記洗浄ノズルは,前記回転ロールの外周面に向けて複数箇所に設けられていることを特徴とする,請求項15に記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項17】
前記洗浄ノズルは,前記接触部材の移動方向の両側に設けられていることを特徴とする,請求項15又は16に記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項18】
前記接触部材は,前記移動機構により前記回転ロールの軸方向に移動する保持部材によって保持されており,
前記洗浄ノズルは,前記保持部材に取り付けられていることを特徴とする,請求項15〜17のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項19】
前記接触部材は,前記回転ロールの軸方向に沿って複数設けられていることを特徴とする,請求項14〜18のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項20】
前記回転ロールには,2つの接触部材が近接して設けられ,
前記2つの接触部材は,その間に隙間が形成されるように配置され,
前記2つの接触部材の隙間には,回転ロールの表面に洗浄液を供給する洗浄液供給部が形成されていることを特徴とする,請求項19に記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項21】
前記洗浄液供給部は,前記回転ロールの外周面の円周に沿って形成されていることを特徴とする,請求項20に記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項22】
前記洗浄液供給部には,洗浄液供給配管が接続されていることを特徴とする,請求項20又は21のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項23】
前記2つの接触部材は,前記回転ロールの外周面の円周に沿って配置されたブロック内に設けられ,
前記洗浄液供給部は,前記回転ロールの外周面に対向する前記ブロックの内周面に溝状に形成されていることを特徴とする,請求項20〜22のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項24】
前記洗浄液供給部に洗浄液を供給するための負荷を検出し,その検出結果に基づいて,前記接触部材の交換の要否を判断する制御部を有することを特徴とする,請求項20〜23のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項25】
前記接触部材の移動方向の両側には,ガイド部材が設けられ,
前記接触部材とガイド部材は,その間に隙間が形成されるように配置され,
前記接触部材とガイド部材との隙間には,前記回転ロールの表面にプリウェット用の洗浄液を供給するプリウェット用洗浄液供給部が形成されていることを特徴とする,請求項14に記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項26】
前記汚れ除去機構は前記回転ロールの軸方向に沿って複数設けられ,
前記回転ロールの軸方向から見たときに,前記複数の汚れ除去機構の接触部材と,前記回転ロールの外周面との接触部分は,前記回転ロールの外周面の全周に及んでいることを特徴とする,請求項14〜25のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項27】
前記接触部材を移動させるための負荷を検出し,その検出結果に基づいて,前記接触部材の交換の要否を判断する制御部を有することを特徴とする,請求項1〜26のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項28】
前記接触部材に対し洗浄液を供給する接触部材用洗浄液供給部を有することを特徴とする,請求項1〜27のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項29】
前記接触部材用洗浄液供給部は,回転ロールの軸方向の端部に移動した接触部材に対して洗浄液を吐出するノズルであることを特徴とする,請求項28に記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項30】
前記接触部材用洗浄液供給部は,前記回転ロールの端部の外周面に形成された環状の溝と,前記溝内に形成された洗浄液吐出口によって構成されていることを特徴とする,請求項28に記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項31】
前記回転ロールの端部の外周面には,前記接触部材の先端を洗浄するためのブラシが設けられていることを特徴とする,請求項1〜30のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。
【請求項32】
前記接触部材は,シール材により形成されていることを特徴とする,請求項1〜31のいずれかに記載の回転ロールの汚れ除去機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−201427(P2007−201427A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333125(P2006−333125)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】