説明

回転電機

【課題】可動回転子の駆動力を発生する動力発生部を小型化し、大負荷や高速回転時において、回転電機の有効磁束量を運転状態に応じて変えられ、広い運転範囲での高効率運転が可能となる磁束可変型回転電機を提供すること。
【解決手段】磁束可変型回転電機は、巻線を有する固定子1と、固定子1に空隙を介して回転可能に配設され、回転軸方向に第1回転子5と第2回転子6に二分割され、それぞれに極性の異なる界磁用磁石が回転方向に交互に配置された回転子と、第1回転子5に対する第2回転子6の相対的な回転軸方向位置を可変する磁束可変装置JMとを有する。磁束可変装置JMは、動力発生部ACと、動力発生部ACで発生した力を第2回転子6に伝達する動力伝達部DDと、動力発生部ACと動力伝達部DDの間に介在し、動力発生部ACで発生した力を倍増する倍力機構BMとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石を用いた可変磁束型の回転電機、およびその回転電機を用いた自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導電動機(IMモータ)に代わり、効率に優れ、小型化や低騒音化も期待できる永久磁石同期電動機(PMモータ)が普及し始めている。例えば、家電、鉄道車両、電気自動車向けの駆動モータとしてPMモータが利用されるようになってきている。IMモータは、ステータ(固定子)巻線に交流電圧を印加すると、これにより回転磁界が発生し、回転子がこの磁束を切ることにより、渦電流が回転子内に誘導され、フレミングの左手法則によってトルクを発生する。IMモータの回転子に誘導される磁束はステータからの励磁電流によって誘導されて作り出すため、励磁電流を流すことによる損失が大きい問題点がある。一方、PMモータは、ロータに永久磁石を備え、永久磁石から発生する磁束を利用してトルクを出すモータである。そのため、PMモータではIMモータのように回転子に励磁電流を印加する必要はない分、動作原理上では効率が良いモータが作れる。
【0003】
しかしながら、PMモータは、回転数に比例して永久磁石の磁束により電機子コイルに誘起電圧が発生する。鉄道車両や自動車など回転範囲が広い応用分野では、最高回転数において生じる誘起電圧によって、PMモータを駆動制御するインバータが過電圧によって破壊しないことが必要である。このような特性を有するPMモータでは、電源電圧を一定として定出力運転を行う場合に、前述の最高回転数をさらに上昇させて運転速度を広くするための方策がいくつも開発されている。その一つの技術として、電機子コイルに永久磁石による磁束を打ち消す電流を流して等価的に誘起電圧を下げるといういわゆる弱め界磁制御がある。しかし、この弱め界磁制御は、トルクに寄与しない電流を流すため、電機子コイルの抵抗損が増加し、効率の低下を招いていた。また、電機子コイルに大電流を流す必要があり、おのずとコイルに発生する熱が増大する。そのため、高回転領域における回転電機としての効率の低下、冷却能力を超えた発熱による永久磁石の減磁等が起こり得る可能性があった。
【0004】
そこで、電気的な弱め界磁の代わりに、機械的に有効磁束量を可変することができる回転電機としては、例えば特許文献1に記載された回転電機が知られている。
特許文献1に記載された回転電機は、回転軸方向に二分割され他2つの回転子を有する。各回転子には、それぞれに極性の異なる界磁用磁石が回転方向に交互に配置された回転子を有する。そして、回転電機を電動機として動作させる場合は、二分割回転子の一方の界磁用磁石と二分割回転子の他方の界磁用磁石との間の磁気作用力と、回転子のトルク方向との釣り合いによって二分割回転子の界磁用磁石の磁極中心を揃える。回転電機を発電機として動作させる場合は、回転子のトルク方向が反対になるに伴って二分割回転子の界磁用磁石の磁極中心をずらす。このように、分割した二つの回転子の磁極中心を変化させることで機械的に有効磁束量を可変にしている。さらに、機械的な可変機構を用いた回転電機では、被搭載体、例えば自動車に対する信頼性を向上させるために、例えば回転子のトルク方向の変化に伴って二分割回転子の一方の可動回転子が可変した時に二分割回転子の一方や機械的な可変機構に生じる衝撃を緩和できる機構を設けた回転電機が特許文献1に記載されている。さらに、特許文献2に記載された回転電機は、特許文献1に記載された回転電機において、回転軸方向に移動可能な回転子の側面に設けた電磁クラッチにより、可動回転子を移動できるようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−069609号公報
【特許文献2】特開2002−262534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した回転電機では、大負荷や高速回転時において、可動回転子を移動させる駆動力が大きくなり、可動回転子の動力発生部が大型化し、必要となるパワーも増加する。そのため、動力発生部と、動力発生部で発生した駆動力により可動回転子を移動する磁束可変装置とを含めた駆動装置全体の体積が増大するとともに、回転電機の効率低下などの問題点が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1の発明による回転電機は、巻線を有する固定子と、前記固定子に空隙を介して回転可能に配設され、回転軸方向に少なくとも第1回転子と第2回転子に二分割され、それぞれに極性の異なる界磁用磁石が回転方向に交互に配置された回転子と、前記第1回転子に対する前記第2回転子の相対的な回転軸方向位置を可変する磁束可変装置を有し、前記磁束可変装置は、動力発生部と、前記動力発生部で発生した力を第2回転子に伝達する動力伝達部と、前記動力発生部と前記動力伝達部の間に介在し、前記動力発生部で発生した力を倍増する倍力機構とを備えることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の回転電機において、前記回転子は、3つ以上に分割され、前記磁束可変装置は、前記分割された個々の分割回転子の相対的な回転軸方向位置を可変することを特徴とする。
(3)本発明による回転電機の倍力機構は、梃子機構、リンク機構、油圧機構、歯車とボールネジ機構のいずれかによって構成されることを特徴とする。
(4)請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の回転電機において、前記磁束可変装置を制御する制御手段をさらに備え、前記制御手段は、回転子の回転数とトルクで定まる運転効率が示された回転電機効率マップを複数の有効磁束ごとに記憶した記憶装置と、要求トルクと要求回転数に基づいて前記複数の回転電機効率マップを参照し、最も効率が高いマップの有効磁束を決定する有効磁束決定手段と、決定された有効磁束に基づく指令値を計算して前記磁束可変装置へ出力する計算手段とを備えることを特徴とする。
(5)請求項8の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の回転電機において、前記磁束可変装置を制御する制御手段をさらに備え、前記制御手段は、回転子の回転数とトルクで定まる運転効率が示された回転電機効率マップを複数の有効磁束ごとに記憶した記憶装置と、前記複数の回転電機効率マップに基づいて合成効率マップを生成し、前記合成効率マップを参照して要求トルクと要求回転数に基づく運転点の合成後の有効磁束を決定する有効磁束決定手段と、決定された有効磁束に基づく指令値を計算して前記磁束可変装置へ出力する計算手段とを備えることを特徴とする。
(6)請求項9の発明によるハイブリッド自動車は、車輪と、前記車輪を駆動する内燃機関と、車速を制御する変速機と、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の回転電機であって、前記内燃機関と前記変速機間に機械的に連結された回転電機と、電力の充放電を行う蓄電手段と、前記蓄電手段と前記回転電機間に接続され、電力の変換を行う電力変換器とを備えることを特徴とする。
(7)請求項10の発明によるハイブリッド自動車は、車輪と、前記車輪を駆動する内燃機関と、車速を制御する変速機と、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の回転電機と、前記内燃機関のクランクプーリと前記回転電機のシャフトに結合されたプーリとが連結された金属ベルトと、電力の充放電を行う蓄電手段と、前記蓄電手段と前記回転電機間に接続され、電力の変換を行う電力変換器とを備えることを特徴とする。
(8)請求項11の発明による電気自動車は、車輪と、前記車輪を駆動する請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の回転電機と、速度を制御する変速機と、電力の充放電を行う蓄電手段と、前記蓄電手段と前記回転電機間に接続され、電力の変換を行う電力変換器とを備えることを特徴とする。
(9)請求項12の発明による磁石材料は、Coおよび希土類元素を含まないMnAl系合金にFeを添加した合金であって、Fe原子の一部をフッ素で置換した構造であることを特徴とする。
(10)請求項13の発明による磁石材料製造方法は、Coおよび希土類元素を含まないMnAl系合金に、MnF(xは1−3)含有アルコール液を塗布し、乾燥後、500℃、1時間熱処理して、この後急冷することにより、Feの格子の一部にフッ素を侵入させることを特徴とする。
(11)請求項14の発明による磁石材料は、Coおよび希土類元素を含まないMnFe系合金であって、Fe原子の一部をフッ素で置換した構造であることを特徴とする。
(12)請求項15の発明による磁石材料製造方法は、Coおよび希土類元素を含まないMnFe系合金に、1wt%のMgF(xは1−3)含有アルコール液を塗布し、アルコールを乾燥により除去することで粉の表面に非晶質が主のMgを含有する酸フッ化物が成長させ、これを300℃、1時間熱処理後、超音波処理により粉末表面の酸フッ化物を除去し、これを大気中にさらすことなくMnF(x=1−3)含有アルコール溶液を塗布後熱処理して、乾燥後、速度10℃/秒以上の冷却速度で急冷することによりFeの格子の一部にフッ素を侵入させることを特徴とする。
(13)請求項16の発明による磁石材料は、MnAl系合金、MnFe系合金、MnSi系合金、MnBi系合金、MnCr系合金、MnMg系合金、MnCu系合金、MnV系合金のいずれか一つの合金の中から選択された磁石材料の格子間にフッ素原子を侵入させて磁束密度を増加させた磁石材料であることを特徴とする。
(14)請求項17の発明による磁石材料は、主相としてSmFe17、ReFe、ReFe、ReFeのいずれか一つの磁性体を含む磁石材料であって、N原子の一部をフッ素で置換した構造であることを特徴とする。
(15)請求項18の発明による磁石材料製造方法は、主相としてSmFe17、ReFe、ReFe、ReFeのいずれか一つの磁性体を含む磁粉に、フッ化アンモニウム粉を混合し、反応容器で400℃で1時間熱処理後、1℃/minで冷却することにより、N原子の一部をフッ素で置換することを特徴とする。
(16)請求項19の発明による磁石材料製造方法は、請求項18の発明による磁石材料製造方法において、前記SmFe17、ReFe、ReFe、ReFeのいずれか一つを含む磁石材料の熱処理後、酸化防止のため真空排気することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、動力発生部と動力伝達部との間に倍力機構を介在させたので、動力発生部を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る磁束可変型回転電機の一構成例を示す図であり、最大有効磁束となるように可動回転子を固定回転子に接近している。
【図2】本発明に係る磁束可変型回転電機の一構成例を示す図であり、最大有効磁束の1/2となるように可動回転子の位置を調節している。
【図3】本発明に係る磁束可変型回転電機の一構成例を示す図であり、最大有効磁束がゼロとなるように可動回転子の位置を調節している。
【図4】本発明に係る磁束可変型回転電機の第1の実施形態における梃子を利用した倍力機構の一例を示す図である。
【図5】本発明に係る磁束可変型回転電機の第2の実施形態における油圧を利用した倍力機構の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る磁束可変型回転電機の第3の実施形態におけるリンクを利用した倍力機構の一例を示す図である。
【図7】本発明に係る磁束可変型回転電機の第4の実施形態における歯車およびボールネジ機構を利用した倍力機構の一例を示す図である。
【図8】第1〜第4の実施形態による回転電機の制御回路の一例を示す図である。
【図9】(a)〜(d)は有効磁束が1.0Φ、0.75Φ、0.5Φ。0.25Φの場合の効率マップMP1〜MP4を示す図である。
【図10】図9のマップMP1〜MP4を合成した合成効率マップGMPを示す図である。
【図11】第1〜第4の実施形態による回転電機を搭載したハイブリッド自動車の駆動装置の構成例を示す図である。
【図12】第1〜第4の実施形態による回転電機を搭載したハイブリッド自動車の駆動装置の他の構成例を示す図である。
【図13】第1〜第4の実施形態による回転電機を搭載した電気自動車の駆動装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
−第1の実施形態−
本発明に係る磁束可変型回転電機の一構成例を図1、図2、図3に基づいて説明する。
図1、図2、図3は本実施形態の回転電機の構成を示す。図1、図2、図3に示すように、円筒状の固定子鉄心1の内周部には、軸方向に連続して開口した溝(以後「スロット」と記す)が周方向に複数形成され、複数のスロットの各々には電機子巻線2(固定子巻線ともいう)が装着されている。
【0011】
固定子鉄心1の外周側にはハウジング3が設けられ、固定子鉄心1とハウジング3とは焼嵌或いは圧入などにより締結される。回転電機の回転軸方向端部にはブラケット3Aが設けられ、固定子鉄心1を覆っている。ブラケット3Aには回転軸4を支承するベアリング3Bも設けられている。
【0012】
固定子鉄心1の内周側には空隙を介して、シャフト4(回転軸ともいう)に固定された第1回転子5と、シャフト4に設けたスプライン4A上を回転しながら回転軸方向に移動可能な第2回転子(可動回転子とも呼ぶ)6とが回転可能に設けられている。なお、シャフト4に設けたスプラインは所定のリード角をもっており、第2回転子6はシャフト4上を回転しつつで移動する。したがって、スプライン4Aのリード角を適切に定めることにより、要求された磁束密度に応じて可動回転子6の移動量を決定し、第1回転子5と第2回転子6の磁極位相を設定することができる。
【0013】
第1回転子5には、極性が回転方向に順次異なるように第1回転子の界磁用磁石である永久磁石5Aが複数埋め込まれている。また、第2回転子6にも、極性が回転方向に順次異なるように、第2回転子の界磁用磁石である永久磁石6Aが複数埋め込まれている。つまり、第1回転子5と第2回転子6は、それぞれに極性の異なる界磁用磁石が回転方向に交互に配置される。シャフト4の中心軸方向の両端部は、軸受装置3Bによって回転可能に支持されている。
【0014】
可動回転子6をシャフト4上で移動する磁束可変装置JMは、動力発生部AC、倍力機構BM、および動力伝達部DDを備えて構成されている。動力発生部ACは、アクチュエータ9と、アクチュエータ9のアーム9Aとを備えている。倍力機構BMは梃子の原理を用いている。この倍力機構BMは、梃子のアーム10と、梃子の支点10Aと、梃子の作用点10Bと、梃子の力点10Cとから構成されている。動力伝達部DDは、可動回転子6の最大可変量を制限するストッパー7と、ストッパー7のアーム7Aと、可動回転子6とアーム7Aとを連結するスラスト軸受8とを備えている。アーム7Aはスラスト軸受8を介して回転する可動回転子6を軸方向に移動する。
【0015】
磁束可変装置JMは、第2回転子6を第1回転子5の反対側から駆動する。すなわち、動力発生部ACであるアクチュエータ9のアーム9Aがアクチュエータ9の軸方向に進退すると、倍力機構BMのアーム10は、支点10Aを回動中心として揺動し、作用点10B、動力伝達部DDのアーム7A、ストッパー7、軸受8を介して第2回転子6を所定位置に移動させる。つまり磁束可変装置JMは、可動回転子6の第1回転子5に対する相対的な回転軸方向位置を可変する。
【0016】
第1の実施形態では、図1〜3に示すように、車両のトルクや回転数の変化に応じて第2回転子6を移動させている。すなわち第1の実施形態では、図1の状態から図3の状態までの任意状態としている。
【0017】
ここで、図1は、最大有効磁束が必要とされる場合を示し、第1回転子5と第2回転子6の永久磁石5A、6Aの磁極の中心が揃うように、磁束可変装置JMにより第2回転子6は第1回転子5に最も接近した位置に移動されている。磁束可変装置JMは、第2回転子6を第1回転子5側とは反対側から支持している。すなわち、アクチュエータ9を制御信号によって制御してアーム9Aを駆動し、倍力機構BMのアーム10、動力伝達部DDのアーム7A、ストッパー7、軸受8を介して第2回転子6を所定位置に移動させる。図1の状態では、第2回転子6の磁極位相は第1回転子5の磁極位相と同じ電気角になる。
【0018】
図2、図3は、要求有効磁束が最大有効磁束よりも小さい時の第1回転子5と第2回転子6との相対位置を示す。可変磁束機構JMは、第2回転子6を、シャフト4上を回転させながら第1回転子5側とは反対側に移動させて第1回転子5から離し、必要な有効磁束が得られる所定位置に位置決めする。図2の状態では、第2回転子6の磁極位相は第1回転子5の磁極位相と90°の電気角になる。
【0019】
図3の状態では、第2回転子6の磁極位相は第1回転子5の磁極位相と180°の電気角になる。磁極が8極の場合では、第2回転子6の磁極位相は第1回転子5の磁極位相との最大機械角は45°になる。つまり、界磁用の有効磁束量は0となり、誘起電圧を0にすることができる。この有効磁束0の特性は回転電機の過電圧からの保護機能に利用できる。
【0020】
第1の実施形態の回転電機では、図1、図2、図3に示すように、動力発生部ACと動力伝達部DDの間に力を倍増する梃子の原理を用いた倍力機構BMが設けられている。倍力機構BMは、動力発生部ACで発生した力を増幅し、動力伝達部DDを介して可動回転子6を大きな駆動力で駆動する。したがって、動力発生部ACを大型化することなく、大負荷や高速回転時に可動回転子6を所望の位置に移動することができる。その結果、回転電機の有効磁束量を運転状態に応じて変えることができ、広い運転範囲での高効率運転が可能となる磁束可変型回転電機を提供できる。磁束可変型回転電機と同等の性能を磁束固定型回転電機で得る場合、回転電機の出力軸を変速装置で変速する必要があり、装置が大型化する。磁束可変型回転電機自体は磁束固定型回転電機よりも大きくなるが、変速装置が不要となる分、全体の大きさは小さくできる。さらに加えて、倍力機構BMにより動力発生部を含めた回転電機のさらなる小型化が可能である。
【0021】
第1の実施形態の回転電機では、磁極を8極、第2回転子6が相対回転可能に装着されているスプライン4Aのリードを24mm(1周回転で軸方向に24mm移動)とした場合、有効磁束を0Φ〜1.0Φの範囲内で変化させるためには、可動回転子6の軸長方向の移動距離が3mmとなる。回転電機の運転範囲や運転点によって有効磁束を0.5Φ〜1.0Φの範囲内で変化させるためには、可動回転子6の移動距離は1.5mmになる。
さらに、同極性磁石の磁極中心が揃った状態(最大有効磁束量)から電気角90°までは、固定回転子5と可動回転子6の間で、同極性磁石の排斥力が異極性磁石間の吸引力より大きく、一方電気角90°から180°まで異極性磁石の吸引力が同極性磁石の排斥力より大きい。従って、有効磁束の可変範囲が上記のように限定されると、可動回転子6の異なる極性磁石間の吸引力が小さくなり、容量の小さい動力発生部ACを採用することが可能となる。その結果、磁束可変型回転電機のさらなる小型化が期待できる。
【0022】
第1の実施形態では、回転子の磁極が8極について説明したが、高速回転対応の回転電機(高速回転用回転電機)で界磁用永久磁石の極数がより少ない場合においては、有効磁束の範囲を限定することにより、可動回転子6の軸方向移動距離をさらに短縮することができる。
例えば、回転子磁極を4極にすると、有効磁束を0Φ〜1.0Φに変化させるのに移動距離が最大6mmとなる。有効磁束0.5Φ〜1.0Φ範囲内に限定すると移動距離は3mmになる。磁極が8極の回転電機に比べて、スプラインのリードを小さくすることができ、動力発生部ACのアクチュエータ9が小型化でき、もって、回転電機の小型化が期待できる。
【0023】
なお、上述した有効磁束は、回転電機の回転トルクに寄与する磁束量である。この磁束量は、回転電機の回転トルクと固定子の巻線に流れる電流から求められる。
【0024】
図4は、第1の実施形態の倍力機構BMの梃子機構を示す図である。梃子の原理により、動力伝達部DDのアーム7Aと動力発生部のアーム9Aとを平行にした場合、式(1)が得られる。
F1×L1=F2×L2-----------------------(1)
ここで、F1は第2回転子6を駆動するのに必要な力、F2は動力発生部ACから発生する力、L1は支点10Aから作用点10Bまでの距離、L2は支点10Aから力点10Cまでの距離である。F1を一定とすると、L1/L2を小さくすればF2を小さくすることができる。つまり、L1を短くするか、L2を長くすることによりF2を小さくできる。例えば、L1/L2を1/5(L2はL1の5倍)とすると、動力発生部ACの出力F2は第2回転子の駆動力F1の1/5で済む。動力発生部ACで発生する力F2が小さいと、動力発生部ACの出力パワーを小さくでき、その結果、動力発生部ACを小型化できる。
【0025】
図4において、アクチュエータアーム9Aによりアーム10を支点10Aを中心として揺動するようにしたが、アクチュエータ9の代わりに手動でアーム10を揺動するように構成してもよい。つまり、マニュアルクラッチのような操作によって、手動で段階的に有効磁束量を調整してもよい。
【0026】
上記第1の実施形態では、二分割回転子を有する回転電機について説明したが、三分割以上に分割した回転子を有する回転電機にも本発明を適用できる。つまり、この回転電機は、固定子鉄心に空隙を介して回転可能に配設された三つ以上の回転子であって、それぞれに極性の異なる界磁用磁石が回転方向に交互に配置された回転子と、分割された個々の分割回転子の相対的な回転軸方向位置を可変する磁束可変装置とを備える。この磁束可変装置は、第1の実施形態で説明したように、動力発生部と、この動力発生部で発生した力を可動回転子に伝達する動力伝達部と、動力発生部と動力伝達部の間に介在し、動力発生部で発生した力を倍増する倍力機構とを有する。3分割回転子を有する回転電機でも、図1、図2、図3に記載した回転子が二分割された構成と同様の効果を達成できる。
さらに、回転子多分割により、回転速度の増加に応じて可動回転子の個数が少なくなるようにできる。例えば、第1および第2の回転子に加えて第3の回転子を備える3分割回転子の場合、回転速度が小さい時には、第2の回転子と第3の回転子を一緒に移動し、回転数が高くなった時には、第3の回転子を第2の回転子から離して移動させることができる。回転子を移動するのに必要な力は回転数が高くなるほど大きくなる。このようにすると、低回転数から高回転数まで、有効磁束を減らす時に可動回転子から生じる回転軸方向の力を小さくできる。従って、さらなる動力発生部の小容量化、小型化が可能となる。その結果、本発明の回転電機の効率がさらに向上できる。
【0027】
以上、第1の実施形態によれば、上述した通り、梃子の原理を用いた倍力機構によって、動力発生部で発生した力を倍力して第2回転子を駆動するようにしたので、動力発生部をより小容量かつ小型にできる。さらに、低出力のアクチュエータを使用することができるので、小型の磁束可変型回転電機を使用して、大負荷や高速回転時における回転電機の有効磁束量を運転状態に応じて変えられ、広い運転範囲での高効率運転が可能となる。
【0028】
−第2の実施形態−
第2の実施形態は、第1の実施形態の梃子による倍力機構に代えて、油圧式倍力機構を用いたものである。倍力機構以外の部分については第1の実施形態と同様であり、説明は省略する。以下、第1の実施形態の説明と同じ部品には同符号を付してその説明を省略し、異なる部品のみ説明する。
【0029】
図5は、油圧を利用した倍力機構の例を示す。図5に示すように、油圧式倍力機構BMで倍力された力F1は、式(2)から計算するこいとができる。
F1×S2=F2×S1-----------------------(2)
【0030】
F1は第2回転子6の駆動力、F2は動力発生部から発生する力、S1はピストン11Aの受圧面積、S2はピストン11Bの受圧面積である。駆動力F1を一定とするとき、S2/S1を小さくすれば力F2を小さくすることができる。つまり、S2を小さくするか、またはS1を大きくすることにより、増幅倍率を大きくできる。例えば、S2/S1を1/5(S1はS2の5倍)とすると、動力発生部から発生する力F1は可動回転子駆動力F2の1/5で済む。
【0031】
−第3の実施形態−
第3の実施形態は、第1の実施形態の梃子による倍力機構に代えて、リンク機構を使用した倍力機構を回転電機に適用したものである。倍力機構以外の部分については第1の実施形態と同様であり、説明は省略する。以下、第1の実施形態の説明と同じ部品には同符号を付してその説明を省略し、異なる部品のみ説明する。
【0032】
図6に示す倍力機構BMは、第1の実施形態の梃子機構の代わりに、リンクによる倍力機構を用いたものであり、可動回転子6の駆動力F2は式(3)に示される。
F1×D1=F2×D2-----------------------(3)
【0033】
ここで、F1は第2回転子の駆動力、F2は動力発生部から発生する力、D1は支点13Dと13C間の距離、D2は支点13Aと13B間の距離である。F1を一定とすると、D1/D2を小さくすればより大きな駆動力を得ることができる。D1を短くするか、またはD2を長くすればよい。例えば、D1/D2を1/5(D2はD1の5倍)にすると、動力発生部ACで発生する力F2は、可動回転子駆動力F1の1/5で済む。
【0034】
−第4の実施形態−
本実施形態は、第1の実施形態の梃子による倍力機構に代えて、歯車とボールネジ機構を用いた倍力機構を回転電機に適用したものである。倍力機構以外の部分については第1の実施形態と同様であり、説明は省略する。以下、第1の実施形態の説明と同じ部品には同符号を付してその説明を省略し、異なる部品のみ説明する。
【0035】
図7は、歯車とボールネジ機構を利用した倍力機構の例を示す。第1の実施形態の梃子式倍力機構では、動力発生部ACはアーム9Aを直動させるタイプであったが、第4の実施形態の倍力機構では、回転式のステッピングモータを用いる。図7では、式(4)が成立する。
F2∝F1×(R2×R3/R1)-----------------------(4)
【0036】
ここで、F1は第2回転子6の駆動力、F2は動力発生部から発生する力、R1は第一歯車15の半径、R2は第二歯車16の半径、R3はボールネジ17の半径である。F1を一定とすると、(R2×R3/R1)を小さくすればF2を小さくすることができる。つまり、R2またはR3を小さくするか、またはR1を大きくすればよい。
【0037】
−第1〜第4の実施形態に用いる制御回路−
第1〜第4の実施形態の磁束可変装置の制御回路の一例について簡単に説明する。
図8は回転電機の四種類の効率マップMP1〜MP4と、これらのマップMPI〜MP4を合成した合成マップGMPを示す。効率マップMP1〜MP4は、第1の実施形態において、第1回転子5に対する第2回転子6の磁極位相(電気角)をそれぞれ0°、45°、90°、135°とした場合の回転数−トルク曲線として示されている。ここで、磁極位相が0°のときの有効磁束を1.0Φとしたとき、磁極位相が45°、90°、135°の有効磁束を0.75Φ,0.5Φ,0.25Φと表記する。
【0038】
図9(a)〜(d)は、効率マップMP1〜MP4の回転数−トルク曲線内の運転効率分布を示し、これらの4つの効率マップMP1〜MP4を合成すると、図10の合成効率マップGMPが得られる。なお、磁極位相0°、45°、90°、135°の効率マップの間、たとえば磁極位相60°や120°の効率マップでも、磁極位相に対して連続的に運転効率分布が変化しているが、この実施形態では、四つの効率マップから図10および図8の下部に示す合成効率マップGMPを作成する。もちろん、磁極位相0°〜135°の間を40°ピッチよりも小さいピッチで分割し、よりきめ細かく合成効率マップを作成してもよい。
なお、有効磁束ごとの運転効率マップMP1〜MP4は予め制御回路の記憶装置に記憶しておき、これらの運転効率マップMP1〜MP4を合成した合成マップGMPも記憶装置に記憶しておく。
【0039】
図10の合成効率マップGMPの上部に示す有効磁束範囲は、1.0Φの第1範囲、1.0〜0.75Φの第2範囲、0.75〜0.5Φの第3範囲、0.5〜0.25Φの第4範囲、0.25〜0.0Φの第5範囲である。なお、図8の下部の合成効率マップGMPでは有効磁束範囲を省略している。
【0040】
合成効率マップの作成手順を説明する。
それぞれX軸(回転電機回転数)と、Y軸(回転電機トルク)とそれぞれの図中の階段状の曲線とにより囲まれた領域で、有効磁束を0〜Φに変化させると、この領域中央やや左よりの位置に(図示せず)、それぞれの効率マップで最も効率のよい条件が存在する。すなわちこれらの効率マップでこの効率の良い場所を効率の最高点として、回転電機効率の分布図が生成される(図9)。さらに、有効磁束を0〜Φに変化させたときのこれらの結果から、各有効磁束中の最大効率点を取り出し(図8中央)、合成した結果を磁束可変型回転電機の効率マップとして図8下部中央および図10に示す。
【0041】
たとえば電気自動車に第1の実施形態の回転電機を適用した場合について説明する。電気自動車の運転状況に応じて、電気自動車のモータコントローラから要求トルクと要求回転数が指令されると、合成有効マップGMPを参照して、そのトルクと回転数における運転点が含まれる有効磁束範囲を決定する。決定された有効磁束範囲で代表する有効磁束がたとえば1.0Φであれば、可動回転子6の位置を、有効磁束1.0Φに対応する位置に制御する。すなわち、アクチュエータ9へ制御信号を送り、梃子アーム10により可動回転子6を移動する。
【0042】
上記のようにして決定された最適な有効磁束に基づいて、この有効磁束に対応する磁極位相となるように、磁束可変装置JMが制御され、第2回転子6が倍力機構BMにより移動して最適な有効磁束が実現される。またこの有効磁束において要求トルクが得られるように回転電機がインバータでベクトル制御される。
【0043】
本発明では有効磁束が磁束可変装置で制御されるため、高回転における誘導起電力を弱めるための弱め界磁制御が不要である。従って、弱め界磁制御のための励磁電流の制御も不要となり、回転電機のベクトル制御も簡単になる。
【0044】
なお、本実施形態では、有効磁束を、図8に示した合成効率マップGMPから算出するようにしたが、図9(a)〜(d)の合成前の効率マップに基づいて有効磁束を決定してもよい。すなわち、要求トルクと要求回転数により各マップの運転効率を決定し、最高の運転効率を示したマップの有効磁束が、回転電機の運転状況に適した有効磁束であると決定する。そして、有効磁束が得られる位置へ可動回転子6を移動するように、アクチュエータ9に制御信号を印加するようにしてもよい。あるいは、要求トルクと要求回転数を用いて数式や近似式から有効磁束を計算してもよい。
【0045】
−ハイブリッド自動車への適用例その1−
第1〜第4の実施形態の回転電機をハイブリッド自動車の駆動装置に適用した例について説明する。 図11はハイブリッド自動車の駆動装置の配置構成を示す。ハイブリッド自動車は、車輪と、その車輪を駆動する駆動装置とを有する。駆動装置は、車両の駆動力を発生する、つまり車輪を駆動する内燃機関であるエンジン18と、車両の速度を制御する変速機であるトランスミッション20との間に回転電機19(永久磁石型同期回転電機)を機械的に連結して構成されている。この回転電機19は、上述した第1から第4のいずれかの実施形態の回転電機である。
【0046】
エンジン18と回転電機19との連結には、エンジン18の出力軸と回転電機19の回転軸を直結する方法、或いは遊星歯車減速機構などで構成された変速を介して連結する方法が一般的に採られている。回転電機19は、電動機或いは発電機として動作するので、回転電機19は、電力変換器であるインバータ21を介して電力の充放電を行う蓄電手段であるバッテリ22に電気的に接続されている。つまり、電力変換器であるインバータ21は、蓄電手段であるバッテリ22と回転電機19間に接続され、電力の変換を行う。
【0047】
回転電機19を電動機として用いる場合は、バッテリ22から出力された直流電力をインバータ21で交流電力に変換して回転電機19に供給する。回転電機19の駆動力は、エンジン18の始動用或いはアシスト用として用いられる。
【0048】
回転電機19を発電機として用いる場合は、回転電機19によって発電された交流電力をインバータ21(コンバータ機能)で直流電力に変換してバッテリ22に供給する。これにより、変換された直流電力はバッテリ22に蓄電される。
【0049】
従来の永久磁石同期回転電機は、回転数の上昇と共に磁石による誘起電力が大きくなるため、バッテリ、インバータの制約により高回転領域で駆動するのが困難であった。高回転領域で回転電機を駆動する方式として、電流により永久磁石の界磁用磁束を等価的に弱める弱め界磁制御があるが、トルクに寄与しない電流を流すため効率の低下を招いていた。
【0050】
しかしながら、上述した第1〜第4の実施形態のいずれかの磁束可変型回転電機では、要求回転数、要求トルクに応じて機械的に最適な界磁用有効磁束を発生させることができる。従って、誘起電力によるバッテリやインバータの制約が低減でき、さらにトルクに寄与しない電流を流さないため、効率を向上させることができる。
【0051】
第1〜第4の実施形態による回転電機では、動力発生部で発生した力をシンプルな倍力機構によって倍力して可動回転子を移動させるので、小型で出力の小さいアクチュエータ9を使用して可動回転子6の位置制御が可能となる。その結果、本発明の磁束可変型回転電機は、広い回転速度範囲での高効率運転ができるので、変速ギア段の低減、あるいは、変速装置を省略することが可能となり、駆動装置全体の小型化を図ることもできる。
【0052】
−ハイブリッド自動車への適用例その2−
第1〜第4の実施形態で説明したいずれかの回転電機をハイブリッド自動車の駆動装置に適用した他の例について説明する。
【0053】
図12は、本実施形態での自動車の駆動装置の配置構成を示す。基本的には、図11と同じ構成であるが、回転電機19がエンジン18とトランスミッション20の間ではなく、エンジン18および回転電機19が並列に配置されている。また、図12の駆動装置では、エンジン18のクランクプーリ23と、回転電機19のシャフトに結合されたプーリ25とが金属ベルト24で連結されている
【0054】
また、図12のハイブリッド自動車の駆動装置においては、回転電機19は電動機単体、発電機単体、もしくはモータ・ジェネレータのどの形態で用いてもよい。図12の適用例ではクランクプーリ23、金属ベルト24、プーリ25によって、エンジン18と回転電機19の間にある速度比をもった変速機構を構成することができる。
【0055】
例えば、クランクプーリ23とプーリ24の半径比を2:1にすることにより、回転電機19をエンジン18の2倍の速度で回転させることができ、エンジン18の始動時、回転電機19のトルクをエンジン18の始動時に必要なトルクの1/2にすることができる。従って、回転電機19を小型化することができる。
【0056】
−ハイブリッド自動車への適用例その3,その4−
前記第1〜第4の実施形態のいずれかの回転電機が用いられるハイブリッド自動車の他の2例を簡単に説明する。
【0057】
−第3の適用例−
第3の適用例による自動車は、車輪を駆動する内燃機関と、電力の充放電を行うバッテリと、モータ・ジェネレータと、モータ・ジェネレータに供給される電力及びモータ・ジェネレータから供給された電力を制御する電力変換装置と、電力変換装置を制御する制御装置とを有する。このモータ・ジェネレータが上述した第1〜第4の実施形態の回転電機のいずれかである。モータ・ジェネレータは、内燃機関のクランク軸と機械的に連結され、バッテリから供給された電力によって駆動されて内燃機関を駆動すると共に、内燃機関からの動力によって駆動されて発電し、バッテリにその発電電力を供給する。この自動車は、内燃機関で車輪を駆動する通常の自動車、或いは内燃機関とモータ・ジェネレータで車輪を駆動するハイブリッド自動車である。
【0058】
−第4の適用例−
第4の適用例によるハイブリッド自動車は、車輪を駆動する内燃機関と、電力の充放電を行うバッテリと、モータ・ジェネレータと、モータ・ジェネレータに供給された電力及びモータ・ジェネレータから供給された電力を制御する電力変換装置と、電力変換装置を制御する制御装置とを有する。モータ・ジェネレータは、バッテリから供給された電力によって駆動されて車輪を駆動すると共に、車輪からの駆動力を受けて発電し、バッテリにその発電力を供給する。このモータ・ジェネレータが第1〜第4の実施形態の回転電機のいずれかである。
【0059】
−電気自動車への適用例−
第1〜第4の実施形態で説明したいずれかの回転電機を電気自動車の駆動装置に適用した例について説明する。
図13は、第1〜第4の実施形態の回転電機が搭載される電気自動車の駆動装置の配置構成を示す。この適用例の電気自動車は、電力の充放電を行うバッテリ22と、モータ・ジェネレータ19と、モータ・ジェネレータ19に供給される電力及びモータ・ジェネレータから供給された電力を制御する電力変換装置21と、電力変換装置21を制御する制御装置とを有する。モータ・ジェネレータ19は、バッテリ22から供給された電力によって駆動されて車輪を駆動すると共に、車輪からの駆動力を受けて発電し、バッテリ22にその発電電力を供給する。このモータ・ジェネレータ19が第1〜第4の実施形態の回転電機で構成されている。
【0060】
−洗濯機への適用例−
本適用例では、第1〜第4の実施形態で説明したいずれかの回転電機を洗濯機の電動機に適用した例について説明する。
【0061】
洗濯機の従来技術で、電動機のトルクはプーリを介してベルトとギアによりトルクを伝達する場合、ベルトとギアの摺動、打撃音等の騒音が大きい問題がある。また、電動機のトルクを直接回転体や脱水槽に伝達するためのダイレクトドライブ方式では、電気的な弱め界磁制御技術により高速運転領域を広げることは、弱め界磁電流による発熱や効率低下などにより限界がある。前記ダイレクトドライブ方式は減速機構がないために、低速高トルクの洗いや濯ぎ行程と高速大出力の脱水行程の広範囲速度領域を賄う電動機の体格は大型になる。
【0062】
上記電動機としては本発明の磁束可変型回転電機を用いる場合、洗いもしくは濯ぎ行程で、電動機の分割された回転子の同極性の中心が揃えるようにすれば、固定子磁極と対向する永久磁石による有効磁束量を多くして、高トルク特性が得られる。一方、脱水行程のような高速回転領域において運転する時は、相対的に回転できる回転子を同極性磁極の中心がずれる方向に回転させれば、固定子磁極と対向する永久磁石による有効磁束量を少なくすることになり、言い換えると機械的な弱め界磁効果があり、高回転領域において定出力特性が得られる。
【0063】
−風力発電システムへの適用−
本適用例は、第1〜第4の実施形態で説明したいずれかの回転電機を風力発電システムの発電機に適用した例について説明する。
【0064】
従来の風力発電システムの発電機において、低速領域で高トルクが得られるが、回転数の可変範囲が狭いために高速領域の運転は困難であった。そこで、電気的な弱め界磁制御技術により高速運転領域を広げることが考えられる。また、風力発電システムの発電機は広い速度範囲で所定の出力を確保するためにギア機構やピッチモータ等を備えて、さまざまな風速条件に対応できるようにした。発電機の各相巻線を主軸の回転速度に応じて巻線切り替え装置を用いて、低速用巻線と高速用巻線に切り替えて駆動するようにしているものもある。電気的な弱め界磁制御により高速運転領域を広げることは、弱め界磁電流による発熱や効率低下などにより限界がある。各相巻線を主軸の回転速度に応じて巻線切り替え装置を用いた場合は、発電機本体からのリード線の数が多く、さらに巻線切り替え制御装置とその構造が複雑になる問題などがある。
【0065】
分割式回転子を有する回転電機を用いた風力発電システムの発電機が風力の広い範囲で高効率を行う実施例として、分割された回転子は以下の状態で運転されればよい。
【0066】
風が弱い低速回転領域においては、回転子の同極性磁極の中心が揃えるようにして、固定子磁極と対向する永久磁石による有効磁束量を多くし、高出力特性が得られるようにする。一方、風が強い高速回転領域においては、相対的に回転できる回転子を同極性磁極の中心がずれる方向に回転させれば、固定子磁極と対向する永久磁石による有効磁束量を少なくすることになり、言い換えると機械的な弱め界磁効果があり、高回転領域において定出力特性がえられる。
【0067】
本実施例によれば、機械的に永久磁石の界磁用有効磁束量を可変できるという効果がある。特に、風力発電システムの主軸発電機の機械的な弱め界磁が簡単にでき、広範囲可変速制御には大きな効果がある。発電機構造が簡単になることにより、発電機が軽量になるため、タワーの構造が簡単になるという効果がある。
【0068】
−輸送車両への適用−
本適用例では、第1〜第4の実施形態で説明したいずれかの回転電機を輸送車両の電動機・発電機に適用した例について説明する。
【0069】
永久磁石同期電動機は誘導電動機に比べ高効率であり、小型軽量化に有利である。また、高効率であることは消費電力量やCO2排出量の削減も期待できる。輸送車両の駆動用電動機は小型軽量であることが強く求められるため、永久磁石同期電動機は有力な候補である。また、電動機だけでなくインバータも含めた主回路全体の軽量化が求められる。主変換装置保護の観点から、永久磁石による逆誘起電圧は、そのピーク値がすくなくとも直流中間回路電圧の過電圧保護動作設定値を超えないように設計すべきである。しかし、そのように電動機を設計した場合、必要とするインバータ容量を増大させてしまう。
【0070】
輸送車両の電動機として本発明による磁束可変型回転電機を用いる場合、低速大トルクで、電動機の分割された回転子の同極性の中心が揃えるようにすれば、固定子磁極と対向する永久磁石による有効磁束量を多くして、高トルク特性が得られる。一方、高速回転領域において運転する時は、相対的に回転できる回転子を同極性磁極の中心がずれる方向に回転させれば、固定子磁極と対向する永久磁石による有効磁束量を少なくすることになり、言い換えると機械的な弱め界磁効果があり、高回転領域において定出力特性がえられる。
【0071】
この適用例によれば、機械的に永久磁石の界磁用有効磁束量を可変できるという効果がある。また、輸送車両の発電機の機械的な弱め界磁が簡単にでき、広範囲可変速制御には大きな効果がある。さらに、機械的に有効磁束を可変することにより、逆誘起電圧を抑えることができる。その結果、インバータの容量を低減することができる。従って、インバータのコスト低減や駆動装置全体の小型化を図ることもできる。
【0072】
−磁石材料の実施例−
次に、第1〜第4の実施形態による回転電機に適用した磁石材料について説明する。
【0073】
従来の磁性体では、高保磁力及び高残留磁束密度を確保するために希土類元素を添加した希土類元素含有鉄硼素化合物や希土類元素含有鉄窒素化合物が磁石材料として製造されており、回転電機を始めとする各種磁気回路に使用されている(特許文献3、特許文献4)。
【0074】
【特許文献3】特開2008−63641
【特許文献4】特開2008−42098
【0075】
従来の磁性体の課題は希少でかつ高価な元素である希土類元素を使用するため資源保護の観点から今後も価格が高騰する恐れがある.また希土類元素は酸化し易いため腐食し易く、さらに加工性が劣るという欠点がある。このようなことから希土類元素を使用しない磁石材料が望まれている。
【0076】
本発明ではこれを解決するため希土類元素を使用しないMnAl系合金に着目し、さらに磁気モーメントを高くして高残留磁束密度を得るためにフッ素を導入している。
本発明の効果は希少元素である希土類元素を使用せず、従来の希土類磁石と同等の磁気特性を有する磁石材料がMnAlF系合金で得られ回転機などの磁気回路に適用できることから、低コストでリサイクルし易い低コスト回転機を製造できる。
【0077】
−磁石材料の第1の実施例−
第1の実施例の磁石材料はMn45Al44Feで示されるフッ素を含有するMnAl合金系磁石である。この磁石材料は次のようにして作製した。
Mn51Al49合金(原子比)を真空溶解し、粉砕することにより粒径10μmの粉末を作製した。この粉砕粉に1wt%のMnF(xは1−3)含有アルコール液を塗布し、アルコールを乾燥により除去することで、粉の表面に非晶質が主のMnを含有するフッ化物が成長する。これを500℃、1時間熱処理することにより、フッ素を含有するMnAl規則相が成長する。
【0078】
この規則相はMn50−55AL46−491−5の組成であり、一部のフッ素はAlとフッ化物あるいは酸フッ化物を形成する。この規則合金の室温における磁気特性は、残留磁束密度が0.5T、保磁力7kOeである。Mnが54%以上では保磁力が急激に減少する。残留磁束密度を増加させるために上記Mn51Al49合金に鉄(Fe)を9%添加したMn46Al45Fe合金を作製し、これを粉砕して粒径10μmの粉砕粉を得た。この粉の表面にMnF(xは1−3)含有アルコール液を塗布して上記と同様の熱処理後急冷することにより、Feの格子の一部にフッ素が侵入する。フッ素原子が侵入したFeは磁気モーメントが増加するため、Feを含有した規則相の磁気モーメントが増加する。
【0079】
作製したMn45Al44Feには粒界近傍でのフッ素濃度が粒内の2−10倍のAl含有フッ化物が成長し、粒界3重点の一部のフッ化物は酸素を含有した酸フッ化物として成長する。これらの規則相のキュリー温度は450℃であり、Feを9%添加したMn45Al44Feの残留磁束密度は0.6T、保磁力7kOeとなった。
【0080】
このような磁石材料は希土類元素やCoなどのレアメタルを含有しないため、磁石材料の低コスト化が可能である。MnAl合金系において、AlをCuに置換しても上記のような鉄へのフッ素侵入による磁束密度の増加が確認できる。このようなフッ素を含有するMnAl系磁石は、ボンド磁石あるいは熱間成形磁石としてモータの回転子の磁石位置に挿入し着磁して使用できる。
【0081】
−磁石材料の第2の実施例−
第2の実施例の磁石材料はMn45Al43Feで示されるフッ素を含有するMnAl合金系磁石である。この磁石材料は次のようにして作製した。
Mn50Al50合金を真空溶解し、粉砕することにより粒径5μmの粉末を作製した。この粉砕粉に1wt%のMgF(xは1−3)含有アルコール液を塗布し、アルコールを乾燥により除去することで粉の表面に非晶質が主のMgを含有する酸フッ化物が成長する。これを300℃、1時間熱処理後、超音波処理により粉末表面の酸フッ化物を除去する。この粉末を大気中にさらすことなくMnF(x=1−3)含有アルコール溶液を塗布後熱処理することで、フッ素を含有するMnAl規則相が成長する。
【0082】
この規則相はMn51Al47の組成であり、一部のフッ素はAlとフッ化物あるいは酸フッ化物を形成し、一部のフッ素はMnやAl原子間に配列する。この規則合金の室温における磁気特性は、残留磁束密度が0.7T、保磁力11kOeである。残留磁束密度を増加させるために上記Mn51Al47合金に鉄(Fe)を10%添加したMn46Al44Fe10合金を作製し、これを粉砕して粒径5μmの粉砕粉を得た。この粉の表面にMgF(xは1−3)を塗布して酸化物を超音波処理により除去後、MnF(xは1−3)含有アルコール液を塗布して500℃、2時間の熱処理後、速度10℃/秒以上の冷却速度で急冷することによりFeの格子の一部にフッ素が侵入する。フッ素原子が侵入したFeは磁気モーメントが増加するため、Feを含有した規則相の磁気モーメントが増加する。
【0083】
作製したMn45Al43Feには粒界近傍でのフッ素濃度が粒内の10倍以上のフッ素濃度のフッ化物が成長し、粒界3重点の一部のフッ化物は酸素を含有した酸フッ化物として成長する。これらの規則相のキュリー温度は490℃であり、Feを約10%添加したMn45Al43Feの残留磁束密度は0.9T、保磁力11kOeとなった。残留磁束密度の増加は、FeやMn原子間に侵入する電気陰性度の大きなフッ素原子による状態密度の変化によると考えられる。侵入したフッ素原子により、Mn原子間隔が1〜15%伸びることにより、一部のMn原子のスピンの強磁性結合が強くなり磁化の増加に寄与する。
【0084】
このような磁石材料は希土類元素やCoなどのレアメタルを含有しないため、磁石材料の低コスト化が可能である。上記のようなMnAl合金系において、AlをCuなどの面心立方構造を有する遷移金属元素で置換し、フッ素の一部がC、N、B、Oであっても上記のような鉄へのフッ素侵入による磁束密度の増加が確認できる。このようなフッ素によるMnやFe格子間侵入による磁気モーメントの増加は、MnAl系に限らず他の合金系(MnFe系、MnSi系、MnBi系)で確認でき、規則化助長元素として他の添加元素を含有しても良い。
【0085】
またフッ素原子がMnAl合金系の格子間に侵入することでAl含有量を低減することで磁化が増加でき、フッ素5%、Al濃度1〜10%においてMnを強磁性にすることにより1.2Tの残留磁束密度、保磁力15kOeが得られる。このようなフッ素原子の侵入による磁気モーメントの増加は、フッ化物溶液処理だけでなく、フッ素含有ガスによる熱処理やフッ素含有ターゲットを用いた薄膜形成、フッ化物ナノ粒子を使用したメカニカルアロイニング及びフッ素のイオン注入によっても実現できる。
【0086】
−磁石材料の第3の実施例−
第3の実施例の磁石材料はMn73Al23Feで示されるフッ素を含有するMnAl合金系磁石である。この磁石材料は次のようにして作製した。
Mn75Al25合金を真空溶解し、粉砕することにより粒径5μmの粉末を作製した。この粉砕粉に1wt%のMgF(xは1−3)含有アルコール液を塗布し、アルコールを乾燥により除去することで粉の表面に非晶質が主のMgおよび炭素を含有する酸フッ化物が成長する。これを300℃、1時間熱処理後、超音波処理により粉末表面の酸フッ化物を除去する。この粉末を大気中にさらすことなくMnF(x=1−3)含有アルコール溶液を塗布後熱処理することで、フッ素を含有する面心立方格子のMnAl系規則相が成長する。
【0087】
この規則相はMn74Al24の組成であり、一部のフッ素はAlとフッ化物あるいは酸フッ化物を形成し、一部のフッ素はMnやAl原子間に配列する。この規則合金の室温における磁気特性は、残留磁束密度が0.9T、保磁力13kOeである。残留磁束密度をさらに増加させるために上記Mn74Al24合金に鉄(Fe)を添加したMn73Al23Fe合金を作製し、これを粉砕して粒径5μmの粉砕粉を得た。この粉の表面にMgF(xは1−3)を塗布して酸化物を超音波処理により除去後、MnF(xは1−3)含有アルコール液を塗布して500℃、2時間の熱処理後、速度20℃/秒以上(300℃よりも高温域)の冷却速度で急冷することによりFeの格子の一部にフッ素が侵入する。
【0088】
侵入したフッ素原子により鉄原子の格子は局所的に鉄原子間の間隔が伸びることにより、歪みが発生し、結晶構造は体心立方構造から体心正方構造に変化する。フッ素原子の一部はMnやAlの原子位置と置換する。フッ素原子が侵入したFeは磁気モーメントが増加するため、Feを含有した規則相の磁気モーメントが増加する。
【0089】
作製したMn73Al23Feには粒界近傍でのフッ素濃度が粒内の10倍以上のフッ素濃度のフッ化物あるいは酸フッ化物が成長し、粒界3重点の一部のフッ化物はAl及び酸素を含有した酸フッ化物として成長する。これらの規則相のキュリー温度は480℃であり、Feを添加したMn73Al23Feの残留磁束密度は1.2T、保磁力15kOeとなった。残留磁束密度の増加は、FeやMn原子間に侵入する電気陰性度の大きなフッ素原子による状態密度の変化及び置換位置に入る高電気陰性度のフッ素原子による原子周囲の歪及び電子分布の対称性の異方化によると考えられる。
【0090】
侵入したフッ素原子により、Mn原子間隔が1〜15%伸びることにより、一部のMn原子のスピンの強磁性結合が強くなり磁化の増加に寄与する。
【0091】
このような磁石材料は希土類元素やCoなどのレアメタルを含有せず、地球埋蔵量が希土類元素の値を超えるため、磁石材料の低コスト化及び資源保護向上の両立が可能である。上記のようなMnAl合金系において、AlをCu、Mg、Siなどの遷移金属元素あるいは半金属元素で置換し、フッ素の一部がC、N、B、Oであっても上記のような鉄へのフッ素侵入による磁束密度の増加が確認できる。このようなフッ素によるMnやFe格子間侵入による磁気モーメントの増加は、MnAl系に限らず他の合金系(MnFe系、MnSi系、MnBi系、MnCr系、MnMg系、MnCu系、MnV系)で確認でき、規則化助長元素として他の添加元素を含有しても良い。
【0092】
またフッ素原子がMnAl合金系の格子間に侵入することでAl含有量を低減することで磁化が増加でき、フッ素3%、Al濃度2〜20%において一部のMn原子を強磁性にすることにより1.4Tの残留磁束密度、保磁力17kOeが得られる。このようなフッ素原子の侵入による磁気モーメントの増加は、フッ化物溶液処理だけでなく、フッ素含有ガスによる熱処理やフッ素含有ターゲットを用いたスパッタリングによる薄膜形成、フッ化物ナノ粒子を使用したメカニカルアロイニング及びフッ素のイオン注入によっても実現でき、全てのホイスラー(Heusler)合金にフッ素を0.1から20原子%添加して一部のフッ素原子が侵入位置あるいは置換位置に配列し格子歪み(0.1%から10%)を導入することで磁気モーメントが増加し、磁石性能を向上できる。
【0093】
−磁石材料の第4の実施例−
本実施例では、本発明で提案した回転電機に適用した他の磁石材料について説明する。
上記の磁石材料の第1から第3の実施例では、希土類元素を含まない磁性体について説明した。本発明による、Fe原子をフッ素で置換することによる磁石性能の向上は、希土類元素を含む磁性体にも適用できる。以下にこの実施例を説明する。
【0094】
粒径1〜10μmのSmFe17磁粉100gにフッ化アンモニウム粉100gを混合する。この混合粉を反応容器に挿入し外部ヒータで加熱する。加熱によりフッ化アンモニウムが熱分解し、NHやフッ素含有ガスが発生する。このフッ素含有ガスにより磁粉内のN原子の一部がF(フッ素)で置換される。加熱温度400℃でNの一部がFで置換され、SmFe17(N,F)が成長する。熱処理後の冷却速度を1℃/minとすることにより、NとF原子の一部は規則配列する。反応終了後、酸化防止のためにとりだす前に真空排気し、更に不活性ガスでパージする。尚、前記の熱処理後の冷却はこの真空排気した状態で行う。FがNと置換することにより、化合物の格子体積が膨張し、Feの磁気モーメントが増加する。また、一部のNあるいはF原子は反応前の侵入位置とは異なる位置に配置する。このようなSmFe17(N,F)を含有する磁粉は、フッ素を0.1原子%から12原子%含有し、キュリー温度が400℃〜600℃、飽和磁束密度1.6〜1.9Tの磁気特性を示し、磁粉を成形することで残留磁束密度1.5Tの磁石を作成できる。フッ素の導入により磁気モーメントの増加が確認できる磁粉には、主相として、上記のSmFe17以外に、ReFe(Reは希土類元素、l、m、nは正の整数)、ReFe(Reは希土類元素、l、m、nは正の整数)、ReFe(Reは希土類元素、l及びmは正の整数)等がある。このような磁粉には酸フッ化物の成長や不純物として酸素、炭素や金属元素が含有していても磁気特性は大きく変化しない。
【0095】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。

【符号の説明】
【0096】
1‥固定子鉄心 2‥電機子巻線 3‥ハウジング
3A‥ブラケット 3B‥ベアリング
4‥シャフト 4A‥スプライン 5‥第1回転子
5A‥永久磁石 6‥第2回転子 6A‥永久磁石
7‥ストッパー 7A‥ストッパーのアーム 8‥スラスト軸受
9‥アクチュエータ 9A‥アクチュエータのアーム 10‥梃子のアーム
10A‥梃子の支点 10B‥梃子の作用点 10C‥梃子の力点
11‥油圧シリンダ 11A‥ピストン1 11B‥ピストン
12‥作動油 13‥リンク 13A〜13D‥リンクの支点
14‥ステッピングモータ 15‥第一歯車 16‥第二歯車
17‥ボールネジ 18‥エンジン 19‥回転電機
20‥トランスミッション 21‥インバータ 22‥バッテリ
23‥クランクプーリ 24‥金属ベルト 25‥プーリ
JM‥磁束可変装置 AC‥動力発生部 BM‥倍力機構
DD‥動力伝達部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線を有する固定子と、
前記固定子に空隙を介して回転可能に配設され、回転軸方向に少なくとも第1回転子と第2回転子に二分割され、それぞれに極性の異なる界磁用磁石が回転方向に交互に配置された回転子と、
前記第1回転子に対する前記第2回転子の相対的な回転軸方向位置を可変する磁束可変装置とを有し、
前記磁束可変装置は、
動力発生部と、
前記動力発生部で発生した力を第2回転子に伝達する動力伝達部と、
前記動力発生部と前記動力伝達部の間に介在し、前記動力発生部で発生した力を倍増する倍力機構とを備えることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記回転子は、3つ以上に分割され、
前記磁束可変装置は、前記分割された個々の分割回転子の相対的な回転軸方向位置を可変することを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の回転電機において、
前記倍力機構は、梃子によって構成される特徴を有する回転電機。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の回転電機において、
前記倍力機構は、リンクによって構成されることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1または請求項2記載の回転電機において、
前記倍力機構は、油圧によって構成されることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項1または請求項2記載の回転電機において、
前記倍力機構は、歯車とボールネジ機構によって構成されることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の回転電機において、
前記磁束可変装置を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は、
回転子の回転数とトルクで定まる運転効率が示された回転電機効率マップを複数の有効磁束ごとに記憶した記憶装置と、
要求トルクと要求回転数に基づいて前記複数の回転電機効率マップを参照し、最も効率が高いマップの有効磁束を決定する有効磁束決定手段と、
決定された有効磁束に基づく指令値を計算して前記磁束可変装置へ出力する計算手段とを備えることを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の回転電機において、
前記磁束可変装置を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は、
回転子の回転数とトルクで定まる運転効率が示された回転電機効率マップを複数の有効磁束ごとに記憶した記憶装置と、
前記複数の回転電機効率マップに基づいて合成効率マップを生成し、前記合成効率マップを参照して要求トルクと要求回転数に基づく運転点の合成後の有効磁束を決定する有効磁束決定手段と、
決定された有効磁束に基づく指令値を計算して前記磁束可変装置へ出力する計算手段とを備えることを特徴とする回転電機。
【請求項9】
車輪と、
前記車輪を駆動する内燃機関と、
車速を制御する変速機と、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の回転電機であって、前記内燃機関と前記変速機間に機械的に連結された回転電機と、
電力の充放電を行う蓄電手段と、
前記蓄電手段と前記回転電機間に接続され、電力の変換を行う電力変換器とを備えることを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項10】
車輪と、
前記車輪を駆動する内燃機関と、
車速を制御する変速機と、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の回転電機と、
前記内燃機関のクランクプーリと前記回転電機のシャフトに結合されたプーリとが連結された金属ベルトと、
電力の充放電を行う蓄電手段と、
前記蓄電手段と前記回転電機間に接続され、電力の変換を行う電力変換器とを備えることを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項11】
車輪と、
前記車輪を駆動する請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の回転電機と、
速度を制御する変速機と、
電力の充放電を行う蓄電手段と、
前記蓄電手段と前記回転電機間に接続され、電力の変換を行う電力変換器とを備えることを特徴とする電気自動車。
【請求項12】
Coおよび希土類元素を含まないMnAl系合金にFeを添加した合金であって、Fe原子の一部をフッ素で置換した構造の磁石材料。
【請求項13】
Coおよび希土類元素を含まないMnAl系合金に、MnF(xは1−3)含有アルコール液を塗布し、乾燥後、500℃、1時間熱処理して、この後急冷することにより、Feの格子の一部にフッ素を侵入させる磁石材料製造方法。
【請求項14】
Coおよび希土類元素を含まないMnFe系合金であって、Fe原子の一部をフッ素で置換した構造の磁石材料。
【請求項15】
Coおよび希土類元素を含まないMnFe系合金に、1wt%のMgF(xは1−3)含有アルコール液を塗布し、アルコールを乾燥により除去することで粉の表面に非晶質が主のMgを含有する酸フッ化物が成長させ、これを300℃、1時間熱処理後、超音波処理により粉末表面の酸フッ化物を除去し、これを大気中にさらすことなくMnF(x=1−3)含有アルコール溶液を塗布後熱処理して、乾燥後、速度10℃/秒以上の冷却速度で急冷することによりFeの格子の一部にフッ素を侵入させる磁石材料製造方法。
【請求項16】
MnAl系合金、MnFe系合金、MnSi系合金、MnBi系合金、MnCr系合金、MnMg系合金、MnCu系合金、MnV系合金のいずれか一つの合金の中から選択された磁石材料の格子間にフッ素原子を侵入させて磁束密度を増加させた磁石材料。
【請求項17】
主相としてSmFe17、ReFe、ReFe、ReFeのいずれか一つの磁性体を含む磁石材料であって、N原子の一部をフッ素で置換した構造の磁石材料。
【請求項18】
主相としてSmFe17、ReFe、ReFe、ReFeのいずれか一つの磁性体を含む磁粉に、フッ化アンモニウム粉を混合し、反応容器で400℃で1時間熱処理後、1℃/minで冷却することにより、N原子の一部をフッ素で置換する磁石材料製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の磁石材料製造方法であって、前記SmFe17、ReFe、ReFe、ReFeのいずれか一つを含む磁石材料の熱処理後、酸化防止のため真空排気することを特徴とする磁石材料製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−30341(P2011−30341A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172754(P2009−172754)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】