説明

回転角度およびトルク検出装置

【課題】車種の違いに起因して軸部の直径や機構が異なっても、部品の取り替えが簡単で、容易に取り付け可能な回転角度およびトルク検出装置を提供することを目的としている。
【解決手段】トーションバー2を有する軸部8と、この軸部8の回転角度を検出する回転角度検出部と、軸部8のトルクを検出するトルク検出部とを備えており、トルク検出部および回転角度検出部は、各々、第1のトルク検出モジュール5、第2のトルク検出モジュール7、回転角度検出モジュール9として構成するとともに軸部8の周囲に配置した構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のパワーステアリング等に用いる回転角度およびトルク検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9において、従来の回転角度およびトルク検出装置は、回転角度を検出したい回転軸(図示せず)に、係合バネ60を介して2つの歯車部59を取り付けている。この歯車部59は、外周面に異なる磁極を交互に配置したコード板61を保持する歯車部62と噛み合っている。検出する回転軸の回転にしたがって、コード板61に設けられた磁極が回転移動するので、この磁極の変位をコード板61の外周面に対向して設けた磁気検知素子63でカウントすることにより、回転軸の回転角度を検出することができる。
【0003】
また、トーションバーを介して連結された2本の軸にこの機構を取り付けることにより、2本の軸間にトルクが作用し、軸間のねじれが発生した時、回転軸の回転角度を比較することによってトルクを検出することができる。
【0004】
上記の回転角度およびトルク検出装置では、コード板61に磁極を着磁する磁石形成工程と、歯車部62を歯車部59に噛み合うように取り付ける取付工程とを備えている。一般に、コード板61の磁極は、着磁前のコード板61が取り付けられた歯車部62を着磁機にセットして、コード板61の周面方向に異なる磁極が所定間隔に交互に配置されるように着磁して形成する。そして、2つの歯車部62を対向するように回転軸に取り付けている。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平11−194007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の回転角度およびトルク検出装置は、ハンドル側のステアリングコラムに配置され、ハンドルの回転を伝達する軸部に取り付けられる。この軸部の直径や機構は車種によって異なり、各々の車種の軸部に対応させて回転角度およびトルク検出装置を取り付けている。
【0007】
上記従来の構成では、回転角度を検出する構成とトルクを検出する構成とが一体化されているので、車種の違いに起因して軸部の直径や機構が異なると、その異なる構成に対応した部品を取り替えることが困難であり、容易に取り付けられないという問題点を有していた。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するもので、車種の違いに起因して軸部の直径や機構が異なっても、部品の取り替えが簡単で、容易に取り付け可能な回転角度およびトルク検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、特に、回転角度検出部およびトルク検出部はモジュールとして構成するとともに各々の前記モジュールを前記軸部に取り付けており、前記軸部には前記モジュールの取付位置を位置決めする位置決め部を設けるとともに、前記位置決め部で位置規制して前記モジュールを前記軸部に取り付けた構成である。
【発明の効果】
【0010】
上記構成により、回転角度検出部およびトルク検出部はモジュールとして構成しているので、車種の違いに起因して軸部の直径や機構が異なっても、それぞれに対応した部品の取り替えが簡単で、取り付けが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施の形態における回転角検出装置の断面図、図2は同検出装置の第1、第2の回転体の斜視図、図3は同検出装置の第1、第2の回転体に保持する第1、第2のリング磁石部の斜視図、図4は同検出装置の第1のトルク検出モジュールを配置した軸部の断面図、図5は同検出装置の第2のトルク検出モジュールを取り付けた回転角度検出モジュールの上面図、図6は図5のA−A断面図、図7は図6の左側面図である。
【0013】
図1において、本発明の一実施の形態における回転角度およびトルク検出装置は、トーションバー2を有する軸部8と、この軸部8の回転角度を検出する回転角度検出部と、軸部8のトルクを検出するトルク検出部とを備えており、トルク検出部および回転角度検出部は、各々、第1のトルク検出モジュール5、第2のトルク検出モジュール7、回転角度検出モジュール9として構成するとともに軸部8の周囲に配置している。
【0014】
図2から図4において、第1のトルク検出モジュール5は、図2に示す第1の回転体10および第2の回転体12と、第1、第2の回転体10、12の周面方向に極性の異なる磁極を交互に配置するとともに第1、第2の回転体10、12に保持させた図3に示す第1のリング磁石部14および第2のリング磁石部16とを有し、図4に示すように第1、第2の回転体10、12を軸部8に連結して第1のトルク検出部5を軸部8に装着している。
【0015】
図5から図7において、第2のトルク検出モジュール7は第1、第2のリング磁石部14、16の磁極に対向配置させる第1の磁気検知素子18および第2の磁気検知素子20を有する。
【0016】
回転角度検出モジュール9は軸部8に連結し第1の回転体10と同期した同期回転体11と、この同期回転体11と同期する第3の回転体22および第4の回転体24と、第3、第4の回転体22、24の周面方向に極性の異なる磁極を交互に配置するとともに第3、第4の回転体22、24に保持させた第3の磁石部26および第4の磁石部27と、第3、第4の磁石部26、27の磁極に対向させた第3の磁気検知素子28および第4の磁気検知素子(図示せず)を有する。
【0017】
同期回転体11、第3、第4の回転体22、24は互いに歯車構造にするとともに互いの歯を組み合わせて同期回転させており、入力軸4が回転すると、第1の回転体10と同期回転体11が互いに同期回転し、かつ、第3、第4の回転体22、24も互いに同期回転する。同期回転体11に対する第3の回転体22の回転数比と同期回転体11に対する第4の回転体24の回転数比とは異ならせており、第3、第4の回転体22、24の歯車数を異なる歯数にして互いに歯車比を替えることにより回転数比を異ならせている。
【0018】
そして、第2のモジュール7を回転角度検出モジュール9に取り付けている。
【0019】
さらに、この第2のトルク検出モジュール7を取り付けた回転角度検出モジュール9は軸部8に装着している。この際、第2のトルク検出モジュール7の第1、第2の磁気検知素子18、20が第1のトルク検出モジュール5の第1、第2のリング磁石部14、16に対向するように装着している。
【0020】
これら第1のトルク検出モジュール5および回転角度検出モジュール9は軸部8に設けた位置決め部にて位置規制して取り付けている。
【0021】
第1のトルク検出モジュール5の位置決めにあたっては、第1のトルク検出モジュール5および軸部8の位置決め部として、例えば、図2に示す第1、第2の回転体10、12の周面に位置決め基準用の基準部として貫通孔32を設け、図4に示す軸部8にも位置決め基準用の基準部を設け、これら基準部を対応させて第1、第2の回転体10、12を軸部8に連結すればよい。図4に示すように、第1、第2の回転体10、12の貫通孔32に軸部8の基準部を対応させて、貫通孔32に連結用ピン33を挿入して位置決めして位置規制すればよい。
【0022】
回転角度検出モジュール9の位置決めにあたっては、回転角度検出モジュール9と軸部8の位置決め部として、図4に示す軸部8に段差部34を設け、この段差部34に回転角度検出モジュール9の一面を接触させて位置決めし位置規制すればよい。または、図1に示すように、ベアリング部品36等の他の部品を介在させ、第1、第2のトルク検出モジュール5、7と回転角度検出モジュール9を覆うケース38を配置して、位置規制してもよい。
【0023】
上記構成により、回転角度検出部およびトルク検出部はモジュールとして構成しているので、車種の違いに起因して軸部8の直径や機構が異なっても、それぞれに対応した部品の取り替えが簡単で、取り付けが容易となる。例えば、軸部8の直径が異なっていても、第1のトルク検出モジュール5の第1、第2の回転体10、12の内径の異なるものを用いれば、部品の取り替えが簡単で、第2のトルク検出モジュール7と回転角度検出モジュール9は取り替えずにそのまま用いることができる。
【0024】
さらに、同期回転体11に対する第3の回転体22の回転数比と同期回転体11に対する第4の回転体24の回転数比とを異ならせているので、第3の磁気検知素子28および第4の磁気検知素子より出力された出力信号に基づいて軸部8の絶対回転角度も検出することができる。
【0025】
図8は軸部の回転に伴う機械角と電気角の関係を示す特性波形図であり、図8(a)は同期回転体の回転角(機械角)に対して、磁界変化に起因して第3の磁気検知素子が検出する回転角(電気角)を示し、図8(b)は同期回転体の回転角(機械角)に対して、磁界変化に起因して第4の磁気検知素子が検出する回転角(電気角)を示し、図8(c)は図8(a)、(b)に基づき算出された同期回転体の回転角(機械角)に対する第3、第4の回転体の回転角差(電気角差)を示している。
【0026】
第3、第4の回転体22、24の歯車数によって、第3、第4の回転体22、24の回転角(機械角)に対する第3、第4の回転体22、24の回転角(電気角)の特性波(三角波)は互いに周期の異なるものとなる。したがって、同期回転体11の回転角(機械角)に対して、第3、第4の回転体22、24の特性波(三角波)は各々何周期目の特性波(三角波)であるかによって、図8(c)に示すように、同期回転体11の回転角(機械角)に対して、第3、第4の回転体22、24の回転角差(電気角差)の特性波形が一義的に定まるので、軸部8の絶対回転角(機械角)が定まる。
【0027】
なお、本発明の一実施の形態では、第3、第4の回転体22、24を用いたが、第4の回転体24を用いずに構成することもできる。この場合、同期回転体11に対する第1の回転体10の回転数比と同期回転体11に対する第3の回転体22の回転数比とを異ならせ、第1の磁気検知素子18および第3の磁気検知素子28より出力され出力信号に基づいて軸部8の絶対回転角度も検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明にかかる回転角度およびトルク検出装置は、車種の違いに起因して軸部の直径や機構が異なっても、部品の取り替えが簡単で、各種の車両のパワーステアリング等で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態における回転角検出装置の断面図
【図2】同検出装置の第1、第2の回転体の斜視図
【図3】同検出装置の第1、第2の回転体に保持する第1、第2のリング磁石部の斜視図
【図4】同検出装置の第1のトルク検出モジュールを配置した軸部の断面図
【図5】同検出装置の第2のトルク検出モジュールを取り付けた回転角度検出モジュールの上面図
【図6】図5のA−A断面図
【図7】図6の左側面図
【図8】軸部の回転に伴う機械角と電気角の関係を示す特性波形図
【図9】従来の回転角およびトルク検出装置の断面図
【符号の説明】
【0030】
2 トーションバー
4 入力軸
5 第1のトルク検出モジュール
6 出力軸
7 第2のトルク検出モジュール
8 軸部
9 回転角度検出モジュール
10 第1の回転体
11 同期回転体
12 第2の回転体
14 第1のリング磁石部
16 第2のリング磁石部
18 第1の磁気検知素子
20 第2の磁気検知素子
22 第3の回転体
24 第4の回転体
26 第3の磁石部
27 第4の磁石部
28 第3の磁気検知素子
32 貫通孔
33 連結用ピン
34 段差部
36 ベアリング部品
38 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーションバーを有する軸部と、前記軸部の回転角度を検出する回転角度検出部と、前記軸部のトルクを検出するトルク検出部とを備え、前記回転角度検出部および前記トルク検出部はモジュールとして構成するとともに各々の前記モジュールを前記軸部に取り付けており、前記軸部には前記モジュールの取付位置を位置決めする位置決め部を設けるとともに、前記位置決め部で位置規制して前記モジュールを前記軸部に取り付けた回転角度およびトルク検出装置。
【請求項2】
前記トルク検出部は前記トーションバーを挟むように前記軸部に連結した第1、第2の回転体と、前記第1、第2の回転体の周面方向に極性の異なる磁極を交互に配置するとともに前記第1、第2の回転体に保持させた第1、第2の磁石部と、前記第1、第2の磁石部の磁極に対向させた第1、第2の磁気検知素子とを有し、
前記回転角度検出部は前記軸部に連結し前記第1、第2の回転体のいずれか一方と同期した同期回転体と、前記同期回転体と同期する第3の回転体と、前記第3の回転体の周面方向に極性の異なる磁極を交互に配置するとともに前記第3の回転体に保持させた第3の磁石部と、前記第3の磁石部の磁極に対向させた第3の磁気検知素子とを有し、
前記同期回転体に対する前記第1の回転体の回転数比と前記同期回転体に対する前記第3の回転体の回転数比とを異ならせた請求項1記載の回転角度およびトルク検出装置。
【請求項3】
前記トルク検出部は前記トーションバーを挟むように前記軸部に連結した第1、第2の回転体と、前記第1、第2の回転体の周面方向に極性の異なる磁極を交互に配置するとともに前記第1、第2の回転体に保持させた第1、第2の磁石部と、前記第1、第2の磁石部の磁極に対向させた第1、第2の磁気検知素子とを有し、
前記回転角度検出部は前記軸部に連結し前記第1、第2の回転体のいずれか一方と同期した同期回転体と、前記同期回転体と同期する第3、第4の回転体と、前記第3、第4の回転体の周面方向に磁性の異なる磁極を交互に配置するとともに前記第3、第4の回転体に保持させた第3、第4の磁石部と、前記第3、第4の磁石部の磁極に対向させた第3、第4の磁気検知素子とを有し、
前記同期回転体に対する前記第3の回転体の回転数比と前記同期回転体に対する前記第4の回転体の回転数比とを異ならせた請求項1記載の回転角度およびトルク検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−278963(P2007−278963A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108437(P2006−108437)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】