説明

回転結合装置

本発明は、少なくとも1つの転がり軸受(2)及び少なくとも1つの電動駆動装置(3)を持つ回転結合装置(1)であって、転がり軸受(2)が、回転軸線(2a)の周りに設けられる少なくとも1列の転動体(4)を持ち、転動体(4)が、駆動装置(3)により駆動可能な少なくとも1つの転動路(5)と接触しているものに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの転がり軸受及び少なくとも1つの電動駆動装置を持つ回転結合装置であって、転がり軸受が、回転軸線の周りに設けられる少なくとも1列の転動体を持ち、転動体が、駆動装置により駆動可能な少なくとも1つの転動路と接触しているものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような回転結合装置はドイツ連邦共和国特許出願公開第10210071号明細書に記載されている。統合されかつ騒音の少ない回転結合装置は多様に使用可能であり、一般に回転する質量の駆動、結合、支持及び位置検出や、静止部材への結合に用いられる。
【0003】
カタログに記載されている転がり軸受回転結合装置は、現在多くの工業的応用で使用されている。大抵の場合外レース及び内レースを持つ転がり軸受が重要であり、静止部材及び回転する質量に取付けるための軸線方向取付け穴及び/又は取付けねじを選択的に備えている。
【0004】
医療技術の分野において、転がり軸受回転結合装置がコンピュータ断層撮影に使用されている。更に転がり軸受回転結合装置は、例えば空港において安全範囲にある手荷物を検査する類似のX線検査装置に見られる。これらの装置の回転数の不断の上昇と共に、少ない騒音、僅かな始動トルク、小さい全体寸法、僅かな重量及び高い運転精度への要求が同時にあると、公知の転がり軸受回転結合装置は不適当であり、もはやこの使用の要求には不充分である。
【0005】
コンピュータ断層撮影の撮像及び画像再構成のため、回転する部品の精確な角度及び位置を知ることが必要である。ここに種々の測定原理(誘導、光学、容量等)により動作する種々の測定装置がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、前にあげた要求を満たす回転結合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は請求項1の対象によれば、電動駆動される回転結合装置の測定可能な運転騒音が、空気伝送音として測定され、最高でも72dB(A)なるべく67dB(A)の値を持つ音圧レベルを持っている。騒音測定は、回転軸線の理論的に引継がれる線上で軸受面から1mの水平間隔で行われる。
【0008】
転がり軸受は少なくとも1つの内側転動路及び外側転動路を持っている。転がり軸受にある複数の転道路も考えられる。
【0009】
転がり軸受内で旋回する転動体は、固体伝導音の形の騒音を生じる。作動回転数が高いほど、一般に発生される騒音は大きい。転がり軸受の固体伝導音絶縁物は、周囲部材への固体伝導音の伝搬を阻止し、従って騒音発生を少なくする。レースの少なくとも1つは、その周面及び/又は側面で、周囲部分に対して固体伝導音を絶縁される。固体伝導音絶縁のために使用される材料は、レースの材料と比較して、少なくとも3つのインピーダンス比pを持っている。インピーダンス比pは次のように定義されている。

p はインピーダンス比
E1はレースの弾性係数
ρ1はレースの密度
E2は絶縁材料の弾性係数
ρ2は絶縁材料の密度
【0010】
騒音の少ない転がり軸受の別の特徴は、所定の起伏及び/又は表面粗さにより決定される転動路の表面地形である。転動路の粗さはRa0.25より大きくない値にある。記号Raは国際的に標準化された公知の値であり、ドイツ規格DIN EN 4287による算術平均値として定義されている。次の特徴が起伏の公知の概念の基礎になっている。
少なくとも転動路の表面が、周方向にそれぞれ波状で従って回転軸線の回りを取巻く完全に丸い線状に形成される仮定の理想経過とは異なる経過を持つ任意に多数の互いに平行に隣接する母線により描かれ、
これらの経過が、(回転軸線の周りに)周方向に交互に続きかつそれぞれの理想経過と繰返し交差する波によりそれぞれ描かれ、
母線のそれぞれ1つにおいて1つの測定範囲の任意に多数の周期の波山と波谷との間のすべての起伏振幅の和の平均値が、最大で定数0.33mm/minと駆動される転動路の回転数r.p.m.との商に等しく、
測定範囲が、1つの列の周方向に続く2つの転動体と転動路とのそれぞれの接触部の間の転道路に沿う弧長の公称寸法により規定されている。
【0011】
この定義によれば、例えば作動回転数n=120min−1及び転動体間隔=30mm(許容限界内における万一の寸法偏差を考慮しない公称寸法)に対して、転動路最大許容起伏振幅0.0028mmが生じる。
【0012】
本発明により騒音が少ないように転がり軸受及び駆動装置から構成される回転結合装置は、こじんまりしており、僅かな全体寸法しか必要としない。これは大きい半径方向、軸線方向及びトルクの負荷を確実に引受ける。直接駆動装置は回転結合装置のなるべく一体な構成部分であり、従って付加的な構造空間を必要としない。回転する回転結合装置は、すべての回転数範囲において、特に100r.p.m.(1/min)以上なるべく160r.p.m.以上の回転数において、特に騒音を少なく構成される転がり軸受の統合により、選択的に固体伝導音絶縁物と組合わされて、特に低い騒音レベルを生じる。使用される部材の数が少なくかつこじんまりしているため、回転結合装置は安価に製造される。
【0013】
直接駆動装置は、直接駆動装置の駆動力が、(例えばベルト、歯等の)それ以上の駆動部品、制動力発生器、転向ローラ及び張りローラを介することなく、転がり軸受回転結合装置へ伝達されるようにする。
【0014】
なるべく直接駆動装置として回転結合装置へ統合される電動駆動装置は、環構造又はセグメント構造のトルクモータとして構成され、回転結合装置の静止部材が鉄心及び電気巻線から成る少なくとも1つの固定子に結合されている。回転結合装置の回転する部材の1つは、永久磁石を備えている。
【0015】
更にセグメント構造又は環状モータとしてのトルクモータにより構成される種々の電動機出力が、完全に閉じた環になるまで1つ又は複数の個別セグメントの組合わせによって、駆動のために与えられる。その全駆動出力は、使用される固定子セグメントの数及び大きさに関係している。低い回転数及び小さいトルクしか必要とされないと、個々の固定子セグメントの間に幅広い間隙を残すことができる。僅かな駆動トルクが必要な場合1つの固定子セグメントしか設けられていない時にも、トルクモータはなお作動可能である。回転結合装置の強力な回転、加速又は制動のため大きい出力が必要な場合、環状モータ構造が選ばれる。
【0016】
環状モータとは異なり、セグメント構造のトルクモータを制御して作動させ、それにより個々のセグメントの磁力を互いに同期化し、従ってできるだけよい効率及び最低の騒音レベルが得られるようにせねばならない。セグメントを駆動するため周波数変換機の入力信号は、本発明の構成によれば、位置検出用の統合されたセンサ装置により与えられる。(例えば回転する部材の短い加速段階において)非常に大きいトルクが要求されると、環状モータの効率的な作動が制御される作動により可能である。駆動装置の制御される作動により、周波数変換機の同時に低い出力段において大きいトルクが実現可能である。
【0017】
例えばコンピュータ断層撮影において回転する部分の位置検出のため、撮像及び画像再構成のため、センサ装置を持つ回転結合装置に、更に位置測定装置を統合することができる。センサ装置は少なくとも1つのセンサ及び信号発生器を持っている。センサは信号発生器の信号の検出(符号化)に役立つか、又は任意の構成の複数の前記の部材を持っている。例えば交互の極性に磁化される粒子(交互に北極及び南極)を混合されたエラストマベルトにより符号化が行われる。センサ装置は別の電子部品例えば変換器を持つこともできる。
【0018】
回転結合装置には、任意の数及び任意の構造の転がり軸受が使用されている。転がり軸受は1列又は複数列に構成されている。転動体は、保持器に保持することができる玉又はころである。転動体及び転動路の材料は、なるべく鋼又は考えられる他のすべての材料例えば5g/cmより小さい密度を持つ材料である。このような材料は例えばセラミック材料である。
【0019】
騒音の少ない薄環4点玉軸受が好んで使用される。本発明の構成によれば、このような軸受に対してピッチ円の直径と1つの列の個々の転動体の直径との比が30:1なるべく40:1より大きく、ピッチ円が、回転軸線に対して同心的に設けられかつ転がり軸受にある遊隙のため転動体の起こり得る位置変化を考慮することなく回転軸線に対して平行に向けられる転動体の中心軸線と交差する仮想円である。中心軸線は、ころの場合回転軸線又は対称軸線であり、玉の場合玉中心を通って回転結合装置の回転軸線に対して平行に延びる仮想軸線である。
【0020】
薄環4点玉軸受は最も簡単で頑丈な軸受構造である。これは、平均の軸線方向負荷、半径方向負荷及びトルク負荷を確実に吸収できるように設計されている。低い固有安定性及び形状安定性を持つ薄環軸受は、周囲部分への組込みによって支持される。
【0021】
更に線路軸受、アンギュラコンタクト玉軸受及びころ軸受が使用される。
【0022】
統合された騒音の少ない回転結合装置は、更に転がり軸受転動路を周囲部材へ統合する可能性を与え、その場合転がり軸受転動路は適当な周囲部材に直接形成されている。周囲部材は、例えば転がり軸受又はレースの少なくとも1つ又は転動路の少なくとも1つがこのハウジングに統合されているハウジング、及び/又は転がり軸受又はレースの少なくとも1つ又は転道路の少なくとも1つが設けられている回転子又は軸である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、少なくとも1つの転がり軸受2及び電動駆動装置3を持つ回転結合装置1を回転軸線2aに沿う部分断面で示している。転がり軸受2は、転がり軸受2の回転軸線2aの周りに設けられる1列の転動体4を持っている。転動体4は、駆動装置により駆動可能な内レース6の転動路5に接触し、かつ外レース8の転動路7に接触している。外レース8は、ハウジング9の形の回転しない周囲部材に固定している。
【0024】
外レース8とハウジング9との間に、外レース8に加硫接着されるエラストマから成る絶縁層11の形の固体伝導音絶縁物10が設けられている。絶縁層11は選択的に挿入片である。
【0025】
駆動装置3のトルクモータは、回転結合装置1の回転子13上に直接載っている永久磁石12を持っている。トルクモータの回転子13は駆動される転動路5に相対回転しないように結合され、トルクモータの固定子15の詳細には示してない電気巻線から、回転軸線2aの周りを取巻く空隙14により分離されている。
【0026】
列の転動体4のピッチ円の直径Dと各転動体4の直径Kとの比は30:1より大きく、ピッチ円は、回転軸線2aに対して同心的に設けられかつ回転軸線2aに対して平行に向けられて図の面へ直角に突込む転動体4の中心軸線16と交差する仮想円である。転動体4及びレース6又は8は選択的に鋼又はセラミックから成り、鋼から成る転動体又は転がり軸受の部材とセラミックからなる部材又は転動体との組合わせも考えられる。
【0027】
回転結合装置において、センサ17と符号化装置20から成るセンサ装置18により、少なくとも周方向における回転子13と固定子15との相対位置が検出可能である。センサ17は固定子15に固定しており、符号化装置20は回転子に固定している。センサ17から接続ケーブル21が出て、破線で示す制御装置22にも選択的に接続可能である。制御装置22から接続ケーブル19が制御装置3へ通じているので、制御装置22が、センサ装置18の出力信号をトルクの制御用入力信号に変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 本発明による回転結合装置の軸線に沿う断面図を示す。
【符号の説明】
【0029】
1 回転結合装置
2 転がり軸受
2a 回転軸線
3 駆動装置
4 転がり軸受
5 転動路
6 内レース
7 転動路
8 外レース
9 ハウジング
10 固体伝導音絶縁物
11 絶縁層
12 永久磁石
13 回転子
14 空隙
15 固定子
16 中心軸線
17 センサ
18 センサ装置
19 接続ケーブル
20 符号化装置
21 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの転がり軸受(2)及び少なくとも1つの電動駆動装置(3)を持つ回転結合装置(1)であって、転がり軸受(2)が、回転軸線(2a)の周りに設けられる少なくとも1列の転動体(4)を持ち、転動体(4)が、駆動装置(3)により駆動可能な少なくとも1つの転動路(5)と接触しているものにおいて、電動駆動される回転結合装置の測定可能な運転騒音が、空気伝送音として測定され、最高でも72dB(A)の値を持つ音圧レベルを持っていることを特徴とする、回転結合装置。
【請求項2】
駆動装置(3)により電動駆動されかつ回転軸線の周りに回転する転動路(5)の少なくとも80r.p.m.の回転数における値を特徴とする、請求項1に記載の回転結合装置。
【請求項3】
駆動装置(3)により駆動される第1の転動路(5)の表面粗さ、及び少なくとも1つの第2の転動路(7)の表面の表面粗さが、値Ra<0.25を持ち、転動体(4)の列が第2の転道路(7)と接触していることを特徴とする、請求項1に記載の回転結合装置。
【請求項4】
少なくとも転動路(5)の表面が、周方向にそれぞれ波状で従って回転軸線(2a)の回りを取巻く完全に丸い線状に形成される仮定の理想経過とは異なる経過を持つ任意に多数の互いに平行に隣接する母線により描かれ、
これらの経過が、周方向に交互に続きかつそれぞれの理想経過と繰返し交差する波によりそれぞれ描かれ、
母線のそれぞれ1つにおいて1つの測定範囲の任意に多数の周期の波山と波谷との間のすべての起伏振幅の最大値が、最大で定数0.33mm/minと駆動される転道路の回転数r.p.m.との商に等しく、
測定範囲が、1つの列の周方向に続く2つの転動体と転動路(5)とのそれぞれの接触部の間の転道路に沿う弧長の公称寸法により規定されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の回転結合装置。
【請求項5】
母線が少なくとも1つの第2の転動路(7)の波状経過を持ち、第2の転動路(7)が、転動体列の転動体(4)と接触していることを特徴とする、請求項4に記載の回転結合装置。
【請求項6】
少なくとも転動路(5)と転動路(5)の周囲との間及び/又は回転結合装置の部材の交差個所及び/又は回転結合装置と回転結合装置の周囲との交差個所に固体伝導音絶縁物(10)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の回転結合装置。
【請求項7】
固体伝導音絶縁物(10)としての絶縁層(11)が転道路を形成されている部材の材料より小さい弾性係数及び/又は密度の少なくとも1つの材料から成っていることを特徴とする、請求項6に記載の回転結合装置。
【請求項8】
インピーダンス比(p)少なくとも値3を持ち、インピーダンス比(p)が転動路の材料の弾性係数(E)と密度(ρ)との積の平方根と、絶縁層の材料の弾性係数(E)と密度(ρ)との積の平方根との商即ち

であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の回転結合装置。
【請求項9】
絶縁層(11)が少なくとも1種類のエラストマ材料から成ることを特徴とする、請求項7又は8に記載の回転結合装置。
【請求項10】
レース(8)に転動路(5)が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の回転結合装置。
【請求項11】
駆動装置(3)の電動機の永久磁石(12)が、電動機の回転子(13)に対して相対回転しないように、駆動される転動路(5)に結合され、回転軸線(2a)の周りを取巻く空隙(14)において、電動機の固定子(15)に対向し、少なくとも固定子(15)と永久磁石(12)が空隙(14)により互いに分離されていることを特徴とする、請求項1に記載の回転結合装置。
【請求項12】
電動機の回転子(13)に、転動路(5)を持つレース(6)が固定し、かつ永久磁石(12)が固定していることを特徴とする、請求項11に記載の回転結合装置。
【請求項13】
回転結合装置(1)のすべての作動状態において、空隙(14)の半径方向寸法が定格寸法と最大0.5mm相違することを特徴とする、請求項12に記載の回転結合装置。
【請求項14】
ピッチ円の直径と1つの列の個々の転動体の直径との比が30:1より大きく、ピッチ円が、回転軸線(2a)に対して同心的に設けられかつ回転軸線(2a)に対して平行に向けられる転動体(4)の中心軸線(16)と交差する仮想円であることを特徴とする、請求項1に記載の回転結合装置。
【請求項15】

ことを特徴とする、請求項1に記載の回転結合装置。
【請求項16】
列の転動体(4)の少なくとも若干が、電流に対して絶縁する材料から成り、この材料の比抵抗が1010Ω・mm/mより大きいことを特徴とする、請求項1に記載の回転結合装置。
【請求項17】
回転結合装置(1)にあるセンサ装置(18)により、駆動装置(3)のトルクモータの回転子(13)と固定子(15)との少なくとも周方向相対位置が検出可能であり、回転子(13)が転道路(5)に相対回転しないように結合されていることを特徴とする、請求項1に記載の回転結合装置。
【請求項18】
トルクモータ及びセンサ装置(18)に接続される制御装置(22)が、センサ装置(18)の出力信号をトルクモータの制御用入力信号に変換することを特徴とする、請求項17に記載の回転結合装置。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−519955(P2008−519955A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543689(P2007−543689)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001984
【国際公開番号】WO2006/050700
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)
【Fターム(参考)】