説明

圧電デバイス、および電子機器

【課題】振動腕部の振動が基部側に振動漏れすることを防ぎ、振動腕部の振動を安定させた圧電振動片を得る。
【解決手段】振動腕部3の腕幅Wより大きく、2本の振動腕部3の間隔Pより小さい腕幅W1を有した腕付根部4とを備えて、腕付根部4が振動腕部3の腕幅Wより広い部分を一定長さ有することで、振動腕部3に剛性を持たせるので、振動腕部3の振動が基部2側に漏れることを防ぎ、振動腕部3の振動、および水晶振動片1の振動周波数を安定させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片を用いた圧電デバイス、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電振動片の振動腕部は、基部から延びて形成されている。そして、振動腕部と基部との結合部に、応力集中を起こすことを防ぎ、振動腕部の振動を安定させるために、テーパー部(縮幅部)を形成している(たとえば、特許文献1および2参照)。また、振動腕部の腕幅が、振動腕部から基部にかけて徐々に腕幅が拡幅して形成された圧電振動片が開示されている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−5896号公報(5頁〜7頁、図1〜5)
【特許文献2】特開2006−311090号公報(6頁〜7頁、図3)
【特許文献3】特開2009−27711号公報(5頁〜6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、テーパー部(縮幅部)が振動腕部と基部との間に形成された場合、および振動腕部が基部にかけて徐々に腕幅が拡幅して形成された場合においては、振動腕部の振動が基部側に振動漏れを起こしてしまい、振動腕部の振動を安定させた圧電振動片を得ることが困難である。したがって、この圧電振動片を用いた圧電デバイスにおいても振動を安定させた圧電デバイスを得ることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例により実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる圧電デバイスは、振動片と、前記振動片と電気的に接続された駆動回路と、を有し、前記振動片は、圧電材料により形成された基部と、前記基部から腕付根部を介して延設された複数の振動腕部と、を備え、前記振動腕部の長手方向に沿って長溝部が設けられており、前記腕付根部は、前記振動腕部の腕幅より大きく、複数の前記振動腕部における前記振動腕部の幅方向のそれぞれの仮想中心線間の距離より小さい腕幅を有することを特徴とする。
【0007】
これによれば、振動腕部の腕幅より大きく、複数の前記振動腕部における前記振動腕部の幅方向のそれぞれの仮想中心線間の距離より小さい腕幅を有した腕付根部とを備えて、腕付根部が振動腕部の腕幅より広い部分を一定長さ有することで、振動腕部に剛性を持たせるので、振動腕部の振動が基部側に漏れることを防ぎ、振動腕部の振動、および圧電振動片の振動周波数を安定させた圧電デバイスを提供することができる。
さらに、本適用例に記載の圧電デバイスは、上記振動片と電気的に接続された駆動回路を備えているため、比較的簡単かつ安価に、所望の振動特性を得ることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる圧電デバイスにおいて、前記腕付根部と前記振動腕部との間に、第1拡幅部を備えることが好ましい。
【0009】
これによれば、腕付根部の腕幅と振動腕部の腕幅との違いにより、圧電材料のエッチング異方性による非対称性が発生するが、腕付根部の腕幅と振動腕部の腕幅との違いを、第1拡幅部の腕幅を振動腕部の腕幅から腕付根部の腕幅へと徐々に拡幅させることにより、圧電材料の異方性によるエッチングの非対称性を抑制する。これにより、振動腕部と腕付根部との間において、振動方向(振幅方向)に対して対称性を持たせることができる。このようにして、複数の振動腕部の間でバランスを維持することができ、圧電振動片の振動特性を安定させることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる圧電デバイスにおいて、前記基部と前記腕付根部との間に、第2拡幅部を備えることが好ましい。
【0011】
これによれば、基部と腕付根部との間において、圧電材料のエッチング異方性による非対称性が発生するが、基部と腕付根部との間において、第2拡幅部の腕幅を腕付根部の腕幅から基部へと徐々に拡幅させることにより、圧電材料の異方性によるエッチングの非対称性を抑制する。これにより、基部と腕付根部との間において、振動方向(振幅方向)に対して対称性を持たせることができる。このようにして、複数の振動腕部の間でバランスを維持することができ、圧電振動片の振動特性を安定させることができる。
【0012】
[適用例4]本適用例にかかる電子機器は、上記適用例のいずれかに記載の圧電デバイスを備えていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、振動腕部の振動が基部側に漏れることを防ぎ、振動腕部の振動、および圧電振動片の振動周波数を安定させた圧電デバイスを用いているため、安定した特性を有する電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態の水晶振動片を示す概略構成図。
【図2】第1実施形態の腕付根部に関する変形例を示す概略平面図。
【図3】第2実施形態の水晶振動子を示す概略構成図。
【図4】第3実施形態の水晶発振器を示す概略断面図。
【図5】本発明に係る電子機器の一例としての携帯電話機の概略を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る電子機器の一例としての携帯電話機の回路ブロック図である。
【図7】本発明に係る電子機器の一例としてのパーソナルコンピューターの概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の実施形態では、圧電振動片として圧電材料である水晶を用いた水晶振動片および、圧電デバイスとして水晶振動片を用いた水晶デバイスを一例に挙げて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、図1を参照して説明する。
図1(a)は、第1実施形態の水晶振動片を示す概略平面図である。図1(b)は、図1(a)の部分拡大図である。図1(c)は、図1(a)のA−A断面図である。
【0017】
図1(a)に示すように、水晶振動片1は、水晶柱の光軸であるZ軸と、Z軸に垂直な電気軸であるX軸と、X軸に垂直な機械軸であるY軸とを有し、X−Y平面を、X軸とY軸との交点(座標原点)からみてX軸回りに角度0度から5度傾けた平面に沿う水晶Z板から切り出されたものであり、図1に示すように、基部2の幅方向がX軸、振動腕部3の長手方向がY’軸方向、水晶振動片1の厚さ方向がZ’軸方向である。
そして、水晶振動片1は、基部2と、2本の振動腕部3と、腕付根部4と、先端錘部5と、長溝部6と、錘拡幅部8と、接続部11と、支持部12とを備えている。
【0018】
接続部11は、基部2から延びて形成されている。支持部12は、接続部11から延びて形成されている。接続部11の図示上下方向の寸法は、基部2および支持部12の図示上下方向の寸法に比べ小さく形成されている。これにより、基部2と支持部12との間に、切込部13が形成されている。
【0019】
2本の振動腕部3は、基部2から、互いに平行に延びて腕幅Wに形成されている。なお、ここで述べた互いに平行とは、振動腕部3のそれぞれの延伸方向が平行となっている状態を言う。腕付根部4は、振動腕部3の腕幅Wより大きい腕幅W1を有して、基部2側に形成されている。2本の振動腕部3は間隔Pで配置されている。
先端錘部5は、振動腕部3の腕幅Wより大きい腕幅を有して、振動腕部3の先端に形成されている。振動腕部3、腕付根部4、および先端錘部5は、図1(a)にB−Bで示す一点鎖線に関して対称に形成されている。
振動腕部3と先端錘部5との間には、振動腕部3の腕幅Wから先端錘部5の腕幅へと徐々に腕幅を拡幅する錘拡幅部8が形成されている。
【0020】
図1(b)に示すように、振動腕部3と腕付根部4との間には、振動腕部3の腕幅Wから腕付根部4の腕幅W1へと徐々に腕幅を拡幅するように振動腕部3から延設された第1拡幅部7が形成されている。
腕付根部4と基部2との間には、腕付根部4の腕幅W1から基部2へと徐々に腕幅を拡幅する第2拡幅部9が形成されている。換言すれば、振動腕部3は、腕付根部4を介して基部2に延設されている。詳述すると、振動腕部3は、第1拡幅部7から腕幅W1を有する腕付根部4に延設され、さらに腕付根部4から第2拡幅部9を介して基部2に延設されている。
【0021】
本実施形態では、腕幅Wおよび腕幅W1のそれぞれの1/2の位置が、図1(b)に一点鎖線3aで示す直線上に並ぶように配置されている。言い換えると、振動腕部3および腕付根部4は、図1(b)に示す一点鎖線3aに関して対称に形成されている。
【0022】
そして、先端錘部5は、図1(a)でB−Bで示す一点鎖線3a,3bに関して対称に形成されているため、先端錘部5の腕幅は、振動腕部3の間隔P未満の値である。換言すると、先端錘部5の腕幅は、一方の振動腕部3の仮想中心線である一点鎖線3aと他方の振動腕3の仮想中心線である一点鎖線3bとの間の距離(図では間隔Pで示している)未満の値である。
【0023】
長溝部6は、振動腕部3の長手方向に沿って形成されている。長溝部6は、図1(c)に示すように、腕幅Wを有する面にそれぞれ形成されている。
【0024】
図1(c)に示すように、振動腕部3および長溝部6に、励振電極14a,14bが形成されている。そして、励振電極14a,14bの配置は、図示左側および右側の振動腕部3および長溝部6において、逆の配置となっている。つまり、図示左側の長溝部6において、励振電極14aが配置されているが、図示右側の長溝部6において、励振電極14bが配置されている。そして、図示左側の振動腕部3において、励振電極14bが配置されているが、図示右側の振動腕部3において、励振電極14aが配置されている。
励振電極14aと励振電極14bとの間に電流を流すことにより電界が発生して、振動腕部3は、図1(a)に一点鎖線矢印および破線矢印で示すように、圧電効果により振動し、水晶振動片1は駆動する。
【0025】
本実施形態によれば、振動腕部3の腕幅Wより大きく、2本の振動腕部3の間隔Pより小さい腕幅W1を有した腕付根部4とを備えて、腕付根部4が振動腕部3の腕幅Wより広い部分を一定長さ有することで、振動腕部3に剛性を持たせるので、振動腕部3の振動が基部2側に漏れることを防ぎ、振動腕部3の振動、および水晶振動片1の振動周波数を安定させることができる。
【0026】
そして、腕付根部4の腕幅W1と振動腕部3の腕幅Wとの違いにより、圧電材料のエッチング異方性による非対称性が発生するが、腕付根部4の腕幅W1と振動腕部3の腕幅Wとの違いを、第1拡幅部7の腕幅を振動腕部3の腕幅Wから腕付根部4の腕幅W1へと徐々に拡幅させることにより、圧電材料の異方性によるエッチングの非対称性を抑制する。これにより、振動腕部3と腕付根部4との間において、振動方向(振幅方向)に対して対称性を持たせることができる。このようにして、2本の振動腕部3の間でバランスを維持することができ、水晶振動片1の振動特性を安定させることができる。
【0027】
また、基部2と腕付根部4との間において、圧電材料のエッチング異方性による非対称性が発生するが、基部2と腕付根部4との間において、第2拡幅部9の腕幅を腕付根部4の腕幅から基部2へと徐々に拡幅させることにより、圧電材料の異方性によるエッチングの非対称性を抑制する。これにより、腕付根部4と第2拡幅部9との間において、振動方向(振幅方向)に対して対称性を持たせることができる。このようにして、2本の振動腕部3の間でバランスを維持することができ、水晶振動片1の振動特性を安定させることができる。
【0028】
以下、第1実施形態における腕付根部4に関する変形例について、図2を参照して説明する。
(変形例1)
図2(a)に変形例1を示す。図2(a)に示すように、変形例1の腕付根部4は、一点鎖線3aに関して対称に形成されていない。
腕付根部4の腕幅W1の一端は、振動腕部3の腕幅Wの一端と一直線に形成されている。
【0029】
(変形例2)
図2(b)に変形例2を示す。図2(b)に示すように、変形例2の腕付根部4は、基部2側に、第3拡幅部19および腕幅W2の付根部29を備えている。腕付根部4および付根部29は、一点鎖線3aに関して対称に形成されている。
【0030】
また、変形例2において腕付根部4および付根部29は、一点鎖線3aに関して対称に形成されているとしたが、これに限定されるものではなく、図2(c)に示すように、腕付根部4および付根部29の両方が、一点鎖線3aに関して対称に形成されていないとしてもよい。
さらには、腕付根部4または付根部29の一方が一点鎖線3aに関して対称に形成されていないとし、他方が一点鎖線3aに関して対称に形成されているとしてもよい。
【0031】
また、変形例2は、振動腕部3と基部2との間に、第1拡幅部7、第2拡幅部9、および第3拡幅部19の3つの拡幅部が形成されているが、4つ以上の拡幅部を形成してもよい。
【0032】
(変形例3)
図2(d)に変形例3を示す。図2(d)に示すように、変形例3の腕付根部4は、変形例2と同様に、一点鎖線3aに関して対称に形成されているが、付根部29は、一点鎖線3aに関して対称に形成されていない。腕付根部4の腕幅W1の一端は、付根部29の腕幅W2の一端と一直線に形成され、振動腕部3の腕幅Wとは一直線に形成されていない。
【0033】
また、変形例3は、付根部29は、一点鎖線3aに関して対称に形成されていないとしたが、これに限定されるものではなく、付根部29が一点鎖線3aに関して対称に形成され、腕付根部4が一点鎖線3aに関して対称に形成されていないとしてもよい。
【0034】
(変形例4)
図2(e)に変形例4を示す。図2(e)に示すように、変形例4の腕付根部4および付根部29は、一点鎖線3aに関して対称に形成されていない。腕付根部4の腕幅W1の一端、および付根部29の腕幅W2の一端は、振動腕部3の腕幅Wの一端と一直線に形成されている。
【0035】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、図3を参照して説明する。
第2実施形態の水晶デバイスは、図1に示した第1実施形態の水晶振動片を用いた水晶振動子であり、同様の構成については、同一の符号を付与し、構成の説明を省略する。
【0036】
図3(a)は、第2実施形態の水晶振動子を示す概略平面図である。図3(b)は、図3(a)のC−C断面図である。
第2実施形態の水晶振動子が、第1実施形態の水晶振動片と相違する点は、水晶振動子が収納されるパッケージを備えることである。
【0037】
図3に示すように、水晶振動子20は、水晶振動片1と、パッケージ21とを備えている。水晶振動片1は、パッケージ21内に気密に収納されている。パッケージ21は、ベース23と、蓋体22とを備えている。
ベース23は、ベース基板15と、積層基板16,17と、接合部18と、導通固定部25a,25bと、外部接続端子26と、収納室27とを備えている。
【0038】
ベース23は、ベース基板15に積層基板16,17を順に積層し、積層基板16,17上に金属、ロウ剤、またはガラスなどからなる接合部18を形成している。ベース基板15および積層基板16,17は、たとえば絶縁材料である酸化アルミニウム質からなるセラミックシートから形成されている。収納室27は、積層基板16,17が収納室27の形状に合わせて刳り貫かれ、ベース基板15に積層し、その後、焼結されることにより形成される。
【0039】
突出部24は、ベース基板15が収納室27内に延びて、2個備えている。突出部24上には、導通固定部25a,25bが形成されている。導通固定部25a,25bは、たとえばタングステンメタライズ、ニッケルメッキ、および金メッキの順に形成される。
【0040】
外部接続端子26は、2個備え、ベース23の外側であるベース基板15の下面、つまり収納室27と対向する面に、形成されている。外部接続端子26は、ベース基板15の下面に、たとえばタングステンメタライズ、ニッケルメッキ、および金メッキの順に形成することにより得られる。
そして、外部接続端子26は、たとえばベース基板15に配線(図示省略)が施され、導通固定部25と電気的に接続されている。
【0041】
水晶振動片1の支持部12に、それぞれマウント電極(図示省略)が形成され、それぞれ励振電極14a,14bに接続されている。導電性接着剤28により水晶振動片1が導通固定部25に固定され、ベース23に形成された収納室27内に設置されている。このようにして、励振電極14a,14bは、導通固定部25a,25bにそれぞれ電気的に接続され、外部接続端子26にそれぞれ電気的に接続されている。
導電性接着剤28は、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、またはポリイミド系樹脂などからなり、銀(Ag)またはプラチナ(Pt)などの導電性粉末が配合されている。
【0042】
ベース23は、接合部18によって、蓋体22に接合されている。このようにして、ベース23と蓋体22とによって、収納室27内に水晶振動片1が気密に封止されている。
蓋体22は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの金属、またはこれら金属を配合した合金、または酸化アルミニウム質などからなるセラミック、あるいはガラスで形成されている。
【0043】
本実施形態によれば、振動腕部3の腕幅Wより大きく、2本の振動腕部3の間隔Pより小さい腕幅W1を有した腕付根部4とを備えて、腕付根部4が振動腕部3の腕幅より広い部分を一定長さ有することで、振動腕部3に剛性を持たせるので、振動腕部3の振動が基部2側に漏れることを防ぎ、振動腕部3の振動、および水晶振動片1の振動周波数を安定させた水晶振動子20を得ることができる。
【0044】
そして、腕付根部4の腕幅と振動腕部3の腕幅との違いにより、圧電材料のエッチング異方性による非対称性が発生するが、腕付根部4の腕幅と振動腕部3の腕幅との違いを、第1拡幅部7の腕幅を振動腕部3の腕幅から腕付根部4の腕幅へと徐々に拡幅させることにより、圧電材料の異方性によるエッチングの非対称性を抑制する。これにより、振動腕部3と腕付根部4との間において、振動方向(振幅方向)に対して対称性を持たせることができる。このようにして、2本の振動腕部3の間でバランスを維持することができ、水晶振動片1の振動特性を安定させた水晶振動子20を得ることができる。
【0045】
また、基部2と腕付根部4との間において、圧電材料のエッチング異方性による非対称性が発生するが、基部2と腕付根部4との間において、第2拡幅部9の腕幅を腕付根部4の腕幅から基部2へと徐々に拡幅させることにより、圧電材料の異方性によるエッチングの非対称性を抑制する。これにより、腕付根部4と第2拡幅部9との間において、振動方向(振幅方向)に対して対称性を持たせることができる。このようにして、2本の振動腕部3の間でバランスを維持することができ、水晶振動片1の振動特性を安定させた水晶振動子20を得ることができる。
【0046】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、図4を参照して説明する。
第3実施形態の水晶デバイスは、図1に示した第1実施形態の水晶振動片を用いた水晶発振器であり、同様の構成については、同一の符号を付与し、構成の説明を省略する。
【0047】
第3実施形態の水晶発振器が、第2実施形態の水晶振動子と相違する点は、水晶振動子と電気的に接続されて水晶振動子を駆動させる駆動回路を備えることである。
【0048】
図4に示すように、水晶発振器30は、水晶振動片1と、パッケージ21と、駆動回路31とを備えている。水晶振動片1および駆動回路31は、パッケージ21内に気密に収納されている。パッケージ21は、ベース23と、蓋体22とを備えている。
【0049】
ベース23は、積層基板34を備えている。ベース基板15上に積層基板34,16,17を順に積層して形成され、積層基板17上には、金属、ロウ剤、またはガラスなどからなる接合部18が形成されている。
【0050】
駆動回路31は、ベース基板15上にダイアタッチされ、ボンディングワイヤー32により内部接続端子33に接続されている。
【0051】
導通固定部25は、収納室27内の積層基板16の突出部24上に形成されている。
内部接続端子33は、複数個備え、ベース23の内側であるベース基板15の上面、つまり収納室27内に形成されている。内部接続端子33は、ベース基板15の上面に、たとえばタングステンメタライズ、ニッケルメッキ、および金メッキの順に形成することにより得られる。
そして、内部接続端子33は、たとえばベース基板15に配線(図示省略)が施され、導通固定部25と外部接続端子26と電気的に接続されている。
【0052】
本実施形態によれば、振動腕部3の腕幅Wより大きく、2本の振動腕部3の間隔Pより小さい腕幅W1を有した腕付根部4とを備えて、腕付根部4が振動腕部3の腕幅より広い部分を一定長さ有することで、振動腕部3に剛性を持たせるので、振動腕部3の振動が基部2側に漏れることを防ぎ、振動腕部3の振動、および水晶振動片1の振動周波数を安定させた水晶発振器30を得ることができる。
【0053】
そして、腕付根部4の腕幅と振動腕部3の腕幅との違いにより、圧電材料のエッチング異方性による非対称性が発生するが、腕付根部4の腕幅と振動腕部3の腕幅との違いを、第1拡幅部7の腕幅を振動腕部3の腕幅から腕付根部4の腕幅へと徐々に拡幅させることにより、圧電材料の異方性によるエッチングの非対称性を抑制する。これにより、振動腕部3と腕付根部4との間において、振動方向(振幅方向)に対して対称性を持たせることができる。このようにして、2本の振動腕部3の間でバランスを維持することができ、水晶振動片1の振動特性を安定させた水晶発振器30を得ることができる。
【0054】
また、基部2と腕付根部4との間において、圧電材料のエッチング異方性による非対称性が発生するが、基部2と腕付根部4との間において、第2拡幅部9の腕幅を腕付根部4の腕幅から基部2へと徐々に拡幅させることにより、圧電材料の異方性によるエッチングの非対称性を抑制する。これにより、腕付根部4と第2拡幅部9との間において、振動方向(振幅方向)に対して対称性を持たせることができる。このようにして、2本の振動腕部3の間でバランスを維持することができ、水晶振動片1の振動特性を安定させた水晶発振器30を得ることができる。
【0055】
なお、上記課題の少なくとも一部を解決できる範囲での変形、改良などは前述の実施形態に含まれるものである。
【0056】
たとえば、水晶振動片は、第1拡幅部、第2拡幅部、および第3拡幅部を備えるとして説明したが、これに限るものではなく、第1拡幅部、第2拡幅部、および第3拡幅部のいずれかを備えないとしてもよく、あるいは第1拡幅部、第2拡幅部、および第3拡幅部を3つとも備えないとしてもよく、適宜選択することができる。
【0057】
そして、水晶振動片は、接続部と支持部と切込部とを備えているとして、説明したが、これに限るものではなく、支持部を備えない構成であってもよい。この場合、接続部または基部に、マウント電極を形成し、導電性接着剤により導通固定部に固定され電気的に接続される。あるいは、支持部と接続部と切込部とを備えない構成であってもよい。この場合、基部に、マウント電極を形成し、導電性接着剤により導通固定部に固定され電気的に接続される。
【0058】
また、図3および図4において、水晶振動片の厚み寸法(図示上下方向)を一定にして図示したが、これに限らず、振動腕部の厚み寸法に対して、水晶振動片を構成する基部および腕付根部などの厚みが異なっていてもよい。ただし、同一の名称および符号で示した水晶振動片を構成する振動腕部および腕付根部などはそれぞれ厚み寸法が異ならないことが好ましい。
【0059】
また、水晶振動子を収納するパッケージは、上述の実施形態に限定されることなく、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの金属、またはこれら金属を配合した合金からなるいわゆるシリンダータイプであってもよい。導電性接着剤は、はんだであってもよい。
【0060】
そして、圧電デバイスとして水晶振動子および水晶発振器を一例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、圧電振動ジャイロなどのセンサーであってもよい。そして、圧電材料の一例として水晶を用いて説明したが、これに限るものではなく、タンタル酸リチウム,ニオブ酸リチウムなどの圧電材料を利用することができる。
【0061】
また、圧電振動片の材料としては、水晶だけに限らず、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li247)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)などの圧電体であってもよい。
【0062】
《電子機器》
上記で説明した各実施形態の圧電デバイスとしての水晶振動子20および水晶発振器30は、各種の電子機器に適用することができ、得られる電子機器は、信頼性の高いものとなる。
図5、および図6は、本発明の電子機器の一例としての携帯電話機を示す。図5は、携帯電話機の外観の概略を示す斜視図であり、図6は、携帯電話機の回路を説明する回路ブロック図である。
【0063】
この携帯電話機300は、上述の水晶振動片1を用いた水晶発振器30を例として説明する。また、水晶振動片1および水晶発振器30の構成、作用については、その説明を省略する。なお、水晶発振器30に代えて水晶振動子20を用いてもよいが、この場合は、水晶振動子20と電気的に接続されて、少なくとも水晶振動子20を駆動する機能を有する駆動回路が備えられる。
【0064】
図5に示すように携帯電話機300は、表示部であるLCD(Liquid Crystal Display)301、数字等の入力部であるキー302、マイクロフォン303、スピーカー311、図示しない回路などが設けられている。
図6に示すように、携帯電話機300で送信する場合は、使用者が、自己の声をマイクロフォン303に入力すると、信号はパルス幅変調・符号化ブロック304と変調器/復調器ブロック305を経てトランスミッター306、アンテナスイッチ307を開始アンテナ308から送信されることになる。
【0065】
一方、他人の電話機から送信された信号は、アンテナ308で受信され、アンテナスイッチ307、受信フィルター309を経て、レシーバー310から変調器/復調器ブロック305に入力される。そして、変調又は復調された信号がパルス幅変調・符号化ブロック304を経てスピーカー311に声として出力されるようになっている。
このうち、アンテナスイッチ307や変調器/復調器ブロック305等を制御するためのコントローラー312が設けられている。
このコントローラー312は、上述の他に表示部であるLCD301や数字等の入力部であるキー302、更にはRAM313やROM314等も制御するため、高精度であることが求められる。また、携帯電話機300の小型化の要請もある。
このような要請に合致するものとして上述の水晶振動片1が用いられている。
なお、携帯電話機300は、他の構成ブロックとして、温度補償型水晶発振器レシーバー用シンセサイザー316、トランスミッター用シンセサイザー317などを有しているが説明を省略する。
【0066】
この携帯電話機300に用いられている上記水晶振動片1は、前述のように振動腕部3の振動が基部側に漏れることを防ぐことができるため振動周波数を安定させることができる。また、上記適用例に記載の圧電デバイスとしての水晶発振器30は、上記振動片と電気的に接続された駆動回路31を備えているため、小型且つ安定した振動特性を得ることができる。
従って、水晶振動片1、水晶振動子20、または水晶発振器30を用いている電子機器(携帯電話機300)は、特性の安定性を向上、維持させることが可能となる。
【0067】
本発明の水晶振動片1を備えた圧電発振器5が搭載される電子機器としては、図7に示すパーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)400も挙げられる。パーソナルコンピューター400は、表示部401、入力キー部402などを備えており、その電気的制御の基準クロックとして上述の水晶振動片1が用いられている。
また、本発明の水晶振動片1を備える電子機器としては、前述に加え、例えばディジタルスチールカメラ、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター等が挙げられる。
【0068】
以上、本発明の電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
例えば、前述した実施形態では、水晶振動片が振動部として2の振動腕を有する場合を例に説明したが、振動腕の数は、3つ以上であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態で説明した水晶振動片は、電圧制御水晶発振器(VCXO)、温度補償水晶発振器(TCXO)、恒温槽付水晶発振器(OCXO)等の圧電発振器の他、ジャイロセンサー等に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…水晶振動片、2…基部、3…振動腕部、4…腕付根部、5…先端錘部、6…長溝部、7…第1拡幅部、8…錘拡幅部、9…第2拡幅部、11…接続部、12…支持部、13…切込部、14a,14b…励振電極、15…ベース基板、16,17,34…積層基板、18…接合部、19…第3拡幅部、20…水晶振動子、21…パッケージ、22…蓋体、23…ベース、24…突出部、25…導通固定部、25a,25b…導通固定部、26…外部接続端子、27…収納室、28…導電性接着剤、29…付根部、30…水晶発振器、31…駆動回路、32…ボンディングワイヤー、33…内部接続端子、300…携帯電話機、400…パーソナルコンピューター、P…振動腕部の間隔、W…振動腕部の腕幅、W1…腕付根部の腕幅、W2…付根部の腕幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動片と、前記振動片と電気的に接続された駆動回路と、を有し、
前記振動片は、
圧電材料により形成された基部と、
前記基部から腕付根部を介して延設された複数の振動腕部と、
を備え、
前記振動腕部の長手方向に沿って長溝部が設けられており、
前記腕付根部は、前記振動腕部の腕幅より大きく、複数の前記振動腕部における前記振動腕部の幅方向のそれぞれの仮想中心線間の距離より小さい腕幅を有することを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電デバイスにおいて、
前記腕付根部と前記振動腕部との間に、第1拡幅部を備えることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電デバイスにおいて、
前記基部と前記腕付根部との間に、第2拡幅部を備えることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の圧電デバイスを備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−142667(P2012−142667A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292043(P2010−292043)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】