説明

圧電振動片、圧電振動子、圧電振動片の周波数調整方法

【課題】 圧電振動子の振動を阻害することなく、周波数調整によって金属材料の一部が飛散したとしても、異極の励振電極の絶縁性を確実に確保でき、かつ圧電振動片の周波数調整効率を低下させることないより信頼性の高い圧電振動片、圧電振動片を備えた圧電振動子、および圧電振動片の周波数調整方法を提供する。
【解決手段】 金属材料からなる電極の質量が増減されることで周波数が調整されてなる調整電極25,26と、当該調整電極から無電極領域212,222を介して、前記調整電極と異極に構成された励振電極231,241とを具備しており、前記無電極領域と前記励振電極の上部に絶縁膜3が形成され、前記無電極領域と励振電極の境界部を含む無電極領域の近傍の絶縁膜が他の領域より厚膜に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基部と、この基部から突出された複数の脚部とからなる圧電振動片、その圧電振動片を備えた圧電振動子、および圧電振動片の周波数調整方法に係る。特に、本発明は、周波数調整により圧電振動片表面に形成される電極同士のショート(短絡)等の不良を回避するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電振動片を、音叉型水晶振動片を例にして説明すると、例えば、水晶振動片が基部と、この基部から突出された2本の脚部とから構成される。そして、これら基部および脚部の外面に励振電極が形成され、各脚部主面の先端部には周波数調整用の調整電極が形成されている。励振電極は、例えば、一方の脚部の表裏主面と他方の脚部の両側面に第1の励振電極が形成され、一方の脚部の両側面と他方の脚部の表裏主面に第2の励振電極が形成されている。つまり、一方の脚部表裏主面中央に第1の励振電極が形成され、前記第1の励振電極から離隔して脚部の稜に近接した側面に第2の励振電極が形成されるとともに、他方の脚部表裏主面中央に第2の励振電極が形成され、前記第2の励振電極から離隔して脚部の稜に近接した側面に第1の励振電極が形成されている。
【0003】
ところで、各脚部には、異極の励振電極(第1の励振電極と第2の励振電極)が近接して構成されるので、これらの電極間(無電極領域)にゴミなどの異物が付着すると、電極が短絡し発振停止を招くことがあった。そこで、従来の音叉型水晶振動片では、特許文献1に示すように、励振電極の表面を絶縁膜で覆い、電極の短絡を改善したものがある。
【特許文献1】特開2001−144582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した圧電振動片では、次のような問題があった。
【0005】
圧電振動片の主面上の全て、あるいは主面上の全ての励振電極に対して絶縁膜を形成する場合、圧電振動片の振動を阻害することのないようにできるだけ薄い厚みに設定する必要がある。特に、励振電極の大部分に対して、0.03μmより厚い寸法で絶縁膜を形成すると、圧電振動片の振動を阻害してCI値特性が極端に低下し、さらに絶縁膜の厚みが増大すると、不発振を招くこともあった。
【0006】
圧電振動片の振動を阻害することのないように薄い厚み寸法で絶縁膜を形成すると、励振電極の上端部の稜部分では絶縁膜が完全に塗布されないわずかな電極露出域が形成されることがあった。この電極露出域が調整電極に近接する場所にあると、レーザービーム、ミーリング等のドライエッチング手法により周波数調整電極を除去して周波数を高める調整を実施した場合、調整により飛散した金属材料がこの電極露出域まで達することで、電極が短絡し発振停止を招くことがあった。
【0007】
また、主面上の全て、あるいは主面上の全ての励振電極を絶縁膜で覆ってしまうと、この上面に金属材料からなる調整電極を形成したとしても、密着強度が低下する。特に調整電極の厚みが大きくなると、調整電極が剥がれることもあった。このため、前記絶縁膜と同様の絶縁膜を上部に積層させて周波数を低下させる調整を実施することになる。しかしながら、金属材料からなる調整電極を形成する場合と比べて、比重が高い材料の選択が行えず、周波数調整時間が増大し、極めて周波数調整効率が悪くなるといった問題があった。さらに、主面上の全て、あるいは主面上の全ての励振電極を絶縁膜で覆ってしまうと、ミーリング等の手法により調整電極を除去して周波数を高める調整を実施した場合、金属材料に比べて除去レートが低く、周波数調整時間が増大し、極めて周波数調整効率が悪くなるといった問題もあった。
【0008】
また、ミーリング等のドライエッチング手法により調整電極を除去して周波数を高める調整を実施する場合、圧電振動片とマスク部材の相互位置関係により、ドライエッチング領域のずれ込みが生じると言った問題があるが、近年開発が進んでいる超小型の圧電振動片にあっては、これらの問題が顕著に現れる。特に、圧電振動片、圧電振動片を保持するホルダー、圧電振動片の調整電極部のみを開口させたマスク部材等の各構成要素を組み合わせて相互に位置決めしている。しかしながら、圧電振動片が小型化するに伴って、各構成要素での公差の影響が大きくなり、わずかなずれ込みによりマスクずれが生じてしまう。このため、調整電極からドライエッチング領域がずれ込み、所望の周波数調整が得られず、極めて周波数調整効率が悪くなるといった問題もあった。
【0009】
以上のような問題点は、近年開発が進んでいる超小型の圧電振動子にあっては、これらの問題が顕著に現れる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧電振動子の振動を阻害することなく、周波数調整によって金属材料の一部が飛散したとしても、異極の励振電極の絶縁性を確実に確保でき、かつ圧電振動片の周波数調整効率を低下させることないより信頼性の高い圧電振動片、圧電振動片を備えた圧電振動子、および圧電振動片の周波数調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明の特許請求項1に係る圧電振動片は、金属材料からなる電極の質量が増減されることで周波数が調整されてなる調整電極と、当該調整電極から無電極領域を介して、前記調整電極と異極に構成された励振電極とを具備しており、前記無電極領域と前記励振電極の上部に絶縁膜が形成され、前記無電極領域と励振電極の境界部を含む無電極領域の近傍の絶縁膜が他の領域より厚膜に形成した。
【0012】
前記構成により、前記無電極領域と前記励振電極の上部に絶縁膜が形成され、前記無電極領域と励振電極の境界部を含む無電極領域の近傍の絶縁膜が他の領域より厚膜に形成されているので、前記調整電極に近接する励振電極の上端部の稜部分にも絶縁膜が完全に塗布され、電極露出域が形成されることがなくなる。つまり、調整電極と励振電極の間で、異物が付着したり、周波数調整により調整電極から励振電極に向かう金属材料等が飛散しても、短絡し発振停止を招くことが一切ない。
【0013】
また、無電極領域と、前記励振電極の上部に絶縁膜が形成され、金属材料からなる調整電極の上部に絶縁膜が施されず、調整電極が表面上に露出するので、この上面に金属材料からなる調整電極を形成することが容易となり、密着性と比重が高い材料の選択が行える。また、金属材料からなる調整電極が表面上に露出するので、ミーリング等のドライエッチング手法により周波数調整しても、調整電極の除去レートが低下することがない。以上により、周波数調整時間を短くし、周波数調整効率が飛躍的に高まる。
【0014】
本発明の特許請求項2に係る圧電振動片は、基部と、この基部から突出された複数の脚部とからなる圧電振動片において、各脚部には、脚部主面の先端部に形成され、金属材料からなる電極の質量が増減されることで周波数が調整されてなる調整電極と、前記調整電極から第1の無電極領域を介して脚部主面中央に形成され、前記調整電極と異極に構成された主面中央励振電極と、前記主面中央励振電極から第2の無電極領域を介して脚部の稜に近接して形成される端部励振電極とを具備しており、前記第1の無電極領域と、前記主面中央励振電極と、前記第2の無電極領域の上部に絶縁膜が形成され、前記第1の無電極領域と主面中央励振電極の境界部を含む第1の無電極領域の近傍の絶縁膜が他の領域より厚膜に形成した。
【0015】
前記構成により、前記第1の無電極領域と、前記主面中央励振電極と、前記第2の無電極領域の上部に絶縁膜が形成され、前記第1の無電極領域と主面中央励振電極の境界部を含む第1の無電極領域の近傍の絶縁膜が他の領域より厚膜に形成されているので、前記調整電極に近接する主面中央励振電極の上端部の稜部分にも絶縁膜が完全に塗布され、電極露出域が形成されることがなくなる。つまり、調整電極と主面中央励振電極の間で、異物が付着したり、周波数調整により調整電極から励振電極に向かう金属材料等が飛散しても、短絡し発振停止を招くことが一切ない。
【0016】
また、第1の無電極領域と、前記主面中央励振電極の上部に絶縁膜が形成され、金属材料からなる調整電極の上部に絶縁膜が施されず、調整電極が表面上に露出するので、この上面に金属材料からなる調整電極を形成することが容易となり、密着性と比重が高い材料の選択が行える。また、金属材料からなる調整電極が表面上に露出するので、ミーリング等のドライエッチング手法により周波数調整しても、調整電極の除去レートが低下することがない。以上により、周波数調整時間を短くし、周波数調整効率が飛躍的に高まる。
【0017】
特許請求項3では、前記各構成において、前記厚膜に形成されない絶縁膜の厚みが、0.005μm〜0.03μmに設定されてなることを特徴とする。
【0018】
この場合、上述の作用効果に加え、圧電振動片の振動を阻害することのなく、各励振電極に対してゴミ等の異物が付着しても絶縁性を確実に確保することができる。前記厚膜に形成されない絶縁膜の厚みが、0.005μmより薄くなると、ゴミなどの異物の付着により絶縁性を確保できず、異極の電極間でショート等の問題が生じることがある。前記厚膜に形成されない絶縁膜の厚みが、0.03μmより厚くなると、圧電振動片の振動を阻害してCI値特性が極端に低下する。
【0019】
特許請求項4では、前記構成において、前記脚部の主面に溝部を有し、前記主面中央励振電極の一部が前記溝部の内部に形成されてなることを特徴とする。
【0020】
この場合、上述の作用効果に加え、前記脚部の主面に溝部を有し、前記主面中央励振電極の一部が前記溝部の内部に形成されているので、振動片を小型化しても脚部の振動損失が抑制され、CI値(クリスタルインピーダンス)を低く抑えることができる。
【0021】
特許請求項5では、前記構成において、前記圧電振動片が水晶で前記絶縁膜が酸化珪素からなることを特徴とする。
【0022】
この場合、上述の作用効果に加え、熱膨張係数が近似したものとなり、圧電振動片の振動を阻害しにくいより好ましい絶縁膜となる。
【0023】
さらに、特許請求項6では、前記の目的を達成するため、本発明に係る圧電振動子は、前記した本発明にかかる圧電振動片が搭載されたことを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、前記した本発明にかかる圧電振動片と同様の作用効果が得られた圧電振動子を提供できる。
【0025】
さらに、特許請求項7では、前記の目的を達成するため、前記した本発明にかかる圧電振動片の周波数調整方法であって、前記調整電極と当該調整電極に近接する厚膜の絶縁膜部分のみを同時にドライエッチングしてなることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、前記調整電極と当該調整電極に近接する厚膜の絶縁膜部分のみを同時にドライエッチングしているので、絶縁膜に比べて調整電極の方が極めて除去レートの高い状態でドライエッチングされ、絶縁膜の下の励振電極を不要に除去することが一切ない。しかも厚膜の絶縁膜部分のみをドライエッチングすることで、前記電極露出域を発生しにくくして、調整電極から励振電極に向かう金属材料等が飛散しても、短絡し発振停止を招くことがない。また、調整電極のみならず絶縁膜部分まで拡大して、ドライエッチングすることができるので、マスク部材を用いる場合、圧電振動片を保持するホルダーとマスク部材の公差に余裕を持たせることができ、マスクずれの悪影響を軽減することができる。ホルダーとマスク部材の公差に余裕を持たせることができるので、マスク部材の開口部を拡大することできるようになり、結果として調整電極からドライエッチング領域がずれ込むことによって周波数調整効率を低下させることもなくなる。さらに、圧電振動片をパッケージに搭載する前の単体の状態あるいはウェハ状態でドライエッチングする場合、ドライエッチングの出力状態に応じて、マスク部材なしで周波数調整することもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、圧電振動子の振動を阻害することなく、周波数調整によって金属材料の一部が飛散したとしても、異極の励振電極の絶縁性を確実に確保でき、かつ圧電振動片の周波数調整効率を低下させることないより信頼性の高い圧電振動片、圧電振動片を備えた圧電振動子、および圧電振動片の周波数調整方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態では、圧電振動片として音叉型水晶振動片に本発明を適用した場合を示す。図1は本形態に係る水晶ウエハ1を示す平面図であり、図2は本形態に係る音叉型水晶振動片2を模式的に示したもので、励振電極23,24の配設状態を示す図である。また、図3は図2のA−A線に沿った断面図であり、図4は図2のB−B線に沿った断面図である。図5は図2のC−C線に沿った断面図である。
【0029】
音叉型水晶振動片2は、図1に示すように、1枚のウエハ1から、フォトリソグラフィ等の工法により、複数個を得るようにし、各水晶振動片を切り離す前に、励振電極等が形成される。
【0030】
音叉型水晶振動片2は、基部20と、この基部から突出された2本の脚部21,22を備えており、その脚部の主面(表裏面)に溝部211,221が形成されている。ここでいう溝部は、貫通孔であってもよく、窪み部であってもよい。これら基部および脚部の外面には、第1及び第2の励振電極23,24が形成され、各脚部主面の先端部には電極の質量が増減されることで周波数が調整されてなる調整電極25,26が形成されている。前記励振電極23,24は、脚部21の表裏主面と脚部22の稜に近接する部分に第1の励振電極23が形成され、脚部21の稜に近接する部分と脚部22の表裏主面に第2の励振電極24が形成されている。
【0031】
つまり、脚部21には、先端部に調整電極25が形成され、当該調整電極25から第1の無電極部212を介して表裏主面中央に主面中央励振電231が形成され、当該主面中央励振電極231から第2の無電極部213を介して脚部の稜に近接して形成される端部励振電極242が形成されている。脚部22には、先端部に調整電極26が形成され、当該調整電極26から第1の無電極部222を介して表裏主面中央に主面中央励振電241が形成され、当該主面中央励振電極241から第2の無電極部223を介して脚部の稜に近接して形成される端部励振電極232が形成されている。
【0032】
これら励振電極23,24は、金属蒸着によって形成されたクロム(Cr)の上層に金(Au)等の薄膜がフォトリソグラフィ等の工法により形成されている。調整電極25,26は、前記励振電極と同様にクロム(Cr)の上層に金(Au)等の薄膜がフォトリソグラフィ等の工法により形成され、後述する絶縁膜3を形成した後、その上部にさらに銀(Ag)等が蒸着マスクを用いた金属蒸着あるいはスパッタリング等によって形成された薄膜となっている。この調整電極25,26に対して、例えば同様の銀(Ag)を付加することや、その一部が、ビーム照射あるいはミーリング等によって除去されることで、本音叉型水晶振動片2の発振周波数を調整することができる。このとき、調整電極25,26は、電極付加を中心に周波数調整する場合、周波数調整前の振動子の発振周波数が目標周波数よりも高くなるように形成され、電極除去を中心に周波数調整する場合、周波数調整前の振動子1の発振周波数が目標周波数よりも低くなるように形成されている。本発明の形態では、より精度の高い周波数調整を実施するために、調整電極25,26に対して、金属蒸着などにより同様の銀(Ag)を付加することや、レーザービーム照射により一部を除去することで周波数粗調整を実施し、その後、同じ調整電極25,26に対して、ミーリング等のドライエッチング手法により全般的に除去することで周波数微調整を実施している。
【0033】
また、この音叉型水晶振動片2では、前記調整電極25,26を除く、第1の無電極部212,222と、前記主面中央励振電極231,241と、前記第2の無電極部213,223の上部で、少なくとも音叉型水晶振動片の表裏主面部分にSiO2 (酸化珪素)からなる絶縁膜3が蒸着あるいはスパッタリング等の工法により形成される。なお、このとき絶縁膜3は、音叉型水晶振動片の表裏主面部分に加え、両側面部分に形成してもよい。ここで蒸着される絶縁膜3の膜厚は、約0.005〜0.03μm均一に形成することが好ましい。これにより、異極の励振電極である主面中央励振電極231,241と端部励振電極232,242の間でゴミ等の異物が付着したとしても絶縁性を確実に確保することができ、音叉方水晶振動片の振動を阻害してCI値特性が低下することがなくなる。
【0034】
また、本形態では、絶縁膜3のうち、前記主面中央励振電極231,241の上端部の稜部分を含む一部と第1の無電極部212,222のみが、約0.05〜0.2μmの厚膜(厚み増大部分31)に形成されている。これにより、前記調整電極25,26に近接する主面中央励振電極231,241の上端部の稜部分にも絶縁膜が完全に塗布され、電極露出域が形成されることがなくなる。結果として、レーザービーム、ミーリング等の手法により周波数調整電極を除去して周波数調整することで、調整電極25,26から主面中央励振電極231,241に向かって金属材料が飛散しても、短絡し発振停止を招くことが一切なくなる。
【0035】
なお、前記絶縁膜の厚み増大部分31は、前記主面中央励振電極231,241の上端部の稜部分を含む一部と第1の無電極部212,222のみとしているが、図6(a)に示すように、前記1の無電極領域212,222と主面中央励振電極231,241の境界部近傍のみに形成してもよい。また、図6(b)に示すように、前記主面中央励振電極231,241以上に前記絶縁膜の厚み増大部分31の厚みが大きければ、第1の無電極部212,222のみに形成してもよい。さらに、図6(c)に示すように、前記主面中央励振電極231,241の上端部の稜部分を含む一部と第1の無電極部212,222、調整電極25,26の一部にはみ出して形成してもよい。
【0036】
以上のように、絶縁膜3の厚みの一部を異ならせるには、前記均一部分を形成した後に、厚み増大部31のみを露出するマスクを用いて複数回の蒸着工程により極めて容易に形成することができる。なお、図7に示すように、前記第1の無電極部のみが他の領域に対してより大きく開口したマスク4を用いれば、一度の蒸着工程により絶縁膜の厚みの一部のみを異ならせて形成することも可能である。
【0037】
前記絶縁膜3は、前記フォトリソグラフィ等の工法により形成されるクロム(Cr)の上層に金(Au)等からなる前記第1及び第2の励振電極23,24と調整電極25,26の一部が脚部12,13に形成された後に形成する。そして、前記厚み増大部分を含む絶縁膜3が形成された後に、マスクを用いて形成する銀(Ag)等からなる調整電極25,26の一部を上面のみに形成している。このため、マスクを用いて金属蒸着あるいはスパッタリングなどの手法により形成される調整電極の一部(前記銀等)については、電極形成する際に、電極材料の一部が飛散したとしても、事前に前記絶縁膜3を形成しておくことで、調整電極と主面中央励振電極、端部励振電極の間で、短絡し発振停止を招くことが一切ない。
【0038】
そして、前記音叉型水晶振動片1が、例えば、パッケージ基体(図示省略)とキャップ(図示省略)とを接合することによりその内部に気密状態の空間が形成されたパッケージ(図示省略)内部に搭載されて、音叉型水晶振動子(図示省略)が構成される。
【0039】
なお、調整電極25,26の上部に絶縁膜3が施されず、この上面に金属材料からなる調整電極を形成することが容易となり、比重が高い材料の選択が行える。また、金属材料からなる調整電極25,26が表面上に露出するので、ミーリング等の手法により周波数調整しても、調整電極の除去レートが低下することがない。このため、周波数調整時間を短くし、周波数調整効率が飛躍的に高まる。
【0040】
また、本発明の形態では、ミーリング等のドライエッチング手法により調整電極25,26を除去して周波数を高める微調整を実施する場合、前記調整電極である銀材料に最適な除去レート時間に対応したドライエッチングの出力設定をしている。例えば、銀材料では、0.015〜0.05μm/sec程度で除去されるようにミーリング装置の出力を設定した。この出力設定は、調整電極の材料に応じて最適な値に設定する必要がある。そして、前記調整電極25,26と当該調整電極に近接する前記絶縁膜の厚み増大部分31のみを同時にミーリングしている。このため、SiO2 (酸化珪素)からなる絶縁膜3に比べて銀材料からなる調整電極25,26の方が極めて除去レートの高い状態でミーリングされ、SiO2 (酸化珪素)からなる絶縁膜3の下の励振電極23,24を不要に除去することが一切ない。しかも前記SiO2 (酸化珪素)からなる絶縁膜3の厚み増大部分31のみをミーリングすることで、前記電極露出域を発生しにくくして、調整電極から励振電極に向かう金属材料等が飛散しても、短絡し発振停止を招くことがない。また、調整電極25,26のみならず厚膜の絶縁膜部分31までミーリング領域を拡大することができるので、圧電振動片を保持するホルダーとマスク部材の公差に余裕を持たせることができ、マスクずれの悪影響を軽減することができる。ホルダーとマスク部材の公差に余裕を持たせることができるので、マスク部材の開口部を拡大することできるようになり、結果として調整電極からミーリング領域がずれ込むことによって周波数調整効率を低下させることもなくなる。さらに、圧電振動片をパッケージに搭載する前の単体の状態あるいはウェハ状態でドライエッチングする場合、ドライエッチングの出力状態に応じて、マスク部材なしで周波数調整することもできる。なお、SiO2 (酸化珪素)以外の絶縁膜を用いる場合、前記調整電極に対して除去レートが低いものを選択する必要がある。
【0041】
なお、上記実施形態では、圧電振動片として音叉型水晶振動片を適用した場合を示しているが、ATカット水晶振動片やGTカット水晶振動片、あるいは水晶振動片に限らずセラミック振動片など他の圧電振動片を用いた圧電振動子にも適用できる。また、絶縁膜として、SiO2を例にしているが、SiOや他の絶縁性の酸化膜を用いることができる。ドライエッチングとして、ミーリングを例にしたが、プラズマエッチング法や、反応性ガスイオンを用いたドライエッチング等であってもよい。
【0042】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施できるので、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求範囲によって示すものであって、明細書本文に拘束されるものではない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本形態に係る水晶ウエハを示す平面図。
【図2】図1の水晶ウエハの1つの音叉型水晶振動片を模式的に示した図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】図2のB−B線に沿った断面図。
【図5】図2のC−C線に沿った断面図。
【図6】本発明の他の形態を示す断面図。
【図7】本形態に係るマスクを示す平面図。
【符号の説明】
【0044】
1 水晶ウエハ
2 音叉型水晶振動片(圧電振動片)
3 絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片には、金属材料からなる電極の質量が増減されることで周波数が調整されてなる調整電極と、当該調整電極から無電極領域を介して、前記調整電極と異極に構成された励振電極とを具備しており、
前記無電極領域と前記励振電極の上部に絶縁膜が形成され、
前記無電極領域と励振電極の境界部を含む無電極領域の近傍の絶縁膜が他の領域より厚膜に形成されてなることを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
基部と、この基部から突出された複数の脚部とからなる圧電振動片において、
各脚部には、
脚部主面の先端部に形成され、金属材料からなる電極の質量が増減されることで周波数が調整されてなる調整電極と、前記調整電極から第1の無電極領域を介して脚部主面中央に形成され、前記調整電極と異極に構成された主面中央励振電極と、前記主面中央励振電極から第2の無電極領域を介して脚部の稜に近接して形成される端部励振電極とを具備しており、
前記第1の無電極領域と、前記主面中央励振電極と、前記第2の無電極領域の上部に絶縁膜が形成され、
前記第1の無電極領域と主面中央励振電極の境界部を含む第1の無電極領域の近傍の絶縁膜が他の領域より厚膜に形成されてなることを特徴とする圧電振動片。
【請求項3】
前記厚膜に形成されない絶縁膜の厚みが、0.005μm〜0.03μmに設定されてなることを特徴とする特許請求項1または特許請求項2記載の圧電振動片。
【請求項4】
前記脚部の主面に溝部を有し、前記主面中央励振電極の一部が前記溝部の内部に形成されてなることを特徴とする特許請求項2に記載の圧電振動片。
【請求項5】
前記圧電振動片が水晶で前記絶縁膜が酸化珪素からなることを特徴とする特許請求項1乃至4のいずれかに記載の圧電振動片。
【請求項6】
特許請求項1乃至5のいずれかに記載の圧電振動片が搭載されることを特徴とする圧電振動子。
【請求項7】
特許請求項1乃至5記載のいずれかに記載の圧電振動片の周波数調整方法であって、
前記調整電極と当該調整電極に近接する厚膜の絶縁膜部分のみを同時にドライエッチングしてなることを特徴とする圧電振動片の周波数調整方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−28580(P2007−28580A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61246(P2006−61246)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】