説明

圧電デバイスの製造方法

【課題】パッケージ内に圧電振動片を片持ち式に接合する圧電デバイスにおいて、圧電振動片の接合角度を確実に一定に揃えることを可能として、発振の不良を防止し、周波数調整が適切にされるようにした圧電デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】製造方法におけるマウント工程で、前記パッケージ37側に熱硬化性の接着剤43,43を塗布し、そのひとつの端部32aとは反対の端部32bを前記塗布された該接着剤の上に載置し、上方から磁界を作用させる治具20を前記圧電振動片32の上に配置して、該治具の磁界を前記圧電振動片の前記磁性金属に作用させて、前記ひとつの端部が上を向く傾斜状態とし、該傾斜状態を保持して前記硬化工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ内に圧電振動片を収容する構造の圧電デバイスの製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器等には圧電振動子、圧電発振器等の圧電デバイスが広く使用されている。
このような圧電デバイスは、例えば、パッケージ内に形成した電極部に導電性接着剤を塗布し、その上に引き出し電極を形成した圧電振動片の端部を載置して、該導電性接着剤を硬化させることにより、この圧電振動片を片持ち式に接合するものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような圧電デバイスでは、片持ち式に固定する圧電振動片の先端(自由端)が、例えば下を向いて、該先端をパッケージの内側底面に当接させたりすると、圧電デバイスに機械的な衝撃が加わることで圧電振動片の破損を生じることがあり、その発振が停止するなどの不都合が発生する虞がある。
このため、圧電デバイスの製造工程中の圧電振動片を接合する工程では、次のような工夫がなされている。
すなわち、パッケージの電極部に塗布した導電性接着剤の上面を平坦化し(特許文献1、図3参照)、さらには、この導電性接着剤の上に圧電振動片を載置する際に、下面が傾斜した治具により該圧電振動片を吸着し、予め、接合しない先端側を上に向けるように傾斜して載置するようにしている(同図4参照)。
これにより、導電性接着剤が硬化する迄の時間で、圧電振動片の先端は徐々に下降するが、圧電振動片が全体として、ほぼ水平となった状態で、硬化を完了させようとするものである。
【0004】
【特許文献1】特開2003−8381
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような技術を用いた場合でも、圧電振動片のマウント時の傾斜角度の管理が大変であり、あるいは導電性接着剤の粘度、塗布位置、塗布量など、多くの管理項目が適切に調整されなければ、導電性接着剤の硬化までの間に、圧電振動片の先端が下降して、パッケージの内側底面に当接してしまう。
あるいは、当接しない場合でも、圧電振動片が傾斜して接合され、その傾斜角度が製品によりバラツク可能性がある。
その場合には、製造工程の後段で外部からレーザー光を照射して行う周波数調整における焦点距離が、上記バラツキに応じて変わってしまい、チューニングが適切に行えないという問題も生じる。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、パッケージ内に圧電振動片を片持ち式に接合する圧電デバイスにおいて、圧電振動片の接合角度を確実に一定に揃えることを可能として、発振の不良を防止し、周波数調整が適切にされるようにした圧電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は、第1の発明によれば、 パッケージ内に圧電振動片を収容して、該パッケージを蓋体により気密に封止した圧電デバイスの製造方法であって、前記パッケージ、前記圧電振動片、前記蓋体を個々に形成する前工程と、前記パッケージ内部に接着剤を塗布して、その上に前記圧電振動片を載置し、前記接着剤を硬化させる硬化工程を経ることにより前記圧電振動片を前記パッケージに対して接合するマウント工程と、前記パッケージを前記蓋体で気密に封止する封止工程とを含んでおり、前記前工程では、ひとつの端部に予め磁性金属を配置した圧電振動片を形成し、前記マウント工程では、前記パッケージ側に接着剤を塗布し、前記ひとつの端部とは反対の端部を前記塗布された該接着剤の上に載置し、上方から磁界を作用させる治具を前記圧電振動片の上に配置して、該治具の磁界を前記圧電振動片の前記磁性金属に作用させて、前記圧電振動片の前記ひとつの端部が前記パッケージの内側底面に当接しない程度に、該ひとつの端部がほぼ水平ないし上を向く傾斜状態とし、該傾斜状態を保持して前記硬化工程を行う圧電デバイスの製造方法により、達成される。
【0008】
第1の発明の構成によれば、前記前工程では、ひとつの端部に予め磁性金属を配置した圧電振動片を形成するようにしている。つまり、圧電振動片のひとつの端部が、磁界が作用した場合に磁界により吸引されるようにしておく。
また、マウント工程では、通常と同様にパッケージの接合箇所に接着剤を塗布し、その上に圧電振動片の前記ひとつの端部と反対の端部を載置する。その状態で、前記治具により上方から磁界を作用させて該圧電振動片の前記ひとつの端部を吸引すると、該圧電振動片は前記ひとつの端部が上を向くように傾斜する。この状態で前記硬化工程を行うことにより、接着剤が硬化した時には、前記圧電振動片は前記傾斜姿勢を保持したまま強固に接合される。
これにより、本発明を適用することにより、どの圧電デバイスにおいても、内部の圧電振動片が同じ傾斜角度で接合できる。このため、傾斜角度のバラツキにより、周波数調整工程におけるレーザー光の焦点距離のバラツキが生じることがなく、均一に周波数調整することができ、周波数性能が安定する。
また、どの圧電デバイスにおいても、内部の圧電振動片が同じ傾斜角度で接合でき、先端が下降して、パッケージの内側底面に当接することが確実に防止できる。これにより、該当接による発振の停止という事態を確実に防止することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記治具の前記磁界が電磁石により生成されるようにし、前記硬化工程の間、前記電磁石に通電して前記圧電振動片の前記磁性金属を吸着するようにしたことを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、前記硬化工程の後で、前記治具を除去する際に、該治具の磁界が未だ圧電振動片に作用していると、その磁界の大きさによっては、接合の済んだ圧電振動片に無理な力を作用させて、破損などのおそれもある。そこで、電磁石を利用することにより、前記治具の除去の際などにその磁界を確実に切ると、そのような弊害がない。
【0010】
第3の発明は、第1または2のいずれかの発明の構成において、前記治具が前記パッケージに載置される蓋状の治具であり、該治具には位置決め部が形成されており、該位置決め部により前記パッケージと前記治具を配置した状態で、該治具の磁界が前記圧電振動片の前記磁性金属に適切に作用するようにしたことを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、前記治具が適切な位置にセットされるので、圧電振動片の接合工程における接合姿勢を確実に実現できる。
【0011】
第4の発明は、第1ないし3のいずれかの発明の構成において、前記治具が前記パッケージに載置される蓋状の治具であり、該治具を前記パッケージに対して配置した状態で、前記パッケージ内部と外部を連通する貫通孔が形成されており、前記硬化工程において、該貫通孔から前記パッケージ内のガスを外部に脱ガスすることを特徴とする。
第4の発明の構成によれば、前記硬化過程で、前記治具の貫通孔から適切に脱ガスされることにより、パッケージ内に有害なガスが残ることを極力減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1及び図2は、本発明のエッチング方法の実施形態としての製造方法を適用した圧電デバイスの実施の形態を示しており、図1はその概略平面図、図2は図1のB−B線概略断面図、図3は図1の圧電デバイスで用いる圧電振動片の概略斜視図である。
図において、圧電デバイス30は、圧電振動子を構成した例を示しており、圧電デバイス30は、パッケージ37内に圧電振動片32を収容している。パッケージ37は、例えば、後述するように、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成形して形成される複数の基板を積層した後、焼結して形成されている。
【0013】
すなわち、この実施形態では、パッケージ37は、図2に示すように、第1の基板55と第2の基板56とを積層して形成されており、第2の基板56の内側の材料を除去することで、内部空間Sのスペースを形成している。この内部空間Sが圧電振動片32を収容するための収容空間である。そして、第1の基板55が絶縁基体に相当し、この第1の基板55に圧電振動片32を接合している。
ここで、本実施形態では、箱状のパッケージ37を形成して、圧電振動片32を収容するようにしているが、例えば、絶縁基体として、1枚の基板を用意し、この1枚の基板に、第1の基板55の電極部と同様の電極部を形成して圧電振動片32を接合し、厚みの薄い箱状のリッドないしは蓋体をかぶせて封止して、全体として圧電振動片32を収容するためのパッケージを構成するようにしてもよい。
【0014】
パッケージ37の内部空間S内の図において左端部付近において、内部空間Sに露出して内側底部を構成する第1の基板55には、例えば、タングステンメタライズ上にニッケルメッキ及び金メッキで形成した電極部31,31が設けられている。
この電極部31,31は、図2に示す実装端子41,41と接続されており、外部から印加される駆動電圧を、圧電振動片32に供給するものである。具体的には、この実装端子41,41と電極部31,31は、パッケージ37外部をメタライズにより引き回したり、あるいは第1の基板55および第2の基板56の焼成前にタングステンメタライズ等を利用して形成した導電スルーホール等で接続することで形成できる。
この各電極部31,31の上には、熱硬化性の接着剤として、導電性接着剤43が塗布されて、圧電振動片32の基部51が接合されている。
【0015】
圧電振動片32は、例えば水晶で形成されており、水晶以外にもタンタル酸リチウム,ニオブ酸リチウム等の圧電材料を利用することができる。本実施形態の場合、圧電振動片32は、小型に形成して、必要な性能を得るために、特に図示する形状とされている。
すなわち、圧電振動片32は、パッケージ37側と固定される基部51と、この基部51を基端として、図において右方に向けて、二股に別れて平行に延びる一対の振動腕35,36を備えており、全体が音叉のような形状とされた、所謂、音叉型圧電振動片が利用されている。
【0016】
図3は、圧電振動片32の拡大斜視図である。図示されているように、ここで、各振動腕35,36には、励振電極を形成している。すなわち、振動腕35の表裏面には励振電極33が形成されており、振動腕36には励振電極34が形成されている。これらの励振電極33と励振電極34は互いに分離された異極の電極である。これにより、励振電極33,34に駆動電圧が印加されることによって、駆動時に、各振動腕の内部の電界効率を高めることができる。
【0017】
また、圧電振動片32の基部51の端部(図1では左端部)の幅方向両端付近には、上述したように、パッケージ37の電極部31,31と接続するための電極部として、引き出し電極33a,34aが形成されている。各引き出し電極33a,34aは、基部51の外縁を回り込んで、圧電振動片32の基部51の表裏に設けられている。これらの各引き出し電極33a,34aは、各励振電極33,34と接続されている。
【0018】
これにより、引き出し電極33a,34aから、励振電極33,34に駆動電圧が印加されることにより、各振動腕35,36内で電界が適切に形成され、振動腕35,36の各先端部が互いに接近したり離間したりするように駆動されて、所定の周波数で振動する。
なお、圧電振動片32としては、図示した音叉型のものに限らず、前記した圧電材料を矩形や正方形にカットしたものや、所謂コンベックスタイプ、メサ型、逆メサ型、円形にカットしたもの等の各種圧電振動片や、SAW素子、圧電材料で形成したジャイロセンサ素子等を使用することができる。
【0019】
パッケージ37の開放された上端には、蓋体40が接合されることにより、封止されている。蓋体40は、好ましくは、パッケージ37に封止固定した後で、図2に示すように、外部からレーザ光LBを圧電振動片32の金属被覆部もしくは励振電極の一部(図示せず)に照射して、質量削減方式により周波数調整を行うために、光を透過する材料,特に、薄板ガラスにより形成されている。ガラス材料としては、例えば、硼珪酸ガラスが使用される。
蓋体40が、ガラスにより形成される場合には、例えば、低融点ガラス等を利用した封止材(図示せず)を利用して、パッケージ37に固定される。
【0020】
(圧電デバイスの製造方法)
次に、圧電デバイス30の製造方法の実施形態を図4のフローチャートを参照しながら説明する。
(前工程)
圧電デバイス30の圧電振動片32と、パッケージ37と、蓋体40は、前工程としてそれぞれ別々に製造される(ST11)。
蓋体40の構造は上述の通りであり、透明なガラスで形成することが好ましい。蓋封止後の周波数調整を省略する場合には、金属材料として、例えばコバールなどを用いて、従来と同様の方法で作成することができる。
【0021】
パッケージ37は、例えば、所定の溶液中にセラミックパウダを分散させ、バインダを添加して生成される混練物をシート状の長いテープ形状に成形し、これを所定の長さにカットして得た、所謂グリーンシートを用意する。
このグリーンシートは、上述した第1の基板55と、第2の基板56とを形成するために共通して使用することができる。すなわち、グリーンシートを利用して、上述した第1の基板55と第2の基板56とをそれぞれ成形し、電極部や導電パターンに対応する箇所には、導電ペースト、例えば、タングステンメタライズを塗布する。そして、各基板を積層して焼成後に、タングステンメタライズを下地として、ニッケル、および金を順次メッキして、これら電極部や導電パターンを形成する。
パッケージ37は、上述したように、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートを成形して形成される複数の基板を積層した後、焼結して形成されている。成形の際には、複数の各基板は、その内側に所定の孔を形成することで、積層した場合に内側に所定の内部空間Sを形成する。
【0022】
圧電振動片32は、水晶ウエハなどを用いて、音叉型の圧電振動片32を形成する場合には、図3に示すX軸が電気軸、Y軸が機械軸及びZ軸が光軸となるように、圧電材料、例えば水晶の単結晶から該水晶ウエハが切り出されることになる。
また、水晶の単結晶から切り出す際、上述のX軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標系において、Z軸を中心に時計回りに数度の範囲で回転して切り出した水晶Z板を所定の厚みに切断研磨して得られる。
【0023】
次に、各振動腕および基部を含む外形に適合するように図示しないマスクパターンを、例えば耐蝕膜により形成し、フッ酸溶液等を用いたウエットエッチングにより、音叉型圧電振動片としての圧電振動片32の外形を形成する(図3参照)。
そして、振動腕にその長さ方向に沿った長溝を表裏にそれぞれ形成する場合には、この水晶ウエハに必要な耐蝕膜(図示せず)を設けてマスクとし、フッ酸溶液等を用いて、当該部分をハーフエッチングで形成する。
【0024】
次に、駆動電極としての励振電極を形成する。
すなわち、水晶ウエハの表裏両面に電極となる金属膜を成膜する。この金属膜は、例えば、ニッケルを下地として金を蒸着またはスパッタリング等の手法により形成する。
その後フォトリソグラフィの手法により、図1で説明したような各電極を形成する。なお、その後、周波数調整用の金属膜38,38となる金属膜も電極膜となる金属膜と同じ構造で同時に形成してもよい。
続いて、図1の圧電振動片32の振動腕35,36の各面に、フォトリソグラフィの手法により、励振電極を形成する。
【0025】
ここで、この工程をより詳しく説明すると、圧電振動片32は、そのひとつの端部、例えば、図3の32a,32aに予め磁性金属を配置しておく必要がある。この磁性金属は、それだけ独立の工程で形成してもよいし、励振電極の形成工程で一緒に形成してもよい。
例えば、圧電振動片32の少なくともひとつの端部32a,32aには、後述する周波数調整用の金属膜を形成しておき、該金属膜の例えば、下地金属を磁性金属とすることができる。例えば、この金属膜32a−1,32a−1は、下地としてニッケル(Ni)膜を成膜し、その上に金(Au)による被膜を形成することができる。これにより、圧電振動片のひとつの端部が、磁界が作用した場合に磁界により吸引されるようにしておく。なお、下地膜はニッケルに限らない、磁界に吸引される金属であれば、公知のものを用いることができる。
この工程に関連して、磁性金属および/または周波数調整用の金属膜の形成工程を励振電極の形成工程とともに行うようにしてもよい。
この場合には、上述したように、例えば、励振電極33,34の全体について、ニッケルを下地として金による電極膜を形成することにより、結果的に圧電振動片32は、少なくとも、そのひとつの端部に予め磁性金属を配置した構造としてもよい。
【0026】
(マウント工程)
以上の前工程を実行した後で、図5に示す工程により、完成した圧電振動片32の接合を行う(ST12)。
先ず、この工程で使う治具20について説明する。治具20は磁気吸着用の治具である。図示されているように、治具20は、例えば、磁気透過性の薄い板体でなる本体21と、該本体の所定位置に形成された保持部23と、本体21の下面に設けられた位置決め部24とを備えている。
【0027】
治具20の本体21は、例えば、アルミニウムやステンレス等の丈夫な磁気透過性の金属板で形成されており、パッケージ37の上端に載置できる大きさである。治具20の位置決め部24は例えば、その下面に突出する突起であり、横向きの段部もしくはストッパーとして機能することで、図示するようにパッケージ37の上端側縁に当接して、治具20を正しい位置に位置決めされるように案内することができる。
保持部23は、図示するように、例えば磁石25を着脱できる凹部などでなり、特に、パッケージ37に収容される圧電振動片32が正しい位置に接合された場合に、その「ひとつの端部」32aの真上となる位置に設けられる。
さらに、治具20の本体21には、複数の貫通孔22,22・・・・が形成されている。
【0028】
(接着剤塗布工程)
図5(a)は、上述のような治具20を用いた硬化工程を示している。
すなわち、先ず、パッケージ37の内側底面37aに形成されている電極部31,31(図1に示すように一対形成されている)の上に導電性接着剤43,43をそれぞれ塗布する。
この導電性接着剤43としては、接合力を発揮する接着剤成分(バインダー成分)としての熱硬化性の合成樹脂剤に、導電性のフィラー(銀製の細粒等の導電粒子を含む)および、所定の溶剤を含有させたものが使用できる。例えば、シリコーン系やポリイミド系の導電性接着剤が好適に使用できる。
【0029】
(マウントおよび接着剤の硬化工程)
そして、これら塗布した導電性接着剤43,43の上に圧電振動片32のひとつの端部32aとは反対の端部32bである基部51を載置し、軽く荷重をかける。この状態では、導電性接着剤43,43が硬化してないので、圧電振動片32のひとつの端部32aは下を向こうとする。
そこで、治具20を図5(a)に示すように、パッケージ37の上に、正しく位置決めして載置し、該治具20の保持部23には磁石25(永久磁石)を保持させておく。
これにより、磁石25の磁界が作用して、圧電振動片32のひとつの端部32aに形成されている図3で説明した磁性金属の金属膜32a−1,32a−1が吸引もしくは吸着される。その結果、図示するように、圧電振動片32は、ひとつの端部32aが上を向くようにされるので、この状態でベルト炉や加熱チャンバー等に移動させ、必要な加熱を行って、接着剤の硬化工程を実行する。
ここで、圧電振動片32のひとつの端部32aは必ずしも上を向く傾斜とならなくてもよく、該端部32aが少なくともパッケージ37の内側底部37aに当接することがない角度ならなんでもよく、例えば水平から図示の角度の範囲でその姿勢を保つようにされればよい。
この硬化工程では、主として導電性接着剤から有害なガスが生成されるが、治具20の貫通孔22から矢印に示すように、ガスが排出されるので、このようなガスが圧電振動片32に付着しにくく、周波数性能への影響が未然に防止される。
【0030】
導電性接着剤43が十分に硬化したら、図5(b)に示すように、保持部23から磁石25のみを外す。
つまり、上記した接着剤の硬化工程の後で、治具20自体を除去すると、その除去の際に、該治具20の磁界が未だ圧電振動片32に作用していると、その磁界の大きさによっては、接合の済んだ圧電振動片32に無理な力を作用させて、破損などのおそれもある。そこで、まず、磁石だけをとり去る。
続いて、図5(c)に示すように、治具20を取り去ることにより、パッケージ37内への圧電振動片32の接合が完了する。これにより、圧電振動片32は、図5(c)に示すように、一定の角度でひとつの端部32aを上に向けて傾斜させて接合されるので、圧電振動片32の先端部が下降して接合され、パッケージ37の内側底部37aに当接することで、発振が停止するという事態が有効に回避される。
【0031】
なお、磁石25は永久磁石ではなく、電磁石とすれば、上述のように磁石だけを除去する必要はない(図示せず)。治具20の除去の際に、電磁石への通電を切ると、硬化工程の後で、直ぐに治具20を除去することができ、製造効率が向上する。
【0032】
(蓋封止工程)
次いで、低融点ガラス、低融点金属などでなる所定のロウ材(図示せず)を配置したパッケージ37に、真空雰囲気下において、ガラス製の蓋体40を載置して、加熱する。これにより、パッケージ37を蓋体40により気密に封止する。
(周波数調整工程)
この蓋封止の後、図2に示すように、外部から周波数調整用のレーザー光LBをパッケージ37内に照射し、圧電振動片32の金属膜32a−1に当てる。これにより、該金属膜の一部を蒸散させて、質量削減方式による周波数調整(微調)を行うことができる。
この場合、本実施形態の製造工程を経た圧電デバイス30では、パッケージ37内の圧電振動片32が確実に同じ傾斜角度で接合されているので、周波数調整における図2のレーザ光LBの焦点距離が一定となるので、チューニング精度が向上し、周波数品質が向上する。
続いて、必要な検査を行い、圧電デバイス30が完成される。
なお、パッケージ37に予め貫通孔を形成しておき、蓋体の封止後に、該貫通孔を用いてパッケージ37内の脱ガスを行う孔封止工程を実行するようにしてもよい。
【0033】
本発明は上述の実施形態に限定されない。実施形態の各構成はこれらを適宜省略したり、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
上記実施例では、接着剤に熱硬化性のものを用いたが、紫外線硬化型の接着剤を用いた場合でも、本発明を適用することができる。この場合、治具20として紫外線を透過する性質を有するもの、例えばガラスなどを採用し、載置された治具20の上方から紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射して、接着剤の硬化を行えば良い。
また、この発明は、ケースもしくはパッケージや箱状の蓋体に被われるようにして、内部に圧電振動片を収容するものであれば、ジャイロセンサ、フィルタ、圧電振動子、圧電発振器等の名称にかかわらず、全ての圧電デバイスに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の圧電デバイスの実施形態を示す概略平面図。
【図2】図1のB−B線概略断面図。
【図3】図1の圧電デバイスに使用される圧電振動片の概略斜視図。
【図4】図1の圧電デバイスの製造方法の実施形態を示すフローチャート。
【図5】図1の圧電デバイスの製造方法の実施形態における主要な工程例を示す説明図。
【符号の説明】
【0035】
20・・・治具、24・・・位置決め部、25・・・磁石、30・・・圧電デバイス、32・・・圧電振動片、35,36・・・振動腕、31・・・電極部、55・・・第1の基板、56・・・第2の基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ内に圧電振動片を収容して、該パッケージを蓋体により気密に封止した圧電デバイスの製造方法であって、
前記パッケージ、前記圧電振動片、前記蓋体を個々に形成する前工程と、
前記パッケージ内部に接着剤を塗布して、その上に前記圧電振動片を載置し、前記接着剤を硬化させる硬化工程を経ることにより前記圧電振動片を前記パッケージに対して接合するマウント工程と、
前記パッケージを前記蓋体で気密に封止する封止工程と
を含んでおり、
前記前工程では、ひとつの端部に予め磁性金属を配置した圧電振動片を形成し、
前記マウント工程では、前記パッケージ側に接着剤を塗布し、前記ひとつの端部とは反対の端部を前記塗布された該接着剤の上に載置し、
上方から磁界を作用させる治具を前記圧電振動片の上に配置して、該治具の磁界を前記圧電振動片の前記磁性金属に作用させて、前記圧電振動片の前記ひとつの端部が前記パッケージの内側底面に当接しない程度に、該ひとつの端部がほぼ水平ないし上を向く傾斜状態とし、
該傾斜状態を保持して前記硬化工程を行う
ことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記治具の前記磁界が電磁石により生成されるようにし、前記硬化工程の間、前記電磁石に通電して前記圧電振動片の前記磁性金属を吸着するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記治具が前記パッケージに載置される蓋状の治具であり、該治具には位置決め部が形成されており、該位置決め部により前記パッケージと前記治具を配置した状態で、該治具の磁界が前記圧電振動片の前記磁性金属に適切に作用するようにしたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記治具が前記パッケージに載置される蓋状の治具であり、該治具を前記パッケージに対して配置した状態で、前記パッケージ内部と外部を連通する貫通孔が形成されており、前記硬化工程において、該貫通孔から前記パッケージ内のガスを外部に脱ガスすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧電デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−131059(P2008−131059A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309935(P2006−309935)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】