説明

圧電アクチュエータ及びこれを用いた光走査装置

【課題】本発明は、安定して低速駆動を行うことができる圧電アクチュエータ及びこれを用いた光走査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】駆動対象物30、31を軸X周りに傾動駆動させる圧電アクチュエータ110、111、112であって、
前記軸Xの両側に配置された錘部71と、前記軸Xと交差して延在し、前記錘部71を連結する連結部72とで前記駆動対象物30、31を平面的に囲む環状構造を有し、前記駆動対象物30、31が連結されて前記駆動対象物30、31を連結支持する可動枠70と、
弾性体15に圧電薄膜22が成膜された構造を有し、前記可動枠70の外側に配置され、該可動枠70の前記連結部72に前記軸X周りの傾動力を付与するように連結された駆動梁90と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータ及びこれを用いた光走査装置に関し、特に、駆動対象物を軸周りに傾動駆動させる圧電アクチュエータ及びこれを用いた光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電ユニモルフ振動板と、圧電ユニモルフ振動板の一端を固定して支持する空洞部を有した支持体と、圧電ユニモルフ振動板に接続された弾性体と、弾性体に接続され、弾性体を介してユニモルフ振動板の駆動により空洞部内で回転振動する反射板とを有するとともに、それら総てを一体形成した光偏光器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−128147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、共振振動を利用して、反射板を15kHz、20kHzというレベルで高速駆動させる場合しか考慮されておらず、例えば、反射板を60Hz程度の低速で駆動させたい要求がある場合には、共振させると低速駆動を行うことができず、また非共振とすると、十分な反射板の回転変位を得ることができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、安定して低速駆動を行うことができる圧電アクチュエータ及びこれを用いた光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る圧電アクチュエータ(110、111、112)は、駆動対象物(30、31)を軸(X)周りに傾動駆動させる圧電アクチュエータ(110、111、112)であって、
前記軸(X)の両側に配置された錘部(71)と、前記軸(X)と交差して延在し、前記錘部(71)を連結する連結部(72)とで前記駆動対象物(30、31)を平面的に囲む環状構造を有し、前記駆動対象物(30、31)が連結されて前記駆動対象物(30、31)を連結支持する可動枠(70)と、
弾性体(15)に圧電薄膜(22)が成膜された構造を有し、前記可動枠(70)より外側に配置され、前記可動枠(70)の前記連結部(72)に前記軸(X)周りの傾動力を付与するように連結された駆動梁(90)と、を含むことを特徴とする。
【0007】
これにより、錘部を有する可動枠に傾動力を付与することにより、駆動力の共振周波数を錘部で十分に低速化することができるとともに、可動枠が駆動対象物を囲む環状構造であるので、環状構造の内部で発生した振動との干渉を起こすことなく、軸周りの駆動力を確実に駆動対象物に伝達することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に係る圧電アクチュエータ(110、111、112)において、
前記駆動梁(90)は、軸(X)方向の両側から前記可動枠(70)を挟むように、前記軸(X)に垂直な方向に延在して配置され、前記軸(X)の両側の対となる前記駆動梁(90)が互いに逆方向に変位する電圧が印加されることを特徴とする。
【0009】
これにより、簡素な構成の駆動梁を用いて可動枠に傾動力を確実に付与することができる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る圧電アクチュエータ(110、111、112)において、
前記駆動梁(90)と前記連結部(72)とは、隣接する梁(15)が間隔を有して蛇行する蛇行ばね(80)で連結されたことを特徴とする。
【0011】
これにより、共振周波数を低下させ、所望の低速周波数で駆動対象物を傾動駆動させることができる。
【0012】
第4の発明は、第3の発明に係る圧電アクチュエータ(110、111、112)において、
前記蛇行ばね(80)の隣接する間隔(H、I、J)は、前記蛇行ばね(80)に加わる応力分布に応じて定められ、応力の大きく加わる箇所の間隔(H、I、J)が、応力が小さく加わる箇所の間隔よりも広い不等間隔であることを特徴とする。
【0013】
これにより、応力を考慮して蛇行ばねの隣接間隔を設定することができ、最大振幅や外力による衝撃が加わった場合であっても、隣接する蛇行ばね同士の接触により破損を招くことを防止することができるとともに、応力の小さい部分では省スペース化を図ることができる。
【0014】
第5の発明は、第4の発明に係る圧電アクチュエータ(110、111、112)において、
前記蛇行ばね(80)の隣接する間隔(H、I、J)は、前記蛇行ばね(80)の前記可動枠(70)に連結された箇所及び前記駆動梁(90)に連結された箇所に最も近い蛇行部分(H)が、前記蛇行ばねの中央側の箇所の蛇行部分(I、J)よりも狭いことを特徴とする。
【0015】
これにより、一方が固定物に連結されており、応力による影響が少ない連結部付近は狭い間隔で、応力による影響が大きい中央部は広い間隔で構成することにより、応力対策と省スペース化の双方に対応することができる。
【0016】
第6の発明は、第1〜5のいずれかの発明に係る圧電アクチュエータ(110、111、112)において、
前記駆動梁(90)は、共振駆動されることを特徴とする。
【0017】
これにより、小さな駆動梁で十分な傾動力を得ることができるとともに、低速化を図る構成で共振周波数を十分に下げた周波数で駆動対象を傾動駆動することができる。
【0018】
第7の発明は、第1〜6のいずれかの発明に係る圧電アクチュエータ(110、111、112)において、
前記可動枠(70)及び前記駆動梁(90)を平面的に囲む固定枠(100)を有し、
前記可動枠(70)は、前記固定枠(100)と同じ厚さで形成され、
前記駆動梁(90)は、前記固定枠(100)よりも薄く形成されたことを特徴とする。
【0019】
これにより、可動枠に十分な重さを与え、錘としての機能を十分に果たさせるとともに、固定枠で可動枠及び駆動梁を十分に保護することができる。
【0020】
第8の発明は、第7の発明に係る圧電アクチュエータ(110、111、112)において、
前記固定枠(100)には、前記可動枠(70)の水平方向の可動範囲を規制する突起(101、102)が設けられていることを特徴とする。
【0021】
これにより、落下等により衝撃が加わった場合でも、破損を防ぐことができる。
【0022】
第9の発明は、第1〜8のいずれかの発明に係る圧電アクチュエータ(110、111、112)において、
前記駆動対象物(30、31)は、前記可動枠(70)の前記連結部(72)に、弾性体(15)に圧電薄膜(22)が成膜された構造の第2の駆動梁(50)を介して連結され、
該第2の駆動梁(50)は、前記軸(X)と異なる第2の軸(Y)周りに前記駆動対象物(30、31)を傾動させることを特徴とする。
【0023】
これにより、2軸で駆動対象物を傾動駆動することができるとともに、駆動対象物に対して直接的に傾動力を付与する第2の軸周りの傾動力と、可動枠を介して傾動力を付与する軸周りの傾動力の相互干渉を防ぐことができ、双方の傾動運動を適切に行わせることができる。
【0024】
第10の発明は、第9の発明に係る圧電アクチュエータ(110、111、112)において、
前記駆動対象物(30、31)と前記第2の駆動梁(50)とは、梁構造の弾性体(15)を含む弾性連結部材(40)で連結されたことを特徴とする。
【0025】
これにより、第2の軸周りの傾動運動も、応力を低減して安定した状態で駆動させることができる。
【0026】
第11の発明は、第1〜10のいずれかの発明に係る圧電アクチュエータ(110、111、112)において、
前記可動枠(70)の上下方向の可動範囲を規制する上下方向規制部品(120、121、130、133、136、139)を更に備えたことを特徴とする。
【0027】
これにより、落下等の衝撃による破損を、上下方向の運動に対しても防ぐことができる。
【0028】
第12の発明は、第1〜11のいずれかの発明に係る圧電アクチュエータ(110、111、112)において、
前記駆動対象物(30、31)は、ミラー(31)であることを特徴とする。
【0029】
これにより、プロジェクタ、スキャナ等に圧電アクチュエータを利用することができる。
【0030】
第13の発明に係る光走査装置は、第12の発明に係る圧電アクチュエータと、
光を発射する光源と、
該光源から発射された前記光を前記圧電アクチュエータに導く導光手段とを備え、
前記圧電アクチュエータのミラーを傾動駆動させることにより、該ミラーにより反射された前記光を走査させることを特徴とする。
【0031】
これにより、省電力で安定した動作を行う光走査装置を提供することができる。
【0032】
第14の発明は、第13の発明に係る光走査装置において、
前記光をスクリーン上に走査させ、該スクリーン上に映像を形成することを特徴とする。
【0033】
これにより、省電力で安定した動作を行うプロジェクタ等の光走査装置を提供することができる。
【0034】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、駆動対象物を安定して低速傾動駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1に係る圧電アクチュエータの断面構成の一例を示した図である。
【図2】実施例1に係る圧電アクチュエータを駆動する方法の説明図である。図2(A)は、梁15と圧電素子21の部分を示した側面図の一例である。図2(B)は、圧電素子21が収縮変形した状態の一例を示した図である。図2(C)は、圧電素子21が伸長変形した状態の一例を示した図である。
【図3】実施例1に係る圧電アクチュエータの全体構成の一例を示した斜視図である。図3(A)は、実施例1に係る圧電アクチュエータの上面斜視図である。図3(B)は、実施例1に係る圧電アクチュエータの下面斜視図である。
【図4】実施例1に係る圧電アクチュエータの詳細構成を示した図である。図4(A)は、駆動対象物30と駆動梁90との間の詳細構成を示した図である。図4(B)は、蛇行ばね周辺の拡大図である。
【図5】実施例1に係るパッケージングされた圧電アクチュエータの構成の一例を示した図である。図5(A)は、圧電アクチュエータ200の全体構成の一例を示す斜視図である。図5(B)は、圧電アクチュエータ200の中央断面斜視図の一例である。図5(C)は、圧電アクチュエータ200の中央断面図の一例である。
【図6】実施例1に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ200の分解図の一例である。図6(A)は、圧電アクチュエータ200の全体分解図の一例である。図6(B)は、上方規制部材120の拡大斜視図である。図6(C)は、下方規制部材130の拡大斜視図である。
【図7】実施例1に係る圧電アクチュエータ110の蛇行ばね80の機能説明図である。図7(A)は、実施例1に係る圧電アクチュエータ110の全体構成の一例を示した斜視図である。図7(B)は、比較参考例に係る圧電アクチュエータ110の全体構成例を示した図である。図7(C)は、実施例1に係る圧電アクチュエータ110と比較参考例に係る圧電アクチュエータの特性比較図である。
【図8】実施例1に係る圧電アクチュエータ110を2軸の各軸周りで傾動動作させたときの状態を示した図である。図8(A)は、圧電アクチュエータ110をX軸周りに傾動駆動させた状態の一例を示した図である。図8(B)は、圧電アクチュエータ110をY軸周りに傾動駆動させた状態の一例を示した図である。
【図9】各共振駆動周波数での最大応力と傾角感度の一例を示した図である。図9(A)は、60Hz共振駆動における最大応力と傾角感度の一例を示した図である。図9(B)は、30kHz共振駆動における最大応力と傾角感度の一例を示した図である。
【図10】2軸の傾動駆動で干渉が発生しない理由を説明するための図である。
【図11】比較参考例として、可動枠70から連結部80を無くした圧電アクチュエータの動作状態の一例を示した図である。図11(A)は、60Hz共振駆動時の動作状態を示した図である。図11(B)は、30kHz共振駆動時の動作状態を示した図である。
【図12】高速駆動部55の最適設計を行う方法の一例を示した図である。図12(A)は、高速駆動部55の平面構成の一例を示した図である。図12(B)は、図12(A)の条件下での最大応力の変化特性を示した図である。
【図13】ばね連結部43の長さBが、極小値を持つ理由を説明するための図である。図13(A)は、B=0.1mmの場合のアクチュエータの応力分布を示した図である。図13(B)は、B=0.3mmの場合のアクチュエータの応力分布を示した図である。図13(C)は、B=0.2mmの場合のアクチュエータの応力分布を示した図である。
【図14】第1ばね41間の距離A及びばね連結部43の長さBをパラメータとした場合の傾角感度の特性を示した図である。
【図15】実施例1に係る圧電アクチュエータ110の配線長の短くする構成の説明図である。
【図16】実施例1に係る圧電アクチュエータ110の平面構成例を示す拡大図である。
【図17】錘部突起73、74及び突起101、102の配置構成の説明図である。
【図18】実施例1に係る圧電アクチュエータ110の断面構成の一例を示す図である。
【図19】蛇行ばね80の周辺を含む拡大図の一例である。
【図20】衝突時の蛇行ばね80の形状及び応力分布の一例を示した図である。図20(A)は、圧電アクチュエータ110の全体変形図である。図20(B)は、左側の蛇行ばね80の拡大図である。図20(C)は、右側の蛇行ばね80の拡大図である。
【図21】衝突時の蛇行ばね80の形状と応力分布の一例を示した図である。図21(A)は、圧電アクチュエータ110の全体変形図である。図21(B)は、左側の蛇行ばね80の拡大図である。図21(C)は、弾性連結部40の拡大図である。図21(D)は、右側の蛇行ばね80の拡大図である。
【図22】比較参考例として、蛇行ばね80ではなく直線的なばね180を設けた場合の応力分布の一例を示した図である。図22(A)は、全体変形図である。図22(B)は、左側の直線的なばね180の拡大図である。図22(C)は、右側の直線的なばね180の拡大図である。
【図23】実施例2に係る圧電アクチュエータ111の全体構成の一例を示す図である。
【図24】実施例2に係る圧電アクチュエータ111の駆動変形状態を示した図の一例である。図24(A)は、圧電アクチュエータ111の低速駆動状態を示した変形図である。図24(B)は、圧電アクチュエータ111の高速駆動状態を示した変形図である。
【図25】実施例3に係る圧電アクチュエータ112の変更部分を説明する図である。図25(A)は、圧電アクチュエータ112の高速駆動部55の平面構成図の一例である。図25(B)は、傾角感度〔deg/V〕の変化特性を示した図である。図25(C)は、最大主応力の変化特性を示した図である。
【図26】実施例4に係る圧電アクチュエータ201の構成の一例を示す斜視図である。図26(A)は、圧電アクチュエータ201の全体斜視図の一例である。図26(B)は、圧電アクチュエータ201の分解斜視図の一例である。図26(C)は、圧電アクチュエータ201の断面斜視図の一例である。
【図27】実施例5に係る圧電アクチュエータ202の構成の一例を示した斜視図である。図27(A)は、圧電アクチュエータ202の全体構成の一例を示す斜視図である。図27(B)は、圧電アクチュエータ202の分解斜視図の一例である。図27(C)は、圧電アクチュエータ202の断面構成斜視図の一例である。
【図28】実施例6に係る圧電アクチュエータ203の構成の一例を示した斜視図である。図28(A)は、圧電アクチュエータ203の全体構成の一例を示す斜視図である。図28(B)は、圧電アクチュエータ203の分解斜視図の一例である。図28(C)は、圧電アクチュエータ203の断面構成斜視図の一例である。
【図29】本発明の実施例7に係るプロジェクタ300の構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【実施例1】
【0038】
図1は、本発明の実施例1に係る圧電アクチュエータの断面構成の一例を示した図である。図1において、実施例1に係る圧電アクチュエータは、半導体ウェハ10と、駆動源20とを有する。実施例1に係る圧電アクチュエータは、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用して、半導体ウェハ10を加工することにより、作製することができる。図1においては、そのような半導体ウェハ10を用いて圧電アクチュエータを構成した場合の例について説明する。
【0039】
半導体ウェハ10は、シリコン基板11と、SiO12、14と、Si活性層13とを備える。半導体ウェハ10は、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板が用いられてもよい。SOI基板は、シリコン基板11の間に、絶縁膜のSiO12が形成された基板であり、シリコン基板11を深掘り反応性イオンエッチング等で削った場合に、削り終点の底面にSiOが形成されているので、深掘りエッチング加工を容易に行うことができる。
【0040】
SiO12、Si活性層13及びSiO14で、梁15を形成する。梁15の部分で、駆動対象物を支持したり、駆動力を伝達したりする動作を行う。シリコン基板11の部分は、例えば、外側の固定枠として利用される。
【0041】
なお、半導体ウェハ10は、例えば、全体で300〜500〔μm〕の厚さの半導体ウェハ10が用いられてよい。例えば、半導体ウェハ10が350〔μm〕のときに、Si活性層13が30〔μm〕、SiO12、14が0.5〔μm〕程度で、梁15が合計31〔μm〕程度であってよく、半導体ウェハ10の1/10程度の厚さで構成されてもよい。
【0042】
駆動源20は、本実施例に係る圧電アクチュエータにおいて、駆動力を発生させる動力源である。本実施例に係る圧電アクチュエータにおいては、駆動源20として種々の手段を用いることができるが、実施例1においては、駆動源20として圧電素子21を用いた場合を例に挙げて説明する。圧電素子21は、圧電体22に印加された電圧を力に変換する受動素子である。本実施例に係る圧電アクチュエータにおいては、圧電素子21は、電圧が印加されることにより、その長さが伸縮することにより、装着された梁15を駆動させる。圧電体22は、種々の圧電体22を適用してよいが、例えば、PZT薄膜(チタン酸ジルコン酸鉛)が用いられてもよい。圧電素子21は、例えば、梁15が約30〔μm〕であったときに、2〔μm〕程度の厚さで形成されてもよい。
【0043】
圧電素子21は、上部電極23と、下部電極24とを備える。上部電極23及び下部電極24は、圧電体22に電圧を印加するための電極であり、上部電極23及び下部電極24に電圧が印加されることにより、圧電体22が伸縮し、梁15を駆動させる。
【0044】
図2は、圧電素子21が、梁15に曲げ振動を発生させて実施例1に係る圧電アクチュエータを駆動する方法について説明するための図である。図2(A)は、シリコンから構成される梁15と圧電素子21の部分を模式的に示した側面図の一例である。図2(A)に示すように、Si活性層13等から構成される梁15の上に、圧電素子21が薄膜状に装着されている。
【0045】
図2(B)は、圧電素子21が収縮変形した状態の一例を示した図である。図2(B)に示すように、圧電素子21が収縮すると、梁15は、下に凸の上方に反るような形状となる。
【0046】
図2(C)は、圧電素子21が伸長変形した状態の一例を示した図である。図2(C)に示すように、圧電素子21が伸長すると、梁15は、上に凸の下方に反るような形状となる。
【0047】
図2(B)(C)に示すように、圧電素子21は、印加する電圧の極性又は位相により、上に反ったり下に沿ったりする。本実施例に係る圧電アクチュエータでは、例えば、このような圧電素子21の性質を利用して、圧電素子21を駆動源20として、駆動対象を駆動する。
【0048】
図2(B)、(C)において説明したように、図2(A)のような、梁15の上に圧電薄膜22が成膜されて圧電素子21が設けられた構造は、駆動源20の収縮又は伸長により振動力を発生させ、駆動対象物に傾動力を付与することが可能であるから、駆動梁と呼ぶこととする。
【0049】
図3は、実施例1に係る圧電アクチュエータの全体構成の一例を示した斜視図である。図3(A)は、実施例1に係る圧電アクチュエータの上面斜視図であり、図3(B)は、実施例1に係る圧電アクチュエータの下面斜視図である。
【0050】
図3(A)において、実施例1に係る圧電アクチュエータは、駆動対象物30と、弾性連結部材40と、第2の駆動梁50と、可動枠70と、蛇行ばね80と、駆動梁90と、固定枠100とを有する。なお、実施例1においては、駆動梁90と、第2の駆動梁50とを備え、圧電アクチュエータを2軸駆動型とした例を挙げて説明するが、圧電アクチュエータを1軸の低速駆動型として構成する場合には、駆動梁90のみを備えていればよい。よって、第2の駆動梁50は、必要に応じて設けられてよい。
【0051】
圧電アクチュエータの上面は、中央部の表面に駆動対象物30が配置され、駆動梁90及び第2の駆動梁50の表面が圧電素子21からなる駆動源20で覆われている以外は、総てSiO14で覆われたSi活性層13で構成される。
【0052】
駆動対象物30は、傾動駆動させる種々の対象物が適用されてよいが、例えば、ミラーが駆動対象物30であってもよい。ミラーの傾動駆動は、プロジェクタやプリンタ用のスキャナ等に利用され得る。
【0053】
駆動対象物30の中心を通り、X軸とY軸が設定されている。X軸は、本実施例に係る圧電アクチュエータを低速駆動の1軸アクチュエータとして用いるときの傾動軸である。Y軸は、本実施例に係る圧電アクチュエータを、X軸の軸周りに低速駆動、Y軸の周りに高速駆動する2軸型の圧電アクチュエータとして用いる場合の高速駆動側の傾動軸である。また、駆動対象物30をY軸の軸周りに高速駆動のみ行わせる場合には、高速駆動の1軸型圧電アクチュエータとして構成することも可能である。
【0054】
なお、本実施例に係る圧電アクチュエータを、X軸の軸周りに駆動対象物30を1軸駆動させる圧電アクチュエータとして利用する場合には、駆動対象物30、弾性連結部材40及び第2の駆動梁50を一体としてX軸の軸周りに傾動駆動させることになる。この場合には、駆動対象物30、弾性連結部材40及び第2の駆動梁50を一体として駆動対象物60と考えてもよい。
【0055】
可動枠70は、駆動対象物30、60が連結されて、駆動対象物30、60を連結支持するとともに、駆動梁90からの傾動力を駆動対象物30、60に伝達するための部材である。
【0056】
図3(B)に示すように、可動枠70は、固定枠100と同様に、図1において説明したSi支持層11で厚く構成される。よって、可動枠70は、梁15として構成される部分よりも重く構成される。また、可動枠70は、X軸の両側には、広い面積で大きく錘(おもり)部71として形成され、Y軸の両側は、錘部71を連結する連結部72として形成される。これにより、X軸の軸周りの傾動運動に対しては、付与された傾動力を錘部71の重さにより低速化することができる。つまり、駆動梁90により付与される傾動力が所望の傾動力より大きい場合であっても、駆動力を低減させ、所望の低速駆動を行わせることができる。
【0057】
図3(A)に戻る。図3(A)においては、可動枠70の連結部72が隠れているが、図3(B)で説明したように、第2の駆動梁50は、可動枠70の連結部72に連結された構成となっている。
【0058】
蛇行ばね80は、駆動梁90により発生した傾動力を可動枠70に伝達するための部材である。蛇行ばね80は、梁15の構造を有するので、弾性を有し、駆動梁90から伝達された傾動力を吸収して低減することができる。また、蛇行ばね80は、間隔を有して蛇行した形状を有し、更に弾性を増す形状となっているので、単なる直線的な梁15よりも大幅に弾性を増すことができる。蛇行ばね80によっても、駆動梁90で発生した傾動力を低減させつつ可動枠70の連結部72に伝達する。
【0059】
駆動梁90は、図2において説明したように、圧電素子21を駆動源20として備え、上方又は下方に反る変形を交互に繰り返すことにより、傾動振動する傾動力を発生させる駆動力発生手段である。駆動梁90は、X軸の延在方向の両側から、可動枠70を挟むようにして配置されるとともに、X軸に垂直な方向に延在している。つまり、X軸と駆動梁90でHの文字を描くように配置されている。また、駆動梁90は、X軸で分断されるように、別体の駆動梁90がX軸の両側に配置されている。そして、X軸に関して同じ側にある駆動梁90に、同一方向に変位する電圧が印加され、X軸に関して反対側にある駆動梁90には、それとは逆方向に変位する電圧が印加される電極及び配線構成となっている。これにより、X軸を境界として、一方の側は上方に反り、他方の側は下方に反るような変形をするので、蛇行ばね80を傾動させるような駆動力を発生させることができる。
【0060】
駆動梁90の振動は、共振振動である。共振振動は、振動エネルギーが大きく、大きな傾角感度を発生させることができるが、振動の周波数が高いので、低速駆動にそのまま利用するのが、一般的には困難である。しかしながら、本実施例に係る圧電アクチュエータにおいては、大きな弾性を有する蛇行ばね80と、錘部71を有する可動枠70を介して駆動対象物30、60に傾動力を伝達するため、周波数を十分に低下させて低速駆動することが可能である。
【0061】
また、本実施例に係るアクチュエータは、駆動対象物30を2軸駆動させる場合には、第2の駆動梁50についても、共振振動により傾動力を発生させる。第2の駆動梁50は、Y軸の軸周りに、駆動対象物30を高速駆動すればよいので、共振により高速振動を発生させ、弾性連結部材40を介して応力の低減を図りつつ振動を伝達させ、直接的に駆動対象物30に傾動力を付与するような構成となっている。
【0062】
以下、本実施例に係る圧力アクチュエータを2軸駆動型として構成している場合には、X軸の軸周りに60Hzで±9degの傾角で傾動し、Y軸の軸周りに30kHzで±12degの傾角で傾動駆動する圧力アクチュエータを構成した場合の例を挙げて説明するものとする。
【0063】
次に、図4を用いて、本実施例に係る圧電アクチュエータの詳細構造について説明する。図4は、実施例1に係る圧電アクチュエータの詳細構成を示した図である。図4(A)は、実施例1に係る圧電アクチュエータの駆動対象物30と駆動梁90との間の詳細構成を示した図である。
【0064】
図4(A)において、駆動対象物30としてミラー31が用いられ、ミラー31と第2の駆動梁50とを連結する弾性連結部材40の構成の詳細と、可動枠70の錘部71と固定枠100との間の詳細と、駆動梁90と可動枠70の連結部72との連結関係の詳細とが示されている。
【0065】
図4(A)において、ミラー31周辺は、30kHzで共振駆動する高速駆動部55の構造を示している。高速駆動部55は、第2の駆動梁50と、弾性連結部材40とを含む。ミラー31と第2の駆動梁50を連結する弾性連結部材40は、ミラー31に連結された部分が2つに分離した2本のばねによる構造となっている。弾性連結部材40は、図1において説明したように、梁15として薄く形成されるとともに、形状的にも直線上の細い梁15として形成されているので、弾性体として構成される。
【0066】
また、錘部71と固定枠100との間の固定枠100側には、突起101、102が形成されている。また、突起101、102の各々と対向して、錘部71には、錘部突起73、74が形成されている。これらにより、錘部71の水平方向の可動範囲を規制することができる。突起101は、縦方向(Y軸方向)の錘部71の可動範囲を規制し、突起102は、横方向(X軸方向)の錘部71の可動範囲を規制している。つまり、突起101が存在しないと、錘部71と固定枠100の隙間の大きさ分、錘部71が移動し得るので、外的衝撃により蛇行ばね80等に大きな力が加わり、破損を招くおそれがあるが、突起101を設けることにより、破損の危険性を低減させることができる。同様に、突起102が存在しないと、錘部71は、外力による衝撃により、駆動源90に衝突して破損を招くおそれがあるが、突起102を設けることにより、破損を防ぐことができる。
【0067】
また、図4(A)において、固定枠100の表面に、高速駆動部用配線端子103と、電極配線104が設けられている。高速駆動部用配線端子103は、高速駆動部55の第2の駆動梁50の電極23、24に電力を供給するための配線端子であり、電極配線104は、同様の目的の配線である。第2の駆動梁50は、駆動対象物30付近の中央領域にあるため、第2の駆動梁50に電力を供給するためには、外側にある固定枠100、駆動梁90、蛇行ばね80を介して電力を供給せざるを得ないが、本実施例に係る圧電アクチュエータは、駆動梁90が簡素な形状であるので、電極配線104の引き回しを小さくして、消費電力を低減させることができる。なお、この点については、詳細は後述する。
【0068】
図4(B)は、蛇行ばね周辺の拡大図である。図4(B)に示すように、駆動源90は、X軸に沿って空隙91を有し、X軸の両側で、異なる変形を行うことができるようになっている。そして、蛇行ばね80は、空隙91を跨ぐようにして、X軸の両側の2つの駆動源90の両方に連結されている。これにより、駆動源90は、X軸を境界として手前側と奥側とで、鉛直上下方向に反対の反り返り変形を行うことにより、交互に振動する傾動力を蛇行ばね80に付与することができ、駆動対象部物30、60を傾動駆動することができる。また、図4(B)においては、圧電アクチュエータ全体のうちの左側端部だけ示されているが、右側端部も駆動源90に同様な傾動駆動を行わせることにより、左右両側(X軸上の正負両側)から傾動力を付与して駆動対象物30、60を傾動駆動させることができる。
【0069】
また、蛇行ばね80のばね構造は、隣接するばね部との距離が総て均等ではない、不等間隔のばね構造を有している。この点についての詳細は、後述する。
【0070】
なお、蛇行ばね80に沿って、電極配線104が設置されている。蛇行ばね80の折り返し回数が少なく、全長が短いので、電極配線104を低抵抗として構成することができ、消費電力を向上させることができる。この点についても、詳細は後述する。
【0071】
図5は、実施例1に係るパッケージングされた圧電アクチュエータの構成の一例を示した図である。図5(A)は、実施例1に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ200の全体構成の一例を示す斜視図であり、図5(B)は、実施例1に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ200の中央断面斜視図の一例であり、図5(C)は、実施例1に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ200の中央断面図の一例である。
【0072】
図5(A)に示すように、本実施例に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ200は、圧電アクチュエータ110が、パッケージ140に収容され、上面を封止ガラス150で封止して構成される。本実施例に係る圧電アクチュエータ110は、例えば、真空封止又はArやNにより、封止ガラス150を用いてガス封止が施される。駆動対象物30がミラー31の場合、封止ガラス150を透過してミラー31に光が照射され、照射された光を反射して傾動によりスキャンさせることにより、プロジェクタやスキャナ用のパッケージングされた圧電アクチュエータ200として構成できる。
【0073】
図5(B)において、パッケージングされた圧電アクチュエータ200は、パッケージ140内に、下方規制部材130が収容され、その上に圧電アクチュエータ110が収容され、圧電アクチュエータ110の上方に上方規制部材120が設けられ、その上に封止ガラス150で封止がなされている。下方規制部材130は、中央部に接着剤溜まり131を有し、接着剤を溜めてパッケージ140との接着固定が可能に構成されている。
【0074】
図5(C)において、圧電アクチュエータ110の下方には下方規制部材130、上方には上方規制部材120が設けられ、下方からパッケージ140が全体を収容するとともに、上面に封止ガラス150が設けられた断面構成が示されている。また、下方規制部材130の中央部には、接着剤溜まり131が設けられている。
【0075】
圧電アクチュエータ110の可動範囲は、上方は上方規制部材120により規制され、下方は下方規制部材130により規制される。これにより、パッケージングされた圧電アクチュエータ200が落下等により大きな衝撃を受けた場合であっても、圧電アクチュエータ110の急激な移動を規制し、破損を防ぐことができる。
【0076】
図6は、実施例1に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ200の分解図の一例である。図6(A)は、パッケージングされた圧電アクチュエータ200の全体分解図の一例である。図6(A)おいて、圧電アクチュエータ110の上方には上方規制部材120、下方には下方規制部材130が設けられ、下方から全体をパッケージ140が収容し、上面を封止ガラス150が覆う構成となっている。
【0077】
パッケージ140は、中央部に窪み141を有し、窪み141の外側の平坦部142に、圧電アクチュエータ110の固定枠100を載置する構成となっている。また、平坦部142のX軸上には、下方規制部材130を載置する載置部143が設けられている。図4において説明したように、本実施例に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ200は、圧電アクチュエータ110自体が水平方向の可動範囲を規制する突起101、102を備えている。また、鉛直方向には、圧電アクチュエータ110の固定枠100に取り付けられる上方規制部材120及びパッケージ140に取り付けられる下方規制部材130を備えている。よって、本実施例に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ200は、水平2方向及び鉛直2方向に各々可動枠70の可動範囲を規制する構成を備えており、落下等の衝撃に強い構成となっている。
【0078】
図6(B)は、上方規制部材120の拡大斜視図であり、図6(C)は、下方規制部材130の拡大斜視図である。上方規制部材120は、圧電アクチュエータ110の固定枠100上に載せるような構成となっており、下方規制部材130は、パッケージ140の中央両側の載置部143に載置して吊されるように、吊下部132を有している。また、下方規制部材130の中央部に接着剤溜まり131を有する点は、図5において説明した通りである。
【0079】
このように、上方規制部材120及び下方規制部材130は、圧電アクチュエータ110又はパッケージ140等に載置することにより、容易に設けることができ、上下方向への衝撃に強い圧電アクチュエータ110を実現できる構成となっている。
【0080】
次に、図3及び図4において説明した実施例1に係る圧電アクチュエータ110の個々の構成について、当該構成が達成する機能について詳細に説明を行う。
【0081】
まず、図7を用いて、蛇行ばね80の機能について説明する。図7は、実施例1に係る圧電アクチュエータ110の蛇行ばね80の機能について説明するための図である。図7(A)は、実施例1に係る圧電アクチュエータ110の全体構成の一例を示した斜視図であり、図7(B)は、比較参考例として、実施例1に係る圧電アクチュエータ110の蛇行ばね80を、直線的な梁15による連結部材180にした場合の全体構成の一例を示した図である。また、図7(C)は、図7(A)に示した蛇行ばね80を有する実施例1に係る圧電アクチュエータ110と、図7(B)に示した蛇行ばね80を有せず連結部材180を有する圧電アクチュエータとの特性比較を示した図である。
【0082】
図7(C)において、上段が図7(A)の蛇行ばねを有する実施例1に係る圧電アクチュエータ110の特性を示し、下段が図7(B)の蛇行ばね80を有しない比較参考例に係る圧電アクチュエータの特性を示している。両者を比較すると、傾角感度はともに2.21deg/Vで同じであるが、共振周波数が、実施例1に係る圧電アクチュエータ110は60Hzであるのに対し、比較参考例に係る圧電アクチュエータは、200Hzとなっている。つまり、蛇行ばね80は、共振周波数を低減させる効果があると考えられる。
【0083】
また、図7(C)において、最大応力を比較すると、実施例1に係る圧電アクチュエータ110が0.08GPaであるのに対し、比較参考例に係る圧電アクチュエータは、0.35GPaであり、実施例1に係る圧電アクチュエータ110よりも高くなっている。このことから、蛇行ばね80は、最大応力を低減し、応力集中を防ぐ効果があると考えられる。
【0084】
以上をまとめると、実施例1に係る圧電アクチュエータ110が有する蛇行ばね80は、傾角感度には何ら影響を与えないが、共振周波数を低下させ、応力集中を防ぐ効果がある。このように、駆動源90と可動枠70との間に蛇行ばね80を設置することにより、共振周波数を下げ、最大応力を低減することができる。
【0085】
次に、図3において説明した可動枠70の錘部71について説明する。図3(B)に示したように、可動枠70は、X軸の両側にX軸を挟むように錘部71を有し、錘部71が、Y軸を挟む連結部72で連結された形状を有する。そして、錘部71を含む可動枠70は、総て図1において説明したSi支持層11で形成されている。錘部71は、図7で説明した蛇行ばね80と同様に、駆動源90で発生した傾動力の振動周波数を低下させる機能を有する。錘部71の面積をより大きく、また、Si支持層11の厚さをより厚くすれば、錘部71の質量は増加し、共振周波数をより大幅に低下させることができる。
【0086】
一方、圧電アクチュエータ110には、通常、小型で省スペースに構成する要請がある場合が多いので、錘部71を含む可動枠70の形状は、蛇行ばね80の形状も踏まえた上で、両者で所望の低速の周波数が得られるように調整を行うようにしてよい。例えば、X軸方向に駆動対象物30を低速の60Hzで駆動する場合には、駆動源90で発生させる共振振動の周波数を低下させ、60Hzの周波数が得られるように、蛇行ばね80と錘部71を調整して構成してよい。
【0087】
このように、蛇行ばねと錘部71という2つの共振周波数低下手段を有することにより、駆動源90を共振振動させても、確実に所望の低周波数の振動を得ることができる。
【0088】
次に、図8乃至図11を用いて、可動枠70の別の機能について説明する。図8は、実施例1に係る圧電アクチュエータ110を2軸に構成し、各軸周りで傾動動作させたときの状態を示した図である。図8(A)は、実施例1に係る圧電アクチュエータ110をX軸の軸周りに傾動駆動させた状態の一例を示した図であり、図8(B)は、実施例1に係る圧電アクチュエータ110をY軸の軸周りに傾動駆動させた状態の一例を示した図である。
【0089】
図8(A)において、駆動対象物30は、X軸の軸周りに傾動駆動しているが、弾性連結部材40は何ら変形を生じておらず、Y軸には、何ら振動を伝達しない状態となっている。同様に、図8(B)において、駆動対処物30は、Y軸の軸周りに傾動駆動しているが、蛇行ばね80は何ら変形を生じておらず、X軸に何ら振動を伝達しない状態となっている。
【0090】
このように、実施例1に係る圧電アクチュエータ110を2軸型として構成した場合、X軸周りの低速駆動と、Y軸周りの高速駆動は、互いの駆動系に振動を与えない独立振動系となっている。なお、実施例1においては、X軸の軸周りの傾動を60Hzで駆動させ、Y軸の軸周りの傾動を30kHzで駆動させているが、駆動周波数の設定を用途に応じて種々変更しても、同様の独立振動系として構成することができる。
【0091】
図9は、各共振駆動周波数の隣接共振周波数での最大応力と傾角感度の一例を示した図である。図9(A)は、X軸周りの60Hz駆動における共振振動周波数の隣接共振周波数での最大応力と傾角感度の一例を示した図である。通常、ある共振周波数で駆動対象物30を駆動する場合、共振周波数の5倍の範囲内の共振周波数の倍数の値で、高周波成分が乗っていなければ、振動に干渉が生じないことが知られている。よって、60Hzの共振周波数で駆動対象物30を駆動する場合には、60Hzの倍数である120Hz、180Hz、240Hz、300Hzの周波数で、高周波成分が現れなければよい。図9(A)においては、60Hz〜300Hzの範囲の上記の周波数の値で、傾角感度の特性でピークのようなものは存在しない。また、最大応力は、上述のように、0.5GPa以下であれば、問題無い値と言えるが、図9(A)においては、最大応力が0.2Gpaを超えず、問題の無い特性となっている。よって、図9(A)より、実施例1に係る圧電アクチュエータ110のX軸周りの傾動駆動は、Y軸の傾動との干渉を生じず、また、強度的にも問題の無い構成となっていることが分かる。
【0092】
図9(B)は、Y軸周りの30kHz駆動における共振振動周波数の隣接共振周波数での最大応力と傾角感度の一例を示した図である。図9(B)において、30kHz付近で傾角感度がピークを有し、最大応力もピークを有している。傾角感度の特性では、30kHz以外の領域でピークは発生しておらず、また、最大応力もピーク値で0.5GPaよりも小さな値の0.49GPaとなっている。よって、Y軸の軸周りの傾動駆動においても、X軸の傾動駆動との干渉は発生せず、強度的にも問題の無い構成であることが図9(B)から分かる。
【0093】
このように、本実施例に係る圧電アクチュエータ110は、X軸とY軸の傾動において干渉を生じない独立振動系であるとともに、強度的にも問題の無い構成となっている。
【0094】
図10は、X軸周りの傾動駆動とY軸周りの傾動駆動で干渉が発生しない理由について説明するための図である。図10において、実施例1に係る圧電アクチュエータ110の下面側の全体構成の一例の斜視図が示されているが、可動枠70の形状に着目すると、可動枠70は、駆動対象物30を、周囲から平面的に取り囲む環状構造を有している。そして、Y軸周りの傾動運動は、可動枠70の枠内で完結する構成となっており、X軸周りの傾動運動は、可動枠70の連結部72に傾動力を付与して完結する構成となっている。また、可動枠70は、Si支持層11で形成されており、剛性を有する部材で構成されている。
【0095】
つまり、実施例1に係る圧電アクチュエータ110においては、30kHz共振駆動部である第2の駆動源50と弾性連結部材40、及び駆動対象物30を内包する可動枠70を環状構造にすることで、構造的に強固になり、30kHz共振時の振動を蛇行ばね80及び駆動源90に伝達させない効果がある。また、逆に60Hz共振駆動部である駆動源90から第2の駆動源50及び弾性連結部材40への振動伝播も妨げている。よって、実施例1に係る圧電アクチュエータ110は、それぞれの駆動源50、90が振動的に独立し、干渉の発生が抑制される構造となっている。
【0096】
図11は、比較参考例として、可動枠70から連結部80を無くし、可動枠70を環状構造でなく、錘部71のみがX軸の両側に存在した構成とした圧電アクチュエータの動作状態の一例を示した図である。図11(A)は、60Hz共振駆動時の動作状態を示し、図11(B)は、30kHz共振駆動時の動作状態を示した図である。
【0097】
図11(A)においては、駆動軸と垂直な弾性連結部40が共振しているか否かは明確には示されていないが、図11(B)においては、駆動軸でない蛇行ばね80に歪みが生じ、駆動軸であるY軸と垂直な蛇行ばね80において、共振していることが示されている。このように、可動枠70が環状構造でなく、蛇行ばね80と高速駆動部55の第2の駆動梁50との間にSi支持層11の連結部72が存在しないと、30kHz駆動時に蛇行ばね80が共振し、X軸の傾動駆動とY軸の傾動駆動との間で干渉が発生することが分かる。
【0098】
次に、図12乃至図16を用いて、実施例1に係る圧電アクチュエータ110の低消費電力構造について説明する。本実施例に係る圧電アクチュエータ110においては、傾角感度の向上、配線長を短くし低抵抗化、電極面積を小さくする等を行い、低消費電力構造としている。
【0099】
まず、図12乃至図14を用いて、Y軸周りの高速駆動部55の傾角感度向上と最大応力を低減する構成について説明する。
【0100】
図12は、実施例1に係る圧力アクチュエータ110の高速駆動部55の形状の最適設計を行う方法の一例を示した図である。図12(A)は、実施例1に係る圧電アクチュエータの高速駆動部55の平面構成の一例を示した図である。図1において説明したように、圧電アクチュエータ110は、半導体ウェハ10等により構成されてよいが、Siのねじれモードによる動的な破断応力は、2GPa程度である。D−RIE(Deep Reactive Ion Etching、深掘り反応性イオンエッチング)による加工変質層を考慮すると、破断応力は1.5GPa程度となる。更に、繰り返し応力の印加を考慮すると、最大応力を0.5GPa以下に設計する必要がある。また、傾角感度は、1.2deg/V以上を目標値とする。
【0101】
図12(A)において、圧電アクチュエータ110の高速駆動部55は、弾性連結部材40と、第2の駆動梁50とを備える。弾性連結部材40は、第1ばね41と、第2ばね42と、ばね連結部43とを有する。駆動対象物30は、第1ばね41、ばね連結部43及び第2ばね42を介して、第2の駆動梁50に連結されている。
【0102】
図12において、各パラメータを以下のように定めるものとする。第1ばね41及び第2ばねの幅は、ともに0.06mmとする。ばね幅を変更することにより、共振周波数を大きく変更可能である。また、第1ばね41間距離をA、第1/第2ばね間距離(ばね連結部43の長さ)をB、第1ばね41及び第2ばね42のX軸方向の最も外側からY軸までの距離をCとすると、Cを可変とすることで、共振周波数を一定の30kHzに調整することができる。また、第1ばね41と駆動対象物30との連結箇所45のR半径をR1とすると、R1=A/2に設定する。同様に、ばね連結部43の内側のR半径をR2とすると、R2=B/2に設定する。このような条件下で、傾角感度が最大となるパラメータA、Bを算出する。なお、駆動対象物30は、Y軸の軸周りに±12deg傾ける条件でパラメータA、Bの算出を行う。
【0103】
図12(B)は、図12(A)の条件下で、駆動対象物30を±12deg傾動させる場合に、2本の第1ばね41間の距離Aと、ばね連結部43の長さBとをパラメータとしたときの、最大応力の変化特性を示した図である。図12(B)において、横軸はばね連結部43の長さB〔mm〕、縦軸は最大応力〔GPa〕を示している。
【0104】
図12(B)において、Aの値が小さい程、最大応力が小さいことが示されている。また、応力σが極小となるばね連結部43の長さBをBminとすると、(1)式の関係を有する。
【0105】
【数1】

(1)式は、各特性曲線の極小値を結んで得られた関係式である。
【0106】
図13は、ばね連結部43の長さBが、極小値を持つ理由を説明するための図である。(1)式より、A=0.3mmの曲線における極小値は、Bmin=(−0.2)*0.3+0.28=0.22≒0.2である。図13においては、A=0.3mmの場合に、Bの値を変化させた応力分布図を示している。
【0107】
図13(A)は、B=0.1mmの場合のアクチュエータの応力分布を示した図である。図13(A)は、B<Bmin=0.2mmの場合の応力分布を示しており、この場合、第2ばね42に応力が集中している。
【0108】
図13(B)は、B=0.3mmの場合のアクチュエータの応力分布を示した図である。図13(B)は、B>Bmin=0.2mmの場合の応力分布を示しており、この場合、第1ばね41に応力が集中している。
【0109】
図13(C)は、B=0.2mmの場合のアクチュエータの応力分布を示した図である。図13(C)は、B=Bmin=0.2mmの場合の応力分布を示しており、この場合、第1ばね41と第2ばね42の中間付近のばね連結部43の位置に応力が集中する。
【0110】
図12(A)に示した構成において、第1ばね41及び第2ばね42の幅は、0.06mmと、これらを連結しているばね連結部43よりも狭く、ねじれ部を含むことになる。よって、ばね連結部43の長さを短くすると、第2ばね42のねじれ部に応力が集中し、ばね連結部43の長さを長くすると、第1ばね41のねじれ部に応力が集中するが、ばね連結部43の長さを中間長さとすることにより、ばね連結部43に応力集中部を移動させることができる。幅が広く、大きなねじれ部を含まないばね連結部43に応力集中部を移動させることにより、駆動対象物30を±12deg傾動させたときの応力を低減させ、極小値を持たせることができる。
【0111】
図12(B)に戻る。図12(B)の変化特性において、応力が限界値の5GPa以下を示すのは、A=0.1mm、A=0.03mm及びA=0.005mmの曲線の一部の範囲である。つまり、図12(B)で示す特性曲線においては、A<0.2mmであって、Bが所定範囲内の領域の場合である。一方、A≧0.2mmの特性曲線においては、Bの値に関わらず、最大応力は0.5GPaを示している。
【0112】
ここで、A<0.2mmの特性曲線において、応力が限界値の0.5GPaと交わるBの値が小さい方の関係式は、(2)式のようになる。
【0113】
【数2】

また、各特性曲線が、応力が0.5GPaで交わるBの値が大きい方の関係式は、(3)式のようになる。
【0114】
【数3】

よって、応力が限界値の0.5GPa以下を示すのは、(1)式を満たすBminだけでなく、(4)式の範囲となる。
【0115】
【数4】

図12(C)は、上述の(1)〜(4)の関係式が満たす領域を示した図である。図12(C)において、横軸は第1ばね41間の距離A〔mm〕、縦軸はばね連結部43の長さB〔mm〕を示している。図12(C)において、(4)式を満たす範囲が斜線で示されており、領域の境界線である(2)式と(3)式の間に、(1)式が示されている。応力の低減の観点から見れば、(1)式を満たすA、Bの組み合わせが最適であるが、(4)式の範囲内に入っていれば、設計上問題無いと言える。よって、(4)式を満たす斜線の範囲内で第1ばね41間の距離A及びばね連結部43の長さBを定めればよいことが分かる。
【0116】
図14は、第1ばね41間の距離A及びばね連結部43の長さBをパラメータとした場合の傾角感度の特性を示した図である。図14において、横軸はばね連結部43の長さB〔mm〕、縦軸は傾角感度〔deg/V〕を示している。
【0117】
図14において、A、Bの値がともに大きい程、傾角感度は大きくなることが示されている。よって、図12(C)において算出した、最大応力が0.5GPa以下の範囲で、傾角感度が最大となるようなA、Bの値が、最適なパラメータ設定ということになる。
【0118】
この範囲で考えると、A=0.03mm、B=0.35mmが最適な値ということになる。このとき、他の値は、第1ばね41の各々と第2ばね42の幅はともに0.06mm、C=1.2mm、R1=0.015mm、R2=0.175mmとなる。この場合の特性は、傾角感度が3.58deg/Vであり、±12degの傾角で傾動させるための電圧が0−6.5V、最大応力が0.49GPaとなる。
【0119】
従来、傾角角度は1.2deg/Vであったので、±12degの傾角で傾動させるための電圧は、0−20Vであった。本実施例に係る圧電アクチュエータ110によれば、感度向上により、高速駆動部55の消費電力は1/9.5に減少する。
【0120】
図15は、実施例1に係る圧電アクチュエータ110の配線長を短くする構成について説明するための図である。一般的に、2軸型の圧電アクチュエータの場合、高速駆動を行う駆動源20は、駆動対象物30付近に設けられ、低速駆動を行う駆動源は、高速駆動を行う駆動源20よりも外側に設けられる場合が多い。この場合、高速駆動を行う駆動源20の電極23、24への電源供給のための配線は、外側の低速駆動を行う駆動梁90に沿わせて設置される場合が多い。
【0121】
本実施例に係る圧電アクチュエータ110は、低速駆動を、何重にも折り返した駆動梁の非共振駆動により傾動を積み重ねる方式ではなく、共振駆動を行い、周波数を蛇行ばね80や錘部71により低下させて低速駆動を行う方式を採用している。よって、低速駆動を行う駆動梁90は、複雑な折り返し構造を有せず、固定枠100の近くに2本(4ピース)存在するだけである。従って、中央部に存在する30kHz駆動部40、50に電源を供給するのに、折り返し構造に沿わせる複雑な配線の引き回しを要せず、短い配線で電源供給を行うことができる。
【0122】
図15に示すように、固定枠100には、高速駆動用配線端子103が4箇所設けられている。図4において説明したように、全体として外側に2列だけ存在する駆動梁90に沿って配線すると、極めて短い配線で30kHz共振部の第2の駆動梁50に到達することができ、短い配線で30kHz共振部用の電源供給配線を配置することができる。これにより、従来よりも配線長が1/10に減少し、配線抵抗の低下により、消費電力を低減することができる。
【0123】
また、低速駆動を行う駆動梁90についても、上述のように、折り返し構造ではなく、2本の駆動梁90のみが外側に配置された構造であるので、駆動源20の面積は大幅に減少した構成となっている。駆動源20の面積の減少と、上述の傾角感度の向上(従来0.8deg/V→本実施例2.2deg/V)により、低速駆動を行う駆動梁90の消費電力は、1/15程度に低減することができる。
【0124】
また、高速駆動を行う第2の駆動梁50の駆動源20の面積は、従来の高速駆動を行う駆動源20の面積と同様であるため、やはり傾角感度の向上と配線抵抗の低減の相乗効果により、第2の駆動梁50の消費電力を1/20程度にすることができる。
【0125】
更に、低速駆動の駆動源として、非共振駆動を行い、傾動の変位を積み重ねる方式だと、何重にも亘る折り返し構造が含まれるため、狭い間隔のLine/Space部が多く存在することになる。このような折り返し構造は、製造も困難で、製造歩留まりが低下する傾向にある。一方、本実施例に係る圧電アクチュエータ110においては、低速駆動を行う駆動梁90に、複雑な折り返し構造が含まれていないため、製造が容易で、製造歩留まりが向上するという利点もある。例えば、折り返し構造で50%の製造歩留まりの場合に、本実施例に係る圧電アクチュエータによれば、95%以上の歩留まりを実現することができる。
【0126】
次に、図16乃至図22を用いて、実施例1に係る圧電アクチュエータ110の落下衝撃に強い構造について説明する。まず、図16乃至図18を用いて、可動枠70と固定枠100の衝撃対策となる構成について説明する。
【0127】
図16は、実施例1に係る圧電アクチュエータ110の平面構成の一例を示す左奥側の拡大図である。図16において、固定枠100と可動枠70の錘部71に着目すると、錘部71には、錘部突起73、74が設けられ、固定枠100には突起101、102が設けられ、錘部突起73と突起101、錘部突起74と突起102が対向する構成となっている。これらの錘部突起73、74及び固定枠100の突起101、102は、圧電アクチュエータ110に落下等により衝撃が加わったときに、可動枠70のX軸方向及びY軸方向の可動範囲を規制し、圧電アクチュエータ110の破損を防止する役割を果たす。本実施例に係る圧電アクチュエータ110においては、錘部突起73、74と突起101、102の間隔も、適切な間隔に設定しているので、その点について説明する。
【0128】
図16において、錘部71がX軸を中心に±9deg傾くと、X軸の両側の錘部71は、Y軸方向において約0.05mm固定枠100に接近する。ここで、0.02mmのマージンを設けて、錘部突起73と突起101の間隔Dを、D=0.07mmに設定した。また、X軸方向の錘部突起74と突起102との間隔Eは、Si支持層11の500μm程度の厚さをエッチングするのに必要な最小幅に設定し、E=0.035mmとした。このような設定を行うことにより、通常の傾動駆動においては、X軸の軸周りに傾動しても、錘部突起72と突起101は接触無く正常に動作し、また、落下等による衝撃力が加わったときには、最小限の間隔D、Eで確実に可動枠70の急激な移動を止め、圧電アクチュエータ110の破損を防ぐことができる。
【0129】
図17は、錘部突起73、74及び突起101、102の配置構成を説明するための図である。図17においては、実施例1に係る圧電アクチュエータ110の下面の斜視図が示されている。図17において、可動枠70の連結部72と錘部突起73との配置に着目すると、Y軸方向に延在する連結部72の延長線上に錘部突起73が設けられ、錘部突起73に対向する外側に突起101が設けられている。よって、Y軸方向への移動については、連結部72の延長線上の衝撃に強い部分で力を受けることになり、衝撃に対する可動枠70の耐性も高い構成となっている。同様に、X軸方向についても、錘部71の駆動対象物30寄りの窪み形状を有する部分ではなく、錘部72がX方向に延在した外側の部分で錘部突起74及び突起102を設けており、X軸方向についても衝撃に強い構成となっている。
【0130】
図18は、実施例1に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ110のX軸で切った断面構成の一例を示す図である。図18において、圧電アクチュエータ110を、X軸を中心に±9deg傾動させると、錘部71は、約0.15mm上方規制部品120及び下方異性部品130に接近する。よって、上下とも0.05mmのマージンを設けて、上方間隔F及び下方間隔Gとも、F=G=0.2mmの設定とした。これにより、通常の傾動動作には影響を与えることなく、落下等の衝撃から圧電アクチュエータ110を確実に保護することができる。
【0131】
次に、図19乃至図22を用いて、蛇行ばね80の衝撃対策となる構成について説明する。図19は、蛇行ばね80の周辺を含む拡大図の一例である。
【0132】
図19において、蛇行ばね80が示されているが、蛇行ばね80には、高速側の第2の駆動梁50の駆動源20に電源を供給するために、電極配線104が2本通る。よって、電極配線104の幅が0.02mmの場合に、蛇行ばね80のばね幅を0.07mm(ライン0.02mm×2+スペース0.01mm)とした。
【0133】
また、図19において、蛇行ばね80の隣接するばねの間隔を、外側から内側に向かってH、I、Jとして表すとともに、蛇行ばね80のX軸方向の長さをKとする。図19において、隣接するばね間隔H、I、Jは、H<J<Iの関係にあり、等間隔ではない。以下、この隣接するばね間隔H、I、Jの設定の方法の一例について、説明する。
【0134】
図20及び図21は、実施例1に係る圧電アクチュエータ110にX、Y、Z方向に陰解法により衝撃加速度を印加したときの応力分布の一例を示した図である。
【0135】
図20は、X=+0.07mm、Y=+0.035mm、Z=+0.02mmでそれぞれの規制部101、102、120、130に衝突させたときの蛇行ばね80の形状及び応力分布の一例を示した図である。図20(A)は、圧電アクチュエータ110の全体変形図であり、図20(B)は、左側の蛇行ばね80の拡大図であり、図20(C)は、右側の蛇行ばね80の拡大図である。
【0136】
ここで、破断応力は1.5GPaであり、落下衝撃では繰り返し応力が印加される訳ではないので、安全係数を乗じて最大応力が1.0GPa以下となるように設計すれば、落下衝撃に十分耐え得る設計となる。また、圧電アクチュエータ110は、図16及び図18において説明した間隔DはX軸に対して対称、間隔EはY軸に対して対称であり、蛇行ばね80もY軸に対して左右対称であるものとする。
【0137】
図20(A)より、+Y方向に大きな応力が印加されていることが分かる。また、図20(B)より、左側の蛇行ばね80は、隣接ばね間隔Hが狭くなり、隣接ばね間隔Iが開いてばね形状が変形していることが分かる。蛇行ばね80の最大応力は、隣接ばね間隔Iの連結部に加わっていることも、図20(B)に示されている。また、図20(C)より、右側の蛇行ばね80は、隣接ばね間隔H、Jが狭くなり、隣接ばね間隔Iが開くようにばね形状が変形していることが分かる。ここで、最大応力値は、0.66GPaであった。
【0138】
図21は、X=−0.07mm、Y=−0.035mm、Z=+0.2mmでそれぞれの規制部101、102、120、130に衝突させたときの蛇行ばね80の形状と応力分布の一例を示した図である。図21(A)は、圧電アクチュエータ110の全体変形図であり、図21(B)は、左側の蛇行ばね80の拡大図である。また、図21(C)は、弾性連結部40の拡大図であり、図21(D)は、右側の蛇行ばね80の拡大図である。
【0139】
図21(B)より、左側の蛇行ばね80は、隣接ばね間隔H、I、Jが広くなっていることが分かる。なお、図21(B)において、隣接ばね間隔H、I、Jの中でも、隣接ばね間隔Iが最も広く変形していることが分かる。
【0140】
図21(C)より、弾性連結部40には、第2ばね42と可動枠70の錘部71との連結部分に最大応力が発生していることが分かる。発生した最大応力は、0.76GPaである。1.0GPa以下の値であるので、問題無い数値である。
【0141】
図21(D)より、右側の蛇行ばね80は、隣接ばね間隔H、Iが狭くなっていることが分かる。
【0142】
図20及び図21において、実施例1に係る圧電アクチュエータ110に加速度を印加したときの応力分布を示したが、その場合の発生応力は、0.1GPa以下であった。つまり、実施例1に係る圧電アクチュエータ110は、落下衝撃加速度の印加により、駆動対象物30と高速駆動部55及び可動枠70がX、Y、Z方向に最大変位しても、発生する応力は1.0GPa以下となる。
【0143】
また、その際、蛇行ばね80の隣接するばね同士が接触しないように、変形時の隣接ばね間隔H、I、Jが0.05mm以上確保できるようにした。その結果として、図19で示したように、蛇行ばね80の隣接ばねの間隔が不等間隔となった。つまり、隣接ばね間隔H、Jを、最も間隔が広い隣接ばね間隔Iに合わせて等間隔とすると、蛇行ばね80の全長Kが大きくなり、圧電アクチュエータ110全体のサイズが大きくなる。よって、隣接ばね間隔を狭くして良い部分は狭くして蛇行ばね80を構成することにより、蛇行ばね80の隣接ばね間隔は不等間隔となった。
【0144】
次に、比較参考例として、蛇行ばね80をばね形状ではない単なる弾性体の梁とした場合の変形及び応力分布について説明する。
【0145】
図22は、比較参考例として、蛇行ばね80を設けずに弾性体の梁の直線的なばね180で駆動梁90と可動枠70とを連結した場合の応力分布の一例を示した図である。図22(A)は、全体変形図であり、図22(B)は、左側の直線的なばね180の拡大図であり、図22(C)は、右側の直線的なばね180の拡大図である。なお、比較参考例に係る圧電アクチュエータには、X=+0.07mm、Y=+0.035mm、Z=+0.2mmの変位を加えている。
【0146】
図22(B)において、直線的なばね180のほぼ全体が、1GPaを超えてしまっている。また、図22(C)の右側の直線的なばね180においては、駆動梁90の外側の連結部で最大応力が発生している。このとき、最大応力は、4.13GPaであり、1.0GPaを大きく超えてしまっている。よって、比較参考例に係る圧電アクチュエータにおいては、落下衝撃加速度の印加により、可動枠70及びこれに連結された高速駆動部55及び駆動対象物30がX、Y、Z方向に最大変位したときには、発生する応力は1.0GPaを超えてしまい、破損してしまうことが分かる。
【0147】
以上より、蛇行ばね80には、図7において説明した共振周波数を低下させて応力集中を防ぐ作用効果の他、落下衝撃により発生する応力を分散させ、圧電アクチュエータ110の破損を防ぐ効果があることが分かる。
【0148】
このように、実施例1に係る圧電アクチュエータ110によれば、低速駆動用の駆動梁90を、外側2本(4ピース)の簡素な構成とし、駆動梁90を共振駆動させ、蛇行ばね80及び可動枠70の錘部71で周波数を低速駆動の周波数にまで下げるとともに、可動梁70の内部に第2の駆動梁50を設けることにより、2軸で干渉を起こさない独立振動系の圧電アクチュエータ110として構成することができる。また、配線104の長さと駆動源20の面積を低減させることにより、低消費電力化を図ることができる。更に、固定枠100に突起101、102、可動枠70の錘部71に錘部突起73、74を設けてX、Y方向の可動範囲を規制するとともに、上方規制部材120及び下方規制部材130を設けて、上下方向の可動範囲も規制し、落下による衝撃が発生しても、破損し難い構成としている。また、蛇行ばね80は、落下衝撃による応力を低減させる機能を有するので、落下耐性を更に高めることができる。
【実施例2】
【0149】
図23は、本発明の実施例2に係る圧電アクチュエータ111の全体構成の一例を示す斜視図である。実施例2に係る圧電アクチュエータ111は、駆動対象物30と、弾性連結部40と、第2の駆動梁50と、可動枠70と、蛇行ばね80と、駆動梁92と、固定枠100とを備える点は、実施例1に係る圧電アクチュエータ100と同様である。実施例2に係る圧電アクチュエータ111は、低速駆動を行う駆動梁92が、折り返し構造を有する点のみにおいて、実施例1に係る圧電アクチュエータ110と異なっている。その他の構成要素については、実施例1に係る圧電アクチュエータ110と同様であるので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0150】
実施例2に係る圧電アクチュエータ111においては、低速駆動の駆動梁92として、折り返し構造の駆動梁92を用いるが、駆動梁92は、非共振で変位を蓄積する方式ではなく、実施例1に係る圧電アクチュエータ110と同様に、共振駆動を行う。図23においては、駆動対象物30に近い内側の駆動梁92が固定枠100に連結され、隣接する駆動梁92の端部同士が順次連結する折り返し構造であり、内側の駆動梁92から外側の駆動梁92に傾動力が伝達するにつれて変位が蓄積され、1本の駆動梁92よりも大きな傾角を得ることができる構成となっている。図23においては、3本の駆動梁92で1駆動梁群93を構成している。
【0151】
このように、低速駆動用の駆動梁92を折り返し構造として、複数の駆動梁92で駆動梁群93を構成することにより、傾角感度を向上させることが可能となる。具体的には、実施例2に係る圧電アクチュエータ111の傾角感度は、4.4deg/Vを得ることができ、実施例1に係る圧電アクチュエータ111の約2倍の傾角感度を得ることができた。また、最大応力についても、3MPa程度の大きさであり、問題の無い範囲内であった。
【0152】
図24は、実施例2に係る圧電アクチュエータ111の駆動時の変形状態を示した図の一例である。図24(A)は、実施例2に係る圧電アクチュエータ111をX軸の軸周りに低速駆動させた状態を示した変形図であり、図24(B)は、実施例2に係る圧電アクチュエータ111をY軸の軸周りに高速駆動させた状態を示した変形図である。
【0153】
図24(A)において、X軸の軸周りに可動枠70及び駆動対象物30が傾動しているが、可動枠70内の弾性連結部40の第1ばねは共振しておらず、X軸周りの傾動駆動が、Y軸周りの傾動駆動に干渉しないことを示している。
【0154】
図24(B)において、Y軸の軸周りに駆動対象物30が傾動しているが、駆動梁92は共振しておらず、Y軸周りの傾動駆動がX軸周りの傾動駆動に干渉を生じないことを示している。
【0155】
このように、実施例2に係る圧電アクチュエータ111は、2軸の圧電アクチュエータ111として構成した場合にも、互いの駆動軸の軸周りにおける傾動駆動が、他方の軸周りの傾動駆動に干渉を与えない構成となっている。
【0156】
また、実施例2に係る圧電アクチュエータ111においては、駆動梁92が折り返し構造を有するため、実施例1に係る圧電アクチュエータ110よりも、製造工程がやや複雑になるが、折り返し構造の段数が少ないので、消費電力が大幅に上昇したり、製造歩留まりが大幅に悪くなったりすることは少ないと考えられる。この点で、実施例2に係る圧電アクチュエータ111は、低速駆動に非共振の駆動梁を用いた圧電アクチュエータと比較すると、なお消費電力や製造歩留まりの点で利点を有している。
【0157】
よって、傾角感度を重視したい場合には、実施例2に係る圧電アクチュエータ111を採用し、消費電力の低減や製造歩留まりの向上を重視したい場合には、実施例1に係る圧電アクチュエータ110を採用する、というように、用途に応じて実施例1に係る圧電アクチュエータ110と実施例2に係る圧電アクチュエータ111を使い分けることができる。
【0158】
実施例2に係る圧電アクチュエータ111によれば、更に傾角感度を向上させることができる。
【実施例3】
【0159】
図25は、本発明の実施例3に係る圧電アクチュエータ112の変更部分を説明するための図である。実施例3に係る圧電アクチュエータ112においては、高速駆動部55における傾角感度向上と最大応力を低減させる構成を有する。
【0160】
図25(A)は、実施例3に係る圧電アクチュエータ112の高速駆動部55の平面構成を示した図の一例である。実施例3に係る圧電アクチュエータ112においては、高速駆動部55の弾性連結部40が、第1ばね44が1本となっている点で、第1ばね41が2本で構成されている実施例1に係る圧電アクチュエータ110と異なっている。その他の構成要素については、実施例1に係る圧電アクチュエータ110と同様であるので、図示及び説明を省略する。また、実施例1に係る圧電アクチュエータ110と同様の構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0161】
実施例3に係る圧電アクチュエータ112においては、傾角感度の向上と最大応力を低減させるように、高速駆動部55におけるパラメータの設定を行う。
【0162】
図25(A)において、第1ばね44の幅をAとし、第2ばね42の幅を、第1ばね44の幅Aの1/2のA/2に設定する。また、ばね連結部43の長さをB、第1ばね44及び第2ばね42の外側端部からX軸までの距離をCとする。そして、第1ばね44及びばね連結部43のX軸までの距離Cを可変とすることで、共振周波数を一定の30kHzに設定する。なお、ばね連結部43は、全体で4箇所存在するが、総て共通の値に設定する。また、駆動対象物30と第1ばね44の連結箇所46のR半径をR1=0.15mm、ばね連結部43の内側のR半径をR2=B/2に設定する。そして、第1ばね44の幅A及びばね連結部43の長さBをパラメータとして変化させ、傾角感度と最大応力の最適値を検討した。
【0163】
図25(B)は、駆動対象物30を±12degの傾角で傾動させる場合の、第1ばね44の幅A及びばね連結部43の長さBの変化に対する傾角感度〔deg/V〕の変化特性を示した図である。図25(B)において、A=0.12mmの場合に最も傾角感度が高く、また、0.4mm<B<0.6mmのB=0.5mm付近の値で傾角感度が最大である特性が示されている。
【0164】
図25(C)は、第1ばね44の幅A及び支持梁側連結部54の長さBの変化に対する最大主応力の変化特性を示した図である。最大応力は、0.5GPa以下であれば、アクチュエータの耐性としては問題の無い数値である。図25(C)において、A>0.1mmの場合に、最大応力は0.5GPa以下となっている。また、A=0.14mm又はA=0.12mmの場合であって、0.4mm<B<0.6mmのB=0.5mm付近で最大主応力が最小となっている特性が示されている。
【0165】
よって、傾角感度が高く、最大応力が小さい形状で、比較的小型のものとして、例えば、A=0.12mm、B=0.5mm、C=1.4mm、R1=0.15mm、R2=0.25mmの形状を採用するとよい。この場合、傾角感度は4.50deg/V、±12degの傾角で傾動させるための電圧は0−3.5V、最大応力は0.38GPaとすることができ、最大応力が小さく、傾角感度が高い良好な特性とすることができる。
【0166】
このように、実施例3に係る圧電アクチュエータ112によれば、高速駆動部55の傾角感度を向上させ、最大応力を低減させることができる。
【実施例4】
【0167】
図26は、本発明の実施例4に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ201の構成の一例を示す斜視図である。図26(A)は、実施例4に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ201の全体斜視図の一例であり、図26(B)は、実施例4に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ201の分解斜視図の一例であり、図26(C)は、実施例4に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ201の断面斜視図の一例である。
【0168】
図26(A)において、パッケージ140内に圧電アクチュエータ110が収容され、上面が封止ガラス150で覆われている点は、実施例1に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ200と同様である。
【0169】
実施例4に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ201は、上下方向の可動範囲を規制する部材が、上方規制部材と下方規制部材が一体化した上下方向規制部材133である点で、上方規制部材120と下方規制部材130とが各々別個に設けられた実施例1に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ200と相違する。なお、その他の構成要素は、実施例1と同様であるので、実施例1と同一の参照符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0170】
図26(B)において、上下方向規制部材133の斜視図が示されているが、上下歩行規制部材133は、上方規制部134と、下方規制部135とを有する。下方規制部135は、パッケージ140上に載置されて収容され、上方規制部134が、蛇行ばね80を挟むように上方に延びて存在し、圧電アクチュエータ110の上方の移動を規制する。
【0171】
図26(C)には、実施例4に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ201の断面構成が示されている。下方規制部135は、中央部が浮いて圧電アクチュエータ110の下方の可動範囲を規制している。また、圧電アクチュエータ110の蛇行ばね80の両側の隙間から、圧電アクチュエータ110の上方に上方規制部134が圧電アクチュエータ110を貫くように延び、鍵状の部分で圧電アクチュエータ110の上方の可動範囲を規制している。
【0172】
このように、実施例4に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ201によれば、上方規制と下方規制の双方の機能を有する1つの上下方向規制部材133を用いることにより、上下の双方の圧電アクチュエータ201の可動範囲を規制することができる。これにより、組立容易な簡素な構成で落下等の衝撃による破損を防ぐことができる。
【実施例5】
【0173】
図27は、本発明の実施例5に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ202の構成の一例を示した斜視図である。図27(A)は、実施例5に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ202の全体構成の一例を示す斜視図であり、図27(B)は、実施例5に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ202の分解斜視図の一例であり、図27(C)は、実施例5に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ202の断面構成斜視図の一例である。
【0174】
図27(A)、(B)に示すように、実施例5に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ202においても、パッケージ140に圧電アクチュエータ110が収容され、上面を封止ガラス150が覆っている構成は、実施例1及び実施例4に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ200と同様である。よって、実施例1と同様の構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0175】
図27(A)〜(C)に示すように、実施例5に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ202においては、上下方向規制部材136が、パッケージ140ではなく、可動枠70に取り付けられる点で、実施例4に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ201と相違する。例えば、可動枠70の、蛇行ばね80との間の箇所に上下方向規制部材136を設けるようにすれば、通常の傾動駆動を妨げることなく、上下の可動範囲のみを規制することができる。図27(B)に示すように、上下方向規制部材136は、上方規制部137と、下方規制部138を有する点は、実施例4に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ201と同様である。
【0176】
図27(B)、(C)に示すように、実施例5に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ202によれば、小さな上下方向規制部材136を用いて、圧電アクチュエータ110の落下対策を行うことができ、全体を小さく構成しつつ、落下衝撃を適切に行うことができる。
【実施例6】
【0177】
図28は、本発明の実施例6に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ203の構成の一例を示した斜視図である。図28(A)は、実施例6に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ203の全体構成の一例を示す斜視図であり、図28(B)は、実施例6に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ203の分解斜視図の一例であり、図28(C)は、実施例6に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ203の断面構成斜視図の一例である。
【0178】
図28(A)、(B)に示すように、実施例6に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ203においても、パッケージ140に圧電アクチュエータ110が収容され、上面を封止ガラス150が覆っている構成は、実施例1、4及び5に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ200と同様である。よって、実施例1、4及び5と同様の構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0179】
図28(B)に示すように、実施例6に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ203は、封止ガラス150に取り付ける上方規制部材121と、パッケージ140に取り付ける下方規制部材139とを有する点で、実施例1、4及び5に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ203と異なる。このように、上方規制部材121は、封止ガラス150に取り付けるように構成してもよい。
【0180】
また、図28(B)、(C)に示すように、上方規制部材121及び下方規制部材139の双方とも、厚みを有する直線上の部材であって、簡素な構成を有しており、規制部材121,139の加工は極めて容易である。
【0181】
このように、実施例6に係るパッケージングされた圧電アクチュエータ203によれば、簡素な構成で加工容易な上方規制部材121及び下方規制部材139を用いることにより、確実に落下防止対策を行うことができる。
【実施例7】
【0182】
図29は、本発明の実施例7に係る光走査装置、例えばプロジェクタ300の構成の一例を示した図である。実施例7においては、実施例1〜6において説明した圧電アクチュエータ110〜112、200〜203をプロジェクタ300に適用した例について説明する。
【0183】
図29において、実施例7に係るプロジェクタ300は、圧電ミラー205と、レーザダイオード210と、コリメータレンズ220と、偏光ビームスプリッタ230と、1/4波長板240と、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)250と、レーザダイオードドライバIC(Integrated Circuit、集積回路)260と、圧電ミラードライバIC270とを有する。また、図29において、関連構成要素として、スクリーン310が示されている。
【0184】
プロジェクタ300は、スクリーン310に映像を投影して映し出す装置である。本実施例に係る圧電アクチュエータ110〜112、200〜203は、2軸駆動の圧電ミラー205として構成され、プロジェクタ300に適用され得る。
【0185】
レーザダイオード210は、レーザ光を発射する光源である。レーザダイオード210から発射されるレーザ光は、発散光であってよい。
【0186】
コリメータレンズ220は、発散光を平行光に変換する手段である。レーザダイオード210から発散光が入射されても、コリメータレンズ220でレーザ光の成分方を揃えることができる。
【0187】
偏光ビームスプリッタ230は、P偏光(又はS偏光)を反射し、S偏光(又はP偏光)を透過する偏光膜が形成されているビーム分離手段である。ここで、P偏光は、光の入射面内で振動する光の成分であり、S偏光は、光の入射面に垂直に振動する光の成分である。つまり、偏光ビームスプリッタ230は、P偏光及びS偏光の一方を反射し、他方を透過する。
【0188】
よって、コリメータレンズ220からの平行光(P偏光)は、偏光ビームスプリッタ230により、2軸圧電ミラー205側に全反射される。偏光ビームスプリッタ230は、光を圧電ミラー205の方向に導く導光手段として機能する。
【0189】
1/4波長板240は、光にπ/2(90度)の位相差を発生させる位相差発生手段である。1/4波長板240は、直線偏光を円偏光に変換するとともに、円偏光を直線偏光に変換する。また、1/4波長板240は、偏光ビームスプリッタ230と一体的に構成されてもよい。
【0190】
偏光ビームスプリッタ230で反射されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ230に一体構成された1/4波長板240を透過して、圧電ミラー205に向かう。
【0191】
圧電ミラー205は、ミラー31を2軸駆動させ、1/4波長板240からのレーザ光を反射する。圧電ミラー205で反射されたレーザ光は、再び1/4波長板240を透過してS偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ230を透過し、スクリーン310に照射される。
【0192】
CPU250は、レーザダイオードドライバIC260及び圧電ミラードライバIC270を制御する手段である。レーザダイオードドライバIC260は、レーザダイオード210を駆動する手段である。圧電ミラードライバIC270は、圧電ミラー205を駆動する手段である。
【0193】
CPU250は、レーザドライバIC260を制御し、レーザダイオード210を駆動する。また、CPU250は、圧電ミラードライバ270を制御し、圧電ミラー205のX軸周り、Y軸周りの傾動動作を制御する。圧電ミラー205が傾動動作することにより、圧電ミラー205のミラー31で反射した光をスクリーン310上に走査させ、スクリーン310上に映像が形成される。
【0194】
このように、本実施例に係る圧電アクチュエータ110〜112、200〜204は、プロジェクタ300用の圧電ミラー205として好適に適用することができ、省電力で安定してミラー31を2軸駆動させ、映像を映し出すことができる。
【0195】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0196】
特に、実施例1乃至7においては、2軸型の圧電アクチュエータ110、111、112、200、201、202、203、205について説明したが、実施例1において説明したように、低速駆動又は高速駆動のみを行う1軸型の圧電アクチュエータにも適用することができる。また、2軸型の圧電アクチュエータであっても、高速駆動又は低速駆動の1軸についてのみ、本実施例に係る圧電アクチュエータ110〜112、200〜203、205の構成及び機能を適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明は、ミラー等の駆動対象物を傾動駆動させて光線等の走査を行わせる小型のアクチュエータ及びこれを用いたプロジェクタ、スキャナ等に利用することができる。
【符号の説明】
【0198】
10 半導体ウェハ
11 Si支持層
12、14 SiO
13 Si活性層
15 梁
20 駆動源
21 圧電素子
22 圧電薄膜
23、24 電極
30、60 駆動対象物
31 ミラー
40 弾性連結部材
41、44 第1ばね
42 第2ばね
43 ばね連結部
45、46 連結箇所
50 第2の駆動源
55 高速駆動部
70 可動枠
71 錘部
72 連結部
73、74 錘部突起
80 蛇行ばね
90、92 駆動梁
91 空隙
93 駆動梁群
100 固定枠
110、111、112 圧電アクチュエータ
120、121、 上方規制部材
130、139 下方規制部材
131 接着剤溜まり
132 吊下部
133、136 上下方向規制部材
134、137 上方規制部
135、138 下方規制部
140 パッケージ
150 封止ガラス
200〜203、205 パッケージングされた圧電アクチュエータ
210 CPU
220、230 ドライバIC
240 レーザダイオード
250 コリメータレンズ
260 偏向ビームスプリッタ
270 1/4波長板
300 プロジェクタ
310 スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象物を軸周りに傾動駆動させる圧電アクチュエータであって、
前記軸の両側に配置された錘部と、前記軸と交差して延在し、前記錘部を連結する連結部とで前記駆動対象物を平面的に囲む環状構造を有し、前記駆動対象物が連結されて前記駆動対象物を連結支持する可動枠と、
弾性体に圧電薄膜が成膜された構造を有し、前記可動枠より外側に配置され、前記可動枠の前記連結部に前記軸周りの傾動力を付与するように連結された駆動梁と、を含むことを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記駆動梁は、軸方向の両側から前記可動枠を挟むように、前記軸に垂直な方向に延在して配置され、前記軸の両側で対となる前記駆動梁が互いに逆方向に変位する電圧が印加されることを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記駆動梁と前記連結部とは、隣接する梁が間隔を有して蛇行する蛇行ばねで連結されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記蛇行ばねの隣接する間隔は、前記蛇行ばねの変形量又は前記蛇行ばねに加わる応力分布に応じて定められ、変形量が大きい又は応力の大きく加わる箇所の間隔が、変形量が小さい又は応力が小さく加わる箇所の間隔よりも広い不等間隔であることを特徴とする請求項3に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記蛇行ばねの隣接する間隔は、前記蛇行ばねの前記可動枠に連結された箇所及び前記駆動梁に連結された箇所に最も近い蛇行部分が、前記蛇行ばねの中央側の箇所の蛇行部分よりも狭いことを特徴とする請求項4に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記駆動梁は、共振駆動されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
前記可動枠及び前記駆動梁を平面的に囲む固定枠を有し、
前記可動枠は、前記固定枠と同じ厚さで形成され、
前記駆動梁は、前記固定枠よりも薄く形成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項8】
前記固定枠には、前記可動枠の水平方向の可動範囲を規制する突起が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項9】
前記駆動対象物は、前記可動枠の前記連結部に、弾性体に圧電薄膜が成膜された構造の第2の駆動梁を介して連結され、
該第2の駆動梁は、前記軸と異なる第2の軸周りに前記駆動対象物を傾動させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項10】
前記駆動対象物と前記第2の駆動梁とは、梁構造の弾性体を含む弾性連結部材で連結されたことを特徴とする請求項9に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項11】
前記可動枠の上下方向の可動範囲を規制する上下方向規制部品を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項12】
前記駆動対象物は、ミラーであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項13】
請求項12に記載の圧電アクチュエータと、
光を発射する光源と、
該光源から発射された前記光を前記圧電アクチュエータに導く導光手段とを備え、
前記圧電アクチュエータのミラーを傾動駆動させることにより、該ミラーにより反射された前記光を走査させることを特徴とする光走査装置。
【請求項14】
前記光をスクリーン上に走査させ、該スクリーン上に映像を形成することを特徴とする請求項13に記載の光走査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate


【公開番号】特開2011−61881(P2011−61881A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205313(P2009−205313)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】