説明

基板処理方法及び基板処理装置

【課題】 下地に最適化された処理液で触媒付与処理等の活性化処理を行うことで、特に、配線等の表面に、該配線の電気特性を劣化させることなく、高品質の金属膜(保護膜)を効率よく形成できるようにする。
【解決手段】 液温を15℃以下に調整した処理液に、好ましくは15℃以下の所定の温度に冷却した基板の表面を接触させて該表面を活性化させ、この活性化させた基板の表面をめっき液に接触させて該表面に金属膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法及び基板処理装置に係り、特に半導体ウエハ等の基板の表面に設けた微細な配線用凹部に、銅や銀等の導電体を埋込んで構成する埋込み配線の底面及び側面、または露出表面に、配線材料の層間絶縁膜中への熱的拡散を防止する機能あるいは配線と層間絶縁膜の密着性を向上させる機能を有する導電膜や配線を覆う磁性膜等の保護膜を無電解めっきで形成するのに使用される基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線形成プロセスとして、配線溝及びコンタクトホールに金属(導電体)を埋込むようにしたプロセス(いわゆる、ダマシンプロセス)が使用されつつある。これは、層間絶縁膜に予め形成した配線溝やコンタクトホールに、アルミニウム、近年では銅や銀等の金属を埋込んだ後、余分な金属を化学的機械的研磨(CMP)によって除去し平坦化するプロセス技術である。
【0003】
この種の配線、例えば配線材料として銅を使用した銅配線にあっては、平坦化後、銅からなる配線の表面が外部に露出しており、信頼性向上のため、層間絶縁膜への配線(銅)の熱的拡散を防止しかつエレクトロマイグレーション耐性を向上させるためのバリア膜を配線の底面及び側面に形成したり、その後、絶縁膜(酸化膜)を積層して多層配線構造の半導体装置を作る場合の酸化性雰囲気における配線(銅)の酸化を防止するため酸化防止膜を配線の表面に形成したりするなどの方法が採用されている。この種のバリア膜としては、タンタル、チタンまたはタングステンなどの金属あるいはその窒化物が一般に使用されており、また酸化防止膜としては、シリコン窒化物などが一般に使用されている。
【0004】
これに代わるものとして、最近になってコバルト合金やニッケル合金等からなる保護膜で埋込み配線の底面及び側面、または露出表面を選択的に覆って、配線の熱拡散、エレクトロマイグレーション及び酸化を防止することが検討されている。
【0005】
図1は、半導体装置における銅配線形成例を工程順に示す。先ず、図1(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材1上の導電層1aの上に、例えばSiOからなる酸化膜やLow−k材膜等の絶縁膜(層間絶縁膜)2を堆積し、この絶縁膜2の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、微細な配線用凹部としてのコンタクトホール3と配線溝4を形成し、その上にTaN等からなるバリア層5、更にその上に電解めっきの給電層としてのシード層6をスパッタリング等により形成する。
【0006】
そして、図1(b)に示すように、基板Wの表面に銅めっきを施すことで、基板Wのコンタクトホール3及び配線溝4内に銅を充填させるとともに、絶縁膜2上に銅層7を堆積させる。その後、化学的機械的研磨(CMP)などにより、絶縁膜2上のバリア層5,シード層6及び銅層7を除去して、コンタクトホール3及び配線溝4内に充填させた銅層7の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1(c)に示すように、絶縁膜2の内部にシード層6と銅層7からなる配線(銅配線)8を形成する。
【0007】
次に、図1(d)に示すように、基板Wの表面に無電解めっきを施して、配線8の表面に、例えばCoWP合金からなる保護膜(蓋材)9を選択的に形成し、これによって、配線8の表面を保護膜9で覆って保護する。
【0008】
一般的な無電解めっきによって、このようなCoWP合金膜からなる保護膜(蓋材)9を配線8の表面に選択的に形成する工程を説明する。先ず、CMP処理を施した半導体ウエハ等の基板Wを、例えば常温の希硫酸中に1分程度浸漬させて、配線8の表面の酸化膜や、絶縁膜2の表面に残った銅等のCMP残さ等を除去する。そして、基板Wの表面を純水等の洗浄液で洗浄(リンス)した後、例えば、PdSO/HSO混合溶液中に基板Wを1分程度浸漬させ、これにより、配線8の表面に触媒としてのPdを付着させて配線8の露出表面を活性化させる。
【0009】
次に、基板Wの表面を純水等の洗浄液で洗浄(リンス)した後、例えば液温が80℃のCoWPめっき液中に基板Wを、例えば120秒程度浸漬させて、活性化させた配線8の表面に選択的な無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施し、しかる後、基板Wの表面を超純水等の洗浄液で洗浄する。これによって、配線8の表面に、CoWP合金膜からなる保護膜9を選択的に形成して配線8を保護する。
【0010】
また、不揮発磁気メモリにおいては、メモリセルが高密度化し設計ルールが小さくなると銅配線の電流密度が増大しエレクトロマイグレーションの問題が生じる。さらに、この書き込みには、セルが小さくなると書き込み電流密度は増大することに加え、セルが接近してクロストークが課題となる。これを解決するために、銅配線の周囲にコバルト合金やニッケル合金等の磁性膜を付与したYOKE構造が有効であると考えられている。この磁性膜は例えば無電解めっきによって得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般的な無電解めっきによって、CoWP合金膜からなる保護膜(蓋材)を形成する際には、前述のように、配線の表面に、例えば酸化膜を除去する酸化膜除去処理、Pd等の貴金属類からなる触媒を付与する触媒付与処理等の活性化処理が施される。しかし、触媒付与処理は、一般に下地の腐食を伴うので、配線の信頼性を下げることがある。また絶縁膜上に残った銅等からなるCMP残さを除去して、絶縁膜上に保護膜が形成されることを防止する処理は、一般にHF、HSOやHClなどの無機酸や、シュウ酸、クエン酸などの有機酸、またはそれらの混合物を使用して行われる。このため、処理液中の溶存酸素量が多いと、基板の表面が酸化しやすくなり、処理した配線等の電気特性に悪影響を与えることがある。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、下地に最適化された処理液で触媒付与等の活性化処理を行うことで、特に、配線等の表面に、該配線の電気特性を劣化させることなく、高品質の金属膜(保護膜)を効率よく形成できるようにした基板処理方法及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、液温を15℃以下に調整した処理液に基板の表面を接触させて該表面を活性化させ、前記活性化させた基板の表面をめっき液に接触させて該表面に金属膜を形成することを特徴とする基板処理方法である。
処理液の液温を15℃以下に調整して物質の拡散速度を制御しながら基板の表面の活性化処理を行うことで、活性化処理時に発生する下地の腐食を最小限に抑えることができる。また、処理液の液温を15℃以下に調整して、反応が反応律速から拡散律速となるように物質の拡散速度を制御することで、例えば密度差を有する配線パターンの表面に、パターン依存性を抑制しつつ活性化処理を行うことができる。
処理液の液温は、15〜4℃であることが好ましく、10〜6℃であることが更に好ましい。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記基板を15℃以下に冷却しつつ、該基板の表面を前記処理液に接触させることを特徴とする請求項1記載の基板処理方法である。
基板を15℃以下に冷却しつつ、該基板の表面を処理液に接触させることで、15℃以下に予め調整して供給される処理液の液温が基板に接触して上昇してしまうことを防止することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記基板は、配線用凹部内に配線金属を埋込んで形成した埋込み配線を有し、該埋込み配線の表面を活性化させて該表面に前記金属膜を選択的に形成することを特徴とする請求項1または2記載の基板処理方法である。
これにより、埋込み配線の表面に、該配線の電気特性を劣化させることなく、高品質の金属膜(保護膜)を効率よく形成して、配線を保護することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記基板は、内部に配線金属を埋込んで埋込み配線を形成する配線用凹部を有し、該配線用凹部の表面を活性化させて該表面に前記金属膜を形成することを特徴とする請求項1または2記載の基板処理方法である。
請求項5に記載の発明は、前記処理液は、該中処理液中に触媒金属塩が0.005g/Lから10g/Lの範囲で含有されている触媒処理液であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の基板処理方法である。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記触媒金属塩中の触媒金属は、Pd、Pt、Ru、Co、Ni、Au及びAgの少なくとも1種からなることを特徴とする請求項5記載の基板処理方法である。
触媒金属としては、Pd、Pt、Ag等、様々な物質があるが、反応速度、その他制御のし易さ等から、Pdを使用することが好ましい。
【0018】
請求項7に記載の発明は、前記処理液のpHは、0から6の範囲で、ターゲット値±0.2に調整されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の基板処理方法である。
【0019】
請求項8に記載の発明は、前記処理液に基板の表面を15秒以上接触させて該表面を活性化させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の基板処理方法である。
基板の表面を処理液に15秒以上接触させることで、活性化の処理速度の低下に伴って、表面の活性化処理が不十分となることを防止することができる。ただし、例えば配線の表面に活性化処理を行う時には、この活性化処理によって配線の抵抗が処理前より5%以上、上昇しないようにすることが好ましい。
【0020】
処理液に基板の表面を接触させる方式としては、例えば(1)処理槽内に保持した処理液中に基板を浸漬させる、(2)基板を回転させながら、スプレーノズルから加圧した処理液を基板に向けて噴射する、(3)表面(被処理面)を上向きして保持した基板を回転させながら、ノズルから処理液を基板に向けて噴射する、(4)例えば、基板上方に配置したノズルから処理液を供給したり、ロール内部から処理液を染み出させたりして、処理液で濡らした基板を回転させながら、多孔質材からなるロールを基板表面に接触させる、(5)処理槽内に流動させながら保持した処理液中に基板を浸漬させる等、任意の方式が採用される。
【0021】
請求項9に記載の発明は、前記処理液中の溶存酸素量は、3ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の基板処理方法である。
これにより、処理液中に含まれる酸素で基板の表面が酸化され、活性化処理後の配線等の電気特性に悪影響を与えることを防止することができる。一般に、活性化処理後に基板の表面に残った処理液は、純水等でリンスされるが、このリンス液として、液中の溶存酸素量が3ppm以下の純水等を使用することが好ましい。
【0022】
請求項10に記載の発明は、基板の表面に接触させて該表面を活性化させる処理液であって、少なくとも触媒金属塩とpH調整剤を含有し、液温を15℃以下に調整したことを特徴とする処理液である。
請求項11に記載の発明は、前記触媒金属塩中の触媒金属は、Pd、Pt、Ru、Co、Ni、Au及びAgの少なくとも1種からなることを特徴とする請求項10記載の処理液である。
【0023】
請求項12に記載の発明は、前記pH調整剤は、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、シュウ酸、蟻酸、酢酸、マレイン酸、リンゴ酸、アジピン酸、ピメリン酸、グルタル酸、コハク酸、フマル酸及びフタル酸から選ばれる酸、またはアンモニア水溶液、KOH、テトラメチルアンモニウムハイドライド及びテトラエチルアンモニウムハイドライドから選ばれる塩基の少なくとも一方からなることを特徴とする請求項10または11記載の処理液である。
請求項13に記載の発明は、前記処理液中の溶存酸素量は、3ppm以下であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の処理液である。
【0024】
請求項14に記載の発明は、液温を15℃以下に調整した処理液を基板の表面に接触させて該表面を活性化させる前処理ユニットと、活性化させた基板の表面にめっきを施して金属膜を形成する無電解めっきユニットと、めっき後の基板を清浄化し乾燥させるユニットを有することを特徴とする基板処理装置である。
請求項15に記載の発明は、前記前処理ユニットは、10℃以下の温度に冷却可能で、基板を保持して冷却する基板ホルダを有することを特徴とする請求項14記載の基板処理装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、処理液の液温を15℃以下に調整して物質の拡散速度を制御しながら基板表面の活性化処理を行い、しかる後、基板表面に金属膜を形成することで、特に、配線等の表面に、該配線等の電気特性を劣化させることなく高品質の金属膜(保護膜)を効率よく形成して、配線等を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の例では、図1に示すように、配線8の露出表面を、CoWP合金からなる保護膜(蓋材)9で選択的に覆って、配線8を保護膜(金属膜)9で保護するようにした例を示す。なお、例えば銅や銀の表面に、Co合金膜やNi合金膜等の金属膜(めっき膜)を成膜して、銅や銀等の表面を金属膜で被覆するようにした例に適用してもよい。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態における基板処理装置の平面配置図を示す。図2に示すように、この基板処理装置には、図1(c)の状態にあたる、表面に銅等からなる配線8を形成した半導体装置等の基板Wを収容した基板カセットを載置収容するロード・アンロードユニット10が備えられている。そして、排気系統を備えた矩形状の装置フレーム12の内部に、基板Wの表面を処理液で洗浄する第1前処理ユニット14aと、洗浄後の基板の表面に、例えばPd等の触媒を付与する第2前処理ユニット14bが配置されている。この第1前処理ユニット14aと第2前処理ユニット14bは、使用する処理液(薬液)が異なるだけで、同じ構成である。
【0028】
装置フレーム12の内部には、基板Wの表面(被処理面)に無電解めっきを行う2基の無電解めっきユニット16、無電解めっき処理によって配線8の表面に形成された保護膜(合金膜)9(図1(d)参照)の選択性を向上させるため、基板Wのめっき後処理を行う後処理ユニット18、後処理後の基板Wを乾燥させる乾燥ユニット20及び仮置台22が配置されている。更に、装置フレーム12の内部には、ロード・アンロードユニット10に搭載された基板カセットと仮置台22との間で基板Wの受渡し行う第1基板搬送ロボット24と、仮置台22と各ユニット14,16,18,20との間で基板の受渡しを行う第2基板搬送ロボット26が、それぞれ走行自在に配置されている。
【0029】
次ぎに、図2に示す基板処理装置に備えられている各種ユニットの詳細を以下に説明する。
前処理ユニット14a(14b)は、異なる液体の混合を防ぐ2液分離方式を採用したもので、フェースダウンで搬送された基板Wの処理面(表面)である下面の周縁部をシールし、裏面側を押圧して基板Wを固定するようにしている。
【0030】
前処理ユニット14a(14b)は、図3乃至図6に示すように、フレーム50の上部に取付けた固定枠52と、この固定枠52に対して相対的に上下動する移動枠54を備えており、この移動枠54に、下方に開口した有底円筒状のハウジング部56と基板ホルダ58とを有する処理ヘッド60が懸架支持されている。つまり、移動枠54には、ヘッド回転用サーボモータ62が取付けられ、このサーボモータ62の下方に延びる出力軸(中空軸)64の下端に処理ヘッド60のハウジング部56が連結されている。
【0031】
この出力軸64の内部には、図6に示すように、スプライン66を介して該出力軸64と一体に回転する鉛直軸68が挿着され、この鉛直軸68の下端に、ボールジョイント70を介して処理ヘッド60の基板ホルダ58が連結されている。基板ホルダ58は、ハウジング部56の内部に位置している。また鉛直軸68の上端は、軸受72及びブラケットを介して、移動枠54に固定した固定リング昇降用シリンダ74に連結されている。これにより、この昇降用シリンダ74の作動に伴って、鉛直軸68が出力軸64とは独立に上下動する。
【0032】
固定枠52には、上下方向に延びて移動枠54の昇降の案内となるリニアガイド76が取付けられ、ヘッド昇降用シリンダ(図示せず)の作動に伴って、移動枠54がリニアガイド76を案内として昇降する。
【0033】
処理ヘッド60のハウジング部56の周壁には、この内部に基板Wを挿入する基板挿入窓56aが設けられている。また、処理ヘッド60のハウジング部56の下部には、図70及び図8に示すように、例えばPEEK製のメインフレーム80とガイドフレーム82との間に周縁部を挟持されてシールリング84が配置されている。このシールリング84は、基板Wの下面の周縁部に当接し、ここをシールするためのものである。
【0034】
基板ホルダ58の下面周縁部には、基板固定リング86が固着され、この基板ホルダ58の基板固定リング86の内部に配置したスプリング88の弾性力を介して、円柱状のプッシャ90が基板固定リング86の下面から下方に突出するようになっている。更に、基板ホルダ58の上面とハウジング部56の上壁部との間には、内部を気密的にシールする、例えばテフロン(登録商標)製で屈曲自在な円筒状の蛇腹板92が配置されている。
更に、基板ホルダ58には、この基板ホルダ58で保持した基板の上面を覆う被覆板94が備えられ、この被覆板94の内部には、例えばペルチェ素子からなり、基板ホルダ58を、例えば10℃以下の温度に冷却する冷却部96が備えられている。
【0035】
また、冷却部96に、基板ホルダ58を10℃以下の所定の温度に調整する冷却装置140(図9参照)を付設させてもよい。つまり、図9に示すように、液体と熱交換を行って冷却水を作る熱交換器142と、この熱交換器142から延びる冷却水チューブ144を備えた冷却装置140の該冷却水チューブ144の端部を冷却部96に連通するようにする。これによって、熱交換器142で冷却された冷却水が冷却水チューブ144に沿って流れ、基板ホルダ58と熱交換することで、基板が冷却される。
【0036】
これにより、基板ホルダ58を上昇させた状態で、基板Wを基板挿入窓56aからハウジング部56の内部に挿入する。すると、この基板Wは、ガイドフレーム82の内周面に設けたテーパ面82aに案内され、位置決めされてシールリング84の上面の所定の位置に載置される。この状態で、基板ホルダ58を下降させ、この基板固定リング86のプッシャ90を基板Wの上面に接触させる。そして、基板ホルダ58を更に下降させることで、基板Wをスプリング88の弾性力で下方に押圧し、これによって、基板Wの表面(下面)の周縁部にシールリング84で圧接させて、ここをシールしつつ、基板Wをハウジング部56と基板ホルダ58との間で挟持して保持する。
【0037】
このように、基板Wを基板ホルダ58で保持した状態で、ヘッド回転用サーボモータ62を駆動すると、この出力軸64と該出力軸64の内部に挿着した鉛直軸68がスプライン66を介して一体に回転し、これによって、ハウジング部56と基板ホルダ58も一体に回転する。また、冷却部96を介して基板ホルダ58を10℃以下に冷却することで、基板ホルダ58で保持した基板Wを15℃以下に冷却できる。
【0038】
処理ヘッド60の下方に位置して、該処理ヘッド60の外径よりもやや大きい内径を有する上方に開口した、外槽100aと内槽100bを有する処理槽100(図9参照)が備えられている。内槽100bの外周部には、蓋体102に取付けた一対の脚部104が回転自在に支承されている。更に、脚部104には、クランク106が一体に連結され、このクランク106の自由端は、蓋体移動用シリンダ108のロッド110に回転自在に連結されている。これにより、蓋体移動用シリンダ108の作動に伴って、蓋体102は、内槽100bの上端開口部を覆う処理位置と、側方の待避位置との間を移動するように構成されている。この蓋体102の表面(上面)には、例えば純水を外方(上方)に向けて噴射する多数の噴射ノズル112aを有するノズル板112が備えられている。
【0039】
更に、図9に示すように、処理槽100の内槽100bの内部には、処理液タンク120から処理液ポンプ122の駆動に伴って供給された処理液を上方に向けて噴射する複数の噴射ノズル124aを有するノズル板124が、該噴射ノズル124aが内槽100bの横断面の全面に亘ってより均等に分布した状態で配置されている。この内槽100bの底面には、処理液(排液)を外部に排出する排水管126が接続されている。この排水管126の途中には、三方弁128が介装され、この三方弁128の一つの出口ポートに接続された戻り管130を介して、必要に応じて、この処理液(排液)を処理液タンク120に戻して再利用できるようになっている。
【0040】
処理液タンク120には、この内部の処理液を15℃以下の所定の温度に調整する冷却装置140が付設されている。この冷却装置140は、液体と熱交換を行って冷却水を作る熱交換器142と、この熱交換器142から延びる冷却水チューブ144を備え、この冷却水チューブ144の端部が処理液タンク120内の処理液内に浸漬されるようになっている。これによって、熱交換器142で冷却された冷却水が冷却水チューブ144に沿って流れ、処理液タンク120内の処理液と熱交換することで、処理液タンク120内の処理液が冷却される。この処理液の温度は、15〜4℃であることが好ましく、10〜6℃であることが更に好ましい。
【0041】
この例では、冷却水と熱交換して処理液タンク120内の処理液を冷却するようにした冷却装置を使用した例を示しているが、例えばペルチェ素子を処理液タンクの壁面に組込んで、処理液タンク120内の処理液を冷却するようにした冷却装置を使用してもよいことは勿論である。
【0042】
第1前処理ユニット14aにあっては、処理液として、HF、HSOやHClなどの無機酸や、シュウ酸、クエン酸などの有機酸、またはそれらの混合物からなる洗浄液が使用される。そして、この処理液(洗浄液)を基板の表面に向けて噴射することで、例えば配線8(図1(c)参照)の表面の酸化膜を除去して該表面を活性化させ、同時に絶縁膜2の表面に残った銅等のCMP残さ等を除去して、絶縁膜2の表面に金属膜が形成されることを防止する。この処理液中の溶存酸素量は、3ppm以下であることが好ましく、これにより、処理液中に含まれる酸素で基板の表面が酸化され、活性化処理後の配線等の電気特性に悪影響を与えることを防止することができる。
【0043】
第2前処理ユニット14bにあっては、少なくとも触媒金属塩とpH調整剤を含有する触媒付与液が使用される。この触媒付与液(処理液)中の溶存酸素量は、前述と同様に、3ppm以下であることが好ましい。触媒金属塩は、触媒付与液(処理液)中に、例えば0.005〜10g/Lの範囲で含有される。触媒金属塩中の触媒金属は、例えばPd、Pt、Ru、Co、Ni、Au及びAgの少なくとも1種からなるが、反応速度、その他制御のし易さ等から、Pdを使用することが好ましい。
【0044】
pH調整剤は、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、シュウ酸、蟻酸、酢酸、マレイン酸、リンゴ酸、アジピン酸、ピメリン酸、グルタル酸、コハク酸、フマル酸及びフタル酸から選ばれる酸、またはアンモニア水溶液、KOH、テトラメチルアンモニウムハイドライド及びテトラエチルアンモニウムハイドライドから選ばれる塩基の少なくとも一方からなる。そして、触媒付与液(処理液)のpHは、pH調整剤によって、例えば0から6の範囲で、ターゲット値±0.2に調整される。
【0045】
この例では、蓋体102の表面(上面)に設けられたノズル板112は、例えば純水等のリンス液を供給するリンス液供給源132に接続されている。これによって、溶存酸素量が3ppm以下のリンス液(純水)が基板の表面に向けて噴射される。また、外槽100aの底面にも、排水管127が接続されている。
【0046】
これにより、基板を保持した処理ヘッド60を下降させて、処理槽100の内槽100bの上端開口部を処理ヘッド60で塞ぐように覆い、この状態で、処理槽100の内槽100bの内部に配置したノズル板124の噴射ノズル124aから、液温を15℃以下の所定の温度に調整した処理液、つまり第1前処理ユニット14aにあっては洗浄液を、第2前処理ユニット14bにあっては触媒付与液を、基板Wに向けて噴射することで、基板Wの下面(処理面)の全面に亘って処理液を均一に噴射し、しかも処理液の外部への飛散を防止しつつ処理液を排水管126から外部に排出できる。
【0047】
更に、処理ヘッド60を上昇させ、処理槽100の内槽100bの上端開口部を蓋体102で閉塞した状態で、処理ヘッド60で保持した基板Wに向けて、蓋体102の上面に配置したノズル板112の噴射ノズル112aからリンス液を噴射することで、基板表面に残った処理液のリンス処理(洗浄処理)を行い、しかもこのリンス液は外槽100aと内槽100bの間を通って、排水管127を介して排出されるので、内槽100bの内部に流入することが防止され、リンス液が処理液に混ざらないようになっている。
【0048】
この前処理ユニット14a(14b)によれば、図3に示すように、処理ヘッド60を上昇させた状態で、この内部に基板Wを挿入して保持し、しかる後、図4に示すように、処理ヘッド60を下降させて処理槽100の内槽100bの上端開口部を覆う位置に位置させる。そして、処理ヘッド60を回転させて、処理ヘッド60で保持した基板Wを回転させながら、処理槽100の内部に配置したノズル板124の噴射ノズル124aから、液温を15℃以下に調整した処理液、すなわち洗浄液または触媒付与液を基板Wに向けて噴射することで、基板Wの全面に亘って処理液を均一に噴射する。また、処理ヘッド60を上昇させて所定位置で停止させ、図5に示すように、待避位置にあった蓋体102を処理槽100の内槽100bの上端開口部を覆う位置まで移動させる。そして、この状態で、処理ヘッド60で保持して回転させた基板Wに向けて、蓋体102の上面に配置したノズル板112の噴射ノズル112aからリンス液を噴射する。これにより、基板Wの処理液による処理と、リンス液によるリンス処理とを、2つの液体が混ざらないようにしながら行うことができる。
【0049】
この例では、第1前処理ユニット14aと第2前処理ユニット14bを同じ構成としている。しかし、処理液としてHSOやHClなどの無機酸や、シュウ酸、クエン酸などの有機酸、またはそれらの混合物からなる洗浄液を使用する第1前処理ユニット14aにあっては、処理液(洗浄液)の液温を15℃以下の所定の温度に調整することが必ずしも必要でない場合がある。このような場合には、第1前処理ユニット14aとして、冷却部96及び冷却装置140を省略したものを使用してもよい。
【0050】
無電解めっきユニット16を図10乃至図14に示す。この無電解めっきユニット16は、めっき槽200(図14参照)と、このめっき槽200の上方に配置されて基板Wを着脱自在に保持する基板ヘッド204を有している。
【0051】
基板ヘッド204は、図10に詳細に示すように、ハウジング部230とヘッド部232とを有し、このヘッド部232は、吸着ヘッド234と該吸着ヘッド234の周囲を囲繞する基板受け236から主に構成されている。そして、ハウジング部230の内部には、基板回転用モータ238と基板受け駆動用シリンダ240が収納され、この基板回転用モータ238の出力軸(中空軸)242の上端はロータリジョイント244に、下端はヘッド部232の吸着ヘッド234にそれぞれ連結され、基板受け駆動用シリンダ240のロッドは、ヘッド部232の基板受け236に連結されている。更に、ハウジング部230の内部には、基板受け236の上昇を機械的に規制するストッパ246が設けられている。
【0052】
ここで、吸着ヘッド234と基板受け236との間には、スプライン構造が採用され、基板受け駆動用シリンダ240の作動に伴って基板受け236は吸着ヘッド234と相対的に上下動するが、基板回転用モータ238の駆動によって出力軸242が回転すると、この出力軸242の回転に伴って、吸着ヘッド234と基板受け236が一体に回転するように構成されている。
【0053】
吸着ヘッド234の下面周縁部には、図11乃至図13に詳細に示すように、下面をシール面として基板Wを吸着保持する吸着リング250が押えリング251を介して取付けられ、この吸着リング250の下面に円周方向に連続させて設けた凹状部250aと吸着ヘッド234内を延びる真空ライン252とが吸着リング250に設けた連通孔250bを介して互いに連通するようになっている。これにより、凹状部250a内を真空引きすることで、基板Wを吸着保持するのであり、このように、小さな幅(径方向)で円周状に真空引きして基板Wを保持することで、真空による基板Wへの影響(たわみ等)を最小限に抑え、しかも吸着リング250をめっき液(処理液)中に浸すことで、基板Wの表面(下面)のみならず、エッジについても、全てめっき液に浸すことが可能となる。基板Wのリリースは、真空ライン252にNを供給して行う。
【0054】
基板受け236は、下方に開口した有底円筒状に形成され、その周壁には、基板Wを内部に挿入する基板挿入窓236aが設けられ、下端には、内方に突出する円板状の爪部254が設けられている。更に、この爪部254の上部には、基板Wの案内となるテーパ面256aを内周面に有する突起片256が備えられている。
【0055】
これにより、図11に示すように、基板受け236を下降させた状態で、基板Wを基板挿入窓236aから基板受け236の内部に挿入する。すると、この基板Wは、突起片256のテーパ面256aに案内され、位置決めされて爪部254の上面の所定位置に載置保持される。この状態で、基板受け236を上昇させ、図12に示すように、この基板受け236の爪部254上に載置保持した基板Wの上面を吸着ヘッド234の吸着リング250に当接させる。次に、真空ライン252を通して吸着リング250の凹状部250aを真空引きすることで、基板Wの上面の周縁部を該吸着リング250の下面にシールしながら基板Wを吸着保持する。そして、めっき処理を行う際には、図13に示すように、基板受け236を数mm下降させ、基板Wを爪部254から離して、吸着リング250のみで吸着保持した状態となす。これにより、基板Wの表面(下面)の周縁部が、爪部254の存在によってめっきされなくなることを防止することができる。
【0056】
図14は、めっき槽200の詳細を示す。このめっき槽200は、底部において、めっき液供給管308(図16参照)に接続され、周壁部にめっき液回収溝260が設けられている。めっき槽200の内部には、ここを上方に向かって流れるめっき液の流れを安定させる2枚の整流板262,264が配置され、更に底部には、めっき槽200の内部に導入されるめっき液の液温を測定する温度測定器266が設置されている。また、めっき槽200の周壁外周面のめっき槽200で保持しためっき液の液面よりやや上方に位置して、直径方向のやや斜め上方に向けてめっき槽200の内部に、pHが6〜7.5の中性液からなる停止液、例えば純水を噴射する噴射ノズル268が設置されている。これにより、めっき終了後、ヘッド部232で保持した基板Wをめっき液の液面よりやや上方まで引き上げて一旦停止させ、この状態で、基板Wに向けて噴射ノズル268から純水(停止液)を噴射して基板Wを直ちに冷却し、これによって、基板Wに残っためっき液によってめっきが進行してしまうことを防止することができる。
【0057】
更に、めっき槽200の上端開口部には、アイドリング時等のめっき処理の行われていない時に、めっき槽200の上端開口部を閉じて該めっき槽200からのめっき液の無駄な蒸発を防止するめっき槽カバー270が開閉自在に設置されている。
【0058】
このめっき槽200は、図14に示すように、底部において、めっき液貯槽302から延び、途中にめっき液供給ポンプ304と三方弁306とを介装しためっき液供給管308に接続されている。これにより、めっき処理中にあっては、めっき槽200の内部に、この底部からめっき液を供給し、溢れるめっき液をめっき液回収溝260からめっき液貯槽302へ回収することで、めっき液が循環できるようになっている。また、三方弁306の一つの出口ポートには、めっき液貯槽302に戻るめっき液戻り管312が接続されている。これにより、めっき待機時にあっても、めっき液を循環させることができるようになっており、これによって、めっき液循環系が構成されている。このように、めっき液循環系を介して、めっき液貯槽302内のめっき液を常時循環させることにより、単純にめっき液を貯めておく場合に比べてめっき液の濃度の低下率を減少させ、基板Wの処理可能数を増大させることができる。
【0059】
めっき槽200の底部付近に設けられた温度測定器266は、めっき槽200の内部に導入されるめっき液の液温を測定して、この測定結果を元に、下記のヒータ316及び流量計318を制御する。
つまり、この例では、別置きのヒータ316を使用して昇温させ流量計318を通過させた水を熱媒体に使用し、熱交換器320をめっき液貯槽302内のめっき液中に設置して該めっき液を間接的に加熱する加熱装置322と、めっき液貯槽302内のめっき液を循環させて攪拌する攪拌ポンプ324が備えられている。これは、めっきにあっては、めっき液を高温(約80℃程度)にして使用することがあり、これと対応するためであり、この方法によれば、インライン・ヒーティング方式に比べ、非常にデリケートなめっき液に不要物等が混入するのを防止することができる。
【0060】
図15は、めっき槽200の側方に付設されている洗浄槽202の詳細を示す。この洗浄槽202の底部には、純水等のリンス液を上方に向けて噴射する複数の噴射ノズル280がノズル板282に取付けられて配置され、このノズル板282は、ノズル上下軸284の上端に連結されている。更に、このノズル上下軸284は、ノズル位置調整用ねじ287と該ねじ287と螺合するナット288との螺合位置を変えることで上下動し、これによって、噴射ノズル280と該噴射ノズル280の上方に配置される基板Wとの距離を最適に調整できるようになっている。
【0061】
更に、洗浄槽202の周壁外周面の噴射ノズル280より上方に位置して、直径方向のやや斜め下方に向けて洗浄槽202の内部に純水等の洗浄液を噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくともめっき液に接液する部分に洗浄液を吹き付けるヘッド洗浄ノズル286が設置されている。
【0062】
この洗浄槽202にあっては、基板ヘッド204のヘッド部232で保持した基板Wを洗浄槽202内の所定の位置に配置し、噴射ノズル280から純水等の洗浄液(リンス液)を噴射して基板Wを洗浄(リンス)するのであり、この時、ヘッド洗浄ノズル286から純水等の洗浄液を同時に噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくともめっき液に接液する部分を該洗浄液で洗浄することで、めっき液に浸された部分に析出物が蓄積してしまうことを防止することができる。
【0063】
この無電解めっきユニット16にあっては、基板ヘッド204を上昇させた位置で、前述のようにして、基板ヘッド204のヘッド部232で基板Wを吸着保持し、めっき槽200のめっき液を循環させておく。
そして、めっき処理を行うときには、めっき槽200のめっき槽カバー270を開き、基板ヘッド204を回転させながら下降させ、ヘッド部232で保持した基板Wをめっき槽200内のめっき液に浸漬させる。
【0064】
そして、基板Wを所定時間めっき液中に浸漬させた後、基板ヘッド204を上昇させて、基板Wをめっき槽200内のめっき液から引き上げ、必要に応じて、前述のように、基板Wに向けて噴射ノズル268から純水(停止液)を噴射して基板Wを直ちに冷却し、更に基板ヘッド204を上昇させて基板Wをめっき槽200の上方位置まで引き上げて、基板ヘッド204の回転を停止させる。
【0065】
次に、基板ヘッド204のヘッド部232で基板Wを吸着保持したまま、基板ヘッド204を洗浄槽202の直上方位置に移動させる。そして、基板ヘッド204を回転させながら洗浄槽202内の所定の位置まで下降させ、噴射ノズル280から純水等の洗浄液(リンス液)を噴射して基板Wを洗浄(リンス)し、同時に、ヘッド洗浄ノズル286から純水等の洗浄液を噴射して、基板ヘッド204のヘッド部232の、少なくともめっき液に接液する部分を該洗浄液で洗浄する。
【0066】
この基板Wの洗浄が終了した後、基板ヘッド204の回転を停止させ、基板ヘッド204を上昇させて基板Wを洗浄槽202の上方位置まで引き上げ、更に基板ヘッド204を第2基板搬送ロボット26との受渡し位置まで移動させ、この第2基板搬送ロボット26に基板Wを受渡して次工程に搬送する。
【0067】
図17は、後処理ユニット18を示す。後処理ユニット18は、基板W上のパーティクルや不要物をロール状ブラシで強制的に取り除くようにしたユニットで、基板Wの外周部を挟み込んで基板Wを保持する複数のローラ410と、ローラ410で保持した基板Wの表面に薬液(2系統)を供給する薬液用ノズル412と、基板Wの裏面に純水(1系統)を供給する純水用ノズル(図示せず)がそれぞれ備えられている。
【0068】
これにより、基板Wをローラ410で保持し、ローラ駆動モータを駆動してローラ410を回転させて基板Wを回転させ、同時に薬液用ノズル412及び純水ノズルから基板Wの表裏面に所定の薬液を供給し、図示しない上下ロールスポンジ(ロール状ブラシ)で基板Wを上下から適度な圧力で挟み込んで洗浄する。なお、ロールスポンジを単独にて回転させることにより、洗浄効果を増大させることもできる。
【0069】
更に、後処理ユニット18は、基板Wのエッジ(外周部)に当接しながら回転するスポンジ(PFR)419が備えられ、このスポンジ419を基板Wのエッジに当てて、ここをスクラブ洗浄するようになっている。
【0070】
図18は、乾燥ユニット20を示す。この乾燥ユニット20は、先ず化学洗浄及び純水洗浄を行い、しかる後、スピンドル回転により洗浄後の基板Wを完全乾燥させるようにしたユニットで、基板Wのエッジ部を把持するクランプ機構420を備えた基板ステージ422と、このクランプ機構420の開閉を行う基板着脱用昇降プレート424を有している。この基板ステージ422は、スピンドル回転用モータ426の駆動に伴って高速回転するスピンドル428の上端に連結されている。
【0071】
更に、クランプ機構420で把持した基板Wの上面側に位置して、超音波発振器により特殊ノズルを通過する際に超音波を伝達して洗浄効果を高めた純水を供給するメガジェットノズル430と、回転可能なペンシル型洗浄スポンジ432が、旋回アーム434の自由端側に取付けられて配置されている。これにより、基板Wをクランプ機構420で把持して回転させ、旋回アーム434を旋回させながら、メガジェットノズル430から純水を洗浄スポンジ432に向けて供給しつつ、基板Wの表面に洗浄スポンジ432を擦り付けることで、基板Wの表面を洗浄する。なお、基板Wの裏面側にも、純水を供給する洗浄ノズル(図示せず)が備えられ、この洗浄ノズルから噴射される純水で基板Wの裏面も同時に洗浄される。
そして、このようにして洗浄した基板Wは、スピンドル428を高速回転させることでスピン乾燥させられる。
【0072】
また、クランプ機構420で把持した基板Wの周囲を囲繞して処理液の飛散を防止する洗浄カップ436が備えられ、この洗浄カップ436は、洗浄カップ昇降用シリンダ438の作動に伴って昇降するようになっている。
なお、この乾燥ユニット20にキャビテーションを利用したキャビジェット機能も搭載するようにしてもよい。
【0073】
次に、この基板処理装置による一連の基板処理(無電解めっき処理)について説明する。なお、この例では、図1に示すように、CoWP合金膜からなる保護膜(蓋材)9を選択的に形成して配線8を保護する場合について説明する。
【0074】
先ず、図1(c)に示す、表面に配線8を形成した基板Wを、該基板Wの表面を上向き(フェースアップ)で収納してロード・アンロード部10に搭載した基板カセットから、1枚の基板Wを第1基板搬送ロボット24で取り出して仮置台22に搬送して該仮置台22上に載置する。この仮置台16に載置された基板Wを、第2基板搬送ロボット26で第1前処理ユニット14aに搬送する。
【0075】
この第1前処理ユニット14aでは、基板Wをフェースダウンで保持して、この表面に洗浄液(処理液)による前洗浄を行う。つまり、基板Wを基板ホルダ58で保持し、しかる後、図5に示すように、処理ヘッド60を内槽100bの上端開口部を覆う位置に位置させる。そして、内槽100b内に配置したノズル板112の噴射ノズル112aから処理液タンク120内の処理液(洗浄液)を基板Wに向けて噴霧して、配線8上の酸化物等をエッチング除去して配線8の表面を活性化させ、同時に絶縁膜2の表面に残った銅等のCMP残さ等を除去する。そして、処理ヘッド60を上昇させ、内槽100bの上部を蓋体102で覆った後、蓋体102に設けたノズル板112の噴射ノズル112aから純水等のリンス液を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。次に、基板を第2基板搬送ロボット26で第2前処理ユニット14bに搬送する。
【0076】
この第2前処理ユニット14bでは、基板Wをフェースダウンで保持して、この表面に触媒付与液(処理液)による触媒付与を行う。つまり、基板Wを基板ホルダ58で保持し、しかる後、図5に示すように、処理ヘッド60を内槽100bの上端開口部を覆う位置に位置させる。そして、内槽100b内に配置したノズル板112の噴射ノズル112aから処理液タンク120内の処理液(触媒付与液)を基板Wに向けて噴霧する。これにより、配線8の表面に触媒としてのPdを付着させ、つまり配線8の表面に触媒核(シード)としてのPd核を形成して、配線8の露出表面を活性化させる。そして、処理ヘッド60を上昇させ、内槽100bの上部を蓋体102で覆った後、蓋体102に設けたノズル板112の噴射ノズル112aから純水等のリンス液を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)する。次に、基板を第2基板搬送ロボット26で無電解めっきユニット16に搬送する。
【0077】
この第1前処理ユニット14aまたは第2前処理ユニット14bでの処理液による配線8の活性化処理にあたって、処理液タンク120内の処理液(洗浄液または触媒付与液)の液温を、冷却装置140によって、15℃以下、好ましくは、15〜4℃、更に好ましくは、10〜6℃の所定の温度に調整しておく。そして、この液温を15℃以下の所定の温度に調整した処理液を基板Wに向けて噴射する。この時、基板ホルダ58を冷却部96で10℃以下に冷却し、これによって、基板ホルダ58で保持した基板Wを、15℃以下の所定の温度に冷却して、15℃以下に予め調整して供給される処理液の液温が基板に接触して上昇してしまうことを防止する。
【0078】
このように、処理液の液温を15℃以下に調整して、例えばPd等の物質の拡散速度を制御しながら触媒付与等の配線8の活性化処理を行うことで、活性化処理時に発生する配線8の腐食を最小限に抑えることができる。また、処理液の液温を15℃以下に調整して、反応が反応律速から拡散律速となるように、つまり化学反応の速度で全体の反応が決まってしまうことなく、Pd等の物質の拡散により反応が決まるように該物質の拡散速度を制御、つまり減少させることで、例えば密度差を有する配線パターンの表面に、パターン依存性を抑制しつつ活性化処理を行うことができる。
【0079】
この処理液の噴射時間は、15秒以上であることが好ましく、このように、処理液に基板の表面を15秒以上接触させることで、活性化の処理速度の低下に伴って、表面の活性化処理が不十分となることを防止することができる。ただし、例えば配線の表面に活性化処理を行う時には、この活性化処理によって配線の抵抗が処理前より5%以上、上昇しないようにすることが好ましい。
【0080】
無電解めっきユニット16は、基板Wをフェースダウンで保持した基板ヘッド204を下降させて、基板Wをめっき槽200内のめっき液に浸漬させ、これによって、無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。つまり、例えば、液温が80℃のCoWPめっき液中に、基板Wを、例えば120秒程度浸漬させて、活性化させた配線8の表面に選択的な無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。
【0081】
そして、基板Wをめっき液の液面から引き上げた後、噴射ノズル268から基板Wに向けて純水等の停止液を噴霧し、これによって、基板Wの表面のめっき液を停止液に置換させて無電解めっきを停止させる。次に、基板Wを保持した基板ヘッド204を洗浄槽202内の所定の位置に位置させ、洗浄槽202内のノズル板282の噴射ノズル280から純水を基板Wに向けて噴霧して、基板Wを洗浄(リンス)し、同時にヘッド洗浄ノズル286から純水をヘッド部232に噴霧してヘッド部232を洗浄する。これによって、配線8の表面に、CoWP合金膜からなる保護膜9(図1参照、以下同じ)を選択的に形成して配線8を保護する。
【0082】
次に、この無電解めっき処理後の基板Wを第2基板搬送ロボット26で後処理ユニット18に搬送し、ここで、基板Wの表面に形成された保護膜(金属膜)9の選択性を向上させて歩留りを高めるためのめっき後処理(後洗浄)を施す。つまり、基板Wの表面に、例えばロールスクラブ洗浄やペンシル洗浄による物理的な力を加えつつ、めっき後処理液(薬液)を基板Wの表面に供給し、これにより、絶縁膜(層間絶縁膜)2上に残っている金属微粒子等のめっき残留物を完全に除去して、めっきの選択性を向上させる。
【0083】
そして、このめっき後処理後の基板Wを第2基板搬送ロボット26で乾燥ユニット20に搬送し、ここで必要に応じてリンス処理を行い、しかる後、基板Wを高速で回転させてスピン乾燥させる。
このスピン乾燥後の基板Wを、第2基板搬送ロボット26で仮置台22の上に置き、この仮置台22の上に置かれた基板を、第1基板搬送ロボット24でロード・アンロードユニット10に搭載された基板カセットに戻す。
【0084】
上記の例では、配線材料として銅(Cu)を使用し、この銅からなる配線8の表面に、CoWP合金膜からなる保護膜9を選択的形成した例を示しているが、配線材料として、Cu合金、AgまたはAg合金を使用してもよく、また保護膜9として、CoWB、CoP、CoB、Co合金、NiWP、NiWB、NiP、NiBまたはNi合金からなる膜を使用してもよい。
【0085】
また、配線8の表面を活性化させて該表面8に保護膜(金属膜)9を選択的に形成するようにした例を示しているが、図1(a)に示す、コンタクトホール3と配線溝4を形成した基板の該コンタクトホール3と配線溝4の表面を活性化させて該表面に金属膜を形成するようにしてもよい。
【0086】
(実施例)
配線幅0.16μmでパッド間を直線状に繋ぐ長さ約3mmの銅からなる孤立配線と、配線幅0.16μm、間隔0.16μmで平行に配置され、パッド間を繋ぐ長さ約300mmの銅からなる密集配線が混在する200mmウエハを試料として用意した。これらの配線は、Taからなるバリア層及び銅シード層をスパッタリングにより順次形成し、銅を電解めっきで埋込んだ後、CMP処理を施し平坦化して形成した。
【0087】
先ず、基板を、液温が室温(22℃)の蓚酸(2wt%)に1分間浸漬させた後、純水で洗浄した。そして、0.05g/L:PdSOと0.1M:HSOの混合液からなり、液温を室温より10℃だけ低くなるように調整した触媒付与液(処理液)中に試料を30秒間浸漬させた。その後、試料を純水で洗浄し、下記の組成の昇温させためっき液中に2分間浸漬させて、配線の表面にCoWP合金からなる保護膜を形成した。しかる後、試料を純水にて洗浄し乾燥処理を行った。
【0088】
めっき液組成(mol/L)
CoSO・7HO 0.05
Na・HO 0.3
BO 0.25
NaWO・HO 0.002
NaHPO・ 0.1
pH 9.0
【0089】
一方、比較例として、実施例と同様な試料を用意し、液温が室温(22℃)の蓚酸(2wt%)に1分間浸漬させた後、純水で洗浄した。そして、0.05g/L:PdSOと0.1M:HSOの混合液からなり、液温が室温の触媒付与液(処理液)中に試料を30秒間浸漬させた。その後、試料を純水で洗浄し、前述と同様の組成の昇温させためっき液中に2分間浸漬させて、配線の表面にCoWP合金からなる保護膜を形成した。しかる後、試料を純水にて洗浄し乾燥処理を行った。
【0090】
そして、配線の電気特性を測定するために、この一連の処理の前後に、各試料の上記の配線端にあるパッドに針を当てて、一定電圧を付加した時の電流値を測定して、配線の抵抗値を算出した。この時の結果を図19に示す。この図19では、比較例における配線幅0.16μmの密集配線及び孤立配線の抵抗変化率と、実施例における配線幅0.16μmの密集配線及び孤立配線の抵抗変化率を示している。この図19から、実施例にあっては、比較例に比べて、配線幅0.16μmの密集配線及び孤立配線共に抵抗変化率が低下し、特に配線幅0.16μmの孤立配線にあっては、抵抗変化率を大きく抑制することで、孤立配線と密集配線との抵抗変化率のパターン依存性が改善されていることが判る。
【0091】
これまで本発明の一実施例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】半導体装置における銅配線形成例を工程順に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における基板処理装置の平面配置図である。
【図3】前処理ユニットの基板受渡し時における外槽を省略した正面図である。
【図4】前処理ユニットの処理液による処理時における外槽を省略した正面図である。
【図5】前処理ユニットのリンス時における外槽を省略した正面図である。
【図6】前処理ユニットの基板受渡し時における処理ヘッドを示す断面図である。
【図7】図6のA部拡大図である。
【図8】前処理ユニットの基板固定時における図7相当図である。
【図9】前処理ユニットの系統図である。
【図10】無電解めっきユニットの基板受渡し時における基板ヘッドを示す断面図である。
【図11】図10のB部拡大図である。
【図12】無電解めっきユニットの基板固定時における基板ヘッドを示す図11相当図である。
【図13】無電解めっきユニットのめっき処理時における基板ヘッドを示す図11相当図である。
【図14】無電解めっきユニットのめっき槽カバーを閉じた時のめっき槽を示す一部切断の正面図である。
【図15】無電解めっきユニットの洗浄槽を示す断面図である。
【図16】無電解めっきユニットの系統図である。
【図17】後処理ユニットを示す平面図である。
【図18】乾燥ユニットを示す縦断正面図である。
【図19】実施例及び比較例における抵抗変化率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0093】
8 配線
9 保護膜
10 ロード・アンロードユニット
12 装置フレーム
14a,14b 前処理ユニット
16 無電解めっきユニット
18 後処理ユニット
20 乾燥ユニット
58 基板ホルダ
60 処理ヘッド
96 冷却部
100 処理槽
140 冷却装置
142 熱交換器
144 冷却水チューブ
200 めっき槽
202 洗浄槽
204 基板ヘッド
230 ハウジング部
232 ヘッド部
234 吸着ヘッド
420 クランプ機構
422 基板ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液温を15℃以下に調整した処理液に基板の表面を接触させて該表面を活性化させ、
前記活性化させた基板の表面をめっき液に接触させて該表面に金属膜を形成することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記基板を15℃以下に冷却しつつ、該基板の表面を前記処理液に接触させることを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板は、配線用凹部内に配線金属を埋込んで形成した埋込み配線を有し、該埋込み配線の表面を活性化させて該表面に前記金属膜を選択的に形成することを特徴とする請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記基板は、内部に配線金属を埋込んで埋込み配線を形成する配線用凹部を有し、該配線用凹部の表面を活性化させて該表面に前記金属膜を形成することを特徴とする請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記処理液は、該処理液中に触媒金属塩が0.005g/Lから10g/Lの範囲で含有されている触媒処理液であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記触媒金属塩中の触媒金属は、Pd、Pt、Ru、Co、Ni、Au及びAgの少なくとも1種からなることを特徴とする請求項5記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記処理液のpHは、0から6の範囲で、ターゲット値±0.2に調整されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記処理液に基板の表面を15秒以上接触させて該表面を活性化させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記処理液中の溶存酸素量は、3ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項10】
基板の表面に接触させて該表面を活性化させる処理液であって、少なくとも触媒金属塩とpH調整剤を含有し、液温を15℃以下に調整したことを特徴とする処理液。
【請求項11】
前記触媒金属塩中の触媒金属は、Pd、Pt、Ru、Co、Ni、Au及びAgの少なくとも1種からなることを特徴とする請求項10記載の処理液。
【請求項12】
前記pH調整剤は、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、シュウ酸、蟻酸、酢酸、マレイン酸、リンゴ酸、アジピン酸、ピメリン酸、グルタル酸、コハク酸、フマル酸及びフタル酸から選ばれる酸、またはアンモニア水溶液、KOH、テトラメチルアンモニウムハイドライド及びテトラエチルアンモニウムハイドライドから選ばれる塩基の少なくとも一方からなることを特徴とする請求項10または11記載の処理液。
【請求項13】
前記処理液中の溶存酸素量は、3ppm以下であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の処理液。
【請求項14】
液温を15℃以下に調整した処理液を基板の表面に接触させて該表面を活性化させる前処理ユニットと、
活性化させた基板の表面にめっきを施して金属膜を形成する無電解めっきユニットと、
めっき後の基板を清浄化し乾燥させるユニットを有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項15】
前記前処理ユニットは、10℃以下の温度に冷却可能で、基板を保持して冷却する基板ホルダを有することを特徴とする請求項14記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−241580(P2006−241580A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62831(P2005−62831)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】