説明

基板の洗浄方法及び、基板の洗浄装置

【課題】シリコン表面にウォーターマークが残ることを防止しつつ、洗浄装置の省スペース化に寄与することができる基板の洗浄方法及び、基板の洗浄装置を提供する。
【解決手段】まず、ウェハーをフッ酸槽4に運び、このフッ酸槽4内でHF溶液によるウェットエッチングを行ってウェハーのシリコン表面を露出させる。次に、ウェハーを純水リンス槽5に運び、この純水リンス槽5内でウェハーをリンスする。そして、ウェハーを乾燥装置6に運び、この乾燥装置6内でウェハーを乾燥させる。このように、HF溶液によるエッチングと、リンスとを行った後で、ウェハーを一旦乾燥させる。次に、ウェハーをアルカリ槽2に運び、このアルカリ槽2内でウェハーをアルカリ洗浄して、シリコン表面に薄いケミカル酸化膜を形成する。その後、ウェハーを純水リンス槽3に運び、純水リンス槽3内でウェハーをリンスする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の洗浄方法及び、基板の洗浄装置に関し、特に、シリコン表面にウォーターマークが残ることを防止しつつ、洗浄装置の省スペース化に寄与することを可能とした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に半導体装置の所謂、ウェハー工程ではフォトリソグラフィー技術を繰り返すことで、ウェハーに半導体素子を作成していく。このウェハー工程の水洗処理において、ウォーターマークが発生することが知られている。そして、ウォーターマークの形成を抑制する手段として、特許文献1の方法が知られている。
特許文献1に開示されている洗浄方法は、下記の手順で行われるものと解される。即ち、図7に示すように、まず、ウェハーのシリコン表面に形成されている自然酸化膜を除去するためにフッ酸(HF)で処理し(ステップS13)、次にフッ酸の残留物を洗い流すためにウェハーを純水でリンスする(ステップS14)。さらに、アルカリ(過酸化水素を含む)薬液でウェハーを処理してその表面に薄いシリコン酸化膜を形成し(ステップS15)、アルカリ薬液の残留成分を洗い流すためにウェハーを純水でリンス(即ち、水洗)する(ステップS16)。その後、ウェハーをスピン乾燥する(ステップS17)。
【0003】
つまり、特許文献1に開示されている洗浄方法は、「ウェハーのシリコン表面に形成された自然酸化膜をフッ酸でエッチングし、純水でリンスする。次に、リンス直後のウェハーを乾燥させないで、水滴が付着している状態のウェハーを酸化剤を含む液に浸してその表面にケミカル酸化膜を形成する。その後、形成したケミカル酸化膜を最後まで維持する。」という洗浄方法である。
【0004】
このような洗浄方法は、図8に示すような洗浄装置200を用いて行われていると解される。即ち、図8に示すように、この洗浄装置200は、ウェハー投入口(即ち、ローダー)201とウェハー払い出し口(即ち、アンローダー)209との間に、アルカリ槽202と、純水リンス槽203と、フッ酸槽204と、純水リンス槽205と、アルカリ槽206と、純水リンス槽207と、乾燥装置208と、を有する。そして、これら各槽202〜207と乾燥装置208は、洗浄処理の手順に従って、ウェハー投入口201から払い出し口209に向かって一方向に配置されている。この洗浄装置200では、ウォーターマークの発生を抑制するために、純水リンス槽205の直後にアルカリ槽206が配置されている。
【0005】
なお、フッ酸槽204の前にあるアルカリ槽202及び純水リンス槽203は、フッ酸処理の前処理を行うための槽である。この前処理は、ウェハー表面に付着している可能性のあるパーティクル、有機物等の異物を除去することを目的とするものである。この前処理を行うためのアルカリ槽202及び203純水リンス槽は、フッ酸槽を有する洗浄装置では、一般的に用意されている。
また、上記の前処理は、洗浄装置200による洗浄処理の後に続く成膜工程、拡散工程等の種類によっては、省略される場合もある。その場合は、図8の二点鎖線の矢印で示すように、ウェハーは、ウェハー投入口201からアルカリ槽202と純水リンス槽203とをスルーして、フッ酸槽204へ直接搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−016866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、半導体装置の製造現場において、その省スペース化は常に求められている課題である。洗浄装置においてもその省スペース化が求められていた。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、シリコン表面にウォーターマークが残ることを防止しつつ、洗浄装置の省スペース化に寄与することができる基板の洗浄方法及び、基板の洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、次の点を見出した。即ち、従来技術では、自然酸化膜を除去した後にウェハーを純水でリンスし、リンス後のウェハーを乾燥しないでケミカル酸化膜を形成していた。しかしながら、ウェハーを乾燥した後でもアルカリ洗浄により、ウェハーのシリコン表面にケミカル酸化膜を形成すれば、従来技術と同様な効果(ウォーターマークの防止)を奏する。
【0009】
即ち、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る基板の洗浄方法は、基板のシリコン表面をウェットエッチングで露出させる第1の工程と、前記第1の工程の後で前記基板を水洗する第2の工程と、前記第2の工程の後で前記基板を乾燥させる第3の工程と、前記第3の工程の後で前記基板をアルカリ洗浄して、前記シリコン表面にシリコン酸化膜を形成する第4の工程と、前記第4の工程の後で前記基板を水洗する第5の工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
ここで、「基板」としては、例えば、単結晶シリコンからなる基板(即ち、シリコンウエーハ)や、SOI(Silicon On Insulator)ウェハーなどが挙げられる。また、基板の「シリコン表面」としては、例えば、シリコンウエーハの場合は、シリコンウエーハの表面、又は、シリコンウエーハの表面に直接又は間接的に形成された単結晶シリコン膜の表面、多結晶シリコン膜の表面若しくはアモルファスシリコン膜の表面などが挙げられる。SOIウェハーの場合は、SOIのうちのシリコン層(SOI層とも呼ばれる。)表面、又は、SOI層の表面に直接又は間接的に形成された単結晶シリコン膜の表面、多結晶シリコン膜の表面若しくはアモルファスシリコン膜の表面などが挙げられる。
【0011】
また、「第1の工程」で行うウェットエッチングは、例えば、フッ酸(HF)を含む液体を用いたウェットエッチングである。以下、このHFを含む液体をHF溶液ともいう。「第2の工程」及び「第5の工程」で行う水洗は、例えば、純水を用いた洗浄である。この純水を用いた水洗により、例えば、第1の工程で用いられたHF溶液をシリコン表面から洗い流すことができる。「第3の工程」で行うアルカリ洗浄は、例えば、アンモニア水(NHOH)と過酸化水素水(H)を含む液体を用いた洗浄である。
【0012】
このような洗浄方法であれば、第2の工程から第3の工程へ移行する過程で、シリコン表面にウォーターマーク(即ち、水滴に起因してシリコン表面に局所的に生じる薄い酸化膜)が形成される場合がある。しかしながら、第4の工程では、アルカリ洗浄により、このウォーターマークをエッチングすることができる。また、ウォーターマークのエッチングと並行して、シリコン表面に薄いシリコン酸化膜(即ち、ケミカル酸化膜)を形成することができる。これにより、洗浄後の基板において、シリコン表面にウォーターマークが残ることを防ぐことができる。
【0013】
また、上記の洗浄方法であれば、第3の工程で基板を一旦乾燥させる。これにより、第4の工程を行う前に、基板を洗浄装置の内又は外で待機させることができ、第4の工程でアルカリ洗浄が行われる槽(即ち、アルカリ槽)を効率良く使用することができる。このため、アルカリ槽の槽数を少なく(例えば、1槽に)抑えることができ、洗浄装置の省スペース化に寄与することができる。
【0014】
なお、本発明の「基板」としては、例えば、後述するウェハー50が該当する。「シリコン表面」としては、例えば、後述する多結晶シリコン膜54の表面、又は、シリコン表面61が該当する。また、「第1の工程」としては、例えば、後述するステップS3が該当する。「第2の工程」としては、例えば、後述するステップS4が該当する。「第3の工程」としては、例えば、後述するステップS5が該当する。「第4の工程」としては、例えば、後述するステップS6が該当する。「第5の工程」としては、例えば、後述するステップS7が該当する。
【0015】
また、上記の洗浄方法において、前記第1の工程では、フッ酸を含む液体を溜める第1の槽でウェットエッチングを行い、前記第2の工程では、純水が供給される第2の槽で前記基板を水洗し、前記第4の工程では、アンモニア水と過酸化水素水とを混合した液体を溜める第3の槽で前記基板をアルカリ洗浄し、前記第5の工程では、純水が供給される第4の槽で前記基板を水洗することを特徴としてもよい。なお、本発明の「第1の槽」としては例えば後述するフッ酸槽4が該当し、「第2の槽」としては例えば後述する純水リンス槽5が該当し、「第3の槽」としては例えば後述するアルカリ槽2が該当し、「第4の槽」としては例えば後述する純水リンス槽3が該当する。
【0016】
また、上記の洗浄方法において、前記第1の工程を行う前に、前記基板を前記第3の槽でアルカリ洗浄し、前記アルカリ洗浄後の前記基板を前記第4の槽で水洗する前処理工程、をさらに含むことを特徴としてもよい。このような洗浄方法であれば、シリコン表面にパーティクル、有機物等の異物が付着している場合でも、これらの異物を第1の工程の前に除去することができる。また、前処理工程と第4の工程とで第3の槽を兼用し、前処理工程と第5の工程とで第4の槽を兼用する。このため、洗浄装置の省スペース化にさらに寄与することができる。なお、本発明の「前処理工程」としては、例えば、後述するステップS1及びS2が該当する。
【0017】
本発明の別の態様に係る基板の洗浄装置は、基板のシリコン表面をウェットエッチングで露出させる第1の槽と、前記第1の槽で前記シリコン表面が露出した前記基板を水洗する第2の槽と、前記第2の槽で水洗された前記基板を乾燥させる乾燥装置と、前記乾燥装置で乾燥した前記基板をアルカリ洗浄して、前記シリコン表面にシリコン酸化膜を形成する第3の槽と、前記第3の槽で前記シリコン酸化膜が形成された前記基板を水洗する第4の槽と、を備えることを特徴とする基板の洗浄装置。このような洗浄装置であれば、上記の洗浄方法を実現することができる。従って、シリコン表面にウォーターマークが残ることを防止しつつ、洗浄装置の省スペース化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板のシリコン表面にウォーターマークが残ることを防止することができる。また、洗浄装置の省スペース化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る洗浄装置100の構成例を示す図。
【図2】洗浄装置100内でのウェハー50の搬送方法を示す図。
【図3】本発明の実施形態に係るウェハー50の洗浄方法を示すフローチャート。
【図4】洗浄工程におけるウェハー50の状態を示す図。
【図5】本発明の実施形態における変形例を示す図。
【図6】アルカリ洗浄の効果を説明する図。
【図7】従来例に係る洗浄方法を示すフローチャート。
【図8】従来例に係る洗浄装置200の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(1)洗浄装置
図1は、本発明の実施形態に係る洗浄装置100の構成例を示す概念図である。
図1に示すように、この洗浄装置100は、例えば、シリコンウエーハ又はSOIウェハーなどの基板(以下、単にウェハーという。)を洗浄する装置である。この洗浄装置100は、ウェハー投入口(即ち、ローダー)1と、アルカリ槽2と、純水リンス槽3と、フッ酸槽4と、純水リンス槽5と、乾燥装置6と、ウェハー払い出し口(即ち、アンローダー)7と、を備える。
【0021】
アルカリ槽2は、アルカリ溶液を排出可能に溜める槽である。この槽に溜められるアルカリ溶液は、例えば、アンモニア水(NHOH)と過酸化水素水(H)と純水(HO)とを予め設定された割合で混合した液体である。このアルカリ溶液の各成分の混合割合は、一例を挙げると体積比で、NHOH:H:HO=1:2:10である。また、アルカリ槽2内でのアルカリ溶液は、例えば70℃〜90℃の温度に保持される。
【0022】
純水リンス槽3、5は、純水を排出可能に溜める槽である。例えば、純水リンス槽3、5には、槽の上方から槽内に向けて純水がシャワー等で供給される。また、純水リンス槽3、5は、槽内の純水を超音波で振動させる。このように、純水リンス槽3、5は、槽内のウェハーに純水を供給すると共に、必要に応じて純水を超音波で振動させる。これにより、ウェハーを純水でリンスする(即ち、水洗する)。
【0023】
フッ酸槽4は、HF溶液を排出可能に溜める槽である。HF溶液は、例えば、HFと純水とを予め設定された割合で混合した液体である。このHF溶液の各成分の混合割合は、一例を挙げると体積比で、HF(49%):HO=1:99である。即ち、HF溶液は、例えば0.5%HF水溶液である。
乾燥装置6は、純水でリンスされて、アルカリ溶液又はHF溶液等の残留成分が洗い流された後のウェハーを乾燥させる機器である。乾燥装置6におけるウェハーの乾燥方法としては、例えば、水分をIPA(イソプロピルアルコール)に置換して乾燥させるIPA乾燥若しくはマランゴニ乾燥、又は、ウェハーを高速回転させて遠心力で水分を除去するスピン乾燥等が挙げられる。
【0024】
また、この洗浄装置100は、図2に示すように、複数枚(例えば、1ロット=25枚)のウェハー50をカセット60に収容した状態で搬送する搬送アーム10、を備える。この搬送アーム10は、ウェハー投入口からウェハー払い口へ向かう方向(以下、順方向ともいう。)又は、その逆方向に移動し、一方の槽と他方の槽との間(又は、一方の槽と乾燥装置との間)で、ウェハー50を受け渡しすることが可能となっている。後述するように、この搬送アーム10は、ウェハー投入口1とウェハー払い出し口9との間で、アルカリ槽2、純水リンス槽3、フッ酸槽4、純水リンス槽5、乾燥装置6、アルカリ槽2、純水リンス槽3、乾燥装置6の順に、それぞれ洗浄、リンス又は乾燥処理を行いながらウェハー50を搬送することが可能となっている。
【0025】
(2)洗浄方法
図3は、本発明の実施形態に係るウェハー50の洗浄方法を示すフローチャートである。また、図4(a)及び(b)は、洗浄工程におけるウェハー50の状態を示す断面図である。
ここでは、図1に示した洗浄装置を用いて、図4(a)に示すウェハー50を洗浄する場合について説明する。なお、このウェハー50は、シリコンウエーハであり、シリコン表面51上に絶縁膜52又は絶縁膜53を介して、多結晶シリコン膜54が堆積されている。ここで、絶縁膜52は例えば素子分離用のLOCOS(local oxidation of silicon)膜である。また、絶縁膜53は例えばゲート絶縁膜である。多結晶シリコン膜54は例えばゲート電極膜である。図4(a)に示すように、多結晶シリコン膜54の表面には、絶縁膜52、53の段差Gを反映して凹凸が生じている。
【0026】
図3のステップS1では、まず始めに、カセット60に収容された複数枚のウェハー50を、ウェハー投入口1に投入する。投入されたウェハー50は、搬送アーム10によってアルカリ槽2内に運ばれる。このアルカリ槽2内で、ウェハー50はアルカリ溶液中に浸漬されて洗浄され、その表面からパーティクル、有機物等の異物が除去される。また、このアルカリ槽2内でアルカリ溶液と触れることにより、図4(a)に示した多結晶シリコン膜54の表面には、図示しない薄いシリコン酸化膜(即ち、ケミカル酸化膜)が形成される。ケミカル酸化膜の厚さは、例えば数Åである。
【0027】
次に、ステップS2では、搬送アーム10によりウェハー50をアルカリ槽2内から取り出し、取り出したウェハー50を純水リンス槽3内へ運ぶ。この純水リンス槽3内で、ウェハー50は純水でリンスされ、アルカリ溶液の残留成分が洗い流される。なお、以上のステップS1、S2は、ステップS3の前処理である。
次に、ステップS3では、搬送アーム10によりウェハー50を純水リンス槽3内から取り出し、取り出したウェハー50をフッ酸槽4内へ運ぶ。このフッ酸槽4内で、ウェハー50はHF溶液中に浸漬され、ケミカル酸化膜がウェットエッチングされる。HF溶液中へのウェハー50の浸漬時間は例えば10分程度である。これにより、ケミカル酸化膜下から多結晶シリコン膜54の表面が露出し、ウェハー50の表面は親水性から疎水性へと変わる。即ち、ケミカル酸化膜は親水性であり、多結晶シリコン膜54は疎水性である。ケミカル酸化膜が完全に除去されることにより、ウェハー50の表面は多結晶シリコン膜54となり、疎水性となる。
【0028】
次に、ステップS4では、搬送アーム10によりウェハー50をフッ酸槽4内から取り出し、取り出したウェハー50を純水リンス槽5内へ運ぶ。この純水リンス槽5内で、ウェハー50は純水でリンスされ、HF溶液の残留成分が洗い流される。
次に、ステップS5では、搬送アーム10によりウェハー50を純水リンス槽5内から取り出し、取り出したウェハー50を乾燥装置6内へ運ぶ。この乾燥装置6内で、ウェハー50はIPA乾燥若しくはマランゴニ乾燥、又はスピン乾燥等により乾燥される。
【0029】
なお、ここまでの処理(即ち、ステップS1〜5:1巡目の処理)は連続処理であるが、このステップS5とS6との間は連続処理でなくてもよい。即ち、ステップS5の乾燥工程を終えたウェハー50は、洗浄装置100内での他のロットの処理状況に応じて、洗浄装置100の内側又は外側で一旦待機し、その洗浄処理を一時中断してもよい。また、ステップS4からステップS5へ移行する過程では、多結晶シリコン膜54の表面に水滴が部分的に付着している場合がほとんどであり、この水滴に起因して多結晶シリコン膜54の表面にはウォーターマーク55が形成される場合がある(図4(a)参照。)。しかしながら、本発明では、この段階でウォーターマーク55が形成されても構わない。その理由は、次のステップS6で、ウォーターマーク55を除去することができるからである。
【0030】
ステップS6では、搬送アーム10により、ウェハー50を乾燥装置6内(或いは、図示しない待機エリア)から取り出し、取り出したウェハー50をアルカリ槽2内へ運ぶ。このとき、搬送アーム10は、図2の矢印で示したように、乾燥装置6からアルカリ槽2に向けて(即ち、逆方向へ)移動することとなる。このアルカリ槽2内で、ウェハー50はアルカリ溶液中に浸漬されて洗浄され、その表面からパーティクル、有機物等の異物が除去される。アルカリ溶液中へのウェハー50の浸漬時間は例えば7分程度である。
【0031】
このアルカリ洗浄により、多結晶シリコン膜54の表面から自然酸化膜が除去される。また、自然酸化膜の除去と並行して、多結晶シリコン膜54の表面にはアルカリ溶液と触れることにより、ケミカル酸化膜が形成される。例えば、多結晶シリコン膜54の表面にウォーターマーク55が形成されている場合は、アルカリ洗浄により、このウォーターマーク55も自然酸化膜と共に除去される。そして、ウォーターマーク55が除去された後の多結晶シリコン膜54の表面には、図4(b)に示すように、ケミカル酸化膜56が薄く、且つ均一の厚さに形成される。
【0032】
つまり、図4(a)及び(b)に示したように、乾燥後にアルカリ洗浄を行うことで、多結晶シリコン膜54の表面に形成された自然酸化膜(ウォーターマーク55を含む)がエッチングされると共に、ケミカル酸化膜56が新たに形成される。これにより、多結晶シリコン膜54の表面からウォーターマーク55が除去される。
次に、図3のステップS7では、搬送アーム10によりウェハー50をアルカリ槽2内から取り出し、取り出したウェハー50を純水リンス槽3内へ運ぶ。この純水リンス槽3内で、ウェハー50は純水でリンスされ、アルカリ溶液の残留成分が洗い流される。
【0033】
そして、ステップS8では、搬送アーム10によりウェハー50を純水リンス槽3内から取り出し、取り出したウェハー50を乾燥装置6内へ運ぶ。この乾燥装置6内で、ウェハー50はIPA乾燥若しくはマランゴニ乾燥、又はスピン乾燥等により乾燥される。なお、上記のステップS6〜8の処理(即ち、2巡目の処理)は連続処理である。
また、ステップS7からステップS8へ移行する過程では、ケミカル酸化膜56の表面は全体的に水分で濡れている。しかしながら、多結晶シリコン膜54はケミカル酸化膜56で覆われており、ケミカル酸化膜56上の水分によって、ケミカル酸化膜56下の多結晶シリコン膜54が酸化されることは、常温(例えば、25℃)では起き得ない。従って、ウォーターマークが再度形成されることを防ぐことができる。
【0034】
(3)実施形態の効果
本発明の実施形態によれば、図3のステップS5を終えた時点で、多結晶シリコン膜54の表面には、ウォーターマーク55が生じている場合がある。しかしながら、その後のステップS6で、このウォーターマーク55をエッチングしつつ、多結晶シリコン膜54の表面に薄いケミカル酸化膜56を均一の厚さに形成することができる。従って、洗浄装置100による洗浄処理が終了した後の(即ち、ウェハー払い出し口7から搬出された後の)ウェハー50において、多結晶シリコン膜54の表面にウォーターマーク55が残ることを防ぐことができる。
【0035】
また、本発明の実施形態によれば、ステップS5でウェハー50を一旦乾燥させる。これにより、ステップS6のアルカリ洗浄を行う前に、ウェハー50を洗浄装置100の内又は外で待機させることができ、アルカリ槽2を効率良く使用することができる。さらに、ステップS1と、ステップS6とで、アルカリ槽2を兼用している。このため、図8に示した従来の洗浄装置200と比べて、アルカリ槽2の槽数を必要最小限の数(例えば、1槽)に抑えることができる。また、ステップS2とS7とでも、純水リンス槽3を兼用している。以上から、洗浄装置の省スペース化を十分に達成することができる。
【0036】
また、本発明の実施形態によれば、アルカリ槽2では、アルカリ溶液を常温よりも高い温度(例えば、70℃〜90℃)で保持している。このため、アルカリ溶液を構成しているアンモニア水、過酸化水素水は蒸発し易く、アルカリ溶液の濃度(混合比)が変わり易いため、アルカリ槽2ではアルカリ溶液を定期的に交換する必要がある。ここで、洗浄装置100が有するアルカリ槽2は例えば1槽であり、従来の洗浄装置200と比べて、その槽数が少ない。従って、槽数が少ない分だけアルカリ溶液の使用量を減らすことができ、洗浄処理にかかるコストを低減することができる。
【0037】
(4)変形例
上記の実施形態において、図3に示したステップS1、S2は、ステップS3の前処理である。このステップS3の前処理は、洗浄装置100による洗浄処理の後に続く成膜工程、拡散工程等の種類によっては省略してもよい。例えば、洗浄処理の後で、多結晶シリコン膜54上にシリサイドを形成する場合は、図3に示したステップS1、S2を省略してもよい。その場合は、図5の二点鎖線の矢印で示すように、カセット60に収納されたウェハー50を、ウェハー投入口1からアルカリ槽2と純水リンス槽3とをスルーして、フッ酸槽4へ直接搬送すればよい。この搬送も、図2に示した搬送アーム10が行う。
【0038】
(5)その他
なお、上記の実施形態では、図4(a)及び(b)に示したように、洗浄装置100による洗浄処理の対象を、多結晶シリコン膜54が堆積されたウェハー50とする場合について説明した。しかしながら、本発明において、洗浄処理の対象とする基板はこれに限られることはない。
【0039】
本発明では、例えば、ベア状態(即ち、自然酸化膜を除いて、膜が成膜されていない状態)のシリコンウエーハ、ベア状態のSOIウェハー、エピタキシャル成長法により単結晶シリコン膜が成膜された状態のウェハー、CVD法により絶縁膜を介してアモルファスシリコンが成膜されたウェハーなど、洗浄処理によりウォーターマークが形成される可能性のある基板を、洗浄処理の対象としてもよい。このような場合においても、上記の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0040】
即ち、上記のような各種基板にHF溶液による処理を施すと、図6(a)に示すように、基板のシリコン表面61上からシリコン酸化膜が除去される。シリコン表面61は疎水性のため、基板は水滴をはじく状態となる。また、純水リンス後は、図6(b)に示すようにシリコン表面61にはウォーターマーク55が形成される可能性がある。しかしながら、本発明では、純水リンス後に基板を乾燥させ、その後、アルカリ洗浄を施す。これにより、図6(c)に示すように、シリコン表面61からウォーターマークを除去することができる。また、ウォーターマークの除去と並行して、シリコン表面61に薄いケミカル酸化膜56が均一の厚さに形成することができる。従って、上記の実施形態と同様に、洗浄処理後のシリコン表面61にウォーターマークが残ることを防止することができる。
【0041】
また、HF溶液によるエッチングを行い、純水リンスを行った後で、基板を一旦乾燥させる。これにより、基板を洗浄装置の内又は外で待機させることが可能となる。アルカリ槽を効率良く使用することができ、アルカリ槽の槽数を少なくすることが可能となるので、洗浄装置の省スペース化に寄与することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ウェハー投入口(ローダー)
2 アルカリ槽
3 純水リンス槽
4 フッ酸槽
5 純水リンス槽
6 乾燥装置
9 ウェハー払い出し口(アンローダー)
10 搬送アーム
50 ウェハー
51 シリコン表面
52、53 絶縁膜
54 多結晶シリコン膜
55 ウォーターマーク
56 ケミカル酸化膜
60 カセット
61 シリコン表面
100 洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のシリコン表面をウェットエッチングで露出させる第1の工程と、
前記第1の工程の後で前記基板を水洗する第2の工程と、
前記第2の工程の後で前記基板を乾燥させる第3の工程と、
前記第3の工程の後で前記基板をアルカリ洗浄して、前記シリコン表面にシリコン酸化膜を形成する第4の工程と、
前記第4の工程の後で前記基板を水洗する第5の工程と、を含むことを特徴とする基板の洗浄方法。
【請求項2】
前記第1の工程では、フッ酸を含む液体を溜める第1の槽でウェットエッチングを行い、
前記第2の工程では、純水が供給される第2の槽で前記基板を水洗し、
前記第4の工程では、アンモニア水と過酸化水素水とを混合した液体を溜める第3の槽で前記基板をアルカリ洗浄し、
前記第5の工程では、純水が供給される第4の槽で前記基板を水洗することを特徴とする請求項1に記載の基板の洗浄方法。
【請求項3】
前記第1の工程を行う前に、前記基板を前記第3の槽でアルカリ洗浄し、前記アルカリ洗浄後の前記基板を前記第4の槽で水洗する前処理工程、をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の基板の洗浄方法。
【請求項4】
基板のシリコン表面をウェットエッチングで露出させる第1の槽と、
前記第1の槽で前記シリコン表面が露出した前記基板を水洗する第2の槽と、
前記第2の槽で水洗された前記基板を乾燥させる乾燥装置と、
前記乾燥装置で乾燥した前記基板をアルカリ洗浄して、前記シリコン表面にシリコン酸化膜を形成する第3の槽と、
前記第3の槽で前記シリコン酸化膜が形成された前記基板を水洗する第4の槽と、を備えることを特徴とする基板の洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−84723(P2013−84723A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222905(P2011−222905)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】