説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】粘度の変化しやすい低粘度の薬液でも安定した膜厚の膜を形成する。
【解決手段】レジスト液供給部2は基板12にレジスト液を供給する。その供給経路中において、粘度測定部5は当該レジスト液の粘度を測定する。粘度の測定は、レジスト液の供給に伴って前記経路中を移動する浮子が、一定区間を移動する時間を計測することにより行う。その結果を受け取った制御部8は、所定の膜厚の膜を形成するために必要な基板処理回転数と、粘度評価値との関係が格納されているテーブル31を参照して、適切な基板処理回転数を特定し、モータ7の回転数を前記回転数に一致させる。以上により、レジスト液の粘度が変化しても、形成される膜の膜厚を一定に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に薬液を供給し、当該基板を回転させることによって膜を当該基板上に形成する基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路等の製作に用いられる半導体基板の口径は、増大傾向にある。同時に、基板上のパターンの集積度に対する要求も高まっている。したがって、半導体基板のフォトリソグラフィー工程においては、大口径の基板に対して、レジスト膜を薄く均一に形成することが求められている。たとえば、1〜2μm程度あるいはそれ以下の膜厚に、レジスト膜を形成することが求められている。
【0003】
このように大口径の基板に薄く均一にレジスト膜を形成するためには、使用するレジスト液は、粘度が低いものが望ましい。なぜなら、粘度が高いレジスト液においては、その粘度によって基板上においてレジスト液が盛り上がり、基板全体に薄く広げることが難しいからである。低粘度の薬液によりレジスト膜を形成させる基板処理装置の例としては、たとえば、図6に示す特許文献1に記載の装置が挙げられる。この装置は、薬液粘度の計測部と、薬液粘度を調整するための溶剤の供給機構とを備えており、得られる膜厚の制御を向上させることができる。
【特許文献1】特開平10−340839号公報(1998年12月22日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低粘度のレジスト液を使用する場合、形成されるレジスト膜の膜厚が、日によって一定しないという問題が生じる。
【0005】
これは、供給レジスト液の粘度が変動することが原因である。一般にレジスト液には揮発性の溶剤成分が含まれている。この溶剤成分が揮発することにより、粘度が変化しているのである。特に低粘度のレジスト液においては、溶剤成分が多く含まれているため、粘度の変動も大きい。
【0006】
これは、半導体基板へレジスト膜を形成する装置に限らず、基板上に薬液を塗布して所要の膜を形成する装置一般においても問題となる。
【0007】
また前記特許文献1に記載の装置においては、必要な部品が増えるため、処理装置システム全体の構成が大きくなるという問題がある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、薬液粘度の変動の影響を防止しつつ、均一な所定の厚さの膜を形成できる基板処理装置および基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板処理装置は、上記の課題を解決するために、基板上に薬液を供給し、当該基板を回転させることによって膜を上記基板上に形成する基板処理装置において、上記薬液を上記基板上へ供給する薬液供給手段と、上記薬液の粘度を、上記薬液を供給する経路中において測定する薬液粘度測定手段と、上記薬液の粘度に応じて上記基板の回転数を調整する回転数調整手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、薬液粘度測定手段は、上記薬液を供給する経路中において、薬液供給手段から供給される薬液の粘度を測定する。そして、回転数調整手段は、前記薬液の粘度に応じて、所要の膜厚を得るために最適な回転数へと、前記基板の処理回転数を調整する。図4(b)に示すように、薬液の粘度の変化による、形成される膜厚の変化は、基板の処理回転数により補償できる。そのため、上記の構成によって、薬液粘度の変動の影響を防止できる。
【0011】
薬液粘度の変動の影響を防止できれば、粘度が変動しやすい低粘度の薬液でも、安定した膜厚の膜を形成できる。低粘度の薬液であれば、薬液の粘度による基板上の盛り上がりを防ぎ、均一で薄い膜を形成できる。したがって、上記の構成によれば、薬液粘度の変動の影響を防止しつつ、均一な所定の厚さの膜を形成できるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明にかかる基板処理方法は、上記の課題を解決するために、基板上に薬液を供給し、当該基板を回転させることによって膜を上記基板上に形成する基板処理方法において、上記薬液を上記基板上へ供給する薬液供給ステップと、上記薬液の粘度を、上記薬液を供給する経路中において測定する薬液粘度測定ステップと、上記薬液の粘度に応じて上記基板の回転数を調整する回転数調整ステップを含んでいることを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、本発明に係る基板処理装置と同様の作用効果を奏する。
【0014】
本発明に係る基板処理装置は、さらに、上記薬液粘度測定手段は、上記薬液を供給する経路内を移動する部材が、当該経路内の一定区間を通過する時間に基づいて、上記薬液の粘度を測定することが好ましい。
【0015】
上記薬液の経路内の部材が当該経路内の一定区間を通過する時間は、当該部材の移動速度に依存する。また、当該部材の移動速度は、当該薬液の粘度に依存する。したがって上記薬液の経路内の部材が当該経路内の一定区間を通過する時間に基づいて、当該薬液の粘度を測定できる。
【0016】
上記の構成によれば、実際に上記基板へ供給される薬液の粘度が測定されるため、粘度の測定結果の信頼性が高い。同時に、当該薬液の粘度の測定のために一部の薬液を取り出す必要がないため、薬液の無駄を省けるというさらなる効果を奏する。
【0017】
本発明に係る基板処理装置は、さらに、上記部材は、上記薬液の供給に伴い上記経路中を移動するように、有効重量と、有効面積とが定められている浮子であることが好ましい。
【0018】
なお、有効重量とは当該浮子の重量から、当該浮子の当該薬液中における浮力を引いたものである。また、有効面積とは当該浮子の水平方向の断面積の最大値である。
【0019】
上記の構成によれば、当該浮子は、上記薬液の供給時に、流体から受ける圧力によって上方へ移動する。また、上記薬液の供給停止時に、重力によって下方に移動する。したがって、上記部材を上記薬液の経路内で移動させることが、容易にできるというさらなる効果を奏する。
【0020】
本発明に係る基板処理装置は、さらに、上記薬液粘度測定手段は、上記一定区間の両端上に配置され、上記経路内を移動する上記部材を検知する2組のセンサからの出力信号に基づき、上記薬液の粘度を測定することが好ましい。
【0021】
なお、用いることができるセンサとしては、透過型、反射型、静電容量検知型、渦電流型のセンサが挙げられる。渦電流型のセンサを用いるときには、上記部材の材質には金属が含まれていることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、センサからの出力信号により、自動的に、上記部材の上記一定区間の通過時間を計測できるという効果を奏する。薬液の着色度に応じて、センサは透過型、反射型、静電容量検知型、渦電流型を適宜選択できる。渦電流型のセンサを用いるときには、上記部材の材質には金属が含まれていることが好ましい。渦電流型のセンサは、金属が発する渦電流を検知するからである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る基板処理装置は、以上のように、上記薬液の粘度を、上記薬液を供給する経路中において測定する薬液粘度測定手段と、上記薬液の粘度に応じて上記基板の回転数を調整する回転数調整手段とを備えているので、供給される薬液の粘度が変動しても、所要の膜厚の膜を基板上に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の一形態について図1ないし図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0025】
(基板処理装置1の要部機能)
図1は、本実施形態に係る基板処理装置1の要部機能を示すブロック図である。同図に示すように、この基板処理装置1は、レジスト液供給部2(薬液供給手段)、粘度測定部5(粘度測定手段)、ノズル6、モータ7、制御部8(回転数制御手段)を備えている。
【0026】
モータ7は、基板12を回転させる。
【0027】
レジスト液供給部2は、ポンプ3と、薬液ボトル4とを備え、薬液供給手段として働く。薬液ボトル4は、レジスト液を貯蔵している。ポンプ3は、薬液ボトル4中のレジスト液を汲み上げて圧力をかけて基板12へと供給する。具体的には、レジスト液は、粘度測定部5を経て、ノズル6から基板12へと供給される。
【0028】
粘度測定部5は粘度測定手段として働く。後述するように、粘度測定部5は、粘度測定部5内の部材が一定区間を移動するのにかかる時間を計測する。そしてその計測値を、粘度評価値として制御部8へと送信する。
【0029】
制御部8は、CPU9と、メモリ10とを備え、回転数調整手段として働く。メモリ10はテーブル31を記憶している。テーブル31は、図4(a)に示すように、あらかじめ想定される粘度の種々の値と、所要の膜厚を得るために必要な基板12の処理回転数との対応関係を、数値テーブルの形式に表したものである。粘度は、粘度評価値として、時間によって表されている。これは粘度測定部5から送信される測定結果に対応する。制御部8は、粘度測定部5から送信される測定結果に応じて、テーブル31を参照することによって、所要の膜厚を得るために必要な、基板12の処理回転数を特定する。そして特定された処理回転数に一致するように、モータ7の回転数を制御する。
【0030】
なお、上述の説明では、粘度評価値の形式が時間の場合について説明したが、これに限るものではない。粘度評価値の形式は粘度そのものであってもよい。粘度測定部5内の部材が一定区間を移動するのにかかる時間から粘度を算出する処理をCPU9において行えば、本実施形態と略同様の効果が得られる。
【0031】
ただし、本実施形態のように、粘度評価値の形式が時間の場合は、粘度を算出する処理が不要なので、処理が簡易となる。
【0032】
また、粘度測定部5からノズル6先端部までの配管内容積をあらかじめ求めておくことにより、レジスト液の粘度の測定結果を用いたフィードフォワード制御を、さらに厳密に行うことが可能となる。すなわち、粘度を測定したレジスト液が基板12上に供給される厳密なタイミングを計算して、基板12の処理回転数を制御できる。
【0033】
(基板処理装置1の概略構成)
図2は、本実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す断面図である。同図を用いて、基板処理装置1の概略構成を以下に説明する。
【0034】
スピンチャック13は、基板12を略水平において真空吸着して保持している。モータ7は、回転軸14、スピンチャック13を介して、基板12を水平面内において回転させる。
【0035】
塗布液回収カップ15は、基板12とスピンチャック13とを収容する。塗布液回収カップ15は、余剰のレジスト液の周辺への飛散を防止し、その余剰のレジスト液を捕集して所定の塗布液回収経路へと導くものであり、樹脂または金属によってできている。その底部には、廃液および廃棄のためのドレイン孔16が設けられている。
【0036】
チャンバ17は、塗布液回収カップ15の全体を完全に包囲しており、給気口25と排気口27とを備える。給気口25は、基板12の上方に形成されており、給気管路24を介して給気装置20と連結している。給気装置20は給気ファン21、給気量調節用ダンパ22、微粒子等の除去を目的とするフィルター23を備えている。そしてこの給気装置20から給気管路24および給気口25を通じて、クリーンルームと同じ一定の温湿度に調整された清浄空気がチャンバ17内へと供給される。一方、排気口27はチャンバ17の底部付近に形成されている。排気口27には排気管路30が連結されており、前記給気口25からチャンバ17内へ供給された空気はここから排出される。排気管路30中には排気量調節用ダンパ29が設けられている。排気ダンパ調整用モータ28によって、排気の流路方向に対する排気量調節用ダンパ29の開度を変化させることにより、排気管路30からの排気量を調節できる。これにより、前記給気口25からチャンバ17への給気量を一定とした場合にも、チャンバ17内の気圧を調節できる。
【0037】
その他、チャンバ17には、基板12の搬出入のための窓19が形成されている。この窓19は基板12の搬出入時以外は、蓋18により密閉されている。静圧センサ26はチャンバ17内の雰囲気圧を検知するために用いられる。基板12の上方には、レジスト液を基板12の上面に供給するためのノズル6が配置されている。
【0038】
(粘度測定部5の詳細な説明)
図3は、粘度測定部5の周辺の側面図である。以下、同図を参照して粘度測定部5を詳細に説明する。
【0039】
粘度測定部5は、浮遊式流量計と兼用する形で構成されている。すなわち、一般的な浮遊式流量計にセンサを付加した構成であり、センサ32、33と、浮子36と、管37とからなる。
【0040】
管37、アーム下部35、ノズルアーム34、ノズル6はそれぞれ中空である。薬液供給手段2によりアーム下部35から供給されるレジスト液は、粘度測定部5、ノズルアーム34を通って、ノズル6から基板12へと供給される。
【0041】
浮子36は、浮遊式流量計に用いられる浮子であり、管37に封入されている。管37は鉛直方向に設置されている。レジスト液は管37の下方から供給される。レジスト液が供給されると、浮子36は、流体の圧力により、管37の上部へ移動する。レジスト液の供給が停止すると、浮子36は、重力により管37の下部へと移動する。
【0042】
センサ32、33は、浮子36の通過を検知するセンサである。これらは管37の側部に一定区間を離して設置されている。浮子36が上部に設置されたセンサ32の前を通過した時点において時間計測タイマーを動作させ、下部に設置されたセンサ33の前を通過した時点において時間計測タイマーを停止する。これによって浮子36が一定区間を通過する時間を計測し、制御部8に送信する。あるいは、それぞれのセンサの前を通過したという信号をそのまま制御部8に送信して、制御部8内において通過にかかった時間を算出しても良い。
【0043】
このとき使用するセンサ32、33は透過型センサ、反射型センサ、静電容量検知型センサを用いることが可能であり、レジスト液の着色度に応じて適宜選択すればよく、また、センサ32、33が同じ形式のセンサでなくとも良い。また検知対象とした浮子の材質が金属を含むものであれば、渦電流型センサも使用可能である。
【0044】
なお、上述の説明では、粘度測定部5を浮遊式流量計と兼用する場合について説明したが、これに限るものではない。他の形式の流量計と兼用してもよいし、あるいはまったく兼用しなくとよい。その場合、浮子36は、一般的な浮遊式流量計に用いられる浮子状の部材か、それ以外の部材で、レジスト液の供給に伴って管37内を移動するように、有効重量と、有効面積とが、設定してあればよい。
【0045】
これを詳しく述べると、まず、上記薬液が上記経路中に供給されると、当該経路中に存在する浮子36には、運動流体の圧力によって、式1に示されるような差圧がかかる。
【0046】
Q=αA√(2ΔP/ρ) ・・・ 式1
ただし、Qは上記レジスト液の流量、αは流出係数、Aは、浮子36と管37の間に作られた流体の通過可能な部分の面積、ρは流体の密度、ΔPは差圧である。
【0047】
ここで、浮子36の有効重量と、有効面積とを、式2に表す条件が成り立つように設定する。
【0048】
aΔPmax>W ∧ W>aΔPmin ・・・ 式2
ただし、Wは浮子の有効重量、aは浮子の有効面積、ΔPmaxは上方への差圧の最大値、ΔPminは上方への差圧の最小値である。
【0049】
当該浮子が上方への差圧を最も大きく受けているときには、当該浮子の全有効面積にかかる差圧が当該浮子の重量より大きいため、当該浮子は上方へ移動する。一方、当該浮子が上方への差圧を最も小さく受けている、あるいはまったく受けていないときには、当該浮子の全有効面積にかかる差圧が当該浮子の重量より小さいため、当該浮子は下方へ移動する。当該浮子が上方への差圧を最も大きく受けているときとは、たとえば上記薬液の供給時であり、当該浮子が上方への差圧を最も小さく受けているときとは、たとえば上記薬液の供給停止時である。
【0050】
ΔPmaxと、ΔPminのそれぞれの値は、それぞれの場合における流量から式1を使用して計算するか、それぞれの場合について差圧を実測することにより求められる。
【0051】
これにより、本実施形態と同様に、浮子36は、レジスト液の供給時に管37の上部へ、供給停止時に管37の下部へと移動する。
【0052】
ただし、本実施形態のように、粘度測定部5を流量計と兼用する場合は、基板処理装置1全体の部品数を抑えられる。
【0053】
(基板処理装置1における基板処理の手順)
図5は、本実施形態に係る基板処理装置1における、基板処理の手順を示したフローチャートである。以下同図に基づき、基板12の処理回転数の調整を中心に、基板処理装置1における基板処理の手順を説明する。
【0054】
なお、以下においては、この発明の適用範囲の種々の例を総合的に説明するために、
(i)あらかじめ指定した粘度に応じて基板12の初期処理回転数の調整をすること、
(ii)基板12へのレジスト液の塗布の前に、待避位置において試行的にレジスト液を吐出し、その際の粘度の測定結果から基板12の処理回転数の調整をすること、
(iii)実際に基板12へレジスト液を塗布することと平行して当該レジスト液の粘度を測定し、その結果から基板12の処理回転数の調整をすること、
のすべてを総合的に行うように説明している。しかしながら、実際にはこれらのうちひとつだけを実行してもよく、また任意の複数の組み合わせを実行しても良い。
【0055】
まず、基板処理装置1のCPU9は、メモリ10上にテーブル31が記憶されているかをチェックする(ステップS1)。もしテーブル31が記憶されていれば、ステップS3〜S4を省略し、ステップS5へと移る(ステップS2)。
【0056】
テーブル31が記憶されていなかった場合、基板処理装置1のユーザーは、種々の粘度のレジスト液に対して、所要の厚さの膜を形成するために必要な基板12の処理回転数を実測する(ステップS3)。これは、(i)種々の粘度を持つレジスト液を用意し、(ii)それぞれについて、基板12の処理回転数を変化させながら膜形成作業を行い、(iii)得られた膜の膜厚を膜厚測定器11によって測定し、検証することにより実現できる。たとえば、図4(b)に示すような測定結果を得れば、種々の粘度のレジスト液において、膜厚を所定の値にするために、必要な基板処理回転数を得ることができる。そして、得られた対応関係を、図4(a)に示すようなテーブル31の形にして、制御部8のメモリ10に記憶させる(ステップS4)。ここまでの作業は、装置メーカー等において行ってもよい。また、定期的に行うことにより、テーブル31を常に最新の状態へと書き換えることもできる。この場合、メモリ10上に新規入力受付領域を確保しておくことが必要となる。
【0057】
データ入力が終了すれば、基板処理装置1は、レジスト膜形成処理のための一連のプロセスを開始する(ステップS5)。
【0058】
まず、給気装置20は、基板12がチャンバ17へ搬入される前に作動を開始し、以後のチャンバ17内の環境温度と湿度とを一定に保つ。
【0059】
チャンバ17における給気と排気とが安定した後、ノズル6を待避位置に移し、試行的にレジスト液を吐出する。粘度測定部5は、レジスト液の粘度を測定する(ステップS6)。
【0060】
粘度測定部5は、制御部8に粘度評価値を送信する。制御部8のCPU9は、メモリ10上のテーブル31上において、測定された粘度評価値を含む対応関係を検索する(ステップS7)。そしてCPU9は、測定された粘度評価値を含む対応関係が、テーブル31上に存在する場合には、その対応関係に従って基板12の処理回転数を特定する。測定された粘度評価値を含む対応関係が存在しない場合には、最も近い粘度評価値を含む対応関係を参照し、テーブル31上の基板処理回転数の数値列の内挿(補間)または外挿によって、基板12の処理回転数を特定する。以上により特定した値を、回転数制御指令値としてモータ7に出力する。
【0061】
モータ7は回転数制御指令値に一致するように回転数を調整する(ステップS8)。基板12がチャンバ17に搬入され、スピンチャック13によって保持される。そして、レジスト液がノズル6より基板12上に供給される。供給されたレジスト液は基板12の回転により、基板12の表面上に均一に塗布される。
【0062】
次に、CPU9は、一連のレジスト液の塗布作業の完了を指示する割り込み信号をチェックし(ステップS9)、割り込み信号の有無を判断する(ステップS10)。割り込み信号が無ければ、次の処理に向けたレジスト液供給のためポンプ3が駆動し、レジスト液の粘度の測定ステップ(ステップS6)へと戻る。このようなループ処理を繰り返すことにより、レジスト液の溶剤成分の揮発などによってレジスト液の粘度に時間的変動が生じた場合には、それに追従して基板12の処理回転数を適正な値へと変化させることができる。
【0063】
また、ステップS10において、完了を指示する割り込み信号があれば、このような監視調整ルーチンから抜け出して、一連の基板12へのレジスト液の塗布作業が完了する。
【0064】
なお、上述の説明では、基板12の処理回転数を特定するために、粘度評価値と適切な基板12の処理回転数との対応関係をテーブル化する場合について説明したが、これに限るものではない。前記対応関係を、近似関数を用いて関数化してもよい。ここでいう近似関数とは、粘度評価値を引数として、適切な基板12の処理回転数の近傍を求める関数である。制御部8は、この関数を用いて、粘度測定部5から受信した粘度評価値から、所要の膜厚の膜を形成するのに必要な、基板12の処理回転数を特定することができる。
【0065】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲において種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲において適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、大口径の基板に対して、薄く均一な膜を形成する基板処理装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の要部機能を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る粘度測定部の周辺の構成を示す側面図である。
【図4】(a)は本発明の一実施形態に係る回転数調整手段において使用されるテーブルの構造を示す説明図であり、(b)はレジスト液の粘度を変化させたときの、基板処理回転数と、形成される膜の膜厚との関係を示したグラフである。
【図5】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の基板処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】従来技術に係る基板処理装置の要部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0068】
1 基板処理装置
2 レジスト液供給部(薬液供給手段)
5 粘度測定部(粘度測定手段)
6 ノズル
7 モータ
8 制御部(回転数制御手段)
12 基板
31 テーブル
32、33 センサ
36 浮子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に薬液を供給し、当該基板を回転させることによって膜を上記基板上に形成する基板処理装置において、
上記薬液を上記基板上へ供給する薬液供給手段と、
上記薬液の粘度を、上記薬液を供給する経路中において測定する薬液粘度測定手段と、
上記薬液の粘度に応じて上記基板の回転数を調整する回転数調整手段とを備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
上記薬液粘度測定手段は、上記薬液を供給する経路内を移動する部材が、当該経路内の一定区間を通過する時間に基づいて、上記薬液の粘度を測定することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
上記部材は、上記薬液の供給に伴い上記経路中を移動するように、有効重量と、有効面積とが定められている浮子であることを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
上記薬液粘度測定手段は、上記一定区間の両端上に配置され、上記経路内を移動する上記部材を検知する2組のセンサからの出力信号に基づき、上記薬液の粘度を測定することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
上記2組のセンサは、透過型のセンサであることを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
上記2組のセンサは、反射型のセンサであることを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
上記2組のセンサは、静電容量検知型のセンサであることを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項8】
上記部材は、材質に金属を含むものであり、上記2組のセンサは、渦電流型のセンサであることを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項9】
基板上に薬液を供給し、当該基板を回転させることによって膜を上記基板上に形成する基板処理方法において、
上記薬液を上記基板上へ供給する薬液供給ステップと、
上記薬液の粘度を、上記薬液を供給する経路中において測定する薬液粘度測定ステップと、
上記薬液の粘度に応じて上記基板の回転数を調整する回転数調整ステップとを含んでいることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−305943(P2007−305943A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135769(P2006−135769)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】