回転塗布装置の洗浄用治具および洗浄方法
【課題】回転塗布装置の洗浄に用いる洗浄用治具であって、容器を上方部から洗浄することが可能な洗浄用治具、及びこの洗浄用治具を用いた洗浄方法を提供する。
【解決手段】容器内に設けられた基板保持具により回転可能に保持された基板の上に処理液を滴下し、該基板の回転により該基板上に前記処理液の膜を塗布する回転塗布装置において前記容器の洗浄に使用することができる洗浄用治具が提供される。この洗浄用治具は、前記基板保持具より大きい寸法に形成され、当該基板保持具に保持される中心部材と、前記中心部材に着脱可能に接続され、前記基板と略同一の直径を有する環状部材と、を備える。前記環状部材の外周部は、前記基板保持具により回転されながら前記洗浄液が裏面に対して供給された際に、当該洗浄液が前記裏面より上向きに回り込むように形成された外周面を備える。
【解決手段】容器内に設けられた基板保持具により回転可能に保持された基板の上に処理液を滴下し、該基板の回転により該基板上に前記処理液の膜を塗布する回転塗布装置において前記容器の洗浄に使用することができる洗浄用治具が提供される。この洗浄用治具は、前記基板保持具より大きい寸法に形成され、当該基板保持具に保持される中心部材と、前記中心部材に着脱可能に接続され、前記基板と略同一の直径を有する環状部材と、を備える。前記環状部材の外周部は、前記基板保持具により回転されながら前記洗浄液が裏面に対して供給された際に、当該洗浄液が前記裏面より上向きに回り込むように形成された外周面を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に回転可能に保持された半導体ウエハやフラットパネルディスプレイ基板などの上にレジスト液などの処理液を滴下し、基板の回転により当該処理液の膜を形成する基板処理装置において、回転により飛散した処理液が付着した容器を洗浄するために利用可能な洗浄用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造プロセスにおいては、半導体ウエハやFPD基板の上に形成され処理対象となる膜の上にレジストを塗布し、塗布したレジストを所定のフォトマスク(レチクル)を用いて露光し、現像することによって所定のパターンを有するエッチングマスクを形成し、このエッチングマスクを利用したエッチングにより所定の回路等が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−66116号公報
【特許文献2】特開平10−144599号公報
【特許文献3】特開2000−315671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、ウエハ表面上へのレジスト塗布には、回転塗布装置が最も良く利用されている。回転塗布装置においては、ウエハ上にレジスト液が滴下され、ウエハの回転に伴う遠心力により滴下されたレジスト液がウエハ表面で拡散し、レジスト膜が塗布される。このとき、余剰のレジスト液はウエハ外周から飛散し、ウエハ外周を取り囲むように形成された容器の内面に付着する。容器内面に付着したレジストは、ウエハへのレジスト塗布を繰り返すたびに厚くなり、乾燥し、容器から剥離する場合がある。剥離したレジストがウエハの表面に付着すれば、製造歩留まりが低下するという問題が生じる。
【0005】
このため、容器の内面に定期的に溶剤を供給して、容器内面に付着したレジストを洗い流すことが行われている。容器の内面への溶剤の供給方法として、容器の内面に開口する複数の導管を設け、これらの導管から容器内面へ溶剤を供給する第1の方法と、ウエハの代わりに円盤状の洗浄用治具を回転させて、洗浄用治具から容器内面へ向けて溶剤を散布する第2の方法が知られている(特許文献1〜3)。第1の方法は、導管の間隔が広すぎたり、導管の目詰まりが生じたりすると、容器の内面を均一に洗浄することができなくなるといった問題を有している。また、これを解決しようとすれば、容器の構成が複雑となるといった不都合を生じる。これに対して、第2の方法は、洗浄用治具を用いて溶剤を散布するため、容器をその内周方向に沿って均一に洗浄することができ、また、容器の構成を単純化することができるという利点を有している。
【0006】
ただし、本発明者らの検討の結果によると、容器の上方部に溶剤を散布するためには洗浄用治具を比較的高い回転速度(例えば約2400回転毎分(rpm))で比較的長い時間(例えば約240秒間)回転しなければならず、回転モータに大きな負荷がかかってしまう。このような状況のもとでは、回転モータが高温となり、その熱がスピンチャックへ伝わってスピンチャックの温度が上昇することとなる。この場合、容器の洗浄を終えた直後にウエハへレジストを塗布すると、ウエハの温度も高くなり、レジストの溶剤の蒸発がウエハの中央部で促進されて、レジストの膜厚が中央部で厚くなるといった問題が生じ得る。そうすると、ウエハの中央部と周縁部においてレジストマスクのパターンが相違し、製造されるデバイス等の特性にバラツキが生じる。また、この問題を解消するため、容器洗浄後にスピンチャックを冷やす時間を設けると、回転塗布装置のダウンタイムが増加し、スループットが低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて為され、洗浄用治具を比較的低い回転速度で回転させる場合であっても、容器を上方部から洗浄することが可能な洗浄用治具、及びこの洗浄用治具を用いた洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、容器内に設けられた基板保持具により回転可能に保持された基板の上に処理液を滴下し、該基板の回転により該基板上に前記処理液の膜を塗布する回転塗布装置において前記容器の洗浄に使用することができる洗浄用治具が提供される。この洗浄用治具は、前記基板保持具より大きい寸法に形成され、当該基板保持具に保持される中心部材と、前記中心部材に着脱可能に接続され、前記基板と略同一の直径を有する環状部材と、を備え、前記環状部材の外周部は、前記基板保持具により回転されながら前記洗浄液が裏面に対して供給された際に、当該洗浄液が前記裏面より上向きに回り込むように形成された外周面を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、容器内に設けられた基板保持具により回転可能に保持された基板の上に処理液を滴下し、該基板の回転により該基板上に前記処理液の膜を塗布する回転塗布装置を第1の態様の洗浄用治具を用いて洗浄する洗浄方法が提供される。この洗浄方法は、前記洗浄用治具を所定の保管場所から取り出して前記基板保持具に載置するステップと、前記基板保持具より前記洗浄用治具を回転するステップと、前記回転塗布装置に備わる溶剤供給部から前記洗浄用治具の裏面へ溶剤を供給するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、洗浄用治具を比較的低い回転速度で回転させる場合であっても、容器を上方部から洗浄することが可能な洗浄用治具、及びこの洗浄用治具を用いた洗浄方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態による洗浄用治具が好適に使用される塗布現像装置を示す斜視図である。
【図2】図1の塗布現像装置の上面図である。
【図3】図1の塗布現像装置に備わる塗布ユニットを示す断面図である。
【図4】図3の塗布ユニットの上面図である。
【図5】図3の塗布ユニットのリンスノズルを示す側面図である。
【図6】本発明の実施形態による洗浄用治具を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。
【図7】本発明の実施形態による洗浄方法を示すフローチャートである。
【図8】塗布ユニット洗浄中の、本発明の実施形態による洗浄用治具を示す模式図である。
【図9】本発明の実施形態による洗浄用治具を用いて洗浄される塗布ユニットの容器の洗浄前後を示す図である。
【図10】本発明の実施形態による洗浄用治具の変形例を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。
【図11】本発明の実施形態による洗浄用治具の別の変形例を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。
【図12】本発明の実施形態による洗浄用治具のまた別の変形例を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態による洗浄用治具を説明する。添付の全図面中、同一または対応する部材または部品については、同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
【0013】
本発明の一実施形態による洗浄用治具は、基板例えば半導体ウエハ(以下、「ウエハW」という)の表面に、例えばレジスト膜などの膜をスピンコートし現像する塗布現像装置に好適に利用される。
【0014】
初めに、図1及び図2を参照しながら、塗布現像装置20について説明する。塗布現像装置20は、所謂FOUP(Front Opening Universal Pod)などの基板カセットC内のウエハWを搬入出するためのカセットステーションS1を有する。カセットステーションS1は、複数のウエハカセットCを載置可能な載置台21と、この載置台21に載置される複数のウエハカセットCに対応する複数の開閉部22と、ウエハカセット開閉部22を通してウエハカセットCから又はウエハカセットCへウエハを受け渡す搬送機構23(図2)と、を有する。なお、ウエハカセットCは、複数(たとえば13枚)のウエハを収納することができる。
【0015】
また、塗布現像装置20は、カセットステーションS1の隣に、筐体24で囲まれた処理部S2を有する。図2に示すとおり、処理部S2においては、棚ユニットU1、主搬送部25A、棚ユニットU2、主搬送部25B、及び棚ユニットU3がこの順にX方向に沿って配置されている。
【0016】
棚ユニットU1、U2、U3の各々は、液処理ユニットU4、U5(後述)にて行われる処理に対する前処理及び後処理を行うための多段(例えば10段)の加熱ユニットかつ/又は冷却ユニットを有している。
【0017】
また、主搬送部25A、25Bは、棚ユニットU1、U2、U3や、塗布・現像ユニットを含む種々の処理ユニットの間でウエハWを搬送する。棚ユニットU1、U2、U3及び主搬送部25A、25Bの各々には図示しない開口部が形成され、開口部を通して、ウエハWを棚ユニットU1から棚ユニットU3まで搬送することができる。
【0018】
搬送部25Aは、棚ユニットU1、液処理ユニットU4及び棚ユニットU2に囲まれるように配置されている。同様に、搬送部25Bは、棚ユニットU2、液処理ユニットU5及び棚ユニットU3に囲まれるように配置されている。
【0019】
液処理ユニットU4、U5は、図1に示すように、レジスト液や現像液などを収納する収納部29と、収納部29の上に配置され、塗布ユニットCOT、現像ユニットDEV及び反射防止膜形成ユニットBARC等を含む複数段(例えば5段)のユニットと、を有する。なお、液処理ユニットU4は3段の塗布ユニットCOTと2段の反射防止膜形成ユニットBARCとを有し、液処理ユニットU5は5段の現像ユニットDEVを有しているが、塗布ユニットCOT、現像ユニットDEV及び反射防止膜形成ユニットBARCの組み合わせは、図示の例に限られず、適宜組み合わされて良い。また、液処理ユニットU4(U5)の隣には、液処理ユニットで使用される液の温度調節装置や、温湿度調節に用いられるダクト等を含む温湿度調整ユニット27(28)が設けられている。
【0020】
処理部S2の隣に図1および2のX軸の正方向に沿って、インターフェイス部S3が設けられ、処理部S2がカセットステーションS1とインターフェイス部S3とで挟まれている。インターフェイス部S3は、第1の搬送室31と第2の搬送室32とを有する。第2の搬送室32の一側面が第1の搬送室31に接続される一方、第2の搬送室32の他側面は、露光装置を含む露光部S4に接続されている。インターフェイス部S3の内部には、処理部S2と露光部S4との間でウエハWの受け渡しを行うための2つの受け渡し部33、34と、棚ユニットU6と、バッファカセットCOとが設けられている。
【0021】
この塗布現像装置20において、ウエハは例えば以下のとおり処理される。先ず、ウエハWの収納された基板カセットCが載置台21に載置される。次に、基板カセットCの蓋体が外されるとともに、この基板カセットCに対応する開閉部22が開かれ、搬送機構23によって基板カセットCからウエハWが取り出される。そして、ウエハWは、棚ユニットU1の一段をなす受け渡しユニット(図示せず)を介して主搬送部25Aへと引き渡される。次いで、ウエハWは主搬送部25Aにより棚ユニットU1〜U3内のいずれかの棚へ搬送され、前処理として例えば疎水化処理や冷却処理などが行われ、更に塗布ユニットCOTへ搬送されて、レジスト膜が回転塗布される。そして、ウエハWは棚ユニットU1〜U3のいずれかの棚である加熱ユニットで加熱され、冷却された後、棚ユニットU3の受け渡しユニットを経由して、インターフェイス部S3へと搬入される。このインターフェイス部S3においてウエハWは例えば受け渡し部33から棚ユニットU6と受け渡し手段34とを介して露光部S4へ搬送され、露光が行われる。露光後、ウエハWは、棚ユニットU3から露光部S4までの搬送経路と逆の経路を通って棚ユニットU3に戻され、棚ユニットU3において加熱され冷却される。この後、主搬送部25Bにより、現像ユニットDEVへ搬送され、現像ユニットDEVにてウエハW上のレジスト膜が現像されてレジストマスクが形成される。その後、ウエハWは載置台21上の元の基板カセットCへと戻される。
【0022】
次に、塗布現像装置20の塗布ユニットCOTについて図3から図5を参照しながら説明する。
【0023】
図3を参照すると、塗布ユニットCOTは、例えば直方体の筐体10を有しており、その内部に液処理が行われる処理空間10aが画成されている。塗布ユニットCOTは、筐体10内に処理対象であるウエハWを保持するスピンチャック11と、スピンチャック11に保持されるウエハWの表面にレジスト液を滴下する滴下ノズル15と、ウエハWの裏面に回り込んだレジスト等を除去するためのバックリンスノズル14と、ウエハWの周縁部に塗布されたレジスト液を除去するためのリンスノズル17(図4、図5)と、ウエハWの表面から飛散したレジスト液やレジスト液のミスト等を受けるためのカップ体2とを備えている。
【0024】
筐体10には、処理空間10aへのウエハWの搬入出のため、ウエハW及び主搬送部25Aが通過することができる搬入出口10bが設けられている。
【0025】
スピンチャック11は、ウエハWの裏面中央部を吸引して略水平に保持する。また、スピンチャック11は、軸部12を介して駆動機構(スピンチャックモータ)13に接続されており、このスピンチャックモータ13によって、保持したウエハWを回転することができる。さらに、スピンチャック11は上下方向(図3及び図4のZ方向)に移動することができる。
【0026】
滴下ノズル15は図示しない供給ユニットから送出されたレジスト液をスピンチャック11に保持されたウエハW表面に滴下する。滴下ノズル15は、基台16aに支持されており、この基台16aは上下方向に移動することができる。また、基台16aは、基台16aの基部に設けられたガイドレール16bにより左右方向(図3及び図4のX方向)に移動することができる。これらの構成により、滴下ノズル15は、例えばホームポジション(図4に示すガイドレール16bの左端の位置)から移動してスピンチャック11に保持されたウエハWの表面の例えば中央部と対向し、その表面にレジスト液を滴下することができる。
【0027】
リンスノズル17は、ウエハWに塗布されたレジスト膜の周縁部の剥がれを防止するため、レジスト膜を除去するリンス液をウエハW周縁部に供給する。リンスノズル17は、図5の側面図に示すように略Γ状の形状を有しており、駆動部18に取り付けられている。また、リンスノズル17は、内部に導管を有し、駆動部18の内部に同様に設けられた導管を介して接続されるリンス液供給部からリンス液を吐出することができる。リンス液としては、処理液に含まれる溶剤、例えばシンナーなどを使用することができる。また、リンスノズル17は、定常時は、図4に二点鎖線で示すホームポジションにあり、駆動部18により駆動部18を中心として回動することができる。このような構成により、エッジリンス中は、リンスノズル17の先端部がウエハWの周縁部と対向する位置まで移動し、ウエハWの周縁部に向けてリンス液を吐出することができる。
【0028】
さらに、塗布ユニットCOTは各機器の動作を統括制御する役割を果たす制御部6を備えており、この制御部6にはスピンチャック11のスピンチャックモータ13や基台16a等が接続されている。制御部6は、構成要素としてCPUを含む例えばコンピュータであって良く、また、制御部6には記憶装置6aや入出力装置6bが接続されている。また、制御部6は、後述する洗浄方法を塗布ユニットCOTに実行させるためのプログラムに基づいて、塗布ユニットCOTの各機器を動作させ、その洗浄方法を実施する。このプログラムは、ハードディスク、光ディスク、磁気ディスク、半導体メモリデバイスなどのコンピュータ可読記録媒体6cに格納されて良く、所定の読み取り装置により記憶装置6aに記憶され、必要に応じて制御部6に読み出される。なお、制御部6は、塗布ユニットCOTを塗布ユニットとして備える塗布現像装置20の全体の動作を統括制御する機能も備えている。
【0029】
次に、カップ体2について図3から図5を参照しながら説明する。カップ体2は、ウエハW上に滴下され、ウエハWの回転により飛散するレジスト液やそのミストを受けて、塗布ユニットCOT外に排出する。
【0030】
カップ体2は、図3に示すようにウエハWから飛散したレジスト液等のドレインを提供するベース部2aと、ベース部2aの外周部に載置されてウエハWから飛散するレジスト液等を受けるアウターカップ2bと、ベース部2aの内周部に載置されてウエハWやアウターカップ2bから流れ落ちるレジスト液等をベース部2aのドレインへ導くインナーカップ2cとを有する。
【0031】
ベース部2aの底部には、ドレインポート45と、排気ポート46とが設けられている。ドレインポート45は、レジスト液等を排出するドレイン管52と接続し、アウターカップ2bから流れ落ちるレジスト液等やインナーカップ2cによって案内されるレジスト液等を排出する。排気ポート46は、ベース部2aの底部の上下に延びて、下端において排気部(図示せず)に繋がる排気管51に接続し、レジスト液から蒸発する溶媒やレジスト液のミストを排気する。図3中に矢印で示すように、レジスト液からの溶媒やレジストのミストは、アウターカップ2bとインナーカップ2cとの間の開口部41aから、ベース部2aの外壁24aとインナーカップ2cの流路板43との間の空間と、この流路板43と排気ポート45の上端との間の空間とを通って排気ポート46に至る気流路を通して排気される。なお、筐体10の天井部には、カップ体2と対向するフィルタユニット19が取り付けられており、フィルタユニット19から例えば清浄空気を所定流量で供給されている。フィルタユニット19から送出される清浄空気は、図示しない排気口から排気されて処理空間10aにおいてダウンフローが形成されるとともに、上記の気流路を通って排気される。したがって、カップ体2内部もまた清浄環境が実現されている。
【0032】
また、ベース部2aには、スピンチャック11により保持されるウエハWの下方に位置するようにバックリンスノズル14が設けられている。バックリンスノズル14は、ベース部2aを貫通する導管とソレノイドバルブ14aとを介して溶剤タンク14bと接続されている。この構成によれば、ソレノイドバルブ14aを開くとともに溶剤タンク14bを加圧することにより、バックリンスノズル14からウエハWの裏面に向けて溶剤を供給することができる。なお、図示の例では、スピンチャック11の軸部12を中心として2つのバックリンスノズル14があるが、これに限らず、3つ以上のバックリンスノズル14を設けても良い。また、この溶剤としては、レジストに含まれる溶剤、例えばシンナーを使用することができる。
【0033】
次に、図6から図8を参照しながら、本発明の一実施形態による洗浄用治具を説明する。図6(a)は、本実施形態による洗浄用治具を示す斜視図であり、図6(b)は図6(a)のI−I線に沿った断面図の約半分を拡大して示す図である。図6(a)を参照すると、洗浄用治具50は全体として円盤状の形状を有している。洗浄用治具50は、例えば円状の円板部材である中心部50aと、環状の形状を有し、中心部50aに対して着脱可能に接続された環状部50bとを有している。中心部50aは塗布ユニットCOTのスピンチャック11に保持され得る大きさ、すなわちスピンチャック11の直径と同じか直径よりも僅かに大きい直径を有している。このため、洗浄用治具50が主搬送部25A(図2)により筐体10へ搬入されて昇降ピン(図示せず)によりスピンチャック11へ受け渡されたとき、洗浄用治具50は、スピンチャック11により中心部50aの裏面が吸着されて保持される。また、中心部50aは、スピンチャック11による真空吸着によって変形しないように強固な材料、例えばガラスや樹脂、具体的にはポリオキシメチレン(POM)で作製されると好ましい。さらに、中心部50aは、更に強度を高めて吸着による変形や回転時の歪みなどをより低減するため、図6(b)に示すように環状部50bよりも厚く形成して良い。
【0034】
環状部50bは、親水性(リンス液に対し濡れ易い性質)を有する材料、又は親水性処理を施した材料で、かつ、リンス液に対して耐食性を有する材料で作製されると好ましく、例えばエポキシ樹脂で作製される。また、環状部50bは、塗布ユニットCOTで処理可能なウエハWの直径(例えば約300mm)と略同一の直径を有している。さらに、環状部50bの表面外周に沿って環状の隆起部50dが設けられている。図6(b)を参照すると、隆起部50dは、斜辺が中心部50aに向けて傾いた直角三角形状の断面を有している。図6(b)の断面図中において隆起部50の鉛直方向に起立した辺は、環状部50bの外縁に沿った外壁面を形成している。すなわち、隆起部50の外壁面は、洗浄用治具50の外周面500の一部を形成している。これにより、外周面500は、環状部50bの厚さよりも高い高さh(図6(b))を有することができる。また、外周面500の最下端は環状部50bの裏面と同じレベルに位置している。換言すると、外周面500は環状部50bの裏面よりも低い位置にまで延びていない。外周面500の高さhについては後述する。
【0035】
なお、環状部50bは、上述のとおり、親水性を有する材料、又は親水性処理が施された材料で形成されると好ましいが、親水性処理は、外周面500のみに対して施しても良い。また、外周面500と環状部50bの裏面とに対して親水性処理を施しても良い。
【0036】
また、環状部50bと中心部50aが互いに着脱可能に接続されるのは、中心部50aに傷などが付いた場合であっても、中心部50aを交換するだけで、洗浄用治具50の全体を廃棄することなく使用し続けることができるようにするためである。図示の例では、環状部50bが、内周部において、中心部50aに対して着脱自在にネジ止めされている。ただし、他の実施形態においては、他の方法により互いに着脱可能に接続しても良い。さらに、中心部50aは、円状に限られず、スピンチャック11により保持され得る限りにおいて、どのような平面形状を有していても良い。この場合、環状部50bは、環状に限られず、中心部50aの形状に応じた形状を有して良い。
【0037】
洗浄用治具50は、図1及び図2を参照しながら説明した塗布現像装置2の棚ユニットU1,U2,U3内の所定の位置、例えば冷却ユニット上のスペースに保管することができ、所定の保管場所から、主搬送部25A(25B)を利用して塗布ユニットCOTへ搬送される。
【0038】
以下、図7及び図8を参照しながら、本実施形態による洗浄用治具50を利用した塗布ユニットCOTのカップ本体2の洗浄方法と、洗浄用治具50が発揮する作用について説明する。図7は当該洗浄方法を示すフローチャートである。図8は、カップ体2の洗浄中における、塗布ユニットCOTと、塗布ユニットCOTのスピンチャック11に保持された洗浄用治具50との断面を示す模式図である。なお、この洗浄方法は、所定の枚数のウエハへレジストを塗布した後に定期的に行って良く、または、塗布現像装置20で処理すべきウエハ(ロット)の入来間隔が長い場合に、それらのロット間に行ってもよい。
【0039】
まず、上記のように構成される洗浄用治具50を主搬送部25Aにより所定の保管場所から塗布ユニットCOTの筐体10内へ搬入し、図示しない昇降ピンにより主搬送部25Aからスピンチャック11上へ洗浄用治具50を受け渡す。次に、吸引により、スピンチャック11により洗浄用治具50を保持する(ステップS1)。次いで、洗浄用治具50を第1の回転速度で回転させる(ステップS2)。第1の回転速度は、例えば約70rpmから約300rpmであって良く、より好ましくは約100rpmから約200rpmであっても良い。
【0040】
次に、バックリンスノズル14から溶剤を洗浄用治具50(環状部50b)の裏面に向けて供給する(ステップS3)。溶剤の供給量は、例えば約50cm3/分から約200cm3/分であって良く、約80cm3/分から約120cm3/分であっても良い。バックリンスノズル14から洗浄用治具50の裏面に到達した溶剤は、図8に示すように、洗浄用治具50の回転により生じる遠心力によって洗浄用治具50の外周に向かって裏面を流れ、裏面外周縁50eに到達する。裏面外周縁50eに到達した溶剤は、その溶剤が有する粘性や表面張力により、外周面500へ回り込む。そして、外周面500に回り込んだ溶剤は、洗浄用治具50の回転により、カップ体2のアウターカップ2bの内面に向けて飛散する。ここで、溶剤は外周面500に沿って上向きに回り込むため、水平方向よりも上向きの仰角で飛散し、アウターカップ2bの内面の高い部分に到達することができる。その部分は、スピンチャック11に保持されるウエハの高さよりも高くすることができる。したがって、溶剤は、アウターカップ2bの内面を、レジストが付着した部分よりも高い位置からベース部2aの底部まで流れて、アウターカップ2bの内面に付着したレジスト液を洗い流すことができる。
【0041】
また、図8に示すように、溶剤の飛散中には、バックリンスノズル14から供給されて外周縁50eに到達して外周面500へ回り込む溶剤の入来量と、外周面500から飛散する溶剤の出行量とがバランスして決まる所定の量の溶剤溜まりRが外周面500に形成される。そして、その量は、バックリンスノズル14からの溶剤の供給量、溶剤の粘性等、洗浄用治具50の回転速度だけでなく、外周面500の高さhによっても変化する。適量の溶剤溜まりRを形成することにより、アウターカップ2bに対して溶剤を確実に到達させることができるため、外周面500の高さhを調整することは重要である。例えば、洗浄用治具50の外周部が縁に向けて薄くなるように(エッジ状に)形成される極端な場合(外周面500の高さhがほぼゼロの場合)には、溶剤溜まりが形成されなくなってしまう。一方、外周面500を高くするとしても、溶剤が到達できる高さの限度を超えるほど高くする必要はない。また、外周面500を過度に高くすると、洗浄用治具50を安定して回転させることができない事態もなり得る。したがって、外周面500の高さhは予備的な実験を通して決定することが好ましい。本発明の発明者らが行った検討によれば、外周面500の高さhは、約2mmから約7mmが好ましく、約3mmから約5mmであれば更に好ましい。
【0042】
所定の時間、アウターカップ2bへ溶剤を飛散させた後、回転速度を第2の回転速度まで低下させる(ステップS4)。第2の回転速度は、例えば約30rpmから約70rpmであって良い。これにより、外周面500から飛散する溶剤は、インナーカップ2cの上面に降り注ぐこととなる。したがって、インナーカップ2cの上面からベース部2aの底部まで溶剤により洗浄される。
【0043】
所定の時間、インナーカップ2cへ溶剤を飛散させた後、バックリンスノズル14から溶剤を供給するのを停止するとともに(ステップS5)、洗浄用治具50の回転速度を上げて洗浄用治具50を乾燥させる(ステップS6)。この後、洗浄用治具50の回転を停止し、昇降ピン(図示せず)により洗浄用治具50を持ち上げ、主搬送部25Aにより洗浄用治具50を塗布ユニットCOTから搬出し(ステップS7)、所定の保管場所へ搬送する。
【0044】
次に、図9及び図10を参照しながら、上記の洗浄方法の実施例と比較例を説明する。実施例と比較例において使用した洗浄用治具の構成を表1に示す。比較例における洗浄用治具は、表1からも分かるように、隆起部50dが無く、環状部50bが外縁まで一定の厚さを有する点で実施例の洗浄用治具50と相違し、他の点で同一である。以下、比較例の洗浄用治具を説明の便宜上、洗浄用治具60と記す。
【0045】
【表1】
洗浄用治具50及び60を使用し、上記の洗浄方法に従って同一のカップ体2を洗浄した。いずれの場合も、カップ体2において1500枚のウエハにレジストを塗布した後に洗浄を行った。また、洗浄用治具50,60の回転速度などの洗浄条件は、表2及び表3の塗布ユニットCOTのレシピに示すとおりである。表2に示す実施例における洗浄条件と比較例における洗浄条件とは、いずれも、洗浄用治具50,60を用いてカップ体2を洗浄したときにカップ体2を十分に洗浄できるように調整することにより定めた。洗浄用治具50,60を用いた洗浄の前後におけるカップ体2の典型例を図9(a)及び(b)に示す。図9(a)は洗浄前のカップ体2の内面を示し、図9(b)は洗浄後のカップ体2を示している。これらの図において、白い部分はカップ体2が見えている部分を示し、黒い部分がカップ体2に付着したレジストを示している。図9(a)と図9(b)を比較すると、実施例および比較例のいずれにおいても、洗浄後にはカップ体2のほぼ全域が露出しており、洗浄前にカップ体2の内面に付着していたレジストが洗浄により除去されていることが分かる。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
表2を参照すると、実施例においては、アウターカップ2bを洗浄する場合であっても洗浄用治具50の回転速度は150rpmであり、また、この回転速度における洗浄時間は僅か50秒である。
【0048】
一方、比較例においては、アウターカップ2bの洗浄の際には洗浄用治具60の回転速度は2000rpmであり、洗浄時間は6分も必要である。しかも、2000rpmまで回転速度を上げるため、ランプアップとランプダウンが必要となり、更に時間がかかる。
【0049】
さらに、比較例においては、表3の最下欄に示すように600秒間、洗浄用治具60を回転させずに維持している。これは、スピンドルチャック11の温度を常温(または回転塗布装置20が設置される環境の温度)に戻すために設けられている。すなわち、2000rpmといった高い回転速度で洗浄用治具60を回転させると、スピンドルモータ13が高温となり、その影響によりスピンドルチャック11の温度が上昇してしまう。この直後にウエハWへレジストを塗布すると、レジスト膜の均一性が悪化するため、これを防止すべく、スピンドルチャック11の温度を常温に戻す必要がある。
【0050】
比較例では600秒と長いのに対し、実施例におけるスピンドルチャック11の冷却期間は380秒と短い。これは、アウターカップ2bの洗浄の際の回転速度が150rpmと低いために、スピンドルモータ13はそれ程高温にならないためである。この観点からも、実施例においては洗浄に要する時間が短縮される。
【0051】
なお、インナーカップ2cの洗浄においても、実施例においては、比較例に比べて低い回転速度で短い時間で済む点にも注目すべきである。
【0052】
以上の結果から、本発明の実施形態による洗浄用治具50によれば、比較的低い回転速度で短い時間でカップ体2を洗浄することができることが明らかとなった。具体的には、比較例においてはカップ体2を洗浄するのに約18分を要するのに対し、実施例においては約8分でよい。
【0053】
以上説明したように、本発明の一実施形態による洗浄用治具50によれば、バックリンスノズル14から洗浄用治具50の裏面に供給された溶剤は、洗浄用治具50の回転によって洗浄用治具50の外周面500に沿って上向きに回り込み、外周面500からカップ体2に向けて飛散するため、洗浄用治具50の回転速度が比較的低い場合であっても、カップ体2のアウターカップ2bの高い部分に到達することができ、したがって、アウターカップ2bをほぼ全体に亘って洗浄することができる。また、回転速度を更に低く調整することにより、インナーカップ2cもまた洗浄することができる。
【0054】
さらに、洗浄用治具50は、互いにネジ止めされる中心部50aと環状部50bとから構成され、中心部50aの裏面がスピンチャック11により保持される。このため、中心部50aを熱容量の小さい、熱を放散し易い材料で形成することにより、スピンチャックモータ13からスピンチャック11へ伝わる熱を素早く放散させて、スピンチャック11の温度の上昇を防止することができる。したがって、カップ体2の洗浄中に、喩え回転モータの温度が上昇した場合であっても、スピンチャック11の温度を室温程度まで低下させる時間を短くすることができる。この結果、塗布現像装置20のダウンタイムが低減され、スループットを向上することができる。
【0055】
以下、上記の洗浄用治具50の変形例について説明する。
【0056】
<変形例1>
図10(a)は本発明の一の実施形態の変形例1による洗浄用治具を示す断面図であり、図10(b)は図10(a)におけるI−I線に沿った断面図である。図示のとおり、洗浄用治具51は、外周面510に円周方向に沿って形成された溝部511を有している。溝部511により、外周面510に保持される溶剤溜まりRの量を増加することができ、外周面510からカップ体2へ飛散する溶剤の量を増加することが可能となる。
【0057】
<変形例2>
図11(a)は本発明の一の実施形態の変形例2による洗浄用治具を示す斜視図であり、図11(b)は図11(a)におけるI−I線に沿った断面図である。図11(a)に示すように、洗浄用治具52は、環状部52bにおける隆起部52eの内周に沿って、所定の角度間隔で複数の貫通孔521が設けられている。貫通孔521は、図11(b)に示すように、バックリンスノズル14から環状部52bの裏面に沿って流れる溶剤が、環状部52bの表面に回り込むのを許容する。表面に回り込んだ溶剤は、隆起部52eを乗り越えて外周面520へ到達する。すなわち、隆起部52eの上から溶剤溜まりRへ溶剤を供給することができ、したがって、外周面520からカップ体2へ飛散する溶剤の量を増加することが可能となる。
【0058】
<変形例3>
図12(a)は本発明の一の実施形態の変形例2による洗浄用治具を示す斜視図であり、図12(b)は図12(a)におけるI−I線に沿った断面図である。図示のとおり、洗浄用治具53は、環状部53bの裏面から隆起部53eを貫通し、外周面530に開口する複数の貫通孔531を有している。複数の貫通孔531は、変形例2による洗浄用治具52の貫通孔521と同様に、所定の角度間隔で設けられている。この貫通孔531を通して、バックリンスノズル14からの溶剤を溶剤溜まりRへ供給することができるため、外周面530からカップ体2へ飛散する溶剤の量を増加することが可能となる。
【0059】
以上、幾つかの実施形態及び変形例を参照しながら本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲内において種々に変更が可能である。
【0060】
例えば、上述した実施形態において、洗浄用治具50,51,52,53の表面外縁に隆起部50d,51d,52d,53dが設けられて外周面500が形成されたが、洗浄用治具50の全体(又は環状部50b)を厚くすることにより外周面500を形成しても良い。ただし、比較的薄い環状部50b等に隆起部50d等を設ける場合は、洗浄用治具50等を軽量化することができ、モータへの負荷を低減できる点で好ましい。
【0061】
また、洗浄用治具50等を中心部50a等と環状部50b等とから形成したが、一の円盤で形成しても良いことは言うまでもない。
【0062】
隆起部50d等の断面形状(図6(b))は、直角三角形に限らず、矩形であって良く、台形であっても良い。また、外周面500が溶剤を外周面500へ回り込ませることができるように形成される限りにおいて、外周面500以外の面が湾曲していても構わない。
【0063】
さらに、洗浄用治具50等の外周面500等は図示の例では鉛直方向に延びているが、溶剤を外周面500等へ回り込ませることができ、溶剤溜まりRが形成される限りにおいて、傾斜していても構わない。
【0064】
洗浄用治具51における溝部511は、図10ではV溝状に形成されているが、これに限られず、凹溝であって良い。また、溝部511の代わりに、外周面510の円周方向に沿って複数の凹部を設けても良い。これによっても、外周面510の溶液溜まりの量を増加することができる。
【0065】
変形例2による洗浄用治具52の貫通孔521は、図11(b)においては、環状部52bの裏面(表面)に対して垂直な方向に延びるように図示されているが、傾斜していても良い。特に、貫通孔521は、裏面からの溶剤を隆起部52dへ向けて案内することができるように、裏面から表面へ向かうに従って外向きに傾斜していると好ましい。
【0066】
さらに、変形例1から3のいずれか2つ又は3つを組み合わせても良い。すなわち、例えば、変形例2による洗浄用治具52の貫通孔521を変形例1による洗浄用治具51に形成しても良い。
【0067】
また、カップ体2は、アウターカップ2bとインナーカップ2cとの間にミドルカップを有していて良い。洗浄用治具50の回転速度を調整することにより、ミドルカップに付着したレジストを流し落とすことができることは言うまでもない。なお、ミドルカップは、レジスト液から蒸発する溶媒やレジスト液のミストを上述の気流路を通して排気する際に、気流の方向を調整する役割を果たすものであって良い。
【0068】
図7のフローチャートの各ステップは、1又は2以上の別個のステップもしくは段階または双方を包含して良い。したがって、ステップS1からS7の7つのステップを記載しているからといって、上記の洗浄方法が7つのステップのみに限定されると理解してはならない。
【0069】
また、ステップS2における第1の回転速度を、ステップS4における第2の回転速度より遅くして、アウターカップ2bの洗浄より前にインナーカップ2cを洗浄しても良い。さらに、バックリンスノズル14から洗浄用治具50等の裏面に溶剤を供給するステップS3を洗浄用治具50等の回転を開始するステップS2と同時またはステップ2より前に行っても良い。
【0070】
また、回転速度は、使用する溶剤の粘性等や、カップ体2の形状に合わせて調整すべきことは言うまでもない。
【0071】
上記の実施形態および変形例におけるウエハWは半導体ウエハに限らず、FPD基板であって良いことは勿論である。また、本発明による洗浄用治具および洗浄方法は、基板の表面に膜を形成する塗布装置(塗布ユニット)に限らず、現像処理装置に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
2 カップ体
2b アウターカップ
2c インナーカップ
11 スピンチャック
14 バックリンスノズル
10 塗布ユニット
20 塗布現像装置
50,51,52,53 洗浄用治具
500,510,520,530 外周面
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に回転可能に保持された半導体ウエハやフラットパネルディスプレイ基板などの上にレジスト液などの処理液を滴下し、基板の回転により当該処理液の膜を形成する基板処理装置において、回転により飛散した処理液が付着した容器を洗浄するために利用可能な洗浄用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造プロセスにおいては、半導体ウエハやFPD基板の上に形成され処理対象となる膜の上にレジストを塗布し、塗布したレジストを所定のフォトマスク(レチクル)を用いて露光し、現像することによって所定のパターンを有するエッチングマスクを形成し、このエッチングマスクを利用したエッチングにより所定の回路等が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−66116号公報
【特許文献2】特開平10−144599号公報
【特許文献3】特開2000−315671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、ウエハ表面上へのレジスト塗布には、回転塗布装置が最も良く利用されている。回転塗布装置においては、ウエハ上にレジスト液が滴下され、ウエハの回転に伴う遠心力により滴下されたレジスト液がウエハ表面で拡散し、レジスト膜が塗布される。このとき、余剰のレジスト液はウエハ外周から飛散し、ウエハ外周を取り囲むように形成された容器の内面に付着する。容器内面に付着したレジストは、ウエハへのレジスト塗布を繰り返すたびに厚くなり、乾燥し、容器から剥離する場合がある。剥離したレジストがウエハの表面に付着すれば、製造歩留まりが低下するという問題が生じる。
【0005】
このため、容器の内面に定期的に溶剤を供給して、容器内面に付着したレジストを洗い流すことが行われている。容器の内面への溶剤の供給方法として、容器の内面に開口する複数の導管を設け、これらの導管から容器内面へ溶剤を供給する第1の方法と、ウエハの代わりに円盤状の洗浄用治具を回転させて、洗浄用治具から容器内面へ向けて溶剤を散布する第2の方法が知られている(特許文献1〜3)。第1の方法は、導管の間隔が広すぎたり、導管の目詰まりが生じたりすると、容器の内面を均一に洗浄することができなくなるといった問題を有している。また、これを解決しようとすれば、容器の構成が複雑となるといった不都合を生じる。これに対して、第2の方法は、洗浄用治具を用いて溶剤を散布するため、容器をその内周方向に沿って均一に洗浄することができ、また、容器の構成を単純化することができるという利点を有している。
【0006】
ただし、本発明者らの検討の結果によると、容器の上方部に溶剤を散布するためには洗浄用治具を比較的高い回転速度(例えば約2400回転毎分(rpm))で比較的長い時間(例えば約240秒間)回転しなければならず、回転モータに大きな負荷がかかってしまう。このような状況のもとでは、回転モータが高温となり、その熱がスピンチャックへ伝わってスピンチャックの温度が上昇することとなる。この場合、容器の洗浄を終えた直後にウエハへレジストを塗布すると、ウエハの温度も高くなり、レジストの溶剤の蒸発がウエハの中央部で促進されて、レジストの膜厚が中央部で厚くなるといった問題が生じ得る。そうすると、ウエハの中央部と周縁部においてレジストマスクのパターンが相違し、製造されるデバイス等の特性にバラツキが生じる。また、この問題を解消するため、容器洗浄後にスピンチャックを冷やす時間を設けると、回転塗布装置のダウンタイムが増加し、スループットが低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて為され、洗浄用治具を比較的低い回転速度で回転させる場合であっても、容器を上方部から洗浄することが可能な洗浄用治具、及びこの洗浄用治具を用いた洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、容器内に設けられた基板保持具により回転可能に保持された基板の上に処理液を滴下し、該基板の回転により該基板上に前記処理液の膜を塗布する回転塗布装置において前記容器の洗浄に使用することができる洗浄用治具が提供される。この洗浄用治具は、前記基板保持具より大きい寸法に形成され、当該基板保持具に保持される中心部材と、前記中心部材に着脱可能に接続され、前記基板と略同一の直径を有する環状部材と、を備え、前記環状部材の外周部は、前記基板保持具により回転されながら前記洗浄液が裏面に対して供給された際に、当該洗浄液が前記裏面より上向きに回り込むように形成された外周面を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、容器内に設けられた基板保持具により回転可能に保持された基板の上に処理液を滴下し、該基板の回転により該基板上に前記処理液の膜を塗布する回転塗布装置を第1の態様の洗浄用治具を用いて洗浄する洗浄方法が提供される。この洗浄方法は、前記洗浄用治具を所定の保管場所から取り出して前記基板保持具に載置するステップと、前記基板保持具より前記洗浄用治具を回転するステップと、前記回転塗布装置に備わる溶剤供給部から前記洗浄用治具の裏面へ溶剤を供給するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、洗浄用治具を比較的低い回転速度で回転させる場合であっても、容器を上方部から洗浄することが可能な洗浄用治具、及びこの洗浄用治具を用いた洗浄方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態による洗浄用治具が好適に使用される塗布現像装置を示す斜視図である。
【図2】図1の塗布現像装置の上面図である。
【図3】図1の塗布現像装置に備わる塗布ユニットを示す断面図である。
【図4】図3の塗布ユニットの上面図である。
【図5】図3の塗布ユニットのリンスノズルを示す側面図である。
【図6】本発明の実施形態による洗浄用治具を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。
【図7】本発明の実施形態による洗浄方法を示すフローチャートである。
【図8】塗布ユニット洗浄中の、本発明の実施形態による洗浄用治具を示す模式図である。
【図9】本発明の実施形態による洗浄用治具を用いて洗浄される塗布ユニットの容器の洗浄前後を示す図である。
【図10】本発明の実施形態による洗浄用治具の変形例を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。
【図11】本発明の実施形態による洗浄用治具の別の変形例を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。
【図12】本発明の実施形態による洗浄用治具のまた別の変形例を示す斜視図(a)及び断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態による洗浄用治具を説明する。添付の全図面中、同一または対応する部材または部品については、同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
【0013】
本発明の一実施形態による洗浄用治具は、基板例えば半導体ウエハ(以下、「ウエハW」という)の表面に、例えばレジスト膜などの膜をスピンコートし現像する塗布現像装置に好適に利用される。
【0014】
初めに、図1及び図2を参照しながら、塗布現像装置20について説明する。塗布現像装置20は、所謂FOUP(Front Opening Universal Pod)などの基板カセットC内のウエハWを搬入出するためのカセットステーションS1を有する。カセットステーションS1は、複数のウエハカセットCを載置可能な載置台21と、この載置台21に載置される複数のウエハカセットCに対応する複数の開閉部22と、ウエハカセット開閉部22を通してウエハカセットCから又はウエハカセットCへウエハを受け渡す搬送機構23(図2)と、を有する。なお、ウエハカセットCは、複数(たとえば13枚)のウエハを収納することができる。
【0015】
また、塗布現像装置20は、カセットステーションS1の隣に、筐体24で囲まれた処理部S2を有する。図2に示すとおり、処理部S2においては、棚ユニットU1、主搬送部25A、棚ユニットU2、主搬送部25B、及び棚ユニットU3がこの順にX方向に沿って配置されている。
【0016】
棚ユニットU1、U2、U3の各々は、液処理ユニットU4、U5(後述)にて行われる処理に対する前処理及び後処理を行うための多段(例えば10段)の加熱ユニットかつ/又は冷却ユニットを有している。
【0017】
また、主搬送部25A、25Bは、棚ユニットU1、U2、U3や、塗布・現像ユニットを含む種々の処理ユニットの間でウエハWを搬送する。棚ユニットU1、U2、U3及び主搬送部25A、25Bの各々には図示しない開口部が形成され、開口部を通して、ウエハWを棚ユニットU1から棚ユニットU3まで搬送することができる。
【0018】
搬送部25Aは、棚ユニットU1、液処理ユニットU4及び棚ユニットU2に囲まれるように配置されている。同様に、搬送部25Bは、棚ユニットU2、液処理ユニットU5及び棚ユニットU3に囲まれるように配置されている。
【0019】
液処理ユニットU4、U5は、図1に示すように、レジスト液や現像液などを収納する収納部29と、収納部29の上に配置され、塗布ユニットCOT、現像ユニットDEV及び反射防止膜形成ユニットBARC等を含む複数段(例えば5段)のユニットと、を有する。なお、液処理ユニットU4は3段の塗布ユニットCOTと2段の反射防止膜形成ユニットBARCとを有し、液処理ユニットU5は5段の現像ユニットDEVを有しているが、塗布ユニットCOT、現像ユニットDEV及び反射防止膜形成ユニットBARCの組み合わせは、図示の例に限られず、適宜組み合わされて良い。また、液処理ユニットU4(U5)の隣には、液処理ユニットで使用される液の温度調節装置や、温湿度調節に用いられるダクト等を含む温湿度調整ユニット27(28)が設けられている。
【0020】
処理部S2の隣に図1および2のX軸の正方向に沿って、インターフェイス部S3が設けられ、処理部S2がカセットステーションS1とインターフェイス部S3とで挟まれている。インターフェイス部S3は、第1の搬送室31と第2の搬送室32とを有する。第2の搬送室32の一側面が第1の搬送室31に接続される一方、第2の搬送室32の他側面は、露光装置を含む露光部S4に接続されている。インターフェイス部S3の内部には、処理部S2と露光部S4との間でウエハWの受け渡しを行うための2つの受け渡し部33、34と、棚ユニットU6と、バッファカセットCOとが設けられている。
【0021】
この塗布現像装置20において、ウエハは例えば以下のとおり処理される。先ず、ウエハWの収納された基板カセットCが載置台21に載置される。次に、基板カセットCの蓋体が外されるとともに、この基板カセットCに対応する開閉部22が開かれ、搬送機構23によって基板カセットCからウエハWが取り出される。そして、ウエハWは、棚ユニットU1の一段をなす受け渡しユニット(図示せず)を介して主搬送部25Aへと引き渡される。次いで、ウエハWは主搬送部25Aにより棚ユニットU1〜U3内のいずれかの棚へ搬送され、前処理として例えば疎水化処理や冷却処理などが行われ、更に塗布ユニットCOTへ搬送されて、レジスト膜が回転塗布される。そして、ウエハWは棚ユニットU1〜U3のいずれかの棚である加熱ユニットで加熱され、冷却された後、棚ユニットU3の受け渡しユニットを経由して、インターフェイス部S3へと搬入される。このインターフェイス部S3においてウエハWは例えば受け渡し部33から棚ユニットU6と受け渡し手段34とを介して露光部S4へ搬送され、露光が行われる。露光後、ウエハWは、棚ユニットU3から露光部S4までの搬送経路と逆の経路を通って棚ユニットU3に戻され、棚ユニットU3において加熱され冷却される。この後、主搬送部25Bにより、現像ユニットDEVへ搬送され、現像ユニットDEVにてウエハW上のレジスト膜が現像されてレジストマスクが形成される。その後、ウエハWは載置台21上の元の基板カセットCへと戻される。
【0022】
次に、塗布現像装置20の塗布ユニットCOTについて図3から図5を参照しながら説明する。
【0023】
図3を参照すると、塗布ユニットCOTは、例えば直方体の筐体10を有しており、その内部に液処理が行われる処理空間10aが画成されている。塗布ユニットCOTは、筐体10内に処理対象であるウエハWを保持するスピンチャック11と、スピンチャック11に保持されるウエハWの表面にレジスト液を滴下する滴下ノズル15と、ウエハWの裏面に回り込んだレジスト等を除去するためのバックリンスノズル14と、ウエハWの周縁部に塗布されたレジスト液を除去するためのリンスノズル17(図4、図5)と、ウエハWの表面から飛散したレジスト液やレジスト液のミスト等を受けるためのカップ体2とを備えている。
【0024】
筐体10には、処理空間10aへのウエハWの搬入出のため、ウエハW及び主搬送部25Aが通過することができる搬入出口10bが設けられている。
【0025】
スピンチャック11は、ウエハWの裏面中央部を吸引して略水平に保持する。また、スピンチャック11は、軸部12を介して駆動機構(スピンチャックモータ)13に接続されており、このスピンチャックモータ13によって、保持したウエハWを回転することができる。さらに、スピンチャック11は上下方向(図3及び図4のZ方向)に移動することができる。
【0026】
滴下ノズル15は図示しない供給ユニットから送出されたレジスト液をスピンチャック11に保持されたウエハW表面に滴下する。滴下ノズル15は、基台16aに支持されており、この基台16aは上下方向に移動することができる。また、基台16aは、基台16aの基部に設けられたガイドレール16bにより左右方向(図3及び図4のX方向)に移動することができる。これらの構成により、滴下ノズル15は、例えばホームポジション(図4に示すガイドレール16bの左端の位置)から移動してスピンチャック11に保持されたウエハWの表面の例えば中央部と対向し、その表面にレジスト液を滴下することができる。
【0027】
リンスノズル17は、ウエハWに塗布されたレジスト膜の周縁部の剥がれを防止するため、レジスト膜を除去するリンス液をウエハW周縁部に供給する。リンスノズル17は、図5の側面図に示すように略Γ状の形状を有しており、駆動部18に取り付けられている。また、リンスノズル17は、内部に導管を有し、駆動部18の内部に同様に設けられた導管を介して接続されるリンス液供給部からリンス液を吐出することができる。リンス液としては、処理液に含まれる溶剤、例えばシンナーなどを使用することができる。また、リンスノズル17は、定常時は、図4に二点鎖線で示すホームポジションにあり、駆動部18により駆動部18を中心として回動することができる。このような構成により、エッジリンス中は、リンスノズル17の先端部がウエハWの周縁部と対向する位置まで移動し、ウエハWの周縁部に向けてリンス液を吐出することができる。
【0028】
さらに、塗布ユニットCOTは各機器の動作を統括制御する役割を果たす制御部6を備えており、この制御部6にはスピンチャック11のスピンチャックモータ13や基台16a等が接続されている。制御部6は、構成要素としてCPUを含む例えばコンピュータであって良く、また、制御部6には記憶装置6aや入出力装置6bが接続されている。また、制御部6は、後述する洗浄方法を塗布ユニットCOTに実行させるためのプログラムに基づいて、塗布ユニットCOTの各機器を動作させ、その洗浄方法を実施する。このプログラムは、ハードディスク、光ディスク、磁気ディスク、半導体メモリデバイスなどのコンピュータ可読記録媒体6cに格納されて良く、所定の読み取り装置により記憶装置6aに記憶され、必要に応じて制御部6に読み出される。なお、制御部6は、塗布ユニットCOTを塗布ユニットとして備える塗布現像装置20の全体の動作を統括制御する機能も備えている。
【0029】
次に、カップ体2について図3から図5を参照しながら説明する。カップ体2は、ウエハW上に滴下され、ウエハWの回転により飛散するレジスト液やそのミストを受けて、塗布ユニットCOT外に排出する。
【0030】
カップ体2は、図3に示すようにウエハWから飛散したレジスト液等のドレインを提供するベース部2aと、ベース部2aの外周部に載置されてウエハWから飛散するレジスト液等を受けるアウターカップ2bと、ベース部2aの内周部に載置されてウエハWやアウターカップ2bから流れ落ちるレジスト液等をベース部2aのドレインへ導くインナーカップ2cとを有する。
【0031】
ベース部2aの底部には、ドレインポート45と、排気ポート46とが設けられている。ドレインポート45は、レジスト液等を排出するドレイン管52と接続し、アウターカップ2bから流れ落ちるレジスト液等やインナーカップ2cによって案内されるレジスト液等を排出する。排気ポート46は、ベース部2aの底部の上下に延びて、下端において排気部(図示せず)に繋がる排気管51に接続し、レジスト液から蒸発する溶媒やレジスト液のミストを排気する。図3中に矢印で示すように、レジスト液からの溶媒やレジストのミストは、アウターカップ2bとインナーカップ2cとの間の開口部41aから、ベース部2aの外壁24aとインナーカップ2cの流路板43との間の空間と、この流路板43と排気ポート45の上端との間の空間とを通って排気ポート46に至る気流路を通して排気される。なお、筐体10の天井部には、カップ体2と対向するフィルタユニット19が取り付けられており、フィルタユニット19から例えば清浄空気を所定流量で供給されている。フィルタユニット19から送出される清浄空気は、図示しない排気口から排気されて処理空間10aにおいてダウンフローが形成されるとともに、上記の気流路を通って排気される。したがって、カップ体2内部もまた清浄環境が実現されている。
【0032】
また、ベース部2aには、スピンチャック11により保持されるウエハWの下方に位置するようにバックリンスノズル14が設けられている。バックリンスノズル14は、ベース部2aを貫通する導管とソレノイドバルブ14aとを介して溶剤タンク14bと接続されている。この構成によれば、ソレノイドバルブ14aを開くとともに溶剤タンク14bを加圧することにより、バックリンスノズル14からウエハWの裏面に向けて溶剤を供給することができる。なお、図示の例では、スピンチャック11の軸部12を中心として2つのバックリンスノズル14があるが、これに限らず、3つ以上のバックリンスノズル14を設けても良い。また、この溶剤としては、レジストに含まれる溶剤、例えばシンナーを使用することができる。
【0033】
次に、図6から図8を参照しながら、本発明の一実施形態による洗浄用治具を説明する。図6(a)は、本実施形態による洗浄用治具を示す斜視図であり、図6(b)は図6(a)のI−I線に沿った断面図の約半分を拡大して示す図である。図6(a)を参照すると、洗浄用治具50は全体として円盤状の形状を有している。洗浄用治具50は、例えば円状の円板部材である中心部50aと、環状の形状を有し、中心部50aに対して着脱可能に接続された環状部50bとを有している。中心部50aは塗布ユニットCOTのスピンチャック11に保持され得る大きさ、すなわちスピンチャック11の直径と同じか直径よりも僅かに大きい直径を有している。このため、洗浄用治具50が主搬送部25A(図2)により筐体10へ搬入されて昇降ピン(図示せず)によりスピンチャック11へ受け渡されたとき、洗浄用治具50は、スピンチャック11により中心部50aの裏面が吸着されて保持される。また、中心部50aは、スピンチャック11による真空吸着によって変形しないように強固な材料、例えばガラスや樹脂、具体的にはポリオキシメチレン(POM)で作製されると好ましい。さらに、中心部50aは、更に強度を高めて吸着による変形や回転時の歪みなどをより低減するため、図6(b)に示すように環状部50bよりも厚く形成して良い。
【0034】
環状部50bは、親水性(リンス液に対し濡れ易い性質)を有する材料、又は親水性処理を施した材料で、かつ、リンス液に対して耐食性を有する材料で作製されると好ましく、例えばエポキシ樹脂で作製される。また、環状部50bは、塗布ユニットCOTで処理可能なウエハWの直径(例えば約300mm)と略同一の直径を有している。さらに、環状部50bの表面外周に沿って環状の隆起部50dが設けられている。図6(b)を参照すると、隆起部50dは、斜辺が中心部50aに向けて傾いた直角三角形状の断面を有している。図6(b)の断面図中において隆起部50の鉛直方向に起立した辺は、環状部50bの外縁に沿った外壁面を形成している。すなわち、隆起部50の外壁面は、洗浄用治具50の外周面500の一部を形成している。これにより、外周面500は、環状部50bの厚さよりも高い高さh(図6(b))を有することができる。また、外周面500の最下端は環状部50bの裏面と同じレベルに位置している。換言すると、外周面500は環状部50bの裏面よりも低い位置にまで延びていない。外周面500の高さhについては後述する。
【0035】
なお、環状部50bは、上述のとおり、親水性を有する材料、又は親水性処理が施された材料で形成されると好ましいが、親水性処理は、外周面500のみに対して施しても良い。また、外周面500と環状部50bの裏面とに対して親水性処理を施しても良い。
【0036】
また、環状部50bと中心部50aが互いに着脱可能に接続されるのは、中心部50aに傷などが付いた場合であっても、中心部50aを交換するだけで、洗浄用治具50の全体を廃棄することなく使用し続けることができるようにするためである。図示の例では、環状部50bが、内周部において、中心部50aに対して着脱自在にネジ止めされている。ただし、他の実施形態においては、他の方法により互いに着脱可能に接続しても良い。さらに、中心部50aは、円状に限られず、スピンチャック11により保持され得る限りにおいて、どのような平面形状を有していても良い。この場合、環状部50bは、環状に限られず、中心部50aの形状に応じた形状を有して良い。
【0037】
洗浄用治具50は、図1及び図2を参照しながら説明した塗布現像装置2の棚ユニットU1,U2,U3内の所定の位置、例えば冷却ユニット上のスペースに保管することができ、所定の保管場所から、主搬送部25A(25B)を利用して塗布ユニットCOTへ搬送される。
【0038】
以下、図7及び図8を参照しながら、本実施形態による洗浄用治具50を利用した塗布ユニットCOTのカップ本体2の洗浄方法と、洗浄用治具50が発揮する作用について説明する。図7は当該洗浄方法を示すフローチャートである。図8は、カップ体2の洗浄中における、塗布ユニットCOTと、塗布ユニットCOTのスピンチャック11に保持された洗浄用治具50との断面を示す模式図である。なお、この洗浄方法は、所定の枚数のウエハへレジストを塗布した後に定期的に行って良く、または、塗布現像装置20で処理すべきウエハ(ロット)の入来間隔が長い場合に、それらのロット間に行ってもよい。
【0039】
まず、上記のように構成される洗浄用治具50を主搬送部25Aにより所定の保管場所から塗布ユニットCOTの筐体10内へ搬入し、図示しない昇降ピンにより主搬送部25Aからスピンチャック11上へ洗浄用治具50を受け渡す。次に、吸引により、スピンチャック11により洗浄用治具50を保持する(ステップS1)。次いで、洗浄用治具50を第1の回転速度で回転させる(ステップS2)。第1の回転速度は、例えば約70rpmから約300rpmであって良く、より好ましくは約100rpmから約200rpmであっても良い。
【0040】
次に、バックリンスノズル14から溶剤を洗浄用治具50(環状部50b)の裏面に向けて供給する(ステップS3)。溶剤の供給量は、例えば約50cm3/分から約200cm3/分であって良く、約80cm3/分から約120cm3/分であっても良い。バックリンスノズル14から洗浄用治具50の裏面に到達した溶剤は、図8に示すように、洗浄用治具50の回転により生じる遠心力によって洗浄用治具50の外周に向かって裏面を流れ、裏面外周縁50eに到達する。裏面外周縁50eに到達した溶剤は、その溶剤が有する粘性や表面張力により、外周面500へ回り込む。そして、外周面500に回り込んだ溶剤は、洗浄用治具50の回転により、カップ体2のアウターカップ2bの内面に向けて飛散する。ここで、溶剤は外周面500に沿って上向きに回り込むため、水平方向よりも上向きの仰角で飛散し、アウターカップ2bの内面の高い部分に到達することができる。その部分は、スピンチャック11に保持されるウエハの高さよりも高くすることができる。したがって、溶剤は、アウターカップ2bの内面を、レジストが付着した部分よりも高い位置からベース部2aの底部まで流れて、アウターカップ2bの内面に付着したレジスト液を洗い流すことができる。
【0041】
また、図8に示すように、溶剤の飛散中には、バックリンスノズル14から供給されて外周縁50eに到達して外周面500へ回り込む溶剤の入来量と、外周面500から飛散する溶剤の出行量とがバランスして決まる所定の量の溶剤溜まりRが外周面500に形成される。そして、その量は、バックリンスノズル14からの溶剤の供給量、溶剤の粘性等、洗浄用治具50の回転速度だけでなく、外周面500の高さhによっても変化する。適量の溶剤溜まりRを形成することにより、アウターカップ2bに対して溶剤を確実に到達させることができるため、外周面500の高さhを調整することは重要である。例えば、洗浄用治具50の外周部が縁に向けて薄くなるように(エッジ状に)形成される極端な場合(外周面500の高さhがほぼゼロの場合)には、溶剤溜まりが形成されなくなってしまう。一方、外周面500を高くするとしても、溶剤が到達できる高さの限度を超えるほど高くする必要はない。また、外周面500を過度に高くすると、洗浄用治具50を安定して回転させることができない事態もなり得る。したがって、外周面500の高さhは予備的な実験を通して決定することが好ましい。本発明の発明者らが行った検討によれば、外周面500の高さhは、約2mmから約7mmが好ましく、約3mmから約5mmであれば更に好ましい。
【0042】
所定の時間、アウターカップ2bへ溶剤を飛散させた後、回転速度を第2の回転速度まで低下させる(ステップS4)。第2の回転速度は、例えば約30rpmから約70rpmであって良い。これにより、外周面500から飛散する溶剤は、インナーカップ2cの上面に降り注ぐこととなる。したがって、インナーカップ2cの上面からベース部2aの底部まで溶剤により洗浄される。
【0043】
所定の時間、インナーカップ2cへ溶剤を飛散させた後、バックリンスノズル14から溶剤を供給するのを停止するとともに(ステップS5)、洗浄用治具50の回転速度を上げて洗浄用治具50を乾燥させる(ステップS6)。この後、洗浄用治具50の回転を停止し、昇降ピン(図示せず)により洗浄用治具50を持ち上げ、主搬送部25Aにより洗浄用治具50を塗布ユニットCOTから搬出し(ステップS7)、所定の保管場所へ搬送する。
【0044】
次に、図9及び図10を参照しながら、上記の洗浄方法の実施例と比較例を説明する。実施例と比較例において使用した洗浄用治具の構成を表1に示す。比較例における洗浄用治具は、表1からも分かるように、隆起部50dが無く、環状部50bが外縁まで一定の厚さを有する点で実施例の洗浄用治具50と相違し、他の点で同一である。以下、比較例の洗浄用治具を説明の便宜上、洗浄用治具60と記す。
【0045】
【表1】
洗浄用治具50及び60を使用し、上記の洗浄方法に従って同一のカップ体2を洗浄した。いずれの場合も、カップ体2において1500枚のウエハにレジストを塗布した後に洗浄を行った。また、洗浄用治具50,60の回転速度などの洗浄条件は、表2及び表3の塗布ユニットCOTのレシピに示すとおりである。表2に示す実施例における洗浄条件と比較例における洗浄条件とは、いずれも、洗浄用治具50,60を用いてカップ体2を洗浄したときにカップ体2を十分に洗浄できるように調整することにより定めた。洗浄用治具50,60を用いた洗浄の前後におけるカップ体2の典型例を図9(a)及び(b)に示す。図9(a)は洗浄前のカップ体2の内面を示し、図9(b)は洗浄後のカップ体2を示している。これらの図において、白い部分はカップ体2が見えている部分を示し、黒い部分がカップ体2に付着したレジストを示している。図9(a)と図9(b)を比較すると、実施例および比較例のいずれにおいても、洗浄後にはカップ体2のほぼ全域が露出しており、洗浄前にカップ体2の内面に付着していたレジストが洗浄により除去されていることが分かる。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
表2を参照すると、実施例においては、アウターカップ2bを洗浄する場合であっても洗浄用治具50の回転速度は150rpmであり、また、この回転速度における洗浄時間は僅か50秒である。
【0048】
一方、比較例においては、アウターカップ2bの洗浄の際には洗浄用治具60の回転速度は2000rpmであり、洗浄時間は6分も必要である。しかも、2000rpmまで回転速度を上げるため、ランプアップとランプダウンが必要となり、更に時間がかかる。
【0049】
さらに、比較例においては、表3の最下欄に示すように600秒間、洗浄用治具60を回転させずに維持している。これは、スピンドルチャック11の温度を常温(または回転塗布装置20が設置される環境の温度)に戻すために設けられている。すなわち、2000rpmといった高い回転速度で洗浄用治具60を回転させると、スピンドルモータ13が高温となり、その影響によりスピンドルチャック11の温度が上昇してしまう。この直後にウエハWへレジストを塗布すると、レジスト膜の均一性が悪化するため、これを防止すべく、スピンドルチャック11の温度を常温に戻す必要がある。
【0050】
比較例では600秒と長いのに対し、実施例におけるスピンドルチャック11の冷却期間は380秒と短い。これは、アウターカップ2bの洗浄の際の回転速度が150rpmと低いために、スピンドルモータ13はそれ程高温にならないためである。この観点からも、実施例においては洗浄に要する時間が短縮される。
【0051】
なお、インナーカップ2cの洗浄においても、実施例においては、比較例に比べて低い回転速度で短い時間で済む点にも注目すべきである。
【0052】
以上の結果から、本発明の実施形態による洗浄用治具50によれば、比較的低い回転速度で短い時間でカップ体2を洗浄することができることが明らかとなった。具体的には、比較例においてはカップ体2を洗浄するのに約18分を要するのに対し、実施例においては約8分でよい。
【0053】
以上説明したように、本発明の一実施形態による洗浄用治具50によれば、バックリンスノズル14から洗浄用治具50の裏面に供給された溶剤は、洗浄用治具50の回転によって洗浄用治具50の外周面500に沿って上向きに回り込み、外周面500からカップ体2に向けて飛散するため、洗浄用治具50の回転速度が比較的低い場合であっても、カップ体2のアウターカップ2bの高い部分に到達することができ、したがって、アウターカップ2bをほぼ全体に亘って洗浄することができる。また、回転速度を更に低く調整することにより、インナーカップ2cもまた洗浄することができる。
【0054】
さらに、洗浄用治具50は、互いにネジ止めされる中心部50aと環状部50bとから構成され、中心部50aの裏面がスピンチャック11により保持される。このため、中心部50aを熱容量の小さい、熱を放散し易い材料で形成することにより、スピンチャックモータ13からスピンチャック11へ伝わる熱を素早く放散させて、スピンチャック11の温度の上昇を防止することができる。したがって、カップ体2の洗浄中に、喩え回転モータの温度が上昇した場合であっても、スピンチャック11の温度を室温程度まで低下させる時間を短くすることができる。この結果、塗布現像装置20のダウンタイムが低減され、スループットを向上することができる。
【0055】
以下、上記の洗浄用治具50の変形例について説明する。
【0056】
<変形例1>
図10(a)は本発明の一の実施形態の変形例1による洗浄用治具を示す断面図であり、図10(b)は図10(a)におけるI−I線に沿った断面図である。図示のとおり、洗浄用治具51は、外周面510に円周方向に沿って形成された溝部511を有している。溝部511により、外周面510に保持される溶剤溜まりRの量を増加することができ、外周面510からカップ体2へ飛散する溶剤の量を増加することが可能となる。
【0057】
<変形例2>
図11(a)は本発明の一の実施形態の変形例2による洗浄用治具を示す斜視図であり、図11(b)は図11(a)におけるI−I線に沿った断面図である。図11(a)に示すように、洗浄用治具52は、環状部52bにおける隆起部52eの内周に沿って、所定の角度間隔で複数の貫通孔521が設けられている。貫通孔521は、図11(b)に示すように、バックリンスノズル14から環状部52bの裏面に沿って流れる溶剤が、環状部52bの表面に回り込むのを許容する。表面に回り込んだ溶剤は、隆起部52eを乗り越えて外周面520へ到達する。すなわち、隆起部52eの上から溶剤溜まりRへ溶剤を供給することができ、したがって、外周面520からカップ体2へ飛散する溶剤の量を増加することが可能となる。
【0058】
<変形例3>
図12(a)は本発明の一の実施形態の変形例2による洗浄用治具を示す斜視図であり、図12(b)は図12(a)におけるI−I線に沿った断面図である。図示のとおり、洗浄用治具53は、環状部53bの裏面から隆起部53eを貫通し、外周面530に開口する複数の貫通孔531を有している。複数の貫通孔531は、変形例2による洗浄用治具52の貫通孔521と同様に、所定の角度間隔で設けられている。この貫通孔531を通して、バックリンスノズル14からの溶剤を溶剤溜まりRへ供給することができるため、外周面530からカップ体2へ飛散する溶剤の量を増加することが可能となる。
【0059】
以上、幾つかの実施形態及び変形例を参照しながら本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲内において種々に変更が可能である。
【0060】
例えば、上述した実施形態において、洗浄用治具50,51,52,53の表面外縁に隆起部50d,51d,52d,53dが設けられて外周面500が形成されたが、洗浄用治具50の全体(又は環状部50b)を厚くすることにより外周面500を形成しても良い。ただし、比較的薄い環状部50b等に隆起部50d等を設ける場合は、洗浄用治具50等を軽量化することができ、モータへの負荷を低減できる点で好ましい。
【0061】
また、洗浄用治具50等を中心部50a等と環状部50b等とから形成したが、一の円盤で形成しても良いことは言うまでもない。
【0062】
隆起部50d等の断面形状(図6(b))は、直角三角形に限らず、矩形であって良く、台形であっても良い。また、外周面500が溶剤を外周面500へ回り込ませることができるように形成される限りにおいて、外周面500以外の面が湾曲していても構わない。
【0063】
さらに、洗浄用治具50等の外周面500等は図示の例では鉛直方向に延びているが、溶剤を外周面500等へ回り込ませることができ、溶剤溜まりRが形成される限りにおいて、傾斜していても構わない。
【0064】
洗浄用治具51における溝部511は、図10ではV溝状に形成されているが、これに限られず、凹溝であって良い。また、溝部511の代わりに、外周面510の円周方向に沿って複数の凹部を設けても良い。これによっても、外周面510の溶液溜まりの量を増加することができる。
【0065】
変形例2による洗浄用治具52の貫通孔521は、図11(b)においては、環状部52bの裏面(表面)に対して垂直な方向に延びるように図示されているが、傾斜していても良い。特に、貫通孔521は、裏面からの溶剤を隆起部52dへ向けて案内することができるように、裏面から表面へ向かうに従って外向きに傾斜していると好ましい。
【0066】
さらに、変形例1から3のいずれか2つ又は3つを組み合わせても良い。すなわち、例えば、変形例2による洗浄用治具52の貫通孔521を変形例1による洗浄用治具51に形成しても良い。
【0067】
また、カップ体2は、アウターカップ2bとインナーカップ2cとの間にミドルカップを有していて良い。洗浄用治具50の回転速度を調整することにより、ミドルカップに付着したレジストを流し落とすことができることは言うまでもない。なお、ミドルカップは、レジスト液から蒸発する溶媒やレジスト液のミストを上述の気流路を通して排気する際に、気流の方向を調整する役割を果たすものであって良い。
【0068】
図7のフローチャートの各ステップは、1又は2以上の別個のステップもしくは段階または双方を包含して良い。したがって、ステップS1からS7の7つのステップを記載しているからといって、上記の洗浄方法が7つのステップのみに限定されると理解してはならない。
【0069】
また、ステップS2における第1の回転速度を、ステップS4における第2の回転速度より遅くして、アウターカップ2bの洗浄より前にインナーカップ2cを洗浄しても良い。さらに、バックリンスノズル14から洗浄用治具50等の裏面に溶剤を供給するステップS3を洗浄用治具50等の回転を開始するステップS2と同時またはステップ2より前に行っても良い。
【0070】
また、回転速度は、使用する溶剤の粘性等や、カップ体2の形状に合わせて調整すべきことは言うまでもない。
【0071】
上記の実施形態および変形例におけるウエハWは半導体ウエハに限らず、FPD基板であって良いことは勿論である。また、本発明による洗浄用治具および洗浄方法は、基板の表面に膜を形成する塗布装置(塗布ユニット)に限らず、現像処理装置に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
2 カップ体
2b アウターカップ
2c インナーカップ
11 スピンチャック
14 バックリンスノズル
10 塗布ユニット
20 塗布現像装置
50,51,52,53 洗浄用治具
500,510,520,530 外周面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に設けられた基板保持具により回転可能に保持された基板の上に処理液を滴下し、該基板の回転により該基板上に前記処理液の膜を塗布する回転塗布装置において前記容器の洗浄に使用することができる洗浄用治具であって、
前記基板保持具より大きい寸法に形成され、当該基板保持具に保持される中心部材と、
前記中心部材に着脱可能に接続され、前記基板と略同一の直径を有する環状部材と、
を備え、
前記環状部材の外周部は、前記基板保持具により回転されながら前記洗浄液が裏面に対して供給された際に、当該洗浄液が前記裏面より上向きに回り込むように形成された外周面を備えることを特徴とする洗浄用治具。
【請求項2】
前記中心部材が、前記環状部材よりも厚く形成されることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄用治具。
【請求項3】
前記中心部材が、樹脂により形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗浄用治具。
【請求項4】
前記中心部材が、ガラスにより形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗浄用治具。
【請求項5】
前記環状部材が、親水性を有する材料により形成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の洗浄用治具。
【請求項6】
前記外周面の高さが2mmから7mmまでの範囲にあることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の洗浄用治具。
【請求項7】
容器内に設けられた基板保持具により回転可能に保持された基板の上に処理液を滴下し、該基板の回転により該基板上に前記処理液の膜を塗布する回転塗布装置を請求項1から6のいずれか一項に記載の洗浄用治具を用いて洗浄する洗浄方法であって、
前記洗浄用治具を所定の保管場所から取り出して前記基板保持具に載置するステップと、
前記基板保持具より前記洗浄用治具を回転するステップと、
前記回転塗布装置に備わる溶剤供給部から前記洗浄用治具の裏面へ溶剤を供給するステップと、
を有することを特徴とする洗浄方法。
【請求項8】
前記所定の保管場所は冷却ユニットであることを特徴とする、請求項7に記載の洗浄方法。
【請求項1】
容器内に設けられた基板保持具により回転可能に保持された基板の上に処理液を滴下し、該基板の回転により該基板上に前記処理液の膜を塗布する回転塗布装置において前記容器の洗浄に使用することができる洗浄用治具であって、
前記基板保持具より大きい寸法に形成され、当該基板保持具に保持される中心部材と、
前記中心部材に着脱可能に接続され、前記基板と略同一の直径を有する環状部材と、
を備え、
前記環状部材の外周部は、前記基板保持具により回転されながら前記洗浄液が裏面に対して供給された際に、当該洗浄液が前記裏面より上向きに回り込むように形成された外周面を備えることを特徴とする洗浄用治具。
【請求項2】
前記中心部材が、前記環状部材よりも厚く形成されることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄用治具。
【請求項3】
前記中心部材が、樹脂により形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗浄用治具。
【請求項4】
前記中心部材が、ガラスにより形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗浄用治具。
【請求項5】
前記環状部材が、親水性を有する材料により形成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の洗浄用治具。
【請求項6】
前記外周面の高さが2mmから7mmまでの範囲にあることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の洗浄用治具。
【請求項7】
容器内に設けられた基板保持具により回転可能に保持された基板の上に処理液を滴下し、該基板の回転により該基板上に前記処理液の膜を塗布する回転塗布装置を請求項1から6のいずれか一項に記載の洗浄用治具を用いて洗浄する洗浄方法であって、
前記洗浄用治具を所定の保管場所から取り出して前記基板保持具に載置するステップと、
前記基板保持具より前記洗浄用治具を回転するステップと、
前記回転塗布装置に備わる溶剤供給部から前記洗浄用治具の裏面へ溶剤を供給するステップと、
を有することを特徴とする洗浄方法。
【請求項8】
前記所定の保管場所は冷却ユニットであることを特徴とする、請求項7に記載の洗浄方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図9】
【公開番号】特開2012−9878(P2012−9878A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172133(P2011−172133)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【分割の表示】特願2008−177377(P2008−177377)の分割
【原出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【分割の表示】特願2008−177377(P2008−177377)の分割
【原出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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