説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】処理液を基板上に供給する際に、基板上に吐出される処理液を汚染することなく、処理液と基板との間の放電により生じる基板へのダメージを抑制する。
【解決手段】基板処理装置1は、導電性の処理液を基板9に向けて連続的に流れる状態で吐出する吐出部32、および、吐出部32に接続される供給管31に分岐して設けられる補助管35を備える。補助管35には、接地部41に接続される接液部352が設けられ、基板9とは異なる排出位置へと補助管35に沿って導かれる処理液の一部に接地電位が付与される。これにより、帯電していない基板9上に処理液を供給する際に、絶縁性の供給管31内を流れる処理液が帯電した状態で吐出されることが防止され、基板9上に吐出される処理液を汚染することなく、処理液と基板9との間の放電により生じる基板9へのダメージを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液を基板に供給して基板を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体製品の製造工程では、基板処理装置を用いて半導体基板(以下、単に「基板」という。)に対して様々な処理が施されている。例えば、基板を主面に垂直な中心軸を中心として回転しつつ、基板の回転中心に処理液を棒状にて供給することにより、基板の表面に対して均一な処理が行われる。この場合に、基板処理装置において吐出部へと至る処理液の流路が耐薬品性を有する絶縁材料にて形成されるときには、処理液が流路を移動することにより処理液が帯電し、処理液と基板との間の放電により基板にダメージが生じることがある。そこで、特許文献1では、基板上に吐出される処理液の流路に、接地された導電性の部材を設けることにより、処理液の帯電を防止する手法が開示されている。
【特許文献1】特開2006−269677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1のように、基板上に吐出される処理液の流路に導電性の部材を設ける場合、当該部材の材料によっては処理液を汚染してしまうことがある。また、実際には処理液を汚染しないものであっても、通常使用されていない材料の部材を基板へと向かう処理液の流路に設けるには、信頼性の観点から煩雑な確認作業を行う必要が生じてしまう。
【0004】
一方、処理液との間における放電による基板のダメージは、処理液のみが帯電している場合以外に、帯電している基板に基板との電位差が大きい処理液が供給されることによっても生じてしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、処理液を基板上に供給する際に、基板上に吐出される処理液を汚染することなく、処理液と基板との間の放電により生じる基板へのダメージを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、処理液を基板に供給して前記基板を処理する基板処理装置であって、導電性の処理液を基板の主面に向けて連続的に流れる状態で吐出口から吐出する吐出部と、吐出前の前記処理液が貯溜される容器、または、前記容器から前記吐出口に至る流路に設けられ、前記処理液を前記基板上に吐出している間に、前記基板とは異なる排出位置へと前記処理液の一部を導く補助管と、少なくとも前記処理液の前記基板への吐出開始時に、前記補助管または前記排出位置に設けられる導電部材を介して前記処理液の前記一部に電位を付与することにより、前記基板上に吐出される処理液と前記基板との間の電位差を低減する電位付与部とを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、前記補助管が、基板の非処理時においても、前記基板の処理時の前記吐出口からの前記処理液の吐出量よりも少ない流量にて、前記処理液を連続的に排出する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の基板処理装置であって、前記電位付与部が、前記導電部材に接続される接地部である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の基板処理装置であって、前記流路が絶縁部材にて形成されている。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載の基板処理装置であって、前記基板の表面の電位を非接触状態にて測定する表面電位計をさらに備え、前記処理液の吐出直前における前記表面電位計の測定値に基づいて、前記吐出開始時に前記電位付与部により前記処理液に付与される電位が決定される。
【0011】
請求項6に記載の発明は、処理液を基板に供給して前記基板を処理する基板処理方法であって、吐出前の導電性の処理液が貯溜される容器、または、前記容器から吐出部の吐出口に至る流路に、基板とは異なる排出位置へと前記処理液の一部を導く補助管が設けられており、前記基板処理方法が、a)前記補助管または前記排出位置に設けられる導電部材を介して前記処理液の前記一部に電位を付与する工程と、b)前記電位の付与により前記基板との間の電位差が低減された前記処理液を前記吐出部から前記基板の主面に向けて連続的に流れる状態で前記吐出口から吐出する工程とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、処理液を基板上に供給する際に、基板上に吐出される処理液を汚染することなく、処理液と基板との間の放電により生じる基板へのダメージを抑制することができる。
【0013】
また、請求項2の発明では、スローリーク用の補助管を用いて処理液に電位を付与することができ、請求項3の発明では、処理液を基板上に供給する際に、基板にダメージが生じることを容易に抑制することができる。
【0014】
また、請求項5の発明では、処理液の吐出直前の基板の表面の電位に基づいて処理液に付与する電位を決定することにより、処理液の吐出開始時に処理液と基板との間に生じる放電を確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す図である。基板処理装置1は、表面に絶縁膜が形成された半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)に純水や希釈した薬液等の導電性の処理液を供給して洗浄やエッチング等の処理を行う枚葉式の装置である。本実施の形態では、表面に酸化膜が形成された基板9に対して処理液による処理が行われる。なお、以下の説明では、導電性の処理液を単に「処理液」と呼び、絶縁性の純水と区別するものとする。
【0016】
図1に示すように、基板処理装置1は、円板状の基板9を水平に保持する略円板状の基板保持部21、基板9を基板保持部21と共に基板9に垂直な中心軸J1を中心に回転する保持部回転機構22、基板保持部21の周囲を囲むカップ部23、導電性の処理液および絶縁性の純水を基板9の上側の主面(以下、「上面」という。)91上に付与する処理液付与部3、並びに、各構成要素を制御する制御部10を備える。なお、導電性の処理液としては、希釈したフッ酸、塩酸、硫酸、硝酸、バッファードフッ酸、あるいは、アンモニア水や、純水に二酸化炭素(CO)等が溶け込むことにより導電性が生じた水(炭酸水)、界面活性剤を含む水等が用いられる。
【0017】
基板保持部21の下面には保持部回転機構22のシャフト221が設けられ、シャフト221はモータ222に接続される。基板9は、その中心がシャフト221の中心軸J1上に位置するように基板保持部21に保持される。保持部回転機構22では、制御部10の制御によりモータ222が駆動されることによりシャフト221が回転し、基板9が基板保持部21およびシャフト221と共に中心軸J1を中心として回転する。
【0018】
カップ部23は、基板保持部21の周囲を囲むことにより基板9上に供給されて飛散する液体を受け止める側壁231を備える。側壁231の下端部には、中心軸J1側へと突出して基板保持部21の下方を覆う環状の底部232が取り付けられ、底部232には基板9上に供給される液体を排出する排出口(図示省略)が設けられる。
【0019】
処理液付与部3は、供給管31に接続されるとともに本体が絶縁材料(例えば、セラミックや樹脂等)にて形成されるノズルである吐出部32を有し、吐出部32は基板9の回転中心の上方に配置される。供給管31には吐出部32の近傍にてバルブ311が設けられており、バルブ311の上流側には分岐路である補助管35が設けられる。供給管31の吐出部32とは反対側の端部は2つの供給管33,34に接続しており、一方の供給管33はバルブ331を介して純水(超純水)の供給源である純水供給部37へと接続し、他方の供給管34はバルブ341を介して処理液の供給源である処理液供給部38に接続する。処理液付与部3では、基板9の処理時に、バルブ311を開放した状態でバルブ331またはバルブ341が開放されることにより、吐出部32の吐出口321から純水または処理液が基板9上に供給される。なお、供給管31,34および補助管35は、フッ素樹脂(例えば、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体))等の絶縁材料にて形成される。
【0020】
また、補助管35にはバルブ351が設けられ、補助管35の供給管31とは反対側の端部は排液回収部36に接続される。基板9の非処理時(すなわち、基板9が処理されていない期間)において、供給管34のバルブ341および補助管35のバルブ351は常時開放されており、補助管35では後述する基板9の処理時の吐出口321からの処理液の吐出量よりも少ない流量にて、処理液が排液回収部36に連続的に排出される。このように、基板処理装置1では、基板9の非処理時に処理液が供給管31,34内に残留した場合に生じる可能性がある処理液の変質等を防止するための、いわゆる、スローリークが行われる。
【0021】
補助管35において、バルブ351よりも排液回収部36側には導電性の接液部352(図1では補助管35の一部を内部流路の中心線を含む断面にて示すとともに、接液部352を太線にて示している。)が設けられ、接液部352には接地部41が接続される。接地部41は接液部352に接地電位を付与する電位付与部となっている。後述するように、基板9の処理時に吐出部32から処理液が吐出される際には、補助管35のバルブ351も開放される(基板9を処理する際にはバルブ351は一旦閉じられている。)ことにより、処理液の一部が接液部352を通過して基板9とは異なる排出位置である排液回収部36へと導かれる。導電部材である接液部352は、例えば、アモルファスカーボンやグラッシカーボン等のガラス状の導電性カーボンや、導電性PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)や導電性PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の導電性樹脂により形成される。
【0022】
図2は、基板処理装置1が基板9を処理する動作の流れを示す図である。図2中に破線にて囲むステップS12aの処理は、後述の動作例にて行われるものであり、以下の動作では行われない。なお、基板9を処理する際には、供給管34のバルブ341および補助管35のバルブ351が閉じられて処理液のスローリークが停止されるものとする(図4の基板処理装置1aにおいて同様)。
【0023】
図1の基板処理装置1では、まず、図示省略の昇降機構によりカップ部23が基板保持部21よりも下方に位置した状態で、外部の搬送装置により基板9が基板保持部21上に載置されて保持される(すなわち、基板9がロードされる。)(ステップS11)。このとき、基板9の本体の電位はほぼ0ボルト(V)となっている。続いて、カップ部23が上昇して基板保持部21がカップ部23内に収容された後、制御部10により保持部回転機構22のモータ222が駆動されて基板9の回転が開始される(ステップS12)。以下に説明する処理液および純水による処理は、通常、基板9が回転された状態で行われるが、必要に応じて基板9の回転速度は変更されてよい。
【0024】
基板9の回転が開始されると、供給管31のバルブ311を閉じた状態で供給管34のバルブ341および補助管35のバルブ351が開放されて処理液が排液回収部36へと導かれる。補助管35および供給管31,34(ただし、供給管31のバルブ311と吐出部32との間を除く。)では処理液が連続して満たされており、補助管35および供給管31,34内を流れる処理液には接地部41により接液部352を介して接地電位が付与される(ステップS13)。実際には、処理液への接地電位の付与は継続的に行われる。なお、基板処理装置1では基板9の処理が開始された後、すなわち基板9への処理液の供給が開始された後も処理液のスローリークが継続されていてもよく(図4の基板処理装置1aにおいて同様)、この場合、接地部41による処理液への電位の付与は、常時(正確には、後述の純水による処理時を除く。)行われることとなる。
【0025】
処理液への接地電位の付与が開始されると、バルブ311も開放されて吐出部32に処理液が供給されることにより、吐出口321から処理液が分断されることなく柱状に連続的に流れる状態にて(すなわち、棒状にて)回転する基板9の中央に向けて吐出される(ステップS14)。このとき、処理液を基板9上に吐出している間に補助管35により排液回収部36へと導かれる処理液の一部に接地電位が継続して付与されていることにより、電位が接地電位(0V)となる処理液が基板9の上面91上に供給されることとなる。処理液の棒状での付与は所定の時間だけ継続され、処理液による基板9の均一な処理が実現される。
【0026】
バルブ341が閉じられて基板9に対する処理液の付与、および、処理液への接地電位の付与が停止されると、続いて、バルブ351が閉じられるとともにバルブ331が開放され、吐出部32に純水が供給される。これにより、吐出部32から基板9上に純水が付与されて基板9の上面91が純水にて洗浄(リンス)される(ステップS15)。バルブ331,311を閉じることにより純水の吐出が停止されると、基板9を所定時間だけさらに回転させて基板9を乾燥し、その後、基板9の回転が停止される(ステップS16)。そして、カップ部23が基板保持部21よりも下方に移動し、搬送装置により基板9が基板保持部21から取り出されて搬出される(すなわち、基板9がアンロードされる。)(ステップS17)。
【0027】
次の(2番目の)処理対象の基板9が存在することが確認されると(ステップS18)、当該基板9が基板保持部21上に載置されて保持され(ステップS11)、カップ部23が上昇して基板保持部21がカップ部23内に収容される。
【0028】
ところで、仮にカップ部23が絶縁材料にて形成されている場合には、直前の基板9(すなわち、1番目の基板9)のステップS15における純水による洗浄時に、基板9上から飛散する純水によりカップ部23の内周面が摩擦帯電し、その後に搬入される基板9が誘導帯電することがあるが、本実施の形態における基板処理装置1では、カップ部23の側壁231が導電性の樹脂にて形成されている、あるいは、基板保持部21が導電部材にて形成されるとともに当該導電部材が接地されている等により、基板9は帯電していない状態(電位がほぼ0V)となっている。
【0029】
続いて、基板9の回転が開始されると(ステップS12)、バルブ341,351が開放されることにより、処理液が供給管34,31および補助管35内を排液回収部36に向けて流されるとともに、接地部41により処理液に接地電位が付与される(ステップS13)。そして、バルブ311も開放することにより吐出部32に処理液が供給され、接地電位を有する処理液が吐出部32から棒状にて基板9の中央に向けて吐出される(ステップS14)。処理液の棒状での付与が完了すると、基板9の純水による洗浄処理が行われる(ステップS15)。その後、基板9の回転が停止され(ステップS16)、基板9が基板保持部21から取り出されて搬出される(ステップS17)。
【0030】
基板処理装置1では、残りの処理対象の基板9に対して上記ステップS11〜S17の処理が繰り返されることにより、基板処理装置1における基板処理動作が完了する(ステップS18)。
【0031】
ここで、処理液供給部38における処理液を貯溜する容器から吐出部32の吐出口321に至る流路(すなわち、基板9上に吐出される処理液の流路であり、本実施の形態では、供給管31,34)は耐薬品性を有する絶縁部材にて形成されるため、補助管35において接液部352が設けられない比較例の基板処理装置では、後述の理由により、供給管31,34内を処理液が通過することにより処理液が帯電してしまい、棒状の処理液の先端部と電位がほぼ接地電位となる基板9の本体との間において基板9の上面91上の狭い領域に集中した比較的大きな放電が発生し、基板9上の当該領域に大きなダメージが生じてしまう。なお、基板9上に吐出される処理液の帯電の理由は、直前の基板9の処理時等に供給管31内を絶縁性の純水が流れて供給管31が帯電し、供給管31内を処理液が通過することによるもの、あるいは、処理液と供給管31,34の内部表面との摩擦によるもの等が考えられる。
【0032】
これに対し、基板処理装置1では、処理液の吐出時に処理液に接地電位が付与されることにより、処理液が帯電した状態で基板9に向けて吐出されることが防止される。これにより、処理液を基板9上に供給する際に、処理液と基板9との間に生じる放電を抑制することができ、処理液と基板9との間の放電により生じる基板9へのダメージを抑制することが実現される。
【0033】
また、図3に示す比較例の基板処理装置のように、吐出前の処理液が貯溜される容器92や、供給管93あるいは吐出部94に、接地された導電部材95a,95b,95cを設けることにより、処理液が帯電した状態で吐出されることを防止する場合には、導電部材95a,95b,95cの材料によっては処理液を汚染してしまう(例えば、当該部材からの金属イオンの溶出や当該部材の発塵等による処理液の汚染が発生する。)ことがある。また、実際には処理液を汚染しないものであっても、通常使用されていない材料の部材を基板9へと向かう処理液の移動経路上に設けるには、信頼性の観点から煩雑な確認作業を行う必要が生じてしまう。これに対し、基板処理装置1では、処理液に接地電位を付与する接液部352が、基板9とは異なる排出位置へと処理液の一部を導く補助管35に設けられることにより、接液部352が基板9上に吐出される処理液を汚染することが確実に防止される。
【0034】
基板処理装置1では、吐出部32からの処理液の吐出開始時においてのみ、基板9上に吐出される処理液に接地電位が付与されてもよく、この場合、接地電位を有する処理液が基板9上に到達した後に、補助管35のバルブ351が閉じられて処理液への接地電位の付与が停止される。このとき、基板9の回転速度は比較的低速とされるため、基板9上に到達した処理液は膜状に広がり(すなわち、基板9上に処理液の膜が形成され)、処理液と供給管31,34の内部表面との摩擦により基板9上に吐出される処理液が帯電する場合、バルブ351を閉じることにより(すなわち、処理液への接地電位の付与の停止により)、帯電した処理液が基板9上に供給されて基板9上の処理液の膜に処理液の帯電電位が付与される。その結果、基板9上の処理液の膜全体と基板9の本体との間にて(すなわち、基板9の上面91の全体にて)微弱な放電が生じる。このように、処理液の吐出開始時においてのみ処理液に接地電位を付与する場合であっても、基板9上の狭い領域にて集中して放電が発生することが防止され(すなわち、上面91上の広い領域に分散して微弱な放電が発生する。)、処理液と基板9との間の大きな放電により生じる基板9へのダメージが抑制される。
【0035】
以上のように、図1の基板処理装置1では、少なくとも処理液の吐出開始時に、接液部352を介して接地電位を処理液に付与することにより、処理液と基板9との間の放電により生じる基板9へのダメージを抑制することが実現される。なお、処理液のスローリークが不要とされ、かつ、処理液の吐出開始時においてのみ処理液に接地電位を付与する場合には、処理液の使用量を低減して基板9の処理に要するコストを削減することができる。
【0036】
以上に説明した基板処理装置1では、補助管35の接液部352に接地部41を接続するのみで、(ほとんど)帯電していない基板9上に処理液を供給する際に、基板9にダメージが生じることが容易に抑制されるが、上記手法を応用して、帯電している基板9上に処理液を供給する際に、基板9にダメージが生じることを抑制することも可能である。以下、上記手法を応用した高度な手法について述べる。
【0037】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置1aの構成を示す図である。図4の基板処理装置1aでは、図1の基板処理装置1と比較して、接液部352に電位を付与する電位付与部41aが接地部41に代えて設けられるとともに、基板9の上面91に対向して設けられるとともに基板9の表面(すなわち、上面91)の電位を非接触状態にて測定する表面電位計42が追加される点で相違している。他の構成は図1の基板処理装置1と同様であり、同符号を付している。
【0038】
次に、基板処理装置1aが基板9を処理する動作の流れについて図2に沿って説明する。なお、以下の説明では、図2中に破線にて囲むステップS12aの処理が実行される。
【0039】
基板処理装置1aでは、基板9が基板保持部21にて保持されて基板9の回転が開始されると(ステップS11,S12)、表面電位計42により基板9の上面91において吐出部32からの処理液の吐出位置近傍における表面電位が測定され(ステップS12a)、測定値は制御部10に入力される。実際には、最初の処理対象の基板9の表面電位はほぼ0Vとされる。
【0040】
表面電位計42による測定が完了すると、バルブ341,351が開放されることにより、処理液が供給管34,31および補助管35内に流されるとともに、電位付与部41aにより接液部352に電位(後述するように、吐出部32から吐出される処理液に付与される電位と同電位であり、以下、「吐出電位」という。)が付与される(ステップS13)。そして、バルブ311も開放することにより吐出部32に処理液が供給され、吐出電位を有する処理液が吐出部32から棒状にて基板9の中央に向けて吐出される(ステップS14)。このとき、制御部10により、処理液の吐出直前における表面電位計42の測定値に基づいて、処理液の吐出開始時に電位付与部41aにより処理液に付与される吐出電位が決定される。具体的には、吐出電位は、基板9上に吐出される処理液と基板9との間の電位差を0とする電位(ここでは、0V)とされ、これにより、処理液の吐出開始時に基板9の本体と処理液との間にて(理想的には)放電が生じることが防止される。また、電位付与部41aでは、処理液の吐出開始時以降にて吐出部32から処理液が吐出される間も、吐出電位が継続して処理液に付与されることにより、処理液の吐出中に基板9と処理液との間にて放電が生じることが防止される。
【0041】
バルブ341,351が閉じられて基板9に対する処理液の付与、および、処理液に対する吐出電位の付与が完了すると、続いて、バルブ331が開放されて吐出部32に純水が供給され、吐出部32から基板9上に純水が付与されて基板9の上面91が純水にて洗浄される(ステップS15)。このとき、基板処理装置1aでは、カップ部23がフッ素樹脂等の絶縁材料にて形成されているため、基板9上から飛散する純水によりカップ部23の内周面が摩擦帯電する。純水の吐出が停止されると、基板9を所定時間だけさらに回転させて基板9を乾燥し、その後、基板9の回転が停止される(ステップS16)。そして、カップ部23が基板保持部21よりも下方に移動し、搬送装置により基板9が基板保持部21から取り出されて搬出される(すなわち、基板9がアンロードされる。)(ステップS17)。
【0042】
次の(2番目の)処理対象の基板9が存在することが確認されると(ステップS18)、当該基板9が基板保持部21上に載置されて保持され(ステップS11)、カップ部23が上昇して基板保持部21がカップ部23内に収容される。このとき、既述のようにカップ部23の内周面が帯電していることにより、基板保持部21上の基板9(の本体)は、例えば(−3)キロボルト(KV)に誘導帯電する。
【0043】
基板9の回転が開始されると(ステップS12)、表面電位計42により基板9の表面電位が測定される(ステップS12a)。続いて、バルブ341,351が開放されて、処理液が供給管34,31および補助管35内に流されるとともに、表面電位計42による測定値に基づいて、電位付与部41aにより接液部352に処理液と基板9との間の電位差を0とする吐出電位が付与される(ステップS13)。そして、バルブ311が開放され、吐出電位が付与された処理液が吐出部32から棒状にて基板9の中央に向けて吐出される(ステップS14)。これにより、処理液の吐出による基板9の処理時に、帯電した基板9の本体と処理液との間にて(理想的には)放電が生じることが防止される。
【0044】
処理液の棒状での付与が完了すると、基板9の純水による洗浄処理が行われる(ステップS15)。その後、基板9の回転が停止され(ステップS16)、基板9が基板保持部21から取り出されて搬出される(ステップS17)。
【0045】
基板処理装置1aでは、残りの処理対象の基板9に対して上記ステップS11〜S17の処理が繰り返されることにより、基板処理装置1aにおける基板処理動作が完了する(ステップS18)。
【0046】
以上に説明したように、基板処理装置1aでは、処理液の吐出時に補助管35において処理液に吐出電位が付与されることにより、基板9との間の電位差が低減された処理液(理想的には、電位差が0とされる。)が吐出部32から基板9の上面91に向けて連続的に流れる状態で吐出口321から吐出される。その結果、処理液を基板9上に供給する際に、基板9上に吐出される処理液を汚染することなく、処理液と基板9との間に生じる放電を抑制することができ、処理液と基板9との間の放電により生じる基板9へのダメージを抑制することが実現される。また、表面電位計42により取得される処理液の吐出直前の基板9の表面電位に基づいて処理液に付与する電位を決定することにより、処理液の吐出開始時に処理液と基板9との間に生じる放電を確実に抑制することができる。
【0047】
基板処理装置1aにおいても、吐出部32からの処理液の吐出開始時においてのみ処理液に電位が付与されてもよく、この場合、吐出電位を有する処理液が基板9上に到達した後に、処理液への吐出電位の付与が停止される。これにより、処理液の吐出開始直後に基板9上に形成される処理液の膜に、吐出電位とは異なる電位が付与されることとなり、基板9上の処理液の膜全体と基板9の本体との間にて(すなわち、基板9の上面の全体にて)微弱な放電が生じる。その結果、基板9上の狭い領域にて集中して放電が発生することが防止され、処理液と基板9との間の大きな放電により生じる基板9へのダメージが抑制される。
【0048】
以上のように、図4の基板処理装置1aでは、少なくとも処理液の吐出開始時に、基板9上に吐出される処理液と基板9との間の電位差を低減する電位を接液部352を介して処理液に付与することにより、処理液と基板9との間の放電により生じる基板9へのダメージを抑制することが実現される。
【0049】
また、図4の基板処理装置1aに同心状であって、外側に配置されるものほど上端部が上方に配置される複数のカップ部が設けられ、吐出部32にて複数種類の処理液が吐出可能とされてもよく(実際には、処理液供給部38に並行して他の種類の処理液供給部が設けられる。)、このような基板処理装置では、各種類の処理液の吐出時に対応するカップ部にて処理液を回収するために、複数のカップ部が一体的に基板9に対して相対的に昇降することにより、基板9と複数のカップ部との相対位置が変更される。この場合、帯電しているカップ部との相対位置の変化により基板9の表面の電位が変化してしまうが、基板処理装置では、複数種類の処理液が吐出部32から順次吐出される際に各処理液に付与する電位が、当該処理液の吐出直前の表面電位計42の測定値に基づいて決定されることにより、処理液の吐出開始時に処理液と基板9との間に生じる放電を確実に抑制することが可能となる。その結果、処理液と基板9との間の放電により生じる基板9へのダメージを抑制することができる。
【0050】
なお、このような基板処理装置において、複数種類の処理液に対して一定の電位を付与する場合であっても、複数種類の処理液の基板9への吐出において、例えば、基板9と基板9上に吐出される処理液との間の電位差の和が最小となるように、あるいは、基板9と処理液との間の電位差の最大値が基板9上の絶縁膜の耐電圧(絶縁破壊電圧)よりも小さくなるように、接液部352に付与される一定の電位の大きさが決定される場合には、処理液と基板9との間の放電により生じる基板9へのダメージを抑制することができ、この場合、制御部10による制御処理を簡素化することも可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0052】
基板処理装置1,1aでは、補助管35に接液部352を設けることにより処理液に電位を付与することが可能とされるが、図5に示すように、補助管35の排液回収部36側の端部から連続的に流れる状態で排出される処理液が、その排出位置に配置される導電部材である回収容器361にて受け止められ、回収容器361が接地部41(電位付与部41aであってもよい。図6において同様。)に接続されたり、図6に示すように、吐出前の処理液が貯溜される容器381(すなわち、処理液タンク)に、供給管34とは異なる補助管35aが設けられ、補助管35aに設けられる接液部352aが接地部41に接続されることにより、基板9上に吐出される処理液に間接的に(すなわち、実際に基板9上に吐出される処理液が回収容器361または接液部352aに接することなく)電位が付与されてもよい。もちろん、図6の排液回収部36に、図5と同様の回収容器361が設けられてもよい。
【0053】
以上のように、基板9上に吐出される処理液への電位の付与は、処理液を基板9上に吐出している間に、基板9とは異なる排出位置へと処理液の一部を導く補助管35,35aを吐出前の処理液が貯溜される容器381、または、容器381から吐出口321に至る流路に設け、補助管35,35aまたは補助管35,35aからの処理液の排出位置に設けられる導電部材に電位を付与することにより実現される。なお、上記実施の形態では、接液部352は導電性樹脂にて形成されるが、処理液の種類によっては接液部352を金属にて形成することも可能である。
【0054】
図1および図4の基板処理装置1,1aでは、処理液のスローリーク用の補助管35を用いて処理液に電位が付与されるが、基板処理装置1,1aにおいて、純水供給部37に接続される供給管33のバルブ331および補助管35のバルブ351を基板9の非処理時に開放することにより、補助管35にて純水が連続的に排出されてもよい(すなわち、補助管35が純水のスローリークに用いられてもよい。)。この場合、基板9の処理液による処理時には、バルブ331が閉じられるとともに、処理液供給部38に接続される供給管34のバルブ341が開放されることにより、処理液に電位を付与することが可能とされる。このように、図1および図4の基板処理装置1,1aでは、純水のスローリークに用いられる補助管35を用いて、処理液に電位を付与することも可能である。
【0055】
上記第2の実施の形態では、基板9が帯電していない場合、あるいは、基板9の純水による洗浄において純水が飛散する際に生じるカップ部23の帯電により基板9が誘導帯電する場合に、電位付与部41aにより処理液の電位を調整することにより、基板9上に吐出される処理液と基板9との間の放電により生じる基板9へのダメージが抑制されるが、処理液による基板9の処理前に純水が基板9の絶縁膜上に付与されて基板9の上面91が帯電する場合や、処理対象の基板9が外部における直前の処理により帯電している場合等にも、電位付与部41aにより電位を付与することなく処理液が基板9上に吐出されると、処理液と基板9との間にて生じる放電による基板9へのダメージが大きくなってしまう。したがって、基板9上に吐出される処理液と基板9との間に電位差がある場合には、処理液と基板9との間の放電により生じる基板9へのダメージを抑制することが可能な上記手法が用いられることが必要となる。
【0056】
また、上記第2の実施の形態において、基板処理装置から表面電位計42が省略され、吐出開始時に電位付与部41aにより処理液に付与される吐出電位が、表面に絶縁膜が形成される基板9と基板9上に吐出される処理液との間の電位差を当該絶縁膜の耐電圧以下とする固定電位とされてもよい。
【0057】
ところで、基板9の表面に一様な絶縁膜が形成されている場合以外に、基板上に絶縁材料にて微細なパターンが形成されている場合にも、パターンの要素間にて挟まれる狭い空間において処理液の先端部と基板の表面との間にて空気を介して放電が発生することがあり、この場合、放電の影響により当該空間に近接するパターンの部位が損傷することもある。したがって、処理液を基板上に供給する際に基板にダメージ(絶縁膜やパターンの損傷等)が生じることを防止するには、処理液の吐出開始時に電位付与部41aにより処理液に付与される吐出電位が、基板上に吐出される処理液と基板との間の電位差を0とする電位として決定されることが好ましい。
【0058】
上記第1および第2の実施の形態では、吐出部32から棒状にて処理液が吐出されるが、吐出部32において処理液が連続的に流れる状態にて吐出されるのであるならば、例えば、カーテン状にて処理液が吐出されてもよい。
【0059】
基板処理装置1,1aは、プリント配線基板やフラットパネル表示装置に使用されるガラス基板等、半導体基板以外の様々な基板の処理に利用されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
【図2】基板を処理する動作の流れを示す図である。
【図3】比較例の基板処理装置を示す図である。
【図4】第2の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
【図5】処理液に電位を付与する他の手法を説明するための図である。
【図6】処理液に電位を付与するさらに他の手法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0061】
1,1a 基板処理装置
9 基板
31,34 供給管
32 吐出部
35,35a 補助管
36 排液回収部
41 接地部
41a 電位付与部
42 表面電位計
91 上面
321 吐出口
352,352a 接液部
361 回収容器
381 容器
S13,S14 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を基板に供給して前記基板を処理する基板処理装置であって、
導電性の処理液を基板の主面に向けて連続的に流れる状態で吐出口から吐出する吐出部と、
吐出前の前記処理液が貯溜される容器、または、前記容器から前記吐出口に至る流路に設けられ、前記処理液を前記基板上に吐出している間に、前記基板とは異なる排出位置へと前記処理液の一部を導く補助管と、
少なくとも前記処理液の前記基板への吐出開始時に、前記補助管または前記排出位置に設けられる導電部材を介して前記処理液の前記一部に電位を付与することにより、前記基板上に吐出される処理液と前記基板との間の電位差を低減する電位付与部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記補助管が、基板の非処理時においても、前記基板の処理時の前記吐出口からの前記処理液の吐出量よりも少ない流量にて、前記処理液を連続的に排出することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記電位付与部が、前記導電部材に接続される接地部であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置であって、
前記流路が絶縁部材にて形成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記基板の表面の電位を非接触状態にて測定する表面電位計をさらに備え、
前記処理液の吐出直前における前記表面電位計の測定値に基づいて、前記吐出開始時に前記電位付与部により前記処理液に付与される電位が決定されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
処理液を基板に供給して前記基板を処理する基板処理方法であって、
吐出前の導電性の処理液が貯溜される容器、または、前記容器から吐出部の吐出口に至る流路に、基板とは異なる排出位置へと前記処理液の一部を導く補助管が設けられており、
前記基板処理方法が、
a)前記補助管または前記排出位置に設けられる導電部材を介して前記処理液の前記一部に電位を付与する工程と、
b)前記電位の付与により前記基板との間の電位差が低減された前記処理液を前記吐出部から前記基板の主面に向けて連続的に流れる状態で前記吐出口から吐出する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−251756(P2008−251756A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90002(P2007−90002)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】