説明

圧電振動デバイス

【課題】 圧電振動板の小形化を実現しながら、導電性樹脂接着剤による圧電振動板のベースへの電気的機械的な接合強度を高め、耐落下衝撃性能を向上させる。
【解決手段】 圧電振動板2とベース1と蓋を有する圧電振動デバイスであって、前記ベースには前記圧電振動板を接合する端子電極を有し、前記圧電振動板には励振電極と前記ベースの端子電極と接続される引出端部電極と、前記励振電極と前記引出端部電極を接続する引出電極とを有しており、前記端子電極の上部と前記引出端部電極の下側に介在する導電性樹脂接着剤Sのみにより前記圧電振動板が接合され、前記引出端部電極には、圧電振動板の下面側から上面側に向かって開口面積が広がるように形成された貫通孔28を有し、当該貫通孔の中央部に前記導電性樹脂接着剤が圧電振動板と接触する中央部を重ね合わせて接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子や圧電発振器などの圧電振動デバイスに関するものであって、特に圧電振動デバイスの保持構造を改善するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な圧電振動デバイスは、一面を開口させた箱型状体のセラミックベースと板状体の蓋とから構成されてなる。セラミックベースは、圧電振動板を搭載する収納部が形成されており、収納部底面の一側端部には、圧電振動板を搭載支持する一対の保持台が設けられている。この一対の保持台には、下記する圧電振動板の励振電極と導電性樹脂接着剤を介して導通する配線パターン(端子電極)がメタライズ等の手法により形成され、最上面には金メッキが施されている。圧電振動板は、例えば、X軸方向の辺とZ'軸方向の辺とから構成される平面視矩形状のATカット水晶振動板からなる。この水晶振動板の長辺軸の指定は、一般的に、保持形態により選択されている。車載向けなどの耐衝撃性が求められるものでは、長辺側の両端を保持するために、長辺側の保持の影響が少ないZ'軸方向を長辺とするものが多い。これに対して、X軸方向を長辺とするものでは、長辺側の保持の影響を受けやすいので片端側で保持する一方、水晶振動板の励振電極を大きく形成することができるので、励振領域を広くし、直列共振抵抗を改善したり、周波数可変量を広くすることができる。ATカット水晶振動板等を用いた厚み振動系水晶振動子は、一般に水晶振動板の表裏面に一対の励振電極を正対向して形成し、当該励振電極に交流電圧を印加する構成である。つまり、水晶振動板の両主面には励振電極と、この励振電極を前記セラミックベースの保持台に形成された配線パターン(端子電極)と導通するための引出端部電極と、励振電極を引出端部電極に導通させるための引出電極が形成されている(例えば、特許文献1参照。)。このように構成された圧電振動板を前記セラミックベースの保持台上部に搭載し、圧電振動板の引出端部電極と保持台上面の端子電極の間に導電性樹脂接着剤を介在させて、これら電気的機械的に接合する。そして、圧電振動板が接合されたセラミックベースの開口部に前記蓋を搭載し、蓋の外周縁部とセラミックベースの開口面と接合することで、セラミックベースの収納部が気密封止される。
【0003】
【特許文献1】特開2003−17978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の表面実装型圧電振動デバイスでは、支持部材をなくして小型化に対応させるとともに耐衝撃性能を高めるために、柔軟性の優れた導電性樹脂接着剤により端子電極に圧電振動板を直接接合する構成となっている。このように柔軟性の優れた導電性樹脂接着剤として、例えばシリコーン系、ウレタン系、変成エポキシ系の導電性樹脂接着剤が非常に多く用いられ、普及しているのが現状である。
【0005】
しかしながら、上述の導電性樹脂接着剤では、揮発する溶剤を含有しているが、圧電振動板とベースに挟まれた部分では、この溶剤の抜けが悪くなることで、接合強度と導通性の低下を招くことがあった。特に、この溶剤の抜けの悪い領域は小型化された製品ではより占有率が多くなり、特性のばらつきが生じやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧電振動板の小形化を実現しながら、導電性樹脂接着剤による圧電振動板のベースへの電気的機械的な接合強度を高め、耐落下衝撃性能を向上させた圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の特許請求項1に示すように、圧電振動板とベースと蓋を有する圧電振動デバイスであって、前記ベースには前記圧電振動板を接合する端子電極を有し、前記圧電振動板には励振電極と前記ベースの端子電極と接続される引出端部電極と、前記励振電極と前記引出端部電極を接続する引出電極とを有しており、前記端子電極の上部と前記引出端部電極の下側に介在する導電性樹脂接着剤のみにより前記圧電振動板が接合され、前記引出端部電極には、圧電振動板の下面側から上面側に向かって開口面積が広がるように形成された貫通孔を有し、当該貫通孔の中央部に前記導電性樹脂接着剤が圧電振動板と接触する中央部を重ね合わせて接合したことを特徴とする。
【0008】
上記構成により、圧電振動板の上部に導電性樹脂接着剤が存在しないので、圧電振動デバイスの低背化が行える。また、圧電振動板とベースに挟まれた領域に存在する導電性樹脂接着剤は、圧電振動板の下面側から上面側に向かって開口面積が広がるように形成された貫通孔から、圧電振動板とベースに挟まれた領域に存在する導電性樹脂接着剤の溶剤の揮発が促進されるので、塗布された硬化前の導電性樹脂接着剤の溶剤が導電性樹脂接着剤の内部に残存することがなくなる。結果として、硬化後の導電性樹脂接着剤の一部に硬化が不完全な領域である絶縁領域や接合不完全領域が形成されることがなくなり、圧電振動板とベースの接合強度や導電性能が低下することがない。また、前記導電性樹脂接着剤が端子電極から剥がれ、環境温度変化によって周波数ジャンプが発生したり、周波数変動のばらつきが生じることもなくなる。加えて、前記貫通孔の一部に前記導電性樹脂接着剤の一部が食い込むので、アンカー効果を生じて圧電振動板とベースさらなる接合強度が向上する。
【0009】
なお、圧電振動板の下面側から上面側に向かって開口面積が広がるように形成された貫通孔は、エッチング加工や研削加工により圧電振動板本体に予め貫通孔を形成したものに対して引出端部電極部分を含めた各電極を形成してもよいし、圧電振動板に引出端部電極部分を含めた各電極を形成したものに対して引出端部電極部分の上部からビーム照射することで形成してもよい。
【0010】
前記貫通孔をビーム照射することによる優位点は次のとおりである。ビーム照射前の圧電振動板は表裏面の方向性がなくなるので、生産性を高めることができる。しかも、ベースの上部に圧電振動板が導電性樹脂接着剤により仮硬化された状態で、圧電振動板の引出端部電極部分の上部からビーム照射することができるので、貫通孔の形成する際に圧電振動板が位置ずれすることなくなり、ビーム照射部から遠ざかる圧電振動板の下面側に向かってビームのエネルギが減衰することで、開口面積が次第に狭まる構成とすることができる。
【0011】
また、本発明の特許請求項2に示すように、圧電振動板とベースと蓋を有する圧電振動デバイスであって、前記ベースには前記圧電振動板を接合する端子電極を有し、前記圧電振動板には励振電極と前記ベースの端子電極と接続される引出端部電極と、前記励振電極と前記引出端部電極を接続する引出電極とを有しており、前記端子電極の上部と前記引出端部電極の下側に介在する導電性樹脂接着剤のみにより前記圧電振動板が接合され、前記引出端部電極、または端子電極には、前記導電性樹脂接着剤が圧電振動板あるいはベースと接触する中央部から、前記導電性樹脂接着剤が圧電振動板あるいはベースと接触しない領域に向かって、開口面積が次第に拡大する溝を形成したことを特徴とする。
【0012】
つまり、前記溝は前記圧電振動板の引出端部電極の中央部を起点としてその端部に向かって開口面積が広がるように形成され、前記溝の起点部分に前記導電性樹脂接着剤が圧電振動板と接触する中央部を重ね合わせて接合している。あるいは、前記溝は前記ベースの端子電極の中央部を起点としてその端部に向かって開口面積が広がるように形成され、前記溝の起点に前記導電性樹脂接着剤がベースパッケージと接触する中央部を重ね合わせて接合している。
【0013】
上記構成により、圧電振動板の上部に導電性樹脂接着剤が存在しないので、圧電振動デバイスの低背化が行える。また、圧電振動板の引出端部電極の中央部を起点としてその端部に向かって開口面積が広がるように形成された溝、あるいはベースの端子電極の中央部を起点としてその端部に向かって開口面積が広がるように形成された溝から、圧電振動板とベースに挟まれた領域に存在する導電性樹脂接着剤の溶剤の揮発が促進されるので、塗布された硬化前の導電性樹脂接着剤の溶剤が導電性樹脂接着剤の内部に残存することがなくなる。結果として、硬化後の導電性樹脂接着剤の一部に硬化が不完全な領域である絶縁領域や接合不完全領域が形成されることがなくなり、圧電振動板とベースの接合強度や導電性能が低下することがない。また、前記導電性樹脂接着剤が端子電極から剥がれ、環境温度変化によって周波数ジャンプが発生したり、周波数変動のばらつきが生じることもなくなる。加えて、圧電振動板の引出端部電極の溝は、マスク治具と蒸着やスパッタリングなどによる薄膜形成手段により極めて容易に作成でき、ベースの端子電極に形成される溝は、メタライズ材料を厚膜印刷技術により容易に作成できるので、極めて実用的な構成となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の圧電振動デバイスによれば、圧電振動板の小形化を実現しながら、導電性樹脂接着剤の溶剤の揮発用のガス抜け部(前記貫通孔や前記溝)を形成することで、圧電振動板のベースへの電気的機械的な接合強度を高め、耐落下衝撃性能を向上させた圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。本発明による実施形態につき圧電振動デバイスとして表面実装型水晶振動子を例にとり図面とともに説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示す蓋をする前の圧電振動デバイスの平面図であり、図2は図1のA−A線に沿った断面図、図3は本発明の第1の実施形態の製造工程を示す図である。
【0016】
表面実装型水晶振動子は、上部が開口した凹部を有するセラミックベース1と、当該セラミックベースの中に収納される圧電振動板2と、セラミックベースの開口部に接合される蓋(図示せず)とからなる。
【0017】
セラミックベース1は全体として直方体で、アルミナ等のセラミックとタングステンあるいはモリブデン等の導電材料を適宜積層した構成であり、断面でみて凹形の収納部10を有する構成である。収納部10は第1の収納部10a(下部収納部)と第2の収納部10b(上部収納部)からなり、当該第2の収納部10bに後述する圧電振動板2が収納される。収納部周囲には堤部11が形成されており、堤部11の上面は平坦であり、当該堤部上に周状の第1の金属層11a(封止用部材)が形成されている。当該第1の金属層11aの上面も平坦になるよう形成されており、タングステンあるいはモリブデン、ニッケル、金の順で金属膜層を構成している。タングステンあるいはモリブデンは厚膜印刷技術を活用してメタライズ技術によりセラミック焼成時に一体的に形成され、またニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。
【0018】
セラミックベース側端部には上下方向に伸長する複数のキャスタレーションが形成されている。当該キャスタレーションは円弧状の切り欠きが上下方向に形成された構成である。なお、前記第1の金属層11aはセラミックベースの角部の堤部を上下に貫通接続する図示しない導電ビアにより、セラミックベース下面に形成された外部引出端部電極(図示せず)に電気的に導出されている。当該外部導出電極をアース接続することにより、後述の金属蓋が金属層11a、導電ビアを介して接地され、電子部品の電磁気的なシールド効果を得ることができる。なお、前述のとおり、当該導電ビアは周知のセラミック積層技術により形成することができる。セラミックベース1内部において、下方面には第1の収納部10aと、当該第1の収納部の底面から上部に突出し、後述する圧電振動板の端部を保持する保持台10cと、前記第1の収納部を介して前記保持台と対向位置する枕部10dが形成されており、前記第1の収納部10aの上方には、第2の収納部10bが形成されている。
【0019】
前記保持台10cの上面には、後述される圧電振動板2と接合される一対の端子電極12,13がセラミックベースの短辺方向に並んで形成されている。各端子電極12,13は図示しない導電ビアやキャスタレーション等により引き出され、最終的に外部端子へと導かれるように構成されている。このような構成のセラミックベースは周知のセラミック積層技術やメタライズ技術を用いて形成され、端子電極は前述の金属層11a形成と同様にタングステンあるいはモリブデン等によるメタライズ層の上面にニッケルメッキ層、金メッキ層の各層が形成された構成である。
【0020】
前記保持台の端子電極の上部には、圧電振動板2が搭載される。圧電振動板2は例えば矩形状のATカット水晶振動板であり、その表裏面に対向して一対の矩形状励振電極21,22と、この励振電極を前記セラミックベースの保持台に形成された端子電極12,13と導通するための引出端部電極23,24と、励振電極を引出端部電極に導通させるための引出電極25,26が形成されている。前記引出端部電極23,24には、圧電振動板2の下面側から上面側に向かって開口面積が広がるように、例えば円錐状に形成された貫通孔28(ガス抜き部)が後述するレーザ照射(ビーム)による方法等で形成されている。なお、これらの電極は、例えば、クロムの下地電極層と、銀または金の中間電極層と、クロムの上部電極層とから構成された積層薄膜、クロムの下地電極層と、銀または金の中間電極層と、ニッケルの上部電極層とから構成された積層薄膜、あるいはクロムの下地電極層と、銀または金の上部電極層とから構成された積層薄膜である。これら各電極は真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により形成することができる。なお、クロムやニッケルの変わりにアルミの上部電極層、あるいは中間層が金の場合は銀の上部電極層を形成してもよい。
【0021】
圧電振動板2とセラミックベース1との接合は、ペースト状であり金や銀等の導電フィラーである金属微小片を含有するシリコーン系、ウレタン系、あるいは変成エポキシ系の導電樹脂接着剤Sを用いている。図1,図2に示すように、前記導電性樹脂接着剤Sは前記端子電極12,13の上部に塗布されるとともに、前記圧電振動板の貫通孔28の中央部に前記導電性樹脂接着剤Sが圧電振動板2と接触する中央部を重ね合わせ、前記端子電極12,13の上部と前記引出端部電極23,24の下側に介在する導電性樹脂接着剤Sのみを硬化することにより前記圧電振動板2が電気機械的に接合される。この時、前記貫通孔28の一部に前記導電性樹脂接着剤Sの一部が食い込んだ状態となることがより好ましい。以上により、前記圧電振動板3の一端部(自由端となる枕部10d側)をセラミックベース1の第1の収納部10aの底面から隙間を設けながら、前記圧電振動板3の対向する他端部を前記ベースの保持台10cに接合して、片持ち保持される。
【0022】
このように構成することで、前記圧電振動板2の上部に導電性樹脂接着剤Sが存在しないので、圧電振動デバイスの低背化が行える。また、圧電振動板2とセラミックベース1に挟まれた領域に存在する導電性樹脂接着剤Sは、開口面積が次第に拡大する貫通孔28からなるガス抜き部により前記溶剤の揮発が促進されるので、塗布された硬化前の導電性樹脂接着剤Sの溶剤が導電性樹脂接着剤Sの内部に残存することがなくなる。結果として、硬化後の導電性樹脂接着剤Sの一部に硬化が不完全な領域である絶縁領域や接合不完全領域が形成されることがなくなり、圧電振動板2とセラミックベース1の接合強度や導電性能が低下することがない。また、前記導電性樹脂接着剤Sが端子電極12,13から剥がれ、環境温度変化によって周波数ジャンプが発生したり、周波数変動のばらつきが生じることもなくなる。加えて、貫通孔28の一部に前記導電性樹脂接着剤Sの一部が食い込むので、アンカー効果を生じて圧電振動板2とセラミックベース1さらなる接合強度が向上する。
【0023】
セラミックベース1を気密封止する蓋(図示せず)は、例えば、コバール等からなるコア材に金属ろう材(封止材)が形成された構成であり、より詳しくは、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、銅層、銀ろう層の順、またはニッケル層、コバールコア材、金錫ろう層の順の多層構成であり、銀ろう層や金錫ろう層がセラミックベースの第1の金属層と接合される構成となる。蓋の平面視外形はセラミックベースの当該外形とほぼ同じであるか、若干小さい構成となっている。なお、前記蓋は金属材料に限るものではなく、セラミック材料やガラス材料など気密封止するやり方やベース材質により最適な材料を選択することができる。
【0024】
収納部10に圧電振動板2が格納されたセラミックベース1を前記蓋にて被覆し、金属蓋の封止材とセラミックベースの封止用部材を溶融硬化させ、気密封止を行うことで表面実装型圧電振動デバイスの完成となる。本実施の形態においては、封止用の金属リングを用いないシーム溶接あるいは雰囲気加熱による気密封止を行っており、表面実装型圧電振動デバイスの小型化低背化に貢献する構成である。
【0025】
本発明の第1の実施形態では、図3に示すように、圧電振動板2の下面側から上面側に向かって開口面積が広がるように形成された貫通孔28の形成は、レーザビーム(ビーム)を照射することで形成している。以下、図面にしたがって説明する。まず、図3(a)に示すように、セラミックベース1の端子電極12,13(12のみ図示)の上面に対して、図示しないディスペンサーから供給された導電性樹脂接着剤Sを塗布する。次に、図3(b)に示すように、前記導電性樹脂接着剤Sが塗布された端子電極12,13(12のみ図示)の上面に対して圧電振動板2を搭載し仮硬化する。最後に、図3(c)に示すように、前記仮硬化された圧電振動板2の引出端部電極部分23,24(23のみ図示)のうち、前記導電性樹脂接着剤Sと前記圧電振動板2とが接触する中央部分に対してレーザビームを照射し、圧電振動板と各電極の一部を溶融させることで、貫通孔28を形成している。この時、レーザビーム照射部から遠ざかる圧電振動板2の下面側に向かってレーザビームのエネルギが減衰することで、開口面積が次第に狭まる構成とすることができる。このような方法により貫通孔を形成することで、レーザビーム照射前の圧電振動板2は表裏面の方向性がないので、どちらの主面からも搭載することができ、極めて生産性を高められる。しかも、セラミックベース1の上部に圧電振動板2が導電性樹脂接着剤Sにより仮硬化された状態で、圧電振動板2の引出端部電極部分23,24の上部で、導電性樹脂接着剤Sと圧電振動板2が接触する中央部分を狙ってレーザ照射することができるので、本発明の特徴的な貫通孔が位置ずれすることなく正確に、かつ極めて容易に形成することができる。
【0026】
上記実施形態では、セラミックベースの上部に圧電振動板が導電性樹脂接着剤により仮硬化された状態で、レーザ照射する例について説明しているが、前記セラミックベースへの搭載前の圧電振動板に対してレーザ照射してもよい。例えば、複数の圧電振動板が収納治具にマトリックス状に収まった状態で順次一括してレーザ照射すると好ましい。また、圧電振動板の下面側から上面側に向かって開口面積が広がるように形成された貫通孔について、レーザなどのビーム照射の例を説明している。しかしながら、エッチング加工や研削加工等の手法により圧電振動板に予め貫通孔を形成した後に、引出端部電極を含めた各電極を形成してもよい。
【0027】
次に、第2の実施形態について、図面とともに説明する。図4は本発明の第2の実施形態を示す圧電振動板の底面図(下側)であり、図5は本発明の第2の実施形態を示すセラミックベースの平面図(上側)であり、図6は本発明の第2の実施形態を示す蓋をする前の圧電振動デバイスの平面図(上側)であり、図7は図6のB−B線に沿った断面図である。なお、基本構成は上述の第1の実施形態と同じであるので、同じ構成部分については同番号を用いるとともに、相違点のみを説明する。
【0028】
本発明の実施形態では、図4に示すように、前記圧電振動板の引出端部電極23,24には、当該引出端部電極の中央凹部230,240を起点として、引出端部電極の端部で前記励振電極21,22から遠ざかる方向に開口面積が広がるように形成された溝231,241(ガス抜き部)が少なくとも1つ以上具備した構成となっている。このような電極は、前記引出端部電極23,24のみが露出し、かつ前記中央凹部230,240と溝231,241が覆われたマスク治具を用いて、再度真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により上部に電極を積層し、前記中央凹部230,240と溝231,241の周囲の電極厚みを増大させることで極めて容易に作成することができる。なお、本発明の第2の実施形態では圧電振動板の底面(下側)のみに前記中央凹部や溝を形成しているが、平面側(上面)にも形成してもよく、この構成によれば圧電振動板の表裏主面の方向性がなくなりより生産性に優れたものとなる。
【0029】
また図5に示すように、前記セラミックベースの端子電極12,13には、当該端子電極の中央凹部120,130を起点として、端子電極の端部で前記圧電振動板の励振電極21,22から遠ざかる方向に開口面積が広がるように形成された溝121,131(ガス抜き部)が少なくとも1つ以上具備した構成となっている。このような電極は、前記端子電極12,13のみが露出し、かつ前記中央凹部120,130と溝121,131が覆われたマスク治具を用いて、再度メタライズ材料を厚膜印刷することにより上部に電極を積層し、前記中央凹部120,130と溝121,131の周囲の電極厚みを増大させることで極めて容易に作成することができる。
【0030】
このように構成された、圧電振動板2とセラミックベース1との接合は、ペースト状であり金や銀等の導電フィラーである金属微小片を含有するシリコーン系、ウレタン系、あるいは変成エポキシ系の導電樹脂接着剤Sを用いている。図6,図7に示すように、前記導電性樹脂接着剤Sは前記セラミックベースの端子電極の上部であり前記中央凹部120,130を中心に塗布されるとともに、当該塗布された導電性樹脂接着剤の中心は前記圧電振動板の引出端部電極の中央凹部230,240の中心近傍に重ね合わされる。そして、前記端子電極12,13の上部と前記引出端部電極23,24の下側に介在する導電性樹脂接着剤Sのみを硬化することにより前記圧電振動板2が電気機械的に接合される。以上により、前記圧電振動板3の一端部(自由端となる枕部10d側)をセラミックベース1の第1の収納部10aの底面から隙間を設けながら、前記圧電振動板3の対向する他端部を前記ベースの保持台10cに接合して、片持ち保持される。
【0031】
このように構成することで、前記圧電振動板2の上部に導電性樹脂接着剤Sが存在しないので、圧電振動デバイスの低背化が行える。また、圧電振動板2とセラミックベース1に挟まれた領域に存在する導電性樹脂接着剤Sは、開口面積が次第に拡大する圧電振動板の引出端部電極の溝231,241、あるいは開口面積が次第に拡大するセラミックベースの端子電極の溝121,131からなるガス抜き部により前記溶剤の揮発が促進されるので、塗布された硬化前の導電性樹脂接着剤Sの溶剤が導電性樹脂接着剤Sの内部に残存することがなくなる。結果として、硬化後の導電性樹脂接着剤Sの一部に硬化が不完全な領域である絶縁領域や接合不完全領域が形成されることがなくなり、圧電振動板2とセラミックベース1の接合強度や導電性能が低下することがない。また、前記導電性樹脂接着剤Sが端子電極12,13から剥がれ、環境温度変化によって周波数ジャンプが発生したり、周波数変動のばらつきが生じることもなくなる。加えて、圧電振動板の引出端部電極の溝231,241は、マスク治具と蒸着やスパッタリングなどによる薄膜形成手段により極めて容易に作成でき、セラミックベースの端子電極に形成される溝121,131は、メタライズ材料を厚膜印刷技術により容易に作成できるので、極めて実用的な構成となる。
【0032】
また、本発明の第2の実施形態では、圧電振動板の引出端部電極とセラミックベースの端子電極の両方に、ガス抜け部としての電極の端部方向に開口面積が広がる溝を形成し、かつ引出端部電極と端子電極の溝形状をほぼ同一形状としてお互いに重ね合わせているので、ガス抜き効果が極めて高いものである。さらに、前記圧電振動板の引出端部電極の溝、またはセラミックベースの端子電極の溝は、中央を起点として圧電振動板の励振電極から遠ざかる方向に形成しているので、溶剤の揮発成分が励振電極に付着することで圧電振動デバイスの電気的特性が低下する危険性を低減し、より信頼性の高いガス抜き構造が得られる。
【0033】
なお、本発明の第2の実施形態では、圧電振動板の引出端部電極とセラミックベースの端子電極の両方に、ガス抜け部としての電極の端部方向に開口面積が広がる溝が形成されたものを説明しているが、これらの少なくとも一方のみに前記溝が形成されたものでも適用でき、ガス抜け効果が十分に期待できる。
【0034】
本発明の各実施形態では、圧電振動板を片端側で保持する構成を例にしているが、圧電振動板の両端側で保持する構成にも適用できる。また、封止用の金属リングを用いないシーム溶接による気密封止を例にしているが、封止用の金属リングを用いてもよく、レーザや電子ビームなどのビーム封止や、金錫ろう材以外の低融点金属ろう材を用いた雰囲気加熱封止、封止材としてガラスを用いたガラス封止等であってもよい。また、セラミックベースを用いた表面実装型圧電振動デバイスについて例示したが、ガラスを主材料としたベースや金属を主体としたパッケージに適用することもできる。また、水晶フィルタや他の電子素子を一体的に収納した水晶発振器についても適用することができる。
【0035】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施できるので、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求範囲によって示すものであって、明細書本文に拘束されるものではない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す蓋をする前の圧電振動デバイスの平面図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】本発明の第1の実施形態の製造工程を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す圧電振動板の底面図。
【図5】本発明の第2の実施形態を示すセラミックベースの平面図。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す蓋をする前の圧電振動デバイスの平面図。
【図7】図6のB−B線に沿った断面図。
【符号の説明】
【0037】
1 セラミックベース
2 圧電振動板
S 導電性樹脂接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動板とベースと蓋を有する圧電振動デバイスであって、
前記ベースには前記圧電振動板を接合する端子電極を有し、
前記圧電振動板には励振電極と前記ベースの端子電極と接続される引出端部電極と、前記励振電極と前記引出端部電極を接続する引出電極とを有しており、
前記端子電極の上部と前記引出端部電極の下側に介在する導電性樹脂接着剤のみにより前記圧電振動板が接合され、
前記引出端部電極には、圧電振動板の下面側から上面側に向かって開口面積が広がるように形成された貫通孔を有し、当該貫通孔の中央部に前記導電性樹脂接着剤が圧電振動板と接触する中央部を重ね合わせて接合したことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
圧電振動板とベースと蓋を有する圧電振動デバイスであって、
前記ベースには前記圧電振動板を接合する端子電極を有し、
前記圧電振動板には励振電極と前記ベースの端子電極と接続される引出端部電極と、前記励振電極と前記引出端部電極を接続する引出電極とを有しており、
前記端子電極の上部と前記引出端部電極の下側に介在する導電性樹脂接着剤のみにより前記圧電振動板が接合され、
前記引出端部電極、または端子電極には、前記導電性樹脂接着剤が圧電振動板あるいはベースと接触する中央部から、前記導電性樹脂接着剤が圧電振動板あるいはベースと接触しない領域に向かって、開口面積が次第に拡大する溝を形成したことを特徴とする圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−252795(P2008−252795A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94696(P2007−94696)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】