説明

圧電振動デバイスの製造方法

【課題】 蓋体とベースとの接合強度を損なうことなく低背化を図ることができる圧電振動デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 上部に開口部9と、前記開口部9を囲繞する堤部41を有するベース4の内底部に水晶振動片3を搭載し、前記開口部9を蓋体2で封止接合することによって得られる水晶振動子1において、前記堤部41の上面には金属膜7が周状に形成され、前記開口部9に前記蓋体2が重ね合わされた状態において、前記蓋体2の封止接合面には、堤部内壁8に近接する位置にロウ材Sが周状に形成されている。前記ロウ材Sは加熱溶融することによってフィレットを形成して前記蓋体2と前記ベース4とが接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイスとして広く使用されており、
表面実装型の水晶振動子は、低背化および省スペース化要求に対応した形態の水晶振動子である。
【0003】
従来の表面実装型の水晶振動子は、図9に示すように上部に開口部9を有する平面視矩形状で絶縁材料から成る容器体(以下ベースと表記)4の内部に水晶振動片3を収容し、前記開口部9を金属から成る平面視矩形状の蓋体2で接合することによって形成される構造となっている。ここで、前記ベース4には前記開口部9を囲繞する周状の堤部41が形成されており、当該堤部41の上面には金属膜7が周状に形成されている。また、前記蓋体2の封止接合面(前記ベースとの封止接合面)には封止接合材としてロウ材Sが形成され、前記ベース4の金属膜7上に前記蓋体2を載置して、加熱雰囲気中で前記ロウ材Sを溶融させることによって、ベース4と蓋体2とが気密封止される。
【0004】
しかしながら、近年の水晶振動子の小型化に伴い、前記ベースと前記蓋体との接合領域が狭小化するため、安定した気密封止が困難になってきている。このような問題を解決するため、堤部上面だけに形成されていた前記金属膜を、当該堤部の内壁まで延出して形成し、前記内壁に形成された金属膜から前記蓋体の封止接合面側に向かって前記接合材のフィレットを形成することによって、蓋体とベースとを強固に接合する構成の圧電振動デバイスが例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−347851号
【0006】
しかしながら、特許文献1において、堤部上面の金属膜と蓋体との間に存在する接合材の厚みにより、圧電振動子デバイスの低背化には繋がりにくい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、蓋体とベースとの接合強度を損なうことなく低背化を図ることができる圧電振動デバイスの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、上部に開口部と、前記開口部を囲繞する堤部を有する平面視矩形状のベースと、前記ベースの内底部に圧電振動片を搭載し、前記開口部を平面視矩形状の蓋体で封止接合することによって得られる圧電振動デバイスにおいて、前記堤部の上面には金属膜が周状に形成されているとともに、前記開口部に前記蓋体が重ね合わされた状態において、前記蓋体の封止接合面には、前記堤部の内壁に近接する位置にロウ材が周状に形成され、加熱溶融することによって前記ロウ材のフィレットを形成して前記蓋体と前記ベースとが接合されることを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法であり、前記加熱溶融時に前記堤部上面の金属膜表面には溶融ロウ材が介在しにくいため、圧電振動デバイスの低背化を図ることができる。
【0009】
上記構成によると、前記蓋体の封止接合面には、前記堤部の内壁に近接する位置にロウ材が周状に形成されているので、前記ベース開口部への蓋体を重ね合わせた時に、前記堤部上面に形成された金属膜の上部にはロウ材が当接しない。このような金属膜とロウ材との相対位置関係により、加熱によって溶融したロウ材が前記堤部上面の金属膜と前記蓋体との間隙に流入しにくい構造となっている。
【0010】
本発明において、前記蓋体と前記ベースとの封止接合は主として前記ロウ材のフィレットによって行われるが、従来のように蓋体とベースの堤部上面との間に充分なロウ材が介在していなくても、実用的な接合強度を得ることができる。同時に接合材の厚みを薄肉化できるため、水晶振動子の低背化を図ることができる。
【0011】
また、上記構成によると、前記蓋体の封止接合面には、前記堤部の内壁に近接する位置にロウ材が周状に形成されているので、加熱溶融によって前記金属膜の内周側面部分と当該ロウ材との間でフィレットを形成し、堤部上面の金属膜−蓋体間に介在するロウ材が無い場合あるいは僅かにロウ材が介在する場合であっても、接合強度を確保することができる。
【0012】
なお、上記構成において蓋体の封止接合面のロウ材は、前記内壁に近接した状態で重ね合わされる。換言すれば前記蓋体が前記ベースの開口部に嵌合した状態になっている。なお、ここでいう嵌合とは、前記内壁と前記ロウ材との間に微小な空間が存在している状態や、前記内壁と前記ロウ材とが当接した状態を含んでいる。
【0013】
また、上述のように前記ロウ材は蓋体周縁から離間した内側に形成されているため、蓋体に前記ベース4の開口部を下に向けて載置(詳細は後述)する時の位置決め(ガイド)の機能を有し、蓋体のベースに対する位置ずれを抑制することができる。
【0014】
さらに上記構成の場合、従来のように蓋体の封止接合面の周縁部ではなく、前記堤部内壁に近接する位置、つまり蓋体の周縁から内側に離間した位置にロウ材が周状に形成されているため、従来よりもロウ材の周長が短くなるのでロウ材の使用量が減少し、コスト低減効果がある。
【0015】
なお、上記構成ではロウ材は前記蓋体の封止接合面の、前記堤部内壁に近接する位置に周状に形成されているが、これに限定されるものでない。
【0016】
たとえば、まず前記蓋体の表面に、当該蓋体の周縁から内側の領域に亘ってロウ材を周状に形成し(第1のロウ材)、その上部に前記堤部の内壁に近接する位置、つまり蓋体の周縁から内側に離間した位置に、周状にロウ材(第2のロウ材)を積層した構成であってもよい。
【0017】
この場合、前記堤部上面の金属膜の表面と前記第1のロウ材とが接合されるとともに、当該金属膜の内周側面部分と前記第2のロウ材とが接合されることになり、より強い接合力を得ることができる。なお、前記第1のロウ材の厚みは、従来のように1層だけロウ材が形成されている場合よりも薄く形成されていることが低背化の点から好ましい。
【0018】
また、請求項2によれば、前記金属膜が前記堤部の上面から、当該堤部の内壁まで延出されていることを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法であり、この場合、蓋体封止接合面から堤部内壁に延出された金属膜にかけてロウ材によるフィレットが形成される。このような構成によって、従来の水晶振動子よりも被着面積を広くとることができるので接合強度が向上する。したがって、蓋体の封止接合面の周縁領域に接合材が形成されていなくても実用的な接合強度を確保できるとともに低背化も図ることができる。
【0019】
さらに請求項3によれば、前記堤部の内周縁で形成される長方形の4つの対向する辺の内、少なくとも2つの対向する辺の中央において、前記金属膜が前記堤部の上面から、当該堤部の内壁まで延出されて形成されていることを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法であり、この場合、金属膜は堤部上面から延出して堤部の内壁にまで及んでいるが、周状ではなく部分的に形成されている。
【0020】
ここで、蓋体とベースとをロウ材を介して加熱溶融によって接合する際、溶融したロウ材は流動性を有するようになるため、前記堤部の上面で形成される長方形の4つのコーナー部(角部)にロウ材が流入して滞留し易くなる(“密”の状態)傾向があり、逆に前記長方形の各辺の中央部はコーナー部への流出によってロウ材の量が少なく(薄く)なってしまう(“疎”の状態)傾向があるため、“疎”の状態である各辺の中央部は前記コーナー部に比べて接合強度の低下が懸念される。
【0021】
これに対し、上記構成のように前記長方形の4つの対向する辺の内、少なくとも2つの対向する辺の中央において、前記金属膜が前記堤部の上面から前記堤部の内壁まで延出されて形成されていれば、各辺の中央部は前記蓋体の封止接合面から、前記堤部内壁に延出された金属膜にかけてロウ材のフィレットを形成することによって接合強度を補うことができるので、水晶振動子全体の接合強度を向上させることができる。なお、前記4辺すべての中央部において前記金属膜が延出されて形成されていれば特に効果が期待できる。
【0022】
なお、上記構成において前記長方形の2つの対向する辺の中央部においてだけ前記金属膜を形成する場合、より面積が広い長辺側、つまり2つの対向する長辺の中央部に形成されている方が接合強度に与える影響が大きいことから好適である。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、蓋体とベースの接合強度を低下させることなく低背化を図ることができる圧電振動デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明による第1の実施形態について、表面実装型の水晶振動子を例にとり、図1乃至図2とともに説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示す封止後における水晶振動子の長辺方向の断面図、図2は図1の封止前の状態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図である。なお、図1乃至図2において、水晶振動片の表裏面に形成される電極(後述)および、ベース底面(裏面)に形成される外部接続端子と、当該外部接続端子とベース内部の搭載パッドとを電気的に接続する配線導体の記載は省略している。
【0025】
本実施形態で適用される水晶振動子1は、図1に示すように平面視矩形状の蓋体2と、直方体形状の水晶振動片3と、平面視矩形状のベース4とから構成されている。
【0026】
図1において前記水晶振動片3は、平面視矩形状のATカット水晶板であり、表裏面には水晶振動片3を駆動させるための励振電極(図示せず)と、当該励振電極から引き出される引き出し電極(図示せず)と、当該引き出し電極と接続し,水晶振動片3の一端部両側に形成される一対のパッド電極(図示せず)とが形成されている。これらの電極は水晶上に下から順に、クロム(Cr),金(Au),クロム(Cr)の膜構成で蒸着法等によって成膜される。なお、前記電極の膜構成は、これに限定されるものではなく、その他の膜構成であってもよい。
【0027】
図1においてベース4は、アルミナセラミック材料から成る複数のセラミックグリーンシートが積層され一体的に焼成されて成形されている。そしてベース4は、前記水晶振動片3を収容するための開口部9を上部に有しているともに、当該開口部9の周囲に環状の堤部41を具備している。
【0028】
図1において、ベース4の内底部の一端側には一対の搭載パッド5が並列して形成されている。前記搭載パッド5はタングステンを印刷焼成した後、表面に金メッキ処理が施されている。また、当該搭載パッド5はベース底面(裏面)に形成されている外部接続端子(図示せず)と、ベース内部に形成された配線導体(図示せず)を介して電気的に接続されている。なお、前記搭載パッド5と前記外部接続端子との電気的接続は、ベース4の外周上下部の4角にキャスタレーションを形成することによって行ってもよい。
【0029】
前記ベース1の堤部41の上面は平坦な状態になっており、当該堤部上面には周状の金属膜7が形成されている。前記金属膜7は3層から構成されており、下からタングステン、ニッケル、金の順で積層されている。タングステンはメタライズ技術により、セラミック焼成時に一体的に形成され、ニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。なお、前記タングステンの層にモリブデンを使用してもよい。
【0030】
図1において蓋体2は、平面視矩形状の金属材料から形成されており、本実施形態では蓋体2はコバールを基体として上層にニッケルメッキ層、さらに上層に金フラッシュメッキ層がそれぞれ全周に形成されている。ここで各層の厚みは、ニッケル層は1.0〜4.0μm、金フラッシュ層は約0.01μmに形成されている。なお、前記金フラッシュ層は、0.03μm以下の厚みで形成されていることが好ましい。
【0031】
そして、図2に示すように蓋体2の封止接合面側には前記金フラッシュメッキ層の上層に金属ロウ材Sが堤部内壁8に沿って上方へ延出した仮想ラインLよりも内側の領域に周状に形成されている。本実施形態では前記ロウ材として、金−錫合金(Au−Sn合金)が使用されている。ここで前記Au−Sn合金は、溶融後の状態において水晶振動子全体、つまり蓋体2に形成されている金フラッシュメッキ層と堤部上面に形成されている金属膜7を構成する金も含めて、Au:Sn=80:20の比率となるように蓋体2の封止接合面に形成されるAu−Sn合金の組成が予め調整されている。
【0032】
本実施形態では、前記水晶振動片3の一端部両側に形成される一対のパッド電極と、ベース4の内底部にある一対の搭載パッド5とが導電性接合材6を介して接合されている。前記導電性接合材として、例えばシリコーン系の導電性樹脂接合材が使用される。なお、導電性接合材はシリコーン系の導電性樹脂接合材に限定されるものではなく、シリコーン系以外にもエポキシ系などの導電性樹脂接合材を使用してもよい。
【0033】
前記導電性樹脂接合材による水晶振動片3と搭載パッド5との接合は、所定温度プロファイルに制御された雰囲気下で当該導電性接合材6を硬化させることによって行われる。
【0034】
前記パッド電極と前記搭載パッド5とが接合された後、蓋体2が封止治具内に載置される。前記封止治具は内部に凹部を有しており、当該凹部に前記蓋体2の封止接合面側を上にして載置される。そして前記蓋体2の上に、前記ベース4が開口部9を下向きにした状態で載置される。このとき、前記蓋体2の封止接合面側に形成された周状のロウ材Sは前記開口部9内に収まっており、ベース4の堤部上面は蓋体2の封止接合面のロウ材Sが形成されていない周縁領域と当接した状態となっている。このような状態で、所定温度に加熱することによって蓋体2に形成されたロウ材Sを溶融させる。溶融したロウ材は前記蓋体の封止接合面から前記金属膜の内周側面部分にかけてロウ材のフィレットを形成することによって気密接合される。以上の工程により、表面実装型水晶振動子1の完成となる。
【0035】
以上のように前記蓋体2の封止接合面には、前記堤部内壁8に沿って上方へ延出した仮想ラインLよりも内側の領域にロウ材Sが周状に形成されており、前記ベース4を蓋体2へ載置する際には、前記ロウ材Sは前記堤部内壁8に近接した状態で嵌合されて、前記堤部41上面に形成された金属膜の上部にはロウ材Sが当接しない。このような構造によって、堤部41上面にはロウ材Sが介在しにくいため、水晶振動子の低背化を図ることができる。
【0036】
(第1の実施形態の変形例)
本実施形態における変形例を、図3乃至図4を用いて説明する。図3は第1の実施形態の変形例を示す封止前における水晶振動子の長辺方向の断面図、図4は第1の実施形態の変形例で、封止後の状態を示す水晶振動子の長辺方向の断面図である。なお、前述の実施形態と同様の構成については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0037】
図3において、蓋体2の封止接合面側には、当該蓋体の周縁から内側の領域に亘って第1のロウ材S1が周状に形成されており、その上層には堤部内壁8に沿って上方へ延出した仮想ラインLよりも内側の領域、つまり蓋体の周縁から内側に離間して前記第1のロウ材S1上から逸脱しない位置に、第2のロウ材S2が周状に形成されている。ここで前記第1と第2のロウ材S1,S2は同一材料の金属ロウ材である。これにより、ロウ材Sの薄肉領域と厚肉領域が構成され、厚肉領域が前記堤部内壁8に近接する構成となる。
【0038】
そして、前記第1と第2のロウ材S1,S2を加熱溶融させて蓋体2とベース4とが接合すると、図4に示す状態となる。図4に示すように、蓋体2の封止接合面から堤部41の上面に形成された金属膜7の内周側面部分にかけて前記第2のロウ材S2のフィレットが形成されているとともに、前記金属膜7の上面と前記第1のロウ材S1とが接合された状態になっている。この場合、前記第1のロウ材S1の厚みは、従来の一層構造のロウ材Sの厚みに比べ薄く形成されているので低背化に寄与するとともに、2つのロウ材S1,S2によって接合されているので接合強度が向上する。
【0039】
(第2の実施形態)
本発明における第2の実施形態を、図5乃至図6を用いて説明する。図5は第2の実施形態の変形例を示す封止後の水晶振動子の長辺方向断面図であり、図6は第2の実施形態を示す封止後の水晶振動子の長辺方向断面図である。なお、前述の実施形態と同様の構成については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0040】
図5に示すように、堤部41の上面に形成される金属膜7は堤部内壁8にまで延出されて形成されている。一方、蓋体2の封止接合面には、当該蓋体2の周縁から離間した位置に、すなわち堤部内壁8に沿って上方へ延出した仮想ラインLよりも内側の領域にロウ材Sが周状に形成されている。
【0041】
前記ロウ材Sを加熱溶融させて、蓋体2とベース4とが接合した状態が図6である。図6に示すように、蓋体封止接合面から堤部内壁8に形成された金属膜7にかけてロウ材Sによるフィレットが形成されるため、従来の水晶振動子(図9)よりも被着面積を広くとることができる。これにより、接合強度が向上するとともに、当該蓋体2の封止接合面の周縁領域にはロウ材が形成されていないため水晶振動子の低背化を図ることができる。
【0042】
(第2の実施形態の変形例)
本実施形態における変形例を、図7を用いて説明する。図7は第2の実施形態の変形例を示すベースの斜視図であり、堤部41の上面に周状に形成された金属膜7が、当該堤部41の内周の対向する4つの内壁の中央部分にだけ延出されている状態を表している。なお、前述の実施形態と同様の構成については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0043】
従来の水晶振動子の構造では、蓋体とベースとをロウ材を介して加熱溶融によって接合する際、溶融したロウ材が前記堤部の上面で形成される長方形の4つのコーナー部(角部)にロウ材が流入して滞留し易くなる(“密”の状態)傾向があり、逆に前記長方形の各辺の中央部はコーナー部への流出によってロウ材の量が少なく(薄く)なってしまう(“疎”の状態)傾向があった。このため、“疎”の状態である各辺の中央部は前記コーナー部に比べて接合強度の低下が懸念されていた。
【0044】
これに対し、図7のように前記長方形の4つの対向する辺の中央において、前記金属膜7が前記堤部41の上面から堤部内壁8まで延出されて形成されていれば、各辺の中央部は蓋体2の封止接合面から、前記堤部内壁8に形成された金属膜7にかけてロウ材Sによるフィレットを形成することによって、前記長方形の4つの対向する辺の中央領域の接合強度を補うことができ、水晶振動子1の接合強度を向上させることができる。
【0045】
なお、本発明において、堤部内壁8に形成されている金属膜7は、当該内壁に埋設された状態となっているが、この形態に限定されるものではなく、図8に示すように前記堤部内壁8の上に形成されていてもよい。蓋体2の封止接合面に形成されるロウ材Sは前記金属膜7の表面に沿って上方に延出した仮想ラインLよりも内側の領域に周状に形成される。ここで、前記堤部内壁8に延出された金属膜7と前記ロウ材Sは近接した位置に形成されている。
【0046】
また、本発明の実施形態においてロウ材として、金−錫合金(Au−Sn合金)が使用されているが、これに限定されるものではなく、例えば錫−銀合金(Sn−Ag合金)や金−ゲルマニウム(Au−Ge合金)など他の金属を使用してもよい。
【0047】
本発明の実施形態では、個体の蓋体と個体のベースとが封止接合される構成となっているが、これに限定されるものではなく、複数のベースがマトリクス状に一体的に配列した状態、すなわち母基板状態のベースに、個体の蓋体で前記母基板の各ベースの開口部を封止接合する構成においても適用可能である。
【0048】
本発明の実施形態では表面実装型水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、水晶発振器など電子機器等に用いられる他の表面実装型の圧電振動デバイスの製造方法にも適用可能である。
【0049】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の長辺方向断面図。
【図2】図1の封止前の状態を示す水晶振動子の長辺方向断面図。
【図3】第1の実施形態の変形例を示す封止前の水晶振動子の長辺方向断面図。
【図4】第1の実施形態の変形例を示す封止後の水晶振動子の長辺方向断面図。
【図5】第2の実施形態を示す封止前の水晶振動子の長辺方向断面図。
【図6】第2の実施形態を示す封止後の水晶振動子の長辺方向断面図。
【図7】第2の実施形態の変形例を示すベースの斜視図。
【図8】第2の実施形態の変形例を示す封止前の水晶振動子の長辺方向断面図。
【図9】従来の水晶振動子の例を示す長辺方向断面図。
【符号の説明】
【0052】
1 水晶振動子
2 蓋体
3 水晶振動片
4 ベース
5 搭載パッド
6 導電性接合材
7 金属膜
8 堤部内壁
9 開口部
41 堤部
S ロウ材
S1 第1のロウ材
S2 第2のロウ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部と、前記開口部を囲繞する堤部を有する平面視矩形状のベースと、前記ベースの内底部に圧電振動片を搭載し、前記開口部を平面視矩形状の蓋体で封止接合することによって得られる圧電振動デバイスにおいて、
前記堤部の上面には金属膜が周状に形成されているとともに、前記開口部に前記蓋体が重ね合わされた状態において、前記蓋体の封止接合面には、前記堤部の内壁に近接する位置にロウ材が周状に形成され、加熱溶融することによって前記ロウ材のフィレットを形成して前記蓋体と前記ベースとが接合されることを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記金属膜が前記堤部の上面から、当該堤部の内壁まで延出されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記堤部の内周縁で形成される長方形の4つの対向する辺の内、少なくとも2つの対向する辺の中央において、前記金属膜が前記堤部の上面から、当該堤部の内壁まで延出されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−252442(P2008−252442A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90282(P2007−90282)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】