説明

圧縮機の電源供給回路

【課題】漏電または過電流によるターミナルの損傷を回避すること。
【解決手段】圧縮機のターミナル(17)に接続されるリード線(21)と、電流を遮断する電流遮断器(22)とを備えている。また、ターミナル(17)における漏電を検出する漏電センサ(24)と、ターミナル(17)における過電流を検出する過電流センサ(23)とを備えている。そして、漏電センサ(24)の検出値または過電流センサ(23)の検出値がそれぞれの基準値以上になると、電流遮断器(22)を遮断する制御部(27)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機の電源供給回路に関し、圧縮機のターミナルの損傷防止対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍装置等に用いられる圧縮機のモータに給電する電源供給回路が知られている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている電源供給回路は、圧縮機の電動要素(モータ)に電力供給するものである。圧縮機は、密閉容器内に電動要素と圧縮要素とが収納され、電力供給された電動要素によって圧縮要素が駆動される。この特許文献1の電源供給回路は、サーキットブレーカを有し、3相のリード線が圧縮機の電源供給端子(ターミナル)を介して電動要素に接続されている。
【0004】
上記圧縮機のターミナルは、特許文献2に開示されるように、一般的に、圧縮機のケーシングに取り付けられて、端子箱で覆われている。具体的に、ターミナルは、一端側の端子ピンがケーシング内に、他端側の端子ピンがケーシング外に位置するように取り付けられている。そして、ターミナルの一端側の端子ピンには電動要素側のリード線が接続され、他端側の端子ピンにはコネクタを介して電源側のリード線が接続されている。
【0005】
ところで、電動要素が何らかの原因で焼損した場合、電源供給回路では圧縮機の正常運転における最大電流値よりも高い大電流が流れ、サーキットブレーカがトリップする。また、電動要素が焼損すると、炭化物が大量に発生する。したがって、トリップ後サーキットブレーカを入れ直して再度通電すると、炭化物の発生が助長され、その炭化物がターミナルの一端側に付着することで、ターミナルにおいて漏電(地絡)が生じ、ターミナルが損傷してしまう。
【0006】
そこで、上記特許文献1の電源供給回路では、圧縮機のケーシング内において、電動要素側のリード線にヒューズを設け、サーキットブレーカがトリップする前にそのヒューズを溶断させるようにしている。つまり、サーキットブレーカを入れ直しても、電動要素に電力が供給されないようにしている。これにより、電動要素からの炭化物の発生が抑制されるため、ターミナルへの炭化物の付着が抑制され、ターミナルの漏電に起因する損傷が防止される。
【特許文献1】特開2001−200790号公報
【特許文献2】特許3775331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の電源供給回路では、ターミナルを確実に保護することができないという問題があった。具体的に、ターミナルにおいて漏電が生じる原因としては、上述したようにモータの焼損によって発生した炭化物の付着の他に、圧縮要素の摺動摩耗によって発生した金属粉(即ち、導電物)が付着することで漏電が生じる場合がある。したがって、このような原因によるターミナルの損傷に対しては対処できない場合があるという問題があった。
【0008】
また、ターミナルにおける導電物の付着状態によっては、漏電よりも短絡が顕著に生じる場合がある。つまり、例えば、ターミナルにおいて1本の端子ピンと圧縮機のケーシングとが導電物を介して導通状態になると漏電(地絡)が生じるが、2本の端子ピン同士が導電物を介して導通状態になると短絡が生じてしまう。短絡が生じると、ターミナルにおいて圧縮機の正常運転時の最大電流値よりも高い大電流が流れ、サーキットブレーカや電動要素側のリード線に設けたヒューズが作動する前にターミナルが損傷する。したがって、金属粉等の導電物がターミナルに付着することに起因する短絡や漏電を抑制して、ターミナルの損傷を防止する必要があった。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮機のターミナルへ電力供給する電源供給回路において、ターミナルにおける短絡および漏電の少なくとも一方を防止し、ターミナルの損傷を確実に回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、圧縮機のターミナルに接続されて電力供給するリード線(21)と、該リード線(21)の電流を遮断する電流遮断器(22)とを備えた圧縮機の電源供給回路を前提としている。そして、本発明は、上記リード線(21)に設けられ、上記ターミナルにおける漏電を検出する漏電センサ(24)と、該漏電センサ(24)の検出値が第1基準値以上の場合に上記電流遮断器(22)を遮断動作させる制御部(27)とを備えているものである。
【0011】
上記の発明では、ターミナルを通じて圧縮機内のモータに電力が供給され、モータが駆動される。ここで、圧縮機において、モータの焼損によって、あるいは摺動摩耗によって炭化物や金属粉等の導電物が発生する。そして、この導電物がターミナルに付着し、その導電物によってターミナルの端子ピンと圧縮機のケーシングとが導通すると、電流が端子ピンからケーシングへ流れて漏電(地絡)する。なお、この場合、ケーシングはアースされている。
【0012】
上述したターミナルにおける漏電電流は、漏電センサ(24)によって検出される。そして、漏電センサ(24)の検出した漏電電流値が第1基準値以上となると、制御部(27)によって電流遮断器(22)が遮断される。そのため、電流はターミナルへ流れない。ここで、第1基準値をターミナルが損傷しない漏電電流値に設定すれば、漏電によるターミナルの損傷が回避される。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記リード線(21)に設けられ、上記ターミナルにおける過電流を検出する過電流センサ(23)を備えている。そして、上記制御部(27)は、上記過電流センサ(23)の検出値が第2基準値以上の場合に上記電流遮断器(22)を遮断動作させるものである。
【0014】
上記の発明では、圧縮機において、アース配線に不備がある場合、導電物がターミナルに付着し、その導電物によってターミナルの端子ピン同士が導通すると、電流が端子ピン同士で短絡する。短絡すると、ターミナルにおいて過電流が流れる。この過電流は、過電流センサ(23)によって検出される。そして、過電流センサ(23)の検出した過電流が第2基準値以上になると、制御部(27)によって電流遮断器(22)が遮断される。そのため、電流はターミナルへ流れない。これにより、過電流によるターミナルの損傷が回避される。
【0015】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記圧縮機は、三相交流モータを備え、ターミナルに上記リード線(21)が3本接続されている。そして、本発明は、上記過電流センサ(23)が上記2本以上のリード線(21)に設けられているものである。
【0016】
上記の発明では、ターミナルにおいて各リード線(21)に対応する3つの端子ピンが設けられている。ここで、過電流センサ(23)が2本以上のリード線(21)に設けられているため、3つの端子ピンのうち何れか2つが導電物によって短絡しても、何れかの過電流センサ(23)によって過電流が検出される。
【0017】
第4の発明は、上記第2の発明において、上記第2基準値が圧縮機の正常運転時における最大電流値より高い値に設定されているものである。
【0018】
上記の発明では、ターミナルにおいて圧縮機の正常運転時における最大電流値よりも高い過電流が流れると、電流遮断器(22)が遮断される。つまり、通常起こりうる圧縮機の最大運転電流値以下の電流が流れても、電流遮断器(22)は遮断されない。
【0019】
第5の発明は、上記第2の発明において、上記リード線(21)に設けられ、過電流が流れた際に上記電流遮断器(22)が溶着する前に溶断するヒューズ(25)を備えているものである。
【0020】
上記の発明では、例えば通常運転時に、第2基準値より著しく高く電流遮断器(22)が溶着するような過電流(突入電流)が瞬時に流れた場合、電流遮断器(22)が溶着する前にヒューズ(25)が溶断する。したがって、過電流による電流遮断器(22)の溶着が確実に回避される。
【0021】
第6の発明は、上記第1の発明において、上記圧縮機のターミナルが損傷する電流値より低い電気容量のインバータ素子を有し、上記リード線(21)に設けられて上記圧縮機の容量を可変に制御するインバータ回路(28)を備えているものである。
【0022】
上記の発明では、圧縮機において、アース配線に不備がある場合、導電物がターミナルに付着し、その導電物によってターミナルの端子ピン同士が導通すると、電流が端子ピン同士で短絡する。短絡すると、ターミナルにおいて過電流が流れる。過電流が流れると、インバータ回路(28)のパワートランジスタやダイオードのインバータ素子が破損して、電流がインバータ回路(28)で遮断される。これにより、過電流がターミナルへは流れないため、過電流によるターミナルの損傷が回避される。つまり、インバータ回路(28)は、通常運転時の電流値より高く、ターミナルが損傷する電流値よりも低い値の電気容量(耐電流値)を有するインバータ素子が用いられている。したがって、過電流が流れても、ターミナルが損傷する前にインバータ素子が破損して電流が遮断される。
【0023】
第7の発明は、圧縮機のターミナルに接続されて電力供給するリード線(21)と、該リード線(21)の電流を遮断する電流遮断器(22)とを備えた圧縮機の電源供給回路を前提としている。そして、本発明は、上記リード線(21)に設けられ、上記ターミナルにおける過電流を検出する過電流センサ(23)と、該過電流センサ(23)の検出値が基準値以上の場合に上記電流遮断器(22)を遮断動作させる制御部(27)とを備えているものである。
【0024】
上記の発明では、ターミナルを通じて圧縮機内のモータに電力が供給され、モータが駆動される。ここで、圧縮機において、モータの焼損によって、あるいは摺動摩耗によって炭化物や金属粉等の導電物が発生する。そして、この導電物がターミナルに付着し、その導電物によってターミナルの端子ピン同士が導通すると、端子ピン同士で短絡し、ターミナルに過電流が流れる。この過電流は、過電流センサ(23)によって検出される。そして、過電流センサ(23)の検出した過電流が基準値以上になると、制御部(27)によって電流遮断器(22)が遮断される。そのため、電流はターミナルへ流れない。したがって、過電流によるターミナルの損傷が回避される。
【0025】
第8の発明は、上記第7の発明において、上記圧縮機は、三相交流モータを備え、ターミナルに上記リード線(21)が3本接続されている。そして、本発明は、上記過電流センサ(23)が上記2本以上のリード線(21)に設けられているものである。
【0026】
上記の発明では、ターミナルにおいて各リード線(21)に対応する3つの端子ピンが設けられている。ここで、過電流センサ(23)が2本以上のリード線(21)に設けられているため、3つの端子ピンのうち何れか2つが導電物によって短絡しても、何れかの過電流センサ(23)によって過電流が検出される。
【0027】
第9の発明は、上記第7の発明において、上記圧縮機は、三相交流モータを備え、ターミナルに上記リード線(21)が3本接続されている。そして、本発明は、上記過電流センサ(23)が上記各リード線(21)毎に設けられているものである。
【0028】
上記の発明では、ターミナルにおいて各リード線(21)に対応する3つの端子ピンが設けられている。ここで、過電流センサ(23)が3本の各リード線(21)毎に設けられているため、何れか1本のリード線(21)にのみ流れた地絡大電流が確実に検出される。つまり、漏電時において、アース配線の電気抵抗が小さいと、3本のリード線(21)の何れか1本に地絡大電流が流れる場合があるが、その大電流が過電流センサ(23)によって検出される。また、本発明は、上記第9の発明と同様に、3つの端子ピンのうち何れか2つが導電物によって短絡した場合でも、何れかの過電流センサ(23)によって過電流が検出される。
【0029】
第10の発明は、圧縮機のターミナルに接続されて電力供給するリード線(21)を備えた圧縮機の電源供給回路を前提としている。そして、本発明は、上記圧縮機のターミナルが損傷する電流値より低い電気容量のインバータ素子を有し、上記リード線(21)に設けられて上記圧縮機の容量を可変に制御するインバータ回路(28)を備えているものである。
【0030】
上記の発明では、ターミナルを通じて圧縮機内のモータに電力が供給され、モータが駆動される。ここで、圧縮機において、モータの焼損によって、あるいは摺動摩耗によって炭化物や金属粉等の導電物が発生する。そして、この導電物がターミナルに付着し、その導電物によってターミナルの端子ピン同士が導通すると、端子ピン同士で短絡し、ターミナルに過電流が流れる。過電流が流れると、インバータ回路(28)のパワートランジスタやダイオードのインバータ素子が破損して、電流がインバータ回路(28)で遮断される。これにより、過電流がターミナルへは流れないため、過電流によるターミナルの損傷が回避される。つまり、インバータ回路(28)は、通常運転時の電流値より高く、ターミナルが損傷する電流値よりも低い値の電気容量(耐電流値)を有するインバータ素子が用いられている。したがって、過電流が流れても、ターミナルが損傷する前にインバータ素子が破損して電流が遮断される。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明によれば、ターミナルにおける漏電を検出する漏電センサ(24)を設け、その検出量が第1基準値以上になると、電流遮断器(22)を遮断するようにした。したがって、圧縮機の焼損や摺動摩耗によって発生した導電物がターミナルに付着して漏電が生じても、いち早く電流を遮断することができる。その結果、漏電によるターミナルの損傷を回避することができ、圧縮機の信頼性を向上させることができる。
【0032】
さらに、第2の発明によれば、ターミナルにおける過電流を検出する過電流センサ(23)を設け、その検出量が第2基準値以上になると、電流遮断器(22)を遮断するようにした。したがって、アース配線に不備があり、導電物がターミナルに付着して短絡が生じた場合でも、いち早く電流を遮断することができる。その結果、漏電だけでなく過電流によるターミナルの損傷を回避することができ、圧縮機の信頼性を一層向上させることができる。
【0033】
また、第3の発明によれば、圧縮機のモータが三相交流のものである場合、3本のリード線(21)のうち少なくとも2本に過電流センサ(23)を設けるようにした。したがって、ターミナルにおいて、何れの端子ピン同士が短絡しても、確実に過電流を検出することができる。その結果、過電流によるターミナルの損傷を確実に回避することができる。
【0034】
さらに、第4の発明によれば、電流遮断器(22)を遮断する過電流の基準値を圧縮機の正常運転時における最大電流値より高い値に設定するようにした。これにより、例えば圧縮機の起動時には運転電流値の数倍の大電流が流れる場合があるが、その場合でも電流遮断器(22)を遮断させずにすむ。したがって、圧縮機の運転を正常に行うことができ、圧縮機の信頼性が向上する。
【0035】
また、第5の発明によれば、電流遮断器(22)が溶着する程度の過電流が流れた際に溶断するヒューズ(25)を設けるようにしたので、過電流による電流遮断器(22)の溶着を確実に防止することができる。これにより、過電流センサ(23)が第2基準値以上の過電流を検出しても、既に電流遮断器(22)が溶着してしまい遮断できなくなるという状態を回避することができる。つまり、過電流センサ(23)が第2基準値以上の過電流を検出してから電流遮断器(22)が遮断されるまでタイムラグ(数ミリ秒)があるため、その間に電流遮断器(22)が溶着するのを防止することができる。
【0036】
また、第6の発明によれば、リード線(21)にインバータ回路(28)が設けられている場合、インバータ素子の電気容量をターミナルが損傷する電流値よりも低い値に設定するようにした。したがって、過電流が流れても、ターミナルが損傷する前にインバータ回路(28)で過電流を遮断することができる。これにより、漏電だけでなく過電流によるターミナルの損傷を回避することができる。つまり、過電流センサを別途設けて電流遮断器(22)を遮断させなくても、過電流によるターミナル損傷を防止することができる。
【0037】
さらに、本発明は、インバータ素子の電気容量をターミナルが損傷する電流値よりも低い値であって、電流遮断器(22)が溶着する電流値よりも低い値に設定すれば、ターミナルの損傷だけでなく電流遮断器(22)の溶着をも回避することができる。
【0038】
また、第7の発明によれば、ターミナルにおける過電流を検出する過電流センサ(23)を設け、その検出量が基準値以上になると、電流遮断器(22)を遮断するようにした。したがって、圧縮機の焼損や摺動摩耗によって発生した導電物がターミナルに付着して短絡が生じても、いち早く電流を遮断することができる。その結果、過電流によるターミナルの損傷を回避することができる。
【0039】
また、第8の発明によれば、圧縮機のモータが三相交流のものである場合、3本のリード線(21)のうち少なくとも2本に過電流センサ(23)を設けるようにした。したがって、ターミナルにおいて、何れの端子ピン同士が短絡しても、確実に過電流を検出することができる。その結果、過電流によるターミナルの損傷を確実に回避することができる。
【0040】
また、第9の発明によれば、圧縮機のモータが三相交流のものである場合、3本のリード線(21)毎に過電流センサ(23)を設けるようにした。したがって、ターミナルにおいて、端子ピン同士の短絡によって流れる過電流を確実に検出できる上に、漏電時にアース抵抗が小さいことから何れか1本のリード線(21)に流れる地絡大電流をも確実に検出することができる。その結果、過電流や地絡大電流によるターミナルの損傷を確実に回避することができる。
【0041】
また、第10の発明によれば、リード線(21)に設けられたインバータ回路(28)のインバータ素子の電気容量をターミナルが損傷する電流値よりも低い値に設定するようにした。したがって、過電流が流れても、ターミナルが損傷する前にインバータ回路(28)で過電流を遮断することができる。これにより、過電流によるターミナルの損傷を回避することができる。つまり、過電流センサや電流遮断器(22)を設けなくても、過電流によるターミナル損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0043】
図1に示すように、本実施形態に係る電源供給回路(20)は、空調機の室外機(10)内に配設されている。そして、この電源供給回路(20)は、メインブレーカ(2)およびサブブレーカ(3)を介して電源(1)に接続され、電力を室外機(10)内の圧縮機(11)へ供給するものである。
【0044】
上記圧縮機(11)は、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路に設けられ、冷媒を圧縮するものである。この圧縮機(11)は、全密閉型の高圧ドーム型または低圧ドーム型に構成されている。この圧縮機(11)のケーシング(12)内には、三相交流式のモータ(13)、該モータ(13)に駆動軸で連結された圧縮機構、軸受などが収納されている。すなわち、圧縮機(11)は、モータ(13)に電力が供給されると、駆動軸によって回転動力が圧縮機構に伝達される。これにより、圧縮機構において、低圧のガス冷媒が吸入されて圧縮される。なお、図1では、圧縮機(11)の圧縮機構、駆動軸、軸受を省略する。
【0045】
図2にも示すように、上記圧縮機(11)のケーシング(12)の外側で且つ上下方向のほぼ中心付近には、端子箱(15)が取り付けられている。この端子箱(15)は、正面視が略長方形状の箱体であって、ケーシング(12)の外側に固定されたベース部材(15a)と該ベース部材(15a)を覆う上蓋(15b)とを備えている。そして、端子箱(15)内には、圧縮機(11)のケーシング(12)を貫通するように設けられた給電用のターミナル(17)と、該ターミナル(17)に接続されるコネクタ(16)とが配置されている。このコネクタ(16)には、後述する電源供給回路(20)の3本のリード線(21)がボルトによって接続されている。つまり、電源供給回路(20)の各リード線(21)は、コネクタ(16)を介してターミナル(17)に繋がっている。なお、端子箱(15)では、内面にリード線(21)が接触したり、各リード線(21)同士が干渉しないようになっている。
【0046】
上記ターミナル(17)は、盆状に形成された基部(17a)と、該基部(17a)を貫通して設けられた3本の端子ピン(17b)とを備えている。基部(17a)は、ケーシング(12)に形成された孔に嵌め込まれて溶接固定されている。3本の端子ピン(17b)は、同一ピッチ円上に120°間隔で配置されている。また、各端子ピン(17b)は、ケーシング(12)外側の一端がコネクタ(16)に接続される一方、ケーシング(12)内側の他端がリード線(18)によってモータ(13)に接続されている。さらに、各端子ピン(17b)の周囲は、ガラス製の絶縁材により覆われた絶縁部(17c)になっている。
【0047】
上記電源供給回路(20)は、サブブレーカ(3)から圧縮機(11)のコネクタ(16)に接続される3本のリード線(21)と、圧縮機(11)のケーシング(12)から延びるアース線(26)とを備えている。さらに、電源供給回路(20)は、電流遮断器(22)と、過電流センサ(23)と、漏電センサ(24)と、ヒューズ(25)と、制御部(27)とを備えている。
【0048】
上記電流遮断器(22)は、3本のリード線(21)の途中に接続され、開閉動作により電流の導通および遮断を行う、いわゆるマグネットスイッチである。
【0049】
上記過電流センサ(23)は、電流遮断器(22)より下流側(コネクタ(16)側)のリード線(21)に設けられている。また、この過電流センサ(23)は、各リード線(21)毎に設けられ、各リード線(21)の過電流を検出するように構成されている。
【0050】
上記漏電センサ(24)は、過電流センサ(23)より下流側(コネクタ(16)側)のリード線(21)に設けられている。この漏電センサ(24)は、リード線(21)における漏電を検出するように構成されている。
【0051】
上記ヒューズ(25)は、漏電センサ(24)より下流側(コネクタ(16)側)の各リード線(21)毎に設けられている。このヒューズ(25)は、各リード線(21)に電流遮断器(22)が溶着する程度の過電流が流れると、溶断して電流を遮断するように構成されている。
【0052】
上記制御部(27)は、過電流センサ(23)および漏電センサ(24)の各検出値が入力されるようになっている。そして、制御部(27)は、過電流センサ(23)の検出値が予め設定された基準値a以上の場合、電流遮断器(22)を開動作(遮断動作)させるように構成されている。また、制御部(27)は、漏電センサ(24)の検出値が予め設定された基準値b以上の場合、電流遮断器(22)を開動作(遮断動作)させるように構成されている。なお、基準値aおよび基準値bは、それぞれ本発明に係る第2基準値(または基準値)および第1基準値である。
【0053】
具体的に、上記基準値aは、圧縮機(11)の正常運転時における最大電流値より高い値(例えば、400A)に設定される。さらに、基準値aは、ターミナル(17)の絶縁部(17c)が溶損する程度の電流値(過電流値または短絡電流値)より低い値に設定される。一方、基準値bは、圧縮機(11)の運転電流より低い値であって、ターミナル(17)の絶縁部(17c)が溶損する程度の電流値(地絡電流値)より低い値に設定される。例えば、基準値bは、60Aに設定される。なお、上述したそれぞれの値は、これに限らず、他の値であってもよいことは勿論である。
【0054】
次に、上記圧縮機(11)のターミナル(17)において、短絡または地絡が生じた場合の制御について説明する。
【0055】
上記圧縮機(11)が正常に運転されている場合は、図3(A)の左部に示すように、検出される短絡電流(過電流)はなく運転電流のみである。同時に、図3(B)に示すように、検出される地絡電流(漏電)は殆どゼロである。ここで、例えば、モータ(13)が何らかの原因で焼損すると、モータ(13)内またはモータ(13)に接続されているリード線(18)において短絡および地絡が生じる。そうすると、大きな短絡電流が流れると共に(図3(A)の中央部を参照)、やや高い地絡電流が流れる(図3(B)の中央部を参照)。
【0056】
この状態で、電力を供給し続けると、圧縮機(11)において、モータ(13)やそれに接続されるリード線(18)などから炭化物が発生する。そして、この炭化物がターミナル(17)の絶縁部(17c)に付着し始める。その際、焼損による短絡電流は減少するが、いくらか炭化物が付着しているため地絡電流がある程度の幅を推移しながら流れる。その後、炭化物の付着が進み、例えば、ターミナル(17)の端子ピン(17b)同士が炭化物を介して導通した場合は、短絡が生じる。また、端子ピン(17b)とケーシング(12)とが導電物を介して導通した場合は、地絡が生じる。そうすると、ターミナル(17)において大きな短絡電流や地絡電流が流れる(図3(A)(B)の右部を参照)。そのまま電力を供給し続けると、絶縁部(17c)が溶損してターミナル(17)が損傷する。
【0057】
ところが、本実施形態では、過電流センサ(23)の検出値(短絡電流または過電流)が基準値a以上になると、制御部(27)によって電流遮断器(22)が遮断される。つまり、図3(A)において「モータ焼損時」の初期時に電流遮断器(22)が遮断される。一方、漏電センサ(24)の検出値(地絡電流または漏電)が基準値b以上になると、制御部(27)によって電流遮断器(22)が遮断される。つまり、図3(B)において「モータ焼損時」の初期時に電流遮断器(22)が遮断される。これにより、ターミナル(17)への電流遮断がいち早く行われるので、ターミナル(17)の絶縁部(17c)が溶損するのを防止できる。したがって、ターミナル(17)の損傷を防止できる。
【0058】
また、本実施形態では、モータ(13)の焼損によって発生した炭化物だけでなく、圧縮機構の摺動摩耗によって発生した金属粉がターミナル(17)に付着した場合でも、同様に、ターミナル(17)の損傷を防止できる。
【0059】
本実施形態では、過電流センサ(23)の検出値および漏電センサ(24)の検出値の何れかがその基準値以上となった時点で、電流遮断器(22)が遮断されることになる。
【0060】
また、上記圧縮機(11)の正常運転中に、何らかの原因で基準値aより遙かに大きく且つ電流遮断器(22)が溶着する程度の電流(例えば、突入電流)が流れた場合、電流遮断器(22)が溶着する前にヒューズ(25)が溶断する。これにより、電流が遮断され、電流遮断器(22)の溶着を防止できる。
【0061】
−実施形態の効果−
本実施形態では、漏電センサ(24)を設け、その検出値が基準値b以上になると、電流遮断器(22)を遮断するようにした。したがって、圧縮機(11)の焼損や摺動摩耗によって発生した炭化物や金属粉がターミナル(17)の絶縁部(17c)に付着して漏電が生じても、いち早く電流を遮断することができる。その結果、漏電によるターミナル(17)の絶縁部(17c)の溶損を防止してターミナル(17)の損傷を回避することができる。よって、圧縮機の信頼性を向上させることができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、過電流センサ(23)を設け、その検出値が基準値a以上になると、電流遮断器(22)を遮断するようにした。したがって、アース線(26)に不備があり、炭化物や金属粉がターミナル(17)に付着して短絡が生じた場合でも、いち早く電流を遮断することができる。その結果、漏電だけでなく過電流によるターミナル(17)の損傷を回避することができ、圧縮機の信頼性を一層向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、3本のリード線(21)のそれぞれに、即ち2本以上のリード線(21)に過電流センサ(23)を設けるようにした。したがって、ターミナル(17)において、何れの端子ピン同士が短絡しても、確実に過電流を検出することができる。その結果、過電流によるターミナル(17)の損傷を確実に回避することができる。
【0064】
さらに、3本全てのリード線(21)に過電流センサ(23)を設けたことにより、漏電時に何れか1本のリード線(21)に地絡大電流が流れた場合でも、その地絡大電流を確実に検出することができる。つまり、漏電時において、アース線(26)の電気抵抗が小さいと、3本のリード線(21)の何れか1本に地絡大電流が流れる場合があるが、その大電流を何れかの過電流センサ(23)によって検出できる。その結果、過電流だけでなく地絡大電流によるターミナルの損傷を確実に回避することができる。
【0065】
また、本実施形態では、電流遮断器(22)を遮断する過電流の基準値aを圧縮機(11)の正常運転時における最大電流値より高い値に設定しているので、圧縮機(11)の運転時には瞬間的に運転電流値の数倍の大電流が流れる場合があるが、その場合でも電流遮断器(22)を遮断させずにすむ。したがって、圧縮機(11)の運転を正常に行うことができ、圧縮機(11)の信頼性が向上する。
【0066】
さらに、本実施形態では、電流遮断器(22)が溶着する程度の過電流が流れた際に溶断するヒューズ(25)を設けるようにしたので、過電流による電流遮断器(22)の溶着を確実に防止することができる。これにより、過電流センサ(23)が基準値a以上の過電流を検出しても、既に電流遮断器(22)が溶着してしまい遮断できなくなるという状態を回避することができる。つまり、過電流センサ(23)が基準値a以上の過電流を検出してから電流遮断器(22)が遮断されるまでタイムラグ(数ミリ秒)があるため、その間に電流遮断器(22)が溶着するのを防止することができる。
【0067】
−実施形態の変形例−
〈変形例1〉
本変形例1は、図4に示すように、インバータ回路(28)が設けられた電源供給回路(20)の場合、過電流センサ(23)およびヒューズ(25)を省略するようにしてもよい。具体的に、インバータ回路(28)は、リード線(21)における電流遮断器(22)の上流に設けられている。
【0068】
上記インバータ回路(28)は、パワートランジスタやダイオード等のインバータ素子を有し、圧縮機(11)の容量を可変に制御するためのものである。そして、少なくとも1つのインバータ素子は、電気容量が圧縮機(11)の正常運転時における最大電流値より高い値であって、ターミナル(17)が損傷する電流値よりも低い値に設定されている。ここで、ターミナル(17)が損傷する電流値とは、絶縁部(17c)が溶損してしまう値である。つまり、インバータ回路(28)は、インバータ素子の電気容量を超える過電流が流れると、インバータ素子が破損して電流が遮断される。
【0069】
この変形例では、ターミナル(17)の端子ピン(17b)同士が短絡して過電流が流れると、ターミナル(17)が損傷する前にインバータ回路(28)のインバータ素子が破損する。そうすると、電流がインバータ回路(28)で遮断されてターミナル(17)へは流れない。これにより、過電流によるターミナル(17)の損傷を回避することができる。つまり、この変形例は、過電流センサを不要としたものである。
【0070】
さらに、この変形例では、インバータ回路(28)のインバータ素子の電気容量をターミナル(17)が損傷する電流値より低く、電流遮断器(22)が溶着する電流値より低い値に設定するようにしてもよい。この場合、過電流が流れても、電流遮断器(22)が溶着する前にインバータ素子が破損する。これにより、ターミナル(17)の損傷のみならず、電流遮断器(22)の溶着を回避することができる。
【0071】
〈変形例2〉
本変形例2は、図示しないが、上記変形例1において、漏電センサ(24)および電流遮断器(22)を省略するようにしたものである。この場合、過電流が流れると、インバータ回路(28)で電流が遮断されるので、少なくとも過電流によるターミナル(17)の損傷を回避することができる。
【0072】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0073】
例えば、上記実施形態では、漏電センサ(24)および過電流センサ(23)の両方を設けるようにしたが、本発明は、何れか一方のみを設けるようにしてもよい。その場合、漏電(地絡)によるターミナル(17)の損傷若しくは過電流(短絡)によるターミナル(17)の損傷を回避することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、全て(3本)のリード線(21)に過電流センサ(23)を設けるようにしたが、本発明は何れか2本のリード線(21)にのみ過電流センサ(23)を設けるようにしてもよい。この場合でも、ターミナル(17)において、何れかの端子ピン同士が短絡すれば、一方または両方の過電流センサ(23)によって確実に過電流を検出することができる。
【0075】
また、上記実施形態において、ヒューズ(25)を省略するようにしてもよい。
【0076】
なお、上記実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明は、圧縮機のターミナルに給電する圧縮機の電源供給回路として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施形態に係る電源供給回路の構成を示す配線系統図である。
【図2】圧縮機の端子箱の構成を示す断面図である。
【図3】(A)は、ターミナル損傷時の短絡電流の波形図であり、(B)は、ターミナル損傷時の地絡電流の波形図である。
【図4】実施形態の変形例1に係る電源供給回路の構成を示す配線系統図である。
【符号の説明】
【0079】
11 圧縮機
17 ターミナル
20 電源供給回路
21 リード線
22 電流遮断器
23 過電流センサ
24 漏電センサ
25 ヒューズ
27 制御部
28 インバータ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機のターミナルに接続されて電力供給するリード線(21)と、該リード線(21)の電流を遮断する電流遮断器(22)とを備えた圧縮機の電源供給回路であって、
上記リード線(21)に設けられ、上記ターミナルにおける漏電を検出する漏電センサ(24)と、該漏電センサ(24)の検出値が第1基準値以上の場合に上記電流遮断器(22)を遮断動作させる制御部(27)とを備えている
ことを特徴とする圧縮機の電源供給回路。
【請求項2】
請求項1において、
上記リード線(21)に設けられ、上記ターミナルにおける過電流を検出する過電流センサ(23)を備える一方、
上記制御部(27)は、上記過電流センサ(23)の検出値が第2基準値以上の場合に上記電流遮断器(22)を遮断動作させる
ことを特徴とする圧縮機の電源供給回路。
【請求項3】
請求項2において、
上記圧縮機は、三相交流モータを備え、ターミナルに上記リード線(21)が3本接続されており、
上記過電流センサ(23)は、上記2本以上のリード線(21)に設けられている
ことを特徴とする圧縮機の電源供給回路。
【請求項4】
請求項2において、
上記第2基準値は、圧縮機の正常運転時における最大電流値より高い値に設定されている
ことを特徴とする圧縮機の電源供給回路。
【請求項5】
請求項2において、
上記リード線(21)に設けられ、過電流が流れた際に上記電流遮断器(22)が溶着する前に溶断するヒューズ(25)を備えている
ことを特徴とする圧縮機の電源供給回路。
【請求項6】
請求項1において、
上記圧縮機のターミナルが損傷する電流値より低い電気容量のインバータ素子を有し、上記リード線(21)に設けられて上記圧縮機の容量を可変に制御するインバータ回路(28)を備えている
ことを特徴とする圧縮機の電源供給回路。
【請求項7】
圧縮機のターミナルに接続されて電力供給するリード線(21)と、該リード線(21)の電流を遮断する電流遮断器(22)とを備えた圧縮機の電源供給回路であって、
上記リード線(21)に設けられ、上記ターミナルにおける過電流を検出する過電流センサ(23)と、該過電流センサ(23)の検出値が基準値以上の場合に上記電流遮断器(22)を遮断動作させる制御部(27)とを備えている
ことを特徴とする圧縮機の電源供給回路。
【請求項8】
請求項7において、
上記圧縮機は、三相交流モータを備え、ターミナルに上記リード線(21)が3本接続されており、
上記過電流センサ(23)は、上記2本以上のリード線(21)に設けられている
ことを特徴とする圧縮機の電源供給回路。
【請求項9】
請求項7において、
上記圧縮機は、三相交流モータを備え、ターミナルに上記リード線(21)が3本接続されており、
上記過電流センサ(23)は、上記各リード線(21)毎に設けられている
ことを特徴とする圧縮機の電源供給回路。
【請求項10】
圧縮機のターミナルに接続されて電力供給するリード線(21)を備えた圧縮機の電源供給回路であって、
上記圧縮機のターミナルが損傷する電流値より低い電気容量のインバータ素子を有し、上記リード線(21)に設けられて上記圧縮機の容量を可変に制御するインバータ回路(28)を備えている
ことを特徴とする圧縮機の電源供給回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−232131(P2008−232131A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165348(P2007−165348)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】