説明

圧電振動子、及び圧電発振器

【課題】衝撃が加わることにより圧電振動素子の自由端部が厚さ方向に振動してリッドと
衝突しダメージを受けるという不具合を解決するために、圧電振動素子搭載時におけるリ
ッドとのギャップを微調整するという煩雑な作業を経ることなく、衝撃による圧電振動素
子の自由端の振幅を大幅に減少させてリッドとの衝突を防止することができる圧電振動子
、及び圧電発振器を提供する。
【解決手段】上部に素子搭載パッド7を有すると共に下部に実装電極10を有した回路基
板2と、素子搭載パッド上に一方端を固定された圧電振動素子20と、圧電振動素子を含
む回路基板上の空間を包囲するリッド11と、を備え、圧電振動素子の上面の少なくとも
一部を跨ぐように両端を回路基板に固定されたワイヤー30と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電振動素子を片持ち支持した構造を備えた圧電振動子等の表面実装型圧電デ
バイスの改良に関し、落下時等に発生する衝撃によって圧電振動子の自由端部が振動して
パッケージを閉止するリッドに衝突することを防止できる圧電振動子、及び圧電発振器に
関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動素子等の圧電振動素子は、圧電振動子、圧電発振器等に組み込まれて使用され
る。圧電振動素子は、目標とする共振周波数を得る為に好適な肉厚の振動部を有した圧電
基板に励振電極やリード端子等を構成する金属膜を蒸着等によって形成した構成を備えて
いる。
表面実装型の圧電振動子は、セラミック等の絶縁材料から成るパッケージの凹陥部内に
素子搭載パッドを設け、この素子搭載パッド上に塗布した熱硬化性の導電性接着剤により
圧電振動素子の一端部を片持ち状態で支持してから、凹陥部を金属蓋(リッド)により気
密封止した構成を有している。
圧電振動素子の素子搭載パッド上への搭載は自動マウンターによって行われるのが一般
である。自動マウンターは、吸着ノズルの吸着面に設けた複数の通気孔から供給される負
圧によって圧電振動素子の片面を吸着しつつ、パッケージの凹陥部の内底面上に設けた素
子搭載パッド上に塗布した導電性接着剤の直上位置に圧電振動素子の一端部下面を接近さ
せた状態で負圧供給を中止し、更に各通気孔から正圧を供給開始して圧電振動素子を吸着
面から落下させる。圧電振動素子はその一端部下面を導電性接着剤の直上位置に近接させ
た状態で至近距離から落下して導電性接着剤上に着座することにより接着がなされる。
【0003】
ところで、表面実装型圧電振動子の小型化、低背化が進むに連れてパッケージの凹陥部
内における圧電振動素子の収納スペースが減少し、素子搭載パッド上に接続固定された圧
電振動素子の一端部とは反対側の自由端部と金属蓋天井面との間のギャップが狭小化し易
くなっている。
このようにパッケージの小容積化が進む中で、圧電振動素子面が金属蓋天井面と平行な
水平姿勢となるように搭載した場合、完成品としての圧電デバイスに落下衝撃が加わった
時に圧電振動素子は振動して厚さ方向へ撓みを起こす。このとき圧電振動素子自由端部が
金属蓋に衝突すると、その瞬間に振動数が変化してずれを起こしたり、破損する虞がある

このような不具合に対処するために圧電振動素子の一端部下面を素子搭載パッド上の導
電性接着剤に搭載する際の姿勢を、圧電振動素子の自由端部が上向きに傾斜するように吸
着搭載ノズルの吸着面と搭載基板面(凹陥部内底面)との相対的な傾斜角度を調整するよ
うにした技術が提案されている。圧電振動素子の自由端部と金属蓋との間のギャップを狭
くすることにより、衝撃により自由端の振動が発生した直後に金属蓋と自由端とを接触さ
せることにより制振、緩衝させることが可能となる。
【0004】
特許文献1には落下による衝撃を緩和してダメージを減殺するために圧電振動素子と金
属蓋との間の距離を狭く規定して、圧電振動素子自由端の振動の初期段階における金属蓋
との接触により制振させて衝撃を小さくする技術が提案されている。
しかし、圧電振動素子は極めて軽量であるため落下時に空気抵抗による影響を受けやす
く、自動マウンターによる搭載工程において至近距離から落下させたとしても一端部下面
が導電性接着剤面に到達するまでの過程中に圧電振動素子の下面全体に加わる空気抵抗の
バラツキによって落下姿勢が一定にならない。即ち、搭載時の僅かな搭載角度のばらつき
、導電性接着剤の硬化時の応力による影響等により固定後の圧電振動素子の姿勢にばらつ
きが発生し易く、圧電振動素子の自由端部と金属蓋下面との間のギャップを一定に確保す
ることは極めて困難であった。
また、パッケージ凹陥部内に設けたパッドと圧電振動素子上面に設けたリード端子との
間をボンディングワイヤーにより導通接続する必要がある場合に、圧電振動素子と金属蓋
との間の間隔が狭小過ぎるとボンディングワイヤーを配線することが不可能となる。
【0005】
特許文献2には、衝撃によって圧電振動素子の自由端が金属蓋と衝突することを防ぐた
めに圧電振動素子の自由端部上に緩衝材としての振動制御体を配置することにより、圧電
振動素子と金属蓋とが直接衝突することを防止する技術が開示されている。これによれば
、振動制御体により形成される金属蓋との間のスペースを利用してボンディングワイヤー
を配線することが可能となる。
しかし、圧電振動素子上に振動制御体を固定すると、圧電振動素子の振動にCI値の増
加や温度特性の乱れ等の不具合が発生し易くなる。また、振動制御体として使用する樹脂
材料によってはアウトガスの発生によりエージング特性に悪影響を及ぼす虞がある。更に
、金属蓋との間の距離を一定に保つことが難しい圧電振動素子の上面に樹脂材料を塗る場
合には、振動制御体と金属蓋との間のギャップ調整が更に困難化し、製造が難しくなる。
【0006】
特許文献3には、金属蓋の一部をパッケージの凹陥部側へ向けてへこませて圧電振動素
子との間の距離を短くすることにより、落下時の衝撃を緩和する技術が開示されている。
これによれば、金属蓋のへこんでいない部分に形成される圧電振動素子との間のスペー
スを利用してボンディングワイヤーを配線することが可能となる。
しかし、これによれば金属蓋の構造が複雑化するため加工の手数が増大してコストアッ
プを招くばかりでなく、パッケージに対する金属蓋の組付け方向を一義的に確定させる必
要があるため、金属蓋を組み付ける際に金属蓋の方向、表裏を揃える作業が必要となり製
造手数が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−186545号公報
【特許文献2】特開2004−242112公報
【特許文献3】特開2007−281572公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、落下時の衝撃等によってパッケージ内に片持ち支持された圧電振動素子
が厚さ方向に大きく振れて金属蓋と衝突して破損するという不具合を解決するために、従
来は圧電振動素子と金属蓋との間隔を狭くすることによって接触時の衝撃を緩和させてい
たが、両者の間隔を安定してコントロールすること自体が難しく効果的でなかった。
また、圧電振動素子上に振動制御体としての樹脂材料を塗布する方法は、樹脂材料に起
因した圧電デバイスの特性の劣化を招く虞がある。また、金属蓋にへこみを設けて圧電振
動素子と金属蓋との間隔を狭くする方法は、製造手数の増大を招く虞があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、パッケージ等の回路基板上に設けた素子搭
載パッド上に圧電振動素子の一端部を固定して片持ちした状態で圧電振動素子を含む回路
基板上の空間をリッドにより包囲した構造の圧電デバイスにおいて、衝撃が加わることに
より圧電振動素子の自由端部が厚さ方向に振動してリッドと衝突しダメージを受けるとい
う不具合を解決するために、圧電振動素子搭載時におけるリッドとのギャップを微調整す
るという煩雑な作業を経ることなく、衝撃による圧電振動素子の自由端の振幅を大幅に減
少させてリッドとの衝突を防止することができる圧電振動子、及び圧電発振器を提供する
ことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態又は適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]この圧電振動子は、上部に素子搭載パッドを有すると共に下部に実装電極
を有した回路基板と、該素子搭載パッド上に一方端を固定された圧電振動素子と、前記圧
電振動素子を含む前記回路基板上の空間を包囲するリッドと、を備えた圧電振動子であっ
て、前記圧電振動素子の上面の少なくとも一部を跨ぐように両端を前記回路基板に固定さ
れたワイヤーと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
圧電振動子をこのように構成すると、回路基板上に圧電振動素子の一端部を固定して片
持ちした状態で圧電振動素子を含む回路基板上の空間をリッドにより包囲した構造の圧電
振動子において、衝撃が加わることにより圧電振動素子の自由端部が厚さ方向に振動して
リッドと衝突しダメージを受けるという不具合を解決することができる。使用するワイヤ
ーの本数、配線経路は任意である。
【0012】
[適用例2]この圧電振動子は、適用例1において、前記回路基板に設けた単一の前記
素子搭載パッド上に前記圧電振動素子の一方端を固定した単一箇所支持構造であることを
特徴とする。
【0013】
圧電振動素子の一方端を固定した単一箇所支持構造の圧電振動子においては、圧電振動
素子上のリード端子の一方を回路基板側に設けた素子接続パッドとの間でワイヤーボンデ
ィングする必要があるが、ワイヤーを配線するために圧電振動素子とリッドとの間のギャ
ップを十分に広く確保する必要がある。この場合、衝撃によって圧電振動素子の自由端が
厚さ方向に大きく振れるとリッドと衝突してダメージを受ける虞がある。そこで、ワイヤ
ーを圧電振動素子の上面に跨って配線することにより、圧電振動素子がリッドと衝突する
ことを未然に防止することが可能となる。
【0014】
[適用例3]この圧電振動子は、適用例1又は2において、前記ワイヤーは、常時にお
いて前記圧電振動素子と非接触となるように離間配置されていることを特徴とする。
【0015】
ワイヤーとの常時接触による圧電振動素子の特性の劣化が懸念される場合には、非接触
とすることが好ましい。
【0016】
[適用例4]この圧電振動子は、適用例1乃至3の何れか一項において、前記ワイヤー
を、前記圧電振動素子の自由端部側上面を跨ぐように配線したことを特徴とする。
【0017】
ワイヤーを配線する経路、位置としては、圧電振動素子の自由端部側上面の上方である
ことが好ましい。即ち、圧電振動素子の励振電極を回避した自由端部の上方にワイヤーを
配線することにより自由端部がリッドと接触することを効果的に防止できる。
【0018】
[適用例5]この圧電振動子は、適用例1乃至3の何れか一項において、前記ワイヤー
を、前記圧電振動素子の自由端部側の2つの角隅部上面を夫々跨ぐように配線したことを
特徴とする。
【0019】
2つの角隅部上面の上方に夫々ワイヤーを配線することにより、個々のワイヤーを短尺
化できるので、衝撃発生時のワイヤーによる圧電振動素子の支持強度を高めることができ
る。ワイヤーの断線率も大幅に減少させることができる。
【0020】
[適用例6]この圧電発振器は、上部に素子搭載パッド、及びIC部品接続用パッドを
有すると共に下部に実装電極を有した回路基板と、前記素子搭載パッド上に一方端を固定
された圧電振動素子と、上記回路基板上に搭載されたIC部品と、前記圧電振動素子及び
前記IC部品を含む前記回路基板上の空間を包囲するリッドと、を備えた圧電発振器であ
って、前記圧電振動素子の上面の少なくとも一部を跨ぐように両端を前記IC部品接続用
パッドと該IC部品とに固定されたワイヤーを備えたことを特徴とする。
【0021】
回路基板上に圧電振動素子とIC部品を搭載した圧電発振器においては、IC部品上の
電極を回路基板上のIC部品接続用パッドとワイヤーボンディングするが、これらのワイ
ヤーのうちの少なくとも一本を利用して圧電振動素子の制振用、リッドとの衝突防止用と
して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)(b)及び(b)は本発明の一実施形態に係る圧電振動子の外観斜視図、リッドを除去した状態の平面図、及び縦断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る圧電振動子のリッドを除去した状態の平面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る圧電振動子のリッドを除去した状態の平面図である。
【図4】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る水晶振動子の構成を示す要部平面図、及び縦断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る圧電振動子のリッドを除去した状態の平面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る圧電振動子のリッドを除去した状態の平面図である。
【図7】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る圧電発振器(水晶発振器)の構成を示す要部平面図、及び縦断面図であり、(c)は変形例の縦断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る水晶発振器(圧電発振器)の内部構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)(b)及び(b)は本発明の一実施形態に係る圧電振動子の外観斜視図、リ
ッドを除去した状態の平面図、及び縦断面図である。
水晶振動子(圧電振動子)1は、セラミック等の絶縁材料から成るパッケージ本体(回
路基板)2と、パッケージ本体2の外周壁5の上面に固定されて凹陥部3内を気密封止す
るリッド(金属蓋)15と、凹陥部3内に片持ち状態で配置される水晶振動素子(圧電振
動素子)20と、を有する。このパッケージ本体2は、セラミック製の底板4と、底板4
の上面周縁に沿って所要幅にて積層されたセラミック製の環状の外壁(外周壁)5と、外
周壁5の上面に沿って固定された環状のシールリング(コバール)6と、凹陥部3の内底
面上に露出配置されて水晶振動素子の一方のリード端子と接続固定される単一の素子搭載
パッド7と、凹陥部内底面の他の部位に形成され且つボンディングワイヤー9を介して水
晶振動素子の他のリード端子と接続される素子接続パッド8と、底板4の外底面に露出配
置された実装電極10と、実装電極10と素子搭載パッド7及び素子接続パッド8等との
間を接続する図示しない内部導体と、を備えている。
【0024】
水晶振動素子20は、図1(b)(c)に示すように水晶基板21の両主面上に励振電
極22を夫々形成した構成を備え、励振電極22に所要の交番電流を通電したときに表裏
の励振電極22により挟まれた水晶基板部分(主振動部)が厚み滑りを起こすと共にエネ
ルギー閉じ込め現象を起こして、励振電極付着部分に主振動が励起される。水晶振動素子
20は、各励振電極22から基板の一端縁中央部に夫々延びるリード端子22a、22b
を備え、下面側のリード端子22aを含む基板端部下面は素子搭載パッド7上の熱硬化性
の導電性接着剤25によって電気的機械的に接続固定される。また、上側のリード端子2
2bはボンディングワイヤー9により素子接続パッド8と電気的に接続されている。
水晶振動子1は、パッケージ本体(回路基板)2に設けた単一の素子搭載パッド7上に
水晶振動素子20の一端縁中央部のみを固定した単一箇所支持構造であり、水晶振動素子
の一端縁の二箇所を支持する従来タイプに比して導電性接着剤からの応力による歪みが共
振周波数に及ぼす影響を減少することができる。
パッケージ本体2の内底面であって、水晶振動素子20の幅方向両側に相当する位置に
は、夫々ノンコネクションのパッド15が配置され、各パッド15には緩衝部材としての
ワイヤー30の両端部が固定されている。パッド15は、パッケージ本体の内底面(セラ
ミック面)の平坦面にメタライズにより形成してもよいし、内底面に突設した段差面上に
メタライズにより形成してもよい。
【0025】
本実施形態に係る水晶振動子1は、水晶振動素子20の上面の少なくとも一部を跨ぐよ
うに、且つ常時において水晶振動素子と非接触となるようにループを形成するワイヤー(
緩衝部材)30を配置した構成が特徴的である。ワイヤー30としては、Al、Au等か
ら成る弾性、可撓性を有したボンディングワイヤーが好ましく、ワイヤーボンディング装
置によってワイヤー30の両端部を各パッド15に固定することにより配線を行う。ワイ
ヤー30は、衝撃によって水晶振動素子20が厚さ方向に振動した時にその自由端寄り適
所(励振電極22を回避した部位)と接触することにより緩衝して自由端部がリッド底面
と接触することを防止する手段である。また、弾性体としてのワイヤー30は、衝撃時の
水晶振動素子の自由端部の振れ幅を短い範囲に極限しつつクッション作用によって制振さ
せたり、過度の変形によるダメージを防止する。
従ってワイヤー30は、衝撃が加わらない常時においては、水晶振動素子20と非接触
状態を維持する一方で、衝撃によって水晶振動素子20がリッド方向に振れた時にはこれ
と接触して振れ幅を狭く制限し、更にその弾性、柔軟性により振幅のエネルギーを吸収緩
和するようにその材料、線径、配線経路(配線形状)を設定すればよい。ワイヤーボンデ
ィング装置によるワイヤーの配線精度は高いため、水晶振動素子との接触を回避しつつ安
定した配線が可能となる。
なお、ワイヤー30とリッドとは必ずしも非接触とする必要はないが、リッドと接触し
ない程度にワイヤーの頂部高さを低く留めることにより、水晶振動素子の自由端の振れ幅
を少なく抑える効果を発揮することができる。
【0026】
また、水晶振動素子の自由端が通常よりも上向きに傾いた状態で固定された状態でワイ
ヤー30を各パッド間にボンディングした際には、ワイヤーが水晶振動素子20と接触す
ることも予想される。この接触状態でリッド11により凹陥部3を気密封止した場合、製
品出荷前の特性検査において特性劣化が検出されるため、不良品が出荷される虞はない。
即ち、ワイヤーと圧電振動素子との接触に起因した製品不良を検出する精度を高めること
ができる。
また、パッケージの内部クリアランスを広く確保した場合であっても、衝撃が加わった
際の水晶振動素子の振れ幅をワイヤーによって狭い範囲に極限できるため、水晶振動素子
がリッドと直接衝突してダメージを受けたり、割れが起きる事態をなくすることができる

また、特許文献2のように水晶振動素子側に樹脂を付加する等の加工を施すのでなく、
しかもワイヤーは金属製であるため、アウトガス等によってエージング特性に悪影響を及
ぼすことがない。
リッドとしても方向性のない平坦な板材を使用することができ、しかもワイヤーの材料
費も僅かであるため、コスト的にも有利である。
なお、図1の実施形態ではワイヤー30を一本のみ使用する例を示したが、一本のみで
は十分な強度、制振能力を確保できない場合には、図2のように二本、或いはそれ以上の
本数を用いても良い。
【0027】
次に、図1、図2の実施形態のように水晶振動素子20を間に挟んでパッケージ内底面
の幅方向両側にパッドを配置する以外にも、図3に示すように水晶振動素子の2つの自由
端側角隅部(コーナー部)に跨って夫々ワイヤー30を配線できるようにパッド15を二
個ずつ配置してもよい。即ち、図3の実施形態では、水晶振動素子の自由端側角隅部の上
面に跨るように且つ水晶振動素子とは非接触状態で各ワイヤー30をループ状に配線する
ことにより、衝撃によって水晶振動子が厚さ方向に振れた時に各角隅部上面(外周端縁)
を各ワイヤー30により抑えて振れ幅を極限し、且つ制振することが可能となる。このた
め、水晶振動素子とリッドとの衝突によるダメージ発生、割れを防止できる。
角隅部の上面に跨るように配線されるワイヤー30は、図1、図2の例に比して短尺と
なるため、ループの高さをコントロールし易くなる。図3の実施形態のワイヤーによる水
晶振動素子の支持強度は、図2の例のワイヤーよりも強くなる。
このように使用するワイヤーの本数が増えれば、個々のワイヤーに加わる負荷が減少し
、水晶振動素子の自由端部が大きく振れて接触したときのワイヤーの断線、変形等を防止
することができる。
なお、GPS用に使用される水晶振動子のように高精度な周波数を必要とされる場合に
は水晶振動素子とワイヤーとの常時接触は特性を著しく悪化させる原因となるため回避す
る必要がある。一方、クロック源としての水晶振動子であれば、水晶振動素子がワイヤー
と常時接触しても差し支えない場合もあり得る。
【0028】
次に、図4(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る水晶振動子の構成を示す要
部平面図、及び縦断面図である。
水晶振動子(圧電振動子)1は、セラミック等の絶縁材料から成るパッケージ本体(回
路基板)2と、パッケージ本体2の外周壁5の上面に固定されて凹陥部3内を気密封止す
るリッド(金属蓋)15と、凹陥部3内に配置される水晶振動素子(圧電振動素子)20
と、を有する。このパッケージ本体2は、セラミック製の底板4と、底板4の上面周縁に
沿って所要幅にて積層されたセラミック製の環状の外壁(外周壁)5と、外周壁5の上面
に沿って固定された環状のシールリング(コバール)6と、凹陥部3の内底面上に離間し
て露出配置された2つの素子搭載パッド7と、底板4の外底面に露出配置された実装電極
10と、実装電極10と素子搭載パッド7等との間を接続する図示しない内部導体と、を
備えている。
【0029】
水晶振動素子20は、図示したように水晶基板21の両主面上に励振電極22を夫々形
成した構成を備え、励振電極22に所要の交番電流を通電したときに表裏の励振電極22
により挟まれた水晶基板部分(主振動部)が厚み滑りを起こすと共にエネルギー閉じ込め
現象を起こして、励振電極付着部分に主振動が励起される。水晶振動素子20は、各励振
電極22から基板の一端縁に延びるリード端子22aを備え、各リード端子を含む基板端
部下面は各素子搭載パッド7上の熱硬化性の導電性接着剤25によって電気的機械的に接
続固定される。この例では、各リード端子22aの内の上面側のリード端子は基板端縁を
超えて下面側に先端を導出させており、基板下面に離間配置された各リード端子の端部は
、夫々各素子搭載パッド7上の導電性接着剤25と一対一にて接続される。
パッケージ本体の内底面であって、水晶振動素子20の幅方向両側に相当する位置には
、パッド15が配置され、各パッド15には緩衝部材としてのワイヤー30の両端部が固
定されている。パッド15は、パッケージ本体の内底面(セラミック面)の平坦面にメタ
ライズにより形成してもよいし、内底面に突設した段差面上にメタライズにより形成して
もよい。
【0030】
本実施形態に係る水晶振動子1は、水晶振動素子20の上面の少なくとも一部を跨ぐよ
うに且つ常時において水晶振動素子と非接触となるようにループを形成するワイヤー(緩
衝部材)30を配置した構成が特徴的である。ワイヤー30としては、Al、Au等から
成るボンディングワイヤーが好ましく、ワイヤーボンディング装置によってワイヤー30
の両端部を各パッド15に固定する。ワイヤー30は、衝撃によって水晶振動素子20が
厚さ方向に振動した時にその自由端寄り適所と接触することにより緩衝して自由端部がリ
ッド底面と接触することを防止する手段である。
従ってワイヤー30は、衝撃が加わらない常時においては、水晶振動素子20、及びリ
ッド11と非接触状態を維持する一方で、衝撃によって水晶振動素子20がリッド方向に
振れた時にはこれと接触して振れ幅を狭く制限し、更にその弾性により振幅のエネルギー
を吸収緩和するようにその材料、線径、配線経路(配線形状)を設定すればよい。ワイヤ
ーボンディング装置によるワイヤーの配線精度は高いため、水晶振動素子との接触を回避
しつつ安定した配線が可能となる。
柔軟性、弾性を有したワイヤー30を設けたことによる効果は、図1の実施形態におい
て述べた点と同様である。
なお、図4の実施形態ではワイヤー30を一本のみ使用する例を示したが、図5のように
二本、或いはそれ以上の本数を用いても良い。
【0031】
次に、図4、図5の実施形態のように水晶振動素子20を間に挟んでパッケージ内底面
の幅方向両側にパッドを配置する以外にも、図6に示すように水晶振動素子の2つの自由
端側角隅部(コーナー部)に跨って夫々ワイヤー30を配線できるように各角隅部毎にパ
ッド15を二個ずつ配置してもよい。即ち、図6の実施形態では、水晶振動素子の自由端
側角隅部の上面に跨るように且つ水晶振動素子とは非接触状態で各ワイヤー30をループ
状に配線することにより、衝撃によって水晶振動子が厚さ方向に振れた時に各角隅部上面
(外周端縁)を各ワイヤー30により抑えて振れ幅を極限し、且つ制振することが可能と
なる。このため、水晶振動素子とリッドとの衝突によるダメージ発生、割れを防止できる

【0032】
次に、図7(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る圧電発振器(水晶発振器)の
構成を示す要部平面図、及び縦断面図であり、(c)は変形例の縦断面図である。なお、
図1の実施形態に係る水晶振動子と同一部分には同一符号を付して説明する。
本実施形態に係る水晶発振器(圧電発振器)50は、上部に素子搭載パッド7、及びI
C部品接続用パッド51を有すると共に下部に実装電極10を有したパッケージ本体(回
路基板)2と、素子搭載パッド7上に一方端を固定された水晶振動素子20と、パッケー
ジ本体上に搭載されたIC部品60と、水晶振動素子20及びIC部品60を含むパッケ
ージ本体2上の空間を包囲するリッド11と、水晶振動素子20の上面の少なくとも一部
を跨ぐように両端をIC部品接続用パッド51とIC部品60とに固定されたワイヤー(
ボンディングワイヤー)70と、を備えている。
【0033】
図7(a)(b)の例では、IC部品60は、発振回路、温度補償回路を構成しており
、水晶振動素子20と干渉しないパッケージ本体2の内底面に搭載される。IC部品60
の上面には電極61が複数個露出配置されており、IC部品接続用パッド51は水晶振動
素子20の側方を含むパッケージ本体内底面上に複数個配置されている。水晶振動素子の
両側方に夫々配置されたIC部品接続用パッド51aとIC部品上の電極61aとをワイ
ヤー70aにより接続することにより、ワイヤー70aが水晶振動素子の上面の一部を跨
いた状態で配線される。ワイヤー70aは、常時においては水晶振動素子(得に励振電極
22)と非接触となるように水晶振動素子の上方に離間しているが、衝撃が加わって水晶
振動素子の自由端が厚さ方向へ振れる場合にはこれと接触してリッド11との接触を阻止
しつつ、振幅のエネルギーを減殺するように緩衝する。このため、水晶振動素子とリッド
との衝突によって水晶振動素子がダメージを受けることを防止できる。
【0034】
水晶振動素子の上面を跨ぐように配線されるワイヤー70aは、必ずしも導通用のワイ
ヤーである必要はなく、ノンコネクションのIC部品接続用パッド51と、ノンコネクシ
ョンのIC部品側電極61aとを接続するワイヤーを水晶振動素子の制振用に利用しても
よい。
なお、この水晶発振器の用途に応じては、ワイヤー70aが常時水晶振動素子20と接
触状態にあることが許容される場合も想定される。
薄型のTCXOの如き水晶発振器にあっては、パッケージ内において水晶振動素子とI
C部品とが横並びに配列されているため、ワイヤーを水晶振動素子の上面に沿って配線し
易い。
次に、図7(c)はIC部品60をパッケージ本体2の内底面に設けた低所4aに配置
した例であり、低所4aにIC部品60を配置することにより、IC部品の上方に水晶振
動素子の自由端部がオーバーハングした状態となり、IC部品と水晶振動素子の横方向位
置が一部重複した状態となるため、パッケージの平面積を小型化することができる。ワイ
ヤー70aが水晶振動素子上面の一部を跨いでいる構成は、図7(a)(b)の実施形態
と同様である。
【0035】
次に、図8は本発明の他の実施形態に係る水晶発振器(圧電発振器)の内部構成を示す
平面図である。図7の実施形態では、水晶振動素子20の自由端部寄りのパッケージ本体
(回路基板)内底面にIC部品60を載置したが、この実施形態に係る水晶発振器50は
水晶振動素子20の自由端部側を回避した側方にIC部品60を搭載した構成が異なって
いる。
このように水晶振動素子20の側方にIC部品60を配置した場合であっても、IC部
品接続用パッド51aの位置を工夫することにより、IC部品接続用パッド51aとIC
部品上の電極61aとを接続するワイヤー30の配線経路を水晶振動素子の上面を通過す
るように構成することが可能となる。
上記の各実施形態では、上面に凹陥部を有したパッケージ本体(回路基板)上に板状の
リッドを固定するパッケージ構造を例示したが、フラットな回路基板の上面に搭載した水
晶振動素子(及びIC)を含む回路基板上の空間を包囲する逆椀状のリッドを用いたタイ
プの圧電デバイス(圧電振動子、圧電発振器)にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…水晶振動子(圧電振動子)、2…パッケージ本体、3…凹陥部、4…底板、4a…低
所、5…外周壁、7…素子搭載パッド、8…素子接続パッド、9…ボンディングワイヤー
、10…実装電極、11…リッド、15…パッド、20…水晶振動素子、21…水晶基板
(圧電基板)、22…励振電極、22a…リード端子、22b…リード端子、25…導電
性接着剤、30…ワイヤー、50…水晶発振器(圧電発振器)、51、51a…IC部品
接続用パッド、60…IC部品、61、61a…IC部品側電極、70a…ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に素子搭載パッドを有すると共に下部に実装電極を有した回路基板と、該素子搭載
パッド上に一方端を固定された圧電振動素子と、前記圧電振動素子を含む前記回路基板上
の空間を包囲するリッドと、を備えた圧電振動子であって、
前記圧電振動素子の上面の少なくとも一部を跨ぐように両端を前記回路基板に固定され
たワイヤーと、を備えたことを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
前記回路基板に設けた単一の前記素子搭載パッド上に前記圧電振動素子の一方端を固定
した単一箇所支持構造であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記ワイヤーは、常時において前記圧電振動素子と非接触となるように離間配置されて
いることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記ワイヤーを、前記圧電振動素子の自由端部側上面を跨ぐように配線したことを特徴
とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の圧電振動子。
【請求項5】
前記ワイヤーを、前記圧電振動素子の自由端部側の2つの角隅部上面を夫々跨ぐように
配線したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の圧電振動子。
【請求項6】
上部に素子搭載パッド、及びIC部品接続用パッドを有すると共に下部に実装電極を有
した回路基板と、前記素子搭載パッド上に一方端を固定された圧電振動素子と、上記回路
基板上に搭載されたIC部品と、前記圧電振動素子及び前記IC部品を含む前記回路基板
上の空間を包囲するリッドと、を備えた圧電発振器であって、
前記圧電振動素子の上面の少なくとも一部を跨ぐように両端を前記IC部品接続用パッ
ドと該IC部品とに固定されたワイヤーを備えたことを特徴とする圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−160173(P2011−160173A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20003(P2010−20003)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】