説明

圧縮性流体圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニット

【課題】動作効率に優れた圧縮性流体圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットを提供する。
【解決手段】ベース部材にユニバーサルジョイント機構で保持され、その機構の中心を含む3つの直交軸中の2つの軸の夫々に対して、夫々、揺動可能な揺動部材と第1及び第2の回転部材と、圧縮性流体を蓄えるタンク部材に圧縮性流体を補充する圧力源と、ベース部材と揺動部材を連結しタンク部材内の圧縮性流体により駆動され揺動部材に対して揺動トルクを発生させる複数の揺動トルク発生機構とタンク部材における圧縮性流体の接続を制御する制御弁装置と、2つの回転部材の相対角度を変化させる揺動角調節手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作効率に優れた圧縮性流体圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療用ロボット、家庭用サービスロボット、及び、工場内での作業支援ロボット等、人と近い領域で動作するロボットへの期待が高まっている。このようなロボットでは、産業用ロボットとは異なり、人と接触した時の安全性確保が重要となる。そのためには、関節駆動用アクチュエータに対しても、軽量性が求められるとともに、関節剛性を必要に応じて変化させること等が求められるようになる。そのような要求に対応するアクチュエータの一例として、空圧アクチュエータがある(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。空圧アクチュエータは、気体の圧力を用いて駆動することから軽量化が容易であるとともに、内部圧力の制御により剛性を変化させることもできる。
【0003】
【非特許文献1】電子情報通信学会発行、「電子情報通信学会誌A」,2005年発行,Vol.J88−A,No.11の1318〜1325ページ
【非特許文献2】日本ロボット学会発行、「Advanced Robotics」,2002年発行,Vol.20,No.2の213〜232ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空圧アクチュエータを関節駆動用アクチュエータとして用いる場合、動作状況に応じて関節トルク又は関節剛性を制御するために、内部圧力を頻繁に変化させる必要がある。よって、空圧アクチュエータでは、圧力源から供給される圧縮空気の圧力を減圧させたり、アクチュエータ内の圧縮空気をそのまま排気することが頻繁に生じ、圧縮空気を大量に消費することになる。このため、関節駆動のような用途に対して空圧アクチュエータを用いるのは、消費する圧縮空気が内包するエネルギーに比べると、アクチュエータの外部になす仕事が小さくなるので、動作効率が悪くなるという課題を有することになる。
【0005】
従って、本発明の目的は、かかる点に鑑み、動作効率に優れた圧縮性流体圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0007】
本発明の第1態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対してユニバーサルジョイント機構を介して保持され、前記ベース部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構のジョイント中心を含む第1の軸に対して揺動可能である揺動部材と、
前記揺動部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構の前記ジョイント中心を含む第2の軸回りに前記揺動部材に対して回転可能に保持される第1の回転部材と、
前記第1の回転部材に対して、前記第2の軸に垂直かつ前記ユニバーサルジョイント機構の前記ジョイント中心を含む第3の軸回りに回転可能に保持されるとともに、前記ベース部材に対しても前記第1の軸回りに回転可能に保持される第2の回転部材と、
圧縮性流体を蓄えるタンク部材と、
前記タンク部材と接続されて前記タンク部材に前記圧縮性流体を補充する圧力源と、
前記ベース部材と前記揺動部材を連結し、前記タンク部材に接続されて前記タンク部材内の前記圧縮性流体により駆動されることで、前記揺動部材に対して揺動トルクを発生させる複数の揺動トルク発生機構と、
前記揺動トルク発生機構と前記タンク部材との間の前記圧縮性流体の接続を制御する制御弁装置と、
前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との前記第3の軸回りの相対角度を変化させる揺動角調節手段とを備え、
前記制御弁装置は、前記揺動トルク発生機構により、前記第1の軸と前記第3の軸に垂直な第4の軸回りに前記揺動部材に対する揺動トルクが発生するように制御することを特徴とする回転動作可能な圧縮性流体圧アクチュエータを提供する。
【0008】
本発明の第11態様によれば、第1〜10のいずれか1つの態様に記載の圧縮性流体圧アクチュエータにより駆動される関節駆動ユニットを提供する。
【発明の効果】
【0009】
よって、本発明によれば、動作効率に優れた圧縮性流体圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットを得ることができる。すなわち、第2の回転部材に作用する回転トルクは、揺動部材に作用する第4の軸回りの揺動トルクと、揺動角調節手段により調整される第1の回転部材と第2の回転部材との相対角度により決定されるので、揺動トルク発生機構にタンク部材内の圧縮性流体の圧力をそのまま作用させ、揺動部材に対する第4の軸回りの揺動トルクを最大限発生させ続けた状態でも、第4の軸回りの揺動トルクに関係なく、揺動角調節手段によって第2の回転部材に作用する回転トルクを制御することが可能になる。この際、揺動部材に作用する第3の軸回りの揺動トルク調節に用いられる一部の揺動トルク発生機構以外は、タンク部材内の圧縮性流体により直接駆動することができるので、圧縮性流体が失うエネルギーと圧縮性流体圧アクチュエータの外部になされるエネルギーは連動し、動作効率が向上することになる。さらに、本発明による圧縮性流体圧アクチュエータに対して外部から仕事がなされる場合には、そのエネルギーはタンク部材内の圧縮性流体に対して回生されることになるので、さらなる動作効率の向上が図れることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の態様について説明する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、ベース部材と、
前記ベース部材に対してユニバーサルジョイント機構を介して保持され、前記ベース部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構のジョイント中心を含む第1の軸に対して揺動可能である揺動部材と、
前記揺動部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構の前記ジョイント中心を含む第2の軸回りに前記揺動部材に対して回転可能に保持される第1の回転部材と、
前記第1の回転部材に対して、前記第2の軸に垂直かつ前記ユニバーサルジョイント機構の前記ジョイント中心を含む第3の軸回りに回転可能に保持されるとともに、前記ベース部材に対しても前記第1の軸回りに回転可能に保持される第2の回転部材と、
圧縮性流体を蓄えるタンク部材と、
前記タンク部材と接続されて前記タンク部材に前記圧縮性流体を補充する圧力源と、
前記ベース部材と前記揺動部材を連結し、前記タンク部材に接続されて前記タンク部材内の前記圧縮性流体により駆動されることで、前記揺動部材に対して揺動トルクを発生させる複数の揺動トルク発生機構と、
前記揺動トルク発生機構と前記タンク部材との間の前記圧縮性流体の接続を制御する制御弁装置と、
前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との前記第3の軸回りの相対角度を変化させる揺動角調節手段とを備え、
前記制御弁装置は、前記揺動トルク発生機構により、前記第1の軸と前記第3の軸に垂直な第4の軸回りに前記揺動部材に対する揺動トルクが発生するように制御することを特徴とする回転動作可能な圧縮性流体圧アクチュエータを提供する。
【0013】
このような構成によれば、第2の回転部材に作用する回転トルクは、揺動部材に作用する第4の軸回りの揺動トルクと、揺動角調節手段により調整される第1の回転部材と第2の回転部材との相対角度により決定されるので、揺動トルク発生機構にタンク部材内の圧縮性流体の圧力をそのまま作用させ、揺動部材に対する第4の軸回りの揺動トルクを最大限発生させ続けた状態でも、第4の軸回りの揺動トルクに関係なく、揺動角調節手段によって第2の回転部材に作用する回転トルクを制御することが可能になる。この際、揺動部材に作用する第3の軸回りの揺動トルク調節に用いられる一部の揺動トルク発生機構以外は、タンク部材内の圧縮性流体により直接駆動することができるので、圧縮性流体が失うエネルギーと外部になされるエネルギーは連動し、動作効率が向上することになる。さらに、本発明による圧縮性流体圧アクチュエータに対して外部から仕事がなされる場合には、そのエネルギーはタンク部材内の圧縮性流体に対して回生されることになるので、さらなる動作効率の向上が図れることになる。従って、動作効率に優れた圧縮性流体圧アクチュエータを得ることができる。
【0014】
本発明の第2態様によれば、前記ユニバーサルジョイント機構が、等速ジョイント機構であることを特徴とする第1の態様に記載の圧縮性流体圧アクチュエータを提供する。
【0015】
このような構成によれば、第2の回転部材の角度による特性のばらつきが少なくなり、揺動角調節手段による第2の回転部材に作用する回転トルクの制御、又は、制御弁装置による第3の軸回り揺動トルクの調節が容易になるので、より制御性に優れた圧縮性流体圧アクチュエータを得ることができる。
【0016】
本発明の第3態様によれば、前記複数の揺動トルク発生機構のそれぞれが、前記第2の軸回りの円周上に等間隔で配置されていることを特徴とする第1〜2のいずれか1つの態様に記載の圧縮性流体圧アクチュエータを提供する。
【0017】
このような構成によれば、第2の回転部材の角度による特性のばらつきが少なくなり、揺動角調節手段による第2の回転部材に作用する回転トルクの制御、又は、制御弁装置による第3の軸回り揺動トルクの調節が容易になるので、より制御性に優れた圧縮性流体圧アクチュエータを得ることができる。
【0018】
本発明の第4態様によれば、前記揺動トルク発生機構が、前記揺動部材に対して双方向の揺動トルクを与えることを特徴とする第1〜3のいずれか1つの態様に記載の圧縮性流体圧アクチュエータを提供する。
【0019】
このような構成によれば、揺動部材に作用する第4の軸回りのトルクを、揺動部材を押圧することにより発生できる領域と、揺動部材を引張することにより発生できる領域の、何れの領域に位置する揺動トルク発生機構も用いて発生させることができるようになるので、より、高出力な圧縮性流体圧アクチュエータを得ることができる。
【0020】
本発明の第5態様によれば、前記揺動トルク発生機構を、3以上の奇数個備えることを特徴とする第4の態様に記載の圧縮性流体圧アクチュエータを提供する。
【0021】
このような構成によれば、揺動トルク発生機構を配置する間隔のばらつきを大きくしなくても、各揺動トルク発生機構をジョイント中心に対して非対称な位置に配置することができる。これにより、第2の回転部材の角度による揺動トルクのばらつきを小さくすることができるようになるので、より性能の安定した圧縮性流体圧アクチュエータを得ることができる。
【0022】
本発明の第6態様によれば、前記揺動トルク発生機構に作用する前記圧縮性流体の圧力が、前記第4の軸に最も接近した前記揺動トルク発生機構を除き、前記タンク部材における前記圧縮性流体の圧力若しくは前記揺動トルク発生機構の周辺圧力であることを特徴とする第5の態様に記載の圧縮性流体圧アクチュエータを提供する。
【0023】
このような構成によれば、1つを除いた揺動トルク発生機構にはタンク部材内の圧縮性流体の圧力を直接作用させることができるので、圧縮性流体のエネルギー変化と外部とのエネルギー授受との差が小さくなり、より動作効率に優れた圧縮性流体圧アクチュエータを得ることができる。
【0024】
本発明の第7態様によれば、前記揺動トルク発生機構が、ピストンシリンダ機構であることを特徴とする第1〜6のいずれか1つの態様に記載の圧縮性流体圧アクチュエータを提供する。
【0025】
このような構成によれば、変位にかかわらず揺動トルク発生機構の発生力を一定にすることでできるので、より性能の安定した圧縮性流体圧アクチュエータを得ることができる。
【0026】
本発明の第8態様によれば、前記ピストンシリンダ機構が、両ロッド形のピストンを用いた機構であることを特徴とする第7の態様に記載の圧縮性流体圧アクチュエータを提供する。
【0027】
このような構成によれば、タンク部材内の圧縮性流体の圧力により揺動トルク発生機構を動作させた場合における、ピストン動作方向による揺動トルクの大きさの違いを抑えることができるので、より性能の安定した圧縮性流体圧アクチュエータを得ることができる。
【0028】
本発明の第9態様によれば、前記揺動トルク発生機構と前記揺動部材は球ジョイント機構にて連結され、前記球ジョイント機構のジョイント中心が前記第2の軸に垂直かつ前記第3の軸を含む平面上にあることを特徴とする第1〜8のいずれか1つの態様に記載の圧縮性流体圧アクチュエータを提供する。
【0029】
このような構成によれば、第1の回転部材と第2の回転部材との相対角度を変化させる際に揺動角調節手段が行う仕事を小さくすることができるので、より制御性に優れた圧縮性流体圧アクチュエータを得ることができる。
【0030】
本発明の第10態様によれば、第1〜9のいずれか1つの態様に記載の圧縮性流体圧アクチュエータを複数備え、各圧縮性流体圧アクチュエータの前記タンク部材及び前記圧力源が互いに共有される構成であることを特徴とする多軸圧縮性流体圧アクチュエータを提供する。
【0031】
このような構成によれば、複数の圧縮性流体圧アクチュエータの使用するタンク部材における圧力変動が平均化されるので、各圧縮性流体圧アクチュエータの動作の連動性が低いほどタンク部材の内圧の変動を小さくすることができ、より性能の安定した多軸圧縮性流体圧アクチュエータを得ることができる。
【0032】
本発明の第11態様によれば、関節部を介して連結された2つの腕の前記関節部に第1〜10のいずれか1つの態様に記載の圧縮性流体圧アクチュエータが配置され、前記圧縮性流体圧アクチュエータにより、前記2つの腕のうちの一方の腕に対して他方の腕が駆動される関節駆動ユニットを提供する。
【0033】
このような構成によれば、前記第1〜10のいずれか1つの態様に記載の圧縮性流体圧アクチュエータにより駆動される関節駆動ユニットを構成することができて、前記圧縮性流体圧アクチュエータの作用効果を奏することができる関節駆動ユニットを得ることができる。
【0034】
以下、本発明の種々の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図1Aは、本発明にかかる第1実施形態の圧縮性流体圧アクチュエータの一例としての回転アクチュエータ1の概略を示した正面断面図であり、その部分拡大図が図1Bである。また図1Cには回転アクチュエータ1の右側面断面図を示し、図1Dには図1AにおけるA−A線の断面図を示している。この第1実施形態の回転アクチュエータにおける直交座標軸として、図1Aの上向きをZ軸、左向きをX軸、紙面手前側をY軸と定義する。
【0036】
図1A〜図1Dにおいて、ベース部材の一例である円筒状のフレーム11の上面中央部に、中心軸が第1の軸(仮想軸)の一例として機能する固定軸12が固定されている。固定軸12には、ユニバーサルジョイント機構の一例である等速ジョイント13を介して、中心軸が第2の軸(仮想軸)の一例として機能する揺動軸14が接続されている。等速ジョイント13としては、例えば特開2002−349593号公報にて開示されているような等速ジョイントが利用可能である。このような等速ジョイントを用いることは、揺動軸14が傾く方向による違いがないので望ましい。さらに、揺動軸14の下端には、揺動部材の一例でありかつ5角形の平面形状を有する椀状部材15の中央板部15aの開口15bが固定されており、等速ジョイント13のジョイント中心を基準に、揺動軸14と椀状部材15とが一体的に揺動動作が可能なようになっている。また、椀状部材15は、椀状部材15の中央板部15aの上面に配置しかつラジアル荷重及びスラスト荷重を保持できるベアリング機構16を介して、第1の回転部材の一例である円形の板状部材17を中央板部15aと平行に保持するようになっており、板状部材17は、椀状部材15に対して揺動軸14の中心軸と同軸に相対回転できるようになっている。ベアリング機構16としては、例えばクロスローラ軸受又は組合せアンギュラ玉軸受などが利用可能である。板状部材17には、揺動軸14の中心軸回りに180度間隔をあけて二つの板状突起部38a、38bがあり、板状突起部38a、38bには、それぞれ軸18a、18bが固定されている。軸18a、18bは、同軸上に配置されるとともに、軸18a、18bの中心軸が、等速ジョイント13のジョイント中心を通過する位置に配置されている。
【0037】
一方で、固定軸12には、その中間段部に配置されかつラジアル荷重及びスラスト荷重を保持できるベアリング機構21を介して、第2の回転部材の一例である回転体20が、固定軸12の中心軸回りに回転可能なように保持されている。ベアリング機構21は、ベアリング押さえ22により回転体20に固定されている。また、回転体20は、ラジアル軸受19a、19b、19c、19dを介して軸18a、18bとも連結されており、回転体20は、椀状部材15に対して、中心軸が第3の軸(仮想軸)の一例として機能する軸18a、18bの中心軸回り(X軸回り)に相対回転できるようになっている。さらに、回転体20の回転は、回転体20の上端に設けられた傘歯車部39と直交するように噛み合った傘歯車27を介して、傘歯車27と一体に回転する回転軸28に伝達されるようになっている。回転軸28は、フレーム11の上端突起部11aの貫通口11bを回転自在に貫通し、かつ、X軸回りに回転可能なように、ベアリング機構29a、29bを介してフレーム11の上面に保持され、フレーム11を基準とした回転軸28の回転角度は、エンコーダ57により計測されるようになっている。エンコーダ57は、後述する制御コントローラ(制御手段又は制御部の一例)52に接続されており、制御コントローラ52で、エンコーダ57で計測した回転軸28の回転角度から、回転軸28と連動する回転体20の回転角度を求めるようにしている。
【0038】
また、軸18a、18bには、それぞれの端面にそれぞれ歯車23a、23bが固定されている。回転体20の側面に一端が固定されたL字状の支持部材26a、26bの他端に、揺動角調節手段の一例であるサーボモータ25a、25bがそれぞれ保持されている。サーボモータ25a、25bの回転軸にそれぞれ固定された歯車24a、24bは、歯車23a、23bとそれぞれかみ合っている。これにより、サーボモータ25a、25bを駆動してそれぞれの回転軸及び歯車24a、24bを歯車23a、23bに対して回転させることで、回転体20と椀状部材15との相対角度を変化させることが可能になっている。回転体20と椀状部材15との相対角度が変化すると、図1Cに示される状態(回転体20の回転軸芯と板状部材17の回転軸芯とが平行な状態(すなわち、椀状部材15の中央板部15aが水平面沿いに位置した水平状態))が、例えば図1Eに示される状態(回転体20の回転軸芯に対して板状部材17の回転軸芯が傾斜した状態(すなわち、椀状部材15の中央板部15aが水平面沿いから傾斜した傾斜状態))に変化することになる。なお、サーボモータ25a、25bの回転情報は制御コントローラ52に入力されるようにしている。
【0039】
さらに、椀状部材15には、椀状部材15の側面に椀状部材15の回転軸芯回りの円周上に等間隔に(72度毎の位置に)配置された球ジョイント32a、32b、32c、32d、32eを介して、揺動トルク発生機構の一例であるピストンシリンダ機構の一例としてのエアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eの両ロッド形のピストン31a、31b、31c、31d、31eの上側のロッドの上端が、それぞれ、固定軸12の中心軸に対して回転対称となる位置(具体的には固定軸12の中心軸周りの同一円周上の72度毎の位置に)に回動自在に連結されている。エアシリンダは、変位に対して力が変化しない点で望ましい。さらに、両ロッド形のピストンを用いることは、駆動方向による発生力の違いが生じない点で望ましく、回転対称の位置に配置することは、回転体20の角度が変化する際の特性のばらつきを最も小さくできるので望ましい。また、球ジョイント32a、32b、32c、32d、32eのジョイント中心は、揺動軸14の中心軸に垂直でかつ軸18a、18bの中心軸を含む平面上に位置している。このようにすることは、回転体20の回転軸芯に対して板状部材17の回転軸芯の傾きが変化しても、球ジョイント32a、32b、32c、32d、32eのジョイント中心を通る円の中心位置が一定となり、余計なアンバランスが椀状部材15に生じないので望ましい。さらに、エアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eの下部は、それぞれの下端部に球状部33qを設けかつ中心部にピストン31a、31b、31c、31d、31eの下側のロッドが通過するための貫通穴33pをそれぞれ備えたシリンダ支持部材33a、33b、33c、33d、33eの上端に固定されており、シリンダ支持部材33a、33b、33c、33d、33eの下端の球状部33qは、フレーム11の下端の底面に固定されたボールホルダ34a、34b、34c、34d、34eによりそれぞれ回転自由に支持され、球ジョイントを構成している。
【0040】
一方で、エアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eの上部側面及び下部側面には、圧縮性流体の一例である乾燥空気を供給するための上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36e及び下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eがそれぞれ接続され、制御弁装置の一例であるバルブ機構35とエアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eとを上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36e及び下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eで接続している。バルブ機構35の内部構成は、図2で示す配管図示すような構成となっている。さらに、バルブ機構35には制御コントローラ52が備えられており、制御コントローラ52と図2で示される各要素とは、図3に示すような接続関係にある。
【0041】
図2において、上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36e及び下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eには、それぞれ、5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eが接続されており、エアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eと、タンク部材の一例である空圧タンク40及び大気開放部48との接続を切り替えるようになっている。空圧タンク40には、圧力源の一例である空圧源53が接続されて、空圧源53により供給された高圧の乾燥空気が空圧タンク40に蓄えられている。また、上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36eは、大気開放部48に至る低圧配管51に対して、それぞれ、ON−OFF弁42a、42b、42c、42d、42eを介して接続されるとともに、空圧タンク40に至る高圧配管50に対しても、それぞれ、ON−OFF弁43a、43b、43c、43d、43e及び逆止弁46a、46b、46c、46d、46eを介して接続されている。同様に、下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eは、大気開放部48に至る低圧配管51に対して、それぞれ、ON−OFF弁44a、44b、44c、44d、44eを介して接続されるとともに、空圧タンク40に至る高圧配管50に対しても、それぞれ、ON−OFF弁45a、45b、45c、45d、45e及び逆止弁47a、47b、47c、47d、47eを介して接続されている。低圧配管51は、高圧配管50内の乾燥空気より低圧に保持された乾燥空気で満たされている。制御コントローラ52は、5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eと、ON−OFF弁42a、42b、42c、42d、42eと、ON−OFF弁43a、43b、43c、43d、43eと、ON−OFF弁44a、44b、44c、44d、44eと、ON−OFF弁45a、45b、45c、45d、45eとにそれぞれ接続されて、それぞれのON−OFF弁の動作を制御コントローラ52でそれぞれ制御できるようにしている。
【0042】
さらに、高圧配管50は、リリーフ弁49を介して低圧配管51と接続されており、空圧タンク40の圧力が一定の圧力以上にならないように空圧タンク40を保護している。また、上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36eの途中には、それぞれ圧力センサ54a、54b、54c、54d、54eが設けられ、上側の接続配管内の圧力を計測できるようになっている。同様に、下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eの途中には、それぞれ圧力センサ55a、55b、55c、55d、55eが設けられ、高圧配管50の途中にも圧力センサ56が設けられ、それぞれの配管内の圧力をそれぞれ計測できるようになっている。制御コントローラ52は、圧力センサ54a、54b、54c、54d、54eと、圧力センサ55a、55b、55c、55d、55eと、圧力センサ56とにそれぞれ接続されて、それぞれのセンサで計測されたそれぞれの配管内の圧力の情報が制御コントローラ52に入力されるようになっている。
【0043】
次に、バルブ機構35内に備えられた制御コントローラ52の下で行われる、この回転アクチュエータ1の作用を説明する。
【0044】
回転アクチュエータ1の回転軸28に作用する力は、エアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eの発生力と、回転体20の回転軸芯に対する板状部材17の回転軸芯の傾きの大きさとによって決定される。すなわち、図1Cにおいて、エアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eの発生力が椀状部材15に作用したとき、X軸、Y軸、Z軸の各方向への変位及びZ軸回りの回転については、椀状部材15が、揺動軸14と、等速ジョイント13を介して固定軸12とに連結されているので、規制されることになる。椀状部材15に作用するX軸回りの回転トルクについては、ベアリング機構16、板状部材17及び板状部材17と一体に回転する板状突起部38a、38bと、軸18a、18bと、歯車23a、23bと、そして歯車24a、24bを介してサーボモータ25a、25bとに伝達されることになる。また、椀状部材15に作用するY軸回りの回転トルクについては、ベアリング機構16と、板状部材17と、軸18a、18bを介して回転体20とに伝達されることになる。図1Cの状態では、椀状部材15の中央板部15aが水平状態を保っているので、回転体20にはY軸回りの回転トルクのみが作用することになる。回転体20のY軸回りの回転は、ベアリング機構21によって拘束されているので、図1Cの状態では回転体20の状態は変化しないことになる。
【0045】
一方、椀状部材15の中央板部15aが水平状態から傾いた図1Eの傾斜状態では、椀状部材15に作用したY軸回りの回転トルク(揺動トルクの一例としてのトルク)は、回転体20に対するY軸回りの回転トルクとZ軸回りの回転トルクに分解されることになる。椀状部材15は、等速ジョイント13のジョイント中心を揺動中心とした揺動動作のみが可能であり、図1Eのように椀状部材15がX軸回りに傾いた傾斜状態からY軸回りの回転を与えることは、椀状部材15の傾く方向をZ軸回りに回転させることと等しいことになる。一方で、軸18a、18bの中心軸は、回転体20による拘束のため、等速ジョイント13のジョイント中心を含むX−Y平面上にしか存在できないので、椀状部材15の傾く方向が変化すると、それにつれて軸18a、18b及び回転体20は、Z軸回りに回転することになる。そのため、椀状部材15に作用するY軸回りの回転トルクにより、回転体20に対するZ軸回りの回転トルクが得られるようになる。すなわち、サーボモータ25a、25bにより板状部材17の傾きを固定し、軸18a、18bの中心軸とX−Y平面上で垂直な軸(第3の軸に垂直な第4の軸の一例としての仮想軸)回り(以下、Y’軸回りと表す)に一定のトルクが椀状部材15に発生するように、バルブ機構35が、エアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力をコントロールすることで、回転体20には、Z軸回りに一定のトルクが発生するようになる。この回転体20に作用するZ軸回りのトルクは、板状部材17の傾きにより変化し、図1Cのように傾きがない水平状態では0となり、図1Eの示されるような傾斜状態に板状部材17の傾きが増えるに従って、増加していくことになる。ちなみに、回転体20に作用するZ軸回りのトルクは、回転体20の傘歯車部39と、傘歯車27を介して回転軸28とに伝達されることになり、これが回転アクチュエータ1の発生トルクとなる。
【0046】
次に、バルブ機構35の動作について説明する。バルブ機構35は、図3に示すように、複数のセンサの情報に基づいてバルブをコントロールし、エアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力を制御する機構である。制御コントローラ52では、エンコーダ57で計測した回転軸28の回転角度から、回転軸28と連動する回転体20の回転角度を求めるとともに、サーボモータ25a、25bの回転情報から板状部材17及び椀状部材15の傾きに関する情報を得ている。図4A〜図4Eに制御コントローラ52によって制御される、回転体20の角度と、エアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eの発生力との関係の一例をそれぞれ示す。図4A〜図4Eにおいて、横軸の角度θは回転体20の回転角を度数(°)単位で示しており、図1Eの状態をθ=0度として、Z軸方向右ネジ回りを正としている。縦軸はエアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力を示しており、Z軸方向を正としている。また、縦軸における「+F」とは、下側の接続配管37a、37b、37c、37d、37eのそれぞれに空圧タンク40の圧力を加えた状態、すなわち、図2において5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eのそれぞれが左方向に移動した状態を表している。同様に、縦軸における「−F」とは、上側の接続配管36a、36b、36c、36d、36eのそれぞれに空圧タンク40の圧力を加えた状態、すなわち、図2において5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eのそれぞれが右方向に移動した状態を表している。また、エアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力が「+F」と「−F」の中間にある場合は、5ポート弁41a、41b、41c、41d、41eのそれぞれは図2の位置にあり、ON−OFF弁42a、42b、42c、42d、42eのそれぞれと、ON−OFF弁43a、43b、43c、43d、43eのそれぞれによる圧力制御が行われている状態となる。図1Eの状態において、図4A〜図4Eのようにエアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力が変化する場合、回転体20にはZ軸方向左ネジ回りの回転トルクが作用することになる。椀状部材15の傾きが一定だと、椀状部材15に作用するY’軸回りのトルクは5%程度の変動はあるものの、回転体20の角度にかかわらず略一定となる。一方で、椀状部材15に作用する軸18a、18bの中心軸周りのトルクは略0となり、サーボモータ25a、25bには負荷がかからないようになる。軸18a、18bの中心軸周りのトルクについては、図4A〜図4Eのように直線状に変化させても良いが、±F×tan(Δθ)/tan(180°/(n×2))のように変化させる方がより軸18a、18bの中心軸周りのトルクを0に近づけることができるので望ましい。ただし、Δθは図4A〜図4Eにおいて発生力が0となる角度からの差分であり、nはシリンダの本数であり、第1実施形態ではn=5となる。符号は、図4A〜図4Eにおいて右上がりに発生力が変化する場合に+であり、右下がりに発生力が変化する場合が−である。ちなみに、図4Aのエアシリンダ30aの場合に望ましいのは、θ=72°〜108°の範囲で−F×tan(θ−90°)/tan(18°)であり、θ=252°〜288°の範囲でF×tan(θ−270°)/tan(18°)である。この第1実施形態では、n=5の奇数本のエアシリンダを双方向動作させているが、これは椀状部材15に対して5方向の双方向トルク(双方向の揺動トルク)を発生できる点で望ましい。例えば、均等に配置された6本のエアシリンダの場合、双方向動作させても3方向からの双方向トルクしか発生することができない。また、第1実施形態ではn=5としているが、これを増やすことで、Y’軸回りのトルクの変動をより小さくすることができる。しかし、nの数値が大きすぎると構造が複雑になるので、3以上の奇数、好ましくは、n=5,7,9,11程度の奇数が望ましい。
【0047】
以上のようにバルブ機構35がエアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力を制御している状態において、サーボモータ25a、25bを動作させ、板状部材17の傾きを変化させることで、回転アクチュエータ1の発生トルクを、方向変化を含めて、自由に変化させることができる。サーボモータ25a、25bの動作に必要なトルクは、エアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eの発生力による軸18a、18bの中心軸周りのトルクの影響を受けるが、バルブ機構35による制御で軸18a、18bの中心軸周りのトルクを抑制することで、サーボモータ25a、25bの必要トルクを低減する(すなわち、揺動角調節手段の一例であるサーボモータ25a、25bの動作負荷を低減する)ことができる。なお、回転体20の角度が、図4A〜図4Eにおける36°、72°、108°等のように、バルブ機構35による圧力制御が行われていない角度である場合、サーボモータ25a、25bが動作しても圧力制御に伴うエネルギー消費が必要ないので、可能な限りこのような角度にある時にサーボモータ25a、25bを動作させるようにすることが、回転アクチュエータ1の動作効率の面で望ましい。
【0048】
一方で、回転アクチュエータ1の発生トルクは、椀状部材15に作用するY’軸回りのトルクに依存することになるが、Y’軸回りのトルクはそのほとんどが空圧タンク40の圧力が直接加わったエアシリンダにより発生されることになる。すなわち、図4A〜図4Eのようにエアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eのそれぞれの発生力が変化する場合、圧力制御された状態にあるのは、Y’軸に最も接近したエアシリンダ(例えば、θ=0°〜36°の場合はエアシリンダ30e)のみとなり、このエアシリンダによる発生力がY’軸回りのトルクに与える影響は、Y’軸に最も接近していることからもわずかとなる。よって、回転アクチュエータ1がトルク発生方向(回転軸28がX軸方向左ネジ回り)に回転して回転アクチュエータ1の外部に仕事をなす場合、外部に出力したエネルギーと同等のエネルギーが、そのまま、空圧タンク40に内包されるエネルギーから消費されることになる。逆に、回転アクチュエータ1がトルク発生方向と逆方向(回転軸28がX軸方向右ネジ回り)に回転して回転アクチュエータ1の外部から仕事がなされる場合、外部から入力されたエネルギーと同等のエネルギーが、そのまま、空圧タンク40に内包されるエネルギーに補充されることになる。このように、回転アクチュエータ1は、その回転方向に応じて自動的に駆動と回生を切り替えることができるので、動作効率の高い駆動を実現することができる。また、回転アクチュエータ1の動作により、空圧タンク40から失われるエネルギーについては、空圧源53から補充されることになる。このとき、回転アクチュエータ1の動作において、回生が効果的に働き、出力のピークパワーに比べて平均パワーが大きく減少する場合には、短期的に放出した空圧タンク40内のエネルギーの補充を時間をかけて行えるようになるので、空圧源53に要求される能力は小さくても良いことになる。
【0049】
よって、前記第1実施形態によれば、動作効率に優れた圧縮性流体圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットを得ることができる。すなわち、第2の回転部材の一例である回転体20に作用する回転トルクは、揺動部材の一例である椀状部材15に作用する第4の軸回りの揺動トルクと、揺動角調節手段の一例であるサーボモータ25a、25bにより調整される第1の回転部材の一例である板状部材17と回転体20との相対角度により決定されるので、揺動トルク発生機構の一例であるエアシリンダ30a、30b、30c、30d、30eにタンク部材の一例である空圧タンク40内の圧縮性流体の一例である乾燥空気の圧力をそのまま作用させ、椀状部材15に対する第4の軸回りの揺動トルクを最大限発生させ続けた状態でも、第4の軸回りの揺動トルクに関係なく、サーボモータ25a、25bによって回転体20に作用する回転トルクを制御することが可能になる。この際、椀状部材15に作用する第3の軸(一例として、軸18a、18bの中心軸)回りの揺動トルク調節に用いられる一部のエアシリンダ30a、30b、30c、30d、30e以外は、空圧タンク40内の乾燥空気により直接駆動することができるので、空圧タンク40内から失われるエネルギーと外部になされるエネルギーは連動し、動作効率が向上することになる。さらに、第1実施形態にかかる圧縮性流体圧アクチュエータ1に対して外部から仕事がなされる場合には、そのエネルギーは空圧タンク40内の乾燥空気が内包するエネルギーとして回生されることになるので、さらなる動作効率の向上が図れることになる。
【0050】
なお、この第1実施形態では、揺動角調節手段としてサーボモータ25a、25bを用いているが、これに限るものではなく、通常の電磁モータ若しくは超音波モータ等の他の方式のモータとエンコーダを組み合わせたもの、又は、ステッピングモータ等のオープンループで動作できる回転アクチュエータ等も利用可能である。また、エンコーダによる角度計測の代わりに、回転体20又は回転軸28に作用するトルクの計測値を用いるようにしても良い。これは、空圧タンク40内の圧力変動、又は、Y’軸回りのトルク変動が、回転アクチュエータ1の出力トルクに与える影響を低減できる点で望ましい。
【0051】
加えて、この第1実施形態では、回転軸28の回転角度から回転体20の回転角度を制御コントローラ52により求めているが、回転体20の回転角度を直接計測するような構成としても良い。さらに、第1実施形態では、軸18a、18bの中心軸周りのトルクを常に0に近づけているが、サーボモータ25a、25bの能力に余裕がある場合には、圧力制御を行う角度範囲を図4A〜図4Eの場合よりも狭めても良い。このようにすると、圧力制御に伴うエネルギー消費を抑制することができるので望ましい。
【0052】
さらに、第1実施形態における回転アクチュエータ1を用いた関節駆動ユニット71の構成例を図5〜図6Bに示す。回転アクチュエータ1の下方に第1腕60が配置されるとともに上方に第2腕61が配置され、かつ、回転アクチュエータ1のフレーム11が第1腕60に固定されているとともに、回転軸28に第2腕61が直接固定されている(具体的には、回転軸28の両端部が第2腕61の張出し部61aに固定されている)。すなわち、下側の腕である第1腕60に対して、上側の腕である第2腕61を、回転アクチュエータ1により回転駆動するための駆動ユニットとして、関節駆動ユニット71を使用している。
【0053】
このような構成とすることで、図6Aの状態(第1腕60の中心軸と第2腕61の中心軸とが大略同一直線状に位置した状態)から回転アクチュエータ1を動作させ、回転軸28を反時計回りに回転させることで第2腕61が第1腕60に対して反時計回りに回転動作を行うようになり、図6Bの状態(第1腕60の中心軸に対して第2腕61の中心軸が傾斜した状態)となる。逆に、回転軸28を時計回りに回転させることで、第2腕61が第1腕60に対して前記とは逆方向へ(すなわち、時計回りに)回転させることも可能となる。
【0054】
よって、このような構成とすることで、回転アクチュエータ1の有する特徴、すなわち、動作効率に優れるという特徴をそのまま引き継ぐ関節駆動ユニット71が得られ、特に家庭用途に適したロボットアームにおける関節駆動ユニットを実現することができる。すなわち、前記図5の例では、関節部を介して連結されるロボットアームの2つの腕が前記第1腕61と第2腕60として、前記関節部に前記圧縮性流体圧アクチュエータ1が配置され、前記圧縮性流体圧アクチュエータ1により、前記2つの腕のうちの一方の腕(例えば、第2腕60)に対して他方の腕(例えば、第1腕61)が関節駆動ユニット71で駆動されるようにしている。
【0055】
また、図7のように複数の(例えば、4個の)回転アクチュエータ1a、1b、1c、1dのそれぞれの空圧タンク及び空圧源を単一の空圧タンク40及び単一の空圧源53で共用するようにしても良い。このようにすることで、特に各回転アクチュエータ1a、1b、1c、1dの動作が非連動的に行われる場合における、空圧タンク40の内圧変動を小さくすることができ、空圧源53を共用することで、全体構成をコンパクトにすることが可能になる。
【0056】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明にかかる圧縮性流体圧アクチュエータ及びそれを用いた関節駆動ユニットは、力制御が容易で、動作効率に優れたものであり、ロボットの関節駆動用アクチュエータ等及びそれを用いた関節駆動ユニット等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】本発明の第1実施形態による回転アクチュエータの概略を示す正面断面図である。
【図1B】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの概略を示す正面断面図の部分拡大図である。
【図1C】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの概略を示す右側面断面図である。
【図1D】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの概略を示す、図1AのA−A線断面図である。
【図1E】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの駆動時の概略を示す右側面断面図である。
【図2】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータのバルブ機構の内部構成を示す配管図である。
【図3】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記バルブ機構における制御コントローラと各部との接続関係を示す図である。
【図4A】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御されたエアシリンダ30aの発生力変化を示す図である。
【図4B】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御されたエアシリンダ30bの発生力変化を示す図である。
【図4C】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御されたエアシリンダ30cの発生力変化を示す図である。
【図4D】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御されたエアシリンダ30dの発生力変化を示す図である。
【図4E】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータの前記制御コントローラにより制御されたエアシリンダ30eの発生力変化を示す図である。
【図5】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す斜視図である。
【図6A】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す側面図である。
【図6B】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータを用いた関節駆動ユニットの概略を示す側面図である。
【図7】本発明の前記第1実施形態による前記回転アクチュエータを複数個使用しかつ空圧タンクを共用した構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1、1a、1b、1c、1d 回転アクチュエータ
11 フレーム
11a 上端突起部
11b 貫通口
12 固定軸
13 等速ジョイント
14 揺動軸
15 椀状部材
16 ベアリング機構
17 板状部材
18a、18b 軸
19a、19b、19c、19d ラジアル軸受
20 回転体
21 ベアリング機構
22 ベアリング押さえ
23a、23b 歯車
24a、24b 歯車
25a、25b サーボモータ
26a、26b 支持部材
27 傘歯車
28 回転軸
29a、29b ベアリング機構
30a、30b、30c、30d、30e エアシリンダ
31a、31b、31c、31d、31e 両ロッド形ピストン
32a、32b、32c、32d、32e 球ジョイント
33a、33b、33c、33d、33e シリンダ支持部材
33p シリンダ支持部材の貫通穴
33q シリンダ支持部材の下端の球状部
34a、34b、34c、34d、34e ボールホルダ
35 バルブ機構
36a、36b、36c、36d、36e 上側の接続配管
37a、37b、37c、37d、37e 下側の接続配管
38a、38b 板状突起部
39 傘歯車部
40 空圧タンク
41a、41b、41c、41d、41e 5ポート弁
42a、42b、42c、42d、42e ON−OFF弁
43a、43b、43c、43d、43e ON−OFF弁
44a、44b、44c、44d、44e ON−OFF弁
45a、45b、45c、45d、45e ON−OFF弁
46a、46b、46c、46d、46e 逆止弁
47a、47b、47c、47d、47e 逆止弁
48 大気開放部
49 リリーフ弁
50、50a、50b、50c、50d 高圧配管
51 低圧配管
52 制御コントローラ
53 空圧源
54a、54b、54c、54d、54e 圧力センサ
55a、55b、55c、55d、55e 圧力センサ
56 圧力センサ
57 エンコーダ
60、60a、60b、60c、60d 腕
61、61a、61b、61c、61d 腕
71 関節駆動ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材に対してユニバーサルジョイント機構を介して保持され、前記ベース部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構のジョイント中心を含む第1の軸に対して揺動可能である揺動部材と、
前記揺動部材を基準とした前記ユニバーサルジョイント機構の前記ジョイント中心を含む第2の軸回りに前記揺動部材に対して回転可能に保持される第1の回転部材と、
前記第1の回転部材に対して、前記第2の軸に垂直かつ前記ユニバーサルジョイント機構の前記ジョイント中心を含む第3の軸回りに回転可能に保持されるとともに、前記ベース部材に対しても前記第1の軸回りに回転可能に保持される第2の回転部材と、
圧縮性流体を蓄えるタンク部材と、
前記タンク部材と接続されて前記タンク部材に前記圧縮性流体を補充する圧力源と、
前記ベース部材と前記揺動部材を連結し、前記タンク部材に接続されて前記タンク部材内の前記圧縮性流体により駆動されることで、前記揺動部材に対して揺動トルクを発生させる複数の揺動トルク発生機構と、
前記揺動トルク発生機構と前記タンク部材との間の前記圧縮性流体の接続を制御する制御弁装置と、
前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との前記第3の軸回りの相対角度を変化させる揺動角調節手段とを備え、
前記制御弁装置は、前記揺動トルク発生機構により、前記第1の軸と前記第3の軸に垂直な第4の軸回りに前記揺動部材に対する揺動トルクが発生するように制御することを特徴とする回転動作可能な圧縮性流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記ユニバーサルジョイント機構が、等速ジョイント機構であることを特徴とする請求項1に記載の圧縮性流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記複数の揺動トルク発生機構のそれぞれが、前記第2の軸回りの円周上に等間隔で配置されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1つに記載の圧縮性流体圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記揺動トルク発生機構が、前記揺動部材に対して双方向の揺動トルクを与えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の圧縮性流体圧アクチュエータ。
【請求項5】
前記揺動トルク発生機構を、3以上の奇数個備えることを特徴とする請求項4に記載の圧縮性流体圧アクチュエータ。
【請求項6】
前記揺動トルク発生機構に作用する前記圧縮性流体の圧力が、前記第4の軸に最も接近した前記揺動トルク発生機構を除き、前記タンク部材における前記圧縮性流体の圧力若しくは前記揺動トルク発生機構の周辺圧力であることを特徴とする請求項5に記載の圧縮性流体圧アクチュエータ。
【請求項7】
前記揺動トルク発生機構が、ピストンシリンダ機構であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の圧縮性流体圧アクチュエータ。
【請求項8】
前記ピストンシリンダ機構が、両ロッド形のピストンを用いた機構であることを特徴とする請求項7に記載の圧縮性流体圧アクチュエータ。
【請求項9】
前記揺動トルク発生機構と前記揺動部材は球ジョイント機構にて連結され、前記球ジョイント機構のジョイント中心が前記第2の軸に垂直かつ前記第3の軸を含む平面上にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の圧縮性流体圧アクチュエータ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の圧縮性流体圧アクチュエータを複数備え、各圧縮性流体圧アクチュエータの前記タンク部材及び前記圧力源が互いに共有される構成であることを特徴とする多軸圧縮性流体圧アクチュエータ。
【請求項11】
関節部を介して連結された2つの腕の前記関節部に請求項1〜10のいずれか1つに記載の圧縮性流体圧アクチュエータが配置され、前記圧縮性流体圧アクチュエータにより、前記2つの腕のうちの一方の腕に対して他方の腕が駆動される関節駆動ユニット。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図4E】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−25218(P2010−25218A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186803(P2008−186803)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】