説明

基板乾燥装置及び濃度算出方法

【課題】高濃度の処理ガスを用いる場合であっても、濃度計を用いることなく処理ガスの濃度を求めることができる基板乾燥装置を提供する。
【解決手段】制御部69は、記憶部71に予め記憶してある、有機溶剤の飽和蒸気圧曲線に基づく圧力ごとの温度対濃度の露点情報と、圧力計56からの測定圧力と、温度計57からの測定温度とに基づき、処理ガス中における有機溶剤の濃度を算出濃度として算出する。この算出濃度は、表示部73に表示される。したがって、濃度計を用いることなく処理ガス中におけるイソプロピルアルコールの濃度を求めることができ、装置のオペレータに知らせることができる。また、強い減圧力のポンプ及び処理ガスの採取部を必要としないので、構成を簡単化することができて装置コストを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶表示装置用のガラス基板(以下、単に基板と称する)等の基板に対して、処理液により洗浄、エッチング等の処理を行った後、減圧を行って有機溶剤の蒸気を含む処理ガスの雰囲気中にて基板を乾燥させる基板乾燥装置及び濃度算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、処理液を貯留し、基板を収容する処理槽と、この処理槽を囲ったチャンバと、チャンバ内に設けられ、有機溶剤(例えば、イソプロピルアルコール(IPA))の蒸気をキャリアガスとともに処理ガスとして供給する溶剤蒸気供給ノズルと、チャンバ内の処理ガスをサンプルガスとしてチャンバ外へ導出する採取部と、採取したサンプルガスを希釈ガスで希釈する希釈部と、希釈したサンプルガスにおける処理ガスの濃度を測定する濃度計と、サンプルガス及び希釈ガスの流量と濃度測定値とに基づいて、希釈前の処理ガスの濃度を求める算出部とを備えたものが挙げられる(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
上記構成の装置では、高濃度の処理ガスであっても濃度計で測定を行うことができ、高濃度の処理ガスで基板を処理できるので、基板の乾燥処理等の処理効果を高めることができる。また、最近では、さらに高濃度の処理ガスをチャンバ内に供給するために、チャンバ内を減圧ポンプで減圧するとともに、これに連通した、有機溶剤を貯留した蒸気タンク内も減圧してチャンバ内に処理ガスを供給する装置がある。
【特許文献1】特開2007−294859号公報
【特許文献2】特開2007−271090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置では、チャンバ内の減圧度合いが大きいので、減圧ポンプよりも強い減圧力のポンプで吸引してチャンバから採取部に処理ガスを採取する必要があるとともに、高減圧下でも高濃度の測定ができる濃度計を備える必要があるが、特に高減圧下で測定可能な濃度計が非常に高価であり、装置のコストアップにつながっている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、高濃度の処理ガスを用いる場合であっても、濃度計を用いることなく処理ガスの濃度を求めることができる基板乾燥装置及び濃度算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、基板に対して処理ガスによって乾燥処理を行う基板乾燥装置において、基板を収容するチャンバと、有機溶剤の蒸気を発生させる溶剤蒸気発生部と、前記溶剤蒸気発生部と前記チャンバ内とを連通接続し、前記チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を含む処理ガスを供給する供給管と、前記チャンバ内を減圧する減圧手段と、前記チャンバ内の圧力を測定する圧力計と、前記チャンバ内の温度を測定する温度計と、前記有機溶剤の飽和蒸気圧曲線に基づいて、圧力ごとの温度対濃度の露点情報を予め記憶した記憶手段と、前記減圧手段で前記チャンバ内を減圧して、前記溶剤蒸気発生部から処理ガスを前記チャンバ内に導入した後、前記圧力計で測定された測定圧力と、前記温度計で測定された測定温度と、前記露点情報とに基づいて、処理ガス中における有機溶剤の濃度を算出濃度として求める算出手段と、前記算出濃度を表示する濃度表示手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、算出手段は、記憶手段に予め記憶してある、有機溶剤の飽和蒸気圧曲線に基づく圧力ごとの温度対濃度の露点情報(ある圧力下における理論露点を表す情報)と、測定圧力と、測定温度とに基づき、処理ガス中における有機溶剤の濃度を算出濃度として算出する。この算出濃度は、濃度表示手段に表示される。したがって、濃度計を用いることなく処理ガス中における有機溶剤の濃度を求めることができ、装置のオペレータに知らせることができる。また、強い減圧力のポンプ及び処理ガスの採取部を必要としないので、構成を簡単化することができて装置コストを低減することができる。
【0008】
なお、飽和蒸気圧曲線は、各温度における飽和蒸気圧を示す曲線であるので、例えば、大気圧(101.3[kPa])を基準とし、大気圧における飽和蒸気圧を体積濃度100%とすれば、飽和蒸気圧曲線を温度対濃度の露点曲線に変換することができる。これを各種圧力について行うと、圧力ごとの温度対濃度の露点情報を得ることができる。したがって、測定圧力と、測定温度と、露点情報とに基づいて処理ガス中の有機溶剤濃度を算出することができる。
【0009】
また、本発明において、処理ガス中の有機溶剤が前記チャンバ内で結露したことを検出する結露検出手段を備え、前記算出手段は、前記結露検出手段が結露を検出した後に、算出濃度を求めることが好ましい(請求項2)。露点情報は、有機溶剤の飽和蒸気圧曲線に基づいて求めてある。したがって、処理ガスに含まれている有機溶剤が結露したことを結露検出手段で検出した後に濃度を算出することで、処理ガス中における有機溶剤の濃度を精度良く算出することができる。
【0010】
また、本発明において、前記結露検出手段は、前記チャンバ内に取り付けられ、任意の反射率を有する反射部材と、前記反射部材の反射光を検出する反射光検出手段とを備え、前記算出手段は、検出された反射光強度が所定値まで低下した場合に結露したと判断することが好ましい(請求項3)。反射部材に有機溶剤が結露すると、反射部材の反射率が低下するので、反射光検出手段により検出された反射光強度が所定値まで低下すると有機溶剤が結露したと判断することができる。したがって、比較的簡単な構成で結露時点を判断することができる。
【0011】
また、本発明において、基板を収容可能であって、処理液を貯留する処理槽を前記チャンバ内に備え、前記チャンバ内の内部上方には、前記供給管が連通接続されたノズルを備えていることが好ましい(請求項4)。処理槽内の処理液に基板を浸漬させて処理を行った後、ノズルからチャンバ内に処理ガスを供給して乾燥処理を続けて実施することができる。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、処理ガス中における有機溶剤の濃度を算出する濃度算出方法において、減圧したチャンバ内に有機溶剤の蒸気を含む処理ガスを導入する過程と、基板を収容したチャンバ内の圧力を測定圧力として測定するとともに、基板を収容したチャンバ内の温度を測定温度として測定する過程と、有機溶剤の飽和蒸気圧曲線に基づいて、予め求めておいた圧力ごとの温度対濃度の露点情報と、前記測定圧力と、前記測定温度とに基づいて、処理ガス中における有機溶剤の濃度を算出濃度として求める過程と、算出濃度を表示する過程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0013】
[作用・効果]請求項5に記載の発明によれば、減圧したチャンバ内に処理ガスを導入した後、チャンバ内の圧力を測定圧力として測定し、チャンバ内の温度を測定温度として測定すると、測定圧力と、測定温度と、予め求めておいた露点情報とに基づいて、処理ガス中における有機溶剤の濃度を算出することができる。したがって、濃度計を用いることなく処理ガス中における有機溶剤の濃度を求めることができる。
【0014】
また、本発明において、前記算出濃度を求める過程は、処理ガス中の有機溶剤がチャンバ内で結露した後に実行されることが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る基板乾燥装置によれば、算出手段は、記憶手段に予め記憶してある、有機溶剤の飽和蒸気圧曲線に基づく圧力ごとの温度対濃度の露点情報と、測定圧力と、測定温度とに基づき、処理ガス中における有機溶剤の濃度を算出濃度として算出する。この算出濃度は、濃度表示手段に表示される。したがって、濃度計を用いることなく処理ガス中における有機溶剤の濃度を求めることができ、装置のオペレータに知らせることができる。また、強い減圧力のポンプ及び処理ガスの採取部を必要としないので、構成を簡単化することができて装置コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係る基板乾燥装置の概略構成を示すブロック図である。
【0017】
本実施例に係る基板乾燥装置は、処理液を貯留する処理槽1を備えている。この処理槽1は、処理液を貯留し、起立姿勢にされた複数枚の基板Wを収容可能である。処理槽1の底部には、複数枚の基板Wが整列されている方向(紙面方向)に沿って長軸を有し、処理液を供給するための二本の供給・排気管3が配設されている。各供給・排気管3には、配管5の一端側が連通接続され、配管5の他端側は、供給管7と吸引管9に分岐されている。供給管7は、処理液供給源11に連通接続されており、その流量が供給管7に設けられた処理液弁13で制御される。吸引管9は、真空時排気ポンプ15に接続され、吸引管9に設けられた排気弁17により開閉される。処理液供給源11は、フッ化水素酸(HF)や、硫酸・過酸化水素水の混合液や、純水などを処理液として供給管7に供給する。
【0018】
処理槽1は、その周囲がチャンバ19によって囲われている。チャンバ19は、上部に開閉自在の上部カバー21を備えている。起立姿勢で複数枚の基板Wを保持するリフタ22は、図示しない駆動機構により、チャンバ19の上方にあたる「待機位置」と、処理槽1の内部にあたる「処理位置」と、処理槽1の上方であってチャンバ19の内部にあたる「乾燥位置」とにわたって移動可能である。
【0019】
上部カバー21の下方であってチャンバ19の上部内壁には、本発明の「ノズル」に相当する一対の溶剤ノズル23と、一対の不活性ガスノズル25とが配設されている。溶剤ノズル23には、有機溶剤の蒸気を含む処理ガスを供給するための供給管27の一端側が連通接続されている。供給管27の他端側は溶剤蒸気発生部29に連通接続されている。この供給管27には、その上流側から順に、溶剤蒸気の流量を調整する蒸気弁31と、有機溶剤の蒸気を含む処理ガスを加熱するためのインラインヒータ33とが配設されている。供給管27がインラインヒータ33を備えているので、処理ガス中の有機溶剤が供給管27で凝結することを軽減でき、処理ガス中の有機溶剤濃度が低下することを防止できる。
【0020】
溶剤蒸気発生部29は、貯留している有機溶剤を加熱するためのヒータ35が付設されている。この溶剤蒸気発生部29は、有機溶剤として、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)が内部空間に貯留されている。なお、有機溶剤としてイソプロピルアルコールに代えて、ハイドロフルオロエーテル(HFE)などを用いてもよい。また、溶剤蒸気発生部29には、有機溶剤を供給するための溶剤供給源41が連通接続されている。
【0021】
不活性ガスノズル25には、供給管43の一端側が連通接続されている。供給管43の他端側は、不活性ガスを供給する不活性ガス供給源45に連通接続されている。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス(N)が挙げられる。不活性ガス供給源45からの不活性ガスの供給量は、不活性ガス弁47によって調整される。不活性ガス弁47の下流側の供給管43には、インラインヒータ49が取り付けられている。このインラインヒータ49は、不活性ガス供給源45からの不活性ガスを所定の温度に加熱する。
【0022】
チャンバ19には、その内部の気体を排出可能な排気管51が連通接続されている。この排気管51には、開閉弁52及び排気ポンプ53が配設されている。また、チャンバ19には、減圧状態を解消するための呼吸弁55が取り付けられている。さらに、チャンバ19には、内部の圧力を検出するための圧力計56と、内部の温度を検出するための温度計57と、内部の結露を検出するための結露センサ58とが取り付けられている。
【0023】
なお、上述した真空時排気ポンプ15と排気ポンプ53とが本発明における「減圧手段」に相当する。また、結露センサ58が本発明における「結露検出手段」に相当する。
【0024】
処理槽1の底部には、排出口59が配設されている。この排出口59には、QDR弁61が取り付けられている。このQDR弁61から処理槽1内の処理液を排出すると、処理液がチャンバ19の底部に一旦排出される。チャンバ19の底部には、気液分離部63に連通接続された排出管65が取り付けられている。この排出管65には、排液弁67が取り付けられている。気液分離部63は、排気管51及び排出管65から気体と液体とを取り込むとともに、それらを分離して排出する機能を備えている。
【0025】
上述した処理液弁13、真空時排気ポンプ15、排気弁17、上部カバー21、リフタ22、溶剤蒸気発生部29、蒸気弁31、インラインヒータ33、ヒータ35、不活性ガス弁47、インラインヒータ49、開閉弁52、排気ポンプ53、呼吸弁55、QDR弁61、排液弁67などは、本発明における「算出手段」に相当する制御部69によって統括的に制御される。制御部69には、本発明における「記憶手段」に相当する記憶部71と、測定圧力や測定濃度などをオペレータに知らせる等のために用いられる、本発明における「濃度表示手段」に相当する表示部73とが接続されている。また、制御部69は、圧力計56の測定圧力と、溶剤蒸気発生部29のヒータ35による加熱温度に基づき、チャンバ19内の圧力が、イソプロピルアルコールの飽和蒸気圧に達したか否かに応じて、後述するように処理を行う。また、制御部69は、後述するように、圧力計56の測定圧力と、温度計57の測定温度と、記憶部71の露点情報とに基づいて、イソプロピルアルコールの濃度を求めるとともに、その濃度が処理に適正であるか否かを判断して処理を行う。処理に適正であるか否かは、例えば、予め記憶部71に格納された許容値(例えば、3%)に基づいて行われる。
【0026】
記憶部71は、制御部69が実行する制御プログラムの他、処理手順を規定したレシピや、溶剤蒸気発生部29に貯留されている有機溶剤に応じた露点情報(詳細後述)及び飽和蒸気圧曲線データなどを記憶している。
【0027】
次に、図2〜図4を参照して、露点情報について説明する。なお、図2はイソプロピルアルコールの飽和蒸気圧曲線を示すグラフであり、図3は大気圧時の理論露点を示すグラフであり、図4は各圧力時の理論露点を示すグラフである。
【0028】
溶剤蒸気発生部29は、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)を貯留しているが、その飽和蒸気圧曲線データは、例えば、図2に示すようなものである。これは、例えば、チャンバ19内の温度が82℃である場合には、飽和蒸気圧が大気圧(101.3[kPa])であることを表している。換言すると、大気圧下において、チャンバ19内の処理ガス中のイソプロピルアルコール濃度を100%に維持するためには、チャンバ19内の温度を82℃以上にする必要があることを表す。なお、厳密には、イソプロピルアルコールの沸点は82.7℃であるが、説明の都合上82℃としている。
【0029】
上記の飽和蒸気圧曲線データに基づいて、大気圧時における処理ガス中のイソプロピルアルコール濃度を100%とし、チャンバ19内の圧力を固定したと仮定した場合に、大気圧で各蒸気圧を除すると、大気圧時における処理ガス中におけるイソプロピルアルコールの体積濃度を算出することができる。これが図3に示す大気圧時の理論露点を示すグラフである。
【0030】
上記の理論露点は、大気圧時におけるものであるが、各種の圧力について理論露点を求めたものが図4の各圧力時の理論露点を示すグラフである。本発明は、チャンバ19内を減圧して処理するので、図4では、一例として、大気圧の半分の圧力(50.65[kPa])と、30[kPa]と、20[kPa]と、15[kPa]を例示してある。例えば、チャンバ19内の測定圧力が50.65[kPa]であって、測定温度が60[℃]であった場合、処理ガス中におけるイソプロピルアルコールの濃度は、75[%]となる。この図4に示した理論露点を示すグラフが、本発明における「露点情報」に相当する。この露点情報は、上述したように記憶部71に予め格納されており、制御部69によって適宜参照される。
【0031】
次に、図5及び図6を参照して、結露センサ58について説明する。なお、図5は結露センサの概略構成を示す平面図であり、図6は結露センサの出力信号の一例を模式的に示したグラフである。
【0032】
結露センサ58は、例えば、反射型光センサ75と、反射部材77とを備えている。反射型光センサ75は、投光部79と受光部81とを備え、受光部81で受光した光強度を表す信号が信号処理部83から出力される。反射部材77は、反射面85が任意の反射率を有する板状部材で構成されている。反射型光センサ75と反射部材77とは、所定の間隔を隔ててチャンバ19内に取り付けられており、その間隔内には処理ガスが流通可能になっている。したがって、チャンバ19内で処理ガス中のイソプロピルアルコールが結露すると、反射面85にもイソプロピルアルコールが結露する。すると、反射面85の反射率が低下するので、信号処理部83から出力される光強度の信号が低下する。これは、例えば、図6に示すようになる。つまり、処理ガス中のイソプロピルアルコール濃度が100%に近づくにしたがって信号強度が低下し始め、100%となると急激に信号強度が低下する。したがって、この時点を検出することにより、チャンバ19内において処理ガス中のイソプロピルアルコールが結露したと判断できる。そこで、信号処理部83からの出力信号に基づいて、制御部69はイソプロピルアルコールが結露したか否かを判断できる。イソプロピルアルコールが結露したと判断した場合には、制御部69は、圧力計56の測定圧力と、温度計57の測定温度と、露点情報とを参照して、チャンバ19内における処理ガス中のイソプロピルアルコール濃度を求める。
【0033】
上述したように、処理ガス中のイソプロピルアルコールが結露したことを検出するのは、露点情報(図4)が、チャンバ19内に処理ガスが供給され、チャンバ19内において処理ガス中のイソプロピルアルコールが飽和していることが前提だからである。
【0034】
次に、上述した構成の基板乾燥装置の動作例について図7を参照して説明する。なお、図7は、基板乾燥装置の動作を示すフローチャートである。
【0035】
まず、主要動作について説明する。
制御部69は、上部カバー21を開放し、未処理の基板Wを複数枚保持しているリフタ22を「待機位置」から「乾燥位置」に搬入させる。このとき、排液弁67は、開放されたままである。次に、制御部69は、チャンバ19内の酸素濃度低減処理を行う。具体的には、上部カバー21を閉止するとともに、不活性ガス弁47を開放し、不活性ガス供給源45から供給管43、不活性ガスノズル25を介してチャンバ19内に不活性ガスを供給させる。これにより、チャンバ19内にある空気が不活性ガスによってパージされて、その結果、チャンバ19内の酸素濃度が低減される。さらに、制御部69は、リフタ22を「乾燥位置」から「処理位置」にまで下降させる。
【0036】
処理槽1及びチャンバ19内の酸素濃度が低減されると、制御部69は処理液弁13を開放する。これにより、処理液供給源11から処理液(例えば、常温の純水)が処理槽1に供給されて、処理槽1の上部から溢れた処理液がチャンバ19の底部で回収される。回収された処理液は、排出管65を通して気液分離部63で回収される。このようにして処理液が処理槽1に供給された後、制御部69は、リフタ22を「処理位置」に所定時間だけ維持して、基板Wに対して処理液による処理を行う。
【0037】
処理液による処理を開始して所定時間が経過すると、制御部69は、リフタ22を「処理位置」に維持させたまま、排気ポンプ53を作動させて、チャンバ19内の気体を排出するとともに、QDR弁61を開放して処理液をチャンバ19に急速排出させる。処理槽1の処理液が完全に排出された後、不活性ガス弁47を閉止するとともに、呼吸弁55を閉止してチャンバ19内部を完全に閉塞させる。これにより、処理液で処理された基板Wが処理槽1内において周囲に対して露出された状態にされる。
【0038】
ステップS1
制御部69は、溶剤蒸気発生部29における蒸気発生の準備を行わせる。具体的には、イソプロピルアルコールを加熱するために、加熱温度(例えば72℃)でヒータ35への供給電力を制御する。このとき、蒸気弁31は閉止されたままである。なお、このステップS1は、上述した主要動作の前の動作中に開始するようにしてもよい。
【0039】
ステップS2
チャンバ19内の減圧を開始する。具体的には、排液弁67を閉止するとともに、排気弁17及び開閉弁52を開放し、排気ポンプ53及び真空時排気ポンプ15によるチャンバ19内の減圧を開始する。この時、チャンバ19内の圧力は、圧力計56によって逐次測定され、その測定圧力が制御部69に出力される。また、その測定圧力に基づく圧力値が、制御部69を介して表示部73に出力され、減圧処理が正常に行われているか否かの判断に用いられる。
【0040】
ステップS3
制御部69は、溶剤蒸気発生部29の加熱温度におけるイソプロピルアルコールの飽和蒸気圧以下になるまで排気ポンプ53及び真空時排水ポンプ15による減圧を行う。
【0041】
なお、以下のステップS5における判断のみとして、このステップS3を省略してもよい。
【0042】
ステップS4
制御部69は、蒸気弁31を開放する。すると、溶剤蒸気発生部29がチャンバ19に連通され、溶剤蒸気発生部29においてイソプロピルアルコールが沸騰して大量のイソプロピルアルコールの蒸気が発生する。さらに、チャンバ19内の圧力は、溶剤蒸気発生部29内の圧力よりも低いので、その圧力差に応じてイソプロピルアルコールの蒸気が溶剤蒸気発生部29からチャンバ19内に流入する。そして、チャンバ19内は、圧力差によってチャンバ19内に流入した溶剤蒸気により、溶剤蒸気雰囲気とされる。このとき、常温の処理液から露出され、温度がイソプロピルアルコールの蒸気に比較して非常に低い状態の基板Wは、その全面にイソプロピルアルコールが凝結する。そして、基板Wの全面に付着している処理液の液滴がイソプロピルアルコールによって置換される。また、このとき基板Wは、チャンバ19に比較して小容積である処理槽1内に収容された状態で乾燥処理が行われるので、効率的に乾燥処理が行われる。
【0043】
ステップS5
制御部69は、結露センサ58の出力信号に基づき、チャンバ19内でイソプロピルアルコールの蒸気が結露したか否かを判断する。結露していない場合には、結露したと判断されるまで判断処理を繰り返し実行する。結露したと判断した場合には、次のステップS6に処理を移行する。
【0044】
ステップS6
制御部69は、記憶部71を参照して、測定圧力と、測定温度と、露点情報とに基づいてイソプロピルアルコール濃度を算出するとともに、その算出濃度を表示部73に表示させる。濃度算出とともに表示部73に表示させることにより、装置のオペレータが現在濃度値を知ることができる。
【0045】
ステップS7
制御部69は、許容値に基づいて算出濃度が正常範囲内に収まっているか否かを判断して処理を分岐する。算出濃度が正常範囲内にない場合には、ステップS8に処理を移行する。このステップS8では、例えば、表示部73に「濃度エラー発生!!」等の表示を行わせて、装置のオペレータに異常発生を報知するとともに、オペレータの処置を待つために処理を一時的に停止する。その一方、算出濃度が正常範囲内にある場合には、ステップS9に処理を移行する。
【0046】
ステップS9
制御部69は、排気弁17及び開閉弁52を閉止するとともに、真空時排気ポンプ15及び排気ポンプ53を停止させる。これにより、チャンバ19内の圧力が、それまでに減圧されてきた状態に維持される。
【0047】
ステップS10、S11
制御部69は、溶剤蒸気の処理を所定時間だけ行った後、リフタ22を「処理位置」から「乾燥位置」に引き上げさせる。そして、この状態を維持したまま、所定時間だけ維持して、乾燥処理の仕上げを行う。
【0048】
ステップS12
制御部69は、所定時間が経過した時点で、呼吸弁55を開放するとともに、不活性ガス弁47を開放して、不活性ガスをチャンバ19内に導入する。そして、チャンバ19内の圧力を大気圧に戻す。これにより、溶剤蒸気発生部29との圧力差が解消されるので、イソプロピルアルコール蒸気の発生が止まることになる。その後、蒸気弁31を閉止する。
【0049】
上述した処理の後、制御部69は、上部カバー21を開放するとともに、リフタ22を「乾燥位置」から「待機位置」へと移動させる。
【0050】
上述したように本実施例によると、制御部69は、記憶部71に予め記憶してある、イソプロピルアルコールの飽和蒸気圧曲線に基づく圧力ごとの温度対濃度の露点情報と、圧力計56からの測定圧力と、温度計57からの測定温度とに基づき、処理ガス中におけるイソプロピルアルコールの濃度を算出濃度として算出する。この算出濃度は、表示部73に表示される。したがって、濃度計を用いることなく処理ガス中におけるイソプロピルアルコールの濃度を求めることができ、装置のオペレータに知らせることができる。また、強い減圧力のポンプ及び処理ガスの採取部を必要としないので、構成を簡単化することができて装置コストを低減することができる。
【0051】
また、露点情報は、イソプロピルアルコールの飽和蒸気圧曲線に基づいて求めてある。したがって、処理ガスに含まれているイソプロピルアルコールが結露したことを結露センサ58で検出した後に濃度を算出することで、処理ガス中におけるイソプロピルアルコールの濃度を精度良く算出することができる。
【0052】
また、結露センサ58として反射部材77を備え、反射部材77に有機溶剤が結露すると、反射部材77の反射率が低下する特性を利用しているので、比較的簡単な構成で結露時点を判断することができる。したがって、濃度算出タイミングを適切なものとすることができる。
【0053】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0054】
(1)上述した実施例では、結露センサ58を備え、結露センサ58の出力に基づいて濃度算出タイミングを決定しているが、例えば、イソプロピルアルコールの蒸気を供給開始した後(蒸気弁31を開放した後)、制御部69内に備えたタイマなどで計時を行い、所定時間の経過後に濃度を測定するようにしてもよい。これにより結露センサ58が不要となって装置コストを低減することができる。
【0055】
(2)上述した実施例では、処理槽1をチャンバ19内に備えた構成を採用しているが、例えば、処理槽1を備えず、乾燥処理だけをチャンバ19内で行う装置構成を採用してもよい。
【0056】
(3)上述した実施例では、基板Wを処理液から露出させるために、処理槽1から処理液を排出しているが、例えば、処理槽1に処理液を貯留させたままリフタ22を処理槽1の上方に上昇させるようにしてもよい。
【0057】
(4)上述した実施例では、結露センサ58を反射型光センサ75と反射部材77とで構成しているが、例えば、反射型センサ75の投光部79に先端部を開放した光ファイバを取付け、同様に先端部を開放した光ファイバを受光部81に取付け、両光ファイバの外周面を接着した状態として、それぞれの先端部を垂下させた状態とする構成を採用してもよい。これにより、結露しない状態では、光ファイバの先端から光が放出されるだけで、受光部81には向かわないが、結露すると有機溶剤が両光ファイバの先端部に液滴となって付着するので、光が受光部81に向かって検出される。このような構成によっても結露を検出することができる。
【0058】
(5)上述した実施例では、処理ガスにイソプロピルアルコールだけを含むものとして説明したが、少量の不活性ガスなどを含む処理ガスとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例に係る基板乾燥装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】イソプロピルアルコールの飽和蒸気圧曲線を示すグラフである。
【図3】大気圧時の理論露点を示すグラフである。
【図4】各圧力時の理論露点を示すグラフである。
【図5】結露センサの概略構成を示す平面図である。
【図6】結露センサの出力信号の一例を模式的に示したグラフである。
【図7】基板乾燥装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
W … 基板
1 … 処理槽
3 … 供給・排気管
7 … 供給管
9 … 吸引管
11 … 処理液供給源
13 … 処理液弁
15 … 真空時排気ポンプ
17 … 排気弁
19 … チャンバ
21 … 上部カバー
22 … リフタ
23 … 溶剤ノズル
31 … 蒸気弁
35 … ヒータ
41 … 溶剤供給源
43 … 供給管
47 … 不活性ガス弁
53 … 排気ポンプ
56 … 圧力計
57 … 温度計
58 … 結露センサ
61 … QDR弁
69 … 制御部
71 … 記憶部
73 … 表示部
75 … 反射型センサ
77 … 反射部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して処理ガスによって乾燥処理を行う基板乾燥装置において、
基板を収容するチャンバと、
有機溶剤の蒸気を発生させる溶剤蒸気発生部と、
前記溶剤蒸気発生部と前記チャンバ内とを連通接続し、前記チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を含む処理ガスを供給する供給管と、
前記チャンバ内を減圧する減圧手段と、
前記チャンバ内の圧力を測定する圧力計と、
前記チャンバ内の温度を測定する温度計と、
前記有機溶剤の飽和蒸気圧曲線に基づいて、圧力ごとの温度対濃度の露点情報を予め記憶した記憶手段と、
前記減圧手段で前記チャンバ内を減圧して、前記溶剤蒸気発生部から処理ガスを前記チャンバ内に導入した後、前記圧力計で測定された測定圧力と、前記温度計で測定された測定温度と、前記露点情報とに基づいて、処理ガス中における有機溶剤の濃度を算出濃度として求める算出手段と、
前記算出濃度を表示する濃度表示手段と、
を備えていることを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板乾燥装置において、
処理ガス中の有機溶剤が前記チャンバ内で結露したことを検出する結露検出手段を備え、
前記算出手段は、前記結露検出手段が結露を検出した後に、算出濃度を求めることを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板乾燥装置において、
前記結露検出手段は、
前記チャンバ内に取り付けられ、任意の反射率を有する反射部材と、
前記反射部材の反射光を検出する反射光検出手段とを備え、
前記算出手段は、検出された反射光強度が所定値まで低下した場合に結露したと判断することを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の基板乾燥装置において、
基板を収容可能であって、処理液を貯留する処理槽を前記チャンバ内に備え、
前記チャンバ内の内部上方には、前記供給管が連通接続されたノズルを備えていることを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項5】
処理ガス中における有機溶剤の濃度を算出する濃度算出方法において、
減圧したチャンバ内に有機溶剤の蒸気を含む処理ガスを導入する過程と、
基板を収容したチャンバ内の圧力を測定圧力として測定するとともに、基板を収容したチャンバ内の温度を測定温度として測定する過程と、
有機溶剤の飽和蒸気圧曲線に基づいて、予め求めておいた圧力ごとの温度対濃度の露点情報と、前記測定圧力と、前記測定温度とに基づいて、処理ガス中における有機溶剤の濃度を算出濃度として求める過程と、
算出濃度を表示する過程と、
を備えていることを特徴とする濃度算出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の濃度算出方法において、
前記算出濃度を求める過程は、処理ガス中の有機溶剤がチャンバ内で結露した後に実行されることを特徴とする濃度算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−67811(P2010−67811A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233036(P2008−233036)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】