説明

基板を化学的に処理するための方法

本発明は、下面12と、上面22と、側面14,16,18,20とを有するウエハ状の基板10を、液状の化学作用のあるプロセス媒体26の、基板の少なくとも下面との接触によって、化学的に処理するための方法に関する。基板と、基板媒体と、これらを取り囲む雰囲気との間で三重線42を同時に形成しつつ、基板を、プロセス媒体に対し、相対的に移動させる。特に側面に存する欠損を化学的に除去するために、プロセス媒体の、基板10の上面22との接触を回避しつつ、相対移動を実行し、三重線を、基板とプロセス媒体26との間の相対移動に関し、プロセス媒体の流れ側から離隔した側面の所望の高さに形成することが提案される。かくして、雰囲気を、プロセス媒体26の中に存在する成分の分圧に関して、上面が疎水特性を保つように、調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、下面と、上面と、側面とを有する、好ましくはウエハ状のまたはプレート状の、基板を、液状の化学的に活性なプロセス媒体の、基板の少なくとも下面との接触によって、化学的に処理するための方法であって、基板を、基板と基板媒体とこれらを取り囲む雰囲気との間で三重線(Tripellinie)を同時に形成しつつ、プロセス媒体に対し相対的に移動させる方法に関する。
【0002】
従来の技術によれば、プレート状の構成部材を化学的に処理するための多数の一貫処理法(Durchlaufverfahren)が知られている。このような一貫処理法では、プロセス媒体によって、構成部材の表面との化学反応が調整される。半導体産業では、このことは、特に、半導体材料を化学的に洗浄しかつ構造化するためのエッチング工程であり、光起電力の特別な適用領域では、面積の広いかつ薄いシリコンウエハの化学的処理である。
【0003】
半導体産業の方法は、ウエハの表面に、特に、ガス状のプロセス媒体および/または液状のプロセス媒体を作用させる。
【0004】
基板の表面全体が、ガス状の媒体と化学反応を行なうように、ウエハの上面にガス状のプロセス媒体を作用させる方法が知られている。その一例は、フッ化水素酸の蒸気を含む雰囲気への導入であり、基板表面にある酸化層が除去される。基板の前側および/または後側および/または縁部の選択的な処理は、そもそも、この方法によっては、不十分にのみ可能である。プロセス媒体による濡れに対する基板側の不完全な保護が、平らなベースに基板を配置させることによって、部分的に達成されることが可能である。詳しくは、配置面の領域で、ガス状の媒体の作用を、部分的に抑えることができるのである。更に、各々2つのウエハ状の基板の対面位置の可能性もある。それ故に、2つの基板同士の接触面が、ガス状のプロセス媒体による濡れから部分的に除外される。
【0005】
実際また、表面と化学的に反応する液状の媒体によるウエハの表面の処理が公知である(WO−A−2007/073886、WO−A−2007/073887)。液状の媒体が、ウエハの表面に載ったまま、ローラを通って搬送され、液体に向いたウエハ面のみが適切に濡らされる。
【0006】
更に、複数のウエハを、薄い搬送ローラによって移動させる方法が知られている。液状媒体の、下にあるウエハ面との接触は、液面での濡れによって、下方にウエハの縁部から液体体積へ向けられている液体メニスカスを形成しつつ、調整される。このような方法では、ウェブの縁部が、化学反応から除外され、精々のところ、無制御でかつ再現不能に処理される。
【0007】
ウエハのような薄い基板が、側面に損傷または欠陥を有するとき、その後の取り扱いの最中に、基板が側面から始まって損傷され、または基板の複数の領域が破壊することが、確認されねばならない。
【0008】
DE−A−10313127からは、シリコンウエハの場合に短絡を防止するための方法が読み取れる。処理のために、ウエハの下面および必要な場合には縁部を、エッチング槽に降下する。
【0009】
WO−A−2005/093788に記載のように、シリコンウエハの下面および側面は、シリコンウエハが、搬送ローラにより、液槽の中を運ばれることによって、一貫処理法で連続的に処理される。
【0010】
DE−A−4423326は、シリコンウエハ構造の裏面をエッチングするための方法に関する。この目的のために、基板は、保持装置に取り付けられる。その目的は、次に、一方の面にエッチング媒体を、他方の面に窒素を作用させるためである。
【0011】
前記タイプの方法を、後続の取り扱いの最中に破損の減少が生じるべく、特に側面にある破損を化学的に除去するように、改善するという課題が、本発明の基礎になっている。この場合、方法に関して経済的に作業するために、連続的な一貫処理法で化学的に処理することが意図される。
【0012】
本発明によれば、上記課題は、プロセス媒体の、基板の上面との接触を回避しつつ、相対移動を実行すること、三重線(Tripellinie)を、基板とプロセス媒体との間の相対移動に関し、プロセス媒体の流れ側から離隔して側面の所望の高さに形成すること、および/または雰囲気を、プロセス媒体の中に存在する成分の分圧に関して、上面が疎水特性を保ちまたは上面に疎水特性が形成されるように、調整すること、および、基板を、好ましくは、プロセス媒体への相対移動中に、上面と側面との間に延びている各々の縁部から、または化学的処理中に、側面の領域で、三重線が出現する程度に、回転させることによって、解決される。三重線が、基板の上面と側面との間の、プロセス媒体の流れ側から離隔した縁部に、形成されていることが、特に提案される。
【0013】
本発明によれば、薄いプレート状のまたはウエハ状の基板を化学的に処理するための、特に、太陽電池を製造すべく基板を処理するための方法が用いられる。この方法では、連続的な一貫処理法で、破壊感受性が減じられる。方法に典型的な処理によって、基板の下面および側面が、連続的な一貫処理法で、同時に処理される。その目的は、化学的に作用するプロセス媒体による濡れによって、基板の下面および側面とのみの化学的反応が、1つの作業工程でなされ、上面を化学反応に含めないためである。
【0014】
従来の技術に比較して、利点は、ウエハ状のまたはプレート状の、従って薄い基板の下面および側面が、連続的な一貫処理法で、更なる使用のためのただ1つの工程段階で化学的に処理されるが、しかし、化学的処理中に、上面の汚染が回避されまたは抑制されることである。基板とプロセス媒体との間の相対移動の適切な調整がなされる。その目的は、基板と、プロセス媒体と、雰囲気との間の三重線が、プロセス媒体の上方で、後面の、流れ方向に対し所望の高さで、特に、後面の、後方の上縁に生じ、このことに対応して、側面が、下面のほかに、プロセス媒体と化学的に反応し、その結果、表面処理従ってまた、材料欠陥、例えば、亀裂、微小亀裂または表面粗さおよびテクスチャ、酸化物、または更なる処理工程にとって望ましくない他の領域が除去される。このことによって、更なる処理工程の実行に関する最適化、特に太陽電池の製造の際には、同時に、破壊感受性の減少が生じる。
【0015】
特に、本発明に係わる教示に基づき、不純物がドープされた半導体基板の場合、下面および側面の除去が、プロセス媒体の中での処理中に、以下の程度、すなわち、不純物がドープされた層が、特に、太陽電池のために意図された半導体基板の場合にpnまたはnp接合が、除去され、上面の領域にあるこのpnまたはnp接合が攻撃されない程度に、なされる可能性がある。
【0016】
この場合、特に提案されることは、プロセス媒体による前面の汚染を防ぐために、上面を取り囲む雰囲気が、反応室中で調整されて、雰囲気中にあってプロセス媒体から出る成分が、分圧を有し、それ故に、上面に疎水特性が形成され、あるいは、かような特性が保たれることである。
【0017】
この目的のために、特に提案されることは、雰囲気が、反応室にある酸蒸気と交換されて、その結果、基板に関しエッチング作用を有する酸成分の蒸気圧力が、酸化特性を示す、酸のプロセス媒体の成分の、その割合を越えることである。
【0018】
プロセス媒体がフッ化水素酸および硝酸を含むとき、成分の分圧が同じであるほうがよい。それ故に、HF分子の割合が、HNO分子の割合を越える。このことによって、上面のエッチング除去がなされ、その結果、存在する酸化層が除去され、かくて、疎水特性が生じる。
【0019】
従って、プレート状のまたはウエハ状の基板が、同時に、下面および側面にのみ、連続的な動的な工程で、化学的に活性な液体で濡らされる。それ故に、化学的な除去反応が、濡れ面において、基板の上方の雰囲気の中ですなわち一貫処理法が行なわれる反応室の中で化学的活性な液体の成分の分圧が同時に存在しつつ、調整される。その目的は、疎水性を得るための更なる化学的反応を可能にするためである。
【0020】
本発明から逸脱することなく、この場合、プロセス媒体による下面および側面の濡れの前に、すでに、上面の疎水性を達成する可能性がある。かくして、必要な場合には、前処理段階があってもよい。その目的は、疎水特性が調整されるように、基板の上面を、必要な場合には全面を、適切な化学物質で処理するためである。このことによって、連続的な一貫処理法で、移動方向から離隔した側面に沿って、液体の増加が強められる。それ故に、所望の三重線が、後方の側面において、特に、基板の上縁において、側面における化学的除去を限定するために、化学的侵食の開始から、調整される。三重線で、基板の上面、液状のプロセス媒体およびガス状の周囲雰囲気が交わる。
【0021】
三重線が基板の上縁に存在することによって、基板の最大限の濡れ面が、側面を含めて下面に限定される。
【0022】
好ましくは各々の側面を必要な程度に化学的に処理するために、基板は、一貫処理法の最中に、基板によって規定された平面に対し垂直に延びている軸を中心として、必要な程度回転される。矩形の基板の場合、すべての側面を処理するためには、その都度90°ずつ回転がなされる。平面図で円形の基板の場合、これらの側面は、円形の全側面が所望の程度に処理される程度に、回転される。この意味で、側面は、前記タイプの円形の側面とも理解されるべきである。
【0023】
基板の回転は、基板が、複数の側面のうちの1つの処理後に、プロセス媒体から取り出され、回転され、次に、新たに、前記プロセス媒体または他のプロセス媒体の中を導かれるときにも、実現され、かつこの意味に理解されるべきである。
【0024】
本発明によれば、基板とプロセス媒体との間で相対移動が、引き波(Heckwelle)が形成されるように、なされる。この引き波は、複数の側面が完全に化学的に処理されることが意図されるときに、移動方向に対し後側の側面の上縁に沿って延びている。
【0025】
好ましくも、基板が半導体基板、特にシリコン半導体基板であることが提案されるとき、本発明に係わる教示は、このことに限定されない。むしろ、化学的反応によって表面の除去が可能となるすべての材料が、適切である。
【0026】
このことは別に、基板は、平面図で、正方形の、擬正方形の、矩形のまたは円形の形状を有するほうがよい。基板の厚さは、特に50μm〜500μmの、しかし、好ましくは100μm〜200μmの範囲にある。
【0027】
平面図で、角のある形状を有する基板が処理されるとき、少なくとも1つの縁部、好ましくは各々の縁部は、100mm〜350mm、好ましくは125mm〜156mmの範囲にある長さを有するほうがよい。従って、本発明に係わる方法は、太陽電池の製造のために意図されているウエハのために適切である。
【0028】
プロセス媒体を基板に向かって流す可能性があるとき、基板を、プロセス媒体の中を通って導くことは好ましい。当然ながら、一方ではプロセス媒体を流し、他方では、基板を、プロセス媒体の流れ方向と反対方向に動かす可能性もある。
【0029】
プロセス媒体としては、基板に対し酸化作用を有する少なくとも1つの水性の酸と、基板の酸化物に対し錯化作用を有する少なくとも1つの水性の酸とを成分として含む媒体が、用いられる。
【0030】
特に、プロセス媒体が、HO,HF,HNO,HCl,酸化剤、例えばH,NO,フッ化アンモニウム、酢酸、硫酸、リン酸の群からの成分を含むほうがよい。プロセス媒体が、シリコンを含みまたはシリコンからなる基板の処理中に、水溶性のフッ化水素酸および水溶性の硝酸を含むことは好ましい。
【0031】
このこととは別に、酸成分は、0.1体積%〜70体積%の割合を有するほうがよい。プロセス媒体の全成分の合計は、100体積%である。
【0032】
成分としてのHFおよびHNOに関して提案されることは、HFの割合が、1.0重量%〜20重量%であり、HNOの割合が、20重量%〜70重量%であり、各々は、同様に、全成分100重量%に基づく。
【0033】
特に良好な結果は、HF対HNOの重量割合が、1:8≦HF:HNO≦1:3であるときに、達成される。このことによって、処理中に、雰囲気が、プロセス媒体の上方で、従って、反応室の領域で形成される。この領域には、基板の濡れていない上面があって、この上面は、上面のエッチング除去を引き起こし、その結果、酸化層が除去され、従って、疎水特性が与えられている。
【0034】
しかし、ロータス効果、従って望ましい疎水特性が生じるように、少なくとも上面に関して構造化されている基板を用いる可能性がある。この場合、エッチング作用を有する雰囲気が、疎水特性が維持されていることを保証する。
【0035】
このこととは別に、化学的処理を、プロセス媒体の温度Tで行なうほうがよく、但し、5℃≦T≦45℃、好ましくは10℃≦T≦25℃である。しかしながら、特に好ましい温度範囲として、室温より低く、従って5℃≦T<Tの間の範囲にある温度範囲が、示されねばならない。
【0036】
所望の疎水特性を調整するために、基板が前処理されるとき、シリコン基板の場合に、フッ化水素酸の水溶液が用いられるほうがよい。この水溶液は、0.1重量%〜40重量%、好ましくは、1重量%〜10重量%の濃度を有する。処理温度は、この場合、5℃〜65℃、特に20℃〜45℃、好ましくは20℃〜40℃であるほうがよい。
【0037】
好ましい前処理時間としては、1秒〜と10分、特に、5秒〜60秒の時間が挙げられねばならない。
【0038】
連続的な一貫処理法の場合、基板とプロセス媒体との間の相対速度Vが、0.1m/分〜10m/分、好ましくは0.5m/分〜5m/分であるほうがよい。
【0039】
万が一の前処理を有しない全処理時間は、5秒〜10分、特に、15秒〜5分であるほうがよい。
【0040】
基板側面および側面の処理の最中に、雰囲気を、不活性のおよび/または反応性のガス成分の供給によって、上面に作用する雰囲気によるエッチング作用が生じるように、変化させるほうがよい。
【0041】
本発明の複数の他の詳細、利点および特徴は、複数の請求項と、これらの請求項から読み取れる、単独および/または組合せで生じる複数の特徴とからのみならず、図面から見て取れる複数の好ましい実施の形態の以下の記述からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】基板を化学的に処理するための反応室の原理図の部分断面図を示す。
【図2】基板の処理前の基板の部分図を示す。
【図3】化学的に活性な液状のプロセス媒体の中での基板の相対移動中の図を示す。
【図4】外面をすでに部分的に除去した後の、化学的処理中の基板を示す。
【図5】化学的に処理された基板と、基板の化学的処理の前の基板との間の比較を示す。
【図6】化学的に処理された基板の部分図を示す。
【0043】
基本的には同一の要素に同一の参照符号が付されている図面に基づいて、基板を化学的に処理するための本発明に係わる方法を詳述する。基板は、本発明を限定することなく、実施の形態では、シリコンからなりかつ平面図では矩形のウエハの形状を有する基板10である。このウエハは、太陽電池の製造のために意図されている。実際また、以下に、側面の、その全面に亘っての処理を説明する。但し、下方の部分領域のみが適切に化学的に処理することができるとしても、である。基板10には、基板の、以下に説明される化学的処理の前に、あらゆる側で前もって不純物がドープされていてもよい。その目的は、元の外面から間隔をあけて、pn接合を形成するためである。但し、基板10がp導電型である場合に限る。基板がn導電型であるとき、np接合は、ドーピングによって形成される。ドーピングが、通常は、リンまたはホウ素を含有するドーパントを用いて、行なうことは好ましい。
【0044】
本発明に係わる教示に従って、基板10の下面12ならびに側面14,16,18,20および上面22のみを再現可能に処理するために、従って、化学的に処理するために、例としては、特に、側面領域において、酸化層、材料欠陥、例えば、亀裂、微小亀裂または表面粗さおよびテクスチャを、あるいは、側面14,16,18,20のおよび下面12の領域に延びているpnまたはnp接合をエッチング除去するために、基板10を、プロセス室とも呼ばれるハウジング24によって囲繞されている反応室および処理室21の中で、液状のプロセス媒体26に晒す。このプロセス媒体は、シリコンからなる基板10の実施の形態では、少なくとも、成分として、フッ化水素酸および硝酸ならびに、HOのほかに、他の成分、例えば、酸化剤またはフッ化アンモニウム、酢酸、硫酸、リン酸または他の酸を含むことができる。しかしながら、HNOのような酸化作用する酸のほかに、HFのような錯化作用する酸が、プロセス媒体26に含まれていることが重要である。
【0045】
基板10を、反応室21による連続的な動的な処理中に、下面12をおよび以下に記載のように側面14,16,18,20を同時に濡らす際に、上面22を濡らすことを回避しつつ、搬送ベルト28で、あるいは、同じ作用をする搬送手段で、反応室21の中を、従ってハウジング24の中を搬送する。この場合、プロセス媒体26を、処理中に、好ましくは、循環し、かつ、化学反応を引き起こす成分の所望の濃度が存在する程度に、交換する。この場合、酸濃度が、0.1体積%〜70体積%の範囲にあって、HFの酸濃度が、0.1重量%〜20重量%の範囲にあり、HNOの酸濃度が、20重量%〜70重量%であってもよいことが、特に提案される。HFおよびHNOが存在しているときは、両者の割合は、1:8〜1:3であるほうがよい。
【0046】
プロセス媒体26の、基板10への作用中に、第1に、温度を、好ましくは室温T未満、例えば5℃≦T<Tの範囲に調整するほうがよい。
【0047】
基板10がプロセス室24に導入される前に、プレート状の平行六面体形状を有する基板10を、疎水性表面特性が生じるように、前処理することができる。疎水性表面特性は、プロセス室24におけるプロセス媒体26との相互作用中に、上面22がプロセス媒体22によって濡らされないことを保証するためには、望ましい。
【0048】
前処理は、プロセス室24の外でなされることが好ましく、浸漬、噴霧、ミスティングまたは他の濡れ法によって行なわれることができる。浸漬法が好ましい。基板の1つの表面または複数の表面の疎水性特性を引き起こすプロセス媒体としては、フッ化水素酸または同様に作用する酸が用いられることは好ましい。その代わりに、フッ化水素酸および硝酸の混合物も、用いられるだろう。このことによって、酸化物を含まない、細孔性の表面層が、基板10上に形成される。この表面層は、ロータス効果を示す。
【0049】
前処理、従って、実施の形態では浸漬後には、プロセス媒体の広がりを回避しまたは減じるために、基板10の表面に付着している残りのプロセス媒体の払拭または吹き飛ばしがなされることが、提案されることは好ましい。前処理の場合には、表面とは、少なくとも下面および側面が払拭され、または吹き飛ばしがなされることを意味する。必要な場合には、HOの噴霧プロセスおよび空気流の乾燥プロセスが可能である。この場合、基板10の全面が処理される。空域の使用の際には、空域は、室温ないし100℃の間の温度を有することができる。好ましい温度範囲は、30℃と50℃の間にあるほうがよい。
【0050】
前処理が必要な場合になされた後には、基板10を、ローラ30,32または他の適切な装置によって案内または転向される、搬送ベルト28または他の適切な搬送媒体によって、プロセス室24へ導入する。搬送ベルト28によって規定された、液面34に対する搬送面が、基板10の厚さに従って調整され、その結果、全体の下面12および部分的には側面14,16,18,20がプロセス媒体26と接触して、プロセス媒体26が上面22を濡らさず、または上面に沿って流れることがない。矢印36の方向にプロセス室24を通って搬送される基板10の搬送速度は、基板10がプロセス媒体26の中を搬送される際に、液面34と、上面22との間隔に従って、調整される。それ故に、後面14には、プロセス媒体26の引き波40が、基板10の後面14と上面22との間に延びている上縁38に沿って、形成され、従って、三重線42が、縁部38に沿って生じる。この縁部では、プロセス媒体26と、基板10と、雰囲気とが互いに交わる。
【0051】
プロセス媒体26の、側面14,16,18,20および下面12への作用によって、エッチング除去がなされる。エッチング除去は、下面12を区画する複数の縁部48に沿って、これらの縁部の除去によって表わされる。このことは、図4の丸み50によって全く原理的に明らかにされる。
【0052】
三重線42は、基本的には、側面の上縁にのみ、必要な場合には、搬送方向36から離隔している側面において所望の高さに生じるが、本発明では、各々の側面14,16,18,20が、所望の程度に、上面側でエッチング除去されねばならないので、基板10は、プロセス室24の中の搬送の最中に、相応に回転され、従って、平行六面体状の基板の場合には、都合3回でその都度90°回転される。
【0053】
特に提案されるのは、基板10が、下面12および側面14,16,18,20において0.5μm〜3μm、特に1μmの範囲のエッチング除去を引き起こす時間の間に、プロセス媒体25と相互作用することである。
【0054】
このエッチング除去は、酸化層、材料欠陥、例えば、亀裂、微小亀裂または表面粗さおよびテクスチャを除去するために用いられ、特に、ドーピング剤の事前の衝突の場合に、用いられる。ドーピング剤は、ドーピング層がある場合に、pnまたはnp接合を形成すべく、例えば太陽電池のための、用途に典型的な再加工のために用いられる。
【0055】
従って、下面12および側面14,16,18,20の領域において、これらの面の各々の全体の広がりに亘って、対応のpnまたはnp接合を除去することは、不純物がドープされたウエハの形態の基板を処理する場合の、本発明の、方法上典型的な特徴として、見なされる。これらの基板は、太陽電池の製造のために意図されている。
【0056】
本発明は、このような適用例に限定されない。同じことは、エッチング除去の程度にも当てはまる。例えば、下面12および側面14,16,18,20において5μmと60mの間、特に20μmの範囲のエッチング除去がなされる可能性が、即座に与えられている。この場合、エッチング除去は、特に、表面粗さの除去のために、用いられる。表面粗さは、用途に典型的な再加工において、太陽電池上の、前面にある只1つの表面テクスチャを製造するために、用いられる。下面および側面における表面テクスチャの除去は、同様に、本発明の方法上典型的な特徴と見なされることができる。
【0057】
本発明から逸脱することなく、更に、シリコンウエハが、本発明に係わる処理続行の前に、従来の技術に基づく一側のエッチング工程に晒される可能性もある。このエッチング工程は、エッチングされた上面上の表面粗さまたは表面テクスチャをもたらす。
【0058】
事前にエッチングされていない上面および側面14,16,18,20上のシリコンウエハの、まだ残っている表面上の、シリコンウエハの、損傷を除去するために、ウエハの下面12および側面14,16,18,20において1μm〜100μmの範囲のエッチング除去、特に、滑らかな表面をもたらす5μm〜20μmのエッチング除去が調整される。このことによって、滑らかな側面14,16,18,20を得る中での表面損傷の所望の除去、従ってまた改善された機械的な負荷能力が達成されるのみならず、ウエハの表面の、損傷を受けていない基板から後で製造される太陽電池にとって好都合な形態(片面の表面テクスチャ)が、適切に選択的な従ってまた経済的なエッチングによって達成される。
【0059】
下面12および側面14,16,18,20における粗さの除去従ってまた材料の欠陥および亀裂の除去によって、基板10は、特に、薄いシリコンウエハの処理の際に、強度の改善を被る。複数の実験は、156mm×156mmの大きさおよび180μmの厚さを有するシリコンウエハの場合に、50%より多い分の破壊強さの改善が達成可能であることを明らかにした。
【0060】
1μm〜100μmの範囲の、特に、5μm〜20μmの範囲のエッチング除去は、機械的な工程、例えばのこ切断、フライス加工、研削またはレーザ法のような他の典型的な切断方法による、基板10の表面上の損傷の除去をもたらす。
【0061】
下面12および側面14,16,18,20における表面損傷の除去によって達成されるのは、特に、処理後になされる取り扱いによって、生じる機械的負荷の際に、基板10の耐破壊性が著しく増大されることである。
【0062】
相互作用従ってまた基板10のエッチング除去が、下面12および側面14,16,18,20でのみなされることが、本発明により提案されているので、上面22の濡れは、上面22が疎水性であることによって、回避される。
【0063】
疎水特性は、基板10の前述のような前処理によって、および/または、基板10の、プロセス室24の中のプロセス媒体26のガスとの相互作用の間に、調整されることができる。例えば、基板の下面12および側面14,16,18,20の化学的エッチングの間に、プロセス媒体26の上方で従ってまた基板の上面22の上方で、雰囲気を調整することができる。雰囲気は、空気のほかに、HF,NOXおよびHNO含有のガス成分および水蒸気を含む。成分の分圧は、基板10の上面22に、微細孔のある多孔質層が形成されるように、調整される。同時に、万が一酸化層があれば、酸化層を除去する。従って、一層疎水性のある表面が、所期のロータス効果により得られる。その目的は、これにより、プロセス媒体による濡れを基本的に回避するためである。この場合、下面12および側面14,16,18,20のエッチング中に生じる硝気を用いることは好都合である。更に、エッチング中に放出される反応熱を、流出するNOX反応ガス、HF,HNOおよび水と共に、ガス雰囲気の中に放出することができる。エッチングバス組成物およびエッチングバス温度の適切な選択によって調整される、HF,HNOおよびNOの分圧および水蒸気、ならびに、ガスのおよび所望の組成のガス混合物の吸引による、反応室21からの今あるガス混合物との相補的な動的交換によって、疎水特性を有する上面22が形成されることができる。ガスは、例えば、開口部51を介して吸引され、所望の組成のガスは、ハウジング24の開口部52を介して、反応室に供給される。この場合、供給されたガスは、反応性成分または不活性成分を含むことができる。その目的は、基板の上方に、上面22上に所望の疎水特性を形成しまたは保存する、組成物の雰囲気を有するためである。
【0064】
三重線が、前述のように、移動方向に対し離隔している後面−実施の形態では側面14−と、上面22との間の上縁38で調整されることが好ましいとき、三重線が、各々の後面14,16,18,20上で所望の高さに調整されることは、前述のように、当然ながら、本発明の教示に含まれる。
【0065】
ただ1つの側面または複数の選択された側面14,16,18,20を、所望の程度に、適切に処理し、従って、1つの側面の上にまたは複数の側面の上縁に、本発明に係わる化学的処理に基づいて実施される更なる工程段階に応じて、三重線 を調整する可能性もある。更に、側面14,16,18,20における表面層を、異なった厚さに除去することができる。これに対応して、対応の側面を、多かれ少なかれ長いこと、移動方向から離隔した方向に、整列する必要がある。
【0066】
図5を参照して、本発明に係わる教示により側面14,15,18,20および下面12を除去することを明らかにしよう。かくして、破線によって、基板の処理前の、基板10の周囲形状が、示されている。実線は、単に原理的に、基板の本発明に係わる処理後の、基板10の形状を明示している。
【0067】
更に、図6は、プロセス媒体の中での化学的処理によって、基板の縁部38,48が、互いに異なって丸みをつけられることを示す。かくして、引き波40が上縁から出て、すなわち、三重線が、上面22と側面14との間の移行領域に延びているとき、上縁38は、下に除去された縁部48の領域、すなわち側面14と下面12との間の移行領域の半径R2より小さい半径R1を有する。
【0068】
異なった半径R1,R2は、三重線の領域で、エッチング除去が、基板10の下面の領域よりも少ないことによって、生じる。かくして、基板材料としてのシリコンの比率は、約>1:10、特に1:20であるほうがよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面(12)と、上面(22)と、側面(14,16,18,20)とを有する、好ましくはウエハ状のまたはプレート状の、基板(10)を、液状の化学的に活性なプロセス媒体(26)の、前記基板の少なくとも前記下面との接触によって、化学的に処理するための方法であって、記基板を、前記基板と、前記基板媒体と、これらを取り囲む雰囲気との間に三重線(42)を同時に形成しつつ、前記プロセス媒体に対し、相対的に移動させ、
前記プロセス媒体の、前記基板(10)の前記上面(22)との接触を回避しつつ、相対移動を実行すること、前記三重線(42)を、前記基板と前記プロセス媒体(36)との間の相対移動に関し、プロセス媒体の流れ側から離隔した側面(14,16,18,20)の所望の高さに形成すること、および/または雰囲気を、前記プロセス媒体(26)の中に存在する成分の分圧に関して、前記上面(22)が疎水特性を保ちまたは前記上面に疎水特性が形成されるように、調整すること、および、前記基板を、好ましくは、前記プロセス媒体への相対移動中に、前記上面と前記側面との間に延びている各々の縁部(38)から、または化学的処理中に、前記側面の領域で、前記三重線が出現する程度に、回転させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記三重線(42)は、前記基板の前記上面(22)と前記側面(14,16,18,20)との間の、プロセス媒体の流れ側から離隔した縁部(38)に、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板(10)を、この基板から出て、前記プロセス媒体からなり、かつ前記縁部(38)からまたはこの縁部によって区画された前記側面(14,16,18,20)から出る引き波(40)を同時に形成しつつ、前記プロセス媒体(26)に対し移動させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
基板(10)として、半導体基板、特にシリコン半導体基板を用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記化学的処理を、前記基板が処理後に滑らかな下面および側面(12,14,16,18,20)を有する程度に、行なうことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記化学的処理によって、1μm〜100μmの層の厚さを除去することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
基板(10)として、少なくとも前記下面(12)および/または少なくとも1つの側面(14,16,18,20)に不純物がドープされた半導体基板、例えば、pn接合を有するシリコン基板を用いること、および前記不純物がドープされた領域を前記化学的処理によって除去することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
基板(10)として、平面図で正方形の、擬正方形の、矩形のまたは円形の形状を有する基板を用いることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
基板(10)として、厚さdを有し、但し、50μm≦d≦500μm、特に、100μm≦d≦200μmである基板を用いることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
平面図で角のある形状および複数の縁部(38)を有する基板(10)を用い、これらの縁部のうち、少なくとも1つの縁部、好ましくは各々の縁部は、長さLを有し、但し、100mm≦L≦350mm、特に125mm≦L≦156mmであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記基板(10)を、前記プロセス媒体(26)によって前記側面(14,16,18,20)を少なくとも部分的に濡らしつつ、前記プロセス媒体の方へ動かすことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
プロセス媒体(26)として、前記基板(10)に対し酸化作用を有する少なくとも1つの水溶性酸と、基板材料の酸化物に対し錯化作用を有する少なくとも1つの水溶性酸とを含む媒体を用いることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
プロセス媒体(26)として、HO,HF,HNO,HCl,酸化剤、例えばH,NO,フッ化アンモニウム、酢酸、硫酸、リン酸のグループからの成分を含む媒体を用いることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
プロセス媒体(26)として、少なくとも水溶性のフッ化水素酸および水溶性の硝酸を含む媒体を用いることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
プロセス媒体(26)として、0.1体積%〜70体積%の酸成分を有する媒体を用い、前記プロセス媒体中の全成分の合計が、100体積%であることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
プロセス媒体(26)として、HFの割合が、0.1重量%〜20重量%であり、HNOの割合が、20重量%〜70重量%であり、前記プロセス媒体中の全成分の合計が100重量%である媒体を用いることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
プロセス媒体(26)として、HF対HNOの重量割合が、1:8≦HF:HNO≦1:3である媒体を用いることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記化学的処理を、前記プロセス媒体の温度Tで行ない、但し、5℃≦T≦45℃、好ましくは10℃≦T≦25℃、特に5℃≦T<Tであって、但し、T=室温であることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記化学的処理の前に、前記基板(10)の少なくとも上面(22)に、疎水特性を備えることを特徴とする請求項1ないし18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも前記上面(22)に、ロータス効果を引き起こす構造を備えることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも前記上面を酸化物なしにおよび/または滑らかに形成することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記基板(10)を、0.1重量%ないし40重量%、好ましくは、1重量%ないし10重量%の濃度を有するフッ化水素酸の水溶液で前処理することを特徴とする請求項1ないし21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記基板を温度Tで前処理し、但し、5℃≦T≦65℃、好ましくは20℃≦T≦45℃、特に、20℃≦T≦40℃であることを特徴とする請求項1ないし22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記基板は、万が一の前処理後に、時間tに亘って、前記プロセス媒体(26)と相互作用し、但し、5秒≦t≦10分、特に、15秒≦t≦5分であることを特徴とする請求項1ないし23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記前処理を、時間tに亘って行ない、但し、1秒≦t≦10分、特に、5秒≦t≦60秒であることを特徴とする請求項1ないし24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記化学的処理を、前記基板(10)と前記プロセス媒体(26)との間の相対速度Vで行ない、但し、0.1m/分≦V≦10m/分、好ましくは0.5m/分≦V≦5m/分であることを特徴とする請求項1ないし25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記基板(10)を前記プロセス媒体(26)に向かって動かすことを特徴とする請求項1ないし26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記化学的処理の最中に、前記基板(10)の前記上面(22)を囲繞する雰囲気の成分を、以下のように、すなわち、HNOのような酸化作用を有する酸の分圧が、HFのような錯化作用を有する酸の分圧と同一か、ほぼ同一かあるいは後者の分圧より小さいように、調整することを特徴とする請求項1ないし27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記化学的処理の最中に、前記雰囲気を、不活性のおよび/または反応性のガス成分の適切な供給によって、以下のように、すなわち、前記上面(22)に作用する前記雰囲気によるエッチング作用が生じるように、変化させることを特徴とする請求項1ないし28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記雰囲気を、100mg/mと1000mg/mとの間のHF蒸気、および/または100mg/mと3000mg/mとの間のHNO蒸気および/または窒素またはアルゴンのような不活性ガスおよび/または空気の供給によって、1時間当たり10回ないし100回の間の交換率で交換することを特徴とする請求項1ないし29のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−504351(P2012−504351A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529533(P2011−529533)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062608
【国際公開番号】WO2010/037739
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(510139069)ショット・ゾラール・アーゲー (17)
【Fターム(参考)】