説明

基板処理方法及び基板処理装置

【課題】配線の表面に配線保護膜を形成した後、配線間の絶縁膜を効率よく除去し、しかも、その後、配線間に所望形状の空隙を形成しながら、基板の表面に絶縁膜を成膜できるようにする。
【解決手段】絶縁膜の内部に表面を露出させ周囲をバリア層で覆った配線を形成した基板を用意し、配線の露出表面に第1配線保護膜を選択的に形成し、第1配線保護膜を表面に形成した配線間の絶縁膜をエッチング除去し、第1配線保護膜を下地として該第1配線保護膜の表面に第2配線保護膜を選択的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法及び基板処理装置に係り、特に半導体ウエハ等の基板の表面に設けた配線用凹部に銅や銀等の導電体(配線材料)を埋込んで埋込み配線を形成し、更にこの埋込み配線の表面を配線保護膜で選択的に覆って保護し、かつ配線間の絶縁膜の内部に空隙を形成した、いわゆるエアギャップ構造を有する多層配線構造とするのに使用される基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の配線形成プロセスとして、配線溝及びコンタクトホールに金属(導電体)を埋込むようにしたプロセス(いわゆる、ダマシンプロセス)が使用されつつある。これは、絶縁膜(層間絶縁膜)に予め形成した配線溝やコンタクトホールに、アルミニウム、近年では銅や銀等の金属を埋込んだ後、余分な金属を化学機械的研磨(CMP)によって除去し平坦化するプロセス技術である。
【0003】
従来、この種の配線、例えば配線材料として銅を使用した銅配線にあっては、信頼性向上のため、絶縁膜への配線材料(銅)の熱的拡散を防止しかつエレクトロマイグレーション耐性を向上させるためのバリア膜を配線の底面及び側面に形成したり、その後、絶縁膜(酸化膜)を積層して多層配線構造の半導体装置を作る場合の酸化性雰囲気における配線材料(銅)の酸化を防止したりするため酸化防止膜を形成するなどの方法が採用されている。従来、この種のバリア膜としては、タンタル、チタンまたはタングステンなどの金属あるいはその窒化物が一般に採用されており、また酸化防止膜としては、シリコンの窒化物または炭化物などが一般に採用されていた。
【0004】
近年、ULSIの高集積化の進展に伴い、配線幅の寸法が100nm以下と微細になり、配線における信号の遅延がデバイスの動作スピードを左右するようになってきている。デバイスの性能を更に向上させるために、比誘電率の低い層間絶縁膜材料、いわゆるLow-k材の開発が盛んに行われてきている。しかし、層間絶縁膜にあまり低いk値(誘電率)の絶縁材料を使うと、強度上の問題で安定な製造プロセスが確立出来難くなる。一つの解決策として、配線間の絶縁膜を取り除いた後、上層の絶縁膜を再度堆積することによって、配線間の絶縁膜の内部に空隙を形成するようにした、いわゆるエアギャップ構造の配線およびその形成方法が提案されている(例えば、非特許文献1〜3、及び特許文献1参照)。
【0005】
次に、配線間の絶縁膜の内部にエアギャップを有する配線構造の代表的な2つの製造例を説明する。
図1(a)〜(e)及び図2は、レジストパターンニングを用いて配線間の絶縁膜の内部にエアギャップを形成する方法を示す。まず、図1(a)に示すように、絶縁膜50の内部に表面を露出させ周囲をバリア層52で覆ったダマシン構造の配線54を形成した基板Wを用意する。そして、図1(b)に示すように、配線54の表面に合金等からなる配線保護膜56を選択的に形成して配線54を保護する。
【0006】
次に、図1(c)に示すように、絶縁膜50及び配線54の表面に絶縁材料からなる拡散防止膜58を形成し、更にレジスト膜60によるパターンニングを行って、レジスト膜60の所定の位置に開口60aを形成する。そして、図1(d)に示すように、レジストパターンを用いて配線54間に位置する絶縁膜50及びその上の拡散防止膜58をエッチング除去する。しかる後、図1(e)に示すように、基板Wの全表面に配線54の上方まで達する絶縁膜(層間絶縁膜)62を成膜して、配線54間に位置する絶縁膜62の内部に空隙(エアギャップ)64を形成する。この絶縁膜62には、上層の配線が形成される。
【0007】
この方法では、合金等から配線保護膜56の上に更に絶縁材料からなる拡散防止膜58が存在するが、配線54を構成する銅等や酸素の拡散に対するバリア性が配線保護膜56で確保できれば、拡散防止膜58を省くことも考えられる。
【0008】
図3(a)乃至(d)及び図4は、レジストパターンニングを使用することなく、エッチングによって、配線間の絶縁膜の内部にエアギャップを形成する方法を示す。まず、図3(a)に示すように、絶縁膜50の内部に表面を露出させ周囲をバリア層52で覆ったダマシン構造の配線54を形成した基板Wを用意する。そして、図3(b)に示すように、配線54の表面に合金等からなる配線保護膜56を選択的に形成して配線54を保護する。
【0009】
次に、図3(c)に示すように、配線54間に位置する絶縁膜50をエッチングにより除去する。しかる後、図3(d)に示すように、基板Wの全表面に配線54の上方まで達する絶縁膜(層間絶縁膜)62を成膜して、配線54間に位置する絶縁膜62の内部に空隙64を形成する(図2(d))。
この方法では、レジストパターンを形成するステップが不要となって、プロセスがより簡便になる。
【非特許文献1】“A Novel SiO2-Air Gap low-k Copper Dual Damascene Interconnect”, V. Arnal et al. pp.71-86, Proc. Advanced Metallization Conference, 2000
【非特許文献2】“General review of issues and perspectives for advanced copper interconnections using air gap as ultra-low K material”, L.G. Gosset, et.al. pp.65-67, IITC, 2003
【非特許文献3】“Manufacturable Low Keff (Keff<2.5) Cu Interconnects by Selective/Low Damage Air Gap Formation, T. Harada, pp.15-17, IITC, 2006
【特許文献1】特開2006−120988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の2つの例では、配線54間に位置する絶縁膜62の内部により大きな空隙64を形成しながら該絶縁膜62を堆積できるようにするため、配線保護膜56の両側縁がバリア層52の側方まで張出すような方法(配線保護膜の「傘」効果)が用いられる。この配線保護膜62のバリア層52の側方への張出し寸法が大きいほど、配線保護膜の「傘」の効果が大きく、このため、配線54間の絶縁膜62の内部に形成される空隙(エアギャップ)64が大きくなる(図1(e)及び図3(d)参照)。しかし、配線54間の絶縁膜50をエッチング除去する際(図1(d)及び図3(c)参照)、配線保護膜62のバリア層52の側方への張出し寸法が大きいほど、エッチングされる絶縁膜52の量が小さくなり、後に堆積される絶縁膜62の内部に形成される空隙62は小さくなりやすい(妨害効果)。特に、直進性の強いドライエッチングの場合、配線保護膜56のバリア層52の側方への張出しにより影響が一層顕著に現れる。このため、ドライエッチングと同方性の強いウェットエッチングの併用が必要となり、プロセスのステップの増加によるコストアップに繋がる。
【0011】
逆に、配線保護膜62のバリア層52の側方への張出し寸法が小さく、例えば、配線保護膜62のバリア層52の側方へ張出しが無い極端の場合には、配線54間の絶縁膜50をエッチング除去しやすくなるが、後に絶縁膜62を堆積する際、配線保護膜の「傘」効果がないため、配線54間に堆積される絶縁膜62の内部に大きな空隙64を形成することが困難になる。仮に、初期に配線保護膜62のバリア層52の側方への張出しがあったとしても、絶縁膜50のエッチングの時に配線保護膜56もある程度エッチングされ、配線保護膜の「傘」効果が薄まってしまう。そこで、後に絶縁膜62を堆積するには、カバレージ率が低く且つ埋込み性能が悪い材料及び堆積条件に絞らざるを得ず、絶縁膜材質及び成膜プロセス条件の選択にかなりの制限を受けることになる。
【0012】
以上のように、配線保護膜のバリア膜の側方への張出し寸法は、配線間の絶縁膜の内部に形成される空隙の大きさを支配する主要な因子であり、絶縁膜をエッチングする時の妨害と、後に絶縁膜を堆積させる時の「傘」効果の両面から、相反する性質を持っている。
配線保護膜は、エアギャップ形成時に配線をエッチングから保護する保護効果及び「傘」効果と同時に、配線の信頼性に大きく左右するエレクトロマイグレーションの向上に大きく寄与する。
【0013】
また、従来の方法では、絶縁膜の内部にエアギャップ形成するために、まず、無電解めっき装置を用いて配線の表面に配線保護膜を形成し、後洗浄及びリンス処理を施して乾燥させた後に、基板を装置から取り出している。その後、絶縁膜の内部にエアギャップを形成するために絶縁膜のエッチング除去が必要となった場合には、他の装置で絶縁膜のエッチングを行い、再び基板を洗浄し乾燥させるようにしている。このため、設備の増設に繋がるばかりでなく、スループットが低下するという問題がある。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、配線保護膜のバリア膜の側方への張出し寸法の配線間に位置する絶縁膜の内部に形成される空隙の大きさに対する相反する効果を解消するために、配線の表面に配線保護膜を選択的に形成した後、配線間の絶縁膜を効率よく除去し、しかも、その後、基板の表面に上層の絶縁膜を成膜しながら、配線間の絶縁膜の内部に所望形状の空隙を形成できるようにした基板処理方法、及び配線の表面への配線保護膜の形成から配線間の絶縁膜のエッチング除去までの一連の処理を効率よく行うことができるようにした基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、絶縁膜の内部に表面を露出させ周囲をバリア層で覆った配線を形成した基板を用意し、前記配線の露出表面に第1配線保護膜を選択的に形成し、前記第1配線保護膜を表面に形成した配線間の絶縁膜をエッチング除去し、前記第1配線保護膜を下地として該第1配線保護膜の表面に第2配線保護膜を選択的に形成することを特徴とする基板処理方法である。
【0016】
これにより、第1配線保護膜をその両側縁部がバリア層の側方に張出さないか、または僅かに張出すように形成することで、その後、配線間の絶縁膜のエッチング除去を効率的に行い、しかも両側縁部がバリア層の側方に更に張出すように第1配線保護膜の表面に第2配線保護膜を形成することで、その後、配線間に所望形状の空隙を形成しながら、基板の表面に絶縁膜を容易に成膜することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記第1配線保護膜の幅は、両側に位置する前記バリア層を含む前記配線の幅とほぼ等しく、前記第2配線保護膜の幅は、両側に位置する前記バリア層を含む前記配線の幅より大きいことを特徴とする請求項1記載の基板処理方法である。
請求項3に記載の発明は、前記第2配線保護膜を形成した基板の表面に、配線間に空隙を形成しながら、絶縁膜を成膜することを特徴とする請求項1または2記載の基板処理方法である。
配線間に位置する絶縁膜の内部に大きな空隙を形成することで、配線間の誘電率を大幅に低減させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記第1配線保護膜と前記第2配線保護膜は、共に無電解めっきで形成される、同じ材質の合金膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理方法である。
第1配線保護膜と第2配線保護膜の組成は、必ずしも同じ材質である必要はないが、共に無電解めっきで形成される同じ材質の合金膜にすることで、第1配線保護膜及び第2配線保護膜の製作の便を図ることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記第1配線保護膜と前記第2配線保護膜は、共に無電解めっきで形成され、前記第1配線保護膜と前記第2配線保護膜の少なくとも一方はコバルト合金膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理方法である。
このように、第1配線保護膜と第2配線保護膜の少なくとも一方にコバルト合金を使用することで、例えば配線に銅を使用した場合における銅の拡散に対する優れたバリア性および保護材としてのエッチング耐性が同時に得られる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記絶縁膜のエッチング除去を、反応性ガスを使用するドライエッチング及び薬液を使用するウェットエッチングの少なくとも一方で行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法である。
【0021】
請求項7に記載の発明は、絶縁膜の内部に表面を露出させ周囲をバリア層で覆った配線の露出表面に第1配線保護膜を選択的に形成する第1成膜ユニットと、前記配線間の絶縁膜をエッチング除去するエッチングユニットと、前記エッチングユニットで絶縁膜をエッチング除去した後に、前記第1配線保護膜の表面に第2配線保護膜を選択的に形成する第2成膜ユニットを有することを特徴とする基板処理装置である。
これにより、第1成膜ユニットで配線の露出表面に第1配線保護膜を選択的に形成した後、基板を装置から取り出すことなく、配線間の絶縁膜をエッチングユニットでエッチング除去し、しかる後、第1配線保護膜の表面に第2成膜ユニットで第2配線保護膜を選択的に形成することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、前記第1及び第2成膜ユニットは共に無電解めっきユニットで、めっき前処理を行う前処理ユニット、基板の後洗浄を行う後洗浄ユニット、及び基板を乾燥させる乾燥ユニットを更に有することを特徴とする請求項7記載の基板処理装置である。
このように第1及び第2成膜ユニットを共に無電解めっきユニットとすることで、1台の無電解めっきユニットで第1及び第2成膜ユニットを兼用させることができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、前記エッチングユニットは、反応性ガスを使用するドライエッチングユニットまたは薬液を使用するウェットエッチングユニットであることを特徴とする請求項7または8記載の基板処理装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の基板処理方法によれば、配線の表面に第1配線保護膜を形成した後、第1配線保護膜に阻害されることなく、配線間の絶縁膜を効率よくエッチング除去することができる。そして、第1配線保護膜の表面に第2保護膜を形成した後、基板の表面に絶縁膜を成膜すると共に、配線間に位置する絶縁膜の内部に所望形状及び大きさの空隙を容易に形成することができる。
【0025】
本発明の基板処理装置によれば、成膜ユニットで配線の露出表面に配線保護膜を選択的に形成した後、基板を装置から取り出すことなく、配線間の絶縁膜をエッチングユニットでエッチング除去することができ、これによって、設備の増設を最小限に抑えるとともに、スループットを大幅に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の例では、配線保護膜を成膜する成膜ユニットとして、無電解めっきユニットを使用している。無電解めっきユニットの代わりに、PVDユニットやCVDユニット等の他の成膜ユニットを使用しても良い。また第1配線保護膜及び第2配線保護膜を共にCoWP合金で構成しているが、CoWP,CoP,CoWB,CoB,CoWPB,NiWP,NiP,NiWB,NiB,NiWPB,CoNiPまたはNiMoP等の他の合金で構成しても良い。
【0027】
図5は、本発明の実施の形態の基板処理装置を示す平面配置図である。図5に示すように、この配線形成装置は、矩形状の装置フレーム20と、装置フレーム20に外付けされるロード・アンロードユニット22を有し、装置フレーム20の外壁には、制御ユニット24が取付けられている。装置フレーム20の内部は、仕切り板26を介して、第1空間28と第2空間30に区画され、この第1空間30の四隅に、基板のめっき前処理を行う第1前処理ユニット32及び第2前処理ユニット34、基板の表面に無電解めっきを行う無電解めっきユニット(成膜ユニット)36、及び配線間の絶縁膜をエッチング除去するエッチングユニット38が配置されている。
【0028】
この例では、1台の無電解めっきユニット36を備え、この無電解めっきユニット36が第1無電解めっきユニット及び第2無電解めっきユニットとしての役割を兼用するようにしているが、第1無電解めっきユニット及び第2無電解めっきユニットとして2台の無電解めっきユニットを備えるようにしてもよい。
【0029】
また、この例では、第1前処理ユニット32で基板表面の前洗浄を行い、第2前処理ユニット34で配線の表面にPd等の触媒を付与する触媒付与処理を行うようにしている。配線保護膜(第1配線保護膜及び第2配線保護膜)として、配線の表面に触媒付与処理を行うことなく無電解めっきで成膜できる合金を使用した場合には、第2前処理ユニット34を省略しても良い。また、第1前処理ユニット32と第2前処理ユニット34で異なる洗浄液を使用した2段の前洗浄を行うようにしても良い。
【0030】
装置フレーム20の内部には、第2空間30内に位置して、基板の後洗浄を行う後洗浄ユニット40と、基板を純水等でリンスして乾燥させる乾燥ユニット42が配置されている。更に、第2空間30内の後洗浄ユニット40と乾燥ユニット42に挟まれた位置に第1基板搬送ロボット44が、第1空間28内の第1前処理ユニット32、第2前処理ユニット34、無電解めっきユニット36及びエッチングユニット38に囲まれた位置に第2基板搬送ロボット46がそれぞれ配置されている。
【0031】
この例では、エッチングユニット38として、薬液を使用してウエットエッチングを行うウェットエッチングユニットを使用しているが、反応性ガスを使用してドライエッチングを行うドライエッチングユニットを使用しても良い。またウェットエッチングユニットとドライエッチングユニットを併用しても良い。
【0032】
次に、この基板処理装置による一連の基板処理について、図6及び図7(a)〜(d)を参照して説明する。
先ず、図7(a)に示すように、絶縁膜2の内部に表面を露出させ周囲をバリア層6で覆った配線8を形成した基板Wを用意する。なお、図7(a)は、下記のように、めっき前処理後の基板Wを示している。この基板Wの表面を上向き(フェースアップ)で収納した基板カセットをロード・アンロードユニット22に搭載する。第1基板搬送ロボット44は、基板カセットから1枚の基板Wを取り出し、第1前処理ユニット32に搬送する。
【0033】
第1前処理ユニット32では、例えば、基板Wをフェースダウンで保持し、基板Wを回転させながら、基板の下方に配置した多数のスプレーノズルからの有機酸液、または有機アルカリ等の洗浄液を基板Wに向けて噴射し、これによって、基板Wの表面に付着した、例えばBTA(ベンゾトリアゾール)などの防食剤や配線8の表面に形成された銅酸化膜等を基板Wの表面から除去(前洗浄)する。そして、基板Wに向けてスプレーノズルから純水等のリンス液を噴射して基板Wをリンス(洗浄)し、洗浄後の基板Wを第2前処理ユニット34に搬送する。
【0034】
なお、この例では、第1前処理ユニット32として、基板に向けてスプレーノズルから処理液を噴射する、いわゆるスプレータイプを使用しているが、基板を処理液中に浸漬させる、いわゆる浸漬タイプを使用してもよい。これは、第2前処理ユニット34においても同様である。
【0035】
第2前処理ユニット34では、例えば、基板Wをフェースダウンで保持し、基板Wを回転させながら、基板の下方に配置した多数のスプレーノズルからのPd触媒付与液等の触媒付与液を基板Wに向けて噴射し、これによって、配線8の表面にPd等の触媒を付与して該表面を活性化させる。そして、基板Wに向けてスプレーノズルから純水等のリンス液を噴射して基板Wをリンス(洗浄)する。この時の状態を図7(a)に示す。そして、触媒を付与した基板Wを無電解めっきユニット36に搬送する。
【0036】
無電解めっきユニット(第1無電解めっきユニット)36では、例えば、基板Wをフェースダウンで保持し、基板Wをめっき槽内の、例えば液温が80℃の無電解めっき液(無電解CoWPめっき液)中に浸漬させて、活性化された配線8の表面に選択的な無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。これにより、図7(b)に示すように、配線8の表面に、CoWP合金からなる第1配線保護膜10を選択的に成膜して配線8を保護する。この第1配線保護膜10の幅Wは、配線8の幅Aよりも大きく、配線8の幅Aと配線8の両側に位置するバリア層6の幅(厚さ)tの合計より小さい(A≦W≦A+2t)ことが好ましい。この第1配線保護膜10の膜厚は、例えば3〜50nm程度である。これにより、配線8の露出表面の全域を第1配線保護膜10で覆い、しかもこの第1配線保護膜10の側縁部がバリア層6の側方に張出すことを防止することができる。
【0037】
そして、所定時間経過後、基板Wをめっき液の液面から引き上げ、基板Wに向けて純水等のめっき停止液を噴出し、これによって、基板Wの表面のめっき液を停止液に置換させて無電解めっきを停止させる。次に、例えば500rpm程度の比較的高速で基板Wを回転させて基板Wの液切りを行う。この第1配線保護膜10を形成した基板Wをエッチングユニット38に搬送する。
【0038】
エッチングユニット38では、例えば、基板Wをフェースダウンで保持し、基板Wを処理槽内のエッチング液中に浸漬させ、これによって、図7(c)に示すように、配線8間の絶縁膜2をエッチング除去する。このエッチング液としては、例えば第1配線保護膜10と絶縁膜2のエッチング選択比が1:20以上のHFを含む水溶液が使用される。そして、基板Wを純水等でリンス(洗浄)した後、後洗浄ユニット40に搬送する。
【0039】
このように、第1配線保護膜10をその両側縁部がバリア層6の側方に張出さないように形成することで、その後に、第1配線保護膜10の存在に阻害されることなく、配線8間の絶縁膜2をエッチングユニット38で効率的にエッチング除去することができる。第1配線保護膜10を、その両側縁部がバリア層6の側方に、下記のエッチングによって除去される程度の僅かに張出すように形成してもよい。
【0040】
なお、無電解めっきユニット36とエッチングユニット38に共通の基板ホルダを使用し、この基板ホルダで基板をフェースダウンで保持したまま、無電解めっきユニット36による無電解処理と、エッチングユニット38によるエッチング処理を連続して行うようにしてもよい。また、エッチングユニット38として、基板の向けてスプレーノズルからエッチング液を噴射するスプレータイプのものを使用しても良い。
【0041】
後洗浄ユニット40では、例えば基板Wの表面向けて洗浄液(処理液)をスプレーノズルから供給し、これにより、基板Wの表面および配線間の溝に残っている、絶縁膜残渣等の残留物を完全に除去して、めっきの選択性を向上させる。この処理液としては、例えば、第1配線保護膜10に対するエッチングレートが1〜10nm/minの範囲で調合されたエッチング力を持つ有機酸溶液が使用される。これにより、第1配線保護膜10上に残留する合金成分や不純物等を効率よく除去して、第1配線保護膜10の選択性を一層増強させることができる。そして、この処理後の基板Wを純水等でリンス(洗浄)して、再度無電解めっきユニット(第2無電解めっきユニット)36に搬送する。
【0042】
無電解めっきユニット36では、前述と同様に、例えば基板Wをフェースダウンで保持し、基板Wをめっき槽内の、例えば液温が80℃の無電解めっき液(無電解CoWPめっき液)中に浸漬させて、第1配線保護膜10を下地とした無電解めっき(無電解CoWP蓋めっき)を施す。これにより、図7(d)に示すように、第1配線保護膜10の表面に、CoWP合金からなる第2配線保護膜12を選択的に成膜する。この第2配線保護膜12の幅Wを、配線8の幅Aと配線8の両側に位置するバリア層6の幅(厚さ)tの合計より大きく(A+2t<W)し、これによって、第2配線保護膜12の両側縁部にバリア層6の側方に張出す張出し部12aを形成する。この張出し部12aのバリア層6の側方への張出し幅Wは、配線8間に位置する絶縁膜2の幅B(図7(a)参照)の、例えば1/20〜1/4程度であり、第2配線保護膜12の膜厚は、例えば3〜50nm程度である。
【0043】
そして、所定時間経過後、基板Wをめっき液の液面から引き上げ、基板Wに向けて純水等のめっき停止液を噴出して、基板Wの表面のめっき液を停止液に置換させて無電解めっきを停止させ、しかる後、例えば500rpm程度の比較的高速で基板Wを回転させて基板Wの液切りを行う。この第2配線保護膜12を形成した基板Wを後洗浄ユニット40に搬送する。
【0044】
後洗浄ユニット40では、前述と同様に、例えば基板Wの表面にスプレーノズルから基板表面に洗浄液(処理液)を供給し、これにより、基板Wの表面に残っている金属微粒子、めっき液等のめっき残留物を完全に除去して、めっきの選択性を向上させる。そして、基板Wを純水等でリンス(洗浄)して、乾燥ユニット42に搬送する。
乾燥ユニット42では、必要に応じて、基板の表面を純水等でリンス(洗浄)した後、基板Wを高速で回転させてスピン乾燥させ、このスピン乾燥後の基板Wを、第1基板搬送ロボット44でロード・アンロードユニット22に搭載された基板カセットに戻す。
【0045】
そして、前述のようにして第2配線保護膜12を形成した乾燥させた基板Wを、例えば、プラズマCVD装置に搬送し、このプラズマCVD装置で、図8に示すように、基板Wの全表面に、配線8の上方に達する、例えばSiO,SiOFまたはSiOC等からなる絶縁膜(層間絶縁膜)14を成膜する。この成膜時に、配線8間に位置する下層の絶縁膜14aの内部に空隙(エアギャップ)16が形成されるようにして配線8間の誘電率を大幅に低減させ、上層の絶縁膜14bを上層の配線を形成する領域として利用する。
【0046】
この絶縁膜14の成膜時に第2配線保護膜12の張出し部12aを「傘」として利用するのであり、これにより、配線8間に位置する下層の絶縁膜14aの内部に所望形状の空隙16を容易に形成することができる。しかも、第2配線保護膜12の張出し部12aの張出し幅Wまたは成膜条件を調整することにより、下層の絶縁膜14aに対して空隙16が占める容積率を調整できる。この下層の絶縁膜14aに対して空隙16が占める容積率は、例えば10〜80%であり、構造の強度および誘電率のバランスを考えると、30〜70%であることが望ましい。
【0047】
なお、上記の例では、第1無電解めっきユニット及び第2無電解めっきユニットとしての役割を兼用する1台の無電解めっきユニット36を使用し、この無電解めっきユニット36で共にCoWP合金からなる第1配線保護膜10及び第2配線保護膜12を成膜するしているが、第1無電解めっきユニットと第2無電解めっきユニットの2台の無電解めっきユニットを備え、第1配線保護膜10とは異なる合金で第2配線保護膜12を形成するようにしてもよい。
【0048】
これまで本発明の一実施例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】配線間の絶縁膜の内部にエアギャップを形成する従来例を工程順に示す断面図である。
【図2】図1に対応するフローチャートである。
【図3】配線間の絶縁膜の内部にエアギャップを形成する他の従来例を工程順に示す断面図である。
【図4】図3に対応するフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態の基板処理装置を示す平面配置図である。
【図6】図5に示す基板処理装置の基板処理例を示すフローチャートである。
【図7】図5に示す基板処理装置の基板処理例を工程順に示す断面図である。
【図8】第2配線保護膜を形成した基板の表面に絶縁膜を成膜した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
2 絶縁膜
6 バリア層
8 配線
10 第1配線保護膜
12 第2配線保護膜
12a 張出し部
14 絶縁膜
16 空隙
20 装置フレーム
22 ロード・アンロードユニット
24 制御ユニット
32,34 前処理ユニット
36 無電解めっきユニット
38 エッチングユニット
40 後洗浄ユニット
42 乾燥ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜の内部に表面を露出させ周囲をバリア層で覆った配線を形成した基板を用意し、
前記配線の露出表面に第1配線保護膜を選択的に形成し、
前記第1配線保護膜を表面に形成した配線間の絶縁膜をエッチング除去し、
前記第1配線保護膜を下地として該第1配線保護膜の表面に第2配線保護膜を選択的に形成することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記第1配線保護膜の幅は、両側に位置する前記バリア層を含む前記配線の幅とほぼ等しく、前記第2配線保護膜の幅は、両側に位置する前記バリア層を含む前記配線の幅より大きいことを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第2配線保護膜を形成した基板の表面に、配線間に空隙を形成しながら、絶縁膜を成膜することを特徴とする請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第1配線保護膜と前記第2配線保護膜は、共に無電解めっきで形成される、同じ材質の合金膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1配線保護膜と前記第2配線保護膜は、共に無電解めっきで形成され、前記第1配線保護膜と前記第2配線保護膜の少なくとも一方はコバルト合金膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記絶縁膜のエッチング除去を、反応性ガスを使用するドライエッチング及び薬液を使用するウェットエッチングの少なくとも一方で行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項7】
絶縁膜の内部に表面を露出させ周囲をバリア層で覆った配線の露出表面に第1配線保護膜を選択的に形成する第1成膜ユニットと、
前記配線間の絶縁膜をエッチング除去するエッチングユニットと、
前記エッチングユニットで絶縁膜をエッチング除去した後に、前記第1配線保護膜の表面に第2配線保護膜を選択的に形成する第2成膜ユニットを有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
前記第1及び第2成膜ユニットは共に無電解めっきユニットで、
めっき前処理を行う前処理ユニット、基板の後洗浄を行う後洗浄ユニット、及び基板を乾燥させる乾燥ユニットを更に有することを特徴とする請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記エッチングユニットは、反応性ガスを使用するドライエッチングユニットまたは薬液を使用するウェットエッチングユニットであることを特徴とする請求項7または8記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−28378(P2008−28378A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154227(P2007−154227)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】