説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】より安価に基板表面の窒化膜をエッチングできる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】表面に窒化膜が形成された基板Wは、処理室11内においてヒータユニット13上で保持される。処理流体導入口25から過熱水蒸気が導入され、この過熱水蒸気が基板Wに導かれる。この過熱水蒸気によって、基板W上の窒化膜がエッチングされる。処理室11の内壁は、処理室ヒータユニット50によって加熱される。均熱リング40は、基板Wの周縁部に接し、基板Wの温度を均一化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、窒化膜が形成された基板を処理する方法および装置に関し、とくに前記窒化膜をエッチングする工程を含む基板処理方法およびそのような工程を実行するための構成を含む基板処理装置に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、シリコン等の半導体基板の表面に、酸化膜や窒化膜が形成され、それらが選択的にエッチングされる。窒化膜の選択エッチングには、従来から、120℃〜180℃の高温の燐酸がエッチング液として用いられてきた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−86982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燐酸は、高価な薬液であり、それに応じて、生産コストが高くつく欠点がある。
この発明の目的は、より安価に基板表面の窒化膜をエッチングできる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、表面に窒化膜が形成された基板に沸点以上の温度の水蒸気を供給して、前記窒化膜をエッチングする水蒸気エッチング工程を含む、基板処理方法である。この方法では、沸点以上の水蒸気を用いて基板表面の窒化膜をエッチングできるから、高価な薬液である燐酸を用いなくてもよい。これにより、より安価な工程で基板表面の窒化膜をエッチングできるので、基板を用いる製品の生産コストを低減できる。
【0006】
たとえば、窒化膜の一例である窒化シリコン膜のエッチング反応式は、次のとおりである。
Si+12HO → 3Si(OH)+4NH
窒化シリコン膜は、プラズマCVD(化学的気相成長法)によって基板上に形成された膜であってもよいし、減圧CVDによって基板上に形成された膜であってもよい。沸点以上の水蒸気とは、飽和蒸気線以上の温度の水蒸気をいう。すなわち、水の沸点に等しい温度の水蒸気であってもよいし、水の沸点を超える温度の水蒸気(過熱水蒸気)であってもよい。大気圧中での水の沸点は100℃である。大気圧よりも高い加圧雰囲気中においては、水の沸点は100℃よりも高い。また、大気圧よりも低い減圧雰囲気中においては、水の沸点は100℃よりも低い。
【0007】
沸点以上の水蒸気を用いることによって、基板上の窒化膜を効率的にエッチングでき、エッチング時間を短縮できる。とくに、沸点よりも高い過熱水蒸気を用いれば、より高いエッチングレートが得られる。
請求項2記載の発明は、前記基板を前記水蒸気の露点以上に加熱する基板加熱工程をさらに含み、前記水蒸気エッチング工程が前記基板加熱工程と並行して実行される、請求項1に記載の基板処理方法である。この方法では、基板が水蒸気の露点以上に加熱されるので、基板上における水蒸気の結露を抑制または防止できる。これにより、基板上の窒化膜に対して水蒸気が高確率で接触するので、高いエッチングレートが得られる。
【0008】
前記基板加熱工程は、前記基板の温度を均一化するために前記基板の周縁部に均熱リングを接触させる均熱工程を含んでいてもよい。これにより、基板の各部の温度を均一化できるので、エッチングレートの面内ばらつきを低減できる。
請求項3記載の発明は、前記基板を処理室内で保持する工程と、前記処理室内の雰囲気を不活性ガスに置換する前ガス置換工程とをさらに含み、前記水蒸気エッチング工程が、前記前ガス置換工程の後に、前記処理室内で行われる、請求項1または2に記載の基板処理方法である。この方法によれば、処理室内の雰囲気を不活性ガスに置換した後に、水蒸気エッチング工程が行われるので、基板表面の酸化を回避しながら、基板表面の窒化膜をエッチングできる。とくに、基板加熱工程を並行して行う場合には、基板の加熱によって基板表面に酸化膜が成長するおそれがある。そこで、不活性ガス雰囲気中において水蒸気エッチング工程を行うことによって、酸化物の生成を回避しながら、窒化膜を選択的にエッチングできる。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記水蒸気エッチング工程の後に、前記処理室内の雰囲気を不活性ガスに置換する後ガス置換工程と、前記水蒸気エッチング工程の後に、前記処理室内で前記基板を冷却する冷却工程と、前記後ガス置換工程および冷却工程の後に、前記処理室から前記基板を搬出する工程とをさらに含む、請求項3に記載の基板処理方法である。この方法により、基板を冷却してから処理室外に搬出できるので、基板搬送機構に対して基板の熱影響が及ぶことを回避できる。また、基板の冷却は、不活性ガス雰囲気中で行われるので、基板冷却の過程で基板表面に酸化物が生成されることを回避できる。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記処理室の内壁を前記水蒸気の露点以上に加熱する処理室加熱工程をさらに含む、請求項3または4に記載の基板処理方法である。この構成によれば、処理室の内壁において水蒸気が結露することを抑制または防止できる。これにより、基板表面に効率的に水蒸気を供給できるので、さらに効率的に窒化膜をエッチングできる。
請求項6記載の発明は、前記基板の表面には、前記窒化膜に加えて、酸化膜も形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理方法である。水蒸気エッチング工程では、酸化膜に対する窒化膜のエッチング選択比が大きいので、窒化膜および酸化膜が基板上に形成されている場合に、窒化膜を良好な選択比でエッチングできる。
【0011】
請求項7記載の発明は、前記水蒸気が、大気圧以上の水蒸気である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法である。大気圧以上の水蒸気を用いる場合、その水蒸気は高温である。したがって、高温および高圧の水蒸気で窒化膜をエッチングできるから、高いエッチングレートを得ることができる。
請求項8記載の発明は、前記水蒸気が、大気圧未満の水蒸気である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法である。大気圧未満の水蒸気を用いる場合には、その水蒸気は比較的低温にすることができる。そのため、結露を回避するための基板温度等が低くなるので、基板の加熱および冷却に要する時間を短縮でき、かつそのためのエネルギーを削減できる。
【0012】
請求項9記載の発明は、処理室(11)と、前記処理室内で、表面に窒化膜が形成された基板を保持する基板保持手段(13,40)と、前記基板保持手段に保持された基板に沸点以上の温度の水蒸気を供給する水蒸気供給手段(25−27,29,30)とを含む、基板処理装置である。この構成により、請求項1に記載した基板処理方法を実行できる。処理対象の基板は、前記窒化膜に加えて酸化膜も形成された基板であってもよい。
【0013】
なお、前記括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
請求項10記載の発明は、前記基板保持手段に保持された基板を前記水蒸気供給手段から供給される水蒸気の露点以上に加熱する基板加熱手段(13)をさらに含む、請求項9に記載の基板処理装置である。この構成により、請求項2に記載した基板処理方法を実行できる。
【0014】
請求項11記載の発明は、前記処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段(25,26,28,31,32,35−38)と、前記処理室内の雰囲気を排気する排気手段(51−57)とをさらに含む、請求項9または10に記載の基板処理装置である。この構成により、請求項3または4に記載した基板処理方法を実行できる。
請求項12記載の発明は、前記処理室の内壁を前記水蒸気供給手段から供給される水蒸気の露点以上に加熱する処理室加熱手段(50)をさらに含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成により、請求項5に記載した基板処理方法を実行できる。
【0015】
請求項13記載の発明は、前記水蒸気供給手段が、大気圧以上の水蒸気を前記処理室に供給する、請求項9〜12のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成により、請求項7に記載した基板処理方法を実行できる。
請求項14記載の発明は、前記水蒸気供給手段が、大気圧未満の水蒸気を前記処理室に供給する、請求項9〜12のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成により、請求項8に記載した基板処理方法を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理方法を実行することができる基板処理装置のレイアウト例を説明するための図解的な平面図である。
【図2】過熱水蒸気ユニットの構成例を説明するための縦断面図である。
【図3】ヒータユニット等の構成を示す図解的な斜視図である。
【図4】洗浄ユニットの構成例を概説するための図解的な立面図である。
【図5】前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図6】基板に対するプロセスシーケンスの一例を示す図である。
【図7A】水蒸気エッチング工程の詳細を説明するための図解的な断面図である。
【図7B】図7Aの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7C】図7Bの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7D】図7Cの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7E】図7Dの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7F】図7Eの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図7G】図7Fの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図8】水蒸気エッチング工程において用いられる水蒸気を説明するための図である。
【図9】基板に対するプロセスシーケンスの他の例を示す図である。
【図10】基板に対するプロセスシーケンスの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理方法を実行することができる基板処理装置のレイアウト例を説明するための図解的な平面図である。この基板処理装置は、半導体基板に代表される処理対象の基板を一枚ずつ処理する枚葉型の基板処理装置である。この基板処理装置は、インデクサセクション1と、プロセスセクション2とを有している。
【0018】
インデクサセクション1は、基板収容器3をそれぞれ一つずつ保持することができる複数のロードポート4(基板収容器保持部)と、インデクサロボット(IR)5とを有している。複数のロードポート4は、この実施形態では、平面視において直線状に一列に配列されている。インデクサロボット5は、これらのロードポート4に配置された基板収容器3にアクセスして、基板を搬入/搬出できるように構成されている。また、インデクサロボット5は、プロセスセクション2との間で基板を受け渡すことができるように構成されている。
【0019】
プロセスセクション2は、過熱水蒸気ユニット6と、洗浄ユニット7と、主搬送ロボット(CR)8とを有している。この実施形態では、平面視において2箇所に過熱水蒸気ユニット6が配置されており、平面視における別の2箇所に洗浄ユニット7が配置されている。そして、これらのユニット6,7に囲まれた空間に主搬送ロボット8が配置されている。プロセスセクション2においてロードポート4の配列方向に関する中央部には、搬送路9が形成されている。搬送路9を挟む2箇所に洗浄ユニット7が配置されている。そして、この2箇所の洗浄ユニット7にそれぞれ隣接する2箇所(インデクサセクション1とは反対側)に過熱水蒸気ユニット6が配置されている。洗浄ユニット7は、過熱水蒸気ユニット6よりもインデクサセクション1に近い位置に配置されている。過熱水蒸気ユニット6は、後述の水蒸気エッチング工程を行う処理ユニットである。また、洗浄ユニット7は、水蒸気エッチング工程後の基板の洗浄および乾燥を行うための処理ユニットである。
【0020】
インデクサロボット5と主搬送ロボット8とは、搬送路9を介して、基板を受け渡すように動作する。インデクサロボット5および主搬送ロボット8は、それぞれ基板を保持することができるハンドを有している。インデクサロボット5および主搬送ロボット8はそれらのハンド間で基板を直接受け渡すように構成されていてもよい。また、搬送路9に配置された基板受渡ユニット(図示省略)によって、それらのハンド間の基板受け渡しが仲介されるようになっていてもよい。
【0021】
インデクサロボット5は、いずれかの基板収容器3から未処理の基板を搬出し、主搬送ロボット8に渡すように動作する。また、インデクサロボット5は、処理済みの基板を主搬送ロボット8から受け取り、その処理済み基板をいずれかの基板収容器3に搬入するように動作する。
主搬送ロボット8は、インデクサロボット5から受け取った未処理基板をいずれかの過熱水蒸気ユニット6に搬入する。さらに、主搬送ロボット8は、過熱水蒸気ユニット6での水蒸気エッチング処理後の基板をいずれかの洗浄ユニット7に搬入する。そして、主搬送ロボット8は、洗浄ユニット7での洗浄・乾燥処理後の基板を、インデクサロボット5に受け渡すように動作する。
【0022】
図2は、過熱水蒸気ユニット6の構成例を説明するための縦断面図である。過熱水蒸気ユニット6は、処理室11を内部に区画するハウジング12と、ハウジング12内に配置されたヒータユニット13(基板加熱手段、基板保持手段)とを含む。ハウジング12は、扁平な箱形に形成されており、底壁15と、底壁15から立ち上がった側壁16および後壁17と、側壁16および17の上端縁に連なる天壁18とを含む。
【0023】
ハウジング12において、主搬送ロボット8に臨む前面側には基板Wを出し入れするための開口19が形成されており、この開口19を開閉する開閉機構としてのゲートバルブユニット20が配置されている。ゲートバルブユニット20は、開口19を開閉するシャッタ部材21と、シャッタ部材21を閉位置と開位置との間で移動させるシャッタ駆動機構22とを含む。シャッタ部材21は、閉位置において、開口19を気密に閉塞する。
【0024】
ハウジング12の天壁18には、処理流体導入口25が設けられている。処理流体導入口25には、処理流体供給路26が接続されている。処理流体供給路26には、過熱水蒸気供給路27および不活性ガス供給路28が接続されている。過熱水蒸気供給路27には、過熱水蒸気供給源29が接続されており、その途中部には過熱水蒸気バルブ30が介装されている。不活性ガス供給路28には、不活性ガス供給源31が接続されており、その途中部には第1不活性ガスバルブ32が介装されている。
【0025】
この構成により、過熱水蒸気バルブ30を開くことにより、処理流体導入口25から処理室11内へと過熱水蒸気を供給できる。また、第1不活性ガスバルブ32を開くことにより、処理流体導入口25から処理室11内へと不活性ガスを供給することができる。過熱水蒸気バルブ30および第1不活性ガスバルブ32の両方を開けば、過熱水蒸気および不活性ガスの両方を処理室11内に供給できる。不活性ガスは、基板Wを構成する物質に対して不活性な気体であり、とくに酸素を含まないか、または酸素濃度が極めて低い(たとえば10ppm以下)気体である。より具体的には、窒素ガスを不活性ガスとして用いてもよい。
【0026】
天壁18の下面(処理室11側の内面)には、処理流体導入口25から供給された処理流体(過熱水蒸気および/または不活性ガス)を拡散して処理室11内に流出させる拡散部材33が配置されている。これにより、処理室11内に処理流体の均一な流れを形成でき、処理室11内にすみやかに処理流体を行き渡らせることができる。
後壁17は、開口19から遠い位置に配置された奥側の隔壁である。後壁17には、不活性ガス導入口35が設けられている。不活性ガス導入口35には、不活性ガス供給路36が接続されている。不活性ガス供給路36には、不活性ガス供給源37から、窒素ガス等の不活性ガスが供給されている。不活性ガス供給路36の途中部には第2不活性ガスバルブ38が介装されている。後壁17の内側面には、拡散部材39が配置されている。第2不活性ガスバルブ38を開くと、不活性ガス導入口35から不活性ガスが導入され、この不活性ガスが拡散部材39で拡散されて処理室11内にすみやかに行き渡る。
【0027】
ハウジング12には、処理室11の内壁を加熱するための処理室ヒータユニット50が備えられている。処理室ヒータユニット50は、たとえば、シャッタ部材21、底壁15、側壁16、後壁17および天壁18に組み込まれ、これらを加熱するように構成されていてもよい。これにより、処理室11の内壁面の温度を、処理室11内の水蒸気の露点よりも高温に維持して、水蒸気の結露を抑制または防止できる。
【0028】
図3は、ヒータユニット13等の構成を示す図解的な斜視図である。ヒータユニット13は、ハウジング12の底壁15上に配置されている。ヒータユニット13は、処理対象の基板Wに対応した平面形状の発熱面13aを有している。たとえば、処理対象の基板Wが円形基板であれば、図3に示すように、ヒータユニット13の発熱面13aの平面形状はその基板Wの径に対応した円形であってもよい。ヒータユニット13の上面周縁部には、その全周にわたって延びる均熱リング40が設けられている。均熱リング40は、その周方向に直交する断面がほぼL字状に形成されている。すなわち、均熱リング40は、基板Wの下面周縁部をヒータユニット13の発熱面13aの近傍で支持する支持部41と、この支持部41の外側から立ち上がったガイド部42とを有している。ガイド部42は、基板Wの水平方向(ヒータユニット13の発熱面13aに平行な方向)への移動を規制する。均熱リング40は、熱伝導性の高い材料、たとえばSiCで構成されている。
【0029】
このような構成により、発熱面13aからの輻射熱によって基板Wを加熱でき、均熱リング40による熱伝導によって基板Wの各部の加熱むらを抑制して、均一な加熱を実現できる。
図2に示すように、ヒータユニット13と主搬送ロボット8(図1参照)との基板Wの受け渡しのために、基板Wをヒータユニット13の上方で上下動させるリフト機構45が設けられている。リフト機構45は、たとえば、鉛直方向に延びた複数本(たとえば3本)のリフトピン46と、リフトピン46を同期して上下動させる昇降駆動機構47とを含む。リフトピン46は、ヒータユニット13の発熱面13aに形成された通路48を通って上下動するように構成されている。これにより、基板Wを均熱リング40の支持部41から持ち上げたり、支持部41上に置いたりすることができる。主搬送ロボット8との基板受け渡しのときは、リフトピン46は、基板Wをヒータユニット13の発熱面から離れた上方で支持する上位置である受渡位置に配置される。また、ヒータユニット13によって基板Wを加熱するときは、リフトピン46は、基板Wをヒータユニット13によって加熱するための下位置である処理位置(図2に示す位置)に配置される。処理位置とは、リフトピン46の頭部が支持部41に支持された基板Wの下面から下方に離間した状態となる位置であり、その頭部が発熱面13aよりも下方に没した状態となる位置であってもよい。
【0030】
ハウジング12の底壁15には、第1排気口51および第2排気口52が形成されている。第1排気口51は、ハウジング12の前面の開口19に沿って延びており、図3には、直線的なスロット形状に形成された例を示す。第2排気口52は、平面視においてヒータユニット13を取り囲むように、ヒータユニット13の外方に形成されている。第2排気口52は、ヒータユニット13の外周縁に沿う環状(図3の例では円環状)に形成されていてもよい。
【0031】
第1排気口51は、第1排気路53を介して排気設備57に接続されている。第2排気口52は、第2排気路54を介して排気設備57に接続されている。第1排気路53には第1排気弁55が介装されており、第2排気路54には第2排気弁56が接続されている。したがって、第1および第2排気弁55,56を独立して開閉することによって、第1排気口51を介する排気および第2排気口52を介する排気を個別に制御できる。
【0032】
図4は、洗浄ユニット7の構成例を概説するための図解的な立面図である。洗浄ユニット7は、基板Wを保持するスピンチャック61と、スピンチャック61の回転軸62に回転力を与えてスピンチャック61を鉛直な回転軸線63まわりに回転させる回転駆動機構64とを含む。洗浄ユニット7は、さらに、スピンチャック61に保持された基板Wに洗浄液(薬液またはリンス液)を供給する洗浄液ノズル65を含む。洗浄液ノズル65は、洗浄液供給路66に接続されている。洗浄液供給路66には、洗浄液供給源67から洗浄液が供給されるようになっている。洗浄液供給路66の途中部には、その流路を開閉する洗浄液バルブ68が介装されている。洗浄液としては、純水(脱イオン水)、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、アンモニア水等を例示できる。2種類以上の洗浄液を用いてもよい。複数種類の洗浄液を用いる場合には、その種類数に応じた個数の洗浄液ノズル65を洗浄ユニット7に備えてもよい。また、複数種類の洗浄液を一つの洗浄液ノズル65に共通に供給することとし、各種類の洗浄液の供給源と洗浄液ノズル65との間の洗浄液供給路にそれぞれ洗浄液バルブを介装してもよい。
【0033】
この構成により、基板Wをスピンチャック61に保持して回転軸線63まわりに回転させ、その基板Wの表面に洗浄液ノズル65から洗浄液を供給できる。洗浄液は遠心力によって基板Wの表面全域に行き渡り、これにより、基板Wの表面を洗浄できる。その後、洗浄液バルブ68を閉じて洗浄液ノズル65からの洗浄液の吐出を停止し、スピンチャック61を高速回転させるスピンドライ処理を実行することにより、基板W表面の液成分を遠心力によって振り切ることができる。こうして、基板Wの洗浄および乾燥の各処理を実行できる。
【0034】
図5は、前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。基板処理装置は、装置の各部を制御するための制御装置70を含む。制御装置70は、マイクロコンピュータに加えて、記憶装置等の必要な周辺装置を含む。制御装置70には、制御対象として、インデクサロボット5、主搬送ロボット8、過熱水蒸気ユニット6および洗浄ユニット7が接続されている。過熱水蒸気ユニット6に関して、制御装置70は、ヒータユニット13および処理室ヒータユニット50への通電、ゲートバルブユニット20の動作、過熱水蒸気バルブ30の開閉、不活性ガスバルブ32の開閉、不活性ガスバルブ38の開閉、リフト機構45の動作、ならびに第1および第2排気弁55,56の開閉を制御する。また、洗浄ユニット7に関して、制御装置70は、回転駆動機構64の動作、および洗浄液バルブ68の開閉を制御する。
【0035】
図6は、基板Wに対するプロセスシーケンスの一例を示す図である。インデクサロボット5は、いずれかの基板収容器3から未処理の基板Wを搬出して、主搬送ロボット8に渡す。主搬送ロボット8は、その未処理の基板Wをいずれかの過熱水蒸気ユニット6に搬入する。過熱水蒸気ユニット6は、搬入された基板Wに対して、水蒸気エッチング工程(S1)を実行する。水蒸気エッチング工程が終了すると、主搬送ロボット8は、その基板Wを過熱水蒸気ユニット6から搬出し、いずれかの洗浄ユニット7に搬入する。洗浄ユニット7は、搬入された基板Wに対して、洗浄工程(S2。たとえば水洗)および乾燥工程(S3)を順に実行する。これらの処理工程が完了すると、主搬送ロボット8は、その処理済みの基板Wを搬出し、インデクサロボット5に渡す。インデクサロボット5は、受け取った処理済みの基板Wをいずれかの基板収容器3に搬入する。
【0036】
このようにして、一連の処理工程である、水蒸気エッチング工程(S1)、洗浄工程(S2)および乾燥工程(S3)を基板Wに対して施すことができる。
図7A〜7Gは、水蒸気エッチング工程の詳細を順に説明するための図解的な断面図である。まず、図7Aに示すように、未処理の基板Wを受け容れるために、制御装置70は、ゲートバルブユニット20を開く。すなわち、シャッタ駆動機構22が駆動され、シャッタ部材21が開位置へと移動させられる。また、制御装置70は、処理室11内に大気を巻き込まないように、処理室11内に気流を発生させる。具体的には、制御装置70は、第2不活性ガスバルブ38を開き、第1排気弁55を開く。第1不活性ガスバルブ32および第2排気弁56は閉状態に制御される。これにより、後壁17の不活性ガス導入口35から不活性ガスが導入されるとともに、前面の開口19の近くの第1排気口51から処理室11内の雰囲気が排気される。その結果、後壁17から開口19に向かう気流が発生し、この気流によって、開口19からの大気の進入を抑制または防止できる。また、制御装置70は、リフト機構45を制御してリフトピン46を下位置に制御しており、さらに予めヒータユニット13および処理室ヒータユニット50への通電を開始して、これらを予熱している。この状態で、主搬送ロボット8は、未処理の基板Wを保持したハンド8aを処理室11に向かって進出させ、その基板Wをヒータユニット13の上方に導く。
【0037】
次いで、図7Bに示すように、制御装置70は、リフト機構45を制御してリフトピン46を上位置に上昇させる。その過程で、基板Wはハンド8aからリフトピン46に渡される。その後、制御装置70は、主搬送ロボット8を制御して、ハンド8aを処理室11から退出させる。さらに、制御装置70は、ゲートバルブユニット20を閉じる。すなわち、シャッタ部材21を閉位置に移動させ、開口19を閉塞する。ゲートバルブユニット20を閉じた後、制御装置70は、第2不活性ガスバルブ38を閉じ、代わって、第1不活性ガスバルブ32を開く。制御装置70は、さらに、第1排気弁55を閉じ、第2排気弁56を開く。これにより、天壁18の処理流体導入口25から不活性ガスが導入され、拡散部材33によって処理室11内に拡散される。また、処理室11内の雰囲気は、ヒータユニット13の外周に沿って開口する第2排気口52から排気される。これにより、天壁18から基板Wに向かう不活性ガスの流れが形成され、処理室11内の雰囲気が速やかに不活性ガス雰囲気に置換される(前ガス置換工程)。不活性ガス雰囲気への置換によって、処理室11内の酸素濃度が10ppm以下に制御されることが好ましい。不活性ガス供給源31からは、加圧された不活性ガスが供給され、かつ第2排気口52からの排気流量が適切に制御されることによって、処理室11内は大気圧(0.1MPa)よりも高い気圧の加圧空間とされる。より具体的には、処理室11内の気圧は、0.2MPa〜10MPa(たとえば0.2MPa〜0.3MPa)に調整されることが好ましい。
【0038】
次に、図7Cに示すように、制御装置70は、リフト機構45を制御することによってリフトピン46を下位置まで下降させ、基板Wをヒータユニット13上(より正確には均熱リング40の支持部41上)に配置する。これにより、基板Wは処理室11内で保持される(基板保持工程)。また、制御装置70は、ヒータユニット13の通電制御によって、基板Wの温度を23℃〜300℃(たとえば100℃)に制御する(基板加熱工程)。基板Wの温度は、次に処理室11内に供給される水蒸気の露点以上の温度に制御すればよい。また、制御装置70は、処理室ヒータユニット50への通電制御によって、処理室11の内壁を水蒸気の露点以上の温度に制御する(処理室加熱工程)。
【0039】
次に、図7Dに示すように、制御装置70は、第1不活性ガスバルブ32を閉じ、代わって過熱水蒸気バルブ30を開く。これにより、処理流体導入口25から過熱水蒸気が導入され、この過熱水蒸気は拡散部材33で拡散されて、処理室11内に供給される。処理室11内の雰囲気はヒータユニット13の外周に配置された第2排気口52から排気されているので、処理室11内には、天壁18から基板Wに向かう過熱水蒸気の流れが形成される。したがって、基板Wに向かって過熱水蒸気が供給され、この過熱水蒸気によって基板Wの表面の処理が進行する。過熱水蒸気供給源29からは、100℃〜250℃(たとえば200℃)に過熱された水蒸気が供給される。さらに、過熱水蒸気供給源29からは、加圧された過熱水蒸気が供給され、かつ第2排気口52からの排気流量が適切に制御されることによって、処理室11内は大気圧(0.1MPa)よりも高い気圧の加圧空間とされる。より具体的には、処理室11内の気圧は、0.1MPa〜10MPa(たとえば0.2MPa〜0.3MPa)に調整されることが好ましい。こうして、加圧された空間内で過熱水蒸気による基板Wの処理が行われる。この加熱水蒸気による水蒸気エッチングと並行してヒータユニット13による基板Wの加熱および処理室ヒータユニット50による処理室11の内壁の加熱が行われる。これにより、水蒸気の結露を抑制できる。
【0040】
基板Wの表面には、たとえば、酸化シリコン膜および窒化シリコン膜が形成されている。この場合に、次に示す反応式によって、基板W表面の窒化シリコン膜が選択的にエッチングされる。窒化シリコン膜は、プラズマCVD(化学的気相成長法)によって基板上に形成された膜であってもよいし、減圧CVDによって基板上に形成された膜であってもよい。
【0041】
Si+12HO → 3Si(OH)+4NH
予め定める水蒸気エッチング処理時間にわたって図7Dの状態を保持した後、基板Wの冷却が行われる。具体的には、制御装置70は、過熱水蒸気バルブ30を閉じ、代わって第1不活性ガスバルブ32を開く。これにより、図7Eに示すように、処理流体導入口25から不活性ガスが供給され、拡散部材33に拡散されて処理室11内へと導かれ、天壁18から第2排気口52に向かう不活性ガス気流が形成される。これにより、処理室11内の雰囲気が不活性ガス雰囲気に置換される(後ガス置換工程)。この雰囲気置換によって、処理室11内の酸素濃度が10ppm以下に制御されることが好ましい。また、不活性ガスの供給流量および処理室11内の雰囲気の排気流量は、処理室11内の気圧が大気圧(0.1MPa)またはそれに近い値となるように制御されることが好ましい。さらに、制御装置70は、リフト機構45を制御してリフトピン46を上位置に上昇させる。これにより、基板Wがヒータユニット13の発熱面13aから遠く離される。こうして、基板Wが冷却される(冷却工程)。この冷却工程は、基板Wの温度が100℃以下になるように定めた所定時間にわたって行われることが好ましい。
【0042】
基板Wが十分に冷却されると、図7Fに示すように、制御装置70は、第1不活性ガスバルブ32を閉じ、代わって第2不活性ガスバルブ38を開く。また、制御装置70は、第2排気弁56を閉じて第1排気弁55を開く。これにより、処理室11内には、後壁17から開口19へと向かう気流が形成されるから、開口19が開放されたときに大気が処理室11内に進入することを抑制または防止できる。さらに、制御装置70は、ゲートバルブユニット20を制御して、シャッタ部材21を開位置へと移動させ、開口19を開放させる。この状態で、制御装置70は、主搬送ロボット8を制御して、ハンド8aを処理室11内に進入させ、リフトピン46に支持された基板Wの下方へと配置させる。次いで、制御装置70は、リフト機構45を制御してリフトピン46を下位置に下降させる。その過程で、基板Wはリフトピン46からハンド8aに渡される。
【0043】
その後、図7Gに示すように、制御装置70は、主搬送ロボット8を制御して、ハンド8aを処理室11から退出させ、基板Wを処理室11から搬出する(基板搬出工程)。
図8は、水蒸気エッチング工程において用いられる水蒸気を説明するための図である。水の沸点は、気圧に応じて変動する。すなわち、気圧が高いほど沸点が高くなる。圧力および温度を座標軸とした二次元平面上に水の沸点をプロットすると、飽和蒸気線80が得られる。つまり、飽和蒸気線80上の水蒸気は、沸点の水蒸気である。また、飽和蒸気線80よりも上の過熱蒸気領域81に位置する状態の水蒸気は、沸点よりも高温の水蒸気であり、過熱水蒸気である。過熱水蒸気の温度は、大気圧下では100℃を超える。また、過熱水蒸気の温度は、大気圧未満の気圧中においては、100℃未満の場合もある。大気圧中においては、100℃の飽和水蒸気をさらに過熱することにより、過熱水蒸気が得られる。
【0044】
前述の水蒸気エッチング工程では、飽和蒸気線80上の状態の水蒸気を用いてもよいし、過熱蒸気領域の水蒸気を用いてもよい。また、大気圧下で水蒸気エッチング工程(大気圧の水蒸気による処理)を行ってもよいし、大気圧よりも高圧の加圧雰囲気中で水蒸気エッチング工程(大気圧よりも高圧の水蒸気による処理)を行ってもよい。また、大気圧よりも低い減圧雰囲気中で水蒸気エッチング工程(大気圧未満の水蒸気による処理)を行ってもよい。加圧雰囲気中で過熱水蒸気を用いれば、より高エネルギーでのエッチング処理が可能であるので、エッチングレートを高めることができる。また、減圧雰囲気中では、より低温での水蒸気エッチングが可能なので、少ないエネルギーでの水蒸気エッチングが可能である。
【0045】
本件発明者の実験によれば、100℃の水蒸気を用いて大気圧中で水蒸気エッチングを行ったところ、プラズマ窒化シリコン膜については2.5nm/minのエッチングレートが得られ、熱酸化シリコン膜については0.0nm/minのエッチングレートが得られた。すなわち、水蒸気エッチング工程により、窒化シリコン膜を高選択比でエッチングできることが確認された。
【0046】
以上のように、この実施形態によれば、沸点以上の水蒸気を用いて基板Wの表面の窒化膜をエッチングできるから、高価な薬液である燐酸を用いなくてもよい。これにより、より安価な工程での窒化膜をエッチングできるので、基板Wを用いる製品の生産コストを低減できる。そして、沸点以上の水蒸気を用いることによって、基板W上の窒化膜を効率的にエッチングでき、エッチング時間を短縮できる。とくに、沸点よりも高い過熱水蒸気を用いれば、より高いエッチングレートが得られる。
【0047】
また、水蒸気エッチング工程中、基板Wおよび処理室11の内壁が水蒸気の露点以上に加熱されるので、基板W上および処理室11の内壁における水蒸気の結露を抑制または防止できる。これにより、基板W上の窒化膜に対して水蒸気が高確率で接触するので、高いエッチングレートが得られる。また、基板Wが均熱リング40に接触させられるので(均熱工程)、基板Wの各部の温度を均一化でき、これによって、エッチングレートの面内ばらつきを低減できる。
【0048】
また、この実施形態では、水蒸気エッチング工程の前に、処理室11内の雰囲気が不活性ガスに置換される。これにより、基板Wの表面の酸化を回避しながら、基板W上の窒化膜をエッチングできる。とくに、この実施形態では、基板加熱工程が並行して行われるので、基板Wの加熱によって基板Wの表面に酸化膜が成長するおそれがある。そこで、予め処理室11内の雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換してから水蒸気エッチング工程を行うことによって、酸化物の生成を回避しながら、窒化膜を選択的にエッチングできる。
【0049】
さらに、この実施形態では、水蒸気エッチング工程の後に、処理室11内の雰囲気が不活性ガスに置換される。そして、その不活性ガス雰囲気中で、基板Wが冷却させられ、その冷却後に基板Wが処理室11外に搬出される。これより、基板Wを冷却してから処理室外に搬出できるので、基板搬送機構に対して基板の熱影響が及ぶことを回避できる。また、基板Wの冷却は、不活性ガス雰囲気中で行われるので、基板Wの冷却過程で基板Wの表面に酸化物が生成されることを回避できる。
【0050】
また、図7A〜7Gを参照して説明した処理工程では、大気圧以上の水蒸気が基板Wに供給される。大気圧以上の水蒸気は高温であるので、高温および高圧の水蒸気で窒化膜をエッチングできる。その結果、高いエッチングレートを得ることができる。
処理室11内の気圧を大気圧未満に制御して、大気圧未満の水蒸気を処理室11内の基板Wへと供給することもできる。この場合には、その水蒸気は比較的低温にすることができる。そのため、結露を回避するための基板温度等が低くなるので、基板Wの加熱および冷却に要する時間を短縮でき、かつそのためのエネルギーを削減できる。
【0051】
図9は、基板Wに対するプロセスシーケンスの他の例を示す図である。図9において、図6に示した各工程に対応する工程を同一参照符号で示す。このプロセスシーケンスでは、水蒸気エッチング工程(S1)の後に洗浄ユニット7において行われる洗浄工程(S1)が、薬液洗浄工程(S21)および純水リンス工程(S22)を含む。薬液洗浄工程(S1)は、洗浄液ノズル65から、基板Wの表面に薬液を供給して、基板Wの表面の異物を薬液で除去する工程である。純水リンス工程は、薬液洗浄工程の後に行われ、洗浄液ノズル65からリンス液としての純水を基板Wに供給し、基板W上の薬液を純水に置換する工程である。乾燥工程(S3)は、純水リンス工程の後に行われ、純水の供給を停止して、スピンチャック61によって基板Wを高速回転させることにより、遠心力によって基板W表面の純水を振り切るスピンドライ処理である。薬液洗浄工程で用いられる薬液としては、SC1やNHOH(アンモニア水)を例示できる。
【0052】
図10は、基板Wに対するプロセスシーケンスの他の例を示す図である。このプロセスシーケンスでは、水蒸気エッチング工程(S3)の前に、洗浄ユニット7において洗浄工程(S1)および乾燥工程(S2)が行われる。洗浄工程(S1)は、第1薬液洗浄工程(S11)および純水リンス工程(S12)を含む。第1薬液洗浄工程(S11)は、洗浄液ノズル65から、基板Wの表面に第1薬液を供給して、基板Wの表面の異物を第1薬液で除去(ライトエッチング)する工程である。第1薬液としては、DHF(希フッ酸)を例示できる。純水リンス工程(S12)は、第1薬液洗浄工程(S11)の後に行われ、洗浄液ノズル65からリンス液としての純水を基板Wに供給し、基板W上の薬液を純水に置換する工程である。その後の乾燥工程(S2)は、純水リンス工程(S12)の後に行われ、純水の供給を停止して、スピンチャック61によって基板Wを高速回転させることにより、遠心力によって基板W表面の純水を振り切るスピンドライ処理である。その後、基板Wは過熱水蒸気ユニット6に搬入され、水蒸気エッチング工程(S3)が実行される。水蒸気エッチング工程(S3)が実行された後、基板Wは洗浄ユニット7に搬入されて、洗浄工程(S4)および乾燥工程(S5)が行われる。洗浄工程(S4)は、第2薬液洗浄工程(S41)および純水リンス工程(S42)を含む。第2薬液洗浄工程(S41)は、洗浄液ノズル65から、基板Wの表面に第2薬液を供給して、基板Wの表面の異物を第2薬液で除去する工程である。第2薬液としては、SC1やNHOH(アンモニア水)を例示できる。純水リンス工程(S42)は、第2薬液洗浄工程(S41)の後に行われ、洗浄液ノズル65からリンス液としての純水を基板Wに供給し、基板W上の薬液を純水に置換する工程である。その後の乾燥工程(S5)は、純水リンス工程(S42)の後に行われ、純水の供給を停止して、スピンチャック61によって基板Wを高速回転させることにより、遠心力によって基板W表面の純水を振り切るスピンドライ処理である。
【0053】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、表面に窒化シリコン膜および酸化シリコン膜が形成(露出)されたシリコン基板を例示したが、他の種類の基板に対しても、この発明を適用できる。たとえば、窒化シリコン膜が露出していて、酸化シリコン膜が露出していないシリコン基板に対してこの発明を適用してもよい。むろん、シリコン基板以外の他の半導体材料の基板や、ガラス基板その他の材料の基板の表面に窒化膜が形成されている場合、その窒化膜のエッチング(とくに選択的なエッチング)に対して、この発明を適用することができる。窒化膜の種類は、窒化シリコン(たとえば、LP-SiN(Low Pressure-Silicon Nitride)、P-SiN(Plasma-Silicon Nitride)、Spacer SiN、Seal SiN)に限らず、シリコン炭窒化膜(たとえば、P-SiCN(Plasma-Silicon Carbon Nitride))なども水蒸気エッチングの対象となりうる。
【0054】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 インデクサセクション
2 プロセスセクション
3 基板収容器
4 ロードポート
5 インデクサロボット
6 過熱水蒸気ユニット
7 洗浄ユニット
8 主搬送ロボット
8a ハンド
9 搬送路
11 処理室
12 ハウジング
13 ヒータユニット
13a 発熱面
15 底壁
16 側壁
17 後壁
18 天壁
19 開口
20 ゲートバルブユニット
21 シャッタ部材
22 シャッタ駆動機構
25 処理流体導入口
26 処理流体供給路
27 過熱水蒸気供給路
28 不活性ガス供給路
29 過熱水蒸気供給源
30 過熱水蒸気バルブ
31 不活性ガス供給源
32 第1不活性ガスバルブ
33 拡散部材
35 不活性ガス導入口
36 不活性ガス供給路
37 不活性ガス供給源
38 第2不活性ガスバルブ
39 拡散部材
40 均熱リング
41 支持部
42 ガイド部
45 リフト機構
46 リフトピン
47 昇降駆動機構
48 通路
50 処理室ヒータユニット
51 第1排気口
52 第2排気口
53 第1排気路
54 第2排気路
55 第1排気弁
56 第2排気弁
57 排気設備
61 スピンチャック
62 回転軸
63 回転軸線
64 回転駆動機構
65 洗浄液ノズル
66 洗浄液供給路
67 洗浄液供給源
68 洗浄液バルブ
70 制御装置
80 飽和蒸気線
81 過熱蒸気領域
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に窒化膜が形成された基板に沸点以上の温度の水蒸気を供給して、前記窒化膜をエッチングする水蒸気エッチング工程を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記基板を前記水蒸気の露点以上に加熱する基板加熱工程をさらに含み、前記水蒸気エッチング工程が前記基板加熱工程と並行して実行される、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板を処理室内で保持する工程と、
前記処理室内の雰囲気を不活性ガスに置換する前ガス置換工程とをさらに含み、
前記水蒸気エッチング工程が、前記前ガス置換工程の後に、前記処理室内で行われる、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記水蒸気エッチング工程の後に、前記処理室内の雰囲気を不活性ガスに置換する後ガス置換工程と、
前記水蒸気エッチング工程の後に、前記処理室内で前記基板を冷却する冷却工程と、
前記後ガス置換工程および冷却工程の後に、前記処理室から前記基板を搬出する工程とをさらに含む、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記処理室の内壁を前記水蒸気の露点以上に加熱する処理室加熱工程をさらに含む、請求項3または4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記基板の表面には、前記窒化膜に加えて、酸化膜も形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記水蒸気が、大気圧以上の水蒸気である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記水蒸気が、大気圧未満の水蒸気である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
処理室と、
前記処理室内で、表面に窒化膜が形成された基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に沸点以上の温度の水蒸気を供給する水蒸気供給手段とを含む、基板処理装置。
【請求項10】
前記基板保持手段に保持された基板を前記水蒸気供給手段から供給される水蒸気の露点以上に加熱する基板加熱手段をさらに含む、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、
前記処理室内の雰囲気を排気する排気手段とをさらに含む、請求項9または10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記処理室の内壁を前記水蒸気供給手段から供給される水蒸気の露点以上に加熱する処理室加熱手段をさらに含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記水蒸気供給手段が、大気圧以上の水蒸気を前記処理室に供給する、請求項9〜12のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記水蒸気供給手段が、大気圧未満の水蒸気を前記処理室に供給する、請求項9〜12のいずれか一項に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−204777(P2012−204777A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70496(P2011−70496)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】