説明

基板乾燥方法及び基板処理装置

【課題】表面に凹凸のパターンが形成された基板上の液体を除去して基板を乾燥させるにあたって、パターン倒壊を防止すること。
【解決手段】表面に凹凸のパターンが形成された基板上の液体を除去して基板を乾燥させる基板乾燥方法は、前記基板に昇華性物質の溶液(SL)を供給して、前記パターンの凹部内に前記溶液を充填する昇華性物質充填工程と、前記溶液中の溶媒を乾燥させて、前記パターンの凹部内を固体の状態の前記昇華性物質(SS)で満たす溶媒乾燥工程と、前記基板を前記昇華性物質の昇華温度より高い温度に加熱して、前記昇華性物質を基板から除去する昇華性物質除去工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板乾燥方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウエハ等の基板に形成されるパターンの微細化に伴い、パターンのアスペクト比(高さ/幅)が高くなってきている。アスペクト比がある値より大きくなると、基板に対して半導体形成時の液処理後に行われる乾燥処理の際にパターン倒壊(パターンを構成する凸状部の倒壊)が生じやすくなる。パターン倒壊は、乾燥時にパターンの凹部から液が抜け出すときに、パターンの柱状部が液の表面張力に起因して生じる応力に耐えられなくなるために生じる。
【0003】
上記の問題を解決するため、液処理後に基板表面にある液の表面張力を減ずる溶剤を液に添加すること、あるいは液をIPA(イソプロピルアルコール)で置換することなどが行われているが、アスペクト比がさらに高くなってパターンの強度がさらに低くなると、この方法では対処しきれなくなる。このため、表面張力がパターンに作用すること自体を防止する方法が提案されてきており、その一例が特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の方法においては、まず、露光されたフォトレジスト膜に現像液を供給することによって、フォトレジスト膜を溶解してパターンを形成する。基板にリンス液を供給して現像液を除去する洗浄処理すなわちリンス処理の終期に、リンス液が基板表面を覆っている状態でリンス液に可溶性のポリマーを基板に供給し、その後にポリマー溶液を乾燥させる。これによって、パターンの凹部(フォトレジスト膜からなる凸状部間の隙間)がポリマーにより充填される。しかる後、選択性のプラズマアッシングによりフォトレジスト膜またはポリマーを除去する。フォトレジスト膜を除去する場合には、ポリマーによりマスクが形成され、ポリマーを除去する場合には、フォトレジスト膜によりマスクが形成される。上記方法によれば、パターンに表面張力が作用することがなく、パターン倒壊を防止することができる。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の方法は、フォトレジスト膜またはポリマーを除去する際にプラズマアッシングを利用するので、灰化して除去されたフォトレジスト膜やポリマーが基板に付着するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−19161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、プラズマ処理装置を必要とせず、パターン倒壊を防止することができる基板の乾燥技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点によれば、表面に凹凸のパターンが形成された基板上の液体を除去して基板を乾燥させる方法において、前記基板に昇華性物質の溶液を供給して、前記パターンの凹部内に前記溶液を充填する昇華性物質充填工程と、前記溶液中の溶媒を乾燥させて、前記パターンの凹部内を固体の状態の前記昇華性物質で満たす溶媒乾燥工程と、前記基板を前記昇華性物質の昇華温度より高い温度に加熱して、前記昇華性物質を基板から除去する昇華性物質除去工程と、を備えた基板乾燥方法が提供される。
【0009】
本発明の第2の観点によれば、基板に液を供給する液供給手段と、前記基板に昇華性物質の溶液を供給する昇華性物質溶液供給手段と、前記基板に付着した前記昇華性物質の溶液中の溶媒を乾燥させる溶媒乾燥手段と、前記基板を前記昇華性物質の昇華温度より高い温度に加熱する加熱手段とを備えた基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板上にある液体の表面張力に起因して生じうるパターンの凸状部を倒壊させようとする応力が、パターンの凸状部に作用することがなくなり、パターン倒壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】基板乾燥方法を実施するための基板処理装置の全体構成を示す概略平面図。
【図2】図1の基板処理装置に設けられた第1の処理ユニットとしての液処理ユニットの構成を示す概略図。
【図3】図2の液処理ユニットの概略平面図
【図4】図1の基板処理装置に設けられた第2の処理ユニットとしてのホットプレートユニットの構成を示す概略図。
【図5】基板乾燥方法の一連の工程を実行しうる単一の処理ユニットの構成を説明する概略図。
【図6】基板乾燥方法の工程を説明するための概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、添付図面を参照して実施の形態について説明する。まずは、液処理後の基板を乾燥させる方法(以下「基板乾燥方法」と称する)を実施するための基板処理装置について説明する。なお、基板乾燥方法は、好ましくは、前工程と組み合わされて一連のプロセスとして実施される。ここでは、前工程としての薬液洗浄工程およびリンス工程と組み合わされて一連のプロセスとして実施される基板乾燥方法について説明する。
【0013】
図1に示すように、この基板処理装置は、基板搬入出部1と、液処理部2とを備えた洗浄処理装置である。基板搬入出部1は、キャリア載置部3、搬送部4および受け渡し部5を有する。キャリア載置部3に複数の基板を収容したキャリアCが載置され、搬送部4に設けられた搬送機構4aがキャリアCから基板を搬出して受け渡し部5に設けられた受け渡しユニット5aに搬送する。液処理部2は、基板に洗浄処理を施すための複数の液処理ユニット10と、基板を加熱して処理を行う複数のホットプレートユニット60と、基板搬送機構6とを有している。基板搬送機構6は、受け渡しユニット5a、液処理ユニット10およびホットプレートユニット60にアクセス可能であり、各液処理ユニット10および各ホットプレートユニット60に対して基板の搬入出を行う。
【0014】
次に、液処理ユニット10の構成について図2を参照して説明する。液処理ユニット10は、基板、本例では半導体ウエハWを概ね水平に保持して回転するスピンチャック11を有している。スピンチャック11は、ウエハWの周縁部を保持する複数の保持部材12によって基板を水平姿勢で保持する基板保持部14と、この基板保持部14を回転駆動する回転駆動部16とを有している。基板保持部14の周囲には、ウエハWから飛散した薬液、リンス液、後述の昇華性物質溶液等の各種の処理液を受け止めるカップ18が設けられている。なお、前述した基板搬送機構6と基板保持部14との間でウエハWの受け渡しができるように、基板保持部14およびカップ18は相対的に上下方向に移動できるようになっている。
【0015】
液処理ユニット10は、ウエハWに薬液(CHM)を供給するための薬液ノズル20と、ウエハWに純水(DIW)を供給するリンスノズル22と、ウエハWにNガスを供給するNガスノズル24とを有している。薬液ノズル20には、薬液供給源から適当な流量調整器例えば流量調整弁20aと開閉弁20bとが介設された薬液管路20cを介して薬液が供給される。リンスノズル22には、DIW供給源から、適当な流量調整器例えば流量調整弁22aと開閉弁22bとが介設されたDIW管路22cを介してDIWが供給される。Nガスノズル24には、Nガス供給源から、適当な流量調整器例えば流量調整弁24aと開閉弁24bとが介設されたNガス管路24cを介してNガスが供給される。
【0016】
さらに液処理ユニット10は、ウエハWに昇華性物質の溶液を供給するための昇華性物質溶液ノズル30を有している。昇華性物質溶液ノズル30には、昇華性物質溶液供給源としてのタンク31から、適当な流量調整器例えば流量調整弁30aと開閉弁30bとが介設された昇華性物質溶液管路30cを介して昇華性物質の溶液が供給される。昇華性物質の溶液を貯留するタンク31には、ポンプ34が介設された循環管路32が接続されている。昇華性物質の溶液の飽和度は、ウエハWへの供給前に昇華性物質の析出が生じず、かつ、乾燥工程の開始後速やかに析出が生じる程度の値に設定することが好ましい。昇華性物質溶液ノズル30からウエハWに供給される昇華性物質の溶液の温度は、常温以下の温度、例えば10度〜常温の範囲内の温度とすることができる。この場合、例えば、溶液を冷却するための冷却装置を循環管路32に設けることができる。溶液の温度を低くすることにより、昇華性物質の濃度が低くても(溶解させる昇華性物質が少量でも)高い飽和度の溶液を供給することができる。また、前工程(例えば常温DIWリンス)でウエハWが冷やされている場合、昇華性物質がウエハに触れた瞬間に析出が始まること、すなわち望ましくないタイミングでの析出開始を防止することができるので、プロセスの制御が容易となる。
【0017】
しかしながら、高濃度の昇華性物質の溶液を供給することが望まれる場合には、循環管路32にヒーターを設け、昇華性物質の溶液を比較的高温に維持してもよい。なお、この場合、供給前の昇華性物質の析出を防止するために、昇華性物質溶液管路30cにテープヒーター等のヒーターまたは断熱材を設けることが好ましい。
【0018】
本実施形態においては、昇華性物質の溶液は、昇華性物質(溶質)としてのケイフッ化アンモニウム((NHSiF)を、溶媒としての純水(DIW)に溶解させてなる。なお、溶媒をDIWとIPA(イソプロピルアルコール)との混合液体とすることもできる。
【0019】
また、昇華性物質の溶液は、昇華性物質(溶質)としてのショウノウまたはナフタレンを、溶媒としてアルコール類例えばIPAに溶解させたものとすることもできる。
【0020】
図3に示すように、薬液ノズル20、リンスノズル22、Nガスノズル24および昇華性物質溶液ノズル30は、ノズル移動機構50により駆動される。ノズル移動機構50は、ガイドレール51と、ガイドレール51に沿って移動可能な駆動機構内蔵型の移動体52と、その基端が移動体52に取り付けられるとともにその先端に上記のノズル20、22、24、30を保持するノズルアーム53とを有している。ノズル移動機構50は、上記のノズル20、22、24、30を、基板保持部14に保持されたウエハWの中心の真上の位置とウエハWの周縁の真上の位置との間で移動させることができ、さらには、平面視でカップ18の外側にある待機位置まで移動させることもできる。
【0021】
なお、図示されたスピンチャック11の基板保持部14は、可動の保持部材12によってウエハWの周縁部を把持するいわゆるメカニカルチャックタイプのものであったが、これに限定されるものではなく、ウエハWの裏面中央部を真空吸着するいわゆるバキュームチャックタイプのものであってもよい。また、図示されたノズル移動機構50は、ノズルを並進運動させるいわゆるリニアモーションタイプのものであったが、鉛直軸線周りに回動するアームの先端にノズルが保持されているいわゆるスイングアームタイプのものであってもよい。また、図示例では、4つのノズル20、22、24、30が共通のアームにより保持されていたが、それぞれ別々のアームに保持されて独立して移動できるようになっていてもよい。
【0022】
次にホットプレートユニット60について図4を参照して説明する。ホットプレートユニット60は、抵抗加熱ヒーター62が内蔵された熱板61と、熱板61上面から突出する複数の保持ピン63を有している。保持ピン63はウエハWの下面周縁部を支持し、ウエハWの下面と熱板61の上面との間に小さな隙間が形成される。熱板61の上方に、昇降移動可能な排気用フード(覆い)64が設けられる。排気用フード64の中心に設けられた開口部に、昇華性物質回収装置66およびポンプ67が介設された排気管65が接続されている。昇華性物質回収装置66より上流側の排気管65および排気用フード64に昇華性物質が付着することを防止するために、排気管65および排気用フード64の表面を昇華性物質の昇華温度より高温に維持するヒーターを設けることが好ましい。昇華性物質回収装置66としては、排気が通流するチャンバ内に設けた冷却板上に昇華性物質を析出させる形式のものや、排気が通流するチャンバ内で昇華性物質のガスに冷却流体を接触させる形式のもの等、さまざまな公知の昇華性物質回収装置を用いることができる。
【0023】
次に、上述の液処理ユニット10およびホットプレートユニット60を備えた基板処理装置により実行される液処理工程(ここでは薬液洗浄工程およびリンス工程)と、これに続いて実行される基板乾燥方法の各工程とからなる一連の処理工程について説明する。
【0024】
半導体装置を形成する膜、例えばSiN膜にパターンを付与するためにドライエッチングを施したウエハWが、基板搬送機構6により液処理ユニット10に搬入され、スピンチャック11により水平に保持される。
【0025】
ウエハWが所定速度で回転され、ウエハWの中心の上方に薬液ノズル20を位置させて、薬液ノズル20から薬液がウエハWに吐出されて、薬液によりエッチング残渣やパーティクルなどを基板表面から除去する薬液洗浄処理が実施される(薬液洗浄工程)。この薬液洗浄工程では、DHF、BHF、SC−1、SC−2、APM、HPM、SPM等を薬液として使用することができる。
【0026】
次に、引き続きウエハWを回転させたまま、ウエハWの中心の上方にリンスノズル22を位置させて、リンスノズル22からDIWがウエハWに吐出されて、ウエハW上の薬液およびエッチング残渣やパーティクルが除去される(リンス工程)。この状態が、図6(a)に示されている。このまま続けてスピン乾燥等の乾燥処理を行うと、背景技術の項で説明したようにパターン倒れ(パターンの凸状部101の倒壊)が生じるおそれがある。このリンス工程の後に、基板乾燥方法の一連の工程が実行される。
【0027】
そこで、次に、引き続きウエハWを回転させたまま、ウエハWの中心の上方に昇華性物質溶液ノズル30を位置させて、昇華性物質溶液ノズル30から昇華性物質の溶液がウエハWに吐出されて、ウエハW上にあるDIWを昇華性物質の溶液(SL)で置換し、パターン間に昇華性物質の溶液を充填する(昇華性物質充填工程)。この状態が、図6(b)に示されている。DIWが昇華性物質の溶液で置換されてパターン間に昇華性物質の溶液が充填されたら、ウエハWの回転を調整することにより、昇華性物質の溶液の膜厚を調整する。後述する溶媒乾燥工程において、昇華性物質の溶液から溶媒を乾燥させることから、得られる昇華性物質の膜(固体の膜)の膜厚は、昇華性物質の溶液の膜厚よりも薄くなる。その点を考慮して、最終的に所望の膜厚の昇華性物質の膜(固体の膜)が得られるように、昇華性物質の溶液の膜厚を調整する。なお、リンス工程から昇華性物質充填工程への移行の際に、パターンの凸状部101の上端が十分にDIWに浸っていないと、凸状部101にDIWの表面張力が作用し、凸状部分101が倒れるおそれがある。従って、(a)リンス工程の終期にDIWの吐出量を増す、(b)リンス工程の終期および昇華性物質充填工程の初期にウエハWの回転数を低下させるか、ウエハWの回転を停止する、(c)リンス工程の終期と昇華性物質充填工程の初期とをオーバーラップさせる(昇華性物質充填工程の初期までDIWを吐出し続ける)、等の操作を行うことが好ましい。リンス工程の終期と昇華性物質充填工程の初期とをオーバーラップさせる場合は、リンスノズル22からリンス液を吐出させたままノズルアーム53を移動させ、昇華性物質溶液ノズル30をウエハWの中心の上方に位置させる。そして、昇華性物質の溶液がウエハWに吐出され始めた後に、リンス液の吐出を停止する。
【0028】
昇華性物質充填工程の次に、昇華性物質の溶媒を乾燥させて、昇華性物質を析出させ、固体の昇華性物質からなる膜を形成する(溶媒乾燥工程)。溶媒乾燥工程の終了時の状態が図6(c)に示されており、凹部102に固体状態の昇華性物質(SS)が充填されている。昇華性物質からなる膜の膜厚「t」は、パターンの凸状部101を十分に覆う限りにおいて、なるべく薄くすることが好ましい。溶媒が乾燥する際にもパターンの凸状部101には表面張力が働くため、その表面張力によってパターンが倒れない程度に、固体の昇華性物質からなる膜がパターン間に形成されていればよい。また、形成される昇華性物質からなる膜の膜厚「t」は、均一であることが好ましい。溶媒乾燥工程は、様々な方法で実行することができるが、図示された液処理ユニット10を用いる場合には、ウエハWを回転させながら(遠心力による振り切り)、NガスノズルからNガスをウエハWに吹き付けることにより行うことができる。ウエハWの回転を制御することにより、ウエハW上に吐出された昇華性物質の溶液の外周に向かう流れを制御することができ、昇華性物質の溶液の膜厚および昇華性物質からなる膜の膜厚を容易に調整することができる。また、均一な膜厚の昇華性物質からなる膜を形成することができる。なお、ウエハWにホットNガスのような加熱された気体を吹き付けて、溶媒の乾燥を促進させてもよく、かかる場合には、ウエハWの温度すなわち昇華性物質の温度が、昇華性物質の昇華温度未満、具体的には昇華性物質の溶液の溶媒は乾燥するが昇華性物質は昇華しない温度に維持されるような条件で行う。
【0029】
溶媒乾燥工程は、上述したNガスだけでなく例えば清浄空気やCDA(クリーンドライエア)のような他の乾燥促進流体を吹き付けることにより実行または促進することができる。また、溶媒乾燥工程は、スピンチャックの基板保持部の円板部分に内蔵された抵抗加熱ヒーター等の加熱手段によって、あるいはトッププレートに設けられたLEDランプヒーター等の加熱手段によって(詳細は図5を参照して後述する)、ウエハWを昇華性物質の昇華温度未満の温度、具体的には昇華性物質の溶液の溶媒は乾燥するが昇華性物質は昇華しない温度に加熱することにより実行ないし促進することができる。
【0030】
溶媒乾燥工程が終了したら、基板搬送機構6により、液処理ユニット10からウエハWを搬出し、図4に示すホットプレートユニット60に搬入する。排気用フード64が下降して熱板61との間に処理空間を形成する。排気用フード64に接続された排気管65に介設されたポンプ66によりウエハWの上方空間を吸引しながら、昇温された熱板61により昇華性物質の昇華温度よりも高い温度にウエハWが加熱される。具体的には、ウエハWを100〜300度程度に加熱する。このとき、排気管65および排気用フード64の表面も昇華性物質の昇華温度より高温に加熱しておくのが好ましい。これにより、ウエハW上の昇華性物質は昇華して、ウエハWから除去される(昇華性物質除去工程)。昇華性物質除去工程の終了時の状態が図6(d)に示されており、凹部102に充填されていた昇華性物質が除去されており、所望のパターンが得られている。なお、昇華して気体となった昇華性物質は、昇華性物質回収装置66により回収され、再利用される。そして、基板乾燥方法を終えたウエハWは、基板搬送機構6により、ホットプレートユニット60から搬出され、受け渡し部を介してキャリアCに搬送される。
【0031】
上記の実施形態によれば、リンス工程の後にパターン100の凹部102に入り込んだリンス液を昇華性物質の溶液で置換して昇華性物質の溶液で充填し、この溶液の溶媒を乾燥させることにより析出させた固体の昇華性物質で凹部を満たし、その後に昇華性物質を昇華させて凹部内から除去するようにしているため、パターン100の凸状部101にリンス液の高い表面張力に起因する応力が作用することがない。このため、凸状部101の倒れすなわちパターン倒壊を防止することができる。しかも、プラズマ処理装置を必要とせず、昇華性物質溶液供給手段および加熱手段を従来装置に追加するだけで、上記の基板乾燥方法を実行することができる。
【0032】
また、ウエハWを回転させながら溶媒乾燥工程を実施して、固体の昇華性物質からなる膜の膜厚をパターンの凸状部101を十分に覆う限りで薄くするので、次の昇華性物質除去工程を短時間で終了することができ、処理時間を短くすることができる。さらに、昇華性物質からなる膜の膜厚を均一にすることで、昇華性物質除去工程に要する時間を最小限にすることができる。
【0033】
上記実施形態においては、リンス工程から溶媒乾燥工程までの各工程を同じ一つの処理部(液処理ユニット10)で行い、昇華性物質除去工程のみを別の一つの処理部(ホットプレートユニット60)により行っている。しかしながら、リンス工程から溶媒乾燥工程までに加えて、昇華性物質除去工程をも一つの処理部(ユニット)で行うことも可能である。この場合、図2に示す液処理ユニット10に構成要素を追加して図5に示すように構成すればよい。すなわち、図5に示すように、基板保持部14の円板部分に、抵抗加熱ヒーター15のような加熱手段が設けられる。また、基板保持部14により保持されたウエハWの上方を覆い、昇降可能なトッププレート70が設けられる。トッププレート70には、LEDランプヒーター71のような加熱手段が設けられる。トッププレート70の中央部には排気穴72が設けられており、この排気穴72には、昇華性物質回収装置66およびポンプ67が介設された排気管65が接続されている(図4に示したものと同じでよい)。さらに、ウエハWに、薬液、リンス液、昇華性物質の溶液、および乾燥促進流体を吐出するノズル20,22,24,30を備え、これらのノズルはウエハWの中心の上方とカップ18の外側にある待機位置の間を移動することができる。
【0034】
このような構成の処理ユニットにおいては、まず、トッププレート70が上昇した状態で基板が処理ユニットに搬入され、保持部材12によってウエハWが保持される。保持されたウエハWの上方にノズルが移動し、各ノズル20、22、24、30からそれぞれ流体が吐出される。そして、溶媒乾燥工程まで終えると、ノズルをカップ18の外側にある待機位置に移動させる。ノズルがカップ18の外側に出た後、トッププレート70が下降して基板保持部14との間に処理空間を形成する。その後、加熱手段によりウエハWが昇華性物質の昇華温度よりも高い温度に加熱され、パターン100の凹部102に充填されていた昇華性物質が除去される。このとき、排気管65およびトッププレート70の表面も昇華性物質の昇華温度よりも高い温度に加熱される。昇華性物質が除去されて基板乾燥方法が終了したら。トッププレート70を上昇させ、ウエハWを処理ユニットから搬出する。
【0035】
図5に示す実施形態において、加熱手段は昇華性物質除去工程を実施する際にウエハWを加熱するために用いているが、このような加熱手段は、溶媒乾燥工程を実行ないし促進するために用いることもできる。具体的には、溶媒乾燥工程時にNガスノズル24からNガスを吹き付けると共に、あるいは、吹き付けるのに代えて、昇華性物質の溶液の溶媒は乾燥するが昇華性物質は昇華しない温度までウエハWを加熱するためにも用いることができる。そして、溶媒乾燥工程が終了した後、昇華性物質の昇華温度よりも高い温度までウエハWをさらに加熱して、昇華性物質除去工程を行う。
【0036】
また、図5に示す実施形態では、加熱手段として抵抗加熱ヒーターやLEDランプヒーターを使用しているが、ウエハWを昇華性物質の昇華温度よりも高い温度まで加熱することができる手段であれば、これに限られない。例えば、ウエハW上方より、加熱した気体、例えば空気やNガスなどを供給するものでもよい。また、処理ユニットを減圧することで昇華性物質の昇華温度を低下させ、その昇華温度より高い温度まで前述の加熱手段によってウエハWを加熱するようにしてもよい。
【0037】
加熱手段は、基板保持部14およびトッププレート70のうちの少なくともいずれか一方に設ければ十分である。トッププレート70は、図4に示したフード60に置換することもできる。また、溶媒乾燥工程においては基板保持部14およびトッププレート70に備えられた加熱手段のうち一方のみを使用し、昇華性物質除去工程において、残る他方の加熱手段も使用することによって、昇華性物質の昇華温度よりも高い温度までウエハWを加熱することもできる。また、昇華性物質回収装置66より上流側の排気管65およびトッププレート70に昇華性物質が付着することを防止するために、トッププレート70に設けられた加熱手段を使用してトッププレート70の表面を昇華性物質の昇華温度より高温に維持することが、より好ましい。
【0038】
上記実施形態においては、基板乾燥方法の各工程が薬液洗浄工程と組み合わせられていたが、これに限定されるものではなく、基板乾燥方法の各工程を現像工程と組み合わせることもできる。例えば、露光装置により露光され、かつ所定の露光後処理、例えば露光後加熱(PEB)処理が施されたフォトレジスト膜に、所定のパターンを形成するために現像工程が実施されるが、この現像工程の後のリンス工程の後に、上述した基板乾燥方法の各工程を行うことができる。現像工程において形成されたパターンのアスペクト比が高い場合においても、DIW等の高表面張力液によるリンス工程後の乾燥工程時においてパターン倒れが生じる場合があり得るので、上述した基板乾燥方法は有益である。この方法を実行するための現像処理ユニットは、図1に示した液処理ユニット10の薬液供給系(液供給源、ノズル、配管、弁等)を現像液の供給系に置換することにより構築することができる。
【符号の説明】
【0039】
W 基板(半導体ウエハ)
11 スピンチャック
22,22a,22b,22c リンス液供給手段
24,24a,24b,24c Nガス供給手段
30,30a、30b、30c、31,32,34 昇華性物質溶液供給手段
15,62,71 加熱手段
100 パターン
101 パターンの凸状部
102 パターンの凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸のパターンが形成された基板上の液体を除去して基板を乾燥させる基板乾燥方法において、
前記基板に昇華性物質の溶液を供給して、前記パターンの凹部内に前記溶液を充填する昇華性物質充填工程と、
前記溶液中の溶媒を乾燥させて、前記パターンの凹部内を固体の状態の前記昇華性物質で満たす溶媒乾燥工程と、
前記基板を前記昇華性物質の昇華温度より高い温度に加熱して、前記昇華性物質を基板から除去する昇華性物質除去工程と、
を備えた基板乾燥方法。
【請求項2】
前記溶媒乾燥工程は、前記基板を回転させること、前記基板に乾燥促進流体を供給すること、のうち少なくともいずれか一つによって行われる、請求項1または2に記載の基板乾燥方法。
【請求項3】
前記溶媒乾燥工程は、固体の状態の前記昇華性物質が前記パターンを覆うようにする、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の基板乾燥方法。
【請求項4】
前記溶媒乾燥工程は、固体の状態の前記昇華性物質が前記基板上に均一な膜厚で形成されるようにする、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の基板乾燥方法。
【請求項5】
前記溶媒乾燥工程は、前記基板を前記昇華性物質の昇華温度よりも低い温度に加熱することによって行われる、請求項1に記載の基板乾燥方法。
【請求項6】
前記基板乾燥方法は、一つの処理部内において行われる、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の基板乾燥方法。
【請求項7】
前記基板乾燥方法は、一つの処理部内において、前記昇華性物質充填工程と、前記溶媒乾燥工程が行われ、前記一つの処理部とは異なる処理部において、前記昇華性物質除去工程が行われる、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の基板乾燥方法。
【請求項8】
前記昇華性物質は、ケイフッ化アンモニウム、ショウノウまたはナフタレンである、請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の基板乾燥方法。
【請求項9】
前記溶液の溶媒は、水、アルコールまたはこれらの混合物である、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の基板乾燥方法。
【請求項10】
前記昇華性物質充填工程の前に前記基板にリンス液を供給するリンス工程が行われ、前記昇華性物質充填工程により前記基板上のリンス液が前記昇華性物質の溶液で置換される、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の基板乾燥方法。
【請求項11】
基板に液を供給する液供給手段と、
前記基板に昇華性物質の溶液を供給する昇華性物質溶液供給手段と、
前記基板に付着した前記昇華性物質の溶液中の溶媒を乾燥させる溶媒乾燥手段と、
前記基板を前記昇華性物質の昇華温度より高い温度に加熱する加熱手段と
を備えた基板処理装置。
【請求項12】
前記基板処理装置は、昇華した前記昇華性物質を排出する排気手段をさらに有する請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記基板処理装置は、
前記液供給手段と、前記昇華性物質溶液供給手段と、前記溶媒乾燥手段とを備えた第1の処理ユニットと、
前記加熱手段を備えた第2の処理ユニットと、
前記第1の処理ユニットと前記第2の処理ユニットにおいて、前記基板を搬出入する基板搬送機構と、
を備えた、請求項11または12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記溶媒乾燥手段は、前記基板を前記昇華性物質の昇華温度より低い温度に加熱する請求項11から13のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−243869(P2012−243869A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110677(P2011−110677)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】