説明

圧電発振器

【課題】 ICチップと容器間のバンプの接続状態を、外部から容易に、かつ、確実に、目視検査できる構造を持つ圧電発振器を提供すること。
【解決手段】 圧電素子5を気密封止してなる圧電振動子1と、発振回路を構成するICチップ7と、ICチップ7を実装するための電極パッド12が設けられICチップ7を収容し圧電振動子1を蓋として気密封止しする容器10とを備え、容器10がICチップ7を収納するキャビティ部15と、ICチップ7に設けられるバンプ8の位置と対応してキャビティ部15の底面に設けられる電極パッド12とを有し、電極パッド12の形状が五角形以上の多角形又は楕円形に形成されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯用通信機器等の電子機器には圧電発振器が用いられている。
【0003】
例えば、図4に示すように、従来の圧電発振器200は、内部に圧電素子(図示せず)が収容されている圧電振動子23を、キャビティ部25内に前記の圧電素子の振動に基づいて発振出力を制御するICチップ26やコンデンサ(図示せず)等の電子部品素子が収容されている容器21上に取着させた構造のものが知られており、かかる圧電発振器200を図示しない電子機器のマザーボード等の外部配線基板上に載置させた上、容器21の裏面つまり実装面に設けられている外部端子(図示せず)を外部配線基板の配線に半田接合することにより外部配線基板上に実装される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、圧電振動子23や容器21は、通常、セラミック材料によって形成されており、その内部や表面には配線導体が形成され、従来周知のセラミックグリーンシート積層法等を採用することにより製作される。
【0005】
また、前記ICチップ26の内部には、圧電振動子23の温度特性に応じて作成された温度補償データに基づいて圧電発振器200の発振周波数を補正するための温度補償回路(図示せず)が設けられており、圧電発振器200を組み立てた後、上述の温度補償データをICチップ26のメモリ内に格納すべく、容器21の裏面や外側面等に温度補償データ書込用の書込制御端子27が設けられていた。この書込制御端子27に温度補償データ書込装置のプローブ針を当ててICチップ26内のメモリに温度補償データを入力することにより、温度補償データがICチップ26のメモリ内に書込まれる。
このようなICチップ26を容器21の上に搭載した場合の断面図を図5(a)に示す。図5(a)において、高さ数10μm〜数100μm程度のバンプ28を挟んでICチップ26と容器21が対面するように配置されており、バンプ28を介して電極パッド29と接続用パッドが接続されている。この接続状態は主として外側からの目視で検査されるが、更に確実な方法として、予めバンプ28の大きさを変えた検査用バンプ22をICチップ26の一部に形成しておき、電気的接続を検査する方法も取られている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−54881号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の圧電発振器の目視検査方法では、図5(b)に示すように容器21側の電極パッド29がバンプ28と同形状の円形となっており、外部から狭い空間にあるバンプ28の接合状態を十分に観察することが出来ないという欠点があった。また、検査用バンプ22を用いた場合、検査は確実になるが、そのための電極パッド29の面積を検査用バンプ22の投影面積より大きくする必要があるため、ICチップ26の小型化が困難であるという欠点があった。
【0008】
本発明は前記欠点に鑑み考え出されたものであり、ICチップと容器との間のバンプの接続状態を、外部から容易に、かつ、確実に、目視検査できる構造を持つ圧電発振器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧電発振器は、圧電素子を気密封止してなる圧電振動子と、発振回路を構成するICチップと、前記ICチップを実装するための電極パッドが設けられ前記ICチップを収容し前記圧電振動子を蓋として気密封止しする容器とを備え、前記容器が前記ICチップを収納するキャビティ部と、前記ICチップに設けられるバンプの位置と対応して当該キャビティ部の底面に設けられる前記電極パッドとを有し、前記電極パッドの形状が五角形以上の多角形又は楕円形に形成されて構成されていることを特徴とする圧電発振器である。
【0010】
また、本発明の圧電発振器は、上記構成において電極パッドの形状が、前記五角形以上の多角形に代えて正六角形に形成しても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧電発振器によれば、圧電素子を気密封止してなる圧電振動子と、発振回路を構成するICチップと、前記ICチップを実装するための電極パッドが設けられ前記ICチップを収容し前記圧電振動子を蓋として気密封止しする容器とを備え、前記容器が前記ICチップを収納するキャビティ部と、前記ICチップに設けられるバンプの位置と対応して当該キャビティ部の底面に設けられる前記電極パッドとを有し、前記電極パッドの形状が五角形以上の多角形又は楕円形に形成されていることから、前記ICチップに設けられるバンプ(円形状)の形状と電極パッド形状が異なるので、バンプの接続状態の確認を容易に行うことが可能となる。
【0012】
また、本発明の圧電発振器によれば、前記電極パッドの形状が、前記五角形以上の多角形に代えて正六角形に形成されていることから、バンプの外形が円形状であり、バンプの外形(円形状)を正六角形の電極バッドに内接して配置可能となり、正六角形の電極パッドの面積をバンプの外形面積まで近づけることが可能となる。これにより、圧電発振器が小型化され、それに伴い容器が小型となっても、キャビティ部の底面に容易に正六角形の電極パッドを配置可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図においての同一の符号は同じ対象を示すものとする。なお、電極パッドの形状を正六角形として説明する。
【0014】
図1は余剰部を含む容器の一例を示す平面図である。図2は、図1のX−X断面における容器に圧電振動子を接続した状態を示す断面図である。図3は、余剰部を含む容器をウェハの状態で示す平面図である。
【0015】
図1及び図3に示すように、容器10は、セラミックウエハー基板30の状態において、容器部A1−A2部分を切断することによって得られる。また、容器部A1−A2と隣接して余剰部B1、B2が設けられている。また、容器部A1−A2と余剰部B2との境目にまたがって、複数個の書込制御端子11が形成されている。
【0016】
図2に示すように、本発明に係る圧電発振器100は、ICチップ7を収容するキャビティ部15とこのキャビティ部15の底面にICチップ7を搭載するための正六角形の電極パッド12とが形成された容器10と、バンプ8が設けられた当該ICチップ7と、前記キャビティ部15を塞ぐように設けられる圧電素子5を収容した圧電振動子1とから主に構成されている。
【0017】
また、容器10の底面の裏側、つまり、電子機器(図示せず)のマザーボードと向かい合う面に外部接続電極端子19が設けられている。また、キャビティ部15を囲う側面となる枠壁13、枠壁13の外側面には複数個の書込制御端子11が形成されている。なお、本発明の圧電発振器においては枠壁13の一部には開放部9(図1参照)が形成されている。
【0018】
また、図2に示すように、枠壁13の上面には、圧電素子5が収容されている圧電振動子1を載置して固定した構造を有している。また、ICチップ7を収容するキャビティ部15を有する容器10とその上面に搭載されたICチップ7の回路形成面(下面)には回路保護材14が被膜されており、この回路保護材14によりICチップ7と容器10間を外部からの塵の浸入から保護している。
【0019】
つまり、本発明に係る圧電発振器100の特徴部分は図1、図2に示すように、ICチップ7をバンプ8を介して容器10に実装固着する場合に、ICチップ7に設けられるバンプ8の位置と対応する容器10側に形成した電極パッド12の形状を正六角形に形成した点にある。これにより、ICチップ7に設けられるバンプ8と容器10上面の電極パッド12との接合状態を容易に目視またはX線検査装置等の外観検査装置で測定することが可能となる。つまり、本発明の電極パッド12によれば、電極パッド12が正六角形であるので、半田等からなるバンプ8が熱溶融により変形すると、バンプ8は正六角形状の電極パッド12上に広がり、電極パッド12側の形状が正六角形となって電極パッド12に接合される。このようにバンプ8が変形することにより、バンプ8と電極パッド12との接続状態を容易に確認することが可能となる。
【0020】
ここで、図2に示す圧電振動子1は、例えば、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料から成る基板2と、基板2と同様のセラミック材料から成る側壁3、42アロイやコバール、リン青銅等の金属から成る蓋体4とから成り、基板2の上面に側壁3を取着させ、その上面に蓋体4を載置して固定させることによって圧電振動子1が構成され、側壁3の内側に位置する基板2の上面に圧電素子5が実装されている。
【0021】
また、図2においてICチップ7を収容するキャビティ部15を有する容器10の開放部9は捨代部B1まで開口されており、捨代部B1の開放部9は、容器10のキャビティ部15に配置されたICチップ7の回路形成面(下面)のバンプ8を保護するための回路保護材14の形成状態を確認するための確認口とし利用される。この開放部9は、確認の後に埋められることとなる。
【0022】
また、圧電振動子1は、その内部に、例えば、基板2の上面と側壁3の内面と蓋体4の下面とで囲まれる空間部内に圧電素子5を収容して気密封止されており、基板2の上面には圧電素子5の振動電極に接続される一対の搭載パッド等が、また、基板2の下面には後述する容器10上の枠壁13に接続される複数個の接続用端子17がそれぞれ設けられ、これらのパッドや端子は基板2表面の配線パターンや基板2内部に埋設されているビアホール等を介して、対応するもの同士、相互に電気的に接続されている。
【0023】
また、圧電振動子1の内部に収容される圧電素子5は、所定の結晶軸でカットされており、両主面に一対の振動電極を被着・形成されている。この圧電素子5は、外部からの変動電圧が一対の振動電極を介して圧電片に印加されると、所定の周波数で厚みすべり振動を起こす。
【0024】
ここで圧電振動子1の蓋体4を圧電振動子1の接続用端子17や容器10の接続用端子18を介して後述するグランド端子用の外部接続電極端子19に接続させておけば、その使用時に、金属から成る蓋体4が基準電位に接続されてシールド機能が付与されることと成るため、圧電素子5やICチップ7を外部からの不要な電気的作用から良好に保護することができる。従って、圧電振動子1の蓋体4は圧電振動子1の接続用端子17や容器10の接続用端子18を介してグランド端子用の外部接続電極端子19に接続させておくことが好ましい。
【0025】
そして、上述した圧電振動子1が取着されるICチップ7を収容するキャビティ部15を有する容器10は概略矩形状を成しており、ガラス布基材エポキシ樹脂やポリカーボネイト,エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂等の樹脂材料やガラス−セラミック,アルミナセラミックス等のセラミック材料等によって平板状を成すように形成されている。
【0026】
また、ICチップ7を収容するキャビティ部15を有する容器10は、容器部A1−A2の下面の四隅部に4つの外部接続電極端子19(電源電圧端子、グランド端子、発振出力端子、発振制御端子)が形成され、上面の四隅部を囲む周縁には枠壁13が、また上面の中央域にはフリップチップ型のICチップ7が、更に四隅部間の枠壁13の外側側面には書込制御端子11が設けられている。
【0027】
また、容器10の裏面つまり実装面に設けられている4つの外部接続電極端子19は、圧電発振器100をマザーボード等の外部配線基板に接続するための端子として機能するものであり、圧電発振器100を外部配線基板上に搭載する際、外部配線基板の回路配線と半田等の導電性接合材を介して電気的に接続されるようになっている。
【0028】
また、容器10の上面に設けられる枠壁13は、ICチップ7を収容するキャビティ部15を有する容器10と圧電振動子1との間に、ICチップ7を配置させるのに必要な所定の間隔を確保しつつ、ICチップ7を収容するキャビティ部15を有する容器10の接続用端子18を圧電振動子1の接続用端子17に接続するためのものである。
【0029】
更に、上述したICチップ7を収容するキャビティ部15を有する容器10の中央域には、複数個の正六角形の電極パッド12が設けられており、これら電極パッド12にICチップ7の接続用パッドをバンプ8を介して電気的、及び機械的に接続させることによってICチップ7がキャビティ部15を有する容器10上の所定位置に取着される。
【0030】
また、ICチップ7は、その回路形成面(下面)に、周囲の温度状態を検知する感温素子、圧電素子5の温度特性を補償する温度補償データを格納するメモリ、メモリ内の温度補償データに基づいて圧電素子5の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路、先の温度補償回路に接続されて所定の発振出力を生成する発振回路等が設けられており、この発振回路で生成された発振出力は、外部に出力された後、例えば、クロック信号等の基準信号として利用される。
【0031】
なお、上述したICチップ7の表面にはポリイミド等の絶縁材料から成る回路保護材14が介在されており、この回路保護材14により、ICチップ7の表面を保護するとともに、ICチップ7とバンプ8との間の電気的ショートを防止している。
【0032】
これにより、従来はICチップ7と容器10との間には、ICチップ7表面に形成された回路形成面を大気中の水分等によって腐食されるのを防止するためにアンダーフィル樹脂が充填されていたが、これに代えてICチップ7を保護する回路保護材14で、アンダーフィル樹脂機能を代用可能とすることができる。その結果、ICチップ7と容器10間にアンダーフィル樹脂が不要となり、圧電発振器の工数削減が可能となる。
【0033】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0034】
例えば、図2に示す本実施形態においては容器10上に形成された電極パッド12の形状を正六角形状に形成したが、これに代えて五角形、七角形、八角形、五角形以上の正多角形、楕円形、星型、シルエット状に現される形状、任意の曲線と直線とで組み合わされて閉領域を形成する形状や、曲線のみの形状、直線を組み合わせた形状など、円と正方形と長方形の三種以外の図形でも実施形態と同様の効果を奏する。
また、キャビティ部15に、ICチップ7の他にコンデンサなどの電子部品を収納してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の圧電発振器の図2に示すX−X線で切断した場合の断面図である。
【図2】図1のX−X断面における容器に圧電振動子を接続した状態を示す断面図である。
【図3】余剰部を含む容器をウェハの状態で示す平面図である。
【図4】従来の圧電発振器の概略の斜視図である。
【図5】従来の圧電発振器の容器の概略の断面図と上面図である。
【符号の説明】
【0036】
1・・・圧電振動子
2・・・基板
3・・・側壁
4・・・蓋体
5・・・圧電素子
7・・・ICチップ
8・・・バンプ
9・・・開放部
10・・容器
11・・書込制御端子
12・・電極パッド
13・・枠壁
14・・回路保護材
15・・キャビティ部
17・・圧電振動子の接続用端子
18・・容器の接続用端子
19・・外部接続電極端子
30・・セラミックウエハー基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を気密封止してなる圧電振動子と、発振回路を構成するICチップと、前記ICチップを実装するための電極パッドが設けられ前記ICチップを収容し前記圧電振動子を蓋として気密封止しする容器とを備え、
前記容器が前記ICチップを収納するキャビティ部と、前記ICチップに設けられるバンプの位置と対応して当該キャビティ部の底面に設けられる前記電極パッドとを有し、
前記電極パッドの形状が五角形以上の多角形又は楕円形に形成されて構成されていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記電極パッドの形状が、
前記五角形以上の多角形に代えて正六角形に形成されて構成されることを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−36814(P2007−36814A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218826(P2005−218826)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】