説明

圧電デバイス及び圧電デバイス用半導体部品

【課題】端子配置に関するユーザの要望に好適に応じることができる圧電デバイスを提供する。
【解決手段】発振器1は、圧電体15と、圧電体15を利用した信号処理を行う半導体部品17と、圧電体15及び半導体部品17を保持する基体3と、基体3に配置され、半導体部品17に接続された複数の端子5とを有する。複数の端子5は、3つの選択端子5(5A、5B及び5E)を含む。半導体部品17は、端子制御信号Sc0に基づいて、所定の入出力信号(第2発振信号Out2若しくは温度信号T、駆動制御信号E/D、又は、周波数調整信号Vcon)を出力又は受け付ける端子を3つの選択端子5から選択する設定部37を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振器等の圧電デバイス、及び、当該圧電デバイス用のIC等の半導体部品に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶発振器等の圧電デバイスは、高機能化が図られ、また、高機能化に伴って信号が入出力される端子の数も増加している。例えば、特許文献1では、端子から信号を入力することにより、発振信号を増幅する増幅回路のON/OFFを行ったり、振動子の周波数を変化させたりすることが可能な発振器が開示されている。また、例えば、特許文献2では、2つの発振信号を出力する2つの端子を有する発振器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−44608号公報
【特許文献2】特開2009−267887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような高機能化された圧電デバイスは、ユーザによって各機能に対応する端子の配置が異なる。従って、ユーザ毎に機能と端子の位置との対応関係が異なる圧電デバイスを製造するとすれば、多くの種類の圧電デバイス若しくは圧電デバイス用の半導体部品を製造しなければならず、膨大な開発時間及び開発費を要する。また、少量多品種になりやすいことから、生産性が低く、コスト削減が困難となる。
【0005】
本発明の目的は、端子配置に関するユーザの要望に好適に応じることができる圧電デバイス及び圧電デバイス用半導体部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る圧電デバイスは、圧電体と、前記圧電体を利用した信号処理を行う半導体部品と、前記圧電体及び前記半導体部品を保持する基体と、前記基体に配置され、前記半導体部品に接続された、第1所定数(ただし、当該第1所定数は2以上)の選択端子を含む複数の端子と、を有し、前記半導体部品は、端子制御信号に基づいて、所定の入出力信号を出力又は受け付ける端子を前記第1所定数の選択端子から選択する設定部を有する。
【0007】
好適には、前記設定部は、前記端子制御信号に基づいて、複数の前記入出力信号を前記第1所定数の選択端子に割り当てる。
【0008】
好適には、前記設定部は、前記端子制御信号に基づいて、第2所定数(ただし、当該第2所定数は2以上)の前記入出力信号から前記第1所定数以下且つ前記第2所定数未満の第3所定数の入出力信号を選択し、その選択した前記第3所定数の入出力信号を出力又は受け付ける端子を前記第1所定数の選択端子から選択する。
【0009】
好適には、前記半導体部品は、前記圧電体の振動に基づく第1発振信号を前記複数の端子のいずれかを介して出力可能な第1出力部と、前記圧電体の振動に基づく第2発振信号を前記複数の端子のいずれかを介して出力可能な第2出力部と、周囲の温度に応じた温度信号を出力可能な温度センサと、前記温度信号に基づいて、温度変化による前記圧電体の周波数変化を補償する温度補償回路と、を有し、前記第2所定数の入出力信号は、前記第2発振信号及び前記温度信号を含む。
【0010】
好適には、前記半導体部品は、前記温度補償回路に参照される補正データと、前記端子制御信号の生成において参照される制御データとを保持するメモリを有する。
【0011】
好適には、前記設定部は、前記端子制御信号に基づいて、選択された前記第3所定数の入出力信号、及び、選択・非選択がなされない第4所定数(ただし、前記第3所定数と前記第4所定数との和は前記第1所定数以下)の入出力信号を前記第1所定数の選択端子に割り当てる。
【0012】
好適には、前記第3所定数と前記第4所定数との和が前記第1所定数に等しい。
【0013】
好適には、前記半導体部品は、前記複数の端子のいずれかを介して入力された駆動制御信号に基づいて、前記圧電体の振動に基づく発振信号を増幅する増幅部への電力供給を許可又は禁止する駆動制御部と、前記複数の端子のいずれかを介して入力された周波数調整信号に基づいて、前記圧電体の周波数を変化させる周波数調整部と、を有し、前記第4所定数の入出力信号は、前記駆動制御信号及び前記周波数調整信号を含む。
【0014】
好適には、前記端子制御信号は、第1制御信号及び第2制御信号を含み、前記半導体部品は、前記第2所定数の入出力信号を出力又は受け付ける前記第2所定数の第1機能部と、前記第4所定数の入出力信号を出力又は受け付ける前記第4所定数の第2機能部と、を有し、前記設定部は、前記第3所定数の入出力信号を伝達する前記第3所定数の中間ラインと、前記第2所定数の第1機能部と、前記第3所定数の中間ラインとの接続を切り換えるスイッチ部と、前記第3所定数の中間ライン及び前記第4所定数の第2機能部と、前記第1所定数の選択端子との接続を切り換える選択部と、を有する。
【0015】
好適には、前記設定部は、前記複数の端子に含まれる、前記第1所定数の選択端子以外の第5所定数(ただし、第5所定数は1以上)の固定端子に対する入出力信号の割り当てを行わない。
【0016】
本発明の一態様の圧電デバイス用半導体部品は、圧電体を利用した信号処理を行う半導体部品であって、複数の端子と、端子制御信号に基づいて、所定の入出力信号を出力又は受け付ける端子を前記複数の端子から選択する設定部と、を有する。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成によれば、端子配置に関するユーザの要望に好適に応じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(a)及び図1(b)は本発明の実施形態に係る発振器の外観斜視図。
【図2】図1のII−II線の断面図。
【図3】図1の発振器の信号処理系の構成を示すブロック図。
【図4】図3の一部の詳細を示すブロック図。
【図5】制御データの内容と各端子に割り当てられる信号との関係を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る発振器について、図面を参照して説明する。
【0020】
なお、同様若しくは類似する構成については、同一の符号を付すことがある。この場合において、「端子5」を「第1端子5A」「第2端子5B」とするなど、名称の頭に数字を付すとともに、符号に大文字のアルファベットを付加して、同様若しくは互いに類似する構成を互いに区別することがある。
【0021】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る発振器1の外観斜視図であり、図1(b)は、図1(a)とは反対方向から見た発振器1の外観斜視図である。
【0022】
なお、発振器1は、いずれの方向が上方または下方とされてもよいものであるが、以下の実施形態では、便宜的に、直交座標系xyzを定義するとともに、z方向の正側を上方として、上面、下面等の語を用いることがあるものとする。
【0023】
発振器1は、例えば、基体3と、基体3から露出する第1端子5A〜第6端子5Fと、基体3から露出するデータ入力部7とを有している。
【0024】
基体3は、例えば、概ね薄型の直方体状に形成されている。複数の端子5は、例えば、基体3の下面3bにおいて、下面3bの外周に沿って配置されている。データ入力部7は、例えば、基体3の側面3cに配置されている。複数の端子5及びデータ入力部7は、例えば、基体3の表面に重ねられた導電層により形成されている。
【0025】
複数の端子5は、入力されるべき信号若しくは出力する信号が固定された第3端子5C、第4端子5D及び第6端子5F(以下、これら3つの端子を「固定端子5」ということがある。)と、入力されるべき信号若しくは出力する信号が適宜に変更される第1端子5A、第2端子5B及び第5端子5E(以下、これら3つの端子5を「選択端子5」ということがある。)とを含んでいる。具体的には、例えば、以下のとおりである。
【0026】
第3端子5Cは、基準電位(基準電位信号GND)が付与される端子であり、第6端子5Fは、基準電位とは異なる電位(駆動電位信号Vcc)が付与される端子である。すなわち、発振器1は、第3端子5C及び第6端子5Fを介して直流電力が供給される。
【0027】
第4端子5Dは、発振器1が生成する第1発振信号Out1を出力するための端子である。なお、第1発振信号Out1は、一定の周波数で電位が変化する波状(パルス状のものも含む)の信号である。
【0028】
選択端子5(5A、5B及び5E)それぞれに対しては、第2発振信号Out2及び温度信号Tのいずれか一方の信号、駆動制御信号E/D、及び、周波数調整信号Vconのいずれかが割り当てられる。
【0029】
第2発振信号Out2は、発振器1が生成する、一定の周波数で電位が変化する波状(パルス状のものも含む)の信号である。第2発振信号Out2は、第1発振信号Out1と、周波数、波形及び位相の全て若しくは一部が同一の信号であってもよいし、全てが異なる信号であってもよい。温度信号Tは、発振器1が生成する、発振器1の温度に係る情報を含む信号である。駆動制御信号E/Dは、発振器1からの第1発振信号Out1等の出力及びその停止を制御すべく発振器1に入力される信号である。周波数調整信号Vconは、第1発振信号Out1及び第2発振信号Out2の周波数を制御すべく、発振器1に入力される信号である。
【0030】
データ入力部7は、種々のデータを入力し、後述するメモリの内容を書き換えるための端子である。データ入力部7によって書き換えられるデータには、例えば、第2発振信号Out2及び温度信号Tのいずれを発振器1から出力するかを設定するデータ、第2発振信号Out2及び温度信号Tのいずれか一方の信号、駆動制御信号E/D、及び、周波数調整信号Vconのいずれの信号をいずれの選択端子5に割り当てるかを設定するデータが含まれる。
【0031】
図2は、図1(a)のII−II線における断面図である。
【0032】
基体3は、例えば、第1凹部9a及び第2凹部9bが形成された容器9と、第1凹部9aを塞ぐ蓋体11と、第2凹部9bに充填された樹脂部13とを有している。そして、第1凹部9aには振動子14が収容され、第2凹部9bには半導体部品17が収容されている。
【0033】
容器9は、特に図示しないが、例えば、セラミック等の絶縁材料からなる複数の基板をz方向に積層することにより構成されている。第1凹部9a及び第2凹部9bは、その基板に形成された開口により構成され、z方向の互いに逆方向に凹となっている。第1凹部9aの底面には、振動子14を実装するためのパッド20が形成されている。第2凹部9bの底面には、半導体部品17を実装するためのパッド23が形成されている。容器9の内部には、振動子14と半導体部品17との接続や半導体部品17と端子5との接続のための配線10が形成されている。
【0034】
蓋体11は、例えば、42アロイ等の金属からなる平板であり、不図示の封止材を介して容器9に接着されている。樹脂部13は、半導体部品17が第2凹部9bに実装された後に溶融状態の樹脂が充填され、硬化されることにより形成されている。なお、樹脂部13の第2凹部9bの底部からの高さは適宜に設定されてよい。
【0035】
振動子14は、平板状に形成された水晶等の圧電体15と、圧電体15の両主面に設けられた電極16とを有している。振動子14は、導電性接着剤19によってパッド20上に固定及び接続されている。
【0036】
半導体部品(集積回路素子)17は、例えば、その外形が概ね薄型の直方体状に形成されており、第2凹部9bの底面に対向する主面にパッド21が形成されている。パッド21は、バンプ25により容器9に設けられたパッド23に固定及び接続されている。
【0037】
複数のパッド21は、半導体部品17を振動子14と接続するためのものと、半導体部品17を発振器1の端子5と接続するためのものとを含んでいる。なお、以下では、複数のパッド21のうち、第1端子5A〜第6端子5Fに対応するものについて、第1端子5A〜第6端子5Fと同様に、「第1」「A」等を付すことがある。
【0038】
図3は、発振器1の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【0039】
発振器1は、上述のように、振動子14と、半導体部品17とを有している。半導体部品17の第1パッド21A〜第6パッド21Fは、第1端子5A〜第6端子5Fに接続されている。なお、電力供給のための第3端子5C及び第6端子5Fは、発振器1内の種々の機能部に接続されるが、図3では、その一部の接続のみを示している。
【0040】
半導体部品17は、発振信号を生成する発振回路27と、生成された発振信号を出力する第1バッファ29A及び第2バッファ29Bと、これらバッファ29の駆動を制御する駆動制御部31とを有している。
【0041】
また、半導体部品17は、温度センサ33と、温度センサ33の検出結果に応じて温度変化に起因する振動子14の周波数変化を補償する温度補償回路35とを有している。
【0042】
さらに、半導体部品17は、第1端子5A、第2端子5B及び第5端子5Eに対して、第2発振信号Out2及び温度信号Tのいずれか一方の信号、駆動制御信号E/D、及び、周波数調整信号Vconを割り当てる設定部37と、設定部37及び温度補償回路35に参照されるメモリ39とを有している。
【0043】
発振回路27は、例えば、振動子14に入力側及び出力側が接続されたインバータ41と、インバータ41の入力側と基準電位部との間に配置された第1容量素子43Aと、インバータ41の出力側と基準電位部との間に配置された第2容量素子43Bとを有している。なお、発振回路27は、この他、インバータ41に対して並列に接続される帰還抵抗等を有するが、図示は省略する。
【0044】
容量素子43は、例えば、可変容量ダイオードにより構成されており、アノードが基準電位部に接続され、カソードがインバータ41に接続されている。また、容量素子43のカソードは、設定部37に接続されている。従って、設定部37から周波数調整信号Vconが容量素子43のカソードに入力されると、容量素子43の容量が変化し、ひいては、第1発振信号Out1及び第2発振信号Out2の周波数が変化する。
【0045】
バッファ29は、例えば、インバータを含んで構成され、入力側がインバータ41の出力側に接続されている。バッファ29は、インバータ41からの信号を増幅する増幅部としても機能している。第1バッファ29Aは、第1発振信号Out1を出力する機能部であり、出力側は第4端子5Dに接続されている。第2バッファ29Bは、第2発振信号Out2を出力する機能部であり、出力側は設定部37に接続されている。
【0046】
なお、図3では、第1発振信号Out1及び第2発振信号Out2の周波数、位相及び波形が互いに同一の場合の構成を示している。ただし、これらの信号の周波数、位相及び波形の少なくともいずれか一つは互いに異なっていてもよい。すなわち、インバータ41と第2バッファ29Bとの間に互いの周波数を異ならせるための分周器が配置されるなど、各信号の伝達経路には適宜な構成が追加されてよい。
【0047】
駆動制御部31は、設定部37から入力される駆動制御信号E/Dに基づいて、バッファ29に対する電力供給を許容又は禁止する機能部である。駆動制御部31は、例えば、バッファ29と第6端子5Fとの間に配置され、これらを接続又は切断するトランジスタ等のスイッチにより構成されている。
【0048】
温度センサ33は、例えば、サーミスタを含んで構成され、周囲の温度に応じた温度信号Tを出力する。温度信号Tは、温度補償回路35に入力されるとともに、設定部37に入力される。
【0049】
温度補償回路35は、特に図示しないが、例えば、3次関数発生回路を含んで構成されている。メモリ39には、温度と、3次関数の係数及び定数とを対応付けたデータが保持されており、温度補償回路35は、当該データを参照することにより、温度センサ33の検出結果に応じた3次関数を出力する。出力された信号は、周波数調整信号Vconに加算され、容量素子43のカソードに印加される。
【0050】
設定部37は、選択端子5(5A、5B及び5E)に接続されている。設定部37は、3つの選択端子5のいずれかから入力された駆動制御信号E/Dを駆動制御部31に入力し、3つの選択端子5のいずれかから入力された周波数調整信号Vconを発振回路27に入力する。また、設定部37は、第2バッファ29Bにより入力された第2発振信号Out2及び温度センサ33により入力された温度信号Tの一方を、3つの選択端子5のいずれかから出力する。設定部37は、入力された端子制御信号Sc0に基づいて、このような信号の選択及び信号の選択端子5への割り振りを行う。
【0051】
図4は、設定部37等の詳細を示すブロック図である。
【0052】
設定部37は、第2発振信号Out2及び温度信号Tのいずれを端子5から出力するかを制御するスイッチ部45と、第2発振信号Out2及び温度信号Tの一方、駆動制御信号E/D、並びに、周波数調整信号Vconを第1端子5A、第2端子5B及び第5端子5Eに割り振る選択部47とを有している。端子制御信号Sc0(図3)は、第1制御信号Sc1及び3つの第2制御信号Sc2を含み、第1制御信号Sc1はスイッチ部45に、第2制御信号Sc2は選択部47に入力されている。
【0053】
スイッチ部45は、第2バッファ29B(Out2)及び温度センサ33(T)の2つの機能部と、選択部47(中間ライン46)との間に配置されている。スイッチ部45は、例えば、FET等を含んで構成され、入力される第1制御信号Sc1に応じて、第2バッファ29B及び温度センサ33の一方と、選択部47とを接続する。
【0054】
選択部47は、スイッチ部45(中間ライン46)、駆動制御部31(E/D)及び容量素子43(Vcon)の3つの機能部と、第1端子5A、第2端子5B及び第5端子5Eの3つの端子との間に配置されている。選択部47は、入力される第2制御信号Sc2に応じた対応関係で、スイッチ部45、駆動制御部31及び発振回路27と、第1端子5A、第2端子5B及び第5端子5Eとを1対1で接続する。
【0055】
なお、選択部47の動作は、一の信号に着目すれば、当該一の信号を出力若しくは受け付ける端子を、第1端子5A、第2端子5B及び第5端子5Eから選択していることに相当する。
【0056】
選択部47は、例えば、第1個別選択部49A〜第3個別選択部49Cを有している。各個別選択部49は、スイッチ部45、駆動制御部31及び容量素子43の3つの機能部と接続されるとともに、第1端子5A、第2端子5B及び第5端子5Eのうちのいずれか一つと接続されている。そして、各個別選択部49は、第2制御信号Sc2に基づいて、3つの機能部のうち一つを自己に接続された端子5と接続する。
【0057】
第1制御信号Sc1及び第2制御信号Sc2(端子制御信号Sc0)は、メモリ39を読み出すことにより生成される。例えば、第1制御信号Sc1は、1ビットの制御データCOM4の読み出しにより生成され、3つの第2制御信号Sc2は、3ビットの制御データCOM1〜COM3(各1ビット)の読み出しにより生成される。なお、温度補償回路35が参照する補償に係るデータは、メモリ39に補正データCOM10として保持されている。
【0058】
図5は、制御データCOM1〜COM4の内容と、各端子に割り当てられる信号との関係を例示する図である。
【0059】
制御データCOM1〜COM4の内容は、データ入力部7を介して書き換え可能である。そして、図5の各行のいずれかの組み合わせが選択的に入力されることにより、4つの信号と、3つの端子5との対応関係が決定される。なお、補正データCOM10の内容も、少なくとも一部がデータ入力部7を介して書き換え可能である。
【0060】
以上の実施形態によれば、発振器1は、圧電体15と、圧電体15を利用した信号処理を行う半導体部品17と、圧電体15及び半導体部品17を保持する基体3と、基体3に配置され、半導体部品17に接続された複数の端子5とを有する。複数の端子5は、第1所定数(ただし、第1所定数は2以上。本実施形態では3)の選択端子5(5A、5B及び5E)を含む。半導体部品17は、端子制御信号Sc0に基づいて、所定の入出力信号(第2発振信号Out2若しくは温度信号T、駆動制御信号E/D、又は、周波数調整信号Vcon)を出力又は受け付ける端子を第1所定数の選択端子5から選択する設定部37を有する(半導体部品17は、端子制御信号Sc0に基づいて、所定の入出力信号を出力又は受け付ける機能部又はラインを第1所定数の選択端子5のいずれかに選択的に接続する設定部37を有する。)。
【0061】
従って、設定部37への端子制御信号Sc0の入力により、入出力信号を出力又は入力する端子の位置を適宜に変更することができる。すなわち、1つの発振器1で端子配置に関する種々のユーザの要望に応じることができる。その結果、開発時間及び開発費の低減、並びに、生産性の向上によるコスト増大が期待される。
【0062】
設定部37は、端子制御信号Sc0に基づいて、複数の入出力信号(第2発振信号Out2若しくは温度信号T、駆動制御信号E/D、及び、周波数調整信号Vcon)を第1所定数の選択端子5(5A、5B及び5E)に割り当てる。
【0063】
従って、入出力信号の種類が多い高機能な発振器において、入出力信号が出力又は入力される端子の位置を交互に交換して、好適に種々のユーザの要望に応じることができる。
【0064】
設定部37は、端子制御信号Sc0に基づいて、第2所定数(ただし、第2所定数は2以上。本実施形態では2)の入出力信号(Out2及びT)から第1所定数(3)以下且つ第2所定数未満の第3所定数(本実施形態では1)の入出力信号を選択し、その選択した入出力信号を出力又は受け付ける端子を第1所定数の選択端子5(5A、5B及び5E)から選択する。
【0065】
従って、選択端子5の数(第1所定数)に限定されることなく、多数の機能を発振器1に付与し、種々のユーザの多様且つ高度な要望に1つの発振器で対応することができる。別の観点では、発振器1を高機能化しつつ、端子数の増加を抑制できる。
【0066】
半導体部品17は、圧電体15の振動に基づく第1発振信号Out1を複数の端子5のいずれかを介して出力可能な第1バッファ29Aと、圧電体15の振動に基づく第2発振信号Out2を複数の端子5のいずれかを介して出力可能な第2バッファ29Bと、周囲の温度に応じた温度信号Tを出力可能な温度センサ33と、温度信号Tに基づいて、温度変化による圧電体15の周波数変化を補償する温度補償回路35と、を有する。第2所定数(2)の入出力信号は、第2発振信号Out2及び温度信号Tを含む。
【0067】
従って、発振器1は、端子数を低減しつつ発振信号の多様化又は多数化に優れたものとなる。具体的には、第1発振信号Out1とは周波数、波形及び位相の少なくとも一つが異なる第2発振信号Out2が出力されれば、発振信号の多様化が図られる。また、第1発振信号Out1と周波数等が同一の第2発振信号Out2が出力されれば、発振信号の多数化が図られる。なお、このような多数化は、発振器1が実装される電子機器の配線の簡素化に寄与し得る。また、温度信号Tは、他の発振器の温度補償に利用可能であり、換言すれば、発振器1が実装される電子機器における多様若しくは多数の発振信号の温度補償に寄与する。そして、ユーザにおいては、発振信号の多様化若しくは多数化を発振器1で行うか、発振器1とは別の発振器で行うか選択でき、且つ、このような選択肢が用意されたことによる端子5の増加は発振器1において生じない。
【0068】
半導体部品17は、温度補償回路35に参照される補正データCOM10と、端子制御信号Sc0の生成において参照される制御データCOM1〜4とを保持するメモリ39を有する。
【0069】
従って、発振器1において、端子配置の設定を可能とするために新たにメモリを設ける必要はなく、温度補償用のメモリの空き領域を使用したり、温度補償用のメモリの容量を大きくすればよい。その結果、発振器1の簡素化やコスト削減が図られる。
【0070】
設定部37は、端子制御信号Sc0に基づいて、選択された第3所定数の入出力信号(Out2又はT)、及び、選択・非選択がなされない第4所定数(ただし、第3所定数と第4所定数との和は第1所定数以下、本実施形態では2)の入出力信号(E/D及びVcon)を第1所定数の選択端子5に割り当てる。
【0071】
従って、同時利用可能な機能の増加と端子数の低減との均衡を取り易くなる。具体的には、以下のとおりである。上述したように、設定部37が第2所定数の入出力信号(Out2及びT)から第3所定数(1)の入出力信号を選択することから、発振器1を高機能化しつつ、端子数の増加を抑制できる。しかし、その結果、多数の機能を同時に利用できなくなる。そこで、発振器1では、端子制御信号Sc0に基づいて選択端子5に対して適宜に割り振られるような信号、換言すれば、付加的な機能の信号である蓋然性が高い信号のうち、ユーザの要望が相対的に低い機能の信号(Out2又はT)については、選択・非選択を行い、ユーザの要望が相対的に高い機能の信号(E/D及びVcon)については、選択・非選択を行わない。その結果、発振器1は、端子数の増加を抑制しつつも、多種多様な要望を満たし易い。
【0072】
上記の同時利用可能な機能の増加と端子数の低減との均衡を取り易くなる効果は、特に、第3所定数(選択された信号の数)と第4所定数(選択・非選択がなされない信号の数)との和が第1所定数(選択端子5の数)に等しいときに顕著となる。
【0073】
半導体部品17は、複数の端子5のいずれかを介して入力された駆動制御信号E/Dに基づいて、圧電体15の振動に基づく第1発振信号Out1若しくは第2発振信号Out2を増幅する第1バッファ29A若しくは第2バッファ29Bへの電力供給を許可又は禁止する駆動制御部31と、複数の端子5のいずれかを介して入力された周波数調整信号Vconに基づいて、圧電体15の周波数を変化させる容量素子43とを有する。第4所定数の入出力信号(選択・非選択がなされない信号)は、駆動制御信号E/D及び周波数調整信号Vconを含む。
【0074】
駆動制御信号E/D及び周波数調整信号Vconは、発振器1を高機能化する付加的な機能の信号でありつつ、ユーザの要望が相対的に高い信号である。このような信号と、選択・非選択がなされる、ユーザの要望が相対的に低い信号(Out2又はT)とを第1所定数の選択端子5に割り振ることにより、上述した、同時利用可能な機能の増加と端子数の低減との均衡を取り易くなる効果が顕著となる。
【0075】
端子制御信号Sc0は、第1制御信号Sc1及び第2制御信号Sc2を含む。半導体部品17は、第2所定数の入出力信号(Out2及びT)を出力又は受け付ける第2所定数の第1機能部(第2バッファ29B及び温度センサ33)と、第4所定数の入出力信号(E/D及びVcon)を出力又は受け付ける第4所定数の第2機能部(駆動制御部31及び容量素子43)とを有する。設定部37は、第3所定数の入出力信号(Out2又はT)を伝達する第3所定数の中間ライン46を有する。また、設定部37は、第2所定数の第1機能部(29B、33)と、第3所定数の中間ライン46との接続を切り換えるスイッチ部45を有する。また、設定部37は、第3所定数の中間ライン46及び第4所定数の第2機能部(31、43)と、第1所定数の選択端子5との接続を切り換える選択部47を有する。
【0076】
すなわち、設定部37においては、信号の選択を行う手段(スイッチ部45)と、選択後の信号及び選択・非選択が行われない信号を選択端子5に割り振る手段(選択部47)とが分化されている。その結果、各手段の構成が簡素であり、設計等が容易である。
【0077】
設定部37は、複数の端子5に含まれる、第1所定数の選択端子5以外の第5所定数(ただし、第5所定数は1以上。本実施形態では3)の固定端子5(5C、5D及び5F)に対する入出力信号(Vcc、GND、Out1)の割り当てを行わない。
【0078】
従って、規格等によって出力若しくは入力がなされる端子の位置が定められる蓋然性が高い信号について割り当てを行わないことにより、設定部37の負担を低減し、設定部37の簡素化を図ることができる。このような信号としては、実施形態に例示したように、基準電位信号GND、駆動電位信号Vcc、第1発振信号Out1が挙げられる。
【0079】
以上の本実施形態の効果を奏する構成は、発振器1全体ではなく、半導体部品17から抽出されてもよい。すなわち、圧電体15を利用した信号処理を行う半導体部品17であって、複数の端子(パッド21)と、端子制御信号Sc0に基づいて、所定の入出力信号を出力又は受け付ける端子(パッド)を複数の端子(パッド21)から選択する設定部37とを有する半導体部品17は、本実施形態の効果を奏する。
【0080】
なお、以上の実施形態において、発振器1は本発明の圧電デバイスの一例であり、第1バッファ29Aは本発明の第1出力部及び増幅部の一例であり、第2バッファ29Bは本発明の第2出力部及び増幅部の一例であり、容量素子43は本発明の周波数調整部の一例である。
【0081】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0082】
圧電デバイスは、圧電体の圧電効果(逆圧電効果を含む)を利用した処理を行うものであればよく、発振器に限定されない。例えば、圧電デバイスは、加速度センサ、共振器若しくはフィルタであってもよい。圧電体は、水晶に限定されず、セラミックであってもよい。
【0083】
本願発明が発振器以外の圧電デバイスに利用されてもよいことから明らかなように、基体の構成や端子の配置は、適宜なものとされてよい。また、発振器においても、基体の構成や端子の配置は実施形態のものに限定されない。例えば、発振器の基体は、同一のキャビティに振動子及び半導体部品が共に配置されるものであってもよい。また、発振器は、フリップチップ式のものに限定されず、ワイヤボンディング式のものであってもよい。
【0084】
端子制御信号は、メモリに保持されたデータの読み出しにより生成されるものに限定されない。例えば、端子制御信号は、基体の外部に露出する端子を介して入力されるものであってもよい。
【0085】
第1所定数の選択端子は、圧電デバイスに設けられた複数の端子のうちの一部の端子に限定されず、圧電デバイスに設けられた複数の端子の全ての端子であってもよい。換言すれば、全ての端子において、割り当てられる信号が変更可能であってもよい。
【0086】
第1所定数の選択端子(入力又は出力が変化する端子)は、常にいずれかの入出力端子が割り振られる必要はない。すなわち、使用されずに遊ぶ選択端子が生じてもよい。なお、このような状態は、選択端子を介して入出力される可能性のある入出力信号の総数(例えば第2所定数と第4所定数との和)が第1所定数よりも少ないことにより生じてもよいし、入出力信号が取捨選択された後における入出力信号の数(例えば第3所定数と第4所定数との和)が第1所定数よりも少ないことにより生じてもよい。
【0087】
設定部は、第2所定数の入出力信号から第1所定数以下且つ第2所定数未満の第3所定数の入出力信号を選択する機能を有していなくてもよい。換言すれば、設定部は、発振器において利用される機能を選択する機能を有さず、複数種の信号全てを複数の端子に割り振ってもよい。逆に、設定部は、第2所定数の入出力信号をいずれも複数の端子に割り振らない(第2所定数の機能を全て停止させる)機能を有していてもよい。また、設定部は、端子制御信号に基づいて第3所定数を変更可能であってもよい。
【0088】
設定部は、スイッチ部と選択部とを有するものに限定されない。例えば、実施形態では、選択部47は、3つの機能部のうち一つを自己に接続された端子5と接続する個別選択部49を3つ有していたが、選択部が、4つの機能部のうち一つを自己に接続された端子5と接続する個別選択部を3つ有することにより、スイッチ部が省略されてもよい。
【0089】
実施形態において、第2所定数の入出力信号を第2発振信号及び温度信号とし、第4所定数の入出力信号を駆動制御信号及び周波数調整信号とし、第5所定数の入出力信号を基準電位信号、駆動電位信号及び第1発振信号としたのは、一例に過ぎない。例えば、駆動制御信号が第2所定数の入出力信号とされてもよいし、第1発振信号や温度信号が第4所定数の入出力信号とされてもよい。また、上記の信号(機能)のいずれかは省略されてもよいし、逆に、上記以外の信号が入出力信号とされてもよい。
【0090】
温度センサは、半導体部品とは別個に構成され、温度信号を半導体部品に入力するものであってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…発振器(圧電デバイス)、3…基体、5A…第1端子(選択端子)、5B…第2端子(選択端子)、5C…第3端子(固定端子)、5D…第4端子(固定端子)、5E…第5端子(選択端子)、5F…第6端子(固定端子)、15…圧電体、17…半導体部品、37…設定部、Out2…第2発振信号、T…温度信号、E/D…駆動制御信号、Vcon…周波数調整信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体と、
前記圧電体を利用した信号処理を行う半導体部品と、
前記圧電体及び前記半導体部品を保持する基体と、
前記基体に配置され、前記半導体部品に接続された、第1所定数(ただし、当該第1所定数は2以上)の選択端子を含む複数の端子と、
を有し、
前記半導体部品は、端子制御信号に基づいて、所定の入出力信号を出力又は受け付ける端子を前記第1所定数の選択端子から選択する設定部を有する
圧電デバイス。
【請求項2】
前記設定部は、前記端子制御信号に基づいて、複数の前記入出力信号を前記第1所定数の選択端子に割り当てる
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記設定部は、前記端子制御信号に基づいて、第2所定数(ただし、当該第2所定数は2以上)の前記入出力信号から前記第1所定数以下且つ前記第2所定数未満の第3所定数の入出力信号を選択し、その選択した前記第3所定数の入出力信号を出力又は受け付ける端子を前記第1所定数の選択端子から選択する
請求項1又は2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記半導体部品は、
前記圧電体の振動に基づく第1発振信号を前記複数の端子のいずれかを介して出力可能な第1出力部と、
前記圧電体の振動に基づく第2発振信号を前記複数の端子のいずれかを介して出力可能な第2出力部と、
周囲の温度に応じた温度信号を出力可能な温度センサと、
前記温度信号に基づいて、温度変化による前記圧電体の周波数変化を補償する温度補償回路と、を有し、
前記第2所定数の入出力信号は、前記第2発振信号及び前記温度信号を含む
請求項3に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記半導体部品は、前記温度補償回路に参照される補正データと、前記端子制御信号の生成において参照される制御データとを保持するメモリを有する
請求項4に記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記設定部は、前記端子制御信号に基づいて、選択された前記第3所定数の入出力信号、及び、選択・非選択がなされない第4所定数(ただし、前記第3所定数と前記第4所定数との和は前記第1所定数以下)の入出力信号を前記第1所定数の選択端子に割り当てる
請求項3〜5のいずれか1項に記載の圧電デバイス。
【請求項7】
前記第3所定数と前記第4所定数との和が前記第1所定数に等しい
請求項6に記載の圧電デバイス。
【請求項8】
前記半導体部品は、
前記複数の端子のいずれかを介して入力された駆動制御信号に基づいて、前記圧電体の振動に基づく発振信号を増幅する増幅部への電力供給を許可又は禁止する駆動制御部と、
前記複数の端子のいずれかを介して入力された周波数調整信号に基づいて、前記圧電体の周波数を変化させる周波数調整部と、を有し、
前記第4所定数の入出力信号は、前記駆動制御信号及び前記周波数調整信号を含む
請求項6又は7に記載の圧電デバイス。
【請求項9】
前記端子制御信号は、第1制御信号及び第2制御信号を含み、
前記半導体部品は、
前記第2所定数の入出力信号を出力又は受け付ける前記第2所定数の第1機能部と、
前記第4所定数の入出力信号を出力又は受け付ける前記第4所定数の第2機能部と、を有し、
前記設定部は、
前記第3所定数の入出力信号を伝達する前記第3所定数の中間ラインと、
前記第2所定数の第1機能部と、前記第3所定数の中間ラインとの接続を切り換えるスイッチ部と、
前記第3所定数の中間ライン及び前記第4所定数の第2機能部と、前記第1所定数の選択端子との接続を切り換える選択部と、を有する
請求項6〜8のいずれか1項に記載の圧電デバイス。
【請求項10】
前記設定部は、前記複数の端子に含まれる、前記第1所定数の選択端子以外の第5所定数(ただし、第5所定数は1以上)の固定端子に対する入出力信号の割り当てを行わない
請求項1〜9のいずれか1項に記載の圧電デバイス。
【請求項11】
圧電体を利用した信号処理を行う半導体部品であって、
複数の端子と、
端子制御信号に基づいて、所定の入出力信号を出力又は受け付ける端子を前記複数の端子から選択する設定部と、
を有する圧電デバイス用半導体部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−16918(P2013−16918A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146601(P2011−146601)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)
【Fターム(参考)】