回転位相検出装置、レゾルバ装置、駆動装置、回転位相検出回路、および回転位相検出方法
【課題】レゾルバを用いて検出する回転位相の温度ドリフトを抑制する。
【解決手段】回転位相検出装置1は、励磁巻線13,14に対する励磁受信巻線15の回転位相θに応じた電圧波形信号を、出力巻線17から出力するレゾルバ6と、出力巻線17に接続され、出力巻線17とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路21と、出力巻線17および補償抵抗回路21が直列に接続され、出力巻線17から出力された電圧波形信号が補償抵抗回路21を通じて入力され、入力される信号の電圧波形に基づいて回転位相を検出する検出部7とを有する。補償抵抗回路21は、レゾルバ6に設けられる。検出部7は、補償抵抗回路21を通じて入力される信号の電圧の大きさからレゾルバ6の温度を推定し、推定した温度に応じた補償量で、電圧波形信号に基づいて検出した回転位相θ(DTCT)に含まれる温度誤差Δθを補償する。
【解決手段】回転位相検出装置1は、励磁巻線13,14に対する励磁受信巻線15の回転位相θに応じた電圧波形信号を、出力巻線17から出力するレゾルバ6と、出力巻線17に接続され、出力巻線17とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路21と、出力巻線17および補償抵抗回路21が直列に接続され、出力巻線17から出力された電圧波形信号が補償抵抗回路21を通じて入力され、入力される信号の電圧波形に基づいて回転位相を検出する検出部7とを有する。補償抵抗回路21は、レゾルバ6に設けられる。検出部7は、補償抵抗回路21を通じて入力される信号の電圧の大きさからレゾルバ6の温度を推定し、推定した温度に応じた補償量で、電圧波形信号に基づいて検出した回転位相θ(DTCT)に含まれる温度誤差Δθを補償する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバを用いて回転体の回転位相を検出する回転位相検出装置、レゾルバ装置、駆動装置、回転位相検出回路、および回転位相検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レゾルバは、たとえばモータなどの回転装置とともに用いられる。
レゾルバは、回転装置の動作をレゾルバのロータの回転運動へ変換し、レゾルバのロータの回転にしたがって変化するレゾルバの出力電圧波形信号を出力する。
回転位相検出回路は、レゾルバに接続され、レゾルバの出力信号に基づいて、レゾルバのロータの回転についての位相、角度、回転量などの回転位相を検出する。
このように回転装置の動作は、レゾルバのロータの回転運動へ変換され、そのロータの回転運動についての出力信号に基づいて、レゾルバおよび回転位相検出回路により検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−129718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レゾルバには、二相励磁一相出力方式のものと、一相励磁二相出力方式のものとがあるが、これらのレゾルバでは、レゾルバの出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相がレゾルバの温度に応じて変化するという温度ドリフトの課題がある。
【0005】
特許文献1では、レゾルバの二次巻線と、それに接続される信号線との間に、二次巻線より抵抗値がかなり大きい補償抵抗素子を直列に接続する。
レゾルバの二次巻線に対して抵抗値がかなり大きい補償抵抗素子を直列に接続することにより、出力電圧の位相は、レゾルバの二次巻線の抵抗値の温度変化に追従して変化し難くなる。
その結果、特許文献1のレゾルバでは、出力信号に基づいて検出される回転位相が、レゾルバの温度変化に追従し難くなる。
しかしながら、特許文献1のようにレゾルバの二次巻線に対して抵抗値がかなり大きい補償抵抗素子を接続したとしても、レゾルバの検出信号の位相は微妙に変化する。
なぜなら、レゾルバの出力信号の位相は、レゾルバの動作温度の変動によりレゾルバの巻線の抵抗値が変動することに起因して変化するものであり、特許文献1は、そのレゾルバの巻線の抵抗値の温度変化を抑制するものではないからである。
その結果、特許文献1の技術を用いたとしても、レゾルバの出力信号の位相に基づいて検出される回転位相は、温度ドリフトを有する。
【0006】
このように、レゾルバを用いて回転位相を検出する装置では、検出される回転位相の温度ドリフトを抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点の回転位相検出装置は、励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を、出力巻線から出力するレゾルバと、出力巻線に接続され、レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路と、出力巻線および補償抵抗回路が直列に接続され、出力巻線から出力された電圧波形信号が補償抵抗回路を通じて入力され、入力される信号の電圧波形に基づいて回転位相を検出する検出部とを有する。そして、補償抵抗回路は、レゾルバに設けられ、検出部は、補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧の大きさからレゾルバの温度を推定し、推定した温度に応じた補償量で、電圧波形信号に基づいて検出した回転位相に含まれる温度誤差を補償する。
【0008】
本発明では、レゾルバの出力巻線に対して、レゾルバの出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路を接続し、当該補償抵抗回路をレゾルバに配設している。
このため、本発明では、レゾルバの動作温度の変化に対して、補償抵抗回路の抵抗値を、レゾルバの出力巻線とは逆の温度特性で変化させることができる。
その結果、本発明では、レゾルバの出力電圧信号に基づいて検出される回転位相の温度ドリフトを抑制できる。
これに加えて、本発明では、検出部は、補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧の大きさからレゾルバの温度を推定し、推定した温度に応じた補償量で、電圧波形信号に基づいて検出した回転位相に含まれる温度誤差を補償する。
よって、本発明で得られる補償後の回転位相は、レゾルバの温度の影響を殆ど受けていない安定したものとなる。
本発明で得られる回転位相は、レゾルバの動作温度にかかわらず略一定に安定し、温度ドリフトが好適に抑制される。
【0009】
本発明の第2の観点のレゾルバ装置は、励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を、出力巻線から出力するレゾルバと、出力巻線と接続してレゾルバに設けられ、レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路とを有し、補償抵抗回路を通じて出力巻線の電圧波形信号を出力し、出力巻線および補償抵抗回路と直列に接続される終端抵抗素子の電圧を、補償抵抗回路の温度に応じて変化させる。
【0010】
本発明の第3の観点の駆動装置は、出力軸を回転駆動するモータと、出力軸の回転位相を検出するレゾルバ部とを有し、レゾルバ部は、励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を、出力巻線から出力するレゾルバと、出力巻線と接続してレゾルバに設けられ、レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路とを有し、補償抵抗回路を通じて出力巻線の電圧波形信号を出力し、出力巻線および補償抵抗回路と直列に接続される終端抵抗素子の電圧を、補償抵抗回路の温度に応じて変化させる。
【0011】
本発明の第4の観点の回転位相検出回路は、励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を出力巻線から出力するレゾルバに対して、出力巻線に接続してレゾルバに設けられ、レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路とともに用いられる回転位相検出回路であって、出力巻線および補償抵抗回路に対して直列に接続され、補償抵抗回路を通じて出力巻線の電圧波形信号が入力され、補償抵抗回路の温度に応じて変化する電圧を発生する終端抵抗素子と、終端抵抗素子の電圧の波形に基づいて回転位相を検出する位相検出回路と、終端抵抗素子の電圧の大きさに基づいてレゾルバの温度を推定し、推定した温度に応じた補償量で、検出された回転位相に含まれる温度誤差を補償する補償回路とを有する。
【0012】
本発明の第5の観点の回転位相検出方法は、励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を出力巻線から出力するレゾルバの電圧波形信号に基づいて回転位相を検出する方法であって、出力巻線と接続してレゾルバに設けられ、レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧波形に基づいて回転位相を検出するステップと、補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧の大きさからレゾルバの温度を推定するステップと、推定した温度に応じた補償量で、電圧波形信号に基づいて検出した回転位相に含まれる温度誤差を補償するステップとを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、レゾルバを用いて検出される回転位相の温度ドリフトを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る回転位相検出装置を有するサーボ制御システムのブロック図である。
【図2】図2は、図1のレゾルバとして用いることができる、二相励磁一相出力方式のレゾルバの概略的な内部構造を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、二相励磁一相出力のレゾルバについての回路図である。
【図4】図4は、図3のようにレゾルバの出力巻線に対して補償抵抗回路を接続していない場合での、出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θの一例の温度特性図である。
【図5】図5は、図2のレゾルバを含む、本実施形態での電気回路を示す回路図である。
【図6】図6は、図5の補償抵抗回路として用いられる並列抵抗回路の回路図である。
【図7】図7は、サーミスタおよび並列抵抗回路の抵抗値の温度特性の一例を示す図である。
【図8】図8は、図5と異なり、レゾルバのすべての巻線に対して個別に個別補償抵抗回路を接続した場合での電気回路を示す回路図である。
【図9】図9は、本実施形態で検出される回転位相θの温度特性の一例を示す図である。
【図10】図10は、図1のR/Dコンバータの終端抵抗素子で検出される電圧V(DTCT)の温度特性図である。
【図11】図11は、図1のR/Dコンバータの回路構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、図11の残差検出部の回路構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、補償抵抗回路の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に関連付けて説明する。
[回転位相検出装置の全体的な構成および動作]
図1は、本発明の実施形態に係る回転位相検出装置を有するサーボ制御システム1のブロック図である。
図1のサーボ制御システム1は、コントローラ2、サーボ制御部3、サーボモータモジュール4を有する。
サーボモータモジュール4は、サーボモータ5と、レゾルバ6とを有する。
【0016】
サーボ制御システム1は、たとえばNC工作機械、多間接ロボット、織機、ボトルキャッパ装置、印刷装置、ロールカッタ装置、プレス装置、押出成形機、CTスキャナ、医療機器、三次元測定器、ICボンダ装置、チップマウンタ装置、半導体製造装置、搬送車、ハイブリッドカーなどに使用される。
【0017】
サーボモータ5は、出力軸5aを有する。出力軸5aは、サーボモータ5の回転子に固定され、サーボ制御部3の制御信号に基づいて回転子とともに回転駆動される。
【0018】
レゾルバ6は、サーボモータ5の出力軸5aに接続される。
レゾルバ6は、サーボモータ5の回転位相を検出するために用いられる。
そして、本実施形態のレゾルバ6には、後述するように、補償抵抗回路21が設けられる。
【0019】
コントローラ2は、図1に示すように、サーボ制御部3に接続される。
コントローラ2は、サーボモータ5の回転を制御するための制御指令を、サーボ制御部3へ出力する。
制御指令は、サーボモータ5の位置(回転量)、速度などの目標値を指定するものである。
【0020】
サーボ制御部3は、サーボモータモジュール4に接続される。
サーボ制御部3は、R/Dコンバータ(レゾルバデータコンバータ)7を有する。
R/Dコンバータ7は、レゾルバ6に接続され、レゾルバ6の回転位相θ、すなわちサーボモータ5の回転位相を検出する。
また、本実施形態のR/Dコンバータ7は、レゾルバ6の温度、すなわちサーボモータ5の温度も検出する。
サーボ制御部3は、制御指令により指定された目標の位置、回転量、回転速度でサーボモータ5が動作するように、R/Dコンバータ7により検出される回転位相θを用いて、サーボモータ5の動作をフィードバック制御する。
【0021】
サーボモータ5のフィードバック制御において、サーボ制御部3のR/Dコンバータ7は、レゾルバ6へ励磁電圧信号を出力する。
たとえば図3の二相励磁のレゾルバ6に対して、R/Dコンバータ7は、正弦波の励磁電圧信号を第1励磁巻線13へ出力し、正弦波と位相が90度ずれた余弦波の励磁電圧信号を第2励磁巻線14へ出力する。
レゾルバ6は、これらの励磁電圧信号に基づいて、レゾルバ6のロータ11の回転位相に応じた一相の電圧波形信号を生成する。
レゾルバ6は、生成した一相の電圧波形信号をR/Dコンバータ7へ出力する。
R/Dコンバータ7は、レゾルバ6へ供給した励磁電圧信号を基準として、レゾルバ6から入力される電圧波形信号の位相差を検出する。
このR/Dコンバータ7により検出される電圧波形信号の位相差は、レゾルバ6のロータ11の回転位相θである。
【0022】
また、サーボモータ5のフィードバック制御において、このR/Dコンバータ7を有するサーボ制御部3は、サーボモータ5へ制御信号を出力する。
サーボモータ5は、制御信号により回転駆動され、これに従ってレゾルバ6も回転駆動される。
R/Dコンバータ7は、サーボモータ5の回転位相を、ロータ11の回転位相θとして検出する。
サーボ制御部3は、R/Dコンバータ7により検出された回転位相θに基づいて、駆動制御に必要となる情報、たとえば制御指令で指定された目標制御量に対応する測定量の差(誤差)を演算する。
サーボ制御部3は、R/Dコンバータ7により検出された回転位相θに基づいて、たとえばモータの回転量などの測定量を演算する。
そして、サーボ制御部3は、サーボモータ5の動作状態を判断し、モータの駆動状態がコントローラ2の制御指令に係る目標物理量と合致するように、サーボモータ5への制御信号を制御する。
サーボ制御部3は、たとえばサーボモータ5の位置(回転量)や、速度の目標値と検出値とが合致するようにサーボモータ5への制御信号を制御する。
【0023】
このようにサーボ制御システム1では、コントローラ2からの制御指令があると、サーボ制御部3は、その制御指令を実行するようにサーボモータ5を駆動制御する。
そして、この制御において、サーボモータ5の出力軸5aの回転位相θは、レゾルバ6およびR/Dコンバータ7により検出される。
また、R/Dコンバータ7は、サーボモータ5およびレゾルバ6の温度を検出する。
【0024】
このような目的で使用されるレゾルバ6は、モータと同様のロータ11およびステータ12の構造を有するため、光学素子を用いたロータリエンコーダなどと比べて堅牢であり、振動やほこりなどに強い。
【0025】
[レゾルバの構造および回転位相θの検出]
図2は、図1のレゾルバ6として用いることができる、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6の概略的な内部構造を示す分解斜視図である。
図2のレゾルバ6は、ロータ11と、ステータ12とを有する。
ステータ12は、たとえばサーボモータ5のハウジングに固定される。
ロータ11は、ステータ12の内部空間に挿入された状態で、回転可能に配置される。
ロータ11は、たとえばサーボモータ5の出力軸5aと連結され、出力軸5aとともに回転する。
【0026】
図3は、二相励磁一相出力のレゾルバ6についての回路図である。
図3の二相励磁一相出力方式のレゾルバ6は、第1励磁巻線13、第2励磁巻線14、励磁受信巻線15、出力用励磁巻線16、出力巻線17を有する。
図3は、本実施形態とは異なり、レゾルバ6の出力巻線17に対して、R/Dコンバータ7の終端抵抗素子43のみが接続された状態での説明図である。
図3では、出力巻線17に、補償抵抗回路21が接続されていないが、本実施形態の出力巻線17は、補償抵抗回路21を介して通信ケーブル18に接続されている。通信ケーブル18の他端は、サーボ制御部3のR/Dコンバータ7の終端抵抗素子43に接続される。通信ケーブル18は、レゾルバ6とR/Dコンバータ7との間で励磁電圧信号等を送受可能であればよく、たとえば100メートル程度の長さとすることができる。
【0027】
励磁受信巻線15、および出力用励磁巻線16は、図2に示すようにロータ11に配置され、ロータ11とともに回転駆動される。
励磁受信巻線15は、ロータ11の回転軸方向の一端側に、ロータ11の半径方向に沿って巻きつけられる。
出力用励磁巻線16は、ロータ11の回転軸方向の他端側に、ロータ11の周方向に沿って巻きつけられる。
励磁受信巻線15の両端と、出力用励磁巻線16の両端とは、図3に示すように、ロータ11において互いに接続される。
【0028】
第1励磁巻線13、第2励磁巻線14、および出力巻線17は、図2に示すように、ステータ12に配置される。
第1励磁巻線13および第2励磁巻線14は、二相の励磁巻線であり、ロータ11の励磁受信巻線15と対向するように、ステータ12の一端側に交互に配列して配置される。
第1励磁巻線13と第2励磁巻線14とは、機械的な位相が90度ずらして配置される。
出力巻線17は、ロータ11の出力用励磁巻線16と対向するように、ステータ12の他端側に、周方向に沿って配置される。
【0029】
図3に示すように、レゾルバ6は、基本的に、トランスを組み合わせた構造を有する。
トランスでは、一方の巻線に励磁電圧が印加されることにより、一方の巻線に励磁電流が流れ、この電流の変化が他方の巻線の磁束を変化させ、他方の巻線に誘起電圧が発生する。
【0030】
二相励磁一相出力方式のレゾルバ6において、サーボ制御部3のR/Dコンバータ7は、レゾルバ6のステータ12において機械的に90度ずらして配置された第1励磁巻線13および第2励磁巻線14に対して、振幅が等しく電気的に位相が90度ずれた励磁電圧を印加する。
この電圧は、たとえば図3に示すように、Asin(ωt),Acos(ωt)である。
ここで、Aは、励磁電圧振幅であり、任意の値である。ωは、励磁周波数である。
この第1励磁巻線13および第2励磁巻線14による2相の励磁電圧は、ロータ11の励磁受信巻線15により受けられる。
ロータ11の機械的な回転位相θに応じて、励磁受信巻線15の受信電圧(図5中のV1−V2ノード間の電圧)が変化する。
この励磁受信巻線15の受信電圧は、sin(ωt+θ)の位相で変化する。
つまり、レゾルバ6のロータ11の機械的な回転位相θは、励磁受信巻線15の受信電圧において、位相ずれ(位相差)θとして含まれる。
【0031】
励磁受信巻線15の受信電圧は、ロータ11の出力用励磁巻線16に印加される。
ロータ11の出力用励磁巻線16は、ステータ12の出力巻線17とトランス構造を構成する。
このため、励磁受信巻線15の受信電圧は、最終的に、ステータ12の出力巻線17から出力される。
このステータ12の出力巻線17の電圧が、サーボ制御部3のR/Dコンバータ7の終端抵抗素子43に印加される。
【0032】
サーボ制御部3のR/Dコンバータ7は、図3に示すように、出力巻線17に接続された終端抵抗素子43を有する。
終端抵抗素子43を用いることにより、S/N比を高くすることができる。
サーボ制御部3のR/Dコンバータ7は、レゾルバ6の電圧波形信号V(DTCT)として、Bsin(ωt+θ)を検出する。
ここで、Bは、出力電圧の振幅であり、Aより小さい任意の値である。
R/Dコンバータ7は、たとえば励磁電圧Asin(ωt)の位相と、出力電圧Bsin(ωt+θ)の位相とを比較し、これらの位相差をレゾルバ6のロータ11の回転位相θとして検出する。
【0033】
また、レゾルバ6は、第1励磁巻線13、第2励磁巻線14などの励磁巻線に二相の励磁電圧波形信号が供給されると、励磁受信巻線15に、ロータ11の回転位相に応じた電圧を誘導する。
励磁受信巻線15に誘導された電圧は、ロータ11の出力用励磁巻線16に印加される。
出力用励磁巻線16の電圧により、ステータ12の出力巻線17に電圧が励磁される。
このようにロータ11の出力用励磁巻線16に誘導された電圧による電圧波形信号は、ステータ12の出力巻線17から、レゾルバ6外へ出力される。
レゾルバ6は、サーボモータ5の出力軸5aの回転位相に対応する電圧波形信号を生成して出力する。
【0034】
[レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θの温度ドリフト]
図2のレゾルバ6では、出力電圧波形信号の位相が、サーボモータ5およびレゾルバ6の動作温度により変動する。
その結果、レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいてR/Dコンバータ7により検出される回転位相θも、サーボモータ5およびレゾルバ6の動作温度により変動する。
図4は、図3のようにレゾルバ6の出力巻線17に補償抵抗回路21を接続していない場合での、出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θの一例の温度特性図である。
そして、レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θは、図4に示すようにレゾルバ6の動作温度が0度から80度まで変化すると、約+20分から−40分までの範囲で変化する。
レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θは、合計で約53分変化する。
1分は、1度の60分の一である。
【0035】
次に、この検出される回転位相の温度ドリフトについて詳しく説明する。
図3には、レゾルバ6の各巻線についての抵抗値およびインダクタンス値が図示されている。
ステータ12の第1励磁巻線13は、抵抗Rs1と、インダクタンスLs1を有する。
ステータ12の第2励磁巻線14は、抵抗Rs2と、インダクタンスLs2を有する。
ロータ11の励磁受信巻線15は、抵抗Rriと、インダクタンスLriを有する。
ロータ11の出力用励磁巻線16は、抵抗Rroと、インダクタンスLroを有する。
ステータ12の出力巻線17は、抵抗Rsoと、インダクタンスLsoを有する。
また、図3では、レゾルバ6の出力巻線17に、抵抗値RLの終端抵抗素子43が接続されている。終端抵抗素子43は、R/Dコンバータ7に設けられる。
【0036】
この場合、たとえば第1励磁巻線13のインピーダンスは、Rs1+jωLs1である。
入力電圧Vinをsin(ωt)とすると、第1励磁巻線13の電流Is1は、下記式1となる。
また、入力電圧Vinに対する第1励磁巻線13の電流の位相ずれは、下記式2となる。
この第1励磁巻線13の電流に基づいて、入力電圧位相に対してθs1ずれた電圧が、ロータ11の励磁受信巻線15に発生する。
Is1=Vin/(Rs1+jωLs1) ・・・式1
θs1=tan−1(−ωLs1/Rs1) ・・・式2
【0037】
ここで、レゾルバ6の各巻線の抵抗値の温度変化を説明する。
レゾルバ6の温度変化ΔTに対して、第1励磁巻線13の温度ドリフトΔθs1は、下記式3となる。
ここで、巻線の抵抗値の温度係数αには、巻線に一般的に使用される銅線の温度係数である0.43%を使用している。
Δθs1=tan−1(−ωLs1/Rs1)−tan−1(−ωLs1/Rs1(1+α×ΔT)) ・・・式3
【0038】
レゾルバ6の他の巻線においても、下記式4から6に例示するように、同様な温度ドリフトが発生する。
ここで、Δθriは、励磁受信巻線15による温度ドリフトである。
Δθroは、出力用励磁巻線16による温度ドリフトである。
Δθsoは、出力巻線17による温度ドリフトである。
なお、Δθsoについては、R/Dコンバータ7の終端抵抗素子43の抵抗値RLを考慮している。
Δθri=tan−1(−ωLri/Rri)−tan−1(−ωLri/Rri(1+α×ΔT)) ・・・式4
Δθro=tan−1(−ωLro/Rro)−tan−1(−ωLro/Rro(1+α×ΔT)) ・・・式5
Δθso=tan−1(−ωLso/(Rso+RL))−tan−1(−ωLso/Rso(1+α×ΔT)+RL) ・・・式6
【0039】
そして、第1励磁巻線13に供給される第1励磁電圧波形信号についての、レゾルバ6全体での温度ドリフトΔθは、下記式7となる。
なお、第2励磁巻線14に供給される第2励磁電圧波形信号についての、レゾルバ6全体での温度ドリフトΔθも、下記式7と同様の式になる。
Δθ=Δθs1+Δθri+Δθro+Δθso ・・・式7
【0040】
[レゾルバの出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θの補償]
レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出される回転角度θの温度ドリフトを抑制するために、本実施形態では、図5に示すように、レゾルバの巻線に補償抵抗回路21を接続する。
図5は、図2のレゾルバ6を含む、本実施形態での電気回路を示す回路図である。
図5の電気回路は、補償抵抗回路21を有する。
補償抵抗回路21は、出力巻線17と終端抵抗素子43との間に直列に接続される。
また、補償抵抗回路21は、レゾルバ6のステータ12内に配置される。補償抵抗回路21は、好ましくは出力巻線17の近傍に配置してよい。
【0041】
また、本実施形態において、補償抵抗回路21は、図5に示すようにレゾルバ6の複数の巻線のうちの、出力巻線17のみに接続されている。
これにより、後述する図9に例示するように、レゾルバの出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θの温度ドリフトは、格段に抑制される。
【0042】
ところで、レゾルバ6の励磁方式には、たとえば、一相励磁二相出力方式と、二相励磁一相出力方式とがある。
一相励磁二相出力方式のレゾルバ6では、信号を二相で出力することの利点を生かして、二相の信号同士を演算することにより、検出回転位相の温度ドリフトをキャンセルすることが可能である。
しかしながら、一相励磁二相出力方式のレゾルバ6では、この温度補償のために出力信号同士の演算を必要とし、R/Dコンバータ7には、信号同士を掛け合わせる回路や、同期整流回路51を設ける必要がある。
これらの信号同士のアナログ演算に用いられる回路は、アナログ的に高精度な特性が要求されるため、高価である。
その一方で、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6では、一相の出力信号について、励磁信号を基準とした位相差に基づいて回転位相を検出する。
このため、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6と組み合わされるR/Dコンバータ7は、比較的安価になる。
しかしながら、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6では、一相の信号しか出力しない。
その結果、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6では、信号同士の演算により検出回転位相の温度ドリフトをキャンセルすることができない。
また、サーボモータ5に取り付けられたレゾルバ6では、サーボモータ5の熱がレゾルバ6に伝導されるため、検出回転位相θの温度ドリフトが大きい。
なお、レゾルバ6の検出回転位相の温度ドリフトの原因は、レゾルバ6で巻線として用いる銅線の抵抗値が、モータやレゾルバ6の動作温度により変化するからである。
銅線の抵抗値は、100度の温度変化において43%も変化する(43%/100℃)。
このように、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6では、一相励磁二相出力方式のレゾルバと比べて、検出される回転位相θの温度ドリフトを抑制することが求められている。
【0043】
[補償抵抗回路21]
このようなレゾルバ6の巻線のインピーダンスの温度変化を抑制するために、温度上昇に伴って抵抗値が低下する負の温度特性を有する負性抵抗素子、たとえばサーミスタ22を用いることができる。
サーミスタ22は、たとえばNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタ22である。
NTCサーミスタ22は、銅線とは逆に、温度上昇に伴って抵抗値が低下する負の温度特性を有する。
このため、NTCサーミスタ22は、レゾルバ6の巻線の抵抗値の温度変化を補償するために使用できる。また、サーミスタ22は、安価である。
しかしながら、サーミスタ22の抵抗値の温度変化は、銅線の抵抗値の温度変化の仕方と異なる。
銅線などの巻線での抵抗は、温度に対して略比例関係で変化する。
これに対して、サーミスタ22の抵抗は、下記式8に基づいて指数関数的に変化する。
ここで、Rは、サーミスタ22の抵抗値、R0は、基準温度、たとえば25度でのサーミスタ22の抵抗値、Bは、サーミスタ22固有の値である定数、Tは、絶対値温度(K)、T0は、25度での絶対値温度(=298K=25+273)である。
R=R0×eB×(1/T−1/T0) ・・・式8
【0044】
そこで、本実施形態では、出力巻線17に対してサーミスタ22のみを直列に接続するのではなく、図6に示すように、サーミスタ22と通常の抵抗素子23とを並列に接続した並列抵抗回路を、補償抵抗回路21として出力巻線17に直列に接続する。
なお、サーミスタ22と、通常の抵抗素子23とは共に、受動素子である。
通常の抵抗素子23は、少なくとも温度上昇に伴って抵抗値が増加する正の温度特性を有するものであればよい。
好ましくは、通常の抵抗素子23は、抵抗値の変化が、温度に対して略比例関係で変化するものがよい。
このような抵抗素子としては、たとえば、金属皮膜抵抗素子、酸化金属皮膜抵抗素子、カーボン抵抗素子、ソリッド抵抗素子がある。
【0045】
図7は、サーミスタ22および並列抵抗回路の抵抗値の温度特性の一例を示す図である。
図7(A)および図7(B)の横軸は、温度であり、縦軸は、抵抗値である。
図7(B)は、図7(A)の部分拡大図であり、縦軸の抵抗値が図7(A)より拡大されている。
【0046】
サーミスタ22単体の抵抗値は、図7(A)に示すように、0から100度までの温度範囲において、温度に対して反比例的に減少する負の温度特性を有する。
なお、抵抗素子23は、温度に対して略一定の傾きで抵抗値が増加する正の温度特性を有する。
【0047】
これに対して、サーミスタ22と抵抗素子23との並列抵抗回路の抵抗値は、図7(B)に示すように、温度に対して略一定の傾きで減少する。
並列抵抗回路の抵抗値は、略0度から100度の範囲において、抵抗値が略直線的に減少する負の温度特性となる。
このようにサーミスタ22に対して通常の抵抗素子23を並列に接続することにより、その並列抵抗回路の抵抗値は、温度に対して略一定の傾きで減少する負の温度特性を有する。
【0048】
本実施形態では、この図6の並列抵抗回路を、レゾルバ6の巻線に直列に接続する補償抵抗回路21として使用する。
また、本実施形態では、図5に示すように、レゾルバ6の複数の巻線のうち、出力巻線17のみに対して並列抵抗回路を直列に接続する。
【0049】
図6の並列抵抗回路では、その抵抗値の温度変化の傾きを、サーミスタ22と抵抗素子23との組み合わせにより設定可能である。
このため、たとえば後述する図8に示すように、並列抵抗回路をレゾルバ6のすべての巻線に対して、各々の巻線の抵抗値の温度変化を相殺する特性とした並列抵抗回路を直列に接続することも可能である。
この場合、レゾルバ6の各巻線で発生する抵抗値の温度変化は、巻線毎に個別に相殺できる。
しかしながら、特にロータ11の巻線に対して並列抵抗回路を接続する場合、ロータ11に対して並列抵抗回路を配置しなければならない。
この場合、レゾルバ6の振動、衝撃などにより、並列抵抗回路または巻線との接続部分が破損し易い。
その結果、レゾルバ6の耐環境性能が著しく損なわれる。
このため、本実施形態では、並列抵抗回路による補償抵抗回路21を、ステータ12側のみに設ける。
【0050】
また、二相励磁方式では、第1励磁電圧波形信号と第2励磁電圧波形信号とは、波形が揃っていることが重要である。
第1励磁巻線13および第2励磁巻線14に対して補償抵抗回路21を個別に接続すると、これらの抵抗値の誤差により、これらの巻線での励磁電圧の位相バランスなどが崩れる。
その結果、この場合には、レゾルバ6の検出性能そのものが低下する。
このため、本実施形態では、第1励磁巻線13および第2励磁巻線14がステータ12側に設けられているものの、これらの巻線に対して、並列抵抗回路を接続しない。
【0051】
以上の理由により、本実施形態では、補償のための並列抵抗回路(補償抵抗回路21)を、レゾルバ6の複数の全ての巻線のうち、出力巻線17のみに接続する。
また、出力巻線17には、サーボ制御部3の終端抵抗素子43が直列に接続されている。
このため、出力巻線17に接続した並列抵抗回路では、他の巻線に接続する場合と比べて抵抗の操作量を大きくすることができ、好都合である。
【0052】
ここで、サーミスタ22と通常の抵抗素子23とを並列に接続した並列抵抗回路の抵抗値(25度)をRth25とすれば、出力巻線17での温度ドリフト(25度+ΔT)は、下記式9となる。
Δθso=tan−1(−ωLso/(Rso+RL+Rth25))−tan−1(−ωLso/(Rso(1−α×ΔT)+RL+Rth(ΔT))) ・・・式9
【0053】
このため、本実施形態では、たとえば最終的に、「Δθ=Δθs1+Δθri+Δθro」とし、かつ、「Δθso+Δθ=0」とすれば、レゾルバ6の全体での温度ドリフトを完全に相殺することが可能である。
【0054】
[比較説明]
図8は、図5と異なり、レゾルバ6のすべての巻線に対して個別に、個別補償抵抗回路31を接続した場合のレゾルバ6の回路図である。
各個別補償抵抗回路31は、たとえば図6と同様のサーミスタ22と抵抗素子23との並列抵抗回路であり、温度に対して負の抵抗変化率を持つ。
図8に示すように、レゾルバ6のすべての巻線に対して個別にその抵抗値の温度変化を相殺する負の温度特性の個別補償抵抗回路31を直列に接続することにより、レゾルバ6の各巻線で生じる抵抗値の温度変化は、各巻線に対応する個別補償抵抗回路31により個別に相殺できる。
その結果、レゾルバ6の動作温度が変動しても、巻線と個別補償抵抗回路31との組み合わせによる各組の直列回路の全体では、抵抗値が温度により変化しなくなる。
その結果、レゾルバ6から出力される電圧波形信号の位相は、レゾルバ6の動作温度によらず安定したものとなる。
しかしながら、図8のようにレゾルバ6のすべての巻線に対して個別補償抵抗回路31を個別に接続するためには、レゾルバ6のロータ11に対しても、個別補償抵抗回路31を配置することになる。
ロータ11に個別補償抵抗回路31を配置した場合、ロータ11の耐久性や信頼性が低下する。
【0055】
このようなレゾルバ6の信頼性の低下を抑制するために、本実施形態では、図5に示すように、出力巻線17のみに補償抵抗回路21を接続している。
出力巻線17は、レゾルバ6のステータ12に設けられるものであり、補償抵抗回路21もステータ12に設けられる。ロータ11には、補償抵抗回路21を設けなくて済む。
【0056】
また、本実施形態では、ステータ12の出力巻線17に接続した1個の補償抵抗回路21により、レゾルバ6のすべての巻線に起因する検出回転位相の温度ドリフトを一括補償する。
これにより、本実施形態では、レゾルバ6の最大のメリットである耐環境性を損なわずに、検出回転位相の温度ドリフトを簡易に且つ安価に補償することができる。
レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相の温度ドリフトは、レゾルバ6の動作温度にかかわらず小さいものとなる。
回転位相は、レゾルバ6の動作温度に応じた変化をし難くなる。
【0057】
[回転位相θの温度ドリフトを抑制した例]
上述したように、図4の特性図は、図3のようにレゾルバ6の巻線に補償抵抗回路21(並列抵抗回路)を一切接続していない場合での、検出回転位相θの温度特性の一例である。
図9は、図5のようにレゾルバ6の出力巻線17に補償抵抗回路21(並列抵抗回路)を接続した場合での、検出回転位相θの温度特性の一例を示す図である。
レゾルバ6の出力巻線17に補償抵抗回路21(並列抵抗回路)を直列に接続することにより、レゾルバ6の全体での温度ドリフトは、図4の温度特性から図9の温度特性となる。
【0058】
補償抵抗回路21(並列抵抗回路)により温度補償をしない場合、検出される回転位相θは、図4に示すように、レゾルバ6の動作温度が0度から80度に変化する間に約+20分から−40分の範囲で変化する。
これに対して、補償抵抗回路21(並列抵抗回路)により温度補償をした場合、検出される回転位相θは、図9に示すように、約+7分から−1分までの範囲で変化する。
【0059】
このように、本実施形態では、並列抵抗回路による補償抵抗回路21を出力巻線17に直列に接続し、この1個の補償抵抗回路21によりレゾルバ6のすべての巻線による温度ドリフトを補償することにより、レゾルバ6の出力電圧波形に基づいて検出される回転位相(位相差)θの温度ドリフトを、約十分の一にまで抑制できる。
本実施形態では、たとえば0から80度までの温度範囲の全体において、検出される回転位相θの温度ドリフトを効果的に低減できる。
【0060】
[温度ドリフトの残差の補償]
ところで、本実施形態の図5のように出力巻線17に補償抵抗回路21を接続し、この補償抵抗回路21によりレゾルバ6のすべての巻線に起因する検出回転位相の温度ドリフトを一括補償する場合、その代償として、R/Dコンバータ7により検出される電圧の振幅(大きさ)が、レゾルバ6の温度に応じて変化することになる。
【0061】
そこで、本実施形態では、この温度に応じて変化するR/Dコンバータ7の検出電圧の振幅(大きさ)を利用し、一括補償で取り除くことができない微小な残存ドリフトの残差についても補償する。
なお、R/Dコンバータ7の検出電圧の振幅の変化に基づいて得られる温度は、レゾルバ6やサーボモータ5のリアルタイムの温度である。
このため、R/Dコンバータ7は、この検出温度をモータ制御に利用して、モータ過熱に対する保護の制御を実現できる。
【0062】
終端抵抗素子43を除いた状態での、補償抵抗回路21および出力巻線17によるインピーダンスZrは、下記式10となる。
Zr=(Rso+Rth+JωLso) ・・・式10
【0063】
出力巻線17に接続した補償抵抗回路21で一括補償を行わず、巻線毎に補償をした場合、出力巻線17のループの抵抗値は、上記式10とは異なり、Rso+Rth=Rcの固定値となる。
これに対して、出力巻線17に接続した補償抵抗回路21一括補償を行う場合は、出力巻線17のループの抵抗値は、巻線の温度ドリフトとは逆に変化する温度特性になる。
よって、出力巻線17のループの抵抗値Rso+Rthは、温度とともに減少する。
また、終端抵抗素子43で検出されるレゾルバ6の出力電圧は、図9の特性線Aに示すように、温度の上昇に略比例して大きくなる。
【0064】
図10は、R/Dコンバータ7の終端抵抗素子43の電圧V(DTCT)の温度特性図である。
横軸は、レゾルバ6の動作温度である。
縦軸は、終端抵抗素子43で検出される電圧の振幅(大きさ)である。
ただし、縦軸は、0度のときの出力電圧の振幅(大きさ)Bを1として正規化されている。
【0065】
図10の特性線Aに示すように出力巻線17で温度ドリフトを一括補償した場合、検出電圧V(DTCT)は、レゾルバ6の動作温度の上昇に略比例して大きくなる。
終端抵抗素子43の電圧V(DTCT)は、R/Dコンバータ7において検出可能である。
この特性により、R/Dコンバータ7では、レゾルバ6の出力電圧の最大値を考慮した設計が必要になるものの、以下のメリットが生じる。
すなわち、たとえばレゾルバ6の動作温度と出力電圧との関係をあらかじめ調べておくことにより、検出した電圧V(DTCT)から、レゾルバ6またはモータの現在の温度を得ることが可能になる。
【0066】
レゾルバ6は、通常、サーボモータ5などと一体化されてその回転位相を検出するセンサとして用いられる。
この場合において、モータの温度を検出するために、モータに対して、その温度を直接測定するための熱電対を配設することもできるが、モータの設置環境によっては、熱電対の信号線をレゾルバ6の通信ケーブル18と同様に100メートル程度の長い距離で引きまわす必要が生じる。
このような接続環境において、熱電対を用いてモータの温度を正確に検出することは難しい。
また、モータの温度を検出するために、モータに対して、所定の温度になるとスイッチが切れるサーモスイッチなどを埋め込むこともできるが、上述した熱電対の場合と同様に、検出信号を長距離伝送する必要が生じる。
【0067】
なお、図10の特性線Bは、図8のようにレゾルバ6のすべての巻線において個別に抵抗値の温度変化を相殺した場合での、検出電圧V(DTCT)の振幅の温度特性である。
この場合、検出電圧V(DTCT)の振幅は、レゾルバ6の温度によらず常に一定となる。
【0068】
また、図10の特性線Cは、図3のように温度補償を一切していない場合での、検出電圧V(DTCT)の振幅の温度特性である。
この場合も、出力電圧波形信号の振幅は、レゾルバ6の温度によらず略一定である。
【0069】
これら特性線B,Cと特性線Aとの対比で明らかなように、本実施形態のように出力巻線17のみで一括補償した場合には、検出電圧V(DTCT)の振幅がレゾルバ6の温度に応じて変動するようになる。
すなわち、特性線Aのような出力電圧波形信号の振幅の温度変化は、出力巻線17に直列に接続された補償抵抗回路21の抵抗値の温度特性が、一括補償をするために、出力巻線17の抵抗値の温度変化のみを相殺する場合よりも大きく変化する負の温度特性とされている場合において、初めて生じる。
【0070】
[R/Dコンバータ7]
本実施形態のサーボ制御部3のR/Dコンバータ7は、図10の検出電圧V(DTCT)の振幅の温度変動を検出し、これに基づいて図9の温度ドリフトの残差を二次補償する。
【0071】
図11は、図1のR/Dコンバータ7の回路構成を示すブロック図である。
図11のR/Dコンバータ7は、基準信号発生回路41、励磁回路42、終端抵抗素子43、バンドパスフィルタ(BPF)44、コンパレータ45、位相カウンタ46、残差検出部47、残差補正部48を有する。
そして、図11のR/Dコンバータ7は、二相励磁一相出力のレゾルバ6とともに用いられ、位相検出方式によりレゾルバ6の回転位相θを検出する。
【0072】
基準信号発生回路41は、基準信号を生成する。
基準信号は、たとえば所定の一定周期の矩形波形の信号である。
基準信号の周期は、たとえば上述したAsin(ωt),Acos(ωt)と同じ周期であればよい。
【0073】
励磁回路42は、基準信号発生回路41に接続される。
励磁回路42は、基準信号に同期した第1励磁電圧信号を発生してレゾルバ6の第1励磁巻線13へ供給する。
また、励磁回路42は、基準信号と位相が90度ずれた第2励磁電圧信号を発生して第2励磁巻線14へ供給する。
第1励磁電圧信号および第2励磁電圧信号は、たとえば、上述したAsin(ωt)とAcos(ωt)とである。
【0074】
終端抵抗素子43は、図3のレゾルバ6の出力巻線17に直列に接続される。
ただし、本実施形態のレゾルバ6の出力巻線17には、図5に示すように一括補償用の補償抵抗回路(並列抵抗回路)21が接続されている。
この終端抵抗素子43は、出力巻線17および補償抵抗回路21と直列に接続される。
よって、レゾルバ6で生成された出力電圧波形信号は、補償抵抗回路21を通じて、終端抵抗素子43に印加される。
終端抵抗素子43には、レゾルバ6の出力電圧を、補償抵抗回路21および終端抵抗素子43の分圧比で分けた電圧が印加される。
【0075】
バンドパスフィルタ44は、終端抵抗素子43に接続される。
バンドパスフィルタ44は、たとえば励磁信号の周波数ωの帯域を透過させ、当該帯域の高周波側および低周波側を遮断するフィルタである。
これにより、バンドパスフィルタ44は、終端抵抗素子43に発生する電圧から、Bsin(ωt+θ)の出力電圧波形信号を抽出する。
バンドパスフィルタ44は、通信ケーブル18に乗ったノイズ成分などを除去することができる。
【0076】
コンパレータ45は、バンドパスフィルタ44に接続される。
コンパレータ45は、出力電圧波形信号を、ゼロクロスレベルと比較する。
そして、コンパレータ45は、出力電圧波形信号がゼロクロスレベルより高い場合にハイレベルを出力し、低い場合にローレベルを出力する。
これにより、コンパレータ45は、ωtの周期でハイレベルとローレベルとに切り替わる矩形信号を、出力電圧波形信号に同期させて出力する。
コンパレータ45は、出力電圧波形信号をデジタル波形に変換する。
【0077】
位相カウンタ46は、コンパレータ45および基準信号発生回路41に接続される。
位相カウンタ46は、基準波形信号のたとえば立ち上がりタイミングからカウントを開始する。
また、位相カウンタ46は、コンパレータ45で変換された出力電圧波形信号についての同じタイミング、すなわちたとえば立ち上がりタイミングまでの期間において、所定のクロック信号のクロック数をカウントする。
そして、位相カウンタ46は、たとえばクロック信号のカウント値を、レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出した位相差θ(DTCT)として出力する。
【0078】
残差検出部47は、出力電圧波形信号に基づいて検出した位相差θ(DTCT)に残存する温度ドリフトの残差Δθを生成して出力する。
残差検出部47は、バンドパスフィルタ44に接続される。
残差検出部47は、出力電圧波形信号の振幅(大きさ)に基づいて、出力巻線17に接続された一括補償用の補償抵抗回路21で取り除くことができなかった温度ドリフトの残差(Δθ)を生成する。
【0079】
図12は、図11の残差検出部47の回路構成を示すブロック図である。
図12の残差検出部47は、整流回路51、ADコンバータ52、変換部53、電圧温度変換テーブル54、温度残差変換テーブル55を有する。
【0080】
整流回路51は、たとえばダイオード56と、キャパシタ57と、第1抵抗素子58と、第2抵抗素子59とを有する。
ダイオード56は、バンドパスフィルタ44と第1抵抗素子58の一端との間に接続される。
第1抵抗素子58の他端は、キャパシタ57の一端と、第2抵抗素子59の一端とに接続される。
キャパシタ57の他端および第2抵抗素子59の他端は、接地される。
このような整流回路51において、キャパシタ57は、出力電圧波形信号により充電される。出力電圧波形信号は、正弦波の波形を有する。
出力電圧波形信号は、整流回路51により、直流電圧に整流される。
整流回路51は、出力電圧波形信号の振幅(大きさ)に対応した直流電圧を生成して出力する。
【0081】
ADコンバータ52は、整流回路51に接続される。
ADコンバータ52は、整流回路51により整流された直流電圧をAD変換する。
これにより、ADコンバータ52から、上述したBsin(ωt+θ)の振幅値(B)に対応する電圧のデジタル値が得られる。
すなわち、出力電圧波形信号の振幅(大きさ)を示す値が得られる。
【0082】
電圧温度変換テーブル54は、図10の特性線Aをデータ化したものである。
電圧温度変換テーブル54は、たとえば複数組のデータを有する。
各組のデータは、出力電圧波形信号の振幅(大きさ)の値Bと、図10においてこれに対応するレゾルバ6の温度の値とを有する。
【0083】
温度残差変換テーブル55は、図9の検出される回転位相θの温度特性をデータ化したものである。
温度残差変換テーブル55は、たとえば複数組のデータを有する。
各組のデータは、レゾルバ6の温度の値と、図9においてこれに対応する温度ドリフトの残差(分)の値とを有する。
【0084】
変換部53は、ADコンバータ52に接続される。
変換部53は、電圧温度変換テーブル54および温度残差変換テーブル55を用いて、ADコンバータ52から入力される振幅値(B)に基づいて、一括補償で取り除くことができなかった残差(分)を生成する。
具体的には、変換部53は、まず、電圧温度変換テーブル54を参照し、ADコンバータ52から入力される振幅(B)を示す電圧値に対応するレゾルバ6の温度の値を取得する。
次に、変換部53は、温度残差変換テーブル55を参照し、取得したレゾルバ6の温度の値に対応する残差(Δθ)の値を取得する。
【0085】
残差補正部48は、たとえば図12に示すように減算器である。
残差補正部48は、位相カウンタ46と、残差検出部47の変換部53とに接続される。
そして、残差補正部48は、出力電圧波形信号に基づいて検出された位相差θ(DTCT)から、残差(Δθ)を減算する。
残差補正部48は、演算結果を、R/Dコンバータ7の回転位相の検出値θとして出力する。
これにより、R/Dコンバータ7は、図9の温度ドリフトの残差が取り除かれた回転位相θを生成して出力できる。
【0086】
以上のように、本実施形態では、まず、レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θの温度ドリフトを、レゾルバ6の巻線とは逆の温度特性(負の温度特性)を有する補償抵抗回路21により略相殺するようにしている。
【0087】
特に、本実施形態では、この出力巻線17に接続された補償抵抗回路21で、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6の複数の巻線に起因する、検出回転位相の温度ドリフトを一括補償する。
すなわち、出力巻線17に接続された補償抵抗回路21により、二相のステータ12励磁コイル(第1励磁巻線13、第2励磁巻線14)、ロータ11の励磁受信コイル(励磁受信巻線15)、ロータ11の出力励磁コイル(出力用励磁巻線16)、および出力巻線17に起因する温度ドリフトを一括補償する。
これにより、本実施形態では、レゾルバ6の出力電圧波形に基づいて検出される回転位相θ(DTCT)自体の温度ドリフトを効果的に抑制することができる。
出力電圧波形に基づいて検出される回転位相θ(DTCT)は、レゾルバ6の温度によらず安定したものとなる。
【0088】
しかも、本実施形態では、補償抵抗回路21をレゾルバ6のすべての巻線に対して設けるのでなく、出力巻線17のみに設けている。
このため、本実施形態では、ロータ11に補償抵抗回路21を設ける必要がないので、レゾルバ6の耐信頼性などを損なうことなく高精度に安定した回転位相θ(DTCT)を検出することができる。
【0089】
これに加えて、本実施形態では更に、出力巻線17のみに補償抵抗回路21を接続し、これによりレゾルバ6のすべての巻線に起因する温度ドリフトを略相殺している。
そして、出力巻線17のみに接続された補償抵抗回路21で一括補償をする場合、その補償抵抗回路21は、レゾルバ6の出力巻線17に生じる抵抗値の温度変化を相殺する場合より大きく抵抗値が変化する、負の温度特性を有する。
その結果、R/Dコンバータ7の終端抵抗素子43により検出される電圧の振幅(大きさ)は、レゾルバ6の温度に応じて変化するようになる。
【0090】
このため、本実施形態では、この終端抵抗素子43により検出される電圧の振幅(大きさ)を検出し、この検出値を電圧温度変換テーブル54および温度残差変換テーブル55を用いて温度ドリフトの残差Δθへ変換し、さらに、レゾルバ6の出力電圧波形に基づいて検出される回転位相θ(DTCT)から残差Δθを減算する。
これにより、本実施形態では、電圧波形信号に基づいて検出されるレゾルバ6の回転位相θ(DTCT)を単に補償抵抗回路21により安定化させた場合に比べて、さらに高精度に安定した回転位相θを得ることができる。
【0091】
また、本実施形態では、温度ドリフトの残差Δθを得る過程において、サーボモータ5やレゾルバ6のリアルタイムの温度を得ている。
このように、本実施形態では、レゾルバ6以外のたとえば熱電対などの他の温度センサを使用することなく、サーボモータ5やレゾルバ6のリアルタイムの温度を正確に検出することができる。
そして、この温度を用いてモータ駆動を制御することにより、本実施形態では、安価でより信頼性のあるモータ保護を実現可能である。
たとえば、サーボ制御部3が、検出したサーボモータ5のリアルタイムの瞬時温度と、モータ過熱温度以下の限界温度とを比較することによりモータ過熱の有無を判断し、閾値温度を超えている場合にはモータを減速または停止することにより、モータが過熱状態となってしまわないように制御することも可能である。
このようにモータの瞬時温度を実測することにより、本実施形態では、モータの過熱に対して信頼性が高い保護が可能になる。
【0092】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0093】
たとえば上記実施形態において、補償抵抗回路21は、温度上昇に対して抵抗値が下がる温度特性のサーミスタ22と、温度上昇に対して抵抗値が上がる温度特性の抵抗素子とが並列に接続された受動回路で構成されている。
この他にも例えばレゾルバ6の動作温度範囲が狭い場合などにおいては、補償抵抗回路21は、サーミスタ22のみで構成してよい。
また、補償抵抗回路21は、サーミスタ22以外の負の温度特性を有する素子で構成してよい。
更に他にも例えば、補償抵抗回路21は、図13に示す回路により構成されてよい。
補償抵抗回路21は、少なくとも、レゾルバ6の温度上昇に対して抵抗値が下がる負の温度特性を有すればよい。
【0094】
図13は、補償抵抗回路21の変形例を示す回路図である。
図13の補償抵抗回路21は、ダイオード61、第3抵抗素子62、第4抵抗素子63、N型のFET(Field Effect Transistor)64を有する。
FET64は、出力巻線17に直列に接続される。
すなわち、ソース端子が出力巻線17の一端に接続され、ドレイン端子がR/Dコンバータ7の終端抵抗素子43に接続される。
ダイオード61は、アノードがレゾルバ6の出力巻線17の一端に接続され、カソードが第3抵抗素子62に接続される。
第4抵抗素子63は、第3抵抗素子62と、グランドとの間に接続される。
なお、第4抵抗素子63は、第3抵抗素子62と、レゾルバ6の出力巻線17の他端との間に接続されてよい。
また、第3抵抗素子62と第4抵抗素子63との接続点は、FET64のゲート端子に接続される。
【0095】
そして、図11の補償抵抗回路21では、たとえばレゾルバ6の出力電圧が正である場合に、その出力電圧が第3抵抗素子62と第4抵抗素子63とで分圧される。
N型のFET64は、この分圧比に応じた導通状態(チャネル幅)となる。
また、図11の補償抵抗回路21において、第3抵抗素子62は、レゾルバ6のたとえばステータ12に配置され、第4抵抗素子63は、レゾルバ6から離れたR/Dコンバータ7側に配置される。
よって、第3抵抗素子62の抵抗値は、レゾルバ6の温度上昇に伴って大きくなる一方で、第4抵抗素子63の抵抗値は、環境温度により一定の値に維持される。
第3抵抗素子62および第4抵抗素子63による分圧比は、レゾルバ6の温度に伴って変化する。
その結果、レゾルバ6の温度が上昇すると、N型のFET64は、よりオン状態に近い導通状態になる。
N型のFET64は、レゾルバ6の温度上昇に伴って抵抗値が低下する、負の温度特性になる。
【0096】
上記実施形態では、出力巻線17のみに補償抵抗回路21を接続し、この補償抵抗回路21でレゾルバ6のすべての巻線に起因する温度ドリフトを一括補償している。
この他にも例えば二相励磁のバランスが問題視されない場合などにおいては、ステータ12の第1励磁巻線13および第2励磁巻線14に対して、補償抵抗回路21を接続してよい。
また、ロータ11の耐久性について問題が生じない場合などであれば、ロータ11の励磁受信巻線15または出力用励磁巻線16に対して、補償抵抗回路21を接続してよい。
これらの補償抵抗回路21の抵抗値は、たとえば対応する巻線の抵抗値の温度変化を相殺するものであればよい。
また、このようにレゾルバ6の出力巻線17以外の巻線に対して補償抵抗回路21を接続する場合であっても、すべての動作温度範囲において巻線単位で温度変化を完全に相殺することは難しい。
このため、出力巻線17に対応する補償抵抗回路21では、出力巻線17の抵抗値の温度変化を相殺するとともに、その他の巻線での補償残差を併せて一括補償するとよい。
そして、この場合においても、出力巻線17に直列に接続された補償抵抗回路21は、レゾルバ6の出力巻線17に生じる抵抗値の温度変化を相殺する場合より大きく抵抗値が変化する、負の温度特性を有することになる。
したがって、出力電圧波形信号の振幅(大きさ)は、図10の特性線Aのようにレゾルバ6の動作温度に応じて変化するものになる。
このため、R/Dコンバータ7は、出力電圧波形信号の振幅(大きさ)を検出して、その振幅から得た残差により、温度ドリフトの残差を補償することができる。
【0097】
上記実施形態は、本発明を二相励磁一相出力方式のレゾルバ6に適用した例である。
この他にも例えば、上述した補償抵抗回路21およびR/Dコンバータ7は、一相励磁二相出力方式のレゾルバ6に適用してもよい。
これにより、一相励磁二相出力方式のレゾルバ6とともに用いられるR/Dコンバータ7において、検出回転位相の温度ドリフトを相殺するために、二相出力の信号同士の演算をする必要がなくなる。
一相励磁二相出力方式のレゾルバ6とともに用いられるR/Dコンバータ7において、高精度なアナログ回路が不要となる。
【0098】
上記実施形態では、レゾルバ6は、サーボモータモジュール4において、サーボモータ5と一体化されている。
この他にも例えば、レゾルバ6は、サーボモータ5と別体に形成されてよい。
また、サーボモータ5と別体に形成されたレゾルバ6は、レゾルバ6に補償抵抗回路21が取り付けられたレゾルバ装置として形成されてよい。
【0099】
上記実施形態では、R/Dコンバータ7は、サーボ制御部3の一部として設けられている。
この他にもたとえば、R/Dコンバータ7は、サーボ制御部3と別に形成され、サーボ制御部3へ検出した回転位相θや温度を出力してよい。
【符号の説明】
【0100】
1…サーボ制御システム(回転位相検出装置)、4…サーボモータモジュール(駆動装置)、5…サーボモータ(モータ)、5a…出力軸、6…レゾルバ(レゾルバ装置)、7…R/Dコンバータ(検出部、回転位相検出回路)、11…ロータ、12…ステータ、13…第1励磁巻線(励磁巻線)、14…第2励磁巻線(励磁巻線)、15…励磁受信巻線、16…出力用励磁巻線、17…出力巻線、21…補償抵抗回路、22…サーミスタ、23…通常の抵抗素子、43…終端抵抗素子、46…コンパレータ(位相検出回路)、48…残差補正部、52…ADコンバータ、53…変換部、54…電圧温度変換テーブル、55…温度残差変換テーブル、θ…回転位相、Δθ…残差
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバを用いて回転体の回転位相を検出する回転位相検出装置、レゾルバ装置、駆動装置、回転位相検出回路、および回転位相検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レゾルバは、たとえばモータなどの回転装置とともに用いられる。
レゾルバは、回転装置の動作をレゾルバのロータの回転運動へ変換し、レゾルバのロータの回転にしたがって変化するレゾルバの出力電圧波形信号を出力する。
回転位相検出回路は、レゾルバに接続され、レゾルバの出力信号に基づいて、レゾルバのロータの回転についての位相、角度、回転量などの回転位相を検出する。
このように回転装置の動作は、レゾルバのロータの回転運動へ変換され、そのロータの回転運動についての出力信号に基づいて、レゾルバおよび回転位相検出回路により検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−129718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レゾルバには、二相励磁一相出力方式のものと、一相励磁二相出力方式のものとがあるが、これらのレゾルバでは、レゾルバの出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相がレゾルバの温度に応じて変化するという温度ドリフトの課題がある。
【0005】
特許文献1では、レゾルバの二次巻線と、それに接続される信号線との間に、二次巻線より抵抗値がかなり大きい補償抵抗素子を直列に接続する。
レゾルバの二次巻線に対して抵抗値がかなり大きい補償抵抗素子を直列に接続することにより、出力電圧の位相は、レゾルバの二次巻線の抵抗値の温度変化に追従して変化し難くなる。
その結果、特許文献1のレゾルバでは、出力信号に基づいて検出される回転位相が、レゾルバの温度変化に追従し難くなる。
しかしながら、特許文献1のようにレゾルバの二次巻線に対して抵抗値がかなり大きい補償抵抗素子を接続したとしても、レゾルバの検出信号の位相は微妙に変化する。
なぜなら、レゾルバの出力信号の位相は、レゾルバの動作温度の変動によりレゾルバの巻線の抵抗値が変動することに起因して変化するものであり、特許文献1は、そのレゾルバの巻線の抵抗値の温度変化を抑制するものではないからである。
その結果、特許文献1の技術を用いたとしても、レゾルバの出力信号の位相に基づいて検出される回転位相は、温度ドリフトを有する。
【0006】
このように、レゾルバを用いて回転位相を検出する装置では、検出される回転位相の温度ドリフトを抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点の回転位相検出装置は、励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を、出力巻線から出力するレゾルバと、出力巻線に接続され、レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路と、出力巻線および補償抵抗回路が直列に接続され、出力巻線から出力された電圧波形信号が補償抵抗回路を通じて入力され、入力される信号の電圧波形に基づいて回転位相を検出する検出部とを有する。そして、補償抵抗回路は、レゾルバに設けられ、検出部は、補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧の大きさからレゾルバの温度を推定し、推定した温度に応じた補償量で、電圧波形信号に基づいて検出した回転位相に含まれる温度誤差を補償する。
【0008】
本発明では、レゾルバの出力巻線に対して、レゾルバの出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路を接続し、当該補償抵抗回路をレゾルバに配設している。
このため、本発明では、レゾルバの動作温度の変化に対して、補償抵抗回路の抵抗値を、レゾルバの出力巻線とは逆の温度特性で変化させることができる。
その結果、本発明では、レゾルバの出力電圧信号に基づいて検出される回転位相の温度ドリフトを抑制できる。
これに加えて、本発明では、検出部は、補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧の大きさからレゾルバの温度を推定し、推定した温度に応じた補償量で、電圧波形信号に基づいて検出した回転位相に含まれる温度誤差を補償する。
よって、本発明で得られる補償後の回転位相は、レゾルバの温度の影響を殆ど受けていない安定したものとなる。
本発明で得られる回転位相は、レゾルバの動作温度にかかわらず略一定に安定し、温度ドリフトが好適に抑制される。
【0009】
本発明の第2の観点のレゾルバ装置は、励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を、出力巻線から出力するレゾルバと、出力巻線と接続してレゾルバに設けられ、レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路とを有し、補償抵抗回路を通じて出力巻線の電圧波形信号を出力し、出力巻線および補償抵抗回路と直列に接続される終端抵抗素子の電圧を、補償抵抗回路の温度に応じて変化させる。
【0010】
本発明の第3の観点の駆動装置は、出力軸を回転駆動するモータと、出力軸の回転位相を検出するレゾルバ部とを有し、レゾルバ部は、励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を、出力巻線から出力するレゾルバと、出力巻線と接続してレゾルバに設けられ、レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路とを有し、補償抵抗回路を通じて出力巻線の電圧波形信号を出力し、出力巻線および補償抵抗回路と直列に接続される終端抵抗素子の電圧を、補償抵抗回路の温度に応じて変化させる。
【0011】
本発明の第4の観点の回転位相検出回路は、励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を出力巻線から出力するレゾルバに対して、出力巻線に接続してレゾルバに設けられ、レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路とともに用いられる回転位相検出回路であって、出力巻線および補償抵抗回路に対して直列に接続され、補償抵抗回路を通じて出力巻線の電圧波形信号が入力され、補償抵抗回路の温度に応じて変化する電圧を発生する終端抵抗素子と、終端抵抗素子の電圧の波形に基づいて回転位相を検出する位相検出回路と、終端抵抗素子の電圧の大きさに基づいてレゾルバの温度を推定し、推定した温度に応じた補償量で、検出された回転位相に含まれる温度誤差を補償する補償回路とを有する。
【0012】
本発明の第5の観点の回転位相検出方法は、励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を出力巻線から出力するレゾルバの電圧波形信号に基づいて回転位相を検出する方法であって、出力巻線と接続してレゾルバに設けられ、レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧波形に基づいて回転位相を検出するステップと、補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧の大きさからレゾルバの温度を推定するステップと、推定した温度に応じた補償量で、電圧波形信号に基づいて検出した回転位相に含まれる温度誤差を補償するステップとを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、レゾルバを用いて検出される回転位相の温度ドリフトを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る回転位相検出装置を有するサーボ制御システムのブロック図である。
【図2】図2は、図1のレゾルバとして用いることができる、二相励磁一相出力方式のレゾルバの概略的な内部構造を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、二相励磁一相出力のレゾルバについての回路図である。
【図4】図4は、図3のようにレゾルバの出力巻線に対して補償抵抗回路を接続していない場合での、出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θの一例の温度特性図である。
【図5】図5は、図2のレゾルバを含む、本実施形態での電気回路を示す回路図である。
【図6】図6は、図5の補償抵抗回路として用いられる並列抵抗回路の回路図である。
【図7】図7は、サーミスタおよび並列抵抗回路の抵抗値の温度特性の一例を示す図である。
【図8】図8は、図5と異なり、レゾルバのすべての巻線に対して個別に個別補償抵抗回路を接続した場合での電気回路を示す回路図である。
【図9】図9は、本実施形態で検出される回転位相θの温度特性の一例を示す図である。
【図10】図10は、図1のR/Dコンバータの終端抵抗素子で検出される電圧V(DTCT)の温度特性図である。
【図11】図11は、図1のR/Dコンバータの回路構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、図11の残差検出部の回路構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、補償抵抗回路の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に関連付けて説明する。
[回転位相検出装置の全体的な構成および動作]
図1は、本発明の実施形態に係る回転位相検出装置を有するサーボ制御システム1のブロック図である。
図1のサーボ制御システム1は、コントローラ2、サーボ制御部3、サーボモータモジュール4を有する。
サーボモータモジュール4は、サーボモータ5と、レゾルバ6とを有する。
【0016】
サーボ制御システム1は、たとえばNC工作機械、多間接ロボット、織機、ボトルキャッパ装置、印刷装置、ロールカッタ装置、プレス装置、押出成形機、CTスキャナ、医療機器、三次元測定器、ICボンダ装置、チップマウンタ装置、半導体製造装置、搬送車、ハイブリッドカーなどに使用される。
【0017】
サーボモータ5は、出力軸5aを有する。出力軸5aは、サーボモータ5の回転子に固定され、サーボ制御部3の制御信号に基づいて回転子とともに回転駆動される。
【0018】
レゾルバ6は、サーボモータ5の出力軸5aに接続される。
レゾルバ6は、サーボモータ5の回転位相を検出するために用いられる。
そして、本実施形態のレゾルバ6には、後述するように、補償抵抗回路21が設けられる。
【0019】
コントローラ2は、図1に示すように、サーボ制御部3に接続される。
コントローラ2は、サーボモータ5の回転を制御するための制御指令を、サーボ制御部3へ出力する。
制御指令は、サーボモータ5の位置(回転量)、速度などの目標値を指定するものである。
【0020】
サーボ制御部3は、サーボモータモジュール4に接続される。
サーボ制御部3は、R/Dコンバータ(レゾルバデータコンバータ)7を有する。
R/Dコンバータ7は、レゾルバ6に接続され、レゾルバ6の回転位相θ、すなわちサーボモータ5の回転位相を検出する。
また、本実施形態のR/Dコンバータ7は、レゾルバ6の温度、すなわちサーボモータ5の温度も検出する。
サーボ制御部3は、制御指令により指定された目標の位置、回転量、回転速度でサーボモータ5が動作するように、R/Dコンバータ7により検出される回転位相θを用いて、サーボモータ5の動作をフィードバック制御する。
【0021】
サーボモータ5のフィードバック制御において、サーボ制御部3のR/Dコンバータ7は、レゾルバ6へ励磁電圧信号を出力する。
たとえば図3の二相励磁のレゾルバ6に対して、R/Dコンバータ7は、正弦波の励磁電圧信号を第1励磁巻線13へ出力し、正弦波と位相が90度ずれた余弦波の励磁電圧信号を第2励磁巻線14へ出力する。
レゾルバ6は、これらの励磁電圧信号に基づいて、レゾルバ6のロータ11の回転位相に応じた一相の電圧波形信号を生成する。
レゾルバ6は、生成した一相の電圧波形信号をR/Dコンバータ7へ出力する。
R/Dコンバータ7は、レゾルバ6へ供給した励磁電圧信号を基準として、レゾルバ6から入力される電圧波形信号の位相差を検出する。
このR/Dコンバータ7により検出される電圧波形信号の位相差は、レゾルバ6のロータ11の回転位相θである。
【0022】
また、サーボモータ5のフィードバック制御において、このR/Dコンバータ7を有するサーボ制御部3は、サーボモータ5へ制御信号を出力する。
サーボモータ5は、制御信号により回転駆動され、これに従ってレゾルバ6も回転駆動される。
R/Dコンバータ7は、サーボモータ5の回転位相を、ロータ11の回転位相θとして検出する。
サーボ制御部3は、R/Dコンバータ7により検出された回転位相θに基づいて、駆動制御に必要となる情報、たとえば制御指令で指定された目標制御量に対応する測定量の差(誤差)を演算する。
サーボ制御部3は、R/Dコンバータ7により検出された回転位相θに基づいて、たとえばモータの回転量などの測定量を演算する。
そして、サーボ制御部3は、サーボモータ5の動作状態を判断し、モータの駆動状態がコントローラ2の制御指令に係る目標物理量と合致するように、サーボモータ5への制御信号を制御する。
サーボ制御部3は、たとえばサーボモータ5の位置(回転量)や、速度の目標値と検出値とが合致するようにサーボモータ5への制御信号を制御する。
【0023】
このようにサーボ制御システム1では、コントローラ2からの制御指令があると、サーボ制御部3は、その制御指令を実行するようにサーボモータ5を駆動制御する。
そして、この制御において、サーボモータ5の出力軸5aの回転位相θは、レゾルバ6およびR/Dコンバータ7により検出される。
また、R/Dコンバータ7は、サーボモータ5およびレゾルバ6の温度を検出する。
【0024】
このような目的で使用されるレゾルバ6は、モータと同様のロータ11およびステータ12の構造を有するため、光学素子を用いたロータリエンコーダなどと比べて堅牢であり、振動やほこりなどに強い。
【0025】
[レゾルバの構造および回転位相θの検出]
図2は、図1のレゾルバ6として用いることができる、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6の概略的な内部構造を示す分解斜視図である。
図2のレゾルバ6は、ロータ11と、ステータ12とを有する。
ステータ12は、たとえばサーボモータ5のハウジングに固定される。
ロータ11は、ステータ12の内部空間に挿入された状態で、回転可能に配置される。
ロータ11は、たとえばサーボモータ5の出力軸5aと連結され、出力軸5aとともに回転する。
【0026】
図3は、二相励磁一相出力のレゾルバ6についての回路図である。
図3の二相励磁一相出力方式のレゾルバ6は、第1励磁巻線13、第2励磁巻線14、励磁受信巻線15、出力用励磁巻線16、出力巻線17を有する。
図3は、本実施形態とは異なり、レゾルバ6の出力巻線17に対して、R/Dコンバータ7の終端抵抗素子43のみが接続された状態での説明図である。
図3では、出力巻線17に、補償抵抗回路21が接続されていないが、本実施形態の出力巻線17は、補償抵抗回路21を介して通信ケーブル18に接続されている。通信ケーブル18の他端は、サーボ制御部3のR/Dコンバータ7の終端抵抗素子43に接続される。通信ケーブル18は、レゾルバ6とR/Dコンバータ7との間で励磁電圧信号等を送受可能であればよく、たとえば100メートル程度の長さとすることができる。
【0027】
励磁受信巻線15、および出力用励磁巻線16は、図2に示すようにロータ11に配置され、ロータ11とともに回転駆動される。
励磁受信巻線15は、ロータ11の回転軸方向の一端側に、ロータ11の半径方向に沿って巻きつけられる。
出力用励磁巻線16は、ロータ11の回転軸方向の他端側に、ロータ11の周方向に沿って巻きつけられる。
励磁受信巻線15の両端と、出力用励磁巻線16の両端とは、図3に示すように、ロータ11において互いに接続される。
【0028】
第1励磁巻線13、第2励磁巻線14、および出力巻線17は、図2に示すように、ステータ12に配置される。
第1励磁巻線13および第2励磁巻線14は、二相の励磁巻線であり、ロータ11の励磁受信巻線15と対向するように、ステータ12の一端側に交互に配列して配置される。
第1励磁巻線13と第2励磁巻線14とは、機械的な位相が90度ずらして配置される。
出力巻線17は、ロータ11の出力用励磁巻線16と対向するように、ステータ12の他端側に、周方向に沿って配置される。
【0029】
図3に示すように、レゾルバ6は、基本的に、トランスを組み合わせた構造を有する。
トランスでは、一方の巻線に励磁電圧が印加されることにより、一方の巻線に励磁電流が流れ、この電流の変化が他方の巻線の磁束を変化させ、他方の巻線に誘起電圧が発生する。
【0030】
二相励磁一相出力方式のレゾルバ6において、サーボ制御部3のR/Dコンバータ7は、レゾルバ6のステータ12において機械的に90度ずらして配置された第1励磁巻線13および第2励磁巻線14に対して、振幅が等しく電気的に位相が90度ずれた励磁電圧を印加する。
この電圧は、たとえば図3に示すように、Asin(ωt),Acos(ωt)である。
ここで、Aは、励磁電圧振幅であり、任意の値である。ωは、励磁周波数である。
この第1励磁巻線13および第2励磁巻線14による2相の励磁電圧は、ロータ11の励磁受信巻線15により受けられる。
ロータ11の機械的な回転位相θに応じて、励磁受信巻線15の受信電圧(図5中のV1−V2ノード間の電圧)が変化する。
この励磁受信巻線15の受信電圧は、sin(ωt+θ)の位相で変化する。
つまり、レゾルバ6のロータ11の機械的な回転位相θは、励磁受信巻線15の受信電圧において、位相ずれ(位相差)θとして含まれる。
【0031】
励磁受信巻線15の受信電圧は、ロータ11の出力用励磁巻線16に印加される。
ロータ11の出力用励磁巻線16は、ステータ12の出力巻線17とトランス構造を構成する。
このため、励磁受信巻線15の受信電圧は、最終的に、ステータ12の出力巻線17から出力される。
このステータ12の出力巻線17の電圧が、サーボ制御部3のR/Dコンバータ7の終端抵抗素子43に印加される。
【0032】
サーボ制御部3のR/Dコンバータ7は、図3に示すように、出力巻線17に接続された終端抵抗素子43を有する。
終端抵抗素子43を用いることにより、S/N比を高くすることができる。
サーボ制御部3のR/Dコンバータ7は、レゾルバ6の電圧波形信号V(DTCT)として、Bsin(ωt+θ)を検出する。
ここで、Bは、出力電圧の振幅であり、Aより小さい任意の値である。
R/Dコンバータ7は、たとえば励磁電圧Asin(ωt)の位相と、出力電圧Bsin(ωt+θ)の位相とを比較し、これらの位相差をレゾルバ6のロータ11の回転位相θとして検出する。
【0033】
また、レゾルバ6は、第1励磁巻線13、第2励磁巻線14などの励磁巻線に二相の励磁電圧波形信号が供給されると、励磁受信巻線15に、ロータ11の回転位相に応じた電圧を誘導する。
励磁受信巻線15に誘導された電圧は、ロータ11の出力用励磁巻線16に印加される。
出力用励磁巻線16の電圧により、ステータ12の出力巻線17に電圧が励磁される。
このようにロータ11の出力用励磁巻線16に誘導された電圧による電圧波形信号は、ステータ12の出力巻線17から、レゾルバ6外へ出力される。
レゾルバ6は、サーボモータ5の出力軸5aの回転位相に対応する電圧波形信号を生成して出力する。
【0034】
[レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θの温度ドリフト]
図2のレゾルバ6では、出力電圧波形信号の位相が、サーボモータ5およびレゾルバ6の動作温度により変動する。
その結果、レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいてR/Dコンバータ7により検出される回転位相θも、サーボモータ5およびレゾルバ6の動作温度により変動する。
図4は、図3のようにレゾルバ6の出力巻線17に補償抵抗回路21を接続していない場合での、出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θの一例の温度特性図である。
そして、レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θは、図4に示すようにレゾルバ6の動作温度が0度から80度まで変化すると、約+20分から−40分までの範囲で変化する。
レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θは、合計で約53分変化する。
1分は、1度の60分の一である。
【0035】
次に、この検出される回転位相の温度ドリフトについて詳しく説明する。
図3には、レゾルバ6の各巻線についての抵抗値およびインダクタンス値が図示されている。
ステータ12の第1励磁巻線13は、抵抗Rs1と、インダクタンスLs1を有する。
ステータ12の第2励磁巻線14は、抵抗Rs2と、インダクタンスLs2を有する。
ロータ11の励磁受信巻線15は、抵抗Rriと、インダクタンスLriを有する。
ロータ11の出力用励磁巻線16は、抵抗Rroと、インダクタンスLroを有する。
ステータ12の出力巻線17は、抵抗Rsoと、インダクタンスLsoを有する。
また、図3では、レゾルバ6の出力巻線17に、抵抗値RLの終端抵抗素子43が接続されている。終端抵抗素子43は、R/Dコンバータ7に設けられる。
【0036】
この場合、たとえば第1励磁巻線13のインピーダンスは、Rs1+jωLs1である。
入力電圧Vinをsin(ωt)とすると、第1励磁巻線13の電流Is1は、下記式1となる。
また、入力電圧Vinに対する第1励磁巻線13の電流の位相ずれは、下記式2となる。
この第1励磁巻線13の電流に基づいて、入力電圧位相に対してθs1ずれた電圧が、ロータ11の励磁受信巻線15に発生する。
Is1=Vin/(Rs1+jωLs1) ・・・式1
θs1=tan−1(−ωLs1/Rs1) ・・・式2
【0037】
ここで、レゾルバ6の各巻線の抵抗値の温度変化を説明する。
レゾルバ6の温度変化ΔTに対して、第1励磁巻線13の温度ドリフトΔθs1は、下記式3となる。
ここで、巻線の抵抗値の温度係数αには、巻線に一般的に使用される銅線の温度係数である0.43%を使用している。
Δθs1=tan−1(−ωLs1/Rs1)−tan−1(−ωLs1/Rs1(1+α×ΔT)) ・・・式3
【0038】
レゾルバ6の他の巻線においても、下記式4から6に例示するように、同様な温度ドリフトが発生する。
ここで、Δθriは、励磁受信巻線15による温度ドリフトである。
Δθroは、出力用励磁巻線16による温度ドリフトである。
Δθsoは、出力巻線17による温度ドリフトである。
なお、Δθsoについては、R/Dコンバータ7の終端抵抗素子43の抵抗値RLを考慮している。
Δθri=tan−1(−ωLri/Rri)−tan−1(−ωLri/Rri(1+α×ΔT)) ・・・式4
Δθro=tan−1(−ωLro/Rro)−tan−1(−ωLro/Rro(1+α×ΔT)) ・・・式5
Δθso=tan−1(−ωLso/(Rso+RL))−tan−1(−ωLso/Rso(1+α×ΔT)+RL) ・・・式6
【0039】
そして、第1励磁巻線13に供給される第1励磁電圧波形信号についての、レゾルバ6全体での温度ドリフトΔθは、下記式7となる。
なお、第2励磁巻線14に供給される第2励磁電圧波形信号についての、レゾルバ6全体での温度ドリフトΔθも、下記式7と同様の式になる。
Δθ=Δθs1+Δθri+Δθro+Δθso ・・・式7
【0040】
[レゾルバの出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θの補償]
レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出される回転角度θの温度ドリフトを抑制するために、本実施形態では、図5に示すように、レゾルバの巻線に補償抵抗回路21を接続する。
図5は、図2のレゾルバ6を含む、本実施形態での電気回路を示す回路図である。
図5の電気回路は、補償抵抗回路21を有する。
補償抵抗回路21は、出力巻線17と終端抵抗素子43との間に直列に接続される。
また、補償抵抗回路21は、レゾルバ6のステータ12内に配置される。補償抵抗回路21は、好ましくは出力巻線17の近傍に配置してよい。
【0041】
また、本実施形態において、補償抵抗回路21は、図5に示すようにレゾルバ6の複数の巻線のうちの、出力巻線17のみに接続されている。
これにより、後述する図9に例示するように、レゾルバの出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θの温度ドリフトは、格段に抑制される。
【0042】
ところで、レゾルバ6の励磁方式には、たとえば、一相励磁二相出力方式と、二相励磁一相出力方式とがある。
一相励磁二相出力方式のレゾルバ6では、信号を二相で出力することの利点を生かして、二相の信号同士を演算することにより、検出回転位相の温度ドリフトをキャンセルすることが可能である。
しかしながら、一相励磁二相出力方式のレゾルバ6では、この温度補償のために出力信号同士の演算を必要とし、R/Dコンバータ7には、信号同士を掛け合わせる回路や、同期整流回路51を設ける必要がある。
これらの信号同士のアナログ演算に用いられる回路は、アナログ的に高精度な特性が要求されるため、高価である。
その一方で、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6では、一相の出力信号について、励磁信号を基準とした位相差に基づいて回転位相を検出する。
このため、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6と組み合わされるR/Dコンバータ7は、比較的安価になる。
しかしながら、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6では、一相の信号しか出力しない。
その結果、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6では、信号同士の演算により検出回転位相の温度ドリフトをキャンセルすることができない。
また、サーボモータ5に取り付けられたレゾルバ6では、サーボモータ5の熱がレゾルバ6に伝導されるため、検出回転位相θの温度ドリフトが大きい。
なお、レゾルバ6の検出回転位相の温度ドリフトの原因は、レゾルバ6で巻線として用いる銅線の抵抗値が、モータやレゾルバ6の動作温度により変化するからである。
銅線の抵抗値は、100度の温度変化において43%も変化する(43%/100℃)。
このように、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6では、一相励磁二相出力方式のレゾルバと比べて、検出される回転位相θの温度ドリフトを抑制することが求められている。
【0043】
[補償抵抗回路21]
このようなレゾルバ6の巻線のインピーダンスの温度変化を抑制するために、温度上昇に伴って抵抗値が低下する負の温度特性を有する負性抵抗素子、たとえばサーミスタ22を用いることができる。
サーミスタ22は、たとえばNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタ22である。
NTCサーミスタ22は、銅線とは逆に、温度上昇に伴って抵抗値が低下する負の温度特性を有する。
このため、NTCサーミスタ22は、レゾルバ6の巻線の抵抗値の温度変化を補償するために使用できる。また、サーミスタ22は、安価である。
しかしながら、サーミスタ22の抵抗値の温度変化は、銅線の抵抗値の温度変化の仕方と異なる。
銅線などの巻線での抵抗は、温度に対して略比例関係で変化する。
これに対して、サーミスタ22の抵抗は、下記式8に基づいて指数関数的に変化する。
ここで、Rは、サーミスタ22の抵抗値、R0は、基準温度、たとえば25度でのサーミスタ22の抵抗値、Bは、サーミスタ22固有の値である定数、Tは、絶対値温度(K)、T0は、25度での絶対値温度(=298K=25+273)である。
R=R0×eB×(1/T−1/T0) ・・・式8
【0044】
そこで、本実施形態では、出力巻線17に対してサーミスタ22のみを直列に接続するのではなく、図6に示すように、サーミスタ22と通常の抵抗素子23とを並列に接続した並列抵抗回路を、補償抵抗回路21として出力巻線17に直列に接続する。
なお、サーミスタ22と、通常の抵抗素子23とは共に、受動素子である。
通常の抵抗素子23は、少なくとも温度上昇に伴って抵抗値が増加する正の温度特性を有するものであればよい。
好ましくは、通常の抵抗素子23は、抵抗値の変化が、温度に対して略比例関係で変化するものがよい。
このような抵抗素子としては、たとえば、金属皮膜抵抗素子、酸化金属皮膜抵抗素子、カーボン抵抗素子、ソリッド抵抗素子がある。
【0045】
図7は、サーミスタ22および並列抵抗回路の抵抗値の温度特性の一例を示す図である。
図7(A)および図7(B)の横軸は、温度であり、縦軸は、抵抗値である。
図7(B)は、図7(A)の部分拡大図であり、縦軸の抵抗値が図7(A)より拡大されている。
【0046】
サーミスタ22単体の抵抗値は、図7(A)に示すように、0から100度までの温度範囲において、温度に対して反比例的に減少する負の温度特性を有する。
なお、抵抗素子23は、温度に対して略一定の傾きで抵抗値が増加する正の温度特性を有する。
【0047】
これに対して、サーミスタ22と抵抗素子23との並列抵抗回路の抵抗値は、図7(B)に示すように、温度に対して略一定の傾きで減少する。
並列抵抗回路の抵抗値は、略0度から100度の範囲において、抵抗値が略直線的に減少する負の温度特性となる。
このようにサーミスタ22に対して通常の抵抗素子23を並列に接続することにより、その並列抵抗回路の抵抗値は、温度に対して略一定の傾きで減少する負の温度特性を有する。
【0048】
本実施形態では、この図6の並列抵抗回路を、レゾルバ6の巻線に直列に接続する補償抵抗回路21として使用する。
また、本実施形態では、図5に示すように、レゾルバ6の複数の巻線のうち、出力巻線17のみに対して並列抵抗回路を直列に接続する。
【0049】
図6の並列抵抗回路では、その抵抗値の温度変化の傾きを、サーミスタ22と抵抗素子23との組み合わせにより設定可能である。
このため、たとえば後述する図8に示すように、並列抵抗回路をレゾルバ6のすべての巻線に対して、各々の巻線の抵抗値の温度変化を相殺する特性とした並列抵抗回路を直列に接続することも可能である。
この場合、レゾルバ6の各巻線で発生する抵抗値の温度変化は、巻線毎に個別に相殺できる。
しかしながら、特にロータ11の巻線に対して並列抵抗回路を接続する場合、ロータ11に対して並列抵抗回路を配置しなければならない。
この場合、レゾルバ6の振動、衝撃などにより、並列抵抗回路または巻線との接続部分が破損し易い。
その結果、レゾルバ6の耐環境性能が著しく損なわれる。
このため、本実施形態では、並列抵抗回路による補償抵抗回路21を、ステータ12側のみに設ける。
【0050】
また、二相励磁方式では、第1励磁電圧波形信号と第2励磁電圧波形信号とは、波形が揃っていることが重要である。
第1励磁巻線13および第2励磁巻線14に対して補償抵抗回路21を個別に接続すると、これらの抵抗値の誤差により、これらの巻線での励磁電圧の位相バランスなどが崩れる。
その結果、この場合には、レゾルバ6の検出性能そのものが低下する。
このため、本実施形態では、第1励磁巻線13および第2励磁巻線14がステータ12側に設けられているものの、これらの巻線に対して、並列抵抗回路を接続しない。
【0051】
以上の理由により、本実施形態では、補償のための並列抵抗回路(補償抵抗回路21)を、レゾルバ6の複数の全ての巻線のうち、出力巻線17のみに接続する。
また、出力巻線17には、サーボ制御部3の終端抵抗素子43が直列に接続されている。
このため、出力巻線17に接続した並列抵抗回路では、他の巻線に接続する場合と比べて抵抗の操作量を大きくすることができ、好都合である。
【0052】
ここで、サーミスタ22と通常の抵抗素子23とを並列に接続した並列抵抗回路の抵抗値(25度)をRth25とすれば、出力巻線17での温度ドリフト(25度+ΔT)は、下記式9となる。
Δθso=tan−1(−ωLso/(Rso+RL+Rth25))−tan−1(−ωLso/(Rso(1−α×ΔT)+RL+Rth(ΔT))) ・・・式9
【0053】
このため、本実施形態では、たとえば最終的に、「Δθ=Δθs1+Δθri+Δθro」とし、かつ、「Δθso+Δθ=0」とすれば、レゾルバ6の全体での温度ドリフトを完全に相殺することが可能である。
【0054】
[比較説明]
図8は、図5と異なり、レゾルバ6のすべての巻線に対して個別に、個別補償抵抗回路31を接続した場合のレゾルバ6の回路図である。
各個別補償抵抗回路31は、たとえば図6と同様のサーミスタ22と抵抗素子23との並列抵抗回路であり、温度に対して負の抵抗変化率を持つ。
図8に示すように、レゾルバ6のすべての巻線に対して個別にその抵抗値の温度変化を相殺する負の温度特性の個別補償抵抗回路31を直列に接続することにより、レゾルバ6の各巻線で生じる抵抗値の温度変化は、各巻線に対応する個別補償抵抗回路31により個別に相殺できる。
その結果、レゾルバ6の動作温度が変動しても、巻線と個別補償抵抗回路31との組み合わせによる各組の直列回路の全体では、抵抗値が温度により変化しなくなる。
その結果、レゾルバ6から出力される電圧波形信号の位相は、レゾルバ6の動作温度によらず安定したものとなる。
しかしながら、図8のようにレゾルバ6のすべての巻線に対して個別補償抵抗回路31を個別に接続するためには、レゾルバ6のロータ11に対しても、個別補償抵抗回路31を配置することになる。
ロータ11に個別補償抵抗回路31を配置した場合、ロータ11の耐久性や信頼性が低下する。
【0055】
このようなレゾルバ6の信頼性の低下を抑制するために、本実施形態では、図5に示すように、出力巻線17のみに補償抵抗回路21を接続している。
出力巻線17は、レゾルバ6のステータ12に設けられるものであり、補償抵抗回路21もステータ12に設けられる。ロータ11には、補償抵抗回路21を設けなくて済む。
【0056】
また、本実施形態では、ステータ12の出力巻線17に接続した1個の補償抵抗回路21により、レゾルバ6のすべての巻線に起因する検出回転位相の温度ドリフトを一括補償する。
これにより、本実施形態では、レゾルバ6の最大のメリットである耐環境性を損なわずに、検出回転位相の温度ドリフトを簡易に且つ安価に補償することができる。
レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相の温度ドリフトは、レゾルバ6の動作温度にかかわらず小さいものとなる。
回転位相は、レゾルバ6の動作温度に応じた変化をし難くなる。
【0057】
[回転位相θの温度ドリフトを抑制した例]
上述したように、図4の特性図は、図3のようにレゾルバ6の巻線に補償抵抗回路21(並列抵抗回路)を一切接続していない場合での、検出回転位相θの温度特性の一例である。
図9は、図5のようにレゾルバ6の出力巻線17に補償抵抗回路21(並列抵抗回路)を接続した場合での、検出回転位相θの温度特性の一例を示す図である。
レゾルバ6の出力巻線17に補償抵抗回路21(並列抵抗回路)を直列に接続することにより、レゾルバ6の全体での温度ドリフトは、図4の温度特性から図9の温度特性となる。
【0058】
補償抵抗回路21(並列抵抗回路)により温度補償をしない場合、検出される回転位相θは、図4に示すように、レゾルバ6の動作温度が0度から80度に変化する間に約+20分から−40分の範囲で変化する。
これに対して、補償抵抗回路21(並列抵抗回路)により温度補償をした場合、検出される回転位相θは、図9に示すように、約+7分から−1分までの範囲で変化する。
【0059】
このように、本実施形態では、並列抵抗回路による補償抵抗回路21を出力巻線17に直列に接続し、この1個の補償抵抗回路21によりレゾルバ6のすべての巻線による温度ドリフトを補償することにより、レゾルバ6の出力電圧波形に基づいて検出される回転位相(位相差)θの温度ドリフトを、約十分の一にまで抑制できる。
本実施形態では、たとえば0から80度までの温度範囲の全体において、検出される回転位相θの温度ドリフトを効果的に低減できる。
【0060】
[温度ドリフトの残差の補償]
ところで、本実施形態の図5のように出力巻線17に補償抵抗回路21を接続し、この補償抵抗回路21によりレゾルバ6のすべての巻線に起因する検出回転位相の温度ドリフトを一括補償する場合、その代償として、R/Dコンバータ7により検出される電圧の振幅(大きさ)が、レゾルバ6の温度に応じて変化することになる。
【0061】
そこで、本実施形態では、この温度に応じて変化するR/Dコンバータ7の検出電圧の振幅(大きさ)を利用し、一括補償で取り除くことができない微小な残存ドリフトの残差についても補償する。
なお、R/Dコンバータ7の検出電圧の振幅の変化に基づいて得られる温度は、レゾルバ6やサーボモータ5のリアルタイムの温度である。
このため、R/Dコンバータ7は、この検出温度をモータ制御に利用して、モータ過熱に対する保護の制御を実現できる。
【0062】
終端抵抗素子43を除いた状態での、補償抵抗回路21および出力巻線17によるインピーダンスZrは、下記式10となる。
Zr=(Rso+Rth+JωLso) ・・・式10
【0063】
出力巻線17に接続した補償抵抗回路21で一括補償を行わず、巻線毎に補償をした場合、出力巻線17のループの抵抗値は、上記式10とは異なり、Rso+Rth=Rcの固定値となる。
これに対して、出力巻線17に接続した補償抵抗回路21一括補償を行う場合は、出力巻線17のループの抵抗値は、巻線の温度ドリフトとは逆に変化する温度特性になる。
よって、出力巻線17のループの抵抗値Rso+Rthは、温度とともに減少する。
また、終端抵抗素子43で検出されるレゾルバ6の出力電圧は、図9の特性線Aに示すように、温度の上昇に略比例して大きくなる。
【0064】
図10は、R/Dコンバータ7の終端抵抗素子43の電圧V(DTCT)の温度特性図である。
横軸は、レゾルバ6の動作温度である。
縦軸は、終端抵抗素子43で検出される電圧の振幅(大きさ)である。
ただし、縦軸は、0度のときの出力電圧の振幅(大きさ)Bを1として正規化されている。
【0065】
図10の特性線Aに示すように出力巻線17で温度ドリフトを一括補償した場合、検出電圧V(DTCT)は、レゾルバ6の動作温度の上昇に略比例して大きくなる。
終端抵抗素子43の電圧V(DTCT)は、R/Dコンバータ7において検出可能である。
この特性により、R/Dコンバータ7では、レゾルバ6の出力電圧の最大値を考慮した設計が必要になるものの、以下のメリットが生じる。
すなわち、たとえばレゾルバ6の動作温度と出力電圧との関係をあらかじめ調べておくことにより、検出した電圧V(DTCT)から、レゾルバ6またはモータの現在の温度を得ることが可能になる。
【0066】
レゾルバ6は、通常、サーボモータ5などと一体化されてその回転位相を検出するセンサとして用いられる。
この場合において、モータの温度を検出するために、モータに対して、その温度を直接測定するための熱電対を配設することもできるが、モータの設置環境によっては、熱電対の信号線をレゾルバ6の通信ケーブル18と同様に100メートル程度の長い距離で引きまわす必要が生じる。
このような接続環境において、熱電対を用いてモータの温度を正確に検出することは難しい。
また、モータの温度を検出するために、モータに対して、所定の温度になるとスイッチが切れるサーモスイッチなどを埋め込むこともできるが、上述した熱電対の場合と同様に、検出信号を長距離伝送する必要が生じる。
【0067】
なお、図10の特性線Bは、図8のようにレゾルバ6のすべての巻線において個別に抵抗値の温度変化を相殺した場合での、検出電圧V(DTCT)の振幅の温度特性である。
この場合、検出電圧V(DTCT)の振幅は、レゾルバ6の温度によらず常に一定となる。
【0068】
また、図10の特性線Cは、図3のように温度補償を一切していない場合での、検出電圧V(DTCT)の振幅の温度特性である。
この場合も、出力電圧波形信号の振幅は、レゾルバ6の温度によらず略一定である。
【0069】
これら特性線B,Cと特性線Aとの対比で明らかなように、本実施形態のように出力巻線17のみで一括補償した場合には、検出電圧V(DTCT)の振幅がレゾルバ6の温度に応じて変動するようになる。
すなわち、特性線Aのような出力電圧波形信号の振幅の温度変化は、出力巻線17に直列に接続された補償抵抗回路21の抵抗値の温度特性が、一括補償をするために、出力巻線17の抵抗値の温度変化のみを相殺する場合よりも大きく変化する負の温度特性とされている場合において、初めて生じる。
【0070】
[R/Dコンバータ7]
本実施形態のサーボ制御部3のR/Dコンバータ7は、図10の検出電圧V(DTCT)の振幅の温度変動を検出し、これに基づいて図9の温度ドリフトの残差を二次補償する。
【0071】
図11は、図1のR/Dコンバータ7の回路構成を示すブロック図である。
図11のR/Dコンバータ7は、基準信号発生回路41、励磁回路42、終端抵抗素子43、バンドパスフィルタ(BPF)44、コンパレータ45、位相カウンタ46、残差検出部47、残差補正部48を有する。
そして、図11のR/Dコンバータ7は、二相励磁一相出力のレゾルバ6とともに用いられ、位相検出方式によりレゾルバ6の回転位相θを検出する。
【0072】
基準信号発生回路41は、基準信号を生成する。
基準信号は、たとえば所定の一定周期の矩形波形の信号である。
基準信号の周期は、たとえば上述したAsin(ωt),Acos(ωt)と同じ周期であればよい。
【0073】
励磁回路42は、基準信号発生回路41に接続される。
励磁回路42は、基準信号に同期した第1励磁電圧信号を発生してレゾルバ6の第1励磁巻線13へ供給する。
また、励磁回路42は、基準信号と位相が90度ずれた第2励磁電圧信号を発生して第2励磁巻線14へ供給する。
第1励磁電圧信号および第2励磁電圧信号は、たとえば、上述したAsin(ωt)とAcos(ωt)とである。
【0074】
終端抵抗素子43は、図3のレゾルバ6の出力巻線17に直列に接続される。
ただし、本実施形態のレゾルバ6の出力巻線17には、図5に示すように一括補償用の補償抵抗回路(並列抵抗回路)21が接続されている。
この終端抵抗素子43は、出力巻線17および補償抵抗回路21と直列に接続される。
よって、レゾルバ6で生成された出力電圧波形信号は、補償抵抗回路21を通じて、終端抵抗素子43に印加される。
終端抵抗素子43には、レゾルバ6の出力電圧を、補償抵抗回路21および終端抵抗素子43の分圧比で分けた電圧が印加される。
【0075】
バンドパスフィルタ44は、終端抵抗素子43に接続される。
バンドパスフィルタ44は、たとえば励磁信号の周波数ωの帯域を透過させ、当該帯域の高周波側および低周波側を遮断するフィルタである。
これにより、バンドパスフィルタ44は、終端抵抗素子43に発生する電圧から、Bsin(ωt+θ)の出力電圧波形信号を抽出する。
バンドパスフィルタ44は、通信ケーブル18に乗ったノイズ成分などを除去することができる。
【0076】
コンパレータ45は、バンドパスフィルタ44に接続される。
コンパレータ45は、出力電圧波形信号を、ゼロクロスレベルと比較する。
そして、コンパレータ45は、出力電圧波形信号がゼロクロスレベルより高い場合にハイレベルを出力し、低い場合にローレベルを出力する。
これにより、コンパレータ45は、ωtの周期でハイレベルとローレベルとに切り替わる矩形信号を、出力電圧波形信号に同期させて出力する。
コンパレータ45は、出力電圧波形信号をデジタル波形に変換する。
【0077】
位相カウンタ46は、コンパレータ45および基準信号発生回路41に接続される。
位相カウンタ46は、基準波形信号のたとえば立ち上がりタイミングからカウントを開始する。
また、位相カウンタ46は、コンパレータ45で変換された出力電圧波形信号についての同じタイミング、すなわちたとえば立ち上がりタイミングまでの期間において、所定のクロック信号のクロック数をカウントする。
そして、位相カウンタ46は、たとえばクロック信号のカウント値を、レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出した位相差θ(DTCT)として出力する。
【0078】
残差検出部47は、出力電圧波形信号に基づいて検出した位相差θ(DTCT)に残存する温度ドリフトの残差Δθを生成して出力する。
残差検出部47は、バンドパスフィルタ44に接続される。
残差検出部47は、出力電圧波形信号の振幅(大きさ)に基づいて、出力巻線17に接続された一括補償用の補償抵抗回路21で取り除くことができなかった温度ドリフトの残差(Δθ)を生成する。
【0079】
図12は、図11の残差検出部47の回路構成を示すブロック図である。
図12の残差検出部47は、整流回路51、ADコンバータ52、変換部53、電圧温度変換テーブル54、温度残差変換テーブル55を有する。
【0080】
整流回路51は、たとえばダイオード56と、キャパシタ57と、第1抵抗素子58と、第2抵抗素子59とを有する。
ダイオード56は、バンドパスフィルタ44と第1抵抗素子58の一端との間に接続される。
第1抵抗素子58の他端は、キャパシタ57の一端と、第2抵抗素子59の一端とに接続される。
キャパシタ57の他端および第2抵抗素子59の他端は、接地される。
このような整流回路51において、キャパシタ57は、出力電圧波形信号により充電される。出力電圧波形信号は、正弦波の波形を有する。
出力電圧波形信号は、整流回路51により、直流電圧に整流される。
整流回路51は、出力電圧波形信号の振幅(大きさ)に対応した直流電圧を生成して出力する。
【0081】
ADコンバータ52は、整流回路51に接続される。
ADコンバータ52は、整流回路51により整流された直流電圧をAD変換する。
これにより、ADコンバータ52から、上述したBsin(ωt+θ)の振幅値(B)に対応する電圧のデジタル値が得られる。
すなわち、出力電圧波形信号の振幅(大きさ)を示す値が得られる。
【0082】
電圧温度変換テーブル54は、図10の特性線Aをデータ化したものである。
電圧温度変換テーブル54は、たとえば複数組のデータを有する。
各組のデータは、出力電圧波形信号の振幅(大きさ)の値Bと、図10においてこれに対応するレゾルバ6の温度の値とを有する。
【0083】
温度残差変換テーブル55は、図9の検出される回転位相θの温度特性をデータ化したものである。
温度残差変換テーブル55は、たとえば複数組のデータを有する。
各組のデータは、レゾルバ6の温度の値と、図9においてこれに対応する温度ドリフトの残差(分)の値とを有する。
【0084】
変換部53は、ADコンバータ52に接続される。
変換部53は、電圧温度変換テーブル54および温度残差変換テーブル55を用いて、ADコンバータ52から入力される振幅値(B)に基づいて、一括補償で取り除くことができなかった残差(分)を生成する。
具体的には、変換部53は、まず、電圧温度変換テーブル54を参照し、ADコンバータ52から入力される振幅(B)を示す電圧値に対応するレゾルバ6の温度の値を取得する。
次に、変換部53は、温度残差変換テーブル55を参照し、取得したレゾルバ6の温度の値に対応する残差(Δθ)の値を取得する。
【0085】
残差補正部48は、たとえば図12に示すように減算器である。
残差補正部48は、位相カウンタ46と、残差検出部47の変換部53とに接続される。
そして、残差補正部48は、出力電圧波形信号に基づいて検出された位相差θ(DTCT)から、残差(Δθ)を減算する。
残差補正部48は、演算結果を、R/Dコンバータ7の回転位相の検出値θとして出力する。
これにより、R/Dコンバータ7は、図9の温度ドリフトの残差が取り除かれた回転位相θを生成して出力できる。
【0086】
以上のように、本実施形態では、まず、レゾルバ6の出力電圧波形信号に基づいて検出される回転位相θの温度ドリフトを、レゾルバ6の巻線とは逆の温度特性(負の温度特性)を有する補償抵抗回路21により略相殺するようにしている。
【0087】
特に、本実施形態では、この出力巻線17に接続された補償抵抗回路21で、二相励磁一相出力方式のレゾルバ6の複数の巻線に起因する、検出回転位相の温度ドリフトを一括補償する。
すなわち、出力巻線17に接続された補償抵抗回路21により、二相のステータ12励磁コイル(第1励磁巻線13、第2励磁巻線14)、ロータ11の励磁受信コイル(励磁受信巻線15)、ロータ11の出力励磁コイル(出力用励磁巻線16)、および出力巻線17に起因する温度ドリフトを一括補償する。
これにより、本実施形態では、レゾルバ6の出力電圧波形に基づいて検出される回転位相θ(DTCT)自体の温度ドリフトを効果的に抑制することができる。
出力電圧波形に基づいて検出される回転位相θ(DTCT)は、レゾルバ6の温度によらず安定したものとなる。
【0088】
しかも、本実施形態では、補償抵抗回路21をレゾルバ6のすべての巻線に対して設けるのでなく、出力巻線17のみに設けている。
このため、本実施形態では、ロータ11に補償抵抗回路21を設ける必要がないので、レゾルバ6の耐信頼性などを損なうことなく高精度に安定した回転位相θ(DTCT)を検出することができる。
【0089】
これに加えて、本実施形態では更に、出力巻線17のみに補償抵抗回路21を接続し、これによりレゾルバ6のすべての巻線に起因する温度ドリフトを略相殺している。
そして、出力巻線17のみに接続された補償抵抗回路21で一括補償をする場合、その補償抵抗回路21は、レゾルバ6の出力巻線17に生じる抵抗値の温度変化を相殺する場合より大きく抵抗値が変化する、負の温度特性を有する。
その結果、R/Dコンバータ7の終端抵抗素子43により検出される電圧の振幅(大きさ)は、レゾルバ6の温度に応じて変化するようになる。
【0090】
このため、本実施形態では、この終端抵抗素子43により検出される電圧の振幅(大きさ)を検出し、この検出値を電圧温度変換テーブル54および温度残差変換テーブル55を用いて温度ドリフトの残差Δθへ変換し、さらに、レゾルバ6の出力電圧波形に基づいて検出される回転位相θ(DTCT)から残差Δθを減算する。
これにより、本実施形態では、電圧波形信号に基づいて検出されるレゾルバ6の回転位相θ(DTCT)を単に補償抵抗回路21により安定化させた場合に比べて、さらに高精度に安定した回転位相θを得ることができる。
【0091】
また、本実施形態では、温度ドリフトの残差Δθを得る過程において、サーボモータ5やレゾルバ6のリアルタイムの温度を得ている。
このように、本実施形態では、レゾルバ6以外のたとえば熱電対などの他の温度センサを使用することなく、サーボモータ5やレゾルバ6のリアルタイムの温度を正確に検出することができる。
そして、この温度を用いてモータ駆動を制御することにより、本実施形態では、安価でより信頼性のあるモータ保護を実現可能である。
たとえば、サーボ制御部3が、検出したサーボモータ5のリアルタイムの瞬時温度と、モータ過熱温度以下の限界温度とを比較することによりモータ過熱の有無を判断し、閾値温度を超えている場合にはモータを減速または停止することにより、モータが過熱状態となってしまわないように制御することも可能である。
このようにモータの瞬時温度を実測することにより、本実施形態では、モータの過熱に対して信頼性が高い保護が可能になる。
【0092】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0093】
たとえば上記実施形態において、補償抵抗回路21は、温度上昇に対して抵抗値が下がる温度特性のサーミスタ22と、温度上昇に対して抵抗値が上がる温度特性の抵抗素子とが並列に接続された受動回路で構成されている。
この他にも例えばレゾルバ6の動作温度範囲が狭い場合などにおいては、補償抵抗回路21は、サーミスタ22のみで構成してよい。
また、補償抵抗回路21は、サーミスタ22以外の負の温度特性を有する素子で構成してよい。
更に他にも例えば、補償抵抗回路21は、図13に示す回路により構成されてよい。
補償抵抗回路21は、少なくとも、レゾルバ6の温度上昇に対して抵抗値が下がる負の温度特性を有すればよい。
【0094】
図13は、補償抵抗回路21の変形例を示す回路図である。
図13の補償抵抗回路21は、ダイオード61、第3抵抗素子62、第4抵抗素子63、N型のFET(Field Effect Transistor)64を有する。
FET64は、出力巻線17に直列に接続される。
すなわち、ソース端子が出力巻線17の一端に接続され、ドレイン端子がR/Dコンバータ7の終端抵抗素子43に接続される。
ダイオード61は、アノードがレゾルバ6の出力巻線17の一端に接続され、カソードが第3抵抗素子62に接続される。
第4抵抗素子63は、第3抵抗素子62と、グランドとの間に接続される。
なお、第4抵抗素子63は、第3抵抗素子62と、レゾルバ6の出力巻線17の他端との間に接続されてよい。
また、第3抵抗素子62と第4抵抗素子63との接続点は、FET64のゲート端子に接続される。
【0095】
そして、図11の補償抵抗回路21では、たとえばレゾルバ6の出力電圧が正である場合に、その出力電圧が第3抵抗素子62と第4抵抗素子63とで分圧される。
N型のFET64は、この分圧比に応じた導通状態(チャネル幅)となる。
また、図11の補償抵抗回路21において、第3抵抗素子62は、レゾルバ6のたとえばステータ12に配置され、第4抵抗素子63は、レゾルバ6から離れたR/Dコンバータ7側に配置される。
よって、第3抵抗素子62の抵抗値は、レゾルバ6の温度上昇に伴って大きくなる一方で、第4抵抗素子63の抵抗値は、環境温度により一定の値に維持される。
第3抵抗素子62および第4抵抗素子63による分圧比は、レゾルバ6の温度に伴って変化する。
その結果、レゾルバ6の温度が上昇すると、N型のFET64は、よりオン状態に近い導通状態になる。
N型のFET64は、レゾルバ6の温度上昇に伴って抵抗値が低下する、負の温度特性になる。
【0096】
上記実施形態では、出力巻線17のみに補償抵抗回路21を接続し、この補償抵抗回路21でレゾルバ6のすべての巻線に起因する温度ドリフトを一括補償している。
この他にも例えば二相励磁のバランスが問題視されない場合などにおいては、ステータ12の第1励磁巻線13および第2励磁巻線14に対して、補償抵抗回路21を接続してよい。
また、ロータ11の耐久性について問題が生じない場合などであれば、ロータ11の励磁受信巻線15または出力用励磁巻線16に対して、補償抵抗回路21を接続してよい。
これらの補償抵抗回路21の抵抗値は、たとえば対応する巻線の抵抗値の温度変化を相殺するものであればよい。
また、このようにレゾルバ6の出力巻線17以外の巻線に対して補償抵抗回路21を接続する場合であっても、すべての動作温度範囲において巻線単位で温度変化を完全に相殺することは難しい。
このため、出力巻線17に対応する補償抵抗回路21では、出力巻線17の抵抗値の温度変化を相殺するとともに、その他の巻線での補償残差を併せて一括補償するとよい。
そして、この場合においても、出力巻線17に直列に接続された補償抵抗回路21は、レゾルバ6の出力巻線17に生じる抵抗値の温度変化を相殺する場合より大きく抵抗値が変化する、負の温度特性を有することになる。
したがって、出力電圧波形信号の振幅(大きさ)は、図10の特性線Aのようにレゾルバ6の動作温度に応じて変化するものになる。
このため、R/Dコンバータ7は、出力電圧波形信号の振幅(大きさ)を検出して、その振幅から得た残差により、温度ドリフトの残差を補償することができる。
【0097】
上記実施形態は、本発明を二相励磁一相出力方式のレゾルバ6に適用した例である。
この他にも例えば、上述した補償抵抗回路21およびR/Dコンバータ7は、一相励磁二相出力方式のレゾルバ6に適用してもよい。
これにより、一相励磁二相出力方式のレゾルバ6とともに用いられるR/Dコンバータ7において、検出回転位相の温度ドリフトを相殺するために、二相出力の信号同士の演算をする必要がなくなる。
一相励磁二相出力方式のレゾルバ6とともに用いられるR/Dコンバータ7において、高精度なアナログ回路が不要となる。
【0098】
上記実施形態では、レゾルバ6は、サーボモータモジュール4において、サーボモータ5と一体化されている。
この他にも例えば、レゾルバ6は、サーボモータ5と別体に形成されてよい。
また、サーボモータ5と別体に形成されたレゾルバ6は、レゾルバ6に補償抵抗回路21が取り付けられたレゾルバ装置として形成されてよい。
【0099】
上記実施形態では、R/Dコンバータ7は、サーボ制御部3の一部として設けられている。
この他にもたとえば、R/Dコンバータ7は、サーボ制御部3と別に形成され、サーボ制御部3へ検出した回転位相θや温度を出力してよい。
【符号の説明】
【0100】
1…サーボ制御システム(回転位相検出装置)、4…サーボモータモジュール(駆動装置)、5…サーボモータ(モータ)、5a…出力軸、6…レゾルバ(レゾルバ装置)、7…R/Dコンバータ(検出部、回転位相検出回路)、11…ロータ、12…ステータ、13…第1励磁巻線(励磁巻線)、14…第2励磁巻線(励磁巻線)、15…励磁受信巻線、16…出力用励磁巻線、17…出力巻線、21…補償抵抗回路、22…サーミスタ、23…通常の抵抗素子、43…終端抵抗素子、46…コンパレータ(位相検出回路)、48…残差補正部、52…ADコンバータ、53…変換部、54…電圧温度変換テーブル、55…温度残差変換テーブル、θ…回転位相、Δθ…残差
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を、出力巻線から出力するレゾルバと、
前記出力巻線に接続され、前記レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように前記出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路と、
前記出力巻線および前記補償抵抗回路が直列に接続され、前記出力巻線から出力された前記電圧波形信号が前記補償抵抗回路を通じて入力され、入力される信号の電圧波形に基づいて前記回転位相を検出する検出部と
を有し、
前記補償抵抗回路は、
前記レゾルバに設けられ、
前記検出部は、
前記補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧の大きさから前記レゾルバの温度を推定し、
前記推定した温度に応じた補償量で、前記電圧波形信号に基づいて検出した回転位相に含まれる温度誤差を補償する
回転位相検出装置。
【請求項2】
前記レゾルバは、
二相励磁一相出力方式であり、
前記補償抵抗回路は、
前記レゾルバの複数の巻線のうちの、前記出力巻線のみに接続されている
請求項1記載の回転位相検出装置。
【請求項3】
前記補償抵抗回路は、
温度上昇に対して抵抗値が下がるサーミスタと、温度上昇に対して抵抗値が増加する抵抗素子とが並列に接続された並列抵抗回路である
請求項1または2記載の回転位相検出装置。
【請求項4】
前記補償抵抗回路は、
前記出力巻線の抵抗値の温度変化を相殺する場合より大きく抵抗値が変化する温度特性を有する
請求項3記載の回転位相検出装置。
【請求項5】
前記検出部は、
前記出力巻線および前記補償抵抗回路と直列に接続される終端抵抗素子を有し、
前記レゾルバに与える励磁波形信号を基準とした、前記終端抵抗素子に発生する電圧波形の位相差から、前記回転位相を検出し、
前記終端抵抗素子に発生する電圧の大きさを、前記補償抵抗回路から入力される電圧の大きさとして用いる
請求項1から4のいずれか一項記載の回転位相検出装置。
【請求項6】
前記検出部は、
前記終端抵抗素子の電圧の大きさを出力するADコンバータと、
前記終端抵抗素子の電圧の大きさに対して、前記レゾルバの温度を対応付けた電圧温度変換テーブルと、
前記レゾルバの温度に対して、前記終端抵抗素子に発生する電圧波形信号に残る回転位相の温度ドリフトの残差を対応付けた温度残差変換テーブルと、
前記ADコンバータに接続され、前記電圧温度変換テーブルを用いて、入力された電圧の大きさから前記レゾルバの温度を得て、さらに前記温度残差変換テーブルを用いて、取得した前記レゾルバの温度から前記残差を得る変換部と、
前記変換部に接続され、前記電圧波形信号に基づいて検出した前記回転位相から、前記残差を減算して、補償された回転位相を出力する残差補正部と
を有する
請求項5記載の回転位相検出装置。
【請求項7】
励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を、出力巻線から出力するレゾルバと、
前記出力巻線と接続して前記レゾルバに設けられ、前記レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように前記出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路と
を有し、
前記補償抵抗回路を通じて前記出力巻線の電圧波形信号を出力し、前記出力巻線および前記補償抵抗回路と直列に接続される終端抵抗素子の電圧を、前記補償抵抗回路の温度に応じて変化させる
レゾルバ装置。
【請求項8】
出力軸を回転駆動するモータと、
前記出力軸の回転位相を検出するレゾルバ部と
を有し、
前記レゾルバ部は、
励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を、出力巻線から出力するレゾルバと、
前記出力巻線と接続して前記レゾルバに設けられ、前記レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように前記出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路と
を有し、
前記補償抵抗回路を通じて前記出力巻線の電圧波形信号を出力し、前記出力巻線および前記補償抵抗回路と直列に接続される終端抵抗素子の電圧を、前記補償抵抗回路の温度に応じて変化させる
駆動装置。
【請求項9】
励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を出力巻線から出力するレゾルバに対して、前記出力巻線に接続して前記レゾルバに設けられ、前記レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように前記出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路とともに用いられる回転位相検出回路であって、
前記出力巻線および前記補償抵抗回路に対して直列に接続され、前記補償抵抗回路を通じて前記出力巻線の電圧波形信号が入力され、前記補償抵抗回路の温度に応じて変化する電圧を発生する終端抵抗素子と、
前記終端抵抗素子の電圧の波形に基づいて前記回転位相を検出する位相検出回路と、
前記終端抵抗素子の電圧の大きさに基づいて前記レゾルバの温度を推定し、前記推定した温度に応じた補償量で、前記検出された回転位相に含まれる温度誤差を補償する補償回路と
を有する回転位相検出回路。
【請求項10】
励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を出力巻線から出力するレゾルバの前記電圧波形信号に基づいて前記回転位相を検出する方法であって、
前記出力巻線と接続して前記レゾルバに設けられ、前記レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように前記出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧波形に基づいて回転位相を検出するステップと、
前記補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧の大きさから前記レゾルバの温度を推定するステップと、
前記推定した温度に応じた補償量で、前記電圧波形信号に基づいて検出した回転位相に含まれる温度誤差を補償するステップと
を有する回転位相検出方法。
【請求項1】
励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を、出力巻線から出力するレゾルバと、
前記出力巻線に接続され、前記レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように前記出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路と、
前記出力巻線および前記補償抵抗回路が直列に接続され、前記出力巻線から出力された前記電圧波形信号が前記補償抵抗回路を通じて入力され、入力される信号の電圧波形に基づいて前記回転位相を検出する検出部と
を有し、
前記補償抵抗回路は、
前記レゾルバに設けられ、
前記検出部は、
前記補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧の大きさから前記レゾルバの温度を推定し、
前記推定した温度に応じた補償量で、前記電圧波形信号に基づいて検出した回転位相に含まれる温度誤差を補償する
回転位相検出装置。
【請求項2】
前記レゾルバは、
二相励磁一相出力方式であり、
前記補償抵抗回路は、
前記レゾルバの複数の巻線のうちの、前記出力巻線のみに接続されている
請求項1記載の回転位相検出装置。
【請求項3】
前記補償抵抗回路は、
温度上昇に対して抵抗値が下がるサーミスタと、温度上昇に対して抵抗値が増加する抵抗素子とが並列に接続された並列抵抗回路である
請求項1または2記載の回転位相検出装置。
【請求項4】
前記補償抵抗回路は、
前記出力巻線の抵抗値の温度変化を相殺する場合より大きく抵抗値が変化する温度特性を有する
請求項3記載の回転位相検出装置。
【請求項5】
前記検出部は、
前記出力巻線および前記補償抵抗回路と直列に接続される終端抵抗素子を有し、
前記レゾルバに与える励磁波形信号を基準とした、前記終端抵抗素子に発生する電圧波形の位相差から、前記回転位相を検出し、
前記終端抵抗素子に発生する電圧の大きさを、前記補償抵抗回路から入力される電圧の大きさとして用いる
請求項1から4のいずれか一項記載の回転位相検出装置。
【請求項6】
前記検出部は、
前記終端抵抗素子の電圧の大きさを出力するADコンバータと、
前記終端抵抗素子の電圧の大きさに対して、前記レゾルバの温度を対応付けた電圧温度変換テーブルと、
前記レゾルバの温度に対して、前記終端抵抗素子に発生する電圧波形信号に残る回転位相の温度ドリフトの残差を対応付けた温度残差変換テーブルと、
前記ADコンバータに接続され、前記電圧温度変換テーブルを用いて、入力された電圧の大きさから前記レゾルバの温度を得て、さらに前記温度残差変換テーブルを用いて、取得した前記レゾルバの温度から前記残差を得る変換部と、
前記変換部に接続され、前記電圧波形信号に基づいて検出した前記回転位相から、前記残差を減算して、補償された回転位相を出力する残差補正部と
を有する
請求項5記載の回転位相検出装置。
【請求項7】
励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を、出力巻線から出力するレゾルバと、
前記出力巻線と接続して前記レゾルバに設けられ、前記レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように前記出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路と
を有し、
前記補償抵抗回路を通じて前記出力巻線の電圧波形信号を出力し、前記出力巻線および前記補償抵抗回路と直列に接続される終端抵抗素子の電圧を、前記補償抵抗回路の温度に応じて変化させる
レゾルバ装置。
【請求項8】
出力軸を回転駆動するモータと、
前記出力軸の回転位相を検出するレゾルバ部と
を有し、
前記レゾルバ部は、
励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を、出力巻線から出力するレゾルバと、
前記出力巻線と接続して前記レゾルバに設けられ、前記レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように前記出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路と
を有し、
前記補償抵抗回路を通じて前記出力巻線の電圧波形信号を出力し、前記出力巻線および前記補償抵抗回路と直列に接続される終端抵抗素子の電圧を、前記補償抵抗回路の温度に応じて変化させる
駆動装置。
【請求項9】
励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を出力巻線から出力するレゾルバに対して、前記出力巻線に接続して前記レゾルバに設けられ、前記レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように前記出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路とともに用いられる回転位相検出回路であって、
前記出力巻線および前記補償抵抗回路に対して直列に接続され、前記補償抵抗回路を通じて前記出力巻線の電圧波形信号が入力され、前記補償抵抗回路の温度に応じて変化する電圧を発生する終端抵抗素子と、
前記終端抵抗素子の電圧の波形に基づいて前記回転位相を検出する位相検出回路と、
前記終端抵抗素子の電圧の大きさに基づいて前記レゾルバの温度を推定し、前記推定した温度に応じた補償量で、前記検出された回転位相に含まれる温度誤差を補償する補償回路と
を有する回転位相検出回路。
【請求項10】
励磁巻線に対する励磁受信巻線の回転位相に応じた電圧波形信号を出力巻線から出力するレゾルバの前記電圧波形信号に基づいて前記回転位相を検出する方法であって、
前記出力巻線と接続して前記レゾルバに設けられ、前記レゾルバの巻線の温度による抵抗値の変化を抑制するように前記出力巻線とは逆の温度特性の抵抗を有する補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧波形に基づいて回転位相を検出するステップと、
前記補償抵抗回路を通じて入力される信号の電圧の大きさから前記レゾルバの温度を推定するステップと、
前記推定した温度に応じた補償量で、前記電圧波形信号に基づいて検出した回転位相に含まれる温度誤差を補償するステップと
を有する回転位相検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−168041(P2012−168041A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29877(P2011−29877)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
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