固体電解コンデンサ用多孔質陽極体、その製造方法、及び固体電解コンデンサ
【課題】 空孔直径分布のピーク位置、数、量を陰極剤の種類応じて最適化でき、陰極剤の含浸性を向上させることのできる多孔質陽極体、及び高容量、低ESR、tanδ特性が良好で、長期信頼性のある固体電解コンデンサを提供すること。
【解決手段】 酸素を含有するニオブ材料及び酸素を含有するタンタル材料から選択される少なくとも1種の材料の粉末と還元温度で固体である空孔形成剤とを含む成形体を還元剤と共に還元反応させる工程、及び得られた還元反応生成物から空孔形成剤を除去する工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ用多孔質陽極体の製造方法、及びその方法により得られた陽極体を用いた固体電解コンデンサ。ニオブ材料としては、ニオブ、ニオブ合金及びニオブ化合物から選択される少なくとも1種が、タンタル材料としてはタンタル、タンタル合金及びタンタル化合物から選択される少なくとも1種が用いられる。
【解決手段】 酸素を含有するニオブ材料及び酸素を含有するタンタル材料から選択される少なくとも1種の材料の粉末と還元温度で固体である空孔形成剤とを含む成形体を還元剤と共に還元反応させる工程、及び得られた還元反応生成物から空孔形成剤を除去する工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ用多孔質陽極体の製造方法、及びその方法により得られた陽極体を用いた固体電解コンデンサ。ニオブ材料としては、ニオブ、ニオブ合金及びニオブ化合物から選択される少なくとも1種が、タンタル材料としてはタンタル、タンタル合金及びタンタル化合物から選択される少なくとも1種が用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極剤を含浸させるのに適した空孔分布(径のピーク位置、平均空孔径及び空孔量)に制御し、かつ酸素量を容易に調整することができる固体電解コンデンサ用のニオブまたはタンタル系多孔質陽極体の製造方法に関する。また、本発明は、その方法により得られたニオブまたはタンタル系多孔質陽極体を用いた、高容量、低ESR及びtanδ特性が良好で、長期信頼性を有する固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器に使用されるコンデンサは、小型で大容量のものが望まれている。このようなコンデンサの中でもタンタルコンデンサ、ニオブコンデンサは大きさの割には容量が大きく、性能が良好なため好んで使用されている。さらに、最近の電子デバイスは、低電圧作動、高周波作動、低ノイズ化が求められており、固体電解コンデンサにおいても、より高容量、低ESR(等価直列抵抗)、tanδ特性の向上が求められている。
【0003】
弁作用金属、弁作用金属合金、弁作用金属化合物などを用いたコンデンサの陽極体としては、一般的に弁作用金属凝集粉、弁作用金属合金凝集粉、弁作用金属化合物凝集粉を用いた多孔質陽極体が使用されている。
【0004】
高容量、低ESR、tanδ特性をより向上させるためには、多孔質陽極体の比表面積が大きいことと、対電極となる陰極剤の含浸性がよいことを同時に満たす必要がある。多孔質陽極体の比表面積を大きくするには、陽極体を構成する1次粉を小さくすればよいが、小さな1次粉が作り出す空孔は必然的に小さくなる。多孔質陽極体を用いてコンデンサを製造する場合、これら空孔に効率良く十分な量の固体電解質を、陽極体の表面から深部まで含浸させなければならない。特に、陽極体の体積が10mm3以上ある大きな多孔質陽極体の場合、表面から深部までの距離が長く、小さな空孔では十分な固体電解質の含浸ができなかった。また、空孔径分布にバラツキが生じ一定の空孔が形成できない問題もある。したがって、陰極剤種類に適した空孔径分布をもつ多孔質陽極体が望まれている。
【0005】
コンデンサの陽極体で用いる弁作用金属、弁作用金属合金、あるいは弁作用金属化合物としてニオブ、ニオブ酸化物、タンタル、タンタル酸化物などを用いる場合、一般的には、酸素を含有するニオブあるいはタンタルを還元処理することにより酸素量を制御して製造されるニオブ凝集粉、ニオブ酸化物凝集粉、タンタル凝集粉、タンタル酸化物凝集粉などが用いられる。これらの凝集粉を製造する方法として、還元処理による方法が古くから知られている。
【0006】
特許文献1〜6には、酸素ゲッター金属を用いる製造方法が記されている。特許文献7〜8には、還元剤を気体状にして反応させる方法が記されている。特許文献9〜10には、ハロゲン化塩などを助剤として用いる製造方法が記されている。特許文献11〜14には、還元剤として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム、炭素などを用いる製造方法が記されている。特許文献15〜16には、還元剤と弁作用金属を分離して配置し反応させる製造方法が記されている。特許文献17〜18には、制御された温度で、2段階で還元反応させる製造方法が記されている。特許文献19には、還元剤として、珪素合金や水素化金属を用いる製造方法が記されている。特許文献20には、陽極リードを植え立てした陽極用成形体と還元剤を共存させ加熱する、陽極焼結体の製造方法が記されている。
【0007】
しかしながら、これらの製造方法は、いずれも酸素量を制御することが目的であり、空孔を積極的に制御するものではなくこれら製造方法で得られた陽極焼結体を用いて固体電解コンデンサを作製した場合、陰極剤を含浸するのに適した空孔を形成することが難しく、特に10mm3以上の大きな焼結体(陽極体)を用いると陰極剤の含浸性が悪く、その結果、作成したコンデンサは、容量が低く、ESRが高く、tanδ高くなるという問題を抱えていた。
【0008】
特許文献21には、空孔形成剤を用いる製造方法が記されている。該公報には、酸溶解性の空孔形成剤として、マグネシウム、マグネシウム水素化物、カルシウム、カルシウム水素化物、アルミニウムなどが例示されている。しかしながら、これらの空孔形成剤は、前述した先行技術で還元剤として用いられている物質であり、該公報に記されている酸溶解性の空孔形成剤を用いた製造方法で作成した粉体を用いて固体電解コンデンサを作成しても、前記先行技術と同様、容量が低く、ESRが高く、tanδが高くなるという問題は解決されない。
【0009】
【特許文献1】米国特許第4722756号明細書
【特許文献2】米国特許第4960471号明細書
【特許文献3】特開平03−229801号公報
【特許文献4】特表2002−507247号公報
【特許文献5】特表2002−524378号公報
【特許文献6】特表2002−524379号公報
【特許文献7】米国特許第4537641号明細書
【特許文献8】特表2002−544375号公報
【特許文献9】米国特許第1728941号明細書
【特許文献10】米国特許第4687632号明細書
【特許文献11】米国特許第3697255号明細書
【特許文献12】米国特許第5242481号明細書
【特許文献13】英国特許第870930号
【特許文献14】特表2002−544677号公報
【特許文献15】特開平03−170648号公報
【特許文献16】特開2003−13115号公報
【特許文献17】英国特許第1266065号
【特許文献18】特開2000−119710号公報
【特許文献19】米国特許第2516863号明細書
【特許文献20】特開平11−111575号公報
【特許文献21】特開2001−345238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、空孔分布が陰極剤を含浸させるのに適した範囲に制御された固体電解コンデンサ用の陽極体であって、高容量、低ESRで、tanδ特性が良好、かつ耐湿性、高温負荷などの長期信頼性に優れたコンデンサを作製できる多孔質陽極体の製造方法、及びその陽極体を用いた電解コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の固体電解コンデンサ用多孔質陽極体の製造方法、その方法により得られた多孔質陽極体、その多孔質陽極体を用いた固体電解コンデンサ及び用途に関する。
【0012】
[1]酸素を含有するニオブ材料及び酸素を含有するタンタル材料から選択される少なくとも1種の材料の粉末と還元温度で固体である空孔形成剤とを含む成形体を還元剤を用いて還元反応に付す工程、及び得られた還元反応生成物から空孔形成剤を除去する工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ用多孔質陽極体の製造方法。
[2]ニオブ材料がニオブ、ニオブ合金及びニオブ化合物から選択される少なくとも1種であり、タンタル材料がタンタル、タンタル合金及びタンタル化合物から選択される少なくとも1種である前記1に記載の製造方法。
[3]酸素を含有するニオブ材料または酸素を含有するタンタル材料が、酸素含有量50質量%以下であり、かつ、ニオブ、一酸化六ニオブ、一酸化ニオブ、二酸化ニオブ、五酸化ニオブ、タンタル、及び五酸化タンタルから選択されるの少なくとも一つの結晶を含む前記1または2に記載の製造方法。
[4]酸素を含有するニオブ材料が、水素、硼素、窒素、アンチモン、タンタル、ジルコニウム、タングステン、珪素、アルミニウムから選択される少なくとも1種の元素を含む前記1〜3のいずれかに記載の製造方法。
[5]酸素を含有するタンタル材料が、水素、硼素、窒素、アンチモン、ニオブ、ジルコニウム、タングステン、珪素、アルミニウムから選択される少なくとも1種の元素を含む前記1〜3のいずれかに記載の製造方法。
[6]成形体が窒化珪素を含む前記1〜5のいずれかに記載の製造方法。
[7]還元剤が、タンタル以上の酸素親和性を持つ金属、合金及びそれらの水素化物から選択される少なくとも1種である前記1〜6のいずれかに記載の製造方法。
[8]還元剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ミッシュメタル、イットリウム、アルミニウム、タンタル、ニオブ、炭素、珪素、これらの合金、これらの水素化物、及び水素から選択される少なくとも1種である前記7に記載の製造方法。
[9]成形体の形状が、リード付の成形体または基体と一体化した成形体であり、そのリードまたは基体が、ニオブ、ニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル、タンタル合金、及びタンタル化合物から選択される少なくとも1種からなる前記1〜8のいずれかに記載の製造方法。
[10]成形体が厚さ1mm以下に成形される前記9に記載の製造方法。
[11]還元反応工程前に、成形体を焼結させる工程を含み、かつ空孔形成剤が焼結温度で固体である前記1〜10のいずれかに記載の製造方法。
[12]焼結が、500〜2000℃の温度で行われる前記11に記載の製造方法。
[13]還元反応工程前に、成形体または焼結体と還元剤とを混合する工程を含む前記1〜12のいずれかに記載の製造方法。
[14]混合する温度が50℃以下である前記13に記載の製造方法。
[15]還元反応工程において、450〜2000℃の範囲に加熱する前記1〜14のいずれかに記載の製造方法。
[16]12℃/分以下の昇温速度で加熱する前記15に記載の製造方法。
[17]還元反応工程後の空孔形成剤の除去工程前に、不活性ガスにより0.1〜21質量%の酸素含有量に希釈した酸素含有気体を用いて徐酸化する工程を含む前記1〜16のいずれかに記載の製造方法。
[18]徐酸化する温度が60℃以下である前記17に記載の製造方法。
[19]空孔形成剤の除去工程が、水、有機溶媒、酸性溶媒、アルカリ性溶媒、アミン含有溶媒、アミノ酸含有溶媒、ポリリン酸含有溶媒、クラウンエーテル溶媒、キレート剤含有溶媒、アンモニウム塩含有溶媒及びイオン交換樹脂分散溶媒から選択される少なくとも1種の溶媒により除去する工程である前記1〜18のいずれかに記載の製造方法。
[20]空孔形成剤を除去する温度が、50℃以下である前記19に記載の製造方法。
[21]還元反応工程後、空孔形成剤除去工程前に、残存する還元剤を除去する工程を含む前記1〜20のいずれかに記載の製造方法。
[22]残存する還元剤を除去する工程が、高減圧下、450〜2000℃で行われる前記21に記載の製造方法。
[23]還元反応工程前、あるいは還元反応工程後の空孔形成剤除去工程前に、窒素、硼素、リン、硫黄、セレン、テルル、アルミニウム、珪素及びアンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を成形体または焼結体にドープする工程を含む前記1〜22のいずれかに記載の製造方法。
[24]還元反応工程前、還元反応工程中、還元反応工程後の空孔形成剤除去工程前、または空孔形成剤除去工程後に、脱水素工程を含む前記1〜23のいずれかに記載の製造方法。
[25]前記1〜24のいずれか1項に記載の方法で作成された固体電解コンデンサ用の陽極体。
[26]前記1〜24のいずれか1項に記載の方法で多孔質陽極体を製造し、この陽極体を一方の電極とし、誘電体を介して対電極を構成する固体電解コンデンサの製造方法。
[27]2つ以上の多孔質陽極体が、電気的に並列に接続される前記26に記載のコンデンサの製造方法。
[28]前記26に記載の方法で製造される固体電解コンデンサ。
[29]前記28に記載の固体電解コンデンサを搭載した電子回路。
[30]前記28に記載の固体電解コンデンサを搭載した電子機器。
【発明の効果】
【0013】
本発明はニオブ材料及び/またはタンタル材料と空孔形成剤とを含有する混合物の成形体に対して還元反応を行い、ニオブ材料及び/またはタンタル材料中に含まれる酸素量を調整し、次いで還元反応温度では除去されず固体で前記材料中に残存する空孔形成剤を除去する固体電解コンデンサ用多孔質陽極体の製造方法を提供するものである。本発明の製造方法によれば、空孔形成剤の種類、平均粒径、添加量を制御することにより、陰極剤の種類に応じて空孔直径分布のピーク位置、数、量を調整でき、陰極剤の含浸性を向上させることができる。特に多孔質陽極体の体積が10mm3以上で空孔率が55体積%以上の大型の陽極体では、1μm以上の空孔容積が全空孔容積の10体積%以上に調整することができ、陰極剤の含浸性が高くなり、高容量で、かつ低ESR及びtanδ特性が良好で、長期信頼性のおける固体電解コンデンサとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[1]混合物成形体
本発明の製造方法における出発原料である混合物成形体は、酸素を含有するニオブ材料及び酸素を含有するタンタル材料から選択される少なくとも1種の材料の粉末と空孔形成剤とを含む混合物からなる。粉末としては、凝集等の加工がなされていない一次粉末、これを凝集させた二次凝集粉末及びそれらの造粒物である造粒粉末のいずれもが使用可能である。一次粉末としては平均粒径が0.01〜4μmのものが好ましく、二次凝集粉末としては平均粒径が0.1〜20μmのものが好ましく、造粒粉末としては平均粒径が0.2〜200μmのものが好ましい。粉末の形状は、球状、棒状、扁平状、フレーク状など、形状に左右されず好適に使用できる。熱履歴が少なく、比表面積の大きい粉体を用いることが望ましい。
【0015】
前記粉末と空孔形成剤とを媒体に混合させた混合液を調製して用いることにより、出発原料に用いる混合物成形体は様々な形状とすることができる。例えば、前記混合液を乾燥させて得られた混合物粉、混合物の造粒粉末を圧縮成形した混合物成形体、前記混合液を鋳型等に入れ媒体を除去した混合物成形体、前記混合液をフィルム、箔、板、ワイヤー等に塗布、印刷、浸析させて得られた混合物成形体などの形状とすることができる。さらにこれらの成形体に線状、棒状、箔状、板状などの引き出しリードを植え込み、あるいは溶接しても良い。また、必要に応じて、混合物粉あるいは成形体を加熱などによる予備凝集などの操作を行っても良い。
【0016】
また、金型等を使用して成形体を成形する際には角の欠け等を防止するために金型表面に離型剤を塗布またはスプレーして使用することもできる。離型剤としては残留成分がコンデンサの電気特性に影響を与えない限り特に制限無く使用できるが、フッ素系、BN系、シリコン系、スルホン酸系、あるいはステアリン酸系の滑剤が好ましい。
【0017】
前記混合液を調製する際に用いる媒体としては、水、アルコール類、エーテル類、セルソルブ類、ケトン類、エステル類、アミド類、スルホキシド類、スルホン類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。空孔形成剤の溶解度が低い溶媒を選択することが好ましい。また、混合液を調製する温度で、液体で存在する安価な溶媒が好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルイソブチルエーテル、メチルセルソルブ、ダイグライム、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、酢酸メチル、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、トリクレン、四塩化炭素、クロロベンゼンなどを好ましく使用することができる。
【0018】
また、混合液の調製には、通常の混合機を用いることができる。例えば、振とう混合機、V型混合機、コニカルブレンダー、ビーズ混合機、ナウターミキサー、二本ロール、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ペブルミル、トロンミル、サンドグラインダー、セグバリアトライター、インペラー分散機、超音波分散機、ホモジナイザー、ニーダー、衝撃ミル、ストーンミルなどが好適に使用できる。
【0019】
前記粉末と空孔形成剤との合計が混合液中に占める割合(固形分濃度)は、目的の成形体の形態、用いる溶媒の種類などによって異なるが、通常10質量%以上100質量%未満である。濃度が低すぎると溶媒の留去に過剰な時間と熱を必要とする。したがって、20質量%以上100質量%未満が好ましく、30質量%以上100質量%未満が特に好ましい。
【0020】
混合液を調製する温度は、−80〜120℃が好ましい。温度が高すぎるとニオブやタンタルの表面が酸化され酸素量が増大する。酸素量の増大は、還元反応に必要な還元剤の使用量を多くするため経済的に好ましくない。温度が低すぎることは、冷凍機などの付帯設備が多くなり経済的に好ましくない。したがって、−40〜50℃がより好ましく、−10〜40℃がさらに好ましく、0〜30℃が特に好ましい。混合に要する時間は、1分以上あれば特に制限はないが、通常10分〜100時間である。
【0021】
混合液には、バインダーを配合することができる。無機バインダー、有機バインダーのいずれも使用できるが、通常、樟脳、ナフタリン、ステアリン酸等の石けん脂肪酸、カーボワックス、植物ワックス、精製パラフィン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミドなどのアクリル系ポリマー、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリルアミドなどのメタクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニル系ポリマー、ポリエチレンカーボネートなどが使用できる。バインダーの配合量は、その種類によって一概には言えないが、前記粉末及び空孔形成剤の合計を100質量部としたときに、通常1〜15質量部であり、好ましくは2〜10質量部、さらに好ましくは3〜8質量部である。
【0022】
このように調製された混合液は、混合液をそのまま用いて混合物成形体を形成しても良いし、溶媒を一部留去して濃度調整をしたのちに用いて成形体を形成しても良いし、溶媒を乾燥したのち成形しても良い。また、成形したのちに乾燥しても良い。溶媒の留去は、使用する溶媒の沸点にもよるが、減圧から加圧の適当な圧力のもと、−40〜200℃で行われる。一般的には、減圧下、常温以上120℃以下が好ましい。溶媒の留去には、熱風乾燥、噴霧乾燥、真空加熱乾燥、流動乾燥、静置乾燥、凍結乾燥などの通常の方法を用いることができる。造粒粉とする場合は、ナウターミキサー、リボコーン乾燥機、撹拌乾燥機などを用いて、造粒しながら乾燥することが好ましい。
【0023】
混合物を構成する一方の物質である、酸素を含有するニオブ材料及び酸素を含有するタンタル材料は、酸素を含有するニオブまたはタンタルのほか、ニオブまたはタンタルと他の成分との合金や複合体、炭素、硼素、リン、及び/または窒素等の成分を含むニオブまたはタンタルの化合物であってもよく、また、これらの水素化物であってもよい。前述の酸素を含有するニオブまたはタンタル、ニオブ合金、タンタル合金、ニオブ化合物あるいはタンタル化合物、またはこれらの水素化物は、その種類によっても異なるが、50質量%以下の酸素を含む。好ましい酸素含有量は0.01〜30質量%であり、さらに好ましくは0.1〜15質量%である。このようなニオブ材料及び/またはタンタル材料には、Nb、Nb6O、NbO、NbO2、Nb2O5、Ta、Ta2O5の少なくとも1種の結晶を含んでいてもよい。
【0024】
前記のニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル合金及びタンタル化合物において、ニオブ、タンタル及び酸素以外の成分としては、水素、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、プラチナ、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀、硼素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、炭素、珪素、ゲルマニウム、スズ、鉛、窒素、リン、砒素、アンチモン、ビスマス、硫黄、セレン、テルル、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素が例示される。漏れ電流特性(LC)をより安定させるという観点からは、水素、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、亜鉛、硼素、アルミニウム、珪素、窒素、リン、アンチモン、ネオジム、エルビウム、イッテルビウム及びルテチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素が好ましい。ニオブ、タンタル及び酸素以外の元素成分の存在量は、0.01〜10原子%が好ましい。
【0025】
前記合金及び化合物は、無定形、非晶質、ガラス状、コロイド状、結晶などの形態をとっているものであっても良い。さらに、コンデンサの耐熱性をより向上させるためには、硼素、窒素、アンチモン、ジルコニウム、タングステン、珪素及びアルミニウムの少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。窒素と珪素を含む場合、窒化珪素として配合してもよい。窒化珪素の具体例としては、SiN、Si2N2、Si2N3、Si3N4などが例示され、その形態としては、無定形、非晶質、ガラス状、コロイド状、結晶などが挙げられる。
【0026】
このようなニオブ材料またはタンタル材料からなる粉末は、米国特許4084965号公報、特開平10−242004号公報、特開2002−25864号公報などに記載されているニオブ粉、ニオブ化合物粉、ニオブ合金粉の製造方法など、公知の方法を用いて製造することができる。
【0027】
混合物を構成するもう一方の物質である空孔形成剤は、還元反応を行う工程前あるいは工程中に、ニオブ材料及びタンタル材料と実質的に反応せず、還元反応を行う温度(通常450℃以上)で固体のまま存在する物質、具体的には酸化物または還元反応工程が行われる際に酸化物となっている化合物が好ましい。また、還元反応工程前に焼結による予備凝集を行う場合は、予備凝集を行う焼結温度(通常500℃以上)において空孔形成剤は前記と同様であることが好ましい。
還元反応工程中に固体のまま存在する空孔形成剤を用いることにより、還元反応温度においてニオブ材料及び/またはタンタル材料からなる粉末の必要以上の凝集を防ぎ、ニオブ材料及び/またはタンタル材料同士の接点でのみ融着を起こさせることができる。還元反応温度において液体となる空孔形成剤を用いた場合には、ニオブ材料及び/またはタンタル材料からなる粉末の体積収縮を防止する効果が小さくなり、望む空孔より小さな空孔を形成する場合がある。また、空孔の存在率に偏りが発生する場合がある。還元反応温度において気体となる空孔形成剤を用いた場合には、反応温度において空孔形成剤がニオブ材料及び/またはタンタル材料からなる粉末の隙間から抜け出し、小さな空孔しか形成できなくなる。これらのことは、還元反応工程だけでなく予備凝集工程においても同様である。
【0028】
また、ニオブ材料及び/またはタンタル材料からなる粉末の必要以上の凝集を防止することにより、コンデンサ作製時の陰極剤の含浸性に最適な多孔質陽極体の密度をコントロールすることができ、その陽極体の比表面積を大きく残し、その陽極体のもつ単位体積あたりの容量を大きくすることができる。
【0029】
空孔形成剤としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、水銀、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、珪素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムから選択される少なくとも1種の酸化物や、これら酸化物を与える水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩を単独でまたは二種以上混合して用いることができる。
【0030】
空孔形成剤は、還元反応後の工程で、好ましくは溶媒を用いて除去される。したがって、空孔形成剤としては溶媒に対する溶解性の良いものが好ましい。さらに、溶解除去されるため安価な空孔形成剤を用いることが経済的に有利である。したがって、特に好ましい空孔形成剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酸化リチウム、炭酸リチウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸マグネシウムカルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化バリウム、炭酸バリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、水酸化イットリウム、炭酸イットリウム、酸化ランタン、水酸化ランタン、炭酸ランタン、酸化セリウム、水酸化セリウム、炭酸セリウム、酸化ネオジム、水酸化ネオジム、炭酸ネオジム、酸化サマリウム、水酸化サマリウム、炭酸サマリウム、酸化マンガン、炭酸マンガン、酸化鉄、水酸化鉄、炭酸鉄、酸化鉄マグネシウム、酸化鉄鉛、酸化亜鉛、酸化亜鉛バリウム、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化鉛及び炭酸鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0031】
用いる空孔形成剤の量は、求める多孔質陽極体の空孔率(多孔質陽極体中の空孔の割合)が十分得られる量以上であればよい。ただし、過剰に用いる必要はなく、用いる空孔形成剤の分子量、形状、平均粒径、嵩密度、タッピング密度によっても異なるが、通常、空孔形成剤の量は、ニオブ材料及び/またはタンタル材料と空孔形成剤の合計量を基準にして70質量%以下が好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
空孔形成剤は粉体を用いることが好ましく、粉体の形状は、球状、棒状、扁平状、フレーク状など形状に左右されず好適に使用できる。
【0033】
空孔形成剤の粒径は、陽極として用いる多孔質陽極体の空孔直径に影響し、多孔質陽極体の空孔直径はコンデンサの容量及びコンデンサ製造工程における陰極剤の含浸性に影響する。陰極剤の含浸性が良好であると、高容量、低ESR、tanδ特性の良好なコンデンサとすることができる。空孔直径分布のピークが小さい多孔質陽極体には陰極剤が良好に含浸しない。コンデンサ用多孔質陽極体の望ましい空孔直径は、平均径として0.01〜100μm、さらに望ましくは0.1〜20μmである。また、空孔直径分布のピークが0.1μm以上に複数存在させ、望ましい空孔と、比較的大きな空孔を組み合わせることにより、特に無機系の固体電解質の含浸性をより向上させることもできる。
【0034】
前述のように、空孔形成剤は還元反応温度において固体で存在し、適当な溶剤で除去されるため、本発明の多孔質陽極体の空孔の平均径は、空孔形成剤の平均粒径とほとんど変わらない。したがって、空孔形成剤の平均粒径は0.01〜100μm、さらに0.1〜20μmであることが望ましい。また、平均粒径の異なる複数の空孔形成剤を混合して、粒度分布が複数のピークを有する空孔形成剤として用いることもできる。具体的には、平均粒径が0.1μm以上1μm未満、好ましくは0.3μm以上1μm未満の空孔形成剤と、平均粒径が1μm以上、好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜5μmの空孔形成剤とを組み合わせて用いることにより、化成した多孔質陽極体への陰極剤の含浸性が向上する。例えば、多孔質陽極体の空孔直径分布のピークを0.7μmと2μmに持たせ、かつ直径1μm以上の空孔容積が全空孔容積の13体積%以上になるように調整するためには、平均粒径が約0.7μmと約2μmの空孔形成剤を組み合わせて用い、直径1μm以上の空孔形成剤の割合を13体積%以上とすればよい。
【0035】
ニオブ材料及び酸素を含有するタンタル材料から選択される少なくとも1種からなる粉末と空孔形成剤とを媒体に混合させた混合液を前述のように調製して用いることにより、本発明の製造方法の出発原料である混合成形体は、以下のような様々な形状とすることができる。
【0036】
(i)混合物の造粒粉:
混合物の造粒粉は、前述の固形分濃度約10質量%〜約80質量%の混合液をナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどの造粒乾燥機を用いて、1×102〜1×103Pa程度の減圧下、約40〜約60℃で約3〜約100時間加熱することにより製造することができる。得られた混合物の造粒粉の平均粒径は、撹拌機の回転数、撹拌機と容器内壁のクリアランスなどにより異なるが、通常0.1〜10mmとなる。必要に応じて、大きな粒径を持つ粒子をロールグラニュレーターなどの解砕機を用いて解砕し、平均粒径を0.02〜1mm程度に揃えても良い。平均粒径を揃えることにより、粒子の流動性を向上させ成形時の偏析を防止することができる。
【0037】
(ii)リード付成形体:
リード付成形体は、前述の0.1〜10mm程度の平均粒径をもつ混合物の造粒粉を、高減圧下、約300〜約2000℃で20分〜100時間予備造粒し、必要に応じてロールグラニュレーターなどの解砕機で解砕し、平均粒子径を0.02〜1mm程度に整えた後、リード線を差し込みながら成形する成型機を用いて製造することができる。
必要に応じて、成形前に前述のバインダーを添加してもよい。また、成形時の欠け等の防止のためにフッ素系、シリコン系、BN系、またはステアリン酸系の滑剤などの離型剤を使用してもよい。
リードとしては、ニオブ材料またはタンタル材料(ニオブ、ニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル、タンタル合金、タンタル化合物)からなる線、棒などを用いることができる。
また、前述の固形分濃度が約50〜約98質量%の混合液を、例えば、セラミックスからなる通気通液性鋳込型に鋳込み、脱液、乾燥した後、鋳型から成形体を分離してリードを挟み込むように貼り合わせ、高減圧下、約500〜約2000℃で20分〜100時間焼成して製造することもできる。必要に応じて、前述のバインダーや芳香族スルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩などの解膠剤を用いても良い。また、前述の混合液を鋳込型に鋳込んだ後、加圧して、形状を整えてもよい。
【0038】
(iii)リードなし成形体:
複雑な構造の成形体は、前述の固形分濃度が約50〜約98質量%の混合液を、例えば、セラミックスからなる通気通液性鋳込型に鋳込み、脱液、乾燥した後、高減圧下、約500〜約2000℃で20分〜100時間焼成し、鋳型から成形体を分離して製造することができる。必要に応じて、前述のバインダーや芳香族スルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩などの解膠剤を用いても良い。また、前述の混合液を鋳込型に鋳込んだ後、加圧して、形状を整えてもよい。
【0039】
(iv)薄型成形体:
薄型成形体とは、シート状または板状の形状を有するものであり、最も薄い部分の厚さが1.0mm以下である。薄型成形体は、前述の固形分濃度が約30〜約98質量%の混合液を、適当な剥離性基体上に塗布または印刷して、乾燥の後、成形体を基体から剥離することにより製造できる。このとき、前述のバインダーを用いることが好ましく、剥離性基体に塗布または印刷の後、著しく変形しない程度に加圧しても良い。剥離性基体としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレンビニル共重合体フィルム等からなるプラスチックフィルム、またはプラスチックシート、もしくは、紙、含浸紙、もしくは、アルミニウムなどの金属箔、金属シートなどが使用できる。必要な強度、剥離性を備えていれば特に制限なく使用できるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはシートを用いることが好ましい。塗布の方法は、公知の方法が用いられる。例えば、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押し出しコート、エアーナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、キスコート、キャストコート、スプレーコートなどを問題なく用いることができる。印刷の方法としては、スクリーン印刷、孔版印刷、凹版印刷、平板印刷などを用いることができる。混合物成形体の形状を所望の形状、例えばシート状または板状の直方体の形状、コイン状の形状、櫛、歯形状の形状などを形成する時に、その形成のし易さから、特に孔版印刷が好ましい。剥離性基体には予めフッ素系、シリコン系、BN系、またはステアリン酸系の滑剤などの離型剤を塗布することもできる。
【0040】
(v)基体と一体化した薄型成形体:
基体と一体化した薄型成形体とは、ニオブ、ニオブ化合物、ニオブ合金、タンタル、タンタル化合物、タンタル合金からなる群から選ばれた少なくとも1つのシート、箔、板、櫛、歯形、短冊などの形状をもつ基体上に前記混合物層を形成し、一体化したものである。混合物層は前述の固形分濃度が30〜98質量%の混合液を、前記基体上に塗布または印刷して、乾燥した後に、高減圧下、約500〜約2000℃で20分〜100時間焼成することにより、形成することができる。塗布、印刷する際に、前述のバインダーを用いることが好ましく、焼成前に、高減圧下、約50〜約500℃で脱バインダーすることが好ましい。また前述の基体に塗布または印刷の後、あるいは乾燥の後、著しく変形しない程度に加圧して、形状を整えても良い。塗布または印刷の方法としては前述の方法が問題なく使用できる。混合物層は基体の片面だけに形成してもよいし、表裏両面に形成してもよい。このようにして得られた基体と一体化した薄型成形体は、その成形体の最も薄い部分の厚さが、1.0mm以下、さらに0.6mm以下、特に0.4mm以下にすることもできる。
【0041】
[2]還元反応工程
上記で得られた混合物成形体を還元剤と共に反応させる。この工程により、ニオブ材料及び/またはタンタル材料中の酸素量が減少する。
還元剤としては、ニオブあるいはタンタルと同等の酸素親和性をもつ、または、より高い酸素親和性の金属、合金、及びそれらの水素化物など、公知の物質が使用できる。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等のアルカリ金属、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムなどの希土類金属、ミッシュメタル、イットリウム、アルミニウム、炭素、珪素、あるいはこれらの合金、水素化物、合金水素化物、水素などを例示することができる。これらの中では、還元能、取扱性、入手のし易さ、コスト等の観点から、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウムが好ましい。これらの還元剤は、単独で用いても良いし、2種以上を同時に用いても良い。また、2回以上の反応を、同じ還元剤で行っても良いし、別々の還元剤を用いて行ってもよい。還元剤の形状は、粉状、塊状、削り状、線状、棒状、スポンジ状などいずれも好適に使用できる。還元剤の大きさは、その形状によっても異なるが、10μm〜3cm程度であることが好ましい。
【0042】
還元反応を開始するためには、出発物質である混合物成形体と還元剤が特定の温度で接触していることが好ましい。その接触形態は、固体接触、液体接触、気体接触のいずれの形態であっても構わない。必要に応じて塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムなどのハロゲン化金属を反応助剤として用いても良い。還元反応前、反応容器内で、還元剤は固体で存在し、出発原料として用いる混合物成形体と接触している方が好ましい。混合物成形体と還元剤が接触せずに別々にある場合においても、還元反応時に、還元剤が気体あるいは液体として接触すれば還元反応自体は進行するが、還元剤が気体となって反応する場合、反応器の空間部分に反応に関与しない還元剤が多量に存在し、還元剤の使用量が多くなり経済的に不利になる。出発原料として用いる混合物成形体の表面に、粉状、塊状、削り状、スポンジ状など還元剤を接触させることが好ましい。
【0043】
還元剤の使用量は、酸素を含有するニオブ材料及び/またはタンタル材料から除去したい量の酸素を還元し得る化学量論量以上であればよい。反応器の空間部分の容積、反応温度などの条件により必要な還元剤の必要量は変わってくるが、通常、除去したい酸素量に対して、1〜10当量、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜2当量の還元剤を用いることにより、酸素を除去する目的が達成できる。酸素をほぼ完全に除去したい場合は、大過剰の還元剤を液体で用いても良い。
【0044】
このように調製された混合物と還元剤は、ニオブ製あるいはタンタル製のトレーに入れ還元を行う反応器に入れる。反応を行う前に、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いて、反応器内の空気を十分に置換しておくことが望ましい。反応容器内に空気が多量に残存していると、空気中に含まれる酸素の分まで還元剤が必要となり経済的に好ましくない。還元反応は、減圧下、常圧下、加圧下のいずれの圧力でも行うことができる。還元反応温度で気体となる還元剤を用いる場合は、減圧下であることが好ましい。減圧により系内の酸素を除去し、還元反応時に還元剤をニオブ材料及び/またはタンタル材料の表面に十分に接触させることができる。
【0045】
還元反応を行う温度は、還元剤の種類によって異なるが、通常、450〜2000℃で行われる。還元反応は、きわめて早く、発熱が大きい。反応が暴走的に行われると、還元により酸素量が減少したニオブやタンタルが部分的に融解し、比表面積が小さくなる。したがって、できる限り低い温度で、ゆっくりと反応を行うことが好ましい。反応温度は450〜1200℃が好ましく、450〜1000℃がさらに好ましく、450〜850℃が特に好ましい。反応時間は、通常、1分以上であるが、前記理由により、20分以上あることが好ましく、1時間以上あることがさらに好ましく、2時間以上が特に好ましい。
ただし、液体接触または気体接触を行う際に、還元剤が450℃で液体または気体とならない場合には、前記温度範囲の下限値は還元剤が液体または気体となる温度となる。通常、この下限値を700℃とすれば多くの還元剤に適用できる。
【0046】
ゆっくりと反応を行うためには、早すぎる昇温速度も好ましくない。昇温速度は、12℃/分以下が好ましく、10℃/分以下がさらに好ましく、8℃/分以下が特に好ましい。昇温の方法は、一定の昇温速度を保ったまま継続的に温度を上昇させても良いし、昇温速度を12℃/分以下の範囲で変化させても良い。また、目的の温度に昇温する過程で、目的の温度より低い適当な温度を1分〜20時間維持した後、再度昇温する段階的な昇温を行っても良い。この過程を2回以上行って目的の温度に到達させても良い。
【0047】
還元反応終了後、反応器及び反応生成物を冷却する。還元反応物を反応器から取り出す前に、酸素量が減少したニオブ、ニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル、タンタル合金、またはタンタル化合物を安定化させるため、その表面を僅かに酸化させることが好ましい。また、残存する還元剤と空気の接触により酸化反応が起こって発熱する可能性があるため、十分に冷却しておくことが好ましい。具体的には、60℃以下まで冷却することが好ましく、50℃以下がさらに好ましく、40℃以下が特に好ましい。0℃以下に冷却しても構わないが、冷凍機などの設備コストが増大し、また、冷却に要する時間が長くなり経済的に不利になる。したがって、0℃以上40℃以下が特に好ましい。降温速度は特に指定がなく、早ければ早いほどよい。また、還元反応終了後、反応物を容器から取り出すまでの間に、例えば、高減圧下、450〜2000℃の温度にさらに加熱を継続し、残存する還元剤を除去する工程を設けても良い。
【0048】
十分冷却した反応器から反応生成物を取り出す時は、大気(空気)より少ない酸素含有量(21%以下)を含む不活性な気体を用いて、反応器を脱気して減圧下にし、前述の不活性気体を充填するという方法(反応生成物表面の徐酸化)を、1〜数10回行い、ゆっくりと酸化することにより反応生成物の表面を安定化することが好ましい。酸化が急激に進むと、酸化発熱により温度が上昇して酸素含有量の増加を引き起こす(極端な場合には還元する前よりも酸素含有量が増加する。)。不活性な気体としては、ヘリウム、アルゴン、窒素などを用いることができる。その気体中の酸素含有量を0.5質量%、1質量%、2質量%、3質量%、5質量%、10質量%のように徐々に濃度を高くして、最終的には大気を充填したのち、1分〜100時間放置し、反応生成物を取り出すことが好ましい。徐酸化を行っている時の温度は、60℃以下に保っていることが好ましく、50℃以下がさらに好ましく、40℃以下が特に好ましい。60℃を超える温度では、酸化が急激に進むことがあり好ましくない。
【0049】
[3]空孔形成剤除去工程
酸素含有量が制御された還元反応生成物から、還元反応で生成した還元剤の酸化物と空孔形成剤とを除去することにより、酸素含有量が制御されたコンデンサ陽極用の弁作用金属多孔質陽極体を製造する。多孔質陽極体がリード付の成形体であればそのまま陽極用材料として用いることができる。リードなしの成形体であれば、ニオブ、ニオブ合金、タンタル、タンタル合金などのリード線、リード箔などを溶接することにより陽極用材料として用いることができる。溶接は、スポット溶接が好ましい。
【0050】
空孔形成剤及び還元剤の酸化物を除去する方法としては、それらを溶媒に溶解させることにより除去する方法が挙げられる。用いる溶媒は、溶解すべき空孔形成剤や還元剤の酸化物の溶解度が十分に得られる溶媒であればよく、好ましくは安価で残留しにくいものがよい。
【0051】
空孔形成剤または還元剤の酸化物が水溶性ならば、溶媒としては水を用いることができる。
【0052】
空孔形成剤または還元剤の酸化物が有機溶剤可溶性ならば、溶媒としては有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メチルセルソルブ、ダイグライム等のセルソルブ類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキルシド(DMSO)等のスルホキシド類、ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類などが使用できる。
【0053】
空孔形成剤または還元剤の酸化物が酸可溶性ならば、溶媒として硝酸、硫酸、リン酸、硼酸、炭酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、有機酸等の酸性溶媒を用いることができる。
【0054】
空孔形成剤または還元剤の酸化物がアルカリ可溶性ならば、溶媒としてアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア等のアルカリ性溶媒を用いることができる。
【0055】
空孔形成剤または還元剤の酸化物が可溶性錯体を形成するならば、溶媒としてその配位子となるアンモニア、エチレンジアミン等のアミン類、グリシン等のアミノ酸類、トリポリ燐酸ナトリウム等のポリリン酸類、クラウンエーテル類、チオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤等の溶液を用いることができる。
また、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩の溶液や、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂の分散された溶媒なども好適に使用できる。
【0056】
空孔形成剤の溶媒による除去を考慮した場合の空孔形成剤と溶媒との組み合わせとしては、例えば、酸化バリウムと水、炭酸カルシウム(酸化カルシウムとなる)と塩酸、酸化アルミニウムと水酸化ナトリウム水溶液、炭酸マグネシウム(酸化マグネシウムとなる)とエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩水溶液等が挙げられる。
【0057】
空孔形成剤や還元剤の酸化物を溶解除去する温度は、低いことが望ましい。ニオブ金属やタンタル金属は酸素との親和性が高いため、溶解除去する温度が高いと多孔質陽極体の表面酸化が促進される。したがって、溶解除去する温度は50℃以下が好ましい。さらには−10〜40℃が好ましく、特に0〜30℃が好ましい。また、前記理由により、溶解除去する際に発熱が少ない方法を選択することが好ましい。例えば、空孔形成剤に金属酸化物や金属炭酸塩を用いた場合、酸で溶解除去する方法は、中和熱などが発生する。したがって、例えば、水や有機溶剤に溶解させる方法、硝酸アンモニウム塩水溶液やエチレンジアミン4酢酸などを用いて可溶性錯体を形成する方法、イオン交換樹脂を含む溶液に溶解する方法などの発熱しにくい方法を選択することが好ましい。
【0058】
これら溶媒を用いて空孔形成剤及び還元剤の酸化物を除去した後、十分に水洗して、溶媒を除去する。例えば、硝酸や塩化アンモニウムなどを溶媒として空孔形成剤等を除去し、イオン交換水を用いて硝酸や塩化アンモニウム溶媒を水洗除去する場合、水洗後のイオン交換水の電気伝導度が5μS/cm以下となるまで水洗することが望ましい。十分に洗浄した後、適当な圧力の下、120℃以下、好ましくは80℃以下、さらに好ましくは50℃以下で乾燥する。減圧下の方が乾燥時間を短くすることができ、乾燥温度も低くすることができる。乾燥終了後、前述のような徐酸化を行い、コンデンサ用の多孔質陽極体を得る。
【0059】
本発明においては、還元工程前に、あるいは還元工程後で空孔形成剤の除去工程前に、混合物成形体に、窒素、ホウ素、リン、硫黄、セレン、テルル、アルミニウム、珪素及びアンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をドープする工程を設けることができる。窒素をドープする場合、ガス窒化、イオン窒化、固体窒化等の方法が用いられる。中でも、ガス窒化法が、窒素をニオブ粒子の表面に均一にドープできることから好ましい。また、このドープ処理は、還元反応終了後の混合成形体(陽極体)に対して行ってもよいし、空孔形成剤を除去する工程の前、あるいは空孔形成剤を除去した工程の後に行っても良い。ガス窒化は、通常、窒素ガス存在下、200〜2000℃で1分〜100時間加熱することにより行うことができる。
【0060】
硼素をドープする場合、ガスホウ化、固相ホウ化いずれであってもよい。例えば、酸素を含有するニオブ材料及び/またはタンタル材料をホウ素ペレットやトリフルオロホウ素などのハロゲン化ホウ素のホウ素源とともに、減圧下、2000℃以下で数分〜数10時間放置しておけばよい。
硫黄のドープは、ガス硫化、イオン硫化、固相硫化いずれであってもよい。例えば、硫黄ガス雰囲気によるガス硫化の方法は、酸素を含有するニオブ材料及び/またはタンタル材料を硫黄雰囲気中に放置することにより達成される。硫化する雰囲気の温度は、2000℃以下、放置時間は数10時間以内で目的とする硫化量ニオブが得られる。また、より高温で処理することにより処理時間を短縮できる。
珪素をドープする場合、ガス珪化、固相珪化いずれであってもよい。例えば、珪素粉末や、ハロゲン化珪素、アルコキシシラン等の珪素源とともに、減圧下、2000℃以下で数分〜数10時間放置しておけばよい。
その他のドープ元素についても上記いずれかの方法に準じた方法でドープできる。
【0061】
また、ニオブ材料及び/またはタンタル材料として水素化物を含む材料を用いた場合、還元工程の前、還元工程中、還元工程後の空孔形成剤除去工程前、または空孔形成剤除去工程後に、高減圧下、300〜800℃の温度で脱水素させる工程を設けることができる。
【0062】
[4]多孔質陽極体
本発明の製造方法で製造した多孔質陽極体は、空孔及び酸素量を制御したニオブ材料及び/またはタンタル材料からなる多孔質陽極体である。多孔質陽極体中に含まれる、ニオブ、タンタル及び酸素以外の成分としては、例えば、水素、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、プラチナ、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀、硼素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、炭素、珪素、ゲルマニウム、スズ、鉛、窒素、リン、砒素、アンチモン、ビスマス、硫黄、セレン、テルル、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素が挙げられる。好ましくは、水素、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、亜鉛、硼素、アルミニウム、珪素、窒素、リン、アンチモン、ネオジム、エルビウム、イッテルビウム及びルテチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。これらの元素は成形体に配合されるようにすればよい。これらの元素を含むニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル合金及びタンタル化合物は、無定形、非晶質、ガラス状、コロイド状、結晶などの形態をとっているものであっても良い。さらに、コンデンサの耐熱性をより向上させるためには、硼素、窒素、アンチモン、ジルコニウム、タングステン、珪素及びアルミニウムの少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。窒素と珪素を含む場合、窒化珪素として配合してもよい。窒化珪素の具体例としては、SiN、Si2N2、Si2N3、Si3N4などが例示され、その形態としては、無定形、非晶質、ガラス状、コロイド状、結晶などが挙げられる。
【0063】
本発明の製造方法で得られた多孔質陽極体は、前述の混合物成形体の形状をほぼ維持しており、前記した様々な形状とすることができる。
具体的には、リード付き陽極体の態様として、図1に示す直方体型多孔質陽極体、図2(A)に示す薄型(シート状あるいは板状)の多孔質陽極体、図6(A)に示す円筒型多孔質陽極体、図7(A)に示す角柱型多孔質陽極体などが挙げられる。リードなしの陽極体としては、図9(A)に示す直方体型多孔質陽極体、図10(A)に示す薄型(シート状あるいは板状)の多孔質陽極体などが挙げられる。リードなしのものは、図9及び図10に示すようにリード線、リード箔などを溶接等により接着し、陽極体として用いる。
また、図4(A)及び図8(A)に示す基体と一体化した薄型陽極体を挙げることができる。図4(A)では、基体の表裏両面に多孔質材料が設けられたものであり、図8(A)では、基体の片側面にのみ多孔質材料が設けられたものである。これらの基体はリードの役割をも果たすことができる。
リード及び基体としては、ニオブ、ニオブ化合物、ニオブ合金、タンタル、タンタル化合物及びタンタル合金からなる群から選ばれた少なくとも1つのシート、箔、板、棒、線、櫛、歯形、短冊などが例示できる。
薄型の陽極体は、厚みを1.0mm以下とすることが好ましい。より好ましくは0.6mm以下であり、さらに好ましくは0.4mm以下である。
【0064】
これら多孔質陽極体を用いてコンデンサを作製すれば、陰極剤の含浸性が良く従来のコンデンサのESRより、低いESRのコンデンサとすることができ、さらにコンデンサのESRを下げる場合、厚さ1mm以下の薄い基体あるいはリードと一体化した前記多孔質陽極体を複数用い、これら多孔質陽極体を電気的に並列になるように接続してコンデンサを作製することができる。コンデンサの一定の体積中に多数の多孔質陽極体を並列に用いる方が、さらにESRを低くできる。したがって、多孔質陽極体の厚さは、0.6mm以下の方が好ましく、0.4mm以下の方がさらに好ましい。
【0065】
本発明の多孔質陽極体の基体は、そのまま陽極の引き出しリードとして用いても良いし、さらにニオブ、ニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル、タンタル合金、タンタル化合物、から選択される少なくとも1種の線、棒、箔などを引き出しリードとして溶接しても良い。
【0066】
本発明の多孔質陽極体の密度は、ニオブ、ニオブ合金、ニオブ化合物であれば、0.3〜7g/mlの範囲に調整できる。多孔質陽極体の強度、コンデンサを作成したときの容量を考慮すれば、0.6〜6g/mlが好ましい。タンタル、タンタル合金、タンタル化合物であれば、その密度は0.5〜14g/mlの範囲に調整できる。強度、容量を考慮すれば、1〜12g/mlであることが好ましい。
【0067】
本発明の製造方法で作成した多孔質陽極体の酸素含有量は、その比表面積にもよるが、0.05〜30質量%の任意の量に調整できる。多孔質陽極体の強度をより高く保つためには、酸素含有量が0.05〜20質量%であることが好ましく、0.05〜16質量%がさらに好ましく、0.05〜12質量%が特に好ましい。また、陽極体は、Nb、Nb6O、NbO、NbO2、Nb2O5、Ta、Ta2O5の少なくとも1つの結晶を含んでいてもよい。また、Nb2N、NbN、NbB、NbB2、Nb3Al、Nb3Si、NbSi2、Nb3Sb、NbS2、NbSe2、NbTe4、などの結晶を含んでいても良い。
【0068】
本発明の製造方法で作製した多孔質陽極体は、コンデンサ用陽極用体として用いられ、陰極剤の含浸に適した空孔直径分布のピークトップが、0.01〜100μmの範囲内にある。ピークトップは、0.1〜20μmであることが好ましい。体積が10mm3未満の小さなコンデンサ用陽極体はもちろんなこと、体積が10mm3以上である大型のコンデンサ用陽極体においても、空孔ピークトップを0.1μm以上、さらには0.3μm以上に調整することが可能である。また、0.1μm以上に複数の空孔ピークトップ持たせることも可能である。具体的には、0.1μm以上1μm未満、好ましくは0.3μm以上1μm未満の空孔ピークトップと、1μm以上、好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜5μmの空孔ピークトップの2つ以上の空孔ピークトップをもつ多孔質陽極体を製造することができる。例えば、多孔質陽極体の空孔直径分布のピークを0.7μmと2μmに持たせ、かつ直径1μm以上の空孔容積が全空孔容積の13体積%以上になるように調整するためには、平均粒径が約0.7μmと約2μmの空孔形成剤を組み合わせて用い、直径1μm以上の空孔形成剤の割合を13体積%以上とすればよい。多孔質陽極体は化成した後、陰極剤を含浸させるが、このように複数の空孔ピークを持つ化成した多孔質陽極体は、陰極剤の含浸性が向上する。
【0069】
さらに、コンデンサ用陽極体(以降、多孔質陽極体をコンデンサ用陽極体と記すことがある。)の体積が10mm3以上で空孔率が55体積%以上である大型の陽極体についても、直径1μm以上の空孔容積を全空孔容積の10体積%以上に容易に調整することができ、空孔直径分布のピークを0.3μm以上、さらには0.5μm以上に複数存在させることが可能であり、直径1μm以上の空孔容積を全空孔容積の13体積%以上にすることも可能である。
【0070】
本発明の製造方法で得られるコンデンサ用陽極体は、単位体積あたりの比表面積が0.005m2/mm3以上にすることができる。0.008m2/mm3以上、さらに0.01m2/mm3以上にすることも可能である。また、陽極体の体積を50mm3、100mm3と大きくしても陰極剤含浸率の大きな低下が見られず、ESRは安定している。本発明のコンデンサ用陽極体は、一例として、CV値(0.1質量%燐酸水溶液中で、80℃120分化成した場合の化成電圧値と120Hzでの容量との積)が、40000〜800000μFV/gとなる。
【0071】
本発明の製造方法を用いることにより、高い容量出現率とコンデンサ用陽極体の高い容量を同時に達成でき、約750μF/個(約20mm3の陽極体)コンデンサを作製することができる。熱履歴が少なく、高い比表面積を持つ1次粉を用いれば、約20mm3の陽極体について1000μF/個以上、さらには1500μF/個以上の容量を持つ陽極体も作製可能である。
[5]コンデンサ素子
本発明の固体電解コンデンサは、上記で得られた多孔質陽極体を一方の電極とし、対電極との間に介在した誘電体とから構成される。具体的には、多孔質陽極体を一方の電極とし、その多孔質陽極体表面(空孔内表面含む)上に誘電体を形成し、前記誘電体上に対電極を設け、コンデンサを構成する。コンデンサの誘電体としては、酸化ニオブ、酸化タンタルを主体とする誘電体が好ましく、特に五酸化ニオブ、五酸化タンタルを主体とする誘電体が好ましい。五酸化ニオブを主体とする誘電体は、例えば、一方の電極であるニオブ材料からなる多孔質陽極体を電解酸化することによって得られる。多孔質陽極体電極を電解液中で電解酸化するには、通常、プロトン酸水溶液、例えば、0.1%リン酸水溶液、硫酸水溶液、ホウ酸水溶液または1%の酢酸水溶液、アジピン酸水溶液等を用いて行われる。このように、多孔質陽極体電極を電解液中で化成して酸化ニオブ誘電体を得る場合、本発明のコンデンサは、電解コンデンサとなり多孔質陽極体電極が陽極となる。
【0072】
一方、本発明のコンデンサにおける他方の電極としては、電解液、有機半導体及び無機半導体から選ばれる少なくとも1種の化合物があげられる。
【0073】
電解液の具体例としては、硫酸水溶液などの鉱酸水溶液の他、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールなどを主溶媒とし、溶質として4級アンモニウム塩、3級アンモニウム塩、などを溶解した液が用いられる。より具体的には、イソブチルトリプロピルアンモニウムボロテトラフルオライド電解質を5質量%溶解したジメチルホルムアミドとエチレングリコールの混合溶液、テトラエチルアンモニウムボロテトラフルオライドを7質量%溶解したプロピレンカーボネートとエチレングリコールの混合溶液などが挙げられる。
【0074】
有機半導体の具体例としては、ベンゾピロリン4量体とクロラニルからなる有機半導体、テトラチオテトラセンを主成分とする有機半導体、テトラシアノキノジメタンを主成分とする有機半導体、下記一般式(1)または(2)で示される繰り返し単位を含む高分子にドーパントをドープした電導性高分子を主成分とした有機半導体があげられる。
【0075】
【化1】
【0076】
式(1)及び(2)において,R1〜R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Xは酸素、イオウまたは窒素原子を表し、R5はXが窒素原子のときのみ存在して水素または炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1とR2及びR3とR4は互いに結合して環状になっていても良い。
【0077】
さらに、本発明においては、前記一般式(1)で示される繰り返し単位を含む電導性高分子は、好ましくは下記一般式(3)で示される構造単位を繰り返し単位として含む電導性高分子が挙げられる。
【0078】
【化2】
【0079】
式中、R6及びR7は、各々独立して水素原子、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、または該アルキル基が互いに任意の位置で結合して、2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わす。また、前記環状構造には置換されていてもよいビニレン結合を有するもの、置換されていてもよいフェニレン構造のものが含まれる。このような化学構造を含む電導性高分子は、荷電されており、ドーパントがドープされる。ドーパントには公知のドーパントが制限なく使用できる。
【0080】
式(1)〜(3)で示される繰り返し単位を含む高分子としては、例えば、ポリアニリン、ポリオキシフェニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリメチルピロール、及びこれらの置換誘導体や共重合体などが挙げられる。中でもポリピロール、ポリチオフェン及びこれらの置換誘導体(例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)等)が好ましい。
【0081】
無機半導体の具体例としては、二酸化鉛または二酸化マンガンを主成分とする無機半導体、四三酸化鉄からなる無機半導体などがあげられる。このような半導体は、単独でも、または、2種以上組み合わせて使用しても良い。特に、二酸化鉛や二酸化マンガンなどの無機半導体の陰極剤は、微細な粒子状の集合体の形状をとっていて、大きさが不揃いであり凸凹している。したがって、適度に大きな空孔と小さな空孔が存在したコンデンサ用陽極体を用いることが好ましい。空孔直径分布のピークトップが、0.01〜100μmの範囲内に、さらに、0.1〜20μmにあり、0.1μm以上に複数の空孔ピークトップをもつコンデンサ用陽極体、さらに好ましくは、空孔ピークトップが0.1〜1μm、好ましくは0.3〜1μmの空孔ピークトップと、空孔ピークトップが1μm以上、好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜5μmに、2つ以上の空孔ピークトップをもつコンデンサ用陽極体は、この様な無機半導体の陰極剤を用いる際に好適に使用できる。
【0082】
上記有機半導体及び無機半導体として、電導度10-2〜103S/cmの範囲のものを使用すると、作製したコンデンサのインピーダンス値がより小さくなり、高周波での容量をさらに一層大きくすることができる。
【0083】
また、1つのコンデンサの内部に、複数の前記基体と一体化したコンデンサ用陽極体を電気的に並列に配置し、コンデンサを構成することにより、コンデンサのESRをさらに低くすることができる。通常、n個のコンデンサ用陽極体を電気的に並列に用いれば、そのESRは1つの場合に比べて約1/n(nは正の整数)となる。例えば、3つのコンデンサ用陽極体を並列に用いれば、そのESRは1つの場合に比べて約1/3となる。したがって、コンデンサの容積内にできる限り多くのコンデンサ用陽極体を電気的に並列に配置することが好ましい。この様な、コンデンサに於いても、本発明の製造方法で得られる、多孔質陽極体は好適に使用できる。
【0084】
具体的には、図2及び図3に示すように、リード付き薄型陽極体の多孔質材料部を複数重ね合わせ、リード(2)はそれぞれリードフレーム(3)で接続することにより、複数の陽極体を電気的に並列に配置、接続することができる。また、図4及び図5、図8に示すように、基体と一体化したコンデンサ陽極体についても同様に積層することによって電気的に並列に配置、接続することができる。図5のようにリードとして用いられる基体部分をリードフレーム(3)に接続する場合には、ニオブ、タンタルなどの箔、板などをスペーサー(4)として用いることもできる。
図10に示されるようなリードなし薄型陽極体を製造後、リードを接着したものであっても、図11や図12に示されるように積層し電気的に並列に配置、接続することができる。また、薄型ではない円筒型タイプ(図6(A))や角柱型タイプ(図7(A))のものでも、それぞれ図6(B)及び図7(B)に示すように、電気的に並列に配置、接続することができる。
リードが接続された薄型陽極体あるいは基体と一体化した薄型陽極体を用いて積層する場合には、それぞれの薄型陽極体の厚みは1mm以下が好ましく、より好ましくは0.6mm以下、さらに好ましくは0.4mm以下である。これを2〜1000個電気的に並列に接続することができる。
【0085】
さらに他方の電極が固体の場合には、その上に外部引き出しリード(例えば、リードフレーム)との電気的接触をよくするために、導電体層を設けてもよい。導電体層としては、例えば、導電ペーストの固化、メッキ、金属蒸着、耐熱性の導電樹脂フイルムの形成等により形成することができる。導電ペーストとしては、銀ペースト、銅ペースト、アルミペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト等が好ましいが、これらは1種を用いても2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合、混合してもよく、または別々の層として重ねてもよい。導電ペーストを適用した後、空気中に放置するか、または加熱して固化せしめる。メッキとしては、ニッケルメッキ、銅メッキ、銀メッキ、アルミメッキ等があげられる。また蒸着金属としては、アルミニウム、ニッケル、銅、銀等があげられる。
【0086】
具体的には、例えば他方の電極上にカーボンペースト、銀ペーストを順次積層しエポキシ樹脂のような材料で封止してコンデンサが構成される。このコンデンサは、前記多孔質陽極体と一体に焼結成形された、または後で溶接されたニオブまたはタンタルリードを有していてもよい。
【0087】
以上のような構成の本発明のコンデンサは、例えば、樹脂モールド、樹脂ケース、金属性の外装ケース、樹脂のディッピング、ラミネートフイルムによる外装などにより各種用途のコンデンサ製品とすることができる。
【0088】
また、他方の電極が液体の場合には、前記両極と誘電体から構成されたコンデンサを、例えば、他方の電極と電気的に接続した缶に収納してコンデンサが形成される。この場合、多孔質陽極体の電極側は、前記したニオブまたはタンタルリードを介して外部に導出すると同時に、絶縁性ゴムなどにより缶との絶縁がはかられるように設計される。
【0089】
以上、説明した本発明の実施態様にしたがって製造したコンデンサ用弁作用金属、弁作用金属合金、弁作用金属化合物の多孔質陽極体(コンデンサ用陽極体)は、特に他方の電極である陰極剤の含浸性に効果があり、該陽極体からコンデンサを製造することにより、高容量、低ESR、低tanδが達成でき、漏れ電流値の小さい長期信頼性の良好なコンデンサを得ることができる。
【0090】
本発明のコンデンサは、従来のコンデンサよりも容積の割に静電容量が大きく、より小型のコンデンサ製品を得ることができる。また、前述したように、薄い多孔質陽極体、小さな多孔質陽極体、基体と一体化した薄い多孔質陽極体などを2〜1000個用いて、各々の陽極体から引き出される陽極リードを電気的に並列に配置してコンデンサを作成することにより、さらにESRを低くすることができる。
【0091】
このような特性を持つ本発明のコンデンサは、例えば、アナログ回路及びデジタル回路中で多用されるバイパスコンデンサ、カップリングコンデンサとしての用途や、その他の通常のコンデンサの用途にも適用できる。特に、本発明のコンデンサは高容量、低ESRであるため、CPU、ICなどの高周波数で作動する回路に好ましく用いることができる。
【0092】
このようなコンデンサは電子回路中で多用されるので、本発明のコンデンサを用いれば、電子部品の配置や排熱の制約が緩和され、信頼性の高い電子回路を、従来より狭い空間に収めることができる。
【0093】
さらに、本発明のコンデンサを用いれば、従来より小型で信頼性の高い電子機器、例えば、ハードディスクドライブ、デジタルビデオディスクドライブ、マザーボード、PCカードなどのコンピュータ周辺機器、携帯電話などのモバイル機器、デジタルビデオレコーダー、ゲーム機などの家電製品、ナビゲーションなどの車載機器、人工衛星、通信機器等を得ることができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各例におけるタッピング密度、安息角、粒子径、細孔直径、コンデンサの容量、漏れ電流値、容量出現率、及び耐湿性は以下の方法により測定した。
また、実施例及び比較例の焼結体からのコンデンサの作製は以下の1〜4のいずれかの方法により行った。
【0095】
コンデンサの作製法1:
20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用い、電解酸化して、表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属の多孔質陽極体を用意した。次に、60%硝酸マンガン水溶液に浸漬後220℃で30分加熱する操作を繰り返して、誘電体酸化皮膜上に対電極層として二酸化マンガン層を形成した。引き続き、その上に、カーボン層、銀ペースト層を順次積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。
【0096】
コンデンサの作製法2:
20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用い、電解酸化して、表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属の多孔質陽極体を用意した。次に、35%酢酸鉛水溶液と35%過硫酸アンモニウム水溶液の1:1(容量比)混合液に浸漬後、40℃で1時間反応させる操作を繰り返して、誘電体酸化皮膜上に対電極層として二酸化鉛と硫酸鉛の混合層を形成した。引き続き、その上に、カーボン層、銀ペースト層を順次積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。
【0097】
コンデンサの作製法3:
20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用い、電解酸化して、表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属の多孔質陽極体を用意した。次に、誘電体酸化被膜の上に、過硫酸アンモニウム10%水溶液とアントラキノンスルホン酸0.5%水溶液の等量混合液を接触させた後、ピロール蒸気を触れさせる操作を少なくとも5回行うことによりポリピロールからなる対電極(対極)を形成した。引き続き、その上に、カーボン層、銀ペースト層を順次積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。
【0098】
コンデンサの作製法4:
20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用い、電解酸化して、表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属の多孔質陽極体を用意した。次に、過硫酸アンモニウム25質量%を含む水溶液(溶液1)に浸漬した後引き上げ、80℃で30分乾燥させ、次いで3,4−エチレンジオキシチオフェン18質量%を含むイソプロパノール溶液(溶液2)に浸漬した後引き上げ、60℃の雰囲気に10分放置することにより酸化重合を行った。これを再び溶液1に浸漬し、さらに前記と同様に処理した。溶液1に浸漬してから酸化重合を行うまでの操作を8回繰り返した後、50℃の温水で10分洗浄を行い、100℃で30分乾燥を行うことにより、導電性のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)からなる対電極(対極)を形成した。引き続き、その上に、カーボン層、銀ペースト層を順次積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。
【0099】
コンデンサの作製法5:
13Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用い、電解酸化して、表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属の多孔質陽極体を用意した。次に、誘電体酸化被膜の上に、過硫酸アンモニウム10%水溶液とアントラキノンスルホン酸0.5%水溶液の等量混合液を接触させた後、ピロール蒸気を触れさせる操作を少なくとも5回行うことによりポリピロールからなる対電極(対極)を形成した。引き続き、その上に、カーボン層、銀ペースト層を順次積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。
【0100】
コンデンサの作製法6:
13Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用い、電解酸化して、表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属の多孔質陽極体を用意した。次に、過硫酸アンモニウム25質量%を含む水溶液(溶液1)に浸漬した後引き上げ、80℃で30分乾燥させ、次いで3,4−エチレンジオキシチオフェン18質量%を含むイソプロパノール溶液(溶液2)に浸漬した後引き上げ、60℃の雰囲気に10分放置することにより酸化重合を行った。これを再び溶液1に浸漬し、さらに前記と同様に処理した。溶液1に浸漬してから酸化重合を行うまでの操作を8回繰り返した後、50℃の温水で10分洗浄を行い、100℃で30分乾燥を行うことにより、導電性のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)からなる対電極(対極)を形成した。引き続き、その上に、カーボン層、銀ペースト層を順次積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。
【0101】
実施例1:
酸素を12質量%含む平均粒子径が0.5μmのニオブ粉80質量部と、平均粒子径が0.9μmの酸化カルシウム10質量部と、平均粒子径が2μmの酸化カルシウム10質量部からなる平均粒子径が120μmの混合粉を用意した。
【0102】
トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、この平均粒子径が120μmの混合粉900ml、平均粒子径が30μmの酸化カルシウム100mlを入れ、良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、ニオブと酸化カルシウムと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.3mmφのニオブ線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ3.3mm×1.8mm×4.3mm(約25mm3)となるように成形した。この成形体のニオブ換算密度は2.8g/mlであった。この成形体を、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳を除去し、4×10-3Paの減圧下、1150℃で45分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、ニオブリード線付の酸素を含有するニオブと酸化カルシウムの成形体を得た。この混合物の成形体のニオブ換算密度は、3.3g/mlであった。この混合物の成形体1000個(約90g)と削り状金属マグネシウム15g良く混ぜ合わせ、ニオブのトレーに入れた。さらに、このトレーの上部にニオブ製の板をかぶせ(密閉はしていない)、還元反応器に入れた。反応器を減圧した後、アルゴンを反応器に入れる操作を3回以上繰り返して反応器内の空気をアルゴンに置換した。反応器内の圧力を約5×104Pa(約400mmHg)に調節した後、約12℃/分の昇温速度で400℃まで昇温した。約400℃で30分放置した後、約10℃/分の昇温速度で450℃まで昇温し、約450℃で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、約500℃の温度で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で550℃まで昇温し、約550℃の温度で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、約600℃の温度で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で650℃まで昇温し、約650℃の温度で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で700℃まで昇温し、約700℃の温度で30分放置した。さらに6℃/分の昇温速度で730℃まで昇温し、約730℃の温度で5時間放置したのち、室温まで冷却した。この加熱から冷却の操作の間、反応器内の圧力を約4×104〜8×104Pa(約300〜600mmHg)に保つように減圧または加圧(反応器からアルゴンの除去、またはアルゴンの封入)の操作を適宜行った。反応器を約5×104Pa(約400mmHg)の減圧にした後、0.5質量%の酸素を含む窒素を還元反応物の温度が40℃以上にならないように加え、反応器を約5×104Pa(約400mmHg)の減圧にし、再度酸素を含有する窒素を加えるという操作(徐酸化)を還元反応物の温度が上昇しなくなるまで繰り返した。この時、徐酸化に用いる窒素に含まれる酸素濃度を0.5質量%、1質量%、1.5質量%、2質量%、2.5質量%、3質量%、5質量%、10質量%、15質量%と徐々に多くし、最終的に空気(大気)を封入し、約12時間放置した後、反応器からニオブの成形体を取り出した。別に用意した20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液3リットルに、この混合水溶液の温度が40℃を超えないように、冷却、撹拌しながら、このニオブの成形体を浸した。約2時間浸した後、ニオブ成形体を取り出して、さらに、20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液3リットルに、この混合水溶液の温度が40℃を超えないように、冷却、撹拌しながら、このニオブの成形体を浸した。約12時間浸し、空孔形成剤の酸化カルシウム、還元反応生成物の酸化マグネシウム、未反応の還元剤の金属マグネシウムを溶解させた後、デカンテーションして、ニオブ成形体を取り出して、ポリテトラフルオロエチレン製のカラムに入れ、イオン交換水を流しながら12時間水洗浄を行い、カルシウム塩、マグネシウム塩、硝酸、過酸化水素を除去した。この時の洗浄水の電気伝導度は、0.9μS/cmであった。
【0103】
この成形体を約1×102Paの減圧下、約50℃の条件で減圧乾燥した後、品温が30℃以下になるまで冷却した。0.5質量%の酸素を含む窒素ガスを品温が40℃を超えないように加え、乾燥機を減圧にしたのち再度酸素を含有する窒素を加えるという徐酸化の操作を品温が変化しなくなるまで繰り返したのち、8時間以上放置して、ニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。このニオブ成形体の酸素含有量は2.4質量%、体積約22mm3、密度3.3g/mlであり、比表面積は、0.023m2/mm3であった。また、空孔率は61%で、約0.9μmと約2μmと約30μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が18体積%であった。
【0104】
次に、この多孔質なニオブ成形体100個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成して多孔質なニオブ陽極体とした。
【0105】
このニオブ陽極体について、コンデンサの作製方法4を用いてチップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は99%であり、容量は平均991μF/個であり、ESRは平均18mΩであった。
【0106】
実施例2:
酸素を15質量%含む平均粒子径が0.5μmのニオブ粉70質量部と、平均粒子径が0.7μmの酸化バリウム15質量部と、平均粒子径が2μmの酸化バリウム15質量部からなる平均粒子径が90μmの混合粉を用意した。
【0107】
トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、この平均粒子径が90μmの混合粉900ml、平均粒子径が20μmの酸化バリウム100mlを入れ、良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、ニオブと酸化バリウムと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.20mmφのニオブ線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ0.4mm×1.8mm×4.3mm(約3.1mm3)となるように成形した。この成形体のニオブ換算密度は2.8g/mlであった。この成形体を、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳を除去し、4×10-3Paの減圧下、1165℃で30分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、ニオブリード線付の酸素を含有するニオブと酸化バリウムの成形体を得た。この混合物の成形体のニオブ換算密度は、3.4g/mlであった。
【0108】
下部から上部へと気体が流通できる構造になっている反応器を用意した。
削り状金属マグネシウムをニオブ製のトレーに入れ、この反応器の下部に設置した。この成形体10000個(リード棒抜きで約12.4mg/個→約124g)をニオブ製の金網の上に置き、この金網を反応器の中段に設置した。
【0109】
反応器を約1×102Paの減圧にした後、アルゴンを反応器に入れ、常圧まで戻す操作を3回以上繰り返して反応器内の空気をアルゴンに置換した。50ml/分の量のアルゴンを反応器下部から上部へと流通させた。反応器内の圧力が約9.0×104Pa〜約1.2×105Pa(約700〜900mmHg)を保つように調節しながら、12℃/分の昇温速度で500℃まで昇温した。約500℃で30分間放置した後、10℃/分の昇温速度で550℃まで昇温した。約550℃で30分間放置した後、8℃/分の昇温速度で600℃まで昇温した。約600℃で30分間放置した後、8℃/分の昇温速度で650℃まで昇温した。約650℃で30分間放置した後、8℃/分の昇温速度で700℃まで昇温した。約700℃の温度で30分放置し、さらに6℃/分の昇温速度で730℃まで昇温した後、約730℃の温度で8時間放置した。その後、反応器内の圧力が約9.0×104Pa〜約1.2×105Pa(約700〜900mmHg)を保つように、アルゴン流通量を調節しながら室温まで冷却した。アルゴンの流通を止め、反応器を約5×104Pa(約400mmHg)の減圧にした後、実施例1に示すような徐酸化の操作を反応物の温度が上昇しなくなるまで繰り返し、室温下、12時間放置の後、反応器からニオブの成形体を取り出した。別に用意した20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液3リットルに、この混合水溶液の温度が40℃を超えないように、冷却、撹拌しながら、このニオブの成形体を浸した。約2時間浸した後、ニオブ成形体を取り出して、さらに、20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液3リットルに、この混合水溶液の温度が40℃を超えないように、冷却、撹拌しながら、このニオブの成形体を浸した。約12時間浸し、空孔形成剤の酸化バリウム、還元反応生成物の酸化マグネシウム、未反応の還元剤の金属マグネシウムを溶解させた後、デカンテーションして、ニオブ成形体を取り出して、ポリテトラフルオロエチレン製のカラムに入れ、イオン交換水を流しながら12時間水洗浄を行い、バリウム塩、マグネシウム塩、硝酸、過酸化水素を除去した。この時の洗浄水の電気伝導度は、0.7μS/cmであった。
【0110】
この成形体を約1×102Paの減圧下、約50℃の条件で減圧乾燥した後、品温が30℃以下になるまで冷却した。0.5質量%の酸素を含む窒素ガスを品温が40℃を超えないように加え、乾燥機を減圧にしたのち酸素を含有する窒素を加えるという徐酸化の操作を品温が変化しなくなるまで繰り返したのち、8時間以上放置して、ニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。
【0111】
このニオブ成形体の酸素含有量は1.8質量%、体積約2.6mm3、密度3.4g/mlであり、比表面積は、0.024m2/mm3であった。また、空孔率は60%で、約0.7μmと約2μmと約20μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が17体積%であった。
【0112】
次に、このニオブ成形体600個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してニオブ陽極体とした。このニオブ陽極体について、コンデンサの作製方法3と同様の方法を用いて、導電性高分子層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。このニオブ陽極体6個を用いて、図2及び図3に示すように重ね合わせ、引き出しリードを銅製のバーにスポット溶接し、ニオブ陽極体6個が一対となった6連のニオブ陽極体を得た。この陽極体100個について、さらに銀ペースト層を積層し、次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は99%であり、容量は平均749μF/個であり、ESRは平均4mΩであった。
【0113】
実施例3:
酸素を9質量%含む平均粒子径が0.5μmの水素化ニオブ粉90質量部と、平均粒子径が0.7μmの水酸化マグネシウム6質量部と、平均粒子径が2μmの水酸化マグネシウム10質量部からなる混合粉を用意した。
【0114】
トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、この平均粒子径が90μmの混合粉900ml、平均粒子径が10μmの水酸化マグネシウム100mlを入れ、良く混合して、スラリー液を得た。次に、3.3mm×4.3mmの粉末焼結層を形成するための孔を格子状に複数個設けた厚み0.2mmのマスクを厚さ50μmのニオブ箔の上に載せ、ディスペンサーの先端に取り付けられたダイコート金型からこのスラリー液を吐出させながら格子状のマスク表面に塗布して、ニオブ箔上にスラリー層を形成した。このスラリー層を約60℃で熱風乾燥した。ニオブ箔を裏返して、ニオブ箔を対称軸として表裏で対称になるように同じ形状のマスクを載せた。ディスペンサーの先端に取り付けられたダイコート金型からこのスラリー液を吐出させながら格子状のマスク表面に塗布して、ニオブ箔上にスラリー層を形成したのち約60℃の温度で熱風乾燥した。ニオブ箔の表と裏にあるマスクを外した後、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳及び水素を除去し、4×10-3Paの減圧下、1170℃で30分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、ニオブ箔の対応する位置の両面に、酸素を含有するニオブと酸化マグネシウムとの混合層(以下、単に「混合層」ともいう。)がそれぞれ形成された積層部を島状に複数有する部分積層体を得た。これらの積層部(混合層-ニオブ箔−混合層)についてその周囲3辺をそれぞれ打ち抜き、残る1辺はニオブ箔のみからなる引き出しリードとして残し、個々の成形体とした。
【0115】
次に下部から上部へと気体が流通できる構造になっている反応器を用意した。
削り状金属マグネシウムをニオブ製のトレーに入れ、この反応器の下部に設置した。この成形体10000個(リード棒抜きで約12.4mg/個、合計約124g)をニオブ製の金網の上に置き、この金網を反応器の中段に設置した。
【0116】
反応器を約1×102Paの減圧にした後、アルゴンを反応器に入れ、常圧まで戻す操作を3回以上繰り返して反応器内の空気をアルゴンに置換した。50ml/分の量のアルゴンを反応器下部から上部へと流通させた。反応器内の圧力が約9.0×104Pa〜約1.2×105Pa(約700〜900mmHg)を保つように調節しながら、10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温した。約600℃で30分間放置した後、8℃/分の昇温速度で650℃まで昇温した。約650℃で30分間放置した後、8℃/分の昇温速度で700℃まで昇温した。約700℃の温度で30分放置し、さらに6℃/分の昇温速度で730℃まで昇温した後、約730℃の温度で8時間放置した。その後、反応器内の圧力が約9.0×104Pa〜約1.2×105Pa(約700〜900mmHg)を保つように、アルゴン流通量を調節しながら室温まで冷却した。アルゴンの流通を止め、反応器を約5×104Pa(約400mmHg)の減圧にした後、実施例1に示すような徐酸化の操作を反応物の温度が上昇しなくなるまで繰り返し、室温下、12時間放置の後、反応器からニオブの成形体を取り出した。別に用意した20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液3リットルに、この混合水溶液の温度が40℃を超えないように、冷却、撹拌しながら、このニオブの成形体を浸した。約2時間浸した後、ニオブ成形体を取り出して、さらに、20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液3リットルに、この混合水溶液の温度が40℃を超えないように、冷却、撹拌しながら、このニオブの成形体を浸した。約12時間浸し、空孔形成剤の水酸化マグネシウム、還元反応生成物の酸化マグネシウム、未反応の還元剤の金属マグネシウムを溶解させた後、デカンテーションして、ニオブ成形体を取り出して、ポリテトラフルオロエチレン製のカラムに入れ、イオン交換水を流しながら12時間水洗浄を行い、マグネシウム塩、硝酸、過酸化水素を除去した。この時の洗浄水の電気伝導度は、0.7μS/cmであった。この成形体を約1×102Paの減圧下、約50℃の条件で減圧乾燥した後、品温が30℃以下になるまで冷却した。0.5質量%の酸素を含む窒素ガスを品温が40℃を超えないように加え、乾燥機を減圧にしたのち酸素を含有する窒素を加えるという徐酸化の操作を品温が変化しなくなるまで繰り返したのち、8時間以上放置して、ニオブ箔を基体とした多孔質なニオブ成形体を得た。
【0117】
このニオブ成形体の酸素含有量は1.3質量%、体積約2.8mm3、密度3.4g/mlであり、比表面積は、0.021m2/mm3であった。また、空孔率は60%で、約0.7μmと約2μmと約10μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が16体積%であった。
【0118】
次に、このニオブ成形体300個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してニオブ陽極体とした。このニオブ陽極体について、コンデンサの作製方法4と同様の方法を用いて、導電性高分子層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。このニオブ陽極体3個を用いて、図4及び図5に示すように重ね合わせ、ニオブ箔の引き出しリードを厚さ約400μmの銅製のスペーサーと共に溶接し、ニオブ陽極体3個が一対となった3連のニオブ陽極体を得た。この陽極体100個について、さらに銀ペースト層を積層し、次にリードフレームを溶接後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は99%であり、容量は平均724μF/個であり、ESRは平均6mΩであった。
【0119】
実施例4:
酸素を8質量%含む平均粒子径が0.5μmのタンタル粉84質量部と、平均粒子径が0.7μmの酸化バリウム8質量部と、平均粒子径が2μmの酸化バリウム8質量部からなる平均粒子径が140μmの混合粉を用意した。
【0120】
トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、この平均粒子径が140μmの混合粉900ml、平均粒子径が20μmの酸化バリウム100mlを入れ、良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、タンタルと酸化バリウムと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.20mmφのタンタル線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ0.4mm×1.8mm×4.3mm(約3.10mm3)となるように成形した。この成形体のタンタル換算密度は5.0g/mlであった。この成形体を、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳を除去し、4×10-3Paの減圧下、1300℃で30分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、タンタルリード線付の酸素を含有するタンタルと酸化バリウムからなる成形体を得た。この混合物の成形体のタンタル換算密度は、5.7g/mlであった。以下、実施例2と同様の方法を用いて、還元反応を行い、空孔形成剤を除去して、タンタルリードが植え立てされた多孔質なタンタル成形体を得た。
【0121】
このタンタル成形体の酸素含有量は0.9質量%、体積約2.6mm3、密度5.7g/mlであり、比表面積は、0.026m2/mm3であった。また、空孔率は66%で、約0.7μmと約2μmと約20μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が18体積%であった。
【0122】
次に、このタンタル成形体600個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してタンタル陽極体とした。このタンタル陽極体について、コンデンサの作製方法1と同様の方法を用いて、無機半導体層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。このタンタル陽極体6個を用いて、図2及び図3に示すように重ね合わせ、引き出しリードを銅製のバーにスポット溶接し、タンタル陽極体6個が一対となった6連のタンタル陽極体を得た。この陽極体100個について、さらに銀ペースト層を積層し、次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は99%であり、容量は平均728μF/個であり、ESRは平均18mΩであった。
【0123】
実施例5:
実施例1と同様の方法で酸素を含有するニオブと酸化カルシウム(空孔形成剤)からなる成形体を作製し、還元反応を行った。反応後、室温まで冷却したのち、徐酸化した。このニオブと空孔形成剤とからなる成形体を、窒素雰囲気下、330〜370℃で2時間窒化した。その窒化量は、0.2質量%であった。窒化した前述の成形体を、実施例1と同様の方法で空孔形成剤、未反応の還元剤、還元剤の酸化物を溶解除去及び水洗浄などを順次行い、ニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。この多孔質なニオブ成形体の酸素含有量は、3.2質量%、体積約22mm3、密度3.3g/mlであり、比表面積は0.024m2/mm3であった。また、空孔率は61%で、0.9μmと2.2μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が18体積%であった。
このニオブ成形体を用いて、コンデンサの作製方法3に従い、チップ型のコンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は、平均99%であり、容量は平均983μF/個であり、ESRは平均18mΩであった。
【0124】
実施例6:
実施例3と同様の方法で、ニオブ箔上に酸素を9質量%含有するニオブと酸化マグネシウム混合層が形成された成形体を得た後、還元反応、空孔形成剤の除去、洗浄などを順次行いニオブ箔を基体とした多孔質なニオブ成形体を得た。この成形体を窒素雰囲気下、370〜420℃で2時間窒化した。その窒化量は、0.4質量%であった。この多孔質なニオブ成形体の酸素含有量は、0.9質量%、体積約2.8mm3、密度3.4g/mlであり、比表面積0.022m2/mm3であった。また、空孔率は60%で、約0.7μmと約2μmと約10μmに細孔ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が17体積%であった。以下、コンデンサの作製方法4と同様の方法で、実施例3と同様の方法に従いチップ型のコンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は99%であり、容量は平均735μF/個であり、ESRは平均6mΩであった。
【0125】
実施例7:
実施例3と同様の方法で、ニオブ箔上に、酸素を26質量%含むニオブ(五酸化ニオブと二酸化ニオブの混合物)と酸化マグネシウム混合層が形成された成形体を得た後、還元反応、空孔形成剤の除去、洗浄などを順次行いニオブ箔を基体とした多孔質なニオブ成形体を得た。この多孔質なニオブ成形体の酸素含有量は、14.6質量%であり、体積約2.8mm3、密度:ニオブ箔を含めた見掛け密度3.4g/ml(ニオブ換算密度:多孔質密度2.5g/ml)であり、比表面積0.025m2/mm3であった。また、空孔率は60%で、約0.7μmと約2μmと約10μmに細孔ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が17体積%であった。以下、コンデンサの作製方法4と同様の方法で、実施例3と同様の方法に従いチップ型のコンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は99%であり、容量は平均743μF/個であり、ESRは平均7mΩであった。
【0126】
実施例8〜23:
酸素含有量及び他の含有成分が異なるニオブ粉を用意した。他の含有成分は原料のインゴット作製時に溶融して合金化したものである。またタンタルと窒素を含有する場合は窒化タンタルの形で添加し(実施例21)、ケイ素と窒素を含有する場合は窒化ケイ素の形で添加した(実施例23)。表1に示すような空孔形成剤及び還元剤を用いて、実施例2と同様の方法を用いてニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。その物性を表3に示す。さらにコンデンサの作製方法1〜4のいずれかの方法を用いて、陰極層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。実施例2と同様の方法で6連のニオブ陽極体とし、実施例2と同様の方法でチップ型コンデンサを作製した。多孔質なニオブ成形体とコンデンサの物性を表3に併せて示す。
【0127】
実施例24〜27:
酸素含有量が異なるニオブ粉を用意した。表1〜2に示すような空孔形成剤及び還元剤を用いて、実施例24、26は実施例1と同様の方法で形状及びサイズの異なる多孔質なニオブ成形体を作成し、コンデンサの作製方法4と同様の方法でチップ型のコンデンサを作製した。
実施例25,27は実施例24,26で作成した成形体の陽極リードを3つ連結してコンデンサの作製方法4と同様の方法でチップ型のコンデンサを作製した。その物性を表3〜4に示す。
【0128】
実施例28:
実施例28は実施例3の方法で片側のみ塗布して、多孔質なニオブ成形体を得た。コンデンサの作製方法4と同様の方法を用いて、陰極剤を含浸後、実施例3と同様の方法で6個積層してチップ型のコンデンサを作製した。その物性を表4に示す。
【0129】
実施例29〜31:
実施例29〜31は実施例1と同様の方法でニオブリードを付けずに多孔質なニオブ成形体を作成後、ニオブリードを溶接して、コンデンサの作製方法4と同様の方法でチップ型のコンデンサを作製した。その物性を表4に示す。
【0130】
実施例32〜33:
実施例32〜33は実施例2の方法でニオブリードを付けずに多孔質なニオブ成形体を作成後、形状の違うニオブリードを溶接して、コンデンサの作製方法4と同様の方法を用いて、陰極剤を含浸後、実施例2と同様の方法で6個積層してチップ型のコンデンサを作製した。その物性を表4に示す。
【0131】
実施例34:
酸素を12質量%含む平均粒子径が0.5μmの水素化ニオブ粉90質量部と、平均粒子径が0.7μmの酸化マグネシウム6質量部と、平均粒子径が2μmの酸化マグネシウム10質量部からなる平均粒子径が120μmの混合粉を用意した。
【0132】
トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、この平均粒子径が120μmの混合粉900ml、平均粒子径が30μmの酸化マグネシウム100mlを入れ、良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、水素化ニオブと酸化マグネシウムと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.3mmφのニオブ線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ4.3mm×2.4mm×5.6mm(約57mm3)となるように成形した。この成形体のニオブ換算密度は2.8g/mlであった。
【0133】
表2に示すような還元剤を用いて、実施例1と同様の方法で還元反応、空孔形成剤の除去、洗浄などを順次行いニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。このニオブ成形体の酸素濃度は3.0質量%、体積50mm3、密度3.4g/mlであり、比表面積は0.024m2/gであった。また、空孔率は61%で、0.9と2μm及び10μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が17体積%であった。次に実施例1と同様の方法で電解化成して、コンデンサの作製方法4を用いてチップ型コンデンサを作成した。このコンデンサの物性を表4に示す。
【0134】
実施例35:
実施例34と同様の方法で水素化ニオブと酸化マグネシウムと樟脳を含む混合粉を用意した。さらに、0.3mmφのニオブ線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ5.5mm×3.0mm×7.0mm(約115mm3)となるように成形した。この成形体のニオブ換算密度は2.8g/mlであった。
【0135】
表2に示すような還元剤を用いて、実施例1と同様の方法で還元反応、空孔形成剤の除去、洗浄などを順次行いニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。このニオブ成形体の酸素濃度は3.5質量%、体積100mm3、密度3.3g/mlであり、比表面積は0.023m2/gであった。また、空孔率は60%で、0.9と2μm及び10μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が18体積%であった。次にコンデンサの作製方法4を用いてチップ型コンデンサを作成した。このコンデンサの物性を表4に示す。
【0136】
実施例36〜38:
実施例1〜3と同様の方法で多孔質なニオブ成形体を作成し、コンデンサの作製法5を用いてチップ型コンデンサを作成した。このコンデンサの物性を表4に示す。
【0137】
実施例39
酸化カルシウムの代わりに酸化マグネシウムを用いた以外は実施例1と同様な方法で多孔質なニオブ成形体を作成し、次いでコンデンサの作製法2を用いてチップ型コンデンサを作成した。このコンデンサの物性を表4に示す。
【0138】
実施例40
酸化カルシウムの代わりに酸化マグネシウムを用いた以外は実施例1と同様な方法で多孔質なニオブ成形体を作成し、次いでコンデンサの作製法5を用いてチップ型コンデンサを作成した。このコンデンサの物性を表4に示す。
【0139】
実施例41
酸化カルシウムの代わりに酸化マグネシウムを用いた以外は実施例1と同様な方法で多孔質なニオブ成形体を作成し、次いでコンデンサの作製法6を用いてチップ型コンデンサを作成した。このコンデンサの物性を表4に示す。
【0140】
実施例42
酸素を6%含む平均粒子径が0.5μmのニオブ粉を用意した。表1に示す空孔形成剤を使用して、実施例1と同様の方法で混合粉を得た。さらに0.3mmφのニオブ線とともにこの混合粉を自動成形し、大きさが3.3mm×1.8mm×4.3mm(約25mm3)となるように成形した。その後実施例1と同様の方法で樟脳を除去、焼結してニオブと酸化マグネシウムの成形体を得た。
この混合物の成形体1000個を反応器に入れ、反応器を4×10-3Paに減圧後、Arで希釈したH2ガス(30vol%)を反応機内に100ml/minの速度で流通し、常圧になったところで約12℃/分の昇温速度で400℃まで昇温した。約400℃で30分放置した後、約10℃/分の昇温速度で450℃まで昇温し、約450℃で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、約600℃の温度で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で700℃まで昇温し、約700℃の温度で30分放置した。さらに6℃/分の昇温速度で750℃まで昇温し、約750℃の温度で3時間放置した後、室温まで冷却した。冷却終了後、還元剤である水素を除去するために、反応器を4×10-3Paまで減圧し、Arにて5×104Pa(約400mmHg)の減圧にした後、実施例1と同様の徐酸化を行った。
得られたニオブ成形体を実施例1と同様の方法で空孔形成剤を除去したのち、コンデンサの作製方法4を用いてチップ型コンデンサを作成した。
このコンデンサの物性を表4に示す。
【0141】
実施例43
空孔形成剤に酸化マグネシウムを使用して実施例1と同様の方法でニオブ成形体を作成した後、減圧下(100mmHg以下)、1200℃で3時間加熱して余分の還元剤を除去した後、実施例1と同様の方法で空孔形成剤を除去し、次いでコンデンサの作製方法4を用いてチップ型コンデンサを作成した。
このコンデンサの物性を表4に示す。
【0142】
比較例1:
空孔形成材が入っていない、酸素を12質量%含む平均粒子径が0.5μmのニオブ粉を用意した。トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、このニオブ粉を入れ良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、ニオブと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.3mmφのニオブ線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ3.3mm×1.8mm×4.3mm(約25mm3)となるように成形した。この成形体のニオブ換算密度は2.8g/mlであった。この成形体を、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳を除去し、4×10-3Paの減圧下、1150℃で45分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、ニオブリード線付の酸素を含有するニオブの成形体を得た。この混合物の成形体のニオブ換算密度は、3.3g/mlであった。この混合物の成形体1000個(約90g)と削り状金属マグネシウム15g良く混ぜ合わせ、ニオブのトレーに入れた。さらに、このトレーの上部にニオブ製の板をかぶせ(密閉はしていない)、還元反応器に入れた。反応器を減圧した後、アルゴンを反応器に入れる操作を3回以上繰り返して反応器内の空気をアルゴンに置換した。
【0143】
実施例1と同様の方法で反応器内の圧力を調整した後、昇温して還元反応を行い、室温まで冷却したのち、徐酸化を行ってニオブの成形体を取り出した。
【0144】
還元反応生成物の酸化マグネシウム、未反応の金属マグネシウムを含むニオブの成形体を実施例1と同様の方法で、20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液を用いて洗浄した後、イオン交換水を用いて、マグネシウム塩、硝酸、過酸化水素を除去する水洗浄を行った。この時の洗浄水の電気伝導度は、0.9μS/cmであった。
【0145】
この成形体を約1×102Paの減圧下、約50℃の条件で減圧乾燥した後、品温が30℃以下になるまで冷却した。0.5質量%の酸素を含む窒素ガスを品温が40℃を超えないように加え、乾燥機を減圧にしたのち再度酸素を含有する窒素を加えるという徐酸化の操作を品温が変化しなくなるまで繰り返したのち、8時間以上放置して、ニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。このニオブ成形体の酸素含有量は2.1質量%、体積約22mm3、密度3.3g/mlであり、比表面積は、0.017m2/mm3であった。また、空孔率は61%であったが、細孔直径ピークトップは0.5μmにしか存在せず、1μm以上の細孔容積が5体積%であった。
【0146】
次に、このニオブ成形体100個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してニオブ陽極体とした。
【0147】
このニオブ陽極体について、コンデンサの作製方法4を用いてチップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は85%であり、容量は平均628μF/個であり、ESRは平均43mΩであった。
【0148】
比較例2:
空孔形成材が入っていない、酸素を15質量%含む平均粒子径が0.5μmのニオブ粉を用意した。トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、このニオブ粉入れ良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、ニオブと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.20mmφのニオブ線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ0.4mm×1.8mm×4.3mm(約3.1mm3)となるように成形した。この成形体のニオブ換算密度は2.8g/mlであった。この成形体を、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳を除去し、4×10-3Paの減圧下、1165℃で30分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、ニオブリード線付の酸素を含有するニオブの成形体を得た。この混合物の成形体のニオブ換算密度は、3.3g/mlであった。
【0149】
このニオブ成形体の酸素含有量は2.0質量%、体積約2.6mm3、密度3.4g/mlであり、比表面積は、0.018m2/mm3であった。また、空孔率は60%であったが、細孔直径ピークトップは0.4μmにしか存在せず、1μm以上の細孔容積が5体積%であった。
【0150】
次に、このニオブ成形体600個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してニオブ陽極体とした。このニオブ陽極体について、コンデンサの作製方法3と同様の方法を用いて、導電性高分子層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。このニオブ陽極体6個を並べて、引き出しリードを銅製のバーにスポット溶接した。ニオブ陽極体6個が一対となった6連のニオブ陽極体100個について、さらに銀ペースト層を積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は85%であり、容量は平均513μF/個であり、ESRは平均25mΩであった。
【0151】
比較例3:
空孔形成材が入っていない、酸素を9質量%含む平均粒子径が0.5μmの水素化ニオブ粉を用意した。トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、このニオブ粉を入れ、良く混合して、スラリー液を得た。次に、3.3mm×4.3mmの粉末焼結層を形成するための孔を格子状に複数個設けた厚み0.2mmのマスクを厚さ50μmのニオブ箔の上に載せ、ディスペンサーの先端に取り付けられたダイコート金型からこのスラリー液を吐出させながら格子状のマスク表面に塗布して、ニオブ箔上にスラリー層を形成した。このスラリー層を約60℃で熱風乾燥した。ニオブ箔を裏返して、ニオブ箔を対称軸として表裏で対象になるように同じ形状のマスクを載せた。ディスペンサーの先端に取り付けられたダイコート金型からこのスラリー液を吐出させながら格子状のマスク表面に塗布して、ニオブ箔上にスラリー層を形成したのち約60℃の温度で熱風乾燥した。ニオブ箔の表と裏にあるマスクを外した後、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳及び水素を除去し、4×10-3Paの減圧下、1170℃で30分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、ニオブ箔の対応する位置の両面に、酸素含有ニオブ層がそれぞれ形成された積層部を島状に複数有する部分積層体を得た。これらの積層部(酸素含有ニオブ層-ニオブ箔−酸素含有ニオブ層)についてその周囲3辺をそれぞれ打ち抜き、残る1辺はニオブ箔のみからなる引き出しリードとして残し、個々の成形体とした。
【0152】
このニオブ成形体の酸素含有量は1.8質量%、体積約2.8mm3、密度3.4g/mlであり、比表面積は、0.016m2/mm3であった。また、空孔率は60%であったが、細孔直径ピークトップは0.4μmにしか存在せず、1μm以上の細孔容積が5体積%であった。
【0153】
次に、このニオブ成形体300個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してニオブ陽極体とした。このニオブ陽極体について、コンデンサの作製方法4と同様の方法を用いて、導電性高分子層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。このニオブ陽極体3個を並べて、ニオブ箔の引き出しリードを厚さ約400μmの銅製のスペーサーと共に溶接した。ニオブ陽極体3個が一対となった3連のニオブ陽極体100個について、さらに銀ペースト層を積層した。次にリードフレームを溶接後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は85%であり、容量は平均507μF/個であり、ESRは平均30mΩであった。
【0154】
比較例4:
空孔形成材が入っていない、酸素を8質量%含む平均粒子径が0.5μmのタンタル粉を用意した。トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、このタンタル粉を入れ、良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、タンタルと酸化バリウムと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.20mmφのタンタル線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ0.4mm×1.8mm×4.3mm(約3.10mm3)となるように成形した。この成形体のタンタル換算密度は5.0g/mlであった。この成形体を、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳を除去し、4×10-3Paの減圧下、1300℃で30分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、タンタルリード線付の酸素を含有するタンタルの成形体を得た。この混合物の成形体のタンタル換算密度は、5.7g/mlであった。
【0155】
このタンタル成形体の酸素含有量は1.5質量%、体積約2.6mm3、密度5.7g/mlであり、比表面積は、0.019m2/mm3であった。また、空孔率は63%であったが、細孔直径ピークトップは約0.4μmにしか存在せず、1μm以上の細孔容積が5体積%であった。
【0156】
次に、このタンタル成形体600個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してタンタル陽極体とした。このタンタル陽極体について、コンデンサの作製方法1と同様の方法を用いて、無機半導体層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。このタンタル陽極体6個を用いて、図2及び図3に示すように重ね合わせ、引き出しリードを銅製のバーにスポット溶接し、タンタル陽極体6個が一対となった6連のタンタル陽極体を得た。この陽極体100個について、さらに銀ペースト層を積層し、次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は85%であり、容量は平均511μF/個であり、ESRは平均44mΩであった。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】リード付き直方体型多孔質陽極体の斜視図である。
【図2】(A)は薄型リード付き多孔質陽極体の斜視図、(B)は(A)の積層例の斜視図である。
【図3】図2の積層型陽極体の使用状態を示す断面図である。
【図4】(A)は両面を基体と一体化した薄型リード付き多孔質陽極体のの斜視図、(B)は(A)の積層例の斜視図である。
【図5】図4の積層型陽極体の使用状態を示す断面図である。
【図6】(A)はリード付き円筒型多孔質陽極体の斜視図、(B)は(A)の並列接続例の斜視図である。
【図7】(A)はリード付き角柱型多孔質陽極体の斜視図、(B)は(A)の並列接続例の斜視図である。
【図8】(A)は片面を基体と一体化した薄型リード付き多孔質陽極体の斜視図、(B)は(A)の積層例の斜視図である。
【図9】リードなし直方体型多孔質陽極体(A)に溶接するリードの3つの態様((B)〜(D))を示す斜視図である。
【図10】リードなし薄型多孔質陽極体(A)に溶接するリードの3つの態様((B)〜(D))を示す斜視図である。
【図11】棒状リードを溶接した薄型多孔質陽極体の積層例の斜視図である。
【図12】板状リードを溶接した薄型多孔質陽極体の積層例の斜視図である。
【符号の説明】
【0162】
1:多孔質陽極体
2:リード
3:リードフレーム
4:スペーサー
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極剤を含浸させるのに適した空孔分布(径のピーク位置、平均空孔径及び空孔量)に制御し、かつ酸素量を容易に調整することができる固体電解コンデンサ用のニオブまたはタンタル系多孔質陽極体の製造方法に関する。また、本発明は、その方法により得られたニオブまたはタンタル系多孔質陽極体を用いた、高容量、低ESR及びtanδ特性が良好で、長期信頼性を有する固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器に使用されるコンデンサは、小型で大容量のものが望まれている。このようなコンデンサの中でもタンタルコンデンサ、ニオブコンデンサは大きさの割には容量が大きく、性能が良好なため好んで使用されている。さらに、最近の電子デバイスは、低電圧作動、高周波作動、低ノイズ化が求められており、固体電解コンデンサにおいても、より高容量、低ESR(等価直列抵抗)、tanδ特性の向上が求められている。
【0003】
弁作用金属、弁作用金属合金、弁作用金属化合物などを用いたコンデンサの陽極体としては、一般的に弁作用金属凝集粉、弁作用金属合金凝集粉、弁作用金属化合物凝集粉を用いた多孔質陽極体が使用されている。
【0004】
高容量、低ESR、tanδ特性をより向上させるためには、多孔質陽極体の比表面積が大きいことと、対電極となる陰極剤の含浸性がよいことを同時に満たす必要がある。多孔質陽極体の比表面積を大きくするには、陽極体を構成する1次粉を小さくすればよいが、小さな1次粉が作り出す空孔は必然的に小さくなる。多孔質陽極体を用いてコンデンサを製造する場合、これら空孔に効率良く十分な量の固体電解質を、陽極体の表面から深部まで含浸させなければならない。特に、陽極体の体積が10mm3以上ある大きな多孔質陽極体の場合、表面から深部までの距離が長く、小さな空孔では十分な固体電解質の含浸ができなかった。また、空孔径分布にバラツキが生じ一定の空孔が形成できない問題もある。したがって、陰極剤種類に適した空孔径分布をもつ多孔質陽極体が望まれている。
【0005】
コンデンサの陽極体で用いる弁作用金属、弁作用金属合金、あるいは弁作用金属化合物としてニオブ、ニオブ酸化物、タンタル、タンタル酸化物などを用いる場合、一般的には、酸素を含有するニオブあるいはタンタルを還元処理することにより酸素量を制御して製造されるニオブ凝集粉、ニオブ酸化物凝集粉、タンタル凝集粉、タンタル酸化物凝集粉などが用いられる。これらの凝集粉を製造する方法として、還元処理による方法が古くから知られている。
【0006】
特許文献1〜6には、酸素ゲッター金属を用いる製造方法が記されている。特許文献7〜8には、還元剤を気体状にして反応させる方法が記されている。特許文献9〜10には、ハロゲン化塩などを助剤として用いる製造方法が記されている。特許文献11〜14には、還元剤として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム、炭素などを用いる製造方法が記されている。特許文献15〜16には、還元剤と弁作用金属を分離して配置し反応させる製造方法が記されている。特許文献17〜18には、制御された温度で、2段階で還元反応させる製造方法が記されている。特許文献19には、還元剤として、珪素合金や水素化金属を用いる製造方法が記されている。特許文献20には、陽極リードを植え立てした陽極用成形体と還元剤を共存させ加熱する、陽極焼結体の製造方法が記されている。
【0007】
しかしながら、これらの製造方法は、いずれも酸素量を制御することが目的であり、空孔を積極的に制御するものではなくこれら製造方法で得られた陽極焼結体を用いて固体電解コンデンサを作製した場合、陰極剤を含浸するのに適した空孔を形成することが難しく、特に10mm3以上の大きな焼結体(陽極体)を用いると陰極剤の含浸性が悪く、その結果、作成したコンデンサは、容量が低く、ESRが高く、tanδ高くなるという問題を抱えていた。
【0008】
特許文献21には、空孔形成剤を用いる製造方法が記されている。該公報には、酸溶解性の空孔形成剤として、マグネシウム、マグネシウム水素化物、カルシウム、カルシウム水素化物、アルミニウムなどが例示されている。しかしながら、これらの空孔形成剤は、前述した先行技術で還元剤として用いられている物質であり、該公報に記されている酸溶解性の空孔形成剤を用いた製造方法で作成した粉体を用いて固体電解コンデンサを作成しても、前記先行技術と同様、容量が低く、ESRが高く、tanδが高くなるという問題は解決されない。
【0009】
【特許文献1】米国特許第4722756号明細書
【特許文献2】米国特許第4960471号明細書
【特許文献3】特開平03−229801号公報
【特許文献4】特表2002−507247号公報
【特許文献5】特表2002−524378号公報
【特許文献6】特表2002−524379号公報
【特許文献7】米国特許第4537641号明細書
【特許文献8】特表2002−544375号公報
【特許文献9】米国特許第1728941号明細書
【特許文献10】米国特許第4687632号明細書
【特許文献11】米国特許第3697255号明細書
【特許文献12】米国特許第5242481号明細書
【特許文献13】英国特許第870930号
【特許文献14】特表2002−544677号公報
【特許文献15】特開平03−170648号公報
【特許文献16】特開2003−13115号公報
【特許文献17】英国特許第1266065号
【特許文献18】特開2000−119710号公報
【特許文献19】米国特許第2516863号明細書
【特許文献20】特開平11−111575号公報
【特許文献21】特開2001−345238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、空孔分布が陰極剤を含浸させるのに適した範囲に制御された固体電解コンデンサ用の陽極体であって、高容量、低ESRで、tanδ特性が良好、かつ耐湿性、高温負荷などの長期信頼性に優れたコンデンサを作製できる多孔質陽極体の製造方法、及びその陽極体を用いた電解コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の固体電解コンデンサ用多孔質陽極体の製造方法、その方法により得られた多孔質陽極体、その多孔質陽極体を用いた固体電解コンデンサ及び用途に関する。
【0012】
[1]酸素を含有するニオブ材料及び酸素を含有するタンタル材料から選択される少なくとも1種の材料の粉末と還元温度で固体である空孔形成剤とを含む成形体を還元剤を用いて還元反応に付す工程、及び得られた還元反応生成物から空孔形成剤を除去する工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ用多孔質陽極体の製造方法。
[2]ニオブ材料がニオブ、ニオブ合金及びニオブ化合物から選択される少なくとも1種であり、タンタル材料がタンタル、タンタル合金及びタンタル化合物から選択される少なくとも1種である前記1に記載の製造方法。
[3]酸素を含有するニオブ材料または酸素を含有するタンタル材料が、酸素含有量50質量%以下であり、かつ、ニオブ、一酸化六ニオブ、一酸化ニオブ、二酸化ニオブ、五酸化ニオブ、タンタル、及び五酸化タンタルから選択されるの少なくとも一つの結晶を含む前記1または2に記載の製造方法。
[4]酸素を含有するニオブ材料が、水素、硼素、窒素、アンチモン、タンタル、ジルコニウム、タングステン、珪素、アルミニウムから選択される少なくとも1種の元素を含む前記1〜3のいずれかに記載の製造方法。
[5]酸素を含有するタンタル材料が、水素、硼素、窒素、アンチモン、ニオブ、ジルコニウム、タングステン、珪素、アルミニウムから選択される少なくとも1種の元素を含む前記1〜3のいずれかに記載の製造方法。
[6]成形体が窒化珪素を含む前記1〜5のいずれかに記載の製造方法。
[7]還元剤が、タンタル以上の酸素親和性を持つ金属、合金及びそれらの水素化物から選択される少なくとも1種である前記1〜6のいずれかに記載の製造方法。
[8]還元剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ミッシュメタル、イットリウム、アルミニウム、タンタル、ニオブ、炭素、珪素、これらの合金、これらの水素化物、及び水素から選択される少なくとも1種である前記7に記載の製造方法。
[9]成形体の形状が、リード付の成形体または基体と一体化した成形体であり、そのリードまたは基体が、ニオブ、ニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル、タンタル合金、及びタンタル化合物から選択される少なくとも1種からなる前記1〜8のいずれかに記載の製造方法。
[10]成形体が厚さ1mm以下に成形される前記9に記載の製造方法。
[11]還元反応工程前に、成形体を焼結させる工程を含み、かつ空孔形成剤が焼結温度で固体である前記1〜10のいずれかに記載の製造方法。
[12]焼結が、500〜2000℃の温度で行われる前記11に記載の製造方法。
[13]還元反応工程前に、成形体または焼結体と還元剤とを混合する工程を含む前記1〜12のいずれかに記載の製造方法。
[14]混合する温度が50℃以下である前記13に記載の製造方法。
[15]還元反応工程において、450〜2000℃の範囲に加熱する前記1〜14のいずれかに記載の製造方法。
[16]12℃/分以下の昇温速度で加熱する前記15に記載の製造方法。
[17]還元反応工程後の空孔形成剤の除去工程前に、不活性ガスにより0.1〜21質量%の酸素含有量に希釈した酸素含有気体を用いて徐酸化する工程を含む前記1〜16のいずれかに記載の製造方法。
[18]徐酸化する温度が60℃以下である前記17に記載の製造方法。
[19]空孔形成剤の除去工程が、水、有機溶媒、酸性溶媒、アルカリ性溶媒、アミン含有溶媒、アミノ酸含有溶媒、ポリリン酸含有溶媒、クラウンエーテル溶媒、キレート剤含有溶媒、アンモニウム塩含有溶媒及びイオン交換樹脂分散溶媒から選択される少なくとも1種の溶媒により除去する工程である前記1〜18のいずれかに記載の製造方法。
[20]空孔形成剤を除去する温度が、50℃以下である前記19に記載の製造方法。
[21]還元反応工程後、空孔形成剤除去工程前に、残存する還元剤を除去する工程を含む前記1〜20のいずれかに記載の製造方法。
[22]残存する還元剤を除去する工程が、高減圧下、450〜2000℃で行われる前記21に記載の製造方法。
[23]還元反応工程前、あるいは還元反応工程後の空孔形成剤除去工程前に、窒素、硼素、リン、硫黄、セレン、テルル、アルミニウム、珪素及びアンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を成形体または焼結体にドープする工程を含む前記1〜22のいずれかに記載の製造方法。
[24]還元反応工程前、還元反応工程中、還元反応工程後の空孔形成剤除去工程前、または空孔形成剤除去工程後に、脱水素工程を含む前記1〜23のいずれかに記載の製造方法。
[25]前記1〜24のいずれか1項に記載の方法で作成された固体電解コンデンサ用の陽極体。
[26]前記1〜24のいずれか1項に記載の方法で多孔質陽極体を製造し、この陽極体を一方の電極とし、誘電体を介して対電極を構成する固体電解コンデンサの製造方法。
[27]2つ以上の多孔質陽極体が、電気的に並列に接続される前記26に記載のコンデンサの製造方法。
[28]前記26に記載の方法で製造される固体電解コンデンサ。
[29]前記28に記載の固体電解コンデンサを搭載した電子回路。
[30]前記28に記載の固体電解コンデンサを搭載した電子機器。
【発明の効果】
【0013】
本発明はニオブ材料及び/またはタンタル材料と空孔形成剤とを含有する混合物の成形体に対して還元反応を行い、ニオブ材料及び/またはタンタル材料中に含まれる酸素量を調整し、次いで還元反応温度では除去されず固体で前記材料中に残存する空孔形成剤を除去する固体電解コンデンサ用多孔質陽極体の製造方法を提供するものである。本発明の製造方法によれば、空孔形成剤の種類、平均粒径、添加量を制御することにより、陰極剤の種類に応じて空孔直径分布のピーク位置、数、量を調整でき、陰極剤の含浸性を向上させることができる。特に多孔質陽極体の体積が10mm3以上で空孔率が55体積%以上の大型の陽極体では、1μm以上の空孔容積が全空孔容積の10体積%以上に調整することができ、陰極剤の含浸性が高くなり、高容量で、かつ低ESR及びtanδ特性が良好で、長期信頼性のおける固体電解コンデンサとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[1]混合物成形体
本発明の製造方法における出発原料である混合物成形体は、酸素を含有するニオブ材料及び酸素を含有するタンタル材料から選択される少なくとも1種の材料の粉末と空孔形成剤とを含む混合物からなる。粉末としては、凝集等の加工がなされていない一次粉末、これを凝集させた二次凝集粉末及びそれらの造粒物である造粒粉末のいずれもが使用可能である。一次粉末としては平均粒径が0.01〜4μmのものが好ましく、二次凝集粉末としては平均粒径が0.1〜20μmのものが好ましく、造粒粉末としては平均粒径が0.2〜200μmのものが好ましい。粉末の形状は、球状、棒状、扁平状、フレーク状など、形状に左右されず好適に使用できる。熱履歴が少なく、比表面積の大きい粉体を用いることが望ましい。
【0015】
前記粉末と空孔形成剤とを媒体に混合させた混合液を調製して用いることにより、出発原料に用いる混合物成形体は様々な形状とすることができる。例えば、前記混合液を乾燥させて得られた混合物粉、混合物の造粒粉末を圧縮成形した混合物成形体、前記混合液を鋳型等に入れ媒体を除去した混合物成形体、前記混合液をフィルム、箔、板、ワイヤー等に塗布、印刷、浸析させて得られた混合物成形体などの形状とすることができる。さらにこれらの成形体に線状、棒状、箔状、板状などの引き出しリードを植え込み、あるいは溶接しても良い。また、必要に応じて、混合物粉あるいは成形体を加熱などによる予備凝集などの操作を行っても良い。
【0016】
また、金型等を使用して成形体を成形する際には角の欠け等を防止するために金型表面に離型剤を塗布またはスプレーして使用することもできる。離型剤としては残留成分がコンデンサの電気特性に影響を与えない限り特に制限無く使用できるが、フッ素系、BN系、シリコン系、スルホン酸系、あるいはステアリン酸系の滑剤が好ましい。
【0017】
前記混合液を調製する際に用いる媒体としては、水、アルコール類、エーテル類、セルソルブ類、ケトン類、エステル類、アミド類、スルホキシド類、スルホン類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。空孔形成剤の溶解度が低い溶媒を選択することが好ましい。また、混合液を調製する温度で、液体で存在する安価な溶媒が好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルイソブチルエーテル、メチルセルソルブ、ダイグライム、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、酢酸メチル、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、トリクレン、四塩化炭素、クロロベンゼンなどを好ましく使用することができる。
【0018】
また、混合液の調製には、通常の混合機を用いることができる。例えば、振とう混合機、V型混合機、コニカルブレンダー、ビーズ混合機、ナウターミキサー、二本ロール、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ペブルミル、トロンミル、サンドグラインダー、セグバリアトライター、インペラー分散機、超音波分散機、ホモジナイザー、ニーダー、衝撃ミル、ストーンミルなどが好適に使用できる。
【0019】
前記粉末と空孔形成剤との合計が混合液中に占める割合(固形分濃度)は、目的の成形体の形態、用いる溶媒の種類などによって異なるが、通常10質量%以上100質量%未満である。濃度が低すぎると溶媒の留去に過剰な時間と熱を必要とする。したがって、20質量%以上100質量%未満が好ましく、30質量%以上100質量%未満が特に好ましい。
【0020】
混合液を調製する温度は、−80〜120℃が好ましい。温度が高すぎるとニオブやタンタルの表面が酸化され酸素量が増大する。酸素量の増大は、還元反応に必要な還元剤の使用量を多くするため経済的に好ましくない。温度が低すぎることは、冷凍機などの付帯設備が多くなり経済的に好ましくない。したがって、−40〜50℃がより好ましく、−10〜40℃がさらに好ましく、0〜30℃が特に好ましい。混合に要する時間は、1分以上あれば特に制限はないが、通常10分〜100時間である。
【0021】
混合液には、バインダーを配合することができる。無機バインダー、有機バインダーのいずれも使用できるが、通常、樟脳、ナフタリン、ステアリン酸等の石けん脂肪酸、カーボワックス、植物ワックス、精製パラフィン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミドなどのアクリル系ポリマー、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリルアミドなどのメタクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニル系ポリマー、ポリエチレンカーボネートなどが使用できる。バインダーの配合量は、その種類によって一概には言えないが、前記粉末及び空孔形成剤の合計を100質量部としたときに、通常1〜15質量部であり、好ましくは2〜10質量部、さらに好ましくは3〜8質量部である。
【0022】
このように調製された混合液は、混合液をそのまま用いて混合物成形体を形成しても良いし、溶媒を一部留去して濃度調整をしたのちに用いて成形体を形成しても良いし、溶媒を乾燥したのち成形しても良い。また、成形したのちに乾燥しても良い。溶媒の留去は、使用する溶媒の沸点にもよるが、減圧から加圧の適当な圧力のもと、−40〜200℃で行われる。一般的には、減圧下、常温以上120℃以下が好ましい。溶媒の留去には、熱風乾燥、噴霧乾燥、真空加熱乾燥、流動乾燥、静置乾燥、凍結乾燥などの通常の方法を用いることができる。造粒粉とする場合は、ナウターミキサー、リボコーン乾燥機、撹拌乾燥機などを用いて、造粒しながら乾燥することが好ましい。
【0023】
混合物を構成する一方の物質である、酸素を含有するニオブ材料及び酸素を含有するタンタル材料は、酸素を含有するニオブまたはタンタルのほか、ニオブまたはタンタルと他の成分との合金や複合体、炭素、硼素、リン、及び/または窒素等の成分を含むニオブまたはタンタルの化合物であってもよく、また、これらの水素化物であってもよい。前述の酸素を含有するニオブまたはタンタル、ニオブ合金、タンタル合金、ニオブ化合物あるいはタンタル化合物、またはこれらの水素化物は、その種類によっても異なるが、50質量%以下の酸素を含む。好ましい酸素含有量は0.01〜30質量%であり、さらに好ましくは0.1〜15質量%である。このようなニオブ材料及び/またはタンタル材料には、Nb、Nb6O、NbO、NbO2、Nb2O5、Ta、Ta2O5の少なくとも1種の結晶を含んでいてもよい。
【0024】
前記のニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル合金及びタンタル化合物において、ニオブ、タンタル及び酸素以外の成分としては、水素、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、プラチナ、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀、硼素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、炭素、珪素、ゲルマニウム、スズ、鉛、窒素、リン、砒素、アンチモン、ビスマス、硫黄、セレン、テルル、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素が例示される。漏れ電流特性(LC)をより安定させるという観点からは、水素、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、亜鉛、硼素、アルミニウム、珪素、窒素、リン、アンチモン、ネオジム、エルビウム、イッテルビウム及びルテチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素が好ましい。ニオブ、タンタル及び酸素以外の元素成分の存在量は、0.01〜10原子%が好ましい。
【0025】
前記合金及び化合物は、無定形、非晶質、ガラス状、コロイド状、結晶などの形態をとっているものであっても良い。さらに、コンデンサの耐熱性をより向上させるためには、硼素、窒素、アンチモン、ジルコニウム、タングステン、珪素及びアルミニウムの少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。窒素と珪素を含む場合、窒化珪素として配合してもよい。窒化珪素の具体例としては、SiN、Si2N2、Si2N3、Si3N4などが例示され、その形態としては、無定形、非晶質、ガラス状、コロイド状、結晶などが挙げられる。
【0026】
このようなニオブ材料またはタンタル材料からなる粉末は、米国特許4084965号公報、特開平10−242004号公報、特開2002−25864号公報などに記載されているニオブ粉、ニオブ化合物粉、ニオブ合金粉の製造方法など、公知の方法を用いて製造することができる。
【0027】
混合物を構成するもう一方の物質である空孔形成剤は、還元反応を行う工程前あるいは工程中に、ニオブ材料及びタンタル材料と実質的に反応せず、還元反応を行う温度(通常450℃以上)で固体のまま存在する物質、具体的には酸化物または還元反応工程が行われる際に酸化物となっている化合物が好ましい。また、還元反応工程前に焼結による予備凝集を行う場合は、予備凝集を行う焼結温度(通常500℃以上)において空孔形成剤は前記と同様であることが好ましい。
還元反応工程中に固体のまま存在する空孔形成剤を用いることにより、還元反応温度においてニオブ材料及び/またはタンタル材料からなる粉末の必要以上の凝集を防ぎ、ニオブ材料及び/またはタンタル材料同士の接点でのみ融着を起こさせることができる。還元反応温度において液体となる空孔形成剤を用いた場合には、ニオブ材料及び/またはタンタル材料からなる粉末の体積収縮を防止する効果が小さくなり、望む空孔より小さな空孔を形成する場合がある。また、空孔の存在率に偏りが発生する場合がある。還元反応温度において気体となる空孔形成剤を用いた場合には、反応温度において空孔形成剤がニオブ材料及び/またはタンタル材料からなる粉末の隙間から抜け出し、小さな空孔しか形成できなくなる。これらのことは、還元反応工程だけでなく予備凝集工程においても同様である。
【0028】
また、ニオブ材料及び/またはタンタル材料からなる粉末の必要以上の凝集を防止することにより、コンデンサ作製時の陰極剤の含浸性に最適な多孔質陽極体の密度をコントロールすることができ、その陽極体の比表面積を大きく残し、その陽極体のもつ単位体積あたりの容量を大きくすることができる。
【0029】
空孔形成剤としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、水銀、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、珪素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムから選択される少なくとも1種の酸化物や、これら酸化物を与える水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩を単独でまたは二種以上混合して用いることができる。
【0030】
空孔形成剤は、還元反応後の工程で、好ましくは溶媒を用いて除去される。したがって、空孔形成剤としては溶媒に対する溶解性の良いものが好ましい。さらに、溶解除去されるため安価な空孔形成剤を用いることが経済的に有利である。したがって、特に好ましい空孔形成剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酸化リチウム、炭酸リチウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸マグネシウムカルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化バリウム、炭酸バリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、水酸化イットリウム、炭酸イットリウム、酸化ランタン、水酸化ランタン、炭酸ランタン、酸化セリウム、水酸化セリウム、炭酸セリウム、酸化ネオジム、水酸化ネオジム、炭酸ネオジム、酸化サマリウム、水酸化サマリウム、炭酸サマリウム、酸化マンガン、炭酸マンガン、酸化鉄、水酸化鉄、炭酸鉄、酸化鉄マグネシウム、酸化鉄鉛、酸化亜鉛、酸化亜鉛バリウム、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化鉛及び炭酸鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0031】
用いる空孔形成剤の量は、求める多孔質陽極体の空孔率(多孔質陽極体中の空孔の割合)が十分得られる量以上であればよい。ただし、過剰に用いる必要はなく、用いる空孔形成剤の分子量、形状、平均粒径、嵩密度、タッピング密度によっても異なるが、通常、空孔形成剤の量は、ニオブ材料及び/またはタンタル材料と空孔形成剤の合計量を基準にして70質量%以下が好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
空孔形成剤は粉体を用いることが好ましく、粉体の形状は、球状、棒状、扁平状、フレーク状など形状に左右されず好適に使用できる。
【0033】
空孔形成剤の粒径は、陽極として用いる多孔質陽極体の空孔直径に影響し、多孔質陽極体の空孔直径はコンデンサの容量及びコンデンサ製造工程における陰極剤の含浸性に影響する。陰極剤の含浸性が良好であると、高容量、低ESR、tanδ特性の良好なコンデンサとすることができる。空孔直径分布のピークが小さい多孔質陽極体には陰極剤が良好に含浸しない。コンデンサ用多孔質陽極体の望ましい空孔直径は、平均径として0.01〜100μm、さらに望ましくは0.1〜20μmである。また、空孔直径分布のピークが0.1μm以上に複数存在させ、望ましい空孔と、比較的大きな空孔を組み合わせることにより、特に無機系の固体電解質の含浸性をより向上させることもできる。
【0034】
前述のように、空孔形成剤は還元反応温度において固体で存在し、適当な溶剤で除去されるため、本発明の多孔質陽極体の空孔の平均径は、空孔形成剤の平均粒径とほとんど変わらない。したがって、空孔形成剤の平均粒径は0.01〜100μm、さらに0.1〜20μmであることが望ましい。また、平均粒径の異なる複数の空孔形成剤を混合して、粒度分布が複数のピークを有する空孔形成剤として用いることもできる。具体的には、平均粒径が0.1μm以上1μm未満、好ましくは0.3μm以上1μm未満の空孔形成剤と、平均粒径が1μm以上、好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜5μmの空孔形成剤とを組み合わせて用いることにより、化成した多孔質陽極体への陰極剤の含浸性が向上する。例えば、多孔質陽極体の空孔直径分布のピークを0.7μmと2μmに持たせ、かつ直径1μm以上の空孔容積が全空孔容積の13体積%以上になるように調整するためには、平均粒径が約0.7μmと約2μmの空孔形成剤を組み合わせて用い、直径1μm以上の空孔形成剤の割合を13体積%以上とすればよい。
【0035】
ニオブ材料及び酸素を含有するタンタル材料から選択される少なくとも1種からなる粉末と空孔形成剤とを媒体に混合させた混合液を前述のように調製して用いることにより、本発明の製造方法の出発原料である混合成形体は、以下のような様々な形状とすることができる。
【0036】
(i)混合物の造粒粉:
混合物の造粒粉は、前述の固形分濃度約10質量%〜約80質量%の混合液をナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどの造粒乾燥機を用いて、1×102〜1×103Pa程度の減圧下、約40〜約60℃で約3〜約100時間加熱することにより製造することができる。得られた混合物の造粒粉の平均粒径は、撹拌機の回転数、撹拌機と容器内壁のクリアランスなどにより異なるが、通常0.1〜10mmとなる。必要に応じて、大きな粒径を持つ粒子をロールグラニュレーターなどの解砕機を用いて解砕し、平均粒径を0.02〜1mm程度に揃えても良い。平均粒径を揃えることにより、粒子の流動性を向上させ成形時の偏析を防止することができる。
【0037】
(ii)リード付成形体:
リード付成形体は、前述の0.1〜10mm程度の平均粒径をもつ混合物の造粒粉を、高減圧下、約300〜約2000℃で20分〜100時間予備造粒し、必要に応じてロールグラニュレーターなどの解砕機で解砕し、平均粒子径を0.02〜1mm程度に整えた後、リード線を差し込みながら成形する成型機を用いて製造することができる。
必要に応じて、成形前に前述のバインダーを添加してもよい。また、成形時の欠け等の防止のためにフッ素系、シリコン系、BN系、またはステアリン酸系の滑剤などの離型剤を使用してもよい。
リードとしては、ニオブ材料またはタンタル材料(ニオブ、ニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル、タンタル合金、タンタル化合物)からなる線、棒などを用いることができる。
また、前述の固形分濃度が約50〜約98質量%の混合液を、例えば、セラミックスからなる通気通液性鋳込型に鋳込み、脱液、乾燥した後、鋳型から成形体を分離してリードを挟み込むように貼り合わせ、高減圧下、約500〜約2000℃で20分〜100時間焼成して製造することもできる。必要に応じて、前述のバインダーや芳香族スルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩などの解膠剤を用いても良い。また、前述の混合液を鋳込型に鋳込んだ後、加圧して、形状を整えてもよい。
【0038】
(iii)リードなし成形体:
複雑な構造の成形体は、前述の固形分濃度が約50〜約98質量%の混合液を、例えば、セラミックスからなる通気通液性鋳込型に鋳込み、脱液、乾燥した後、高減圧下、約500〜約2000℃で20分〜100時間焼成し、鋳型から成形体を分離して製造することができる。必要に応じて、前述のバインダーや芳香族スルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩などの解膠剤を用いても良い。また、前述の混合液を鋳込型に鋳込んだ後、加圧して、形状を整えてもよい。
【0039】
(iv)薄型成形体:
薄型成形体とは、シート状または板状の形状を有するものであり、最も薄い部分の厚さが1.0mm以下である。薄型成形体は、前述の固形分濃度が約30〜約98質量%の混合液を、適当な剥離性基体上に塗布または印刷して、乾燥の後、成形体を基体から剥離することにより製造できる。このとき、前述のバインダーを用いることが好ましく、剥離性基体に塗布または印刷の後、著しく変形しない程度に加圧しても良い。剥離性基体としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレンビニル共重合体フィルム等からなるプラスチックフィルム、またはプラスチックシート、もしくは、紙、含浸紙、もしくは、アルミニウムなどの金属箔、金属シートなどが使用できる。必要な強度、剥離性を備えていれば特に制限なく使用できるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはシートを用いることが好ましい。塗布の方法は、公知の方法が用いられる。例えば、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押し出しコート、エアーナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、キスコート、キャストコート、スプレーコートなどを問題なく用いることができる。印刷の方法としては、スクリーン印刷、孔版印刷、凹版印刷、平板印刷などを用いることができる。混合物成形体の形状を所望の形状、例えばシート状または板状の直方体の形状、コイン状の形状、櫛、歯形状の形状などを形成する時に、その形成のし易さから、特に孔版印刷が好ましい。剥離性基体には予めフッ素系、シリコン系、BN系、またはステアリン酸系の滑剤などの離型剤を塗布することもできる。
【0040】
(v)基体と一体化した薄型成形体:
基体と一体化した薄型成形体とは、ニオブ、ニオブ化合物、ニオブ合金、タンタル、タンタル化合物、タンタル合金からなる群から選ばれた少なくとも1つのシート、箔、板、櫛、歯形、短冊などの形状をもつ基体上に前記混合物層を形成し、一体化したものである。混合物層は前述の固形分濃度が30〜98質量%の混合液を、前記基体上に塗布または印刷して、乾燥した後に、高減圧下、約500〜約2000℃で20分〜100時間焼成することにより、形成することができる。塗布、印刷する際に、前述のバインダーを用いることが好ましく、焼成前に、高減圧下、約50〜約500℃で脱バインダーすることが好ましい。また前述の基体に塗布または印刷の後、あるいは乾燥の後、著しく変形しない程度に加圧して、形状を整えても良い。塗布または印刷の方法としては前述の方法が問題なく使用できる。混合物層は基体の片面だけに形成してもよいし、表裏両面に形成してもよい。このようにして得られた基体と一体化した薄型成形体は、その成形体の最も薄い部分の厚さが、1.0mm以下、さらに0.6mm以下、特に0.4mm以下にすることもできる。
【0041】
[2]還元反応工程
上記で得られた混合物成形体を還元剤と共に反応させる。この工程により、ニオブ材料及び/またはタンタル材料中の酸素量が減少する。
還元剤としては、ニオブあるいはタンタルと同等の酸素親和性をもつ、または、より高い酸素親和性の金属、合金、及びそれらの水素化物など、公知の物質が使用できる。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等のアルカリ金属、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムなどの希土類金属、ミッシュメタル、イットリウム、アルミニウム、炭素、珪素、あるいはこれらの合金、水素化物、合金水素化物、水素などを例示することができる。これらの中では、還元能、取扱性、入手のし易さ、コスト等の観点から、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウムが好ましい。これらの還元剤は、単独で用いても良いし、2種以上を同時に用いても良い。また、2回以上の反応を、同じ還元剤で行っても良いし、別々の還元剤を用いて行ってもよい。還元剤の形状は、粉状、塊状、削り状、線状、棒状、スポンジ状などいずれも好適に使用できる。還元剤の大きさは、その形状によっても異なるが、10μm〜3cm程度であることが好ましい。
【0042】
還元反応を開始するためには、出発物質である混合物成形体と還元剤が特定の温度で接触していることが好ましい。その接触形態は、固体接触、液体接触、気体接触のいずれの形態であっても構わない。必要に応じて塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムなどのハロゲン化金属を反応助剤として用いても良い。還元反応前、反応容器内で、還元剤は固体で存在し、出発原料として用いる混合物成形体と接触している方が好ましい。混合物成形体と還元剤が接触せずに別々にある場合においても、還元反応時に、還元剤が気体あるいは液体として接触すれば還元反応自体は進行するが、還元剤が気体となって反応する場合、反応器の空間部分に反応に関与しない還元剤が多量に存在し、還元剤の使用量が多くなり経済的に不利になる。出発原料として用いる混合物成形体の表面に、粉状、塊状、削り状、スポンジ状など還元剤を接触させることが好ましい。
【0043】
還元剤の使用量は、酸素を含有するニオブ材料及び/またはタンタル材料から除去したい量の酸素を還元し得る化学量論量以上であればよい。反応器の空間部分の容積、反応温度などの条件により必要な還元剤の必要量は変わってくるが、通常、除去したい酸素量に対して、1〜10当量、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜2当量の還元剤を用いることにより、酸素を除去する目的が達成できる。酸素をほぼ完全に除去したい場合は、大過剰の還元剤を液体で用いても良い。
【0044】
このように調製された混合物と還元剤は、ニオブ製あるいはタンタル製のトレーに入れ還元を行う反応器に入れる。反応を行う前に、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いて、反応器内の空気を十分に置換しておくことが望ましい。反応容器内に空気が多量に残存していると、空気中に含まれる酸素の分まで還元剤が必要となり経済的に好ましくない。還元反応は、減圧下、常圧下、加圧下のいずれの圧力でも行うことができる。還元反応温度で気体となる還元剤を用いる場合は、減圧下であることが好ましい。減圧により系内の酸素を除去し、還元反応時に還元剤をニオブ材料及び/またはタンタル材料の表面に十分に接触させることができる。
【0045】
還元反応を行う温度は、還元剤の種類によって異なるが、通常、450〜2000℃で行われる。還元反応は、きわめて早く、発熱が大きい。反応が暴走的に行われると、還元により酸素量が減少したニオブやタンタルが部分的に融解し、比表面積が小さくなる。したがって、できる限り低い温度で、ゆっくりと反応を行うことが好ましい。反応温度は450〜1200℃が好ましく、450〜1000℃がさらに好ましく、450〜850℃が特に好ましい。反応時間は、通常、1分以上であるが、前記理由により、20分以上あることが好ましく、1時間以上あることがさらに好ましく、2時間以上が特に好ましい。
ただし、液体接触または気体接触を行う際に、還元剤が450℃で液体または気体とならない場合には、前記温度範囲の下限値は還元剤が液体または気体となる温度となる。通常、この下限値を700℃とすれば多くの還元剤に適用できる。
【0046】
ゆっくりと反応を行うためには、早すぎる昇温速度も好ましくない。昇温速度は、12℃/分以下が好ましく、10℃/分以下がさらに好ましく、8℃/分以下が特に好ましい。昇温の方法は、一定の昇温速度を保ったまま継続的に温度を上昇させても良いし、昇温速度を12℃/分以下の範囲で変化させても良い。また、目的の温度に昇温する過程で、目的の温度より低い適当な温度を1分〜20時間維持した後、再度昇温する段階的な昇温を行っても良い。この過程を2回以上行って目的の温度に到達させても良い。
【0047】
還元反応終了後、反応器及び反応生成物を冷却する。還元反応物を反応器から取り出す前に、酸素量が減少したニオブ、ニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル、タンタル合金、またはタンタル化合物を安定化させるため、その表面を僅かに酸化させることが好ましい。また、残存する還元剤と空気の接触により酸化反応が起こって発熱する可能性があるため、十分に冷却しておくことが好ましい。具体的には、60℃以下まで冷却することが好ましく、50℃以下がさらに好ましく、40℃以下が特に好ましい。0℃以下に冷却しても構わないが、冷凍機などの設備コストが増大し、また、冷却に要する時間が長くなり経済的に不利になる。したがって、0℃以上40℃以下が特に好ましい。降温速度は特に指定がなく、早ければ早いほどよい。また、還元反応終了後、反応物を容器から取り出すまでの間に、例えば、高減圧下、450〜2000℃の温度にさらに加熱を継続し、残存する還元剤を除去する工程を設けても良い。
【0048】
十分冷却した反応器から反応生成物を取り出す時は、大気(空気)より少ない酸素含有量(21%以下)を含む不活性な気体を用いて、反応器を脱気して減圧下にし、前述の不活性気体を充填するという方法(反応生成物表面の徐酸化)を、1〜数10回行い、ゆっくりと酸化することにより反応生成物の表面を安定化することが好ましい。酸化が急激に進むと、酸化発熱により温度が上昇して酸素含有量の増加を引き起こす(極端な場合には還元する前よりも酸素含有量が増加する。)。不活性な気体としては、ヘリウム、アルゴン、窒素などを用いることができる。その気体中の酸素含有量を0.5質量%、1質量%、2質量%、3質量%、5質量%、10質量%のように徐々に濃度を高くして、最終的には大気を充填したのち、1分〜100時間放置し、反応生成物を取り出すことが好ましい。徐酸化を行っている時の温度は、60℃以下に保っていることが好ましく、50℃以下がさらに好ましく、40℃以下が特に好ましい。60℃を超える温度では、酸化が急激に進むことがあり好ましくない。
【0049】
[3]空孔形成剤除去工程
酸素含有量が制御された還元反応生成物から、還元反応で生成した還元剤の酸化物と空孔形成剤とを除去することにより、酸素含有量が制御されたコンデンサ陽極用の弁作用金属多孔質陽極体を製造する。多孔質陽極体がリード付の成形体であればそのまま陽極用材料として用いることができる。リードなしの成形体であれば、ニオブ、ニオブ合金、タンタル、タンタル合金などのリード線、リード箔などを溶接することにより陽極用材料として用いることができる。溶接は、スポット溶接が好ましい。
【0050】
空孔形成剤及び還元剤の酸化物を除去する方法としては、それらを溶媒に溶解させることにより除去する方法が挙げられる。用いる溶媒は、溶解すべき空孔形成剤や還元剤の酸化物の溶解度が十分に得られる溶媒であればよく、好ましくは安価で残留しにくいものがよい。
【0051】
空孔形成剤または還元剤の酸化物が水溶性ならば、溶媒としては水を用いることができる。
【0052】
空孔形成剤または還元剤の酸化物が有機溶剤可溶性ならば、溶媒としては有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メチルセルソルブ、ダイグライム等のセルソルブ類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキルシド(DMSO)等のスルホキシド類、ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類などが使用できる。
【0053】
空孔形成剤または還元剤の酸化物が酸可溶性ならば、溶媒として硝酸、硫酸、リン酸、硼酸、炭酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、有機酸等の酸性溶媒を用いることができる。
【0054】
空孔形成剤または還元剤の酸化物がアルカリ可溶性ならば、溶媒としてアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア等のアルカリ性溶媒を用いることができる。
【0055】
空孔形成剤または還元剤の酸化物が可溶性錯体を形成するならば、溶媒としてその配位子となるアンモニア、エチレンジアミン等のアミン類、グリシン等のアミノ酸類、トリポリ燐酸ナトリウム等のポリリン酸類、クラウンエーテル類、チオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸塩、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤等の溶液を用いることができる。
また、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩の溶液や、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂の分散された溶媒なども好適に使用できる。
【0056】
空孔形成剤の溶媒による除去を考慮した場合の空孔形成剤と溶媒との組み合わせとしては、例えば、酸化バリウムと水、炭酸カルシウム(酸化カルシウムとなる)と塩酸、酸化アルミニウムと水酸化ナトリウム水溶液、炭酸マグネシウム(酸化マグネシウムとなる)とエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩水溶液等が挙げられる。
【0057】
空孔形成剤や還元剤の酸化物を溶解除去する温度は、低いことが望ましい。ニオブ金属やタンタル金属は酸素との親和性が高いため、溶解除去する温度が高いと多孔質陽極体の表面酸化が促進される。したがって、溶解除去する温度は50℃以下が好ましい。さらには−10〜40℃が好ましく、特に0〜30℃が好ましい。また、前記理由により、溶解除去する際に発熱が少ない方法を選択することが好ましい。例えば、空孔形成剤に金属酸化物や金属炭酸塩を用いた場合、酸で溶解除去する方法は、中和熱などが発生する。したがって、例えば、水や有機溶剤に溶解させる方法、硝酸アンモニウム塩水溶液やエチレンジアミン4酢酸などを用いて可溶性錯体を形成する方法、イオン交換樹脂を含む溶液に溶解する方法などの発熱しにくい方法を選択することが好ましい。
【0058】
これら溶媒を用いて空孔形成剤及び還元剤の酸化物を除去した後、十分に水洗して、溶媒を除去する。例えば、硝酸や塩化アンモニウムなどを溶媒として空孔形成剤等を除去し、イオン交換水を用いて硝酸や塩化アンモニウム溶媒を水洗除去する場合、水洗後のイオン交換水の電気伝導度が5μS/cm以下となるまで水洗することが望ましい。十分に洗浄した後、適当な圧力の下、120℃以下、好ましくは80℃以下、さらに好ましくは50℃以下で乾燥する。減圧下の方が乾燥時間を短くすることができ、乾燥温度も低くすることができる。乾燥終了後、前述のような徐酸化を行い、コンデンサ用の多孔質陽極体を得る。
【0059】
本発明においては、還元工程前に、あるいは還元工程後で空孔形成剤の除去工程前に、混合物成形体に、窒素、ホウ素、リン、硫黄、セレン、テルル、アルミニウム、珪素及びアンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素をドープする工程を設けることができる。窒素をドープする場合、ガス窒化、イオン窒化、固体窒化等の方法が用いられる。中でも、ガス窒化法が、窒素をニオブ粒子の表面に均一にドープできることから好ましい。また、このドープ処理は、還元反応終了後の混合成形体(陽極体)に対して行ってもよいし、空孔形成剤を除去する工程の前、あるいは空孔形成剤を除去した工程の後に行っても良い。ガス窒化は、通常、窒素ガス存在下、200〜2000℃で1分〜100時間加熱することにより行うことができる。
【0060】
硼素をドープする場合、ガスホウ化、固相ホウ化いずれであってもよい。例えば、酸素を含有するニオブ材料及び/またはタンタル材料をホウ素ペレットやトリフルオロホウ素などのハロゲン化ホウ素のホウ素源とともに、減圧下、2000℃以下で数分〜数10時間放置しておけばよい。
硫黄のドープは、ガス硫化、イオン硫化、固相硫化いずれであってもよい。例えば、硫黄ガス雰囲気によるガス硫化の方法は、酸素を含有するニオブ材料及び/またはタンタル材料を硫黄雰囲気中に放置することにより達成される。硫化する雰囲気の温度は、2000℃以下、放置時間は数10時間以内で目的とする硫化量ニオブが得られる。また、より高温で処理することにより処理時間を短縮できる。
珪素をドープする場合、ガス珪化、固相珪化いずれであってもよい。例えば、珪素粉末や、ハロゲン化珪素、アルコキシシラン等の珪素源とともに、減圧下、2000℃以下で数分〜数10時間放置しておけばよい。
その他のドープ元素についても上記いずれかの方法に準じた方法でドープできる。
【0061】
また、ニオブ材料及び/またはタンタル材料として水素化物を含む材料を用いた場合、還元工程の前、還元工程中、還元工程後の空孔形成剤除去工程前、または空孔形成剤除去工程後に、高減圧下、300〜800℃の温度で脱水素させる工程を設けることができる。
【0062】
[4]多孔質陽極体
本発明の製造方法で製造した多孔質陽極体は、空孔及び酸素量を制御したニオブ材料及び/またはタンタル材料からなる多孔質陽極体である。多孔質陽極体中に含まれる、ニオブ、タンタル及び酸素以外の成分としては、例えば、水素、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、プラチナ、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀、硼素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、炭素、珪素、ゲルマニウム、スズ、鉛、窒素、リン、砒素、アンチモン、ビスマス、硫黄、セレン、テルル、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素が挙げられる。好ましくは、水素、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、亜鉛、硼素、アルミニウム、珪素、窒素、リン、アンチモン、ネオジム、エルビウム、イッテルビウム及びルテチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。これらの元素は成形体に配合されるようにすればよい。これらの元素を含むニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル合金及びタンタル化合物は、無定形、非晶質、ガラス状、コロイド状、結晶などの形態をとっているものであっても良い。さらに、コンデンサの耐熱性をより向上させるためには、硼素、窒素、アンチモン、ジルコニウム、タングステン、珪素及びアルミニウムの少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。窒素と珪素を含む場合、窒化珪素として配合してもよい。窒化珪素の具体例としては、SiN、Si2N2、Si2N3、Si3N4などが例示され、その形態としては、無定形、非晶質、ガラス状、コロイド状、結晶などが挙げられる。
【0063】
本発明の製造方法で得られた多孔質陽極体は、前述の混合物成形体の形状をほぼ維持しており、前記した様々な形状とすることができる。
具体的には、リード付き陽極体の態様として、図1に示す直方体型多孔質陽極体、図2(A)に示す薄型(シート状あるいは板状)の多孔質陽極体、図6(A)に示す円筒型多孔質陽極体、図7(A)に示す角柱型多孔質陽極体などが挙げられる。リードなしの陽極体としては、図9(A)に示す直方体型多孔質陽極体、図10(A)に示す薄型(シート状あるいは板状)の多孔質陽極体などが挙げられる。リードなしのものは、図9及び図10に示すようにリード線、リード箔などを溶接等により接着し、陽極体として用いる。
また、図4(A)及び図8(A)に示す基体と一体化した薄型陽極体を挙げることができる。図4(A)では、基体の表裏両面に多孔質材料が設けられたものであり、図8(A)では、基体の片側面にのみ多孔質材料が設けられたものである。これらの基体はリードの役割をも果たすことができる。
リード及び基体としては、ニオブ、ニオブ化合物、ニオブ合金、タンタル、タンタル化合物及びタンタル合金からなる群から選ばれた少なくとも1つのシート、箔、板、棒、線、櫛、歯形、短冊などが例示できる。
薄型の陽極体は、厚みを1.0mm以下とすることが好ましい。より好ましくは0.6mm以下であり、さらに好ましくは0.4mm以下である。
【0064】
これら多孔質陽極体を用いてコンデンサを作製すれば、陰極剤の含浸性が良く従来のコンデンサのESRより、低いESRのコンデンサとすることができ、さらにコンデンサのESRを下げる場合、厚さ1mm以下の薄い基体あるいはリードと一体化した前記多孔質陽極体を複数用い、これら多孔質陽極体を電気的に並列になるように接続してコンデンサを作製することができる。コンデンサの一定の体積中に多数の多孔質陽極体を並列に用いる方が、さらにESRを低くできる。したがって、多孔質陽極体の厚さは、0.6mm以下の方が好ましく、0.4mm以下の方がさらに好ましい。
【0065】
本発明の多孔質陽極体の基体は、そのまま陽極の引き出しリードとして用いても良いし、さらにニオブ、ニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル、タンタル合金、タンタル化合物、から選択される少なくとも1種の線、棒、箔などを引き出しリードとして溶接しても良い。
【0066】
本発明の多孔質陽極体の密度は、ニオブ、ニオブ合金、ニオブ化合物であれば、0.3〜7g/mlの範囲に調整できる。多孔質陽極体の強度、コンデンサを作成したときの容量を考慮すれば、0.6〜6g/mlが好ましい。タンタル、タンタル合金、タンタル化合物であれば、その密度は0.5〜14g/mlの範囲に調整できる。強度、容量を考慮すれば、1〜12g/mlであることが好ましい。
【0067】
本発明の製造方法で作成した多孔質陽極体の酸素含有量は、その比表面積にもよるが、0.05〜30質量%の任意の量に調整できる。多孔質陽極体の強度をより高く保つためには、酸素含有量が0.05〜20質量%であることが好ましく、0.05〜16質量%がさらに好ましく、0.05〜12質量%が特に好ましい。また、陽極体は、Nb、Nb6O、NbO、NbO2、Nb2O5、Ta、Ta2O5の少なくとも1つの結晶を含んでいてもよい。また、Nb2N、NbN、NbB、NbB2、Nb3Al、Nb3Si、NbSi2、Nb3Sb、NbS2、NbSe2、NbTe4、などの結晶を含んでいても良い。
【0068】
本発明の製造方法で作製した多孔質陽極体は、コンデンサ用陽極用体として用いられ、陰極剤の含浸に適した空孔直径分布のピークトップが、0.01〜100μmの範囲内にある。ピークトップは、0.1〜20μmであることが好ましい。体積が10mm3未満の小さなコンデンサ用陽極体はもちろんなこと、体積が10mm3以上である大型のコンデンサ用陽極体においても、空孔ピークトップを0.1μm以上、さらには0.3μm以上に調整することが可能である。また、0.1μm以上に複数の空孔ピークトップ持たせることも可能である。具体的には、0.1μm以上1μm未満、好ましくは0.3μm以上1μm未満の空孔ピークトップと、1μm以上、好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜5μmの空孔ピークトップの2つ以上の空孔ピークトップをもつ多孔質陽極体を製造することができる。例えば、多孔質陽極体の空孔直径分布のピークを0.7μmと2μmに持たせ、かつ直径1μm以上の空孔容積が全空孔容積の13体積%以上になるように調整するためには、平均粒径が約0.7μmと約2μmの空孔形成剤を組み合わせて用い、直径1μm以上の空孔形成剤の割合を13体積%以上とすればよい。多孔質陽極体は化成した後、陰極剤を含浸させるが、このように複数の空孔ピークを持つ化成した多孔質陽極体は、陰極剤の含浸性が向上する。
【0069】
さらに、コンデンサ用陽極体(以降、多孔質陽極体をコンデンサ用陽極体と記すことがある。)の体積が10mm3以上で空孔率が55体積%以上である大型の陽極体についても、直径1μm以上の空孔容積を全空孔容積の10体積%以上に容易に調整することができ、空孔直径分布のピークを0.3μm以上、さらには0.5μm以上に複数存在させることが可能であり、直径1μm以上の空孔容積を全空孔容積の13体積%以上にすることも可能である。
【0070】
本発明の製造方法で得られるコンデンサ用陽極体は、単位体積あたりの比表面積が0.005m2/mm3以上にすることができる。0.008m2/mm3以上、さらに0.01m2/mm3以上にすることも可能である。また、陽極体の体積を50mm3、100mm3と大きくしても陰極剤含浸率の大きな低下が見られず、ESRは安定している。本発明のコンデンサ用陽極体は、一例として、CV値(0.1質量%燐酸水溶液中で、80℃120分化成した場合の化成電圧値と120Hzでの容量との積)が、40000〜800000μFV/gとなる。
【0071】
本発明の製造方法を用いることにより、高い容量出現率とコンデンサ用陽極体の高い容量を同時に達成でき、約750μF/個(約20mm3の陽極体)コンデンサを作製することができる。熱履歴が少なく、高い比表面積を持つ1次粉を用いれば、約20mm3の陽極体について1000μF/個以上、さらには1500μF/個以上の容量を持つ陽極体も作製可能である。
[5]コンデンサ素子
本発明の固体電解コンデンサは、上記で得られた多孔質陽極体を一方の電極とし、対電極との間に介在した誘電体とから構成される。具体的には、多孔質陽極体を一方の電極とし、その多孔質陽極体表面(空孔内表面含む)上に誘電体を形成し、前記誘電体上に対電極を設け、コンデンサを構成する。コンデンサの誘電体としては、酸化ニオブ、酸化タンタルを主体とする誘電体が好ましく、特に五酸化ニオブ、五酸化タンタルを主体とする誘電体が好ましい。五酸化ニオブを主体とする誘電体は、例えば、一方の電極であるニオブ材料からなる多孔質陽極体を電解酸化することによって得られる。多孔質陽極体電極を電解液中で電解酸化するには、通常、プロトン酸水溶液、例えば、0.1%リン酸水溶液、硫酸水溶液、ホウ酸水溶液または1%の酢酸水溶液、アジピン酸水溶液等を用いて行われる。このように、多孔質陽極体電極を電解液中で化成して酸化ニオブ誘電体を得る場合、本発明のコンデンサは、電解コンデンサとなり多孔質陽極体電極が陽極となる。
【0072】
一方、本発明のコンデンサにおける他方の電極としては、電解液、有機半導体及び無機半導体から選ばれる少なくとも1種の化合物があげられる。
【0073】
電解液の具体例としては、硫酸水溶液などの鉱酸水溶液の他、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールなどを主溶媒とし、溶質として4級アンモニウム塩、3級アンモニウム塩、などを溶解した液が用いられる。より具体的には、イソブチルトリプロピルアンモニウムボロテトラフルオライド電解質を5質量%溶解したジメチルホルムアミドとエチレングリコールの混合溶液、テトラエチルアンモニウムボロテトラフルオライドを7質量%溶解したプロピレンカーボネートとエチレングリコールの混合溶液などが挙げられる。
【0074】
有機半導体の具体例としては、ベンゾピロリン4量体とクロラニルからなる有機半導体、テトラチオテトラセンを主成分とする有機半導体、テトラシアノキノジメタンを主成分とする有機半導体、下記一般式(1)または(2)で示される繰り返し単位を含む高分子にドーパントをドープした電導性高分子を主成分とした有機半導体があげられる。
【0075】
【化1】
【0076】
式(1)及び(2)において,R1〜R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Xは酸素、イオウまたは窒素原子を表し、R5はXが窒素原子のときのみ存在して水素または炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1とR2及びR3とR4は互いに結合して環状になっていても良い。
【0077】
さらに、本発明においては、前記一般式(1)で示される繰り返し単位を含む電導性高分子は、好ましくは下記一般式(3)で示される構造単位を繰り返し単位として含む電導性高分子が挙げられる。
【0078】
【化2】
【0079】
式中、R6及びR7は、各々独立して水素原子、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、または該アルキル基が互いに任意の位置で結合して、2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わす。また、前記環状構造には置換されていてもよいビニレン結合を有するもの、置換されていてもよいフェニレン構造のものが含まれる。このような化学構造を含む電導性高分子は、荷電されており、ドーパントがドープされる。ドーパントには公知のドーパントが制限なく使用できる。
【0080】
式(1)〜(3)で示される繰り返し単位を含む高分子としては、例えば、ポリアニリン、ポリオキシフェニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリメチルピロール、及びこれらの置換誘導体や共重合体などが挙げられる。中でもポリピロール、ポリチオフェン及びこれらの置換誘導体(例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)等)が好ましい。
【0081】
無機半導体の具体例としては、二酸化鉛または二酸化マンガンを主成分とする無機半導体、四三酸化鉄からなる無機半導体などがあげられる。このような半導体は、単独でも、または、2種以上組み合わせて使用しても良い。特に、二酸化鉛や二酸化マンガンなどの無機半導体の陰極剤は、微細な粒子状の集合体の形状をとっていて、大きさが不揃いであり凸凹している。したがって、適度に大きな空孔と小さな空孔が存在したコンデンサ用陽極体を用いることが好ましい。空孔直径分布のピークトップが、0.01〜100μmの範囲内に、さらに、0.1〜20μmにあり、0.1μm以上に複数の空孔ピークトップをもつコンデンサ用陽極体、さらに好ましくは、空孔ピークトップが0.1〜1μm、好ましくは0.3〜1μmの空孔ピークトップと、空孔ピークトップが1μm以上、好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜5μmに、2つ以上の空孔ピークトップをもつコンデンサ用陽極体は、この様な無機半導体の陰極剤を用いる際に好適に使用できる。
【0082】
上記有機半導体及び無機半導体として、電導度10-2〜103S/cmの範囲のものを使用すると、作製したコンデンサのインピーダンス値がより小さくなり、高周波での容量をさらに一層大きくすることができる。
【0083】
また、1つのコンデンサの内部に、複数の前記基体と一体化したコンデンサ用陽極体を電気的に並列に配置し、コンデンサを構成することにより、コンデンサのESRをさらに低くすることができる。通常、n個のコンデンサ用陽極体を電気的に並列に用いれば、そのESRは1つの場合に比べて約1/n(nは正の整数)となる。例えば、3つのコンデンサ用陽極体を並列に用いれば、そのESRは1つの場合に比べて約1/3となる。したがって、コンデンサの容積内にできる限り多くのコンデンサ用陽極体を電気的に並列に配置することが好ましい。この様な、コンデンサに於いても、本発明の製造方法で得られる、多孔質陽極体は好適に使用できる。
【0084】
具体的には、図2及び図3に示すように、リード付き薄型陽極体の多孔質材料部を複数重ね合わせ、リード(2)はそれぞれリードフレーム(3)で接続することにより、複数の陽極体を電気的に並列に配置、接続することができる。また、図4及び図5、図8に示すように、基体と一体化したコンデンサ陽極体についても同様に積層することによって電気的に並列に配置、接続することができる。図5のようにリードとして用いられる基体部分をリードフレーム(3)に接続する場合には、ニオブ、タンタルなどの箔、板などをスペーサー(4)として用いることもできる。
図10に示されるようなリードなし薄型陽極体を製造後、リードを接着したものであっても、図11や図12に示されるように積層し電気的に並列に配置、接続することができる。また、薄型ではない円筒型タイプ(図6(A))や角柱型タイプ(図7(A))のものでも、それぞれ図6(B)及び図7(B)に示すように、電気的に並列に配置、接続することができる。
リードが接続された薄型陽極体あるいは基体と一体化した薄型陽極体を用いて積層する場合には、それぞれの薄型陽極体の厚みは1mm以下が好ましく、より好ましくは0.6mm以下、さらに好ましくは0.4mm以下である。これを2〜1000個電気的に並列に接続することができる。
【0085】
さらに他方の電極が固体の場合には、その上に外部引き出しリード(例えば、リードフレーム)との電気的接触をよくするために、導電体層を設けてもよい。導電体層としては、例えば、導電ペーストの固化、メッキ、金属蒸着、耐熱性の導電樹脂フイルムの形成等により形成することができる。導電ペーストとしては、銀ペースト、銅ペースト、アルミペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト等が好ましいが、これらは1種を用いても2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合、混合してもよく、または別々の層として重ねてもよい。導電ペーストを適用した後、空気中に放置するか、または加熱して固化せしめる。メッキとしては、ニッケルメッキ、銅メッキ、銀メッキ、アルミメッキ等があげられる。また蒸着金属としては、アルミニウム、ニッケル、銅、銀等があげられる。
【0086】
具体的には、例えば他方の電極上にカーボンペースト、銀ペーストを順次積層しエポキシ樹脂のような材料で封止してコンデンサが構成される。このコンデンサは、前記多孔質陽極体と一体に焼結成形された、または後で溶接されたニオブまたはタンタルリードを有していてもよい。
【0087】
以上のような構成の本発明のコンデンサは、例えば、樹脂モールド、樹脂ケース、金属性の外装ケース、樹脂のディッピング、ラミネートフイルムによる外装などにより各種用途のコンデンサ製品とすることができる。
【0088】
また、他方の電極が液体の場合には、前記両極と誘電体から構成されたコンデンサを、例えば、他方の電極と電気的に接続した缶に収納してコンデンサが形成される。この場合、多孔質陽極体の電極側は、前記したニオブまたはタンタルリードを介して外部に導出すると同時に、絶縁性ゴムなどにより缶との絶縁がはかられるように設計される。
【0089】
以上、説明した本発明の実施態様にしたがって製造したコンデンサ用弁作用金属、弁作用金属合金、弁作用金属化合物の多孔質陽極体(コンデンサ用陽極体)は、特に他方の電極である陰極剤の含浸性に効果があり、該陽極体からコンデンサを製造することにより、高容量、低ESR、低tanδが達成でき、漏れ電流値の小さい長期信頼性の良好なコンデンサを得ることができる。
【0090】
本発明のコンデンサは、従来のコンデンサよりも容積の割に静電容量が大きく、より小型のコンデンサ製品を得ることができる。また、前述したように、薄い多孔質陽極体、小さな多孔質陽極体、基体と一体化した薄い多孔質陽極体などを2〜1000個用いて、各々の陽極体から引き出される陽極リードを電気的に並列に配置してコンデンサを作成することにより、さらにESRを低くすることができる。
【0091】
このような特性を持つ本発明のコンデンサは、例えば、アナログ回路及びデジタル回路中で多用されるバイパスコンデンサ、カップリングコンデンサとしての用途や、その他の通常のコンデンサの用途にも適用できる。特に、本発明のコンデンサは高容量、低ESRであるため、CPU、ICなどの高周波数で作動する回路に好ましく用いることができる。
【0092】
このようなコンデンサは電子回路中で多用されるので、本発明のコンデンサを用いれば、電子部品の配置や排熱の制約が緩和され、信頼性の高い電子回路を、従来より狭い空間に収めることができる。
【0093】
さらに、本発明のコンデンサを用いれば、従来より小型で信頼性の高い電子機器、例えば、ハードディスクドライブ、デジタルビデオディスクドライブ、マザーボード、PCカードなどのコンピュータ周辺機器、携帯電話などのモバイル機器、デジタルビデオレコーダー、ゲーム機などの家電製品、ナビゲーションなどの車載機器、人工衛星、通信機器等を得ることができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各例におけるタッピング密度、安息角、粒子径、細孔直径、コンデンサの容量、漏れ電流値、容量出現率、及び耐湿性は以下の方法により測定した。
また、実施例及び比較例の焼結体からのコンデンサの作製は以下の1〜4のいずれかの方法により行った。
【0095】
コンデンサの作製法1:
20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用い、電解酸化して、表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属の多孔質陽極体を用意した。次に、60%硝酸マンガン水溶液に浸漬後220℃で30分加熱する操作を繰り返して、誘電体酸化皮膜上に対電極層として二酸化マンガン層を形成した。引き続き、その上に、カーボン層、銀ペースト層を順次積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。
【0096】
コンデンサの作製法2:
20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用い、電解酸化して、表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属の多孔質陽極体を用意した。次に、35%酢酸鉛水溶液と35%過硫酸アンモニウム水溶液の1:1(容量比)混合液に浸漬後、40℃で1時間反応させる操作を繰り返して、誘電体酸化皮膜上に対電極層として二酸化鉛と硫酸鉛の混合層を形成した。引き続き、その上に、カーボン層、銀ペースト層を順次積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。
【0097】
コンデンサの作製法3:
20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用い、電解酸化して、表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属の多孔質陽極体を用意した。次に、誘電体酸化被膜の上に、過硫酸アンモニウム10%水溶液とアントラキノンスルホン酸0.5%水溶液の等量混合液を接触させた後、ピロール蒸気を触れさせる操作を少なくとも5回行うことによりポリピロールからなる対電極(対極)を形成した。引き続き、その上に、カーボン層、銀ペースト層を順次積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。
【0098】
コンデンサの作製法4:
20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用い、電解酸化して、表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属の多孔質陽極体を用意した。次に、過硫酸アンモニウム25質量%を含む水溶液(溶液1)に浸漬した後引き上げ、80℃で30分乾燥させ、次いで3,4−エチレンジオキシチオフェン18質量%を含むイソプロパノール溶液(溶液2)に浸漬した後引き上げ、60℃の雰囲気に10分放置することにより酸化重合を行った。これを再び溶液1に浸漬し、さらに前記と同様に処理した。溶液1に浸漬してから酸化重合を行うまでの操作を8回繰り返した後、50℃の温水で10分洗浄を行い、100℃で30分乾燥を行うことにより、導電性のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)からなる対電極(対極)を形成した。引き続き、その上に、カーボン層、銀ペースト層を順次積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。
【0099】
コンデンサの作製法5:
13Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用い、電解酸化して、表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属の多孔質陽極体を用意した。次に、誘電体酸化被膜の上に、過硫酸アンモニウム10%水溶液とアントラキノンスルホン酸0.5%水溶液の等量混合液を接触させた後、ピロール蒸気を触れさせる操作を少なくとも5回行うことによりポリピロールからなる対電極(対極)を形成した。引き続き、その上に、カーボン層、銀ペースト層を順次積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。
【0100】
コンデンサの作製法6:
13Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用い、電解酸化して、表面に誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属の多孔質陽極体を用意した。次に、過硫酸アンモニウム25質量%を含む水溶液(溶液1)に浸漬した後引き上げ、80℃で30分乾燥させ、次いで3,4−エチレンジオキシチオフェン18質量%を含むイソプロパノール溶液(溶液2)に浸漬した後引き上げ、60℃の雰囲気に10分放置することにより酸化重合を行った。これを再び溶液1に浸漬し、さらに前記と同様に処理した。溶液1に浸漬してから酸化重合を行うまでの操作を8回繰り返した後、50℃の温水で10分洗浄を行い、100℃で30分乾燥を行うことにより、導電性のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)からなる対電極(対極)を形成した。引き続き、その上に、カーボン層、銀ペースト層を順次積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。
【0101】
実施例1:
酸素を12質量%含む平均粒子径が0.5μmのニオブ粉80質量部と、平均粒子径が0.9μmの酸化カルシウム10質量部と、平均粒子径が2μmの酸化カルシウム10質量部からなる平均粒子径が120μmの混合粉を用意した。
【0102】
トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、この平均粒子径が120μmの混合粉900ml、平均粒子径が30μmの酸化カルシウム100mlを入れ、良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、ニオブと酸化カルシウムと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.3mmφのニオブ線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ3.3mm×1.8mm×4.3mm(約25mm3)となるように成形した。この成形体のニオブ換算密度は2.8g/mlであった。この成形体を、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳を除去し、4×10-3Paの減圧下、1150℃で45分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、ニオブリード線付の酸素を含有するニオブと酸化カルシウムの成形体を得た。この混合物の成形体のニオブ換算密度は、3.3g/mlであった。この混合物の成形体1000個(約90g)と削り状金属マグネシウム15g良く混ぜ合わせ、ニオブのトレーに入れた。さらに、このトレーの上部にニオブ製の板をかぶせ(密閉はしていない)、還元反応器に入れた。反応器を減圧した後、アルゴンを反応器に入れる操作を3回以上繰り返して反応器内の空気をアルゴンに置換した。反応器内の圧力を約5×104Pa(約400mmHg)に調節した後、約12℃/分の昇温速度で400℃まで昇温した。約400℃で30分放置した後、約10℃/分の昇温速度で450℃まで昇温し、約450℃で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、約500℃の温度で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で550℃まで昇温し、約550℃の温度で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、約600℃の温度で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で650℃まで昇温し、約650℃の温度で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で700℃まで昇温し、約700℃の温度で30分放置した。さらに6℃/分の昇温速度で730℃まで昇温し、約730℃の温度で5時間放置したのち、室温まで冷却した。この加熱から冷却の操作の間、反応器内の圧力を約4×104〜8×104Pa(約300〜600mmHg)に保つように減圧または加圧(反応器からアルゴンの除去、またはアルゴンの封入)の操作を適宜行った。反応器を約5×104Pa(約400mmHg)の減圧にした後、0.5質量%の酸素を含む窒素を還元反応物の温度が40℃以上にならないように加え、反応器を約5×104Pa(約400mmHg)の減圧にし、再度酸素を含有する窒素を加えるという操作(徐酸化)を還元反応物の温度が上昇しなくなるまで繰り返した。この時、徐酸化に用いる窒素に含まれる酸素濃度を0.5質量%、1質量%、1.5質量%、2質量%、2.5質量%、3質量%、5質量%、10質量%、15質量%と徐々に多くし、最終的に空気(大気)を封入し、約12時間放置した後、反応器からニオブの成形体を取り出した。別に用意した20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液3リットルに、この混合水溶液の温度が40℃を超えないように、冷却、撹拌しながら、このニオブの成形体を浸した。約2時間浸した後、ニオブ成形体を取り出して、さらに、20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液3リットルに、この混合水溶液の温度が40℃を超えないように、冷却、撹拌しながら、このニオブの成形体を浸した。約12時間浸し、空孔形成剤の酸化カルシウム、還元反応生成物の酸化マグネシウム、未反応の還元剤の金属マグネシウムを溶解させた後、デカンテーションして、ニオブ成形体を取り出して、ポリテトラフルオロエチレン製のカラムに入れ、イオン交換水を流しながら12時間水洗浄を行い、カルシウム塩、マグネシウム塩、硝酸、過酸化水素を除去した。この時の洗浄水の電気伝導度は、0.9μS/cmであった。
【0103】
この成形体を約1×102Paの減圧下、約50℃の条件で減圧乾燥した後、品温が30℃以下になるまで冷却した。0.5質量%の酸素を含む窒素ガスを品温が40℃を超えないように加え、乾燥機を減圧にしたのち再度酸素を含有する窒素を加えるという徐酸化の操作を品温が変化しなくなるまで繰り返したのち、8時間以上放置して、ニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。このニオブ成形体の酸素含有量は2.4質量%、体積約22mm3、密度3.3g/mlであり、比表面積は、0.023m2/mm3であった。また、空孔率は61%で、約0.9μmと約2μmと約30μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が18体積%であった。
【0104】
次に、この多孔質なニオブ成形体100個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成して多孔質なニオブ陽極体とした。
【0105】
このニオブ陽極体について、コンデンサの作製方法4を用いてチップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は99%であり、容量は平均991μF/個であり、ESRは平均18mΩであった。
【0106】
実施例2:
酸素を15質量%含む平均粒子径が0.5μmのニオブ粉70質量部と、平均粒子径が0.7μmの酸化バリウム15質量部と、平均粒子径が2μmの酸化バリウム15質量部からなる平均粒子径が90μmの混合粉を用意した。
【0107】
トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、この平均粒子径が90μmの混合粉900ml、平均粒子径が20μmの酸化バリウム100mlを入れ、良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、ニオブと酸化バリウムと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.20mmφのニオブ線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ0.4mm×1.8mm×4.3mm(約3.1mm3)となるように成形した。この成形体のニオブ換算密度は2.8g/mlであった。この成形体を、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳を除去し、4×10-3Paの減圧下、1165℃で30分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、ニオブリード線付の酸素を含有するニオブと酸化バリウムの成形体を得た。この混合物の成形体のニオブ換算密度は、3.4g/mlであった。
【0108】
下部から上部へと気体が流通できる構造になっている反応器を用意した。
削り状金属マグネシウムをニオブ製のトレーに入れ、この反応器の下部に設置した。この成形体10000個(リード棒抜きで約12.4mg/個→約124g)をニオブ製の金網の上に置き、この金網を反応器の中段に設置した。
【0109】
反応器を約1×102Paの減圧にした後、アルゴンを反応器に入れ、常圧まで戻す操作を3回以上繰り返して反応器内の空気をアルゴンに置換した。50ml/分の量のアルゴンを反応器下部から上部へと流通させた。反応器内の圧力が約9.0×104Pa〜約1.2×105Pa(約700〜900mmHg)を保つように調節しながら、12℃/分の昇温速度で500℃まで昇温した。約500℃で30分間放置した後、10℃/分の昇温速度で550℃まで昇温した。約550℃で30分間放置した後、8℃/分の昇温速度で600℃まで昇温した。約600℃で30分間放置した後、8℃/分の昇温速度で650℃まで昇温した。約650℃で30分間放置した後、8℃/分の昇温速度で700℃まで昇温した。約700℃の温度で30分放置し、さらに6℃/分の昇温速度で730℃まで昇温した後、約730℃の温度で8時間放置した。その後、反応器内の圧力が約9.0×104Pa〜約1.2×105Pa(約700〜900mmHg)を保つように、アルゴン流通量を調節しながら室温まで冷却した。アルゴンの流通を止め、反応器を約5×104Pa(約400mmHg)の減圧にした後、実施例1に示すような徐酸化の操作を反応物の温度が上昇しなくなるまで繰り返し、室温下、12時間放置の後、反応器からニオブの成形体を取り出した。別に用意した20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液3リットルに、この混合水溶液の温度が40℃を超えないように、冷却、撹拌しながら、このニオブの成形体を浸した。約2時間浸した後、ニオブ成形体を取り出して、さらに、20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液3リットルに、この混合水溶液の温度が40℃を超えないように、冷却、撹拌しながら、このニオブの成形体を浸した。約12時間浸し、空孔形成剤の酸化バリウム、還元反応生成物の酸化マグネシウム、未反応の還元剤の金属マグネシウムを溶解させた後、デカンテーションして、ニオブ成形体を取り出して、ポリテトラフルオロエチレン製のカラムに入れ、イオン交換水を流しながら12時間水洗浄を行い、バリウム塩、マグネシウム塩、硝酸、過酸化水素を除去した。この時の洗浄水の電気伝導度は、0.7μS/cmであった。
【0110】
この成形体を約1×102Paの減圧下、約50℃の条件で減圧乾燥した後、品温が30℃以下になるまで冷却した。0.5質量%の酸素を含む窒素ガスを品温が40℃を超えないように加え、乾燥機を減圧にしたのち酸素を含有する窒素を加えるという徐酸化の操作を品温が変化しなくなるまで繰り返したのち、8時間以上放置して、ニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。
【0111】
このニオブ成形体の酸素含有量は1.8質量%、体積約2.6mm3、密度3.4g/mlであり、比表面積は、0.024m2/mm3であった。また、空孔率は60%で、約0.7μmと約2μmと約20μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が17体積%であった。
【0112】
次に、このニオブ成形体600個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してニオブ陽極体とした。このニオブ陽極体について、コンデンサの作製方法3と同様の方法を用いて、導電性高分子層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。このニオブ陽極体6個を用いて、図2及び図3に示すように重ね合わせ、引き出しリードを銅製のバーにスポット溶接し、ニオブ陽極体6個が一対となった6連のニオブ陽極体を得た。この陽極体100個について、さらに銀ペースト層を積層し、次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は99%であり、容量は平均749μF/個であり、ESRは平均4mΩであった。
【0113】
実施例3:
酸素を9質量%含む平均粒子径が0.5μmの水素化ニオブ粉90質量部と、平均粒子径が0.7μmの水酸化マグネシウム6質量部と、平均粒子径が2μmの水酸化マグネシウム10質量部からなる混合粉を用意した。
【0114】
トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、この平均粒子径が90μmの混合粉900ml、平均粒子径が10μmの水酸化マグネシウム100mlを入れ、良く混合して、スラリー液を得た。次に、3.3mm×4.3mmの粉末焼結層を形成するための孔を格子状に複数個設けた厚み0.2mmのマスクを厚さ50μmのニオブ箔の上に載せ、ディスペンサーの先端に取り付けられたダイコート金型からこのスラリー液を吐出させながら格子状のマスク表面に塗布して、ニオブ箔上にスラリー層を形成した。このスラリー層を約60℃で熱風乾燥した。ニオブ箔を裏返して、ニオブ箔を対称軸として表裏で対称になるように同じ形状のマスクを載せた。ディスペンサーの先端に取り付けられたダイコート金型からこのスラリー液を吐出させながら格子状のマスク表面に塗布して、ニオブ箔上にスラリー層を形成したのち約60℃の温度で熱風乾燥した。ニオブ箔の表と裏にあるマスクを外した後、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳及び水素を除去し、4×10-3Paの減圧下、1170℃で30分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、ニオブ箔の対応する位置の両面に、酸素を含有するニオブと酸化マグネシウムとの混合層(以下、単に「混合層」ともいう。)がそれぞれ形成された積層部を島状に複数有する部分積層体を得た。これらの積層部(混合層-ニオブ箔−混合層)についてその周囲3辺をそれぞれ打ち抜き、残る1辺はニオブ箔のみからなる引き出しリードとして残し、個々の成形体とした。
【0115】
次に下部から上部へと気体が流通できる構造になっている反応器を用意した。
削り状金属マグネシウムをニオブ製のトレーに入れ、この反応器の下部に設置した。この成形体10000個(リード棒抜きで約12.4mg/個、合計約124g)をニオブ製の金網の上に置き、この金網を反応器の中段に設置した。
【0116】
反応器を約1×102Paの減圧にした後、アルゴンを反応器に入れ、常圧まで戻す操作を3回以上繰り返して反応器内の空気をアルゴンに置換した。50ml/分の量のアルゴンを反応器下部から上部へと流通させた。反応器内の圧力が約9.0×104Pa〜約1.2×105Pa(約700〜900mmHg)を保つように調節しながら、10℃/分の昇温速度で600℃まで昇温した。約600℃で30分間放置した後、8℃/分の昇温速度で650℃まで昇温した。約650℃で30分間放置した後、8℃/分の昇温速度で700℃まで昇温した。約700℃の温度で30分放置し、さらに6℃/分の昇温速度で730℃まで昇温した後、約730℃の温度で8時間放置した。その後、反応器内の圧力が約9.0×104Pa〜約1.2×105Pa(約700〜900mmHg)を保つように、アルゴン流通量を調節しながら室温まで冷却した。アルゴンの流通を止め、反応器を約5×104Pa(約400mmHg)の減圧にした後、実施例1に示すような徐酸化の操作を反応物の温度が上昇しなくなるまで繰り返し、室温下、12時間放置の後、反応器からニオブの成形体を取り出した。別に用意した20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液3リットルに、この混合水溶液の温度が40℃を超えないように、冷却、撹拌しながら、このニオブの成形体を浸した。約2時間浸した後、ニオブ成形体を取り出して、さらに、20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液3リットルに、この混合水溶液の温度が40℃を超えないように、冷却、撹拌しながら、このニオブの成形体を浸した。約12時間浸し、空孔形成剤の水酸化マグネシウム、還元反応生成物の酸化マグネシウム、未反応の還元剤の金属マグネシウムを溶解させた後、デカンテーションして、ニオブ成形体を取り出して、ポリテトラフルオロエチレン製のカラムに入れ、イオン交換水を流しながら12時間水洗浄を行い、マグネシウム塩、硝酸、過酸化水素を除去した。この時の洗浄水の電気伝導度は、0.7μS/cmであった。この成形体を約1×102Paの減圧下、約50℃の条件で減圧乾燥した後、品温が30℃以下になるまで冷却した。0.5質量%の酸素を含む窒素ガスを品温が40℃を超えないように加え、乾燥機を減圧にしたのち酸素を含有する窒素を加えるという徐酸化の操作を品温が変化しなくなるまで繰り返したのち、8時間以上放置して、ニオブ箔を基体とした多孔質なニオブ成形体を得た。
【0117】
このニオブ成形体の酸素含有量は1.3質量%、体積約2.8mm3、密度3.4g/mlであり、比表面積は、0.021m2/mm3であった。また、空孔率は60%で、約0.7μmと約2μmと約10μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が16体積%であった。
【0118】
次に、このニオブ成形体300個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してニオブ陽極体とした。このニオブ陽極体について、コンデンサの作製方法4と同様の方法を用いて、導電性高分子層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。このニオブ陽極体3個を用いて、図4及び図5に示すように重ね合わせ、ニオブ箔の引き出しリードを厚さ約400μmの銅製のスペーサーと共に溶接し、ニオブ陽極体3個が一対となった3連のニオブ陽極体を得た。この陽極体100個について、さらに銀ペースト層を積層し、次にリードフレームを溶接後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は99%であり、容量は平均724μF/個であり、ESRは平均6mΩであった。
【0119】
実施例4:
酸素を8質量%含む平均粒子径が0.5μmのタンタル粉84質量部と、平均粒子径が0.7μmの酸化バリウム8質量部と、平均粒子径が2μmの酸化バリウム8質量部からなる平均粒子径が140μmの混合粉を用意した。
【0120】
トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、この平均粒子径が140μmの混合粉900ml、平均粒子径が20μmの酸化バリウム100mlを入れ、良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、タンタルと酸化バリウムと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.20mmφのタンタル線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ0.4mm×1.8mm×4.3mm(約3.10mm3)となるように成形した。この成形体のタンタル換算密度は5.0g/mlであった。この成形体を、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳を除去し、4×10-3Paの減圧下、1300℃で30分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、タンタルリード線付の酸素を含有するタンタルと酸化バリウムからなる成形体を得た。この混合物の成形体のタンタル換算密度は、5.7g/mlであった。以下、実施例2と同様の方法を用いて、還元反応を行い、空孔形成剤を除去して、タンタルリードが植え立てされた多孔質なタンタル成形体を得た。
【0121】
このタンタル成形体の酸素含有量は0.9質量%、体積約2.6mm3、密度5.7g/mlであり、比表面積は、0.026m2/mm3であった。また、空孔率は66%で、約0.7μmと約2μmと約20μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が18体積%であった。
【0122】
次に、このタンタル成形体600個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してタンタル陽極体とした。このタンタル陽極体について、コンデンサの作製方法1と同様の方法を用いて、無機半導体層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。このタンタル陽極体6個を用いて、図2及び図3に示すように重ね合わせ、引き出しリードを銅製のバーにスポット溶接し、タンタル陽極体6個が一対となった6連のタンタル陽極体を得た。この陽極体100個について、さらに銀ペースト層を積層し、次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は99%であり、容量は平均728μF/個であり、ESRは平均18mΩであった。
【0123】
実施例5:
実施例1と同様の方法で酸素を含有するニオブと酸化カルシウム(空孔形成剤)からなる成形体を作製し、還元反応を行った。反応後、室温まで冷却したのち、徐酸化した。このニオブと空孔形成剤とからなる成形体を、窒素雰囲気下、330〜370℃で2時間窒化した。その窒化量は、0.2質量%であった。窒化した前述の成形体を、実施例1と同様の方法で空孔形成剤、未反応の還元剤、還元剤の酸化物を溶解除去及び水洗浄などを順次行い、ニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。この多孔質なニオブ成形体の酸素含有量は、3.2質量%、体積約22mm3、密度3.3g/mlであり、比表面積は0.024m2/mm3であった。また、空孔率は61%で、0.9μmと2.2μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が18体積%であった。
このニオブ成形体を用いて、コンデンサの作製方法3に従い、チップ型のコンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は、平均99%であり、容量は平均983μF/個であり、ESRは平均18mΩであった。
【0124】
実施例6:
実施例3と同様の方法で、ニオブ箔上に酸素を9質量%含有するニオブと酸化マグネシウム混合層が形成された成形体を得た後、還元反応、空孔形成剤の除去、洗浄などを順次行いニオブ箔を基体とした多孔質なニオブ成形体を得た。この成形体を窒素雰囲気下、370〜420℃で2時間窒化した。その窒化量は、0.4質量%であった。この多孔質なニオブ成形体の酸素含有量は、0.9質量%、体積約2.8mm3、密度3.4g/mlであり、比表面積0.022m2/mm3であった。また、空孔率は60%で、約0.7μmと約2μmと約10μmに細孔ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が17体積%であった。以下、コンデンサの作製方法4と同様の方法で、実施例3と同様の方法に従いチップ型のコンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は99%であり、容量は平均735μF/個であり、ESRは平均6mΩであった。
【0125】
実施例7:
実施例3と同様の方法で、ニオブ箔上に、酸素を26質量%含むニオブ(五酸化ニオブと二酸化ニオブの混合物)と酸化マグネシウム混合層が形成された成形体を得た後、還元反応、空孔形成剤の除去、洗浄などを順次行いニオブ箔を基体とした多孔質なニオブ成形体を得た。この多孔質なニオブ成形体の酸素含有量は、14.6質量%であり、体積約2.8mm3、密度:ニオブ箔を含めた見掛け密度3.4g/ml(ニオブ換算密度:多孔質密度2.5g/ml)であり、比表面積0.025m2/mm3であった。また、空孔率は60%で、約0.7μmと約2μmと約10μmに細孔ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が17体積%であった。以下、コンデンサの作製方法4と同様の方法で、実施例3と同様の方法に従いチップ型のコンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は99%であり、容量は平均743μF/個であり、ESRは平均7mΩであった。
【0126】
実施例8〜23:
酸素含有量及び他の含有成分が異なるニオブ粉を用意した。他の含有成分は原料のインゴット作製時に溶融して合金化したものである。またタンタルと窒素を含有する場合は窒化タンタルの形で添加し(実施例21)、ケイ素と窒素を含有する場合は窒化ケイ素の形で添加した(実施例23)。表1に示すような空孔形成剤及び還元剤を用いて、実施例2と同様の方法を用いてニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。その物性を表3に示す。さらにコンデンサの作製方法1〜4のいずれかの方法を用いて、陰極層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。実施例2と同様の方法で6連のニオブ陽極体とし、実施例2と同様の方法でチップ型コンデンサを作製した。多孔質なニオブ成形体とコンデンサの物性を表3に併せて示す。
【0127】
実施例24〜27:
酸素含有量が異なるニオブ粉を用意した。表1〜2に示すような空孔形成剤及び還元剤を用いて、実施例24、26は実施例1と同様の方法で形状及びサイズの異なる多孔質なニオブ成形体を作成し、コンデンサの作製方法4と同様の方法でチップ型のコンデンサを作製した。
実施例25,27は実施例24,26で作成した成形体の陽極リードを3つ連結してコンデンサの作製方法4と同様の方法でチップ型のコンデンサを作製した。その物性を表3〜4に示す。
【0128】
実施例28:
実施例28は実施例3の方法で片側のみ塗布して、多孔質なニオブ成形体を得た。コンデンサの作製方法4と同様の方法を用いて、陰極剤を含浸後、実施例3と同様の方法で6個積層してチップ型のコンデンサを作製した。その物性を表4に示す。
【0129】
実施例29〜31:
実施例29〜31は実施例1と同様の方法でニオブリードを付けずに多孔質なニオブ成形体を作成後、ニオブリードを溶接して、コンデンサの作製方法4と同様の方法でチップ型のコンデンサを作製した。その物性を表4に示す。
【0130】
実施例32〜33:
実施例32〜33は実施例2の方法でニオブリードを付けずに多孔質なニオブ成形体を作成後、形状の違うニオブリードを溶接して、コンデンサの作製方法4と同様の方法を用いて、陰極剤を含浸後、実施例2と同様の方法で6個積層してチップ型のコンデンサを作製した。その物性を表4に示す。
【0131】
実施例34:
酸素を12質量%含む平均粒子径が0.5μmの水素化ニオブ粉90質量部と、平均粒子径が0.7μmの酸化マグネシウム6質量部と、平均粒子径が2μmの酸化マグネシウム10質量部からなる平均粒子径が120μmの混合粉を用意した。
【0132】
トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、この平均粒子径が120μmの混合粉900ml、平均粒子径が30μmの酸化マグネシウム100mlを入れ、良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、水素化ニオブと酸化マグネシウムと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.3mmφのニオブ線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ4.3mm×2.4mm×5.6mm(約57mm3)となるように成形した。この成形体のニオブ換算密度は2.8g/mlであった。
【0133】
表2に示すような還元剤を用いて、実施例1と同様の方法で還元反応、空孔形成剤の除去、洗浄などを順次行いニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。このニオブ成形体の酸素濃度は3.0質量%、体積50mm3、密度3.4g/mlであり、比表面積は0.024m2/gであった。また、空孔率は61%で、0.9と2μm及び10μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が17体積%であった。次に実施例1と同様の方法で電解化成して、コンデンサの作製方法4を用いてチップ型コンデンサを作成した。このコンデンサの物性を表4に示す。
【0134】
実施例35:
実施例34と同様の方法で水素化ニオブと酸化マグネシウムと樟脳を含む混合粉を用意した。さらに、0.3mmφのニオブ線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ5.5mm×3.0mm×7.0mm(約115mm3)となるように成形した。この成形体のニオブ換算密度は2.8g/mlであった。
【0135】
表2に示すような還元剤を用いて、実施例1と同様の方法で還元反応、空孔形成剤の除去、洗浄などを順次行いニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。このニオブ成形体の酸素濃度は3.5質量%、体積100mm3、密度3.3g/mlであり、比表面積は0.023m2/gであった。また、空孔率は60%で、0.9と2μm及び10μmに細孔直径ピークトップを有し、1μm以上の細孔容積が18体積%であった。次にコンデンサの作製方法4を用いてチップ型コンデンサを作成した。このコンデンサの物性を表4に示す。
【0136】
実施例36〜38:
実施例1〜3と同様の方法で多孔質なニオブ成形体を作成し、コンデンサの作製法5を用いてチップ型コンデンサを作成した。このコンデンサの物性を表4に示す。
【0137】
実施例39
酸化カルシウムの代わりに酸化マグネシウムを用いた以外は実施例1と同様な方法で多孔質なニオブ成形体を作成し、次いでコンデンサの作製法2を用いてチップ型コンデンサを作成した。このコンデンサの物性を表4に示す。
【0138】
実施例40
酸化カルシウムの代わりに酸化マグネシウムを用いた以外は実施例1と同様な方法で多孔質なニオブ成形体を作成し、次いでコンデンサの作製法5を用いてチップ型コンデンサを作成した。このコンデンサの物性を表4に示す。
【0139】
実施例41
酸化カルシウムの代わりに酸化マグネシウムを用いた以外は実施例1と同様な方法で多孔質なニオブ成形体を作成し、次いでコンデンサの作製法6を用いてチップ型コンデンサを作成した。このコンデンサの物性を表4に示す。
【0140】
実施例42
酸素を6%含む平均粒子径が0.5μmのニオブ粉を用意した。表1に示す空孔形成剤を使用して、実施例1と同様の方法で混合粉を得た。さらに0.3mmφのニオブ線とともにこの混合粉を自動成形し、大きさが3.3mm×1.8mm×4.3mm(約25mm3)となるように成形した。その後実施例1と同様の方法で樟脳を除去、焼結してニオブと酸化マグネシウムの成形体を得た。
この混合物の成形体1000個を反応器に入れ、反応器を4×10-3Paに減圧後、Arで希釈したH2ガス(30vol%)を反応機内に100ml/minの速度で流通し、常圧になったところで約12℃/分の昇温速度で400℃まで昇温した。約400℃で30分放置した後、約10℃/分の昇温速度で450℃まで昇温し、約450℃で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で600℃まで昇温し、約600℃の温度で30分放置した。約8℃/分の昇温速度で700℃まで昇温し、約700℃の温度で30分放置した。さらに6℃/分の昇温速度で750℃まで昇温し、約750℃の温度で3時間放置した後、室温まで冷却した。冷却終了後、還元剤である水素を除去するために、反応器を4×10-3Paまで減圧し、Arにて5×104Pa(約400mmHg)の減圧にした後、実施例1と同様の徐酸化を行った。
得られたニオブ成形体を実施例1と同様の方法で空孔形成剤を除去したのち、コンデンサの作製方法4を用いてチップ型コンデンサを作成した。
このコンデンサの物性を表4に示す。
【0141】
実施例43
空孔形成剤に酸化マグネシウムを使用して実施例1と同様の方法でニオブ成形体を作成した後、減圧下(100mmHg以下)、1200℃で3時間加熱して余分の還元剤を除去した後、実施例1と同様の方法で空孔形成剤を除去し、次いでコンデンサの作製方法4を用いてチップ型コンデンサを作成した。
このコンデンサの物性を表4に示す。
【0142】
比較例1:
空孔形成材が入っていない、酸素を12質量%含む平均粒子径が0.5μmのニオブ粉を用意した。トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、このニオブ粉を入れ良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、ニオブと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.3mmφのニオブ線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ3.3mm×1.8mm×4.3mm(約25mm3)となるように成形した。この成形体のニオブ換算密度は2.8g/mlであった。この成形体を、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳を除去し、4×10-3Paの減圧下、1150℃で45分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、ニオブリード線付の酸素を含有するニオブの成形体を得た。この混合物の成形体のニオブ換算密度は、3.3g/mlであった。この混合物の成形体1000個(約90g)と削り状金属マグネシウム15g良く混ぜ合わせ、ニオブのトレーに入れた。さらに、このトレーの上部にニオブ製の板をかぶせ(密閉はしていない)、還元反応器に入れた。反応器を減圧した後、アルゴンを反応器に入れる操作を3回以上繰り返して反応器内の空気をアルゴンに置換した。
【0143】
実施例1と同様の方法で反応器内の圧力を調整した後、昇温して還元反応を行い、室温まで冷却したのち、徐酸化を行ってニオブの成形体を取り出した。
【0144】
還元反応生成物の酸化マグネシウム、未反応の金属マグネシウムを含むニオブの成形体を実施例1と同様の方法で、20質量%の硝酸、1.5質量%の過酸化水素を含む混合水溶液を用いて洗浄した後、イオン交換水を用いて、マグネシウム塩、硝酸、過酸化水素を除去する水洗浄を行った。この時の洗浄水の電気伝導度は、0.9μS/cmであった。
【0145】
この成形体を約1×102Paの減圧下、約50℃の条件で減圧乾燥した後、品温が30℃以下になるまで冷却した。0.5質量%の酸素を含む窒素ガスを品温が40℃を超えないように加え、乾燥機を減圧にしたのち再度酸素を含有する窒素を加えるという徐酸化の操作を品温が変化しなくなるまで繰り返したのち、8時間以上放置して、ニオブリードが植え立てされた多孔質なニオブ成形体を得た。このニオブ成形体の酸素含有量は2.1質量%、体積約22mm3、密度3.3g/mlであり、比表面積は、0.017m2/mm3であった。また、空孔率は61%であったが、細孔直径ピークトップは0.5μmにしか存在せず、1μm以上の細孔容積が5体積%であった。
【0146】
次に、このニオブ成形体100個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してニオブ陽極体とした。
【0147】
このニオブ陽極体について、コンデンサの作製方法4を用いてチップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は85%であり、容量は平均628μF/個であり、ESRは平均43mΩであった。
【0148】
比較例2:
空孔形成材が入っていない、酸素を15質量%含む平均粒子径が0.5μmのニオブ粉を用意した。トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、このニオブ粉入れ良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、ニオブと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.20mmφのニオブ線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ0.4mm×1.8mm×4.3mm(約3.1mm3)となるように成形した。この成形体のニオブ換算密度は2.8g/mlであった。この成形体を、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳を除去し、4×10-3Paの減圧下、1165℃で30分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、ニオブリード線付の酸素を含有するニオブの成形体を得た。この混合物の成形体のニオブ換算密度は、3.3g/mlであった。
【0149】
このニオブ成形体の酸素含有量は2.0質量%、体積約2.6mm3、密度3.4g/mlであり、比表面積は、0.018m2/mm3であった。また、空孔率は60%であったが、細孔直径ピークトップは0.4μmにしか存在せず、1μm以上の細孔容積が5体積%であった。
【0150】
次に、このニオブ成形体600個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してニオブ陽極体とした。このニオブ陽極体について、コンデンサの作製方法3と同様の方法を用いて、導電性高分子層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。このニオブ陽極体6個を並べて、引き出しリードを銅製のバーにスポット溶接した。ニオブ陽極体6個が一対となった6連のニオブ陽極体100個について、さらに銀ペースト層を積層した。次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は85%であり、容量は平均513μF/個であり、ESRは平均25mΩであった。
【0151】
比較例3:
空孔形成材が入っていない、酸素を9質量%含む平均粒子径が0.5μmの水素化ニオブ粉を用意した。トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、このニオブ粉を入れ、良く混合して、スラリー液を得た。次に、3.3mm×4.3mmの粉末焼結層を形成するための孔を格子状に複数個設けた厚み0.2mmのマスクを厚さ50μmのニオブ箔の上に載せ、ディスペンサーの先端に取り付けられたダイコート金型からこのスラリー液を吐出させながら格子状のマスク表面に塗布して、ニオブ箔上にスラリー層を形成した。このスラリー層を約60℃で熱風乾燥した。ニオブ箔を裏返して、ニオブ箔を対称軸として表裏で対象になるように同じ形状のマスクを載せた。ディスペンサーの先端に取り付けられたダイコート金型からこのスラリー液を吐出させながら格子状のマスク表面に塗布して、ニオブ箔上にスラリー層を形成したのち約60℃の温度で熱風乾燥した。ニオブ箔の表と裏にあるマスクを外した後、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳及び水素を除去し、4×10-3Paの減圧下、1170℃で30分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、ニオブ箔の対応する位置の両面に、酸素含有ニオブ層がそれぞれ形成された積層部を島状に複数有する部分積層体を得た。これらの積層部(酸素含有ニオブ層-ニオブ箔−酸素含有ニオブ層)についてその周囲3辺をそれぞれ打ち抜き、残る1辺はニオブ箔のみからなる引き出しリードとして残し、個々の成形体とした。
【0152】
このニオブ成形体の酸素含有量は1.8質量%、体積約2.8mm3、密度3.4g/mlであり、比表面積は、0.016m2/mm3であった。また、空孔率は60%であったが、細孔直径ピークトップは0.4μmにしか存在せず、1μm以上の細孔容積が5体積%であった。
【0153】
次に、このニオブ成形体300個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してニオブ陽極体とした。このニオブ陽極体について、コンデンサの作製方法4と同様の方法を用いて、導電性高分子層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。このニオブ陽極体3個を並べて、ニオブ箔の引き出しリードを厚さ約400μmの銅製のスペーサーと共に溶接した。ニオブ陽極体3個が一対となった3連のニオブ陽極体100個について、さらに銀ペースト層を積層した。次にリードフレームを溶接後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は85%であり、容量は平均507μF/個であり、ESRは平均30mΩであった。
【0154】
比較例4:
空孔形成材が入っていない、酸素を8質量%含む平均粒子径が0.5μmのタンタル粉を用意した。トルエン1リットルに樟脳40gを溶解した溶液に、このタンタル粉を入れ、良く混合した。約1×102Paの減圧下、約60℃でトルエンを留去し、タンタルと酸化バリウムと樟脳を含む混合粉を得た。さらに、0.20mmφのタンタル線と共にこの混合粉を自動成形し、大きさがおよそ0.4mm×1.8mm×4.3mm(約3.10mm3)となるように成形した。この成形体のタンタル換算密度は5.0g/mlであった。この成形体を、10-2〜102Pa、250〜400℃で加熱して樟脳を除去し、4×10-3Paの減圧下、1300℃で30分間放置して焼結した後、品温が30℃以下になるまで冷却して、タンタルリード線付の酸素を含有するタンタルの成形体を得た。この混合物の成形体のタンタル換算密度は、5.7g/mlであった。
【0155】
このタンタル成形体の酸素含有量は1.5質量%、体積約2.6mm3、密度5.7g/mlであり、比表面積は、0.019m2/mm3であった。また、空孔率は63%であったが、細孔直径ピークトップは約0.4μmにしか存在せず、1μm以上の細孔容積が5体積%であった。
【0156】
次に、このタンタル成形体600個を用意し、20Vの電圧で、0.1%リン酸水溶液を用いて電解化成して、表面に誘電体酸化被膜を形成してタンタル陽極体とした。このタンタル陽極体について、コンデンサの作製方法1と同様の方法を用いて、無機半導体層、カーボンペースト層、銀ペースト層を順次積層した。このタンタル陽極体6個を用いて、図2及び図3に示すように重ね合わせ、引き出しリードを銅製のバーにスポット溶接し、タンタル陽極体6個が一対となった6連のタンタル陽極体を得た。この陽極体100個について、さらに銀ペースト層を積層し、次にリードフレームを載せた後、全体をエポキシ樹脂で封止して、チップ型コンデンサを作製した。このコンデンサの容量出現率は85%であり、容量は平均511μF/個であり、ESRは平均44mΩであった。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】リード付き直方体型多孔質陽極体の斜視図である。
【図2】(A)は薄型リード付き多孔質陽極体の斜視図、(B)は(A)の積層例の斜視図である。
【図3】図2の積層型陽極体の使用状態を示す断面図である。
【図4】(A)は両面を基体と一体化した薄型リード付き多孔質陽極体のの斜視図、(B)は(A)の積層例の斜視図である。
【図5】図4の積層型陽極体の使用状態を示す断面図である。
【図6】(A)はリード付き円筒型多孔質陽極体の斜視図、(B)は(A)の並列接続例の斜視図である。
【図7】(A)はリード付き角柱型多孔質陽極体の斜視図、(B)は(A)の並列接続例の斜視図である。
【図8】(A)は片面を基体と一体化した薄型リード付き多孔質陽極体の斜視図、(B)は(A)の積層例の斜視図である。
【図9】リードなし直方体型多孔質陽極体(A)に溶接するリードの3つの態様((B)〜(D))を示す斜視図である。
【図10】リードなし薄型多孔質陽極体(A)に溶接するリードの3つの態様((B)〜(D))を示す斜視図である。
【図11】棒状リードを溶接した薄型多孔質陽極体の積層例の斜視図である。
【図12】板状リードを溶接した薄型多孔質陽極体の積層例の斜視図である。
【符号の説明】
【0162】
1:多孔質陽極体
2:リード
3:リードフレーム
4:スペーサー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を含有するニオブ材料及び酸素を含有するタンタル材料から選択される少なくとも1種の材料の粉末と還元温度で固体である空孔形成剤とを含む成形体を還元剤を用いて還元反応に付す工程、及び得られた還元反応生成物から空孔形成剤を除去する工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ用多孔質陽極体の製造方法。
【請求項2】
ニオブ材料がニオブ、ニオブ合金及びニオブ化合物から選択される少なくとも1種であり、タンタル材料がタンタル、タンタル合金及びタンタル化合物から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
酸素を含有するニオブ材料または酸素を含有するタンタル材料が、酸素含有量50質量%以下であり、かつ、ニオブ、一酸化六ニオブ、一酸化ニオブ、二酸化ニオブ、五酸化ニオブ、タンタル、及び五酸化タンタルから選択されるの少なくとも一つの結晶を含む請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
酸素を含有するニオブ材料が、水素、硼素、窒素、アンチモン、タンタル、ジルコニウム、タングステン、珪素、アルミニウムから選択される少なくとも1種の元素を含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
酸素を含有するタンタル材料が、水素、硼素、窒素、アンチモン、ニオブ、ジルコニウム、タングステン、珪素、アルミニウムから選択される少なくとも1種の元素を含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
成形体が窒化珪素を含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
還元剤が、タンタル以上の酸素親和性を持つ金属、合金及びそれらの水素化物から選択される少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
還元剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ミッシュメタル、イットリウム、アルミニウム、タンタル、ニオブ、炭素、珪素、これらの合金、これらの水素化物、及び水素から選択される少なくとも1種である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
成形体の形状が、リード付の成形体または基体と一体化した成形体であり、そのリードまたは基体が、ニオブ、ニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル、タンタル合金、及びタンタル化合物から選択される少なくとも1種からなる請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
成形体が厚さ1mm以下に成形される請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
還元反応工程前に、成形体を焼結させる工程を含み、かつ空孔形成剤が焼結温度で固体である請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
焼結が、500〜2000℃の温度で行われる請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
還元反応工程前に、成形体または焼結体と還元剤とを混合する工程を含む請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
混合する温度が50℃以下である請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
還元反応工程において、450〜2000℃の範囲に加熱する請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
12℃/分以下の昇温速度で加熱する請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
還元反応工程後の空孔形成剤の除去工程前に、不活性ガスにより0.1〜21質量%の酸素含有量に希釈した酸素含有気体を用いて徐酸化する工程を含む請求項1〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
徐酸化する温度が60℃以下である請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
空孔形成剤の除去工程が、水、有機溶媒、酸性溶媒、アルカリ性溶媒、アミン含有溶媒、アミノ酸含有溶媒、ポリリン酸含有溶媒、クラウンエーテル溶媒、キレート剤含有溶媒、アンモニウム塩含有溶媒及びイオン交換樹脂分散溶媒から選択される少なくとも1種の溶媒により除去する工程である請求項1〜18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
空孔形成剤を除去する温度が、50℃以下である請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
還元反応工程後、空孔形成剤除去工程前に、残存する還元剤を除去する工程を含む請求項1〜20のいずれかに記載の製造方法。
【請求項22】
残存する還元剤を除去する工程が、高減圧下、450〜2000℃で行われる請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
還元反応工程前、あるいは還元反応工程後の空孔形成剤除去工程前に、窒素、硼素、リン、硫黄、セレン、テルル、アルミニウム、珪素及びアンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を成形体または焼結体にドープする工程を含む請求項1〜22のいずれかに記載の製造方法。
【請求項24】
還元反応工程前、還元反応工程中、還元反応工程後の空孔形成剤除去工程前、または空孔形成剤除去工程後に、脱水素工程を含む請求項1〜23のいずれかに記載の製造方法。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法で作成された固体電解コンデンサ用の陽極体。
【請求項26】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法で多孔質陽極体を製造し、この陽極体を一方の電極とし、誘電体を介して対電極を構成する固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項27】
2つ以上の多孔質陽極体が、電気的に並列に接続される請求項26に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項28】
請求項26に記載の方法で製造される固体電解コンデンサ。
【請求項29】
請求項28に記載の固体電解コンデンサを搭載した電子回路。
【請求項30】
請求項28に記載の固体電解コンデンサを搭載した電子機器。
【請求項1】
酸素を含有するニオブ材料及び酸素を含有するタンタル材料から選択される少なくとも1種の材料の粉末と還元温度で固体である空孔形成剤とを含む成形体を還元剤を用いて還元反応に付す工程、及び得られた還元反応生成物から空孔形成剤を除去する工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ用多孔質陽極体の製造方法。
【請求項2】
ニオブ材料がニオブ、ニオブ合金及びニオブ化合物から選択される少なくとも1種であり、タンタル材料がタンタル、タンタル合金及びタンタル化合物から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
酸素を含有するニオブ材料または酸素を含有するタンタル材料が、酸素含有量50質量%以下であり、かつ、ニオブ、一酸化六ニオブ、一酸化ニオブ、二酸化ニオブ、五酸化ニオブ、タンタル、及び五酸化タンタルから選択されるの少なくとも一つの結晶を含む請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
酸素を含有するニオブ材料が、水素、硼素、窒素、アンチモン、タンタル、ジルコニウム、タングステン、珪素、アルミニウムから選択される少なくとも1種の元素を含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
酸素を含有するタンタル材料が、水素、硼素、窒素、アンチモン、ニオブ、ジルコニウム、タングステン、珪素、アルミニウムから選択される少なくとも1種の元素を含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
成形体が窒化珪素を含む請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
還元剤が、タンタル以上の酸素親和性を持つ金属、合金及びそれらの水素化物から選択される少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
還元剤が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ミッシュメタル、イットリウム、アルミニウム、タンタル、ニオブ、炭素、珪素、これらの合金、これらの水素化物、及び水素から選択される少なくとも1種である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
成形体の形状が、リード付の成形体または基体と一体化した成形体であり、そのリードまたは基体が、ニオブ、ニオブ合金、ニオブ化合物、タンタル、タンタル合金、及びタンタル化合物から選択される少なくとも1種からなる請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
成形体が厚さ1mm以下に成形される請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
還元反応工程前に、成形体を焼結させる工程を含み、かつ空孔形成剤が焼結温度で固体である請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
焼結が、500〜2000℃の温度で行われる請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
還元反応工程前に、成形体または焼結体と還元剤とを混合する工程を含む請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
混合する温度が50℃以下である請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
還元反応工程において、450〜2000℃の範囲に加熱する請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
12℃/分以下の昇温速度で加熱する請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
還元反応工程後の空孔形成剤の除去工程前に、不活性ガスにより0.1〜21質量%の酸素含有量に希釈した酸素含有気体を用いて徐酸化する工程を含む請求項1〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
徐酸化する温度が60℃以下である請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
空孔形成剤の除去工程が、水、有機溶媒、酸性溶媒、アルカリ性溶媒、アミン含有溶媒、アミノ酸含有溶媒、ポリリン酸含有溶媒、クラウンエーテル溶媒、キレート剤含有溶媒、アンモニウム塩含有溶媒及びイオン交換樹脂分散溶媒から選択される少なくとも1種の溶媒により除去する工程である請求項1〜18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
空孔形成剤を除去する温度が、50℃以下である請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
還元反応工程後、空孔形成剤除去工程前に、残存する還元剤を除去する工程を含む請求項1〜20のいずれかに記載の製造方法。
【請求項22】
残存する還元剤を除去する工程が、高減圧下、450〜2000℃で行われる請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
還元反応工程前、あるいは還元反応工程後の空孔形成剤除去工程前に、窒素、硼素、リン、硫黄、セレン、テルル、アルミニウム、珪素及びアンチモンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を成形体または焼結体にドープする工程を含む請求項1〜22のいずれかに記載の製造方法。
【請求項24】
還元反応工程前、還元反応工程中、還元反応工程後の空孔形成剤除去工程前、または空孔形成剤除去工程後に、脱水素工程を含む請求項1〜23のいずれかに記載の製造方法。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法で作成された固体電解コンデンサ用の陽極体。
【請求項26】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法で多孔質陽極体を製造し、この陽極体を一方の電極とし、誘電体を介して対電極を構成する固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項27】
2つ以上の多孔質陽極体が、電気的に並列に接続される請求項26に記載のコンデンサの製造方法。
【請求項28】
請求項26に記載の方法で製造される固体電解コンデンサ。
【請求項29】
請求項28に記載の固体電解コンデンサを搭載した電子回路。
【請求項30】
請求項28に記載の固体電解コンデンサを搭載した電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−179886(P2006−179886A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342100(P2005−342100)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]