説明

回転式加熱処理装置

【課題】加熱時に付着性の物質を含むガスを生じる物質を処理する場合であっても、低コストで高度なシール性能を発現する回転式加熱処理装置を提供すること
【解決手段】内筒10と、内筒10の周壁回りに突設されたフランジ20と、内筒10の端部に接続された入口側ケーシング12と、シール板31と、シール板31とフランジ20とによって挟持されて、入口側ケーシング12と内筒10との接続部分をシールするパッキン40と、パッキン40よりも入口側ケーシング12と内筒10との接続部分寄りに配置されており、シール板31とフランジ20とによって挟持され、入口側ケーシング12と内筒10との接続部分をシールするメカニカルシールと、シール板31、フランジ20、パッキン40、及びメカニカルシールによって囲まれる空間70に不活性ガスを供給するガス供給手段とを、備える回転式加熱処理装置1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を加熱処理する回転式加熱処理装置に関するものであり、より詳細には、回転筒とケーシングとの間に設置するシール構造を改良した回転式加熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
横型回転式乾燥機やロータリーキルン等の回転式加熱処理装置のシール構造は、下記に示す特許文献群のように、従来よりグランドパッキン、Vパッキン、メカニカルシールなどを用いて構成されたものが一般的である。特に加熱時に可燃性ガス等が発生するような被処理物を処理する場合には、運転時の安全性を確保するために回転式加熱処理装置内からのガスの漏洩、または、回転式加熱処理装置内への外気流入を防止しなければならず、回転式加熱処理装置のシール構造には、高度なシール性が要求される。そこで、高度なシール性を確保する方法としては、下記特許文献1に示されるように、シールを二重にする方法が広く採用されている。
【0003】
また、シール性を確保する方法としては、上記方法以外に、下記特許文献1に示すような、不活性ガスによってガスパージを行う方法も従来より提案されている。このような、不活性ガスによってガスパージを行う方法においては、不活性ガスは、内部ガスの漏洩を防ぐ役目だけでなく、外気(酸素)を遮断する役目も負っている。
【特許文献1】特開2008−256287号公報
【特許文献2】特開2003−21461号公報
【特許文献3】特開2001−304762号公報
【特許文献4】特開平8−145569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加熱処理を行う際に、付着性の物質を含む可燃性ガスを生じる物質を回転式加熱処理装置で処理する場合、次のような問題があった。シールがパッキン或いはVパッキンであると、付着性物質(たとえば、油分など)が、摺動面、パッキン、或いはVパッキンに付着して、シール性能の低下が起こる。メカニカルシールは、付着性物質の影響を受けにくいものの、メカニカルシールを二重に配置するには、コストが掛かりすぎる。また、メカニカルシールは、寸法が大きくなると、製造上の観点から分割可能な構造にしなければならず、パッキンやVパッキンに比してシール性能が劣る。
【0005】
本発明は上記の課題を解決すべくして提案されたものであり、本発明の主たる課題は、加熱時に付着性の物質を含むガスを生じる物質を処理する場合であっても、低コストで高度なシール性能を発現する回転式加熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、上記課題を解決するための手段とそれらの作用効果を示す。
〔請求項1に係る発明〕
本請求項に係る発明は、
軸心回りに回転しつつ内部で被処理物を加熱処理する回転筒と、
被処理物を内部に収容可能な空間を有しており、回転筒と嵌合されているケーシングと、
ケーシングと回転筒との嵌合部分を被覆しつつケーシングから延出する被覆部材と、
被覆部材と回転筒の一部分との間に設置されて、ケーシングと回転筒との嵌合部分をシールするパッキンと、
被覆部材と回転筒の一部分との間におけるパッキンよりもケーシングと回転筒との嵌合部分寄りの部分に設置されており、相互に接触することによってケーシングと回転筒との嵌合部分をシールする少なくとも一対のシール部材を有するメカニカルシールと、
被覆部材、回転筒の一部分、パッキン、及びメカニカルシールによって囲まれる空間に不活性ガスを供給するガス供給手段とを、備えることを特徴とする回転式加熱処理装置。である。
【0007】
〔作用効果〕
本請求項に係る発明によれば、メカニカルシールとパッキンとを併用した二重のシール構造とすることにより、被処理物を加熱処理することによって生じる気体を確実にシールすることができる。なお、このような構成のものは、メカニカルシールを二重にしたものと比較して、低コストで提供することが可能である。
【0008】
また、メカニカルシールがパッキンよりもケーシングと回転筒との嵌合部分寄りに配置されているため、被処理物を加熱処理することによって生じる気体に付着性の物質が含まれていたとしても、付着性物質はメカニカルシールに阻まれ、パッキンまで到達せず、付着性物質によるパッキンのシール性能の低下が起こらない。つまり、本請求項に係る発明によれば、シール性能に優れるパッキンと、付着性物質の影響を受けにくいメカニカルシールとの両方の利点を享受することが可能となる。
【0009】
さらに、本請求項に係る発明は、被覆部材、回転筒の一部分、パッキン、及びメカニカルシールによって囲まれる空間に不活性ガスを供給するガス供給手段を備えており、不活性ガスによりガスパージを行うため、外気が回転式加熱処理装置内に流入することなく、より高度なシール性能を得ることができる。
【0010】
〔請求項2に係る発明〕
本請求項に係る発明は、パッキンと回転筒の一部分及び被覆部材との接触面と、少なくとも一対のシール部材の接触面とは、同一面上に存在しない、請求項1に記載の回転式加熱処理装置である。
【0011】
〔作用効果〕
本請求項に係る発明によれば、メカニカルシールの摩耗状態に関わらず、パッキンのシール性能を確保することができる。パッキンとメカニカルシールを直線上に設置すると、メカニカルシールを構成する一対のシール部材の摩耗により回転筒の一部と被覆部材の面間距離が短くなり、パッキンは押しつぶされ、シール性が悪くなってしまう。しかしながら、本発明の構成とすることで、パッキンは、面間距離の変化に関わらず、一定の圧力でシールする事となり、シール性を保つことが可能となるのである。
【0012】
〔請求項3に係る発明〕
本請求項に係る発明は、被処理物の加熱処理によって回転筒内部で生じた付着性の物質を絡め取り及び/又は擦り落とし可能なブラシが、被覆部材、回転筒の一部分、ケーシングと回転筒との嵌合部分、及びメカニカルシールによって囲まれる空間に設置されている、請求項1或いは請求項2に記載の回転式加熱処理装置である。
【0013】
〔作用効果〕
本請求項に係る発明によれば、被処理物の加熱処理によって回転筒内部で生じた付着性の物質を絡め取り及び/又は擦り落とし可能なブラシが、被覆部材、回転筒の一部分、ケーシングと回転筒との嵌合部分、及びメカニカルシールによって囲まれる空間に設置されていることによって、メカニカルシールに付着する付着性の物質の量を低減することができ、メカニカルシールのシール性能の低下を防止することができる。
【0014】
〔請求項4に係る発明〕
本請求項に係る発明は、回転筒の一部分が、回転筒の周壁回りに突設されたフランジとされている、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の回転式加熱処理装置である。
【0015】
〔作用効果〕
本請求項に係る発明にように、回転筒の一部分は、回転筒の周壁回りに突設されたフランジとすることも可能である。
【発明の効果】
【0016】
以上に示したように本発明によれば、加熱時に付着性の物質を含むガスを生じる物質を処理する場合であっても、低コストで高度なシール性能を発現する回転式加熱処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明に係る回転式加熱処理装置の第1実施形態を、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態に係る回転式加熱処理装置1の模式図を示している。この回転式加熱処理装置1は、回転筒である内筒10と、ケーシングである入口側ケーシング12及び出口側ケーシング13と、入口側ケーシング12及び出口側ケーシング13と内筒10との接続部分に設置された一対のシール機構14とから主に構成されている。
【0018】
図1に示すように、内筒10は両端が開口する円筒であり、両端側に固定して設置された入口側ケーシング12及び出口側ケーシング13に嵌着されるようにして設置されている。内筒10の周壁には一対のタイヤ15が環設されていると共に、これらのタイヤ15の下側には、一対のローラー16が接触するようにして設置されている。
【0019】
内筒10は、図示しないモーターなどの駆動源によって、軸方向を回転軸として回転可能となっており、内筒10が回転すると、それに伴ってタイヤ15が回転し、そのことによって、一対のローラー16が軸心方向回りに沿って回転するようになっている。
【0020】
図1に示すように、内筒10の周壁には、内筒10を外部から加熱可能な外筒11が設けられており、内筒10内部に収容された被処理物は、外筒11に供給される図示しない加熱媒体(たとえば、高温ガス、水蒸気など)よって加熱された内筒10によって加熱処理されるようになっている。
【0021】
入口側ケーシング12は、内筒10の一端と連通する被処理物の供給口(図示しない)を備えており、出口側ケーシング13は、内筒10の他端と連通する被処理物の排出口(図示しない)を備えている。被処理物は、供給口より入口側ケーシング12内に供給され、内筒10内で加熱処理されて出口側ケーシング13内へ移送され、最終的に、排出口より排出される。
【0022】
そして、図1に示すように、入口側ケーシング12及び出口側ケーシング13と内筒10との接続部分には、この接続部分をシールする一対のシール機構14が設けられている。図2に示すのは、入口側ケーシング12と内筒10との接続部分に設けられたシール機構14の一部拡大断面図である。これら一対のシール機構14は、主に、フランジ20、シール板31と伸縮継手38とから構成されている被覆部材、パッキン40、メカニカルシールである一対のシール部材45、46、及びブラシ80から構成されている。なお、シール機構14は必ずしも入口側と出口側を同一構造とする必要はなく、発生するガスの種類や、用途に応じて、入口側のみ、或いは、出口側の一方のみを上記構造とし、他方を他の公知のシール構造としてもよい。
【0023】
内筒10の一端側における周壁には、断面がL字状のフランジ20が外側に向かって突出するように環設されている。このフランジ20の一方の端縁20aは、内筒10に対して固定されており、フランジ20の他方の端縁20bは、内筒10の長手方向中央側に(フランジ20から見て入口側ケーシング12の存在する方向とは逆方向)向いている。
【0024】
内筒10の一端側周辺には、内筒10の周壁の一部とフランジ20とを囲むようにしてシール板31が環設されている。このシール板31の断面は、一対のL字の一端同士を接続したような形状とされており、シール板31の一端縁には、内筒10の軸心方向に沿って伸縮自在とされた伸縮継手38の一端が接続されている。この伸縮継手38は、シール板31と同様に、内筒10の周壁の一部を囲むようにして環設されている。この一方、伸縮継手38の他端は、入口側ケーシング12に対して接続されている。
【0025】
図2に示すように、被覆部材の構成部材であるシール板31と伸縮継手38とは、全て内筒10に対して非接触とされている。その中でもシール板31は、フランジ20に対向するようにして配置されており、シール板31とフランジ20とは、パッキン40と、一対のシール部材45、46とを介して離間する形となっている。
【0026】
フランジ20とシール板31との間には、グランドパッキン或いはVパッキンから成るパッキン40が挟持されるようにして設置されている。このパッキン40は、パッキン押え50によって、シール板31に押さえつけられるようにして固定されている。パッキン押え50は、内筒10の周壁の一部を囲むようにして環設された、断面がL字状の金具から構成されており、このパッキン押え50は、スタッドボルト51によってシール板31に向かって押さえつけられるようになっている。パッキン40が以上のように設置されていることによって、内筒10が回転すると、パッキン40とフランジ20との接触面が摺動面となる。なお、この摺動面は、内筒10の軸心方向に沿った面上に位置するようになっている。
【0027】
パッキン40としては、一般的な回転機器用パッキンを適用することができ、カーボンファイバーを編組し、PTFEディスパージョンと特殊潤滑剤で処理したタイプのもの、PTFEディスパージョンと耐熱性潤滑剤で処理したポリアミド繊維を編組したタイプのもの、芳香族ポリアミド繊維を断面角形に編組し、PTFEディスパージョンと耐熱性潤滑剤で処理したタイプのもの、PAN(ポリアクリロニトリル)系の炭化繊維を編組し、PTFEディスパージョンと特殊潤滑剤で処理したタイプのもの、グラファィトファイバーを編組し、特殊潤滑剤で処理したタイプのもの、100%PTFE繊維を編組したタイプのものなどを、内筒10で加熱処理される被処理物によって適宜選択することができる。
【0028】
この一方、フランジ20とシール板31との間には、メカニカルシールを構成する一対のシール部材45、46が挟持されるようにして設置されている。一方のシール部材45は、フランジ20における入口側ケーシング12と対向する面に固定して設置されている。これに対して、他方のシール部材46は、シール板31におけるシール部材45と対向する面に固定して設置されている。また、一対のシール部材45、46は、パッキン40よりも入口側ケーシング12と内筒10との接続部分寄りに配置されている。これらのシール部材45、46は、相互に接触するように配置されており、シール部材45は、内筒10が回転すると共に回転し、シール部材46との接触面が摺動面となる。なお、この摺動面は、図2に示すように、内筒10の軸心と垂直に交わる面上に存在するようになっている。パッキン40と、一対のシール部材45、46とが以上のように配置されていることによって、パッキン40とフランジ20との摺動面と、一対のシール部材45、46間の摺動面とが同一面状に存在しないようになる。
【0029】
一対のシール部材45、46は、両方をカーボン摺動材から構成することも、片方をカーボン摺動材とし、もう一方を金属材から構成することも可能である。
一対のシール部材45、46は、それぞれ一体的な環状部材から構成することも可能であるが、内筒10が大型であって、且つシール部材45、46がカーボン摺動材から形成される場合には、分割可能な組み立て式とすることが好ましい。一対のシール部材45、46が分割可能な組み立て式であると、組み付けが容易になるだけでなく、分割面から後述する不活性ガスが入口側ケーシング12或いは内筒10側に供給され、そのガス流れによって被処理物から発生するガスとメカニカルシールとの接触量を低減することが可能となる。
【0030】
図3及び図4に示すのは、分割型のシール部材45或いはシール部材46の第一例であり、図5に示すのは、分割型のシール部材45或いはシール部材46の第二例である。
図3に示すように、分割型のシール部材45或いはシール部材46の第一例であるシール部材例210は、サイドが鉤状に形取られて相互に嵌め合い可能とされた複数のシールセグメント211から構成されており、シール部材例210は、これらのシールセグメント211のサイドをそれぞれ繋ぎ合わせることによって環状に組み立てられる。そして、図4に示すように、シールセグメント211には、シール部材例210の軸心方向に沿って貫通する凸状の貫通孔212がそれぞれ設けられており、また、周面には凹状の溝213がそれぞれ設けられている。
【0031】
フランジ20または、シール板31に、貫通孔212に対応したネジ穴を切ることで、六角穴付きボルトなどを用いてシールセグメント211を固定面に対して固定することができる。
また、溝213は、シールセグメント211が環状に組み立てられた際に、リング状の連続する溝を形成するようになっており、ワイヤーなどの線材(図示しない)でシールセグメント211を外周から固定可能となっている。シールセグメント211を外周から固定する線材としては、熱伸びに対応するために、バネ状で伸縮できるものを適用することが好ましく、例としては、全長にわたってバネ状に巻かれているカーテンロッドが挙げられる。
なお、ボルトと線材は、シールセグメント211の固定時において、両方併用されることが好ましい。
【0032】
一方、図5に示すように、分割型のシール部材45或いはシール部材46の第二例であるシール部材例220は、シール部材例220の中心に向かって凸形状を成す第1シールセグメント221aと、シール部材例220の外側に向かって凸形状を成す第2シールセグメント221bと、から構成されており、シール部材例220は、これらのシールセグメント221aとシールセグメント221bとを交互に繋ぎ合わせることによって環状に組み立てられる。そして、分割型のシール部材45或いはシール部材46の第一例であるシール部材例210と同様に、シールセグメント221a及びシールセグメント221bには、シール部材例220の軸心方向に沿って貫通する凸状の貫通孔222がそれぞれ設けられており、また、周面には凹状の溝(図示しない)がそれぞれ設けられている。これらの、貫通孔222及び溝は、分割型のシール部材45或いはシール部材46の第一例であるシール部材例210における貫通孔212及び溝213と同様の機能を奏するものである。
【0033】
パッキン40と一対のシール部材45、46から構成されるメカニカルシール(シール部材45、46)とは、互いに離間して配置されており、この間には、シール板31、フランジ20、パッキン40、及びメカニカルシールによって囲まれる空間70が存在している。この一方、シール板31には、空間70に連通する供給口32が開口している。この供給口32は、不活性ガスを供給するガス供給手段(図示しない)に接続されており、矢印Gに従い空間70内に不活性ガスを供給可能となっている。この際、不活性ガスの供給圧力は、内筒10或いは入口側ケーシング12内の圧力以上となるよう調整される。なお、ガス供給手段は、ボンベや圧力タンクなどから構成することができる。
【0034】
なお、不活性ガスは、窒素とするのが最も好ましいが、処理物によっては加熱蒸気や二酸化炭素などの他の不活性ガスとすることもできる。
【0035】
フランジ20とシール板31との間における、メカニカルシールよりも入口側ケーシング12と内筒10との接続部分寄りの部分には、環状のブラシ80が設置されている。このブラシ80は、シール板31におけるシール部材46が固定設置されている面と同一面に固定して設置されている。この固定された部分からは、フランジ20に向かって金属製のワイヤーが多数延出しており、内筒10が回転すると共にこれらのワイヤーによってフランジ20が磨かれると共に、メカニカルシール側に移動してくる付着性物質を絡め取るようになっている。ワイヤーを構成する金属材は、耐腐食性及び耐熱性を備える金属材であれば特に限定されない。
なお、ブラシ80は、フランジ20側に取り付けられていても良いが、その際であっても、メカニカルシールよりも入口側ケーシング12と内筒10との接続部分寄りの部分に設けられていることが好ましい。
【0036】
シール板31と入口側ケーシング12との間には、内筒10の軸心方向に沿って伸縮自在とされた押圧部材60が設置されており、この押圧部材60が伸縮することによって、シール板31がフランジ20側に押しつけられるようになっている。そのことによって、一対のシール部材45、46は互いに押しつけられて、その接触面が密になり、メカニカルシールとしての体を成すようになっている。また、押圧部材60は、内筒10の軸心方向に沿った熱伸びに追従するよう構成されており、シール板31のフランジ20側への押しつけが一定するようになっている。なお、押圧部材60としては、バネ類、エアシリンダ、電動シリンダなどを採用可能である。
【0037】
シール板31が内筒10の軸心方向に沿って移動する際には、それに伴って、伸縮継手38が内筒10の軸心方向に沿って伸縮するようになっている。このことによって、内筒10が熱伸びしてシール板31の位置が変化したとしても、伸縮継手38が伸縮することによって、シール性を損なうことなく内筒10の熱伸び分を吸収することができる。
【0038】
上記の説明では、入口側ケーシング12と内筒10との接続部分のシール機構14について説明したが、これと同様にして、出口側ケーシング13と内筒10との接続部分のシール機構14も構成可能である。
【0039】
次に、本実施の形態に係る回転式加熱処理装置1の作用効果を説明する。
本実施の形態に係る回転式加熱処理装置1によれば、メカニカルシールとパッキン40とを併用した二重のシール構造となっていることにより、被処理物を加熱処理することによって生じる気体を確実にシールすることができる。なお、このような構成のものは、メカニカルシールを二重にしたものと比較して、低コストで提供することが可能である。
【0040】
また、メカニカルシールがパッキン40よりも入口側ケーシング12と内筒10との接続部分寄りに配置されているため、被処理物を加熱処理することによって生じる気体に付着性の物質が含まれていたとしても、付着性物質はメカニカルシール部分に付着し、パッキン40まで到達せず、付着性物質によるパッキン40のシール性能の低下が起こらない。つまり、本実施の形態に係る回転式加熱処理装置1によれば、シール性能に優れるパッキン40と、付着性物質の影響を受けにくいメカニカルシールとの両方の利点を享受することが可能となる。
【0041】
さらに、本実施の形態に係る回転式加熱処理装置1は、シール板31、フランジ20、パッキン40、及びメカニカルシールによって囲まれる空間70に不活性ガスを供給するガス供給手段を備えており、不活性ガスによりガスパージを行うため、外気が回転式加熱処理装置内に流入することなく、より高度なシール性能を得ることができる。
【0042】
また、パッキン40とフランジ20との摺動面と、少なくとも一対のシール部材45、46間の摺動面とが同一面状に存在しないようそれぞれが配置されていることによって、メカニカルシールである一対のシール部材45、46の摩耗状態に関わらず、パッキン40のシール性能を確保することができる。
【0043】
さらに、被処理物の加熱処理によって内筒10内部で生じた付着性の物質を絡め取り及び擦り落とし可能なブラシ80が、シール板31、フランジ20、入口側ケーシング12と内筒10との嵌合部分、及びメカニカルシール(一対のシール部材45、46)によって囲まれる空間に設置されていることによって、メカニカルシールに付着する付着性の物質の量を低減することができ、メカニカルシールのシール性能の低下を防止することができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る回転式加熱処理装置の第2実施形態を、添付図面を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態と共通する部材に関しては、同一の符号を付し説明を省略する。
本実施形態に係る回転式加熱処理装置は、図6に示すように、第1実施形態に係る回転式加熱処理装置1とは、内筒110に入口側ケーシング112の一部が嵌合される点で異なっている。このため、内筒110には、フランジが設けられておらず、パッキン40は、内筒110の一部分に直截接触するよう設置されており、また、シール部材45は、内筒110の一部分の側板123に対して設置される。そして、シール板31に設置されたブラシ80は、内筒110の一端側の面に対して、その先端が接触するようになっている。また、伸縮継手38の一端側は、入口側ケーシング112の周壁に環設されたフランジ112aに対して固定されている。なお、本実施形態においては、内筒110の端面に側板123が設置されており、内筒110の内部には、断熱材を保護可能とされて筒状の断熱材保護筒122が設置されている。さらに、内筒110の外周面124と側板123と断熱材保護筒122によって囲まれる部分には、断熱材122が設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、筒体内に装入された樹脂、食品、有機物などの乾燥をはじめとして、木質バイオマスや有機廃棄物などの乾燥、ガス化などを目的とした加熱処理装置として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る回転式加熱処理装置の実施例の模式図である。
【図2】本発明に係る回転式加熱処理装置のシール機構の第1実施例の模式図である。
【図3】本発明に係る回転式加熱処理装置のシール部材の一例を示す図である。
【図4】図3のA−A矢視に対応する拡大断面図である。
【図5】本発明に係る回転式加熱処理装置のシール部材の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る回転式加熱処理装置のシール機構の第2実施例の模式図である。
【符号の説明】
【0047】
1・・・回転式加熱処理装置
10・・・内筒(回転筒)
12・・・入口側ケーシング(ケーシング)
13・・・出口側ケーシング(ケーシング)
20・・・フランジ
31・・・シール板(被覆部材)
38・・・伸縮継手(被覆部材)
40・・・パッキン
45・・・シール部材(メカニカルシール)
46・・・シール部材(メカニカルシール)
80・・・ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心回りに回転しつつ内部で被処理物を加熱処理する回転筒と、
被処理物を内部に収容可能な空間を有しており、回転筒と嵌合されているケーシングと、
ケーシングと回転筒との嵌合部分を被覆しつつケーシングから延出する被覆部材と、
被覆部材と回転筒の一部分との間に設置されて、ケーシングと回転筒との嵌合部分をシールするパッキンと、
被覆部材と回転筒の一部分との間におけるパッキンよりもケーシングと回転筒との嵌合部分寄りの部分に設置されており、相互に接触することによってケーシングと回転筒との嵌合部分をシールする少なくとも一対のシール部材を有するメカニカルシールと、
被覆部材、回転筒の一部分、パッキン、及びメカニカルシールによって囲まれる空間に不活性ガスを供給するガス供給手段とを、備えることを特徴とする回転式加熱処理装置。
【請求項2】
パッキンと回転筒の一部分及び被覆部材との接触面と、少なくとも一対のシール部材の接触面とは、同一面上に存在しない、請求項1に記載の回転式加熱処理装置。
【請求項3】
被処理物の加熱処理によって回転筒内部で生じた付着性の物質を絡め取り及び/又は擦り落とし可能なブラシが、被覆部材、回転筒の一部分、ケーシングと回転筒との嵌合部分、及びメカニカルシールによって囲まれる空間に設置されている、請求項1或いは請求項2に記載の回転式加熱処理装置。
【請求項4】
回転筒の一部分が、回転筒の周壁回りに突設されたフランジとされている、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の回転式加熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−156483(P2010−156483A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333798(P2008−333798)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】