説明

固体撮像素子および電子情報機器

【課題】多層化した複数層の受光部により複数の色信号を、1画素部で一括して同時に検出した1画素部毎の各層の信号電荷から得ると共に、静止画および動画のいずれであっても鮮明なフルカラー撮像を実現する。
【解決手段】半導体層または半導体基板に交互に一方向に隣接配置されたP型注入領域4およびN型注入領域5であって、被写体からの画像光を光電変換する複数層の光電変換部(3層のP型注入領域およびN型注入領域)が、光電変換部とはバンドギャップの異なる透明層(SiO膜)をその各間に介在して積層され、一方向に直交する他方向にそれぞれ配置された3層のP型注入領域4およびN型注入領域5と、P型注入領域4およびN型注入領域5上に設けられた一方向の複数の電荷転送駆動用の透明電極6〜11と、複数の電荷転送駆動用の透明電極6〜11上に設けられ、入射光を透過または遮光制御する入射光透過/遮光制御手段とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶セルと組み合わせて、被写体からの画像光を光電変換して撮像する半導体素子で構成された特に高画素、高感度、高スミア特性向けの固体撮像素子、この固体撮像素子を、画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばデジタルビデオカメラおよびデジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、画像入力カメラ、スキャナ装置、ファクシミリ装置、DSC、監視カメラ、テレビジョン電話装置、カメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の固体撮像素子として、画素部毎に光電変換して生成した各信号電荷を電荷転送部により所定方向に電荷転送した後に増幅して撮像信号を得るCCD固体撮像素子と、画素部毎に光電変換して生成した各信号電荷を増幅して撮像信号として信号読み出しを行うCMOS固体撮像素子とがある。
【0003】
このCCD固体撮像素子について特許文献1にその構成が開示されており、通常、固体撮像素子の垂直転送時は、垂直転送部上が遮光膜により遮光されている必要がある。
【0004】
図11は、特許文献1に開示されている従来のCCD固体撮像素子の単位画素部の要部構成例を示す平面図である。
【0005】
図11において、従来のCCD固体撮像素子100の単位画素部は、被写体からの画像光を光電変換して信号電荷を生成する受光部101上の遮光膜の開口部102と、この開口部102下の受光部101から読み出された信号電荷を所定方向に電荷転送するための垂直転送部103と、この受光部101と垂直転送部103間のチャネル部104と、隣接画素との間を素子分離するための素子分離領域105とに分けることができる。
【0006】
図12は、図11の従来のCCD固体撮像素子のA−B線断面図である。
【0007】
図12に示すように、この従来のCCD固体撮像素子100の単位画素部は、N型シリコン基板111上の第1のP型ウェル領域112内にN型の受光部101と、垂直転送部103を構成する垂直レジスタ113と、その外周側の素子分離領域105を構成するP型のチャネル・ストッパ領域114とが形成されている。また、受光部101の表面側にP型の正電荷蓄積領域115が形成され、垂直レジスタ113の直下には第2のP型ウェル領域116が形成されている。
【0008】
垂直レジスタ113上にゲート絶縁膜117を介して多結晶シリコン層による転送電極118が選択的に形成され、この転送電極118上に層間絶縁膜119を介してAl遮光膜120が形成され、このAl遮光膜120を含む全面に例えばプラズマSiN膜による表面保護層121が形成されてCCD固体撮像素子100が構成されている。なお、受光部101と垂直レジスタ113間のP型領域は読出しゲートであるチャネル部104を構成している。
【0009】
Al遮光膜120は、受光部101上で選択的にエッチング除去されており、光Lは、このエッチング除去によって形成された受光部101上の開口部102を通して受光部101内に入射されるようになっている。このとき、受光部101の周縁上に、Al遮光膜120が一部が残った形となっている。
【0010】
Al遮光膜120中、受光部101の周縁上におけるAl遮光膜120の上部を傾斜状120aに形成して構成している。
【0011】
上記特許文献1では、単位画素部100の微細化に伴って、開口部102の開口率が低下して受光感度特性が劣化するため、開口部102の開口率を上げるべく、開口部102の開口サイズを広げると、斜め光が開口部102から、遮光膜120で遮光されている電荷転送部103側に入って表示画面上で縦スジとなって現れてしまい、スミア特性が劣化していた。
【0012】
これに対して、画素部の微細化に伴う受光感度特性の劣化およびスミア特性の劣化を抑制すると共に、遮光膜の形成プロセスがなく製造を簡略化することができ、かつ信号読み出し制御をも無くすことができる固体撮像素子が、特許文献2に提案されている。
【0013】
図13は、特許文献2に開示されている従来の固体撮像素子の要部構成例を示す平面図であり、図14は、図13の固体撮像素子のA−B線縦断面図である。
【0014】
図13および図14において、従来の固体撮像素子200は、半導体基板201(または半導体層)上に、各受光部を構成する縦方向のP型注入領域202とN型注入領域203とが交互に横方向に配置されている。これらのP型注入領域202およびN型注入領域203上に、電荷転送駆動用の横方向の単層の透明電極204〜209をこの順に縦方向に繰り返し並べて配置する。さらに、その上に、横方向の偏光を通す偏光板210、液晶制御用の下側の透明電極211、ツイストネマテック(TN)またはスーパーツイストネマテック(STN)の液晶材料からなる液晶層212、液晶制御用の上側の透明電極213、縦方向の偏光を通す偏光板214をこの順に積層する。
【0015】
これらの偏光板210、透明電極211、液晶層212、透明電極213および偏光板214から入射光透過/遮光制御手段としての液晶手段である液晶セルが構成されており、この液晶セルと組み合わせて、被写体からの画像光を光電変換して撮像する固体撮像素子200が構成されている。この液晶セルは露光時に入射光を透過し、電荷転送時に入射光を遮蔽するように機能する。
【0016】
さらに、透明電極204〜209に電荷転送駆動用電圧を順次印加可能とする図示しないコントローラ(電荷転送制御手段)が設けられ、露光時に、液晶セルが入射光を透過制御した状態で、横方向の複数の電荷転送駆動用の透明電極204〜209に、このコントローラから出力される電荷転送駆動用電圧(例えば「0V」と「5V」)のうちの高電圧と低電圧を透明電極204〜209の一または複数に交互に印加する所定の電圧印加パターンにより、電荷転送駆動用の透明電極204〜209下の縦方向のP型注入領域202およびN型注入領域203の深いポテンシャル電位領域に画素毎(各受光部毎)の信号電荷を蓄積する。次の電荷転送時に、液晶セルが入射光を遮光制御した状態で、電荷転送駆動用電圧(例えば「0V」と「5V」)のうちの高電圧と低電圧を透明電極204〜209の一または複数の交互の印加位置を順次所定方向にずらすことにより、電荷転送駆動用の透明電極204〜209下の縦方向のP型注入領域202およびN型注入領域203の深いポテンシャル電位領域に画素部毎の信号電荷を保持して所定方向に電荷転送する。
【0017】
上記構成により、上から入射された入射光は、上側の偏光板214を通り、縦方向の偏光を通して偏光される。その縦方向の偏光は、液晶層212のスイッチイング特性により、偏光方向が透明電極211および213に印加される制御信号によりコントロールされ、下側の偏光板210に至る。偏光板214、210の偏光方向が互いに角度が90度だけ異なるため、液晶層212のスイッチイング駆動yによって、固体撮像素子200の受光部(P型注入領域202およびN型注入領域203)への入射光を透過したり遮光したりコントロールすることができる。これによって、遮光層により遮光された垂直転送領域を設ける必要がなくなる。即ち、遮光層および垂直転送領域を別途設ける必要がない。
次に、図14に示すように、偏光板214を通った入射光は、透明電極213から液晶層212を経て透明電極211、偏光板210さらに透明電極209を通過し、そのまま、固体撮像素子200の各受光部(P型注入領域202およびN型注入領域203)まで到達する。固体撮像素子200の各受光部では、縦方向にP型注入領域202およびN型注入領域203を設けており、ここで、光電変換した電子は、P型注入領域202からポテンシャルが低い方のN型注入領域203側に集まって蓄積される。なお、N型注入領域203はP型注入領域202によって分離されているが、これに限らず、同じN型注入領域203同士であっても、不純物の注入を1回で済ませて、ポテンシャル電位の山と谷を作れば同じN型注入領域203同士であっても、信号電荷が互いに混ざり合わないように、隣接する列部と分離可能である。
【0018】
最後に、電荷転送方法ついては、それぞれ配置された横方向の透明電極204〜209の垂直電荷転送用の転送駆動電圧を、順送りすることにより電子(各信号電荷)を電荷転送することができる。このように、横方向の透明電極204〜209を用いたため、1層配線での電荷転送が可能となる。
【0019】
なお、液晶層212には、上記ツイストネマテック(TN)またはスーパーツイストネマテック(STN)の液晶材料の他に、コレステリック液晶材料を用いることができる。このコレステリック液晶材料は、液晶分子のらせんの軸が縦向きかまたは横向きで安定するので、駆動電圧を切っても半永久的に液晶分子の向きを維持できるメモリ性があることから、書き換え時のみ電力を用いる超低消費電力を実現することができる。また、一度表示した表示画面は、駆動電圧をかけて表示画面を変更する以外は駆動電圧をかけないので、画面がちらついたりしない。しかも、コレステリック液晶材料を用いることにより、偏光板210,214およびカラーフィルタ(図示せず)などを不要とすることから、紙のように薄くて軽く、しかも明るい液晶装置(液晶セル;デンシペーパ)を実現することができる。このように、コレステリック液晶材料を用いることにより、透過する光量を大幅に有効利用することができて、受光感度の大幅な向上を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平6−45568号公報
【特許文献2】特開2008−280459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
特許文献2に開示されている上記従来の固体撮像素子200では、その電荷転送時に液晶層212によって遮光が可能なため、垂直転送領域を遮光層と共に設ける必要がなく、透明電極を用いて1画素当たりの面積を大きく取ることができて、画素部の微細化に伴う受光感度特性の劣化およびスミア特性の劣化を抑制すると共に、遮光膜の形成プロセスがなく製造を簡略化することができ、かつ信号読み出し制御をも無くすことができるものの、カラーフィルタに代えてコレステリック液晶材料を用いて一つの色を1画素(各液晶セル毎にRGBのいずれかで所定の色配列)で検出可能であるが、現実的に静止画および動画のうち、特に動画をフルカラー撮像することは、コレステリック液晶の応答が遅いために現時点では困難であるという問題を有していた。
【0022】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、画素部の微細化に伴う受光感度特性の劣化およびスミア特性の劣化を抑制すると共に、遮光膜の形成プロセスがなく製造を簡略化することができ、かつ信号読み出し制御をも無くすことができることを前提として、コレステリック液晶に代えて多層化した複数層の受光部により複数の色信号を、1画素部で一括して同時に検出した1画素部毎の各層の信号電荷から得ると共に、静止画および動画のいずれであっても鮮明なフルカラー撮像を実現することができる固体撮像素子および、この固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばカメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の固体撮像素子は、半導体層または半導体基板に交互に一方向に隣接配置された一導電型注入領域および他導電型注入領域であって、被写体からの画像光を光電変換する複数層の光電変換部が、該光電変換部とはバンドギャップの異なる透明層をその各間に介在して積層され、該一方向に直交する他方向にそれぞれ配置された一導電型注入領域および他導電型注入領域と、該一導電型注入領域および該他導電型注入領域上に設けられた一方向の複数の電荷転送駆動用の透明電極と、該複数の電荷転送駆動用の透明電極上または、該一導電型注入領域および該他導電型注入領域上に設けられ、入射光を透過または遮光制御する入射光透過/遮光制御手段とを有しているものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0024】
また、好ましくは、本発明の固体撮像素子における透明層のバンドギャップが前記複数層の光電変換部の半導体層のバンドギャップよりも大きく、該光電変換部がその下層および上層の該透明層に挟み込まれて、該複数層の光電変換部でそれぞれ光電変換された各信号電荷が該光電変換部毎にそれぞれ閉じ込められるように構成されている。
【0025】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子における複数層の光電変換部の深さに応じた光の波長による吸収係数の違いから、1画素部毎の複数の色信号が該複数層の光電変換部からの各信号電荷に基づいて算出可能である。
【0026】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子における複数層の光電変換部が、第1受光部〜第3受光部の3層構造を有する場合に、該第1受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が最も短い青色光を主に吸収して光電変換し、該第2受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が中間の緑色光を主に吸収して光電変換し、該第3受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が最も長い赤色光を主に吸収して光電変換する。
【0027】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子における複数層の光電変換部が、第1受光部〜第4受光部の4層構造を有する場合に、該第1受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が最も短い青色光を主に吸収して光電変換し、該第2受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が中間の緑色光を主に吸収して光電変換し、該第3受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が長い赤色光を主に吸収して光電変換し、該第4受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が最も長い近赤外光を吸収して光電変換する。
【0028】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記半導体層または前記半導体基板は可視光または近赤外光まで受光できるバンドギャップをもつ半導体であり、前記透明層は可視光を透過するバンドギャップを持っている。
【0029】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子における複数の電荷転送駆動用の透明電極に印加する高電圧と低電圧のうちの高電圧の印加隣接電極数を調整することにより、前記複数の光電変換部の平面視画素露光サイズを可変してフォトダイオード容量を可変可能とする。
【0030】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子における複数の光電変換部の膜厚を調整することにより、フォトダイオード容量を可変可能とする。
【0031】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子における入射光透過/遮光制御手段は、露光時に入射光を透過し、電荷転送時に入射光を遮光する液晶手段で構成されている。
【0032】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子における液晶手段は、一方向およびこれに直交する他方向の一方の偏光を通す偏光板、液晶制御用の下側の透明電極、液晶層、液晶制御用の上側の透明電極、該一方向およびこれに直交する他方向の他方の偏光を通す偏光板がこの順に積層されている。
【0033】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記一方向の複数の電荷転送駆動用の透明電極に電荷転送駆動用電圧を順次印加可能とする電荷転送制御手段がさらに設けられ、露光時に、前記液晶手段が入射光を透過制御した状態で、該電荷転送駆動用電圧のうちの高電圧と低電圧を該電荷転送駆動用の透明電極の一または複数毎に交互に印加することにより、該電荷転送駆動用の透明電極下の他方向の一導電型注入領域および他導電型注入領域のうちの深いポテンシャル電位領域に画素部毎の信号電荷が保持される。
【0034】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記一方向の複数の電荷転送駆動用の透明電極に電荷転送駆動用電圧を順次印加可能とする電荷転送制御手段がさらに設けられ、電荷転送時に、前記液晶手段が入射光を遮光制御した状態で、該電荷転送駆動用電圧のうちの高電圧と低電圧を該電荷転送駆動用の透明電極の一または複数の交互の印加位置を順次所定方向にずらすことにより、該電荷転送駆動用の透明電極下の他方向の一導電型注入領域および他導電型注入領域のうちの深いポテンシャル電位領域に画素部毎の信号電荷を保持して所定方向に電荷転送する。
【0035】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、前記高電圧の前記電荷転送駆動用の透明電極の印加位置を一または複数に印加することにより、前記画素部毎の信号電荷を保持する画素サイズが制御可能とされており、該画素サイズは、前記他方向の一導電型注入領域または他導電型注入領域のn(nは自然数)列と、前記一方向の電荷転送駆動用の透明電極のm(mは自然数)行の隣接半導体領域を1画素部として組み合わせている。
【0036】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子における高電圧は複数の高電圧を有して、前記半導体層または半導体基板のポテンシャ電位が電荷転送方向に深くなるように該半導体層または半導体基板に高電圧を付与する。
【0037】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子における半導体層または半導体基板は、導電型がN型半導体、P型半導体および真性半導体の少なくともいずれかである。
【0038】
本発明の電子情報機器は、本発明の上記固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いたものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0039】
上記構成により、以下、本発明の作用を説明する。
【0040】
本発明においては、半導体層または半導体基板に交互に一方向に隣接配置された一導電型注入領域および他導電型注入領域であって、被写体からの画像光を光電変換する複数層の光電変換部が、この光電変換部とはバンドギャップの異なる透明層をその各間に介在して積層され、一方向に直交する他方向にそれぞれ配置された一導電型注入領域および他導電型注入領域と、一導電型注入領域および該他導電型注入領域上に設けられた一方向の複数の電荷転送駆動用の透明電極と、複数の電荷転送駆動用の透明電極上に設けられ、入射光を透過または遮光制御する入射光透過/遮光制御手段とを有している。
【0041】
これによって、入射光を透過または遮光制御する入射光透過/遮光制御手段を設けたことにより、画素部の微細化に伴う受光感度特性の劣化およびスミア特性の劣化を抑制すると共に、遮光膜の形成プロセスがなく製造を簡略化することができ、かつ信号読み出し制御をも無くすことができることを前提として、被写体からの画像光を光電変換する複数層の光電変換部が、この光電変換部とはバンドギャップの異なる透明層をその各間に介在して積層されるため、コレステリック液晶に代えて多層化した複数層の受光部により複数の色信号を、1画素部で一括して同時に検出した1画素部毎の各層の信号電荷から得ると共に、静止画および動画のいずれであっても鮮明なフルカラー撮像を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0042】
以上により、本発明によれば、入射光を透過または遮光制御する入射光透過/遮光制御手段を設けたため、画素部の微細化に伴う受光感度特性の劣化およびスミア特性の劣化を抑制すると共に、遮光膜の形成プロセスがなく製造を簡略化することができ、かつ信号読み出し制御をも無くすことができることを前提として、被写体からの画像光を光電変換する複数層の光電変換部が、この光電変換部とはバンドギャップの異なる透明層をその各間に介在して積層されるため、コレステリック液晶に代えて多層化した複数層の受光部により複数の色信号を、1画素部で一括して同時に検出した1画素部毎の各層の信号電荷から得ると共に、静止画および動画のいずれであっても鮮明なフルカラー撮像を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態1における固体撮像素子の要部構成例を示す平面図である。
【図2】図1の固体撮像素子のA−B線縦断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、図1の固体撮像素子に入る光が多い場合の電荷転送パターンを模式的に示す平面図である。
【図4】(a)〜(c)は、貼り合せSOIウエハの各事例について模式的に示す断面図である。
【図5】(a)および(b)は、貼り合せSOIウエハの製造方法の事例1を模式的に示す断面図である。
【図6】(a)および(b)は、貼り合せSOIウエハの製造方法の事例2を模式的に示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態2における固体撮像素子の要部構成例を示す平面図である。
【図8】図7の固体撮像素子のA−B線縦断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、図7の固体撮像素子において2列3行に受光領域を拡張した場合のCCD転送事例を示す平面図である。
【図10】本発明の実施形態4として、本発明の実施形態1〜3の固体撮像素子1または1Aからの撮像信号を信号処理する固体撮像装置を撮像部に用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【図11】特許文献1に開示されている従来のCCD固体撮像素子の単位画素部の要部構成例を示す平面図である。
【図12】図11の従来のCCD固体撮像素子のA−B線断面図である。
【図13】特許文献2に開示されている従来の固体撮像素子の要部構成例を示す平面図である。
【図14】図13の固体撮像素子のA−B線縦断面図である。
【図15】本発明の実施形態3における固体撮像素子の要部構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に、本発明の固体撮像素子の実施形態1、2および、この固体撮像素子の実施形態1、2を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばカメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器の実施形態3について図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1における固体撮像素子の要部構成例を示す平面図であり、図2は、図1の固体撮像素子のA−B線縦断面図である。
【0045】
図1および図2において、本実施形態1の固体撮像素子1は、半導体基板2(または半導体層)上に透明絶縁層であるSiO膜3dを介して、第3受光部を構成する縦方向のP型注入領域4cとN型注入領域5cとが交互に横方向に隣接配置されている。これらのP型注入領域4cおよびN型注入領域5c上に透明絶縁層であるSiO膜3cを介して、第2受光部を構成する縦方向のP型注入領域4bとN型注入領域5bとが交互に横方向に隣接配置されている。これらのP型注入領域4c,4bおよびN型注入領域5c,5bはそれぞれ間にSiO膜3cを介して上下に配置されている。これらのP型注入領域4bおよびN型注入領域5b上に透明絶縁層であるSiO膜3bを介して、第1受光部を構成する縦方向のP型注入領域4aとN型注入領域5aとが交互に横方向に隣接配置されている。これらのP型注入領域4b、4aおよびN型注入領域5b、5aはそれぞれ間にSiO膜3bを介して上下に配置されている。これらのP型注入領域4a〜4cとN型注入領域5a〜5cはそれぞれ、平面視で縦方向に一致するように配置されている。
【0046】
これらのP型注入領域4aおよびN型注入領域5a上に透明絶縁層であるSiO膜3aを介して、電荷転送駆動用の横方向の単層の透明電極6〜11をこの順に縦方向に繰り返し並べて配置する。平面視で縦方向に配置されたP型注入領域4aとN型注入領域5a上にSiO膜3aを介して、単層の透明電極6〜11が横方向に配置されている。さらに、その上に、横方向の偏光を通す偏光板12、液晶制御用の下側の透明電極13、ツイストネマテック(TN)またはスーパーツイストネマテック(STN)の液晶材料などからなる液晶層14、液晶制御用の上側の透明電極15、縦方向の偏光を通す偏光板16をこの順に積層する。なお、液晶材料としては、偏光板12、16を用いずに、ツイストネマテック(TN)やスーパーツイストネマテック(STN)以外のシャッタ機能に用いる液晶材料であって、動作速度の速い液晶材料を選定して用いることもできる。このように、入射光を受光する第1受光部〜第3受光部からなるSi層の3層積層構造の上部に液晶セルによるシャッタ機構を導入しかつ、電荷転送を透明電極6〜11で行うことにより、第1受光部〜第3受光部の開口サイズを、従来の遮光膜の開口サイズに比べて向上させ、受光感度特性の改善とスミア特性の改善を図ることが可能となる。
【0047】
電荷転送用の単層の透明電極6〜11およびその下の3層のP型注入領域4a〜4cとN型注入領域5a〜5cが繰り返し配設されて、各画素毎の信号電荷が複数列を垂直方向に電荷転送され、その後、水平方向に、電荷転送用の単層の透明電極6〜11およびその下の3層のP型注入領域4a〜4cとN型注入領域5a〜5cが繰り返し配設されて水平方向に電荷転送される。その後、3層の電荷検出部により電荷検出されて3層分の信号電荷が増幅されて撮像信号として出力される。詳細に後述するが、3層分の各撮像信号は信号処理部により信号処理されて各画素毎のRGB信号を得ることができる。
【0048】
ここでは、P型注入領域4およびN型注入領域5で構成される第1受光部〜第3受光部がそれぞれ透明絶縁層であるSiO膜をそれぞれ介して3層の多層積層構造になっている。この3層の多層積層構造は、撮像素子のカラーフィルタレスを実現するため、各受光部(フォトダイオード部)を構成する3層のSi層(P型注入領域およびN型注入領域)をそれぞれSiO膜3a〜3dの各透明膜で上下に挟み込んだ構造である。SiO膜3a〜3dのバンドギャップがSi層よりも大きいため3層の各Si層に光電変換された信号電荷を閉じ込めることができる。このように、バンドギャップの異なる透明層(ここではSiO膜とSi層)を組み合わせ3層の第1受光部〜第3受光部(光電変換部)からなっている。つまり、一導電型注入領域および他導電型注入領域は、P型注入領域およびN型注入領域で構成される複数層の光電変換部がそれぞれ、間に光電変換部とはバンドギャップの異なる透明層(SiO膜)を組み合わせた多層積層構造(ここでは3層)になっている。
【0049】
なお、Si層間にSiO膜がない場合のCMOSの多層PDからの優位性について説明すると、イオン注入によるポテンシャル差(PN間)は、およそ2−3eVである。受光部の上下膜としてSiO膜を使用すれば、そのバンドギャップ(Band Gap)は8−9eVあるためVpd容量確保に有利である。ポテンシャル段差を上下空間的に明確にできるるので、上下方向での容量確保に有利に働く。
【0050】
一方、SiO膜3a〜3dおよび3層のSi層は可視光が透過しかつ、3層のSi層はその深さに応じた光の波長による吸収係数の違いから、3層のSi層は各色の受光部(ダイオード部)とすることができる。例えば第1受光部を構成する縦方向のP型注入領域4aとN型注入領域5aは、最上層であり光の波長が最も短い青色光(B)を主に吸収して光電変換し、第2受光部を構成する縦方向のP型注入領域4bとN型注入領域5bは、中間層であり光の波長が中間の緑色光(G)を主に吸収して光電変換し、第3受光部を構成する縦方向のP型注入領域4cとN型注入領域5cは、最下層であり光の波長が最も長い赤色光(R)を主に吸収して光電変換する。このように、光電変換部である第1受光部〜第3受光部の多層化による多原色(ここでは三原色のRGB)のフルカラー撮像を各画素毎に一括して同時に行うことができる。
【0051】
以上の偏光板12、透明電極13、液晶層14、透明電極15および偏光板16から入射光透過/遮光制御手段としての液晶手段である液晶セルが構成されており、この液晶セルと組み合わせて、被写体からの画像光を光電変換して撮像する第1受光部〜第3受光部の3層積層構造を持つ固体撮像素子1が構成されている。この液晶セルは、そのスイッチイング特性により、露光時に入射光を透過し、電荷転送時に入射光を遮蔽するように機能する。これによって、従来の素子分離領域および垂直転送部が必要なくなって、その分、受光面積を広げることができることから、画素部の微細化に伴う受光感度特性の劣化およびスミア特性の劣化を抑制すると共に、遮光膜の形成プロセスもなく製造を簡略化することができ、かつ信号読み出し制御をも無くすことができる。
【0052】
さらに、透明電極6〜11に電荷転送駆動用電圧を順次印加可能とする図示しないコントローラ(電荷転送制御手段)が設けられ、露光時に、液晶セルが入射光を透過制御した状態で、横方向の複数の電荷転送駆動用の透明電極6〜11に、このコントローラから出力される電荷転送駆動用電圧(例えば「0V」と「5V」)のうちの高電圧と低電圧を透明電極6〜11の一または複数に交互に印加する所定のパターンにより、電荷転送駆動用の透明電極6〜11下の縦方向のP型注入領域4a〜4cおよびN型注入領域5a〜5cの深いポテンシャル電位領域に画素毎(各受光部毎)の信号電荷を蓄積する。次の電荷転送時に、液晶層14の液晶セルが入射光を遮光制御した状態で、電荷転送駆動用電圧(例えば「0V」と「5V」)のうちの高電圧と低電圧を透明電極6〜11の一または複数の交互の印加位置を順次所定方向にずらすことにより、電荷転送駆動用の透明電極6〜11下の縦方向の3層のP型注入領域4a〜4cおよび3層のN型注入領域5a〜5cの深いポテンシャル電位領域に画素部毎の信号電荷を保持して所定方向に電荷転送する。このように、入射光を受光する第1受光部〜第3受光部の3層積層構造によって、液晶セルを遮光させた状態で、各信号電荷を順次電荷転送することができて、スミア特性の劣化を抑制することができる。
【0053】
この場合、高電圧の透明電極6〜11の印加位置を一または複数に印加することにより、入射光を受光する第1受光部〜第3受光部の3層積層構造の平面視の画素サイズ(フォトダイオード容量)も制御可能である。また、第1受光部〜第3受光部の3層積層構造の光電変換部の多層膜厚によってフォトダイオード容量を制御することもできる。
【0054】
上記構成により、上から入射された入射光は、上側の偏光板16を通り、縦方向の偏光板16を通して偏光される。その縦方向の偏光は、液晶層14のスイッチイング特性により、偏光方向が透明電極13および15に印加される制御信号によりコントロールされ、下側の偏光板12に至る。偏光板16、12の偏光方向が互いに角度が90度だけ異なるため、液晶層14のスイッチイングによって、固体撮像素子1の第1受光部〜第3受光部の3層積層構造への入射光を透過したり遮光したりコントロールすることができる。
次に、偏光板16を通った入射光は、透明電極15から液晶層14を経て透明電極13、偏光板12さらに透明電極11からSiO膜3aを通過し、そのまま、固体撮像素子1の第1受光部〜第3受光部(P型注入領域およびN型注入領域)まで順次到達する。固体撮像素子1の各受光部では、縦方向にP型注入領域4a〜4cおよびN型注入領域5a〜5cの3層の積層構造が設けられており、ここで、光電変換した電子は、ポテンシャルが低い方のN型注入領域4側に集まって蓄積されると共に、SiO膜3a〜3dのバンドギャップがSi層よりも大きいため、SiO膜3a〜3dにより3層の第1受光部〜第3受光部(各Si層)に光電変換された信号電荷を閉じ込めることができる。
【0055】
なお、P型注入領域4a〜4cによってN型注入領域5a〜5cが横方向に複数分離されている。縦方向の各同じ層のN型注入領域5a〜5cであっても、不純物の注入を1回または数回の均等な不純物注入(不純物濃度(N型またはP型)が、例えば1×1018cm−3)で済ませて、透明電極6〜11に対する電圧印加によりポテンシャル電位の山と谷を作れば同じ層のN型注入領域5同士であっても、信号電荷が平面視縦方向(列方向)に互いに混ざり合わないように、縦方向の3層の第1受光部〜第3受光部(P型注入領域およびN型注入領域)の各層において、縦方向の各同じ層の隣接するN型注入領域5同士で分離可能である。
【0056】
最後に、電荷転送方法ついては、それぞれ配置された横方向の透明電極6〜11の垂直電荷転送用の転送駆動電圧を、順送りすることにより電子(各信号電荷)を電荷転送することができる。このように、横方向の透明電極6〜11を用いたため、1層配線での電荷転送が可能となる。
【0057】
要するに、上から入射された光は、偏光板16を通り縦偏光とされる。その縦偏光は、液晶層14のスイッチイング特性により偏光方向がコントロールされ、偏光板12に届く。偏光板16,12の偏光方向が異なるため、液晶層14のスイッチイングによって、固体撮像素子1の第1受光部〜第3受光部への入射光を露光または遮光にコントロールできる。これによって、従来のように遮光膜で遮光された垂直転送領域を設ける必要がなくなる。
下側の偏光板12を通った光は、電極に透明電極6〜11を採用したため、そのまま固体撮像素子1の第1受光部〜第3受光部まで到達する。固体撮像素子1の第1受光部〜第3受光部は、平面視で縦方向にP型注入領域4およびN型注入領域5を設けており、ここで、光電変換した電子(信号電荷)は、P型注入領域4からポテンシャルが低いN型注入領域5側に集まって、各画素毎に撮像が為される。
このとき、3層積層構造の第1受光部〜第3受光部(各フォトダイオード部)は、その深さ方向に応じて光の波長による吸収係数が異なるため、最適に多層化した各フォトダイオード部では、その各層で各色(ここではRGB)の撮像が可能となり、その結果、一画素で多色撮像(三原色撮像)が可能となる。この場合、3層積層構造の第1受光部〜第3受光部において、混色はするが、信号処理によりR尊号、G信号およびB信号を得ることが可能である。信号処理については詳細に後述する。
【0058】
最後に、電荷転送方法ついては、縦方向に順次並べて配置された横方向の透明電極6〜11に対する駆動電圧を、縦方向に順送りすることにより、画素毎の各信号電荷を電荷転送することができる。この場合、透明電極6〜11を用いたため、1層配線での転送が可能となる。
【0059】
ここで、本実施形態1の固体撮像素子1の電荷転送方法の一例について図3(a)〜図3(c)を用いて詳細に説明する。
【0060】
図3(a)〜図3(c)は、図1の固体撮像素子1に入る光が多い場合の電荷転送パターンを模式的に示す平面図である。ここで、透明電極6〜11に印加する低電圧を「0V」、高電圧を「5V」する。
【0061】
まず、図3(a)の「Time1」に示すように、P型注入領域4とN型注入領域5が縦方向に設けられており、最も上の1行目(行R1)の電荷転送用の横方向の透明電極6に駆動電圧「0V」が印加される場合に、P型注入領域4のポテンシャル電位が「0V」で、N型注入領域5のポテンシャル電位が「5V」になって深くなっている。このとき、上から2、3行目(行R2、3)の電荷転送用の透明電極7,8に駆動電圧「5V」が印加されるので、P型注入領域4のポテンシャル電位が「5V」で、N型注入領域5のポテンシャル電位が「10V」になってさらに深くなって信号電荷を蓄積することができる。よって、最も深い「10V」の透明電極7,8下のN型注入領域5(N型注入領域5a〜5c)に信号電荷が蓄積されて保持される。
【0062】
次に、図3(b)の「Time2」に示すように、最も上の1、2行目(行R1、2)の電荷転送用の透明電極6、7に駆動電圧「0V」が印加され、P型注入領域4のポテンシャル電位が「0V」で、N型注入領域5のポテンシャル電位が「5V」になる。このとき、上から3行目(行R3)の電荷転送用の透明電極8に駆動電圧「5V」が印加され、P型注入領域4のポテンシャル電位が「5V」で、N型注入領域5のポテンシャル電位が「10V」になっている。さらに、上から4、5行目(行R4、5)の電荷転送用の透明電極9,10に駆動電圧「0V」が印加されて、P型注入領域4のポテンシャル電位が「0V」で、N型注入領域5のポテンシャル電位が「5V」になっている。さらに、上から6行目(行R6)の電荷転送用の透明電極11に駆動電圧「5V」が印加され、P型注入領域4のポテンシャル電位が「5V」で、N型注入領域5のポテンシャル電位が「10V」になっている。
【0063】
その後、図3(c)の「Time3」において、最も上の1行目(行R1)の電荷転送用の透明電極6に駆動電圧「5V」が印加され、P型注入領域4のポテンシャル電位が「5V」で、N型注入領域5のポテンシャル電位が「10V」になる。このとき、上から2行目(行R2)の電荷転送用の透明電極7に駆動電圧「0V」が印加され、P型注入領域4のポテンシャル電位が「0V」で、N型注入領域5のポテンシャル電位が「5V」になっている。さらに、上から3、4行目(行R3、4)の電荷転送用の透明電極8,9に駆動電圧「5V」が印加されて、P型注入領域4のポテンシャル電位が「5V」で、N型注入領域5のポテンシャル電位が「10V」になって深くなっている。
【0064】
これによって、「Time1」で透明電極7、8下のN型注入領域5に保持された信号電荷が、「Time3」では透明電極8、9下のN型注入領域5に電荷転送されて垂直方向に一つ電荷転送される。この電荷転送が、撮像領域全面の第1受光部〜第3受光部で垂直方向に行われて、これが繰り返され、垂直方向に電荷転送された信号電荷が次に水平方向に電荷転送されることになる。
【0065】
なお、図3(a)〜図3(c)では、入射光が多い場合の電荷転送パターンであって、駆動電圧「0V」および「5V」の各透明電極への印加パターンを垂直方向に順次ずらして行くことにより、「Time1」で2行の透明電極7、8下のN型注入領域5に保持された信号電荷を垂直方向に順次電荷転送する場合について説明したが、これに限らず、駆動電圧「0V」および「5V」の各透明電極への印加パターンを垂直方向に順次ずらして行くことにより、入射光が少ない場合の電荷転送パターンとして、「Time1」でより画素面積の広い3行の透明電極7〜9下のN型注入領域5に保持された信号電荷を垂直方向に順次電荷転送するようにしてもよいし、さらに、「Time1」でより画素面積の広い4行の透明電極7〜10下のN型注入領域5に保持された信号電荷を垂直方向に順次電荷転送するようにしてもよい。
【0066】
次に、液晶セルを組み合わした固体撮像素子1の製造方法について説明する。
【0067】
図4(a)〜図4(c)は、貼り合せSOIウエハの各事例について模式的に示す断面図である。図5(a)および図5(b)は、貼り合せSOIウエハの製造方法の事例1を模式的に示す断面図である。
【0068】
図5(a)に示すように、半導体基板21(または半導体層)の表面を熱酸化により透明絶縁層であるSiO膜22を形成し、その上にSi層(デバイス層)23aを貼り合せ、図5(b)に示すように、貼り合せたSi層23aを所定の厚さに研磨してSi層23とする。図4(a)に示すように、このSi層23に対して所定パターンにてP型不純物とN型不純物をそれぞれ所定の不純物濃度にイオン注入して、前述した第3受光部を構成する縦方向のP型注入領域4cとN型注入領域5cとを交互に横方向に配置させる。
【0069】
また同様に、縦方向のP型注入領域4cとN型注入領域5cの表面を熱酸化によりSiO膜22を形成し、その上にSi層(デバイス層)23aを貼り合せ、貼り合せたSi層23aを所定の厚さに研磨してSi層23とする。図4(b)に示すように、このSi層23に対して、下側の縦方向のP型注入領域4cとN型注入領域5cのパターンと位置整合するように位置決めして、所定パターンでP型不純物とN型不純物をそれぞれ所定の不純物濃度でイオン注入して、前述した第2受光部を構成する縦方向のP型注入領域4bとN型注入領域5bとを交互に横方向に配置させる。
【0070】
さらに同様に、縦方向のP型注入領域4bとN型注入領域5bの表面を熱酸化によりSiO膜22を形成し、その上にSi層(デバイス層)23aを貼り合せ、貼り合せたSi層23aを所定の厚さに研磨してSi層23とする。図4(c)に示すように、このSi層23に対して、下側の縦方向のP型注入領域4bとN型注入領域5bのパターンと位置が整合するように位置決めして、所定パターンでP型不純物とN型不純物をそれぞれ所定の不純物濃度でイオン注入して、前述した第1受光部を構成する縦方向のP型注入領域4aとN型注入領域5aとを交互に横方向に配置させる。
【0071】
次に、前述した第1受光部を構成する縦方向のP型注入領域4aとN型注入領域5aの表面を熱酸化によりSiO膜3aを形成し、その上に、フォトリソ技術を用いて各横方向の透明電極6〜11を連続して形成する。
【0072】
さらにその上に、偏光板12、透明電極13、液晶層14、透明電極15および偏光板16で構成された入射光透過/遮光制御手段としての液晶手段である液晶セルが貼り合わされる。これによって、液晶セルが組み合わされた本実施形態1の固体撮像素子1を製造することができる。
【0073】
なお、図5(a)および図5(b)では、半導体基板21(または半導体層)の表面を熱酸化により透明絶縁層であるSiO膜22を形成し、その上にSi層(デバイス層)23aを貼り合せたが、これとは逆に、図6(a)および図6(b)のように、Si層(デバイス層)23aの表面を熱酸化により透明絶縁層であるSiO膜22を形成し、その下に半導体基板21(または半導体層)を貼り合わせてもよい。
【0074】
ここで、3層積層構造の第1受光部〜第3受光部において、混色はするが、信号処理によりR尊号、G信号およびB信号を得ることが可能である。この場合の信号処理について以下に詳細に説明する。
【0075】
3層積層構造の第1受光部〜第3受光部において、上から第1受光部〜第3受光部とし、第1受光部の膜厚をx1とし、第2受光部の膜厚をx2とし、第3受光部の膜厚をx3とする。入射する可視光

をR,G,Bの合成と考え、それぞれの初期値を

、吸収係数を

としたときの深さxでの各光量を、

とすると、次の式(1)が成立する。
【0076】
【数1】

【0077】
今、各層の信号量をJとすると、次の式(2)が成立する。
【0078】
【数2】

【0079】
したがって、第1層目の信号量は、次の式(3)で現される。
【0080】
【数3】

【0081】
第2層の信号量は、次の式(4)で現される。
【0082】
【数4】

【0083】
第3層の信号量は、次の式(5)で現される。
【0084】
【数5】

【0085】
ここで、各層の信号としてJiが得られる。この情報から入射する可視光のIi(R,G,B)の信号量を求める。
【0086】
上式では、各波長の吸収係数と各層の膜厚は既知であることから、Iiの係数は全て求められる。
【0087】
ここで層番号をiとして、次の式(6)で置き換える。
【0088】
【数6】

【0089】
上記式(3)〜式(5)は式(7)となる。
【0090】
【数7】

【0091】
行列Aを次の式(8)とする。
【0092】
【数8】

【0093】
このように、行列Aを次の式(8)とし、ベクトルをブラケット表記すると、次の式(9)となる。
【0094】
【数9】

【0095】
したがって、式(10)となる。
【0096】
【数10】

【0097】
ここで、多層化に対して一般化(N次元化)すると、各波長に合わせた層で信号を得る場合、層Noをi、波長をλとすると上記式(1)および式(2)は次の式(1’)および式(2’)になる。
【0098】
【数11】

【0099】
上記式(6)は各波長λが層iにて吸収される量としてCを次式で再定義すると、次の式(6’)になる。
【0100】
【数12】

【0101】
このとき、行列Aの成分は、連続量である波長λを離散量として扱う(層iに対応するλを決める)。上記式(8)は次の式(8’)になる。
【0102】
【数13】

【0103】
このとき、式(9)および式(10)はN次元の場合での一般性を失わない。したがって、式(10)によって、入射する可視光のλ成分

が求まる。これによって、第1受光部〜第3受光部からの画素毎の各撮像信号からRGB信号を信号処理により得ることができる。
【0104】
以上により、本実施形態1によれば、半導体層または半導体基板に交互に一方向に隣接配置されたP型注入領域4およびN型注入領域5であって、被写体からの画像光を光電変換する複数層の光電変換部(3層のP型注入領域4a〜4cおよびN型注入領域5a〜5c)が、光電変換部とはバンドギャップの異なる透明層(SiO膜3a〜3d)をその各間に介在して積層され、一方向に直交する他方向にそれぞれ配置された3層のP型注入領域4およびN型注入領域5と、P型注入領域4およびN型注入領域5上に設けられた一方向の複数の電荷転送駆動用の透明電極6〜11と、複数の電荷転送駆動用の透明電極6〜11上に設けられ、入射光を透過または遮光制御する入射光透過/遮光制御手段とを有している。
【0105】
これによって、次の(1)〜(8)の効果を得ることができる。
【0106】
(1)多層のフォトダイオード部(第1受光部〜第3受光部)の構造から、カラーフィルタやその上のレンズを形成するオンチップ(OnChip)工程が不要である。1画素毎に多原色撮像が可能である。各色の容量を、透明電極6〜11に対する電圧印加制御や半導体層厚により変更できる。
【0107】
(2)従来の構成(図11,12)では、PD部、垂直転送部、画素分離領域が必要であったが、本実施形態1では、垂直転送部と画素分離領域が不必要となり、その結果、受光部上の開効率が向上して感度特性が向上する。
【0108】
(3)液晶層14のスイッチイング特性により、光を透過または遮断でき、フォトダイオード部(第1受光部〜第3受光部)と垂直転送部が一体となっており、原理上スミアが発生しない。
【0109】
(4)透明電極6〜11を用いることにより、単層電極での電荷転送が可能になった。
【0110】
(5)固体撮像素子1の画素部に必要な不純物イオン注入工程が縦方向一体となって単純なことから、白傷不良などの不良を低減でき、高歩留まりが期待できる。
【0111】
(6)垂直転送部への信号電荷の移動(読み出し)が不必要であり、その結果、透明電極6〜11の基準電圧が最低2つ(高電圧と低電圧)で済む。低電圧化によって低消費電力化を実現することができる。
【0112】
(7)透明電極6〜11への印加電圧パターンが可変なため、画素サイズを自由に変更できる。
【0113】
(8)レンズレスで撮像を行うことができる。
【0114】
したがって、入射光を透過または遮光制御する入射光透過/遮光制御手段を設けたため、画素部の微細化に伴う受光感度特性の劣化およびスミア特性の劣化を抑制すると共に、遮光膜の形成プロセスがなく製造を簡略化することができ、かつ信号読み出し制御をも無くすことができることを前提として、被写体からの画像光を光電変換する複数層の光電変換部が、この光電変換部とはバンドギャップの異なる透明層をその各間に介在して積層されるため、コレステリック液晶に代えて多層化した複数層の受光部により複数の色信号を、1画素部で一括して同時に検出した1画素部毎の各層の信号電荷から得ると共に、静止画および動画のいずれであっても鮮明なフルカラー撮像を実現することができる。
【0115】
(実施形態2)
本実施形態2では、上記実施形態1の場合よりも暗い場合でも1画素部の平面視面積を増やしかつ近赤外をも検出して、静止画および動画のいずれであっても鮮明なフルカラー撮像を実現する場合について事例的に説明する。
【0116】
図7は、本発明の実施形態2における固体撮像素子の要部構成例を示す平面図である。図8は、図7の固体撮像素子のA−B線縦断面図である。なお、図7および図8では、図1および図2の構成部材と同一の作用効果を奏する構成部材には同一の番号を付してその説明を省略する。
【0117】
図7および図8において、本実施形態2の固体撮像装置1Aにおいて、上記実施形態1の固体撮像装置1の場合と異なるのは、図1の1列のN型注入領域5が、図7の固体撮像素子1Aでは、2列のN型注入領域5,5になって上面から見て、左右の幅を広く取っていることと、第4受光部を更に設けて4層積層構造にした点が異なっている。この場合、2列のN型注入領域5,5の間は薄いN型拡散層になっている。P型注入領域4と2列のN型注入領域5,5とが半導体層に交互に一方向に隣接配置されている。両側のP型注入領域4がその間の2つ分のN型領域5,5を分離することができる。前述したように撮像対象が更に暗い場合に、2列のN型注入領域5,5と例えば3行の透明電極下のN型注入領域5,5とを平面視で1画素部として組み合わせて画素サイズを大きく取ることができる。要するに、N型領域を大きく(上面から見て、左右の幅を広く取る)することと、透明電極を2行から3行(または4行またはそれ以上)など増やして電圧を印加すれば、平面視画素サイズがより大きく取ることができる。
【0118】
即ち、半導体基板2(または半導体層)上に透明絶縁層であるSiO膜3eを介して、第4受光部を構成する縦方向のP型注入領域4dと2列のN型注入領域5dとが交互に横方向に隣接配置されている。これらのP型注入領域4dおよび2列のN型注入領域5d上に透明絶縁層であるSiO膜3dを介して、第3受光部を構成する縦方向のP型注入領域4cと2列のN型注入領域5cとが交互に横方向に配置されている。これらのP型注入領域4c,4dおよび2列のN型注入領域5c,5dはそれぞれ間にSiO膜3dを介して上下に配置されている。これらのP型注入領域4cおよびN型注入領域5c上に透明絶縁層であるSiO膜3cを介して、第2受光部を構成する縦方向のP型注入領域4bと2列のN型注入領域5bとが交互に横方向に隣接配置されている。これらのP型注入領域4b,4cおよび2列のN型注入領域5b,5cはそれぞれ間にSiO膜3cを介して上下に配置されている。これらのP型注入領域4bおよびN型注入領域5b上に透明絶縁層であるSiO膜3bを介して、第1受光部を構成する縦方向のP型注入領域4aと2列のN型注入領域5aとが交互に横方向に隣接配置されている。これらのP型注入領域4a、4bおよび2列のN型注入領域5a、5bはそれぞれ間にSiO膜3bを介して上下に配置されている。これらのP型注入領域4a〜4dと2列のN型注入領域5a〜5dはそれぞれ、平面視で縦方向に一致するように配置されている。
【0119】
P型注入領域4およびN型注入領域5で構成される第1受光部〜第4受光部がそれぞれ透明絶縁層であるSiO膜をそれぞれ介して4層の多層積層構造になっている。この4層の多層積層構造は、撮像素子のカラーフィルタレスを実現するため、各受光部(フォトダイオード部)を構成する4層のSi層(P型注入領域およびN型注入領域)をそれぞれSiO膜3a〜3eの各透明膜で上下に挟み込んだ構造である。SiO膜3a〜3eのバンドギャップがSi層よりも大きいため4層の各Si層に光電変換された信号電荷を閉じ込めることができる。このように、バンドギャップの異なる透明層(ここではSiO膜とSi層)を組み合わせ4層の第1受光部〜第4受光部(光電変換部)からなっている。つまり、一導電型注入領域および他導電型注入領域は、P型注入領域およびN型注入領域で構成される複数層(ここでは4層)の光電変換部がそれぞれ、各間に光電変換部とはバンドギャップの異なる透明層(SiO膜)を介在させた多層積層構造になっている。
【0120】
SiO膜3a〜3eおよび4層のSi層は可視光が透過しかつ、4層のSi層はその深さに応じた光の波長による吸収係数の違いから、4層のSi層は各色の受光部(ダイオード部)とすることができる。例えば第1受光部を構成する縦方向のP型注入領域4aと2列のN型注入領域5aは、最上層であり光の波長が最も短い青色光(B)を主に吸収して光電変換し、第2受光部を構成する縦方向のP型注入領域4bと2列のN型注入領域5bは、中間層であり光の波長が中間の緑色光(G)を主に吸収して光電変換し、第3受光部を構成する縦方向のP型注入領域4cと2列のN型注入領域5cは、最下層であり光の波長が長い赤色光(R)を主に吸収して光電変換し、第4受光部を構成する一方向のP型注入領域4dと2列のN型注入領域5dにおける光電変換部は、光の波長が最も長い近赤外光を吸収して光電変換するようになっている。このように、光電変換部である第1受光部〜第4受光部の多層化による多原色(ここでは三原色のRGBおよび近赤外)のフルカラー撮像を各画素毎に一括して同時に行うことができる。
【0121】
図8の偏光板12、透明電極13、液晶層14、透明電極15および偏光板16から入射光透過/遮光制御手段としての液晶手段である液晶セルが構成されており、この液晶セルと組み合わせて、被写体からの画像光を光電変換して撮像する第1受光部〜第4受光部の4層積層構造を持つ固体撮像素子1Aが構成されている。この液晶セルは、そのスイッチイング特性により、露光時に入射光を透過し、電荷転送時に入射光を遮蔽するように機能する。
【0122】
ここで、本実施形態2の固体撮像素子1Aの電荷転送方法の一例について図9(a)〜図9(c)を用いて詳細に説明する。
【0123】
図9(a)〜図9(c)は、図7の固体撮像素子1Aにおいて2列3行に受光領域を拡張した場合のCCD転送事例を示す平面図である。ここで、透明電極6〜11に印加する低電圧を「0V」、高電圧を「5V」する。
【0124】
図9(a)の「Time1」に示すように、P型注入領域4と2列のN型注入領域5が縦方向に設けられており、最も上の行R1の電荷転送用の横方向の透明電極6(R1)に駆動電圧「0V」が印加された場合に、最も上の行R1のP型注入領域4のポテンシャル電位が「0V」で、2列のN型注入領域5のポテンシャル電位が「5V」になって深くなている。このとき、上から2〜4行目(R2〜R4)の電荷転送用の透明電極7〜9に駆動電圧「5V」が印加されるので、上から2〜4行目(R2〜R4)のP型注入領域4のポテンシャル電位が「5V」で、2列のN型注入領域5のポテンシャル電位が「10V」になってさらに深くなって信号電荷を蓄積することができる。よって、最も深い「10V」の透明電極7〜9下の2列のN型注入領域5に信号電荷が蓄積されて保持される。
【0125】
次に、図9(b)の「Time2」に示すように、最も上の行R1と2行目の行R2の電荷転送用の透明電極6、7に駆動電圧「0V」が印加され、最も上の行R1と2行目の行R2のP型注入領域4のポテンシャル電位が「0V」で、2列のN型注入領域5のポテンシャル電位が「5V」になる。このとき、上から3、4行目の行R3、4の電荷転送用の透明電極8、9に駆動電圧「5V」が印加され、上から3、4行目の行R3、4のP型注入領域4のポテンシャル電位が「5V」で、2列のN型注入領域5のポテンシャル電位が「10V」になっている。さらに、上から5、6行目の行R5およびR6の電荷転送用の透明電極10,11に駆動電圧「0V」が印加されて、上から5、6行目の行R5およびR6のP型注入領域4のポテンシャル電位が「0V」で、2列のN型注入領域5のポテンシャル電位が「5V」になっている。
【0126】
その後、図9(c)の「Time3」に示すように、最も上の行R1の電荷転送用の透明電極6に駆動電圧「5V」が印加され、最も上の行R1のP型注入領域4のポテンシャル電位が「5V」で、2列のN型注入領域5のポテンシャル電位が「10V」になる。このとき、上から2行目(R2)の電荷転送用の透明電極7に駆動電圧「0V」が印加され、上から2行目の行R2のP型注入領域4のポテンシャル電位が「0V」で、2列のN型注入領域5のポテンシャル電位が「5V」になっている。さらに、上から3〜5行目の行R3〜R5の電荷転送用の透明電極8〜10に駆動電圧「5V」が印加されて、上から3〜5行目の行R3〜R5のP型注入領域4のポテンシャル電位が「5V」で、2列のN型注入領域5のポテンシャル電位が「10V」になって深くなている。よって、透明電極8〜10下の2列のN型注入領域5に保持された信号電荷が、透明電極8〜10下の2列のN型注入領域5に保持されて垂直方向に一一コマ電荷転送されることになる。この電荷転送が、撮像領域全面で垂直方向に行われて、これが繰り返され、垂直方向に電荷転送された信号電荷が水平方向に電荷転送されることになる。
【0127】
電荷転送用の単層の透明電極6〜11およびその下の4層のP型注入領域4a〜4dとN型注入領域5a〜5dが繰り返し配設されて、各画素毎の信号電荷が複数列を垂直方向に電荷転送され、その後、水平方向に、電荷転送用の単層の透明電極6〜11およびその下の4層のP型注入領域4a〜4dとN型注入領域5a〜5dが繰り返し配設されて水平方向に電荷転送される。その後、4層に対応した各電荷検出部により電荷検出されて4層分の信号電荷がそれぞれ増幅されて各撮像信号として出力される。前述したが、4層分の各撮像信号は所定の信号処理部により信号処理されて各画素毎のRGB信号および近赤外信号を得ることができる。
【0128】
以上により、本実施形態2によれば、上記実施形態1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0129】
特に、本実施形態2によれば、上記実施形態1の場合よりも暗い場合でも1画素部の平面視面積を増やしかつ近赤外をも検出して、静止画および動画のいずれであっても鮮明なフルカラー撮像を実現することができる。
【0130】
(実施形態3)
本実施形態3では、電荷転送用の透明電極が照射面側とは反対側に存在する裏面照射の場合について説明する。
【0131】
図15は、本発明の実施形態3における固体撮像素子の要部構成例を示す断面図である。なお、図15では、図2の構成部材と同一の作用効果を奏する構成部材には同一の番号を付してその説明を省略する。
【0132】
図15に示すように、裏面照射の固体撮像素子1Bは、半導体層(または半導体基板)に交互に一方向に隣接配置されたP型注入領域4およびN型注入領域5であって、被写体からの画像光を光電変換する複数層(ここでは3層)の光電変換部が、この光電変換部とはバンドギャップの異なる透明層(SiO膜3a〜3e)をその各間に介在させて積層され、一方向に直交する他方向にそれぞれ配置された3層のP型注入領域4a〜4cおよびN型注入領域5a〜5cと、P型注入領域4cおよびN型注入領域5c上に透明層(SiO膜3e)を介して設けられた一方向の複数の電荷転送駆動用の透明電極6〜11と、P型注入領域4aおよびN型注入領域5a上に透明層(SiO膜3a)を介して入射光を透過または遮光制御する入射光透過/遮光制御手段としての液晶セルとを有している。
【0133】
液晶セルは、横方向の偏光を通す偏光板12、液晶制御用の下側の透明電極13、ツイストネマテック(TN)またはスーパーツイストネマテック(STN)の液晶材料などからなる液晶層14、液晶制御用の上側の透明電極15、縦方向の偏光を通す偏光板16をこの順に積層する。なお、液晶材料としては、偏光板12、16を用いずに、ツイストネマテック(TN)やスーパーツイストネマテック(STN)以外のシャッタ機能に用いる液晶材料であって、動作速度の速い液晶材料を選定して用いることもできる。このように、入射光を受光する第1受光部〜第3受光部からなるSi層の3層積層構造の上部に液晶セルによるシャッタ機構を導入しかつ、電荷転送用の透明電極6〜11が照射面側とは反対側に存在する裏面照射により、第1受光部〜第3受光部の開口サイズを、従来の遮光膜の開口サイズに比べて格段に向上させ、受光感度特性の改善とスミア特性の改善を図ることが可能となる。この場合、透明電極6〜11は、入射光を遮断してもよく透明電極でなくてもよい。
【0134】
本実施形態3の固体撮像素子1Bによれば、電荷転送用の透明電極6〜11が照射面側とは反対側に存在するため、P型注入領域4aおよびN型注入領域5aに光入射させるのに、液晶セルを通過した入射光は上記実施形態1,2のように透明電極6〜11を通過する必要ななく、その分、入射光の利用効率がよくなる。
【0135】
なお、本実施形態3では特に説明しなかったが、間にSiO膜が介在した3層のP型注入領域4a〜4cおよびN型注入領域5a〜5cの製造方法や、透明電極6〜11による電荷転送方法について上記実施形態1,2と同様である。要するに、電荷転送用の透明電極6〜11が、P型注入領域4およびN型注入領域5の照射面側とは反対側に位置している以外は上記実施形態1,2と同様である。
【0136】
(実施形態4)
図10は、本発明の実施形態4として、本発明の実施形態1〜3の固体撮像素子1または1Aからの撮像信号を信号処理する固体撮像装置を撮像部に用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【0137】
図10において、本実施形態4の電子情報機器90は、上記実施形態1〜3の固体撮像素子1、1Aおよび1Bのいずれかからの撮像信号に対して所定の信号処理を行ってカラー画像信号を得る固体撮像装置91と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を記録用に所定の信号処理した後にデータ記録可能とする記録メディアなどのメモリ部92と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を表示用に所定の信号処理した後に液晶表示画面などの表示画面上に表示可能とする液晶表示装置などの表示部93と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を通信用に所定の信号処理をした後に通信処理可能とする送受信装置などの通信部94と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を印刷用に所定の印刷信号処理をした後に印刷処理可能とするプリンタなどの画像出力部95とを有している。なお、この電子情報機器90として、これに限らず、固体撮像装置91の他に、メモリ部92と、表示部93と、通信部94と、プリンタなどの画像出力部95とのうちの少なくともいずれかを有していてもよい。
【0138】
この電子情報機器90としては、前述したように例えばデジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、監視カメラ、ドアホンカメラ、車載用後方監視カメラなどの車載用カメラおよびテレビジョン電話用カメラなどの画像入力カメラ、スキャナ装置、ファクシミリ装置、カメラ付き携帯電話装置および携帯端末装置(PDA)などの画像入力デバイスを有した電子機器が考えられる。
【0139】
したがって、本実施形態4によれば、この固体撮像装置91からのカラー画像信号に基づいて、これを表示画面上に良好に表示したり、これを紙面にて画像出力部95により良好にプリントアウト(印刷)したり、これを通信データとして有線または無線にて良好に通信したり、これをメモリ部92に所定のデータ圧縮処理を行って良好に記憶したり、各種データ処理を良好に行うことができる。
【0140】
なお、本実施形態1〜3では、光電変換部を構成する半導体層(または半導体基板)がシリコン層(またはシリコン基板)であり、透明層が二酸化シリコン層である場合について説明したが、これに限らず、光電変換部を構成する半導体層(または半導体基板)がゲルマニュウム層(またはゲルマニュウム基板)であり、透明層が二酸化シリコン層であってもよい。要するに、半導体層(または半導体基板)が可視光または近赤外まで受光できるバンドギャップをもつ半導体(例えばシリコンまたはゲルマニュウムなど)であり、透明層が可視光を透過するバンドギャップをもつ二酸化シリコン層などである。
【0141】
なお、本実施形態1〜3では、特に詳細には説明しなかったが、高電圧の電荷転送駆動用の透明電極6〜11の印加位置を一または複数に印加することにより、画素部毎の信号電荷を各光電変換部で保持する平面視画素露光サイズが制御可能とされており、画素露光サイズは、他方向の一導電型注入領域または他導電型注入領域のn(nは自然数)列と、一方向の電荷転送駆動用の透明電極のm(mは自然数)行の隣接半導体領域を1画素部として組み合わせている。高電圧は複数の高電圧を有して、半導体層または半導体基板のポテンシャ電位が電荷転送方向に順次深くなるように半導体層または半導体基板に高電圧を付与するようにしてもよい。この場合の半導体層または半導体基板は、導電型がN型半導体、P型半導体および真性半導体の少なくともいずれかである。
【0142】
以上のように、本発明の好ましい実施形態1〜4を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態1〜4に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態1〜4の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、液晶セルと組み合わせて、被写体からの画像光を光電変換して撮像する半導体素子で構成された特に高画素、高感度、高スミア特性向けの固体撮像素子、この固体撮像素子を、画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばデジタルビデオカメラおよびデジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、画像入力カメラ、スキャナ装置、ファクシミリ装置、DSC、監視カメラ、テレビジョン電話装置、カメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器の分野において、入射光を透過または遮光制御する入射光透過/遮光制御手段を設けたため、画素部の微細化に伴う受光感度特性の劣化およびスミア特性の劣化を抑制すると共に、遮光膜の形成プロセスがなく製造を簡略化することができ、かつ信号読み出し制御をも無くすことができることを前提として、被写体からの画像光を光電変換する複数層の光電変換部が、この光電変換部とはバンドギャップの異なる透明層をその各間に介在して積層されるため、コレステリック液晶に代えて多層化した複数層の受光部により複数の色信号を、1画素部で一括して同時に検出した1画素部毎の各層の信号電荷から得ると共に、静止画および動画のいずれであっても鮮明なフルカラー撮像を実現することができる。
【符号の説明】
【0144】
1、1A、1B 固体撮像素子
2 半導体基板(または半導体層)
3a〜3e SiO膜(透明層)
4、4a〜4d P型注入領域
5、5a〜5d N型注入領域
6〜11 透明電極
12 偏光板
13 透明電極
14 液晶層
15 透明電極
16 偏光板
21 半導体基板(または半導体層)
22 SiO
23a,23 Si層
90 電子情報機器
91 固体撮像装置
92 メモリ部
93 表示部
94 通信部
95 画像出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層または半導体基板に交互に一方向に隣接配置された一導電型注入領域および他導電型注入領域であって、被写体からの画像光を光電変換する複数層の光電変換部が、該光電変換部とはバンドギャップの異なる透明層をその各間に介在して積層され、該一方向に直交する他方向にそれぞれ配置された一導電型注入領域および他導電型注入領域と、
該一導電型注入領域および該他導電型注入領域上に設けられた一方向の複数の電荷転送駆動用の透明電極と、
該複数の電荷転送駆動用の透明電極上または、該一導電型注入領域および該他導電型注入領域上に設けられ、入射光を透過または遮光制御する入射光透過/遮光制御手段とを有している固体撮像素子。
【請求項2】
前記透明層のバンドギャップが前記複数層の光電変換部の半導体層のバンドギャップよりも大きく、該光電変換部がその下層および上層の該透明層に挟み込まれて、該複数層の光電変換部でそれぞれ光電変換された各信号電荷が該光電変換部毎にそれぞれ閉じ込められるように構成されている請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記複数層の光電変換部の深さに応じた光の波長による吸収係数の違いから、1画素部毎の複数の色信号が該複数層の光電変換部からの各信号電荷に基づいて算出可能である請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記複数層の光電変換部が、第1受光部〜第3受光部の3層構造を有する場合に、該第1受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が最も短い青色光を主に吸収して光電変換し、該第2受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が中間の緑色光を主に吸収して光電変換し、該第3受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が最も長い赤色光を主に吸収して光電変換する請求項3に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記複数層の光電変換部が、第1受光部〜第4受光部の4層構造を有する場合に、該第1受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が最も短い青色光を主に吸収して光電変換し、該第2受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が中間の緑色光を主に吸収して光電変換し、該第3受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が長い赤色光を主に吸収して光電変換し、該第4受光部を構成する一方向の一導電型注入領域と他導電型注入領域における光電変換部は、光の波長が最も長い近赤外光を吸収して光電変換する請求項3に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記半導体層または前記半導体基板は可視光または近赤外光まで受光できるバンドギャップをもつ半導体であり、前記透明層は可視光を透過するバンドギャップを持っている請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記複数の電荷転送駆動用の透明電極に印加する高電圧と低電圧のうちの高電圧の印加隣接電極数を調整することにより、前記複数の光電変換部の平面視画素露光サイズを可変してフォトダイオード容量を可変可能とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記複数の光電変換部の膜厚を調整することにより、フォトダイオード容量を可変可能とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
前記入射光透過/遮光制御手段は、露光時に入射光を透過し、電荷転送時に入射光を遮光する液晶手段で構成されている請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項10】
前記液晶手段は、一方向およびこれに直交する他方向の一方の偏光を通す偏光板、液晶制御用の下側の透明電極、液晶層、液晶制御用の上側の透明電極、該一方向およびこれに直交する他方向の他方の偏光を通す偏光板がこの順に積層されている請求項9に記載の固体撮像素子。
【請求項11】
前記一方向の複数の電荷転送駆動用の透明電極に電荷転送駆動用電圧を順次印加可能とする電荷転送制御手段がさらに設けられ、露光時に、前記液晶手段が入射光を透過制御した状態で、該電荷転送駆動用電圧のうちの高電圧と低電圧を該電荷転送駆動用の透明電極の一または複数毎に交互に印加することにより、該電荷転送駆動用の透明電極下の他方向の一導電型注入領域および他導電型注入領域のうちの深いポテンシャル電位領域に画素部毎の信号電荷が保持される請求項9に記載の固体撮像素子。
【請求項12】
前記一方向の複数の電荷転送駆動用の透明電極に電荷転送駆動用電圧を順次印加可能とする電荷転送制御手段がさらに設けられ、電荷転送時に、前記液晶手段が入射光を遮光制御した状態で、該電荷転送駆動用電圧のうちの高電圧と低電圧を該電荷転送駆動用の透明電極の一または複数の交互の印加位置を順次所定方向にずらすことにより、該電荷転送駆動用の透明電極下の他方向の一導電型注入領域および他導電型注入領域のうちの深いポテンシャル電位領域に画素部毎の信号電荷を保持して所定方向に電荷転送する請求項9または11に記載の固体撮像素子。
【請求項13】
前記高電圧の前記電荷転送駆動用の透明電極の印加位置を一または複数に印加することにより、前記画素部毎の信号電荷を保持する画素サイズが制御可能とされており、該画素サイズは、前記他方向の一導電型注入領域または他導電型注入領域のn(nは自然数)列と、前記一方向の電荷転送駆動用の透明電極のm(mは自然数)行の隣接半導体領域を1画素部として組み合わせている請求項11または12に記載の固体撮像素子。
【請求項14】
前記高電圧は複数の高電圧を有して、前記半導体層または半導体基板のポテンシャ電位が電荷転送方向に深くなるように該半導体層または半導体基板に高電圧を付与する請求項13に記載の固体撮像素子。
【請求項15】
前記半導体層または半導体基板は、導電型がN型半導体、P型半導体および真性半導体の少なくともいずれかである請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いた電子情報機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−38286(P2013−38286A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174387(P2011−174387)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】