説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板からレジストを良好に除去することができ、かつ、そのレジストの除去に用いた処理液の再利用を図ることができる、基板処理装置および基板処理方法を提供すること。
【解決手段】ミキシングバルブ8には、過硫酸生成槽12において濃度4mol/lの低濃度硫酸を電気分解して生成される過硫酸と、温度120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸とが供給される。ミキシングバルブ8に過硫酸および高温高濃度硫酸が供給されると、これらが混合され、高温高濃度硫酸が過硫酸で希釈されることによる希釈熱が生じ、この希釈熱および高温高濃度硫酸が有する熱により、その過硫酸および高温高濃度硫酸の混合液は、高温高濃度硫酸の液温以上の高温に急速に昇温する。高温に昇温した混合液は、その後直ちにミキシングバルブ8からノズル3に送られ、ノズル3からウエハWの表面に向けて吐出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板から不要になったレジストを除去するために用いられる基板処理装置および基板処理方法に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程には、たとえば、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)の表面にリン、砒素、硼素などの不純物(イオン)を局所的に注入する工程が含まれる。この工程では、不所望な部分に対するイオン注入を防止するため、ウエハの表面に感光性樹脂からなるレジストがパターン形成されて、イオン注入を所望しない部分がレジストによってマスクされる。ウエハの表面上にパターン形成されたレジストは、イオン注入の後は不要になるから、イオン注入後には、そのウエハの表面上の不要となったレジストを除去するためのレジスト除去処理が行われる。
【0003】
このレジスト除去処理の方式としては、複数枚の基板を一括して処理するバッチ式と、基板を1枚ずつ処理する枚葉式とがある。従来は、バッチ式が主流であったが、バッチ式は複数枚の基板を収容することのできる大きな処理槽を必要とするため、最近では、処理対象の基板が大型化してきていることもあって、そのような大きな処理槽を必要としない枚葉式が注目されている。
【0004】
枚葉式のレジスト除去処理では、ウエハがその中心と直交する回転軸線まわりに一定の回転速度で回転されつつ、そのウエハの表面の中央部に、ノズルからSPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水)が供給される。ノズルに接続された配管の途中には、ミキシングバルブが介装されており、このミキシングバルブに硫酸と過酸化水素水とが供給され、それらが混ざり合って反応することにより、ペルオキソ一硫酸(カロ酸)などの酸化力を有する成分を含むSPMが生成される。ミキシングバルブからノズルに供給されるSPMは、配管を流れる間に、硫酸と過酸化水素水との反応熱により昇温し、ウエハWの表面には、その昇温したSPMが供給される。ウエハの表面に供給されたSPMは、ウエハの回転による遠心力を受けて、ウエハの表面上を中央部から周縁に向けて流れ、ウエハの表面全域に速やかに行き渡る。ウエハの表面に形成されているレジストは、SPMの酸化力により、そのウエハの表面から剥離されて除去される。
【特許文献1】特開2005−109167公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、イオン注入(とくに、高ドーズのイオン注入)が行われたウエハでは、レジストの表面が変質(硬化)しているため、SPMを供給しても、レジストをウエハの表面から良好に除去できない場合がある。
また、SPMは、過酸化水素成分を含むため、レジスト除去処理に再利用することができないばかりか、廃液処理も困難である。
【0006】
そこで、この発明の目的は、基板からレジストを良好に除去することができ、かつ、そのレジストの除去に用いた処理液の再利用を図ることができる、基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持する基板保持手段(2)と、硫酸を用いて過硫酸を生成する過硫酸生成手段(12)と、前記過硫酸生成手段により生成される過硫酸と前記過硫酸生成手段により用いられる硫酸よりも高温かつ高濃度の硫酸とを混合させる混合手段(8)と、前記混合手段により混合された過硫酸と硫酸との混合液を、基板からレジストを除去するための処理液として、前記基板保持手段に保持された基板に向けて吐出する吐出手段(3)とを含むことを特徴とする、基板処理装置(1)である。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
過硫酸に含まれるペルオキソ二硫酸(S282-)は、120℃以上の高温の状態で、表面に硬化層を有するレジストを剥離可能な強酸化力を発揮する。一方、ペルオキソ二硫酸の過硫酸中における濃度は、80℃以下ではほとんど減少しないが、それよりも高温の状態では、時間の経過に伴って減少する。たとえば、過硫酸の温度が約170℃であれば、ペルオキソ二硫酸の濃度は、わずか数秒で半分にまで減少する。そのため、過硫酸を120℃以上の高温に温度調節して、これを貯留槽に貯留しておき、その貯留槽に貯留されている過硫酸を処理液として基板に供給する構成では、ペルオキソ二硫酸を高濃度に含む処理液を基板に供給することができない。
【0009】
前記の構成によれば、過硫酸とその過硫酸の生成のために用いられる硫酸よりも高温かつ高濃度の硫酸とが混合され、この混合液が基板からレジストを除去するための処理液として基板に供給される。過硫酸と高温高濃度硫酸が混ざり合うと、高温高濃度硫酸が過硫酸で希釈されることによる希釈熱が生じ、この希釈熱および高温高濃度硫酸が有する熱により、その過硫酸および高温高濃度硫酸の混合液(処理液)は、高温高濃度硫酸の液温以上の高温に急速に昇温する。したがって、過硫酸の液温が80℃以下であっても、高温高濃度硫酸の液温が十分に高ければ、過硫酸と高温高濃度硫酸との混合時に、処理液の液温を120℃以上の高温にまで一気に昇温させることができる。そして、その高温に昇温した処理液が昇温後直ちに吐出手段から基板に向けて吐出されることにより、ペルオキソ二硫酸を高濃度に含む処理液を基板に供給することができる。そのため、レジストの表面が高ドーズのイオン注入により変質していても、ペルオキソ二硫酸の強酸化力によって、そのレジストを基板から良好に剥離して除去することができる。
【0010】
また、過硫酸および高温高濃度硫酸の混合液である処理液は、過酸化水素成分を含まず、硫酸系成分のみからなるので、レジスト除去処理に使用した後に適当な再利用処理を施すことにより、それ以降のレジスト処理に再利用することができ、また、レジスト除去処理に一度使用した処理液を廃液する場合に、その廃液処理が簡単である。
請求項2に記載の発明は、前記過硫酸生成手段は、硫酸を電気分解するための電気分解槽(12)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置である。
【0011】
この構成によれば、電気分解槽で硫酸を電気分解することによって、過硫酸を容易に生成することができる。
なお、過硫酸の生成のために使用される硫酸は、濃度2〜11mol/lの低濃度硫酸であることが好ましい。濃度2〜11mol/lの低濃度硫酸は、硫酸イオンの存在量が0.5〜2.0mol/lと高いため、このような濃度の低濃度硫酸を過硫酸の生成に用いることにより、ペルオキソ二硫酸の生成効率の向上を図ることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記電気分解槽は、ダイヤモンドで形成された電極(17,18)を有していることを特徴とする、請求項2に記載の基板処理装置である。
なお、ダイヤモンドで形成された電極は、ダイヤモンドのみで形成されたものであってもよいし、導電性基板の表面をダイヤモンドで被覆して形成されたものであってもよい。
この構成によれば、電気分解槽に備えられる電極がダイヤモンドを用いて形成されている。すなわち、このような電極を用いることにより、過硫酸を効率よく生成することができる。また、電極からの不純物の溶出を抑制することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記過硫酸生成手段は、硫酸にオゾンを溶解させるオゾン溶解手段(31)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、硫酸にオゾンを溶解させることができ、そのオゾンの溶解により、過硫酸を生成することができる。
なお、請求項5に記載のように、前記基板保持手段は、1枚の基板を保持しつつ回転させるものであってもよい。
【0014】
請求項6に記載の発明は、硫酸を用いて過硫酸を生成する過硫酸生成工程と、前記過硫酸生成工程で生成される過硫酸と前記過硫酸生成工程で用いられる硫酸よりも高温かつ高濃度の硫酸とを混合させ、その混合液を混合後直ちに、基板からレジストを除去するための処理液として、基板に供給する供給工程(S3〜S6)とを含むことを特徴とする、基板処理方法である。
【0015】
この方法は、請求項1に記載の基板処理装置において実施することができ、この方法の実施により、請求項1に関連して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
請求項7に記載のように、前記過硫酸生成工程で用いられる硫酸の濃度は2〜11mol/lであることが好ましい。前記したように、濃度2〜11mol/lの低濃度硫酸を過硫酸の生成に用いることにより、ペルオキソ二硫酸の生成効率の向上を図ることができる。
【0016】
また、請求項8に記載ように、前記供給工程において、前記混合液における過硫酸の濃度は10〜150g/lであることが好ましい。過硫酸の濃度を10〜150g/lとすることにより、過硫酸とレジストとの反応性の向上を図ることができ、レジストの除去に要する時間の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
この基板処理装置1は、枚葉式の装置であって、基板の一例であるウエハWの表面から不要になったレジストを除去するための処理に用いられるものである。基板処理装置1は、ウエハWをほぼ水平に保持して回転させるためのスピンチャック2と、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面に処理液を供給するためのノズル3と、スピンチャック2の周囲を取り囲み、ウエハWから流下または飛散する処理液を受け取るためのカップ4とを備えている。
【0018】
スピンチャック2は、挟持式の構成を有するものであり、複数個の挟持部材5でウエハWを挟持することにより、ウエハWをほぼ水平な姿勢で保持することができ、さらにその状態でほぼ鉛直な軸線まわりに回転することによって、その保持したウエハWをほぼ水平な姿勢を保ったまま回転させることができる。
なお、スピンチャック2としては、ウエハWの下面を真空吸着することにより、ウエハWをほぼ水平な姿勢で保持し、さらにその状態でほぼ鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式の構成を有するもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
【0019】
ノズル3は、スピンチャック2の上方に設けられたアーム6の先端に取り付けられている。アーム6は、カップ4の側方でほぼ鉛直に延びた支持軸7に支持されており、この支持軸7の上端部からほぼ水平に延びている。支持軸7は、その中心軸線まわりに回転可能に設けられていて、支持軸7を回転させることにより、ノズル3をスピンチャック2に保持されたウエハWの上方に配置したり、カップ4の外側に設定されたホームポジションに配置したりすることができる。
【0020】
ノズル3には、ミキシングバルブ8から延びる処理液供給配管9の先端が接続されており、後述するように、この処理液供給配管9から過硫酸と高温高濃度硫酸との混合液が処理液として供給されるようになっている。
ミキシングバルブ8には、過硫酸供給配管10および高温高濃度硫酸供給配管11が接続されている。
【0021】
過硫酸供給配管10は、過硫酸を生成するための過硫酸生成槽12から延びている。過硫酸供給配管10の途中部には、過硫酸生成槽12側から順に、過硫酸生成槽12から過硫酸を吸い出すためのポンプ13と、過硫酸供給配管10を開閉するための過硫酸供給バルブ14とが介装されている。また、過硫酸供給配管10には、ポンプ13と過硫酸供給バルブ14との間において、過硫酸帰還配管15が分岐して接続されている。この過硫酸帰還配管15の途中部には、過硫酸循環バルブ16が介装されている。過硫酸帰還配管15の先端は、過硫酸生成槽12に接続されている。
【0022】
過硫酸生成槽12内には、ダイヤモンド電極からなる陽極17および陰極18が設けられている。当初、過硫酸生成槽12内には、濃度4mol/lの低濃度硫酸(H2SO4)が貯留されており、その低濃度硫酸中に、陽極17および陰極18が浸漬されている。そして、陽極17および陰極18間に直流電圧が印加されると、低濃度硫酸に含まれる硫酸イオン(SO42-)の酸化反応が生じ、ペルオキソ一硫酸よりも強い酸化力を有するペルオキソ二硫酸(S282-)を含む過硫酸が生成される。
【0023】
装置運転中は、ポンプ13が常に駆動されるとともに、陽極17および陰極18間に直流電圧が常に印加されている。そのため、過硫酸供給バルブ14が閉じられ、過硫酸循環バルブ16が開かれている間は、ポンプ13の作用により過硫酸生成槽12から過硫酸供給配管10に吸い出される過硫酸は、過硫酸帰還配管15を通して、過硫酸生成槽12に戻される。これにより、過硫酸生成槽12、過硫酸供給配管10および過硫酸帰還配管15からなる循環路を過硫酸が循環する。一方、過硫酸供給バルブ14が開かれ、過硫酸循環バルブ16が閉じられると、過硫酸供給配管10を流れる過硫酸は、過硫酸供給バルブ14を通過して、ミキシングバルブ8に供給される。
【0024】
高温高濃度硫酸供給配管11は、たとえば、温度120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸(H2SO4)を貯留する高温高濃度硫酸槽19から延びている。高温高濃度硫酸供給配管11の途中部には、高温高濃度硫酸槽19に貯留されている高温高濃度硫酸を吸い出すためのポンプ20と、このポンプ20の作用により高温高濃度硫酸供給配管11を流れる高温高濃度硫酸を加熱するためのヒータ21と、高温高濃度硫酸供給配管11を開閉するための高温高濃度硫酸供給バルブ22とが介装されている。また、高温高濃度硫酸供給配管11には、ヒータ21と高温高濃度硫酸供給バルブ22との間において、高温高濃度硫酸帰還配管23が分岐して接続されている。この高温高濃度硫酸帰還配管23の途中部には、高温高濃度硫酸循環バルブ24が介装されている。高温高濃度硫酸帰還配管23の先端は、高温高濃度硫酸槽19に接続されている。
【0025】
装置運転中は、ポンプ20およびヒータ21が常に駆動されている。そのため、高温高濃度硫酸供給バルブ22が閉じられ、高温高濃度硫酸循環バルブ24が開かれている間は、ポンプ20の作用により高温高濃度硫酸槽19から高温高濃度硫酸供給配管11に吸い出される高温高濃度硫酸は、高温高濃度硫酸帰還配管23を通して、高温高濃度硫酸槽19に戻される。これにより、高温高濃度硫酸槽19、高温高濃度硫酸供給配管11および高温高濃度硫酸帰還配管23からなる循環路を高温高濃度硫酸が循環する。こうして高温高濃度硫酸を循環させておくことによって、高温高濃度硫酸を一定温度(この実施形態では、120℃)に温度調節して、その温度調節された高温高濃度硫酸を高温高濃度硫酸槽19に貯留しておくことができる。一方、高温高濃度硫酸供給バルブ22が開かれ、高温高濃度硫酸循環バルブ24が閉じられると、高温高濃度硫酸供給配管11を流れる高温高濃度硫酸は、高温高濃度硫酸供給バルブ22を通過して、ミキシングバルブ8に供給される。
【0026】
ミキシングバルブ8には、過硫酸供給配管10からの過硫酸と高温高濃度硫酸供給配管11からの高温高濃度硫酸が2:1〜1:4(過硫酸:高温高濃度硫酸)の体積比で供給されるようになっている。ミキシングバルブ8に過硫酸および高温高濃度硫酸が供給されると、これらが混合されて、その混合液がミキシングバルブ8から処理液供給配管9に流出する。このとき、高温高濃度硫酸が過硫酸で希釈されることによる希釈熱が生じ、この希釈熱および高温高濃度硫酸が有する熱により、過硫酸および高温高濃度硫酸の混合液は、高温高濃度硫酸の液温以上の高温に急速に昇温する。
【0027】
処理液供給配管9の途中部には、ミキシングバルブ8から流出する過硫酸および高温高濃度硫酸の混合液を撹拌するための攪拌流通管25が介装されている。
攪拌流通管25は、たとえば、管部材内に、それぞれ液体流通方向を軸にほぼ180度のねじれを加えた長方形板状体からなる複数の撹拌フィンを、液体流通方向に沿う管中心軸まわりの回転角度を90度ずつ交互に異ならせて配置した構成を有している。このような構成の攪拌流通管25としては、たとえば、アドバンス電気工業株式会社製の商品名「MXシリーズ:インラインミキサー」を用いることができる。この攪拌流通管25が介装されていることにより、ノズル3に向けて供給される混合液(処理液)中の過硫酸および高温高濃度硫酸を均一に混ぜ合わせることができる。
【0028】
図2は、基板処理装置1におけるレジスト除去処理を説明するための図である。
レジスト除去処理に際しては、搬送ロボット(図示せず)によって、基板処理装置1にウエハWが搬入されてくる。このウエハWは、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック2に保持される。
ウエハWがスピンチャック2に保持される前は、過硫酸供給バルブ14が閉じられ、過硫酸循環バルブ16が開かれており、過硫酸生成槽12、過硫酸供給配管10および過硫酸帰還配管15からなる循環路を過硫酸が循環している。また、高温高濃度硫酸供給バルブ22が閉じられ、高温高濃度硫酸循環バルブ24が開かれており、高温高濃度硫酸槽19、高温高濃度硫酸供給配管11および高温高濃度硫酸帰還配管23からなる循環路を高温高濃度硫酸が循環している。さらに、ノズル3は、カップ4の外側に設定されたホームポジションに配置されて、このホームポジションに設けられたプリディスペンスポッド(図示せず)に対向している。
【0029】
ウエハWがスピンチャック2に保持されると、過硫酸循環バルブ16が閉じられ、過硫酸供給バルブ14が開かれる(ステップS1)。さらに、高温高濃度硫酸循環バルブ24が閉じられ、高温高濃度硫酸供給バルブ22が開かれる(ステップS2)。これにより、ミキシングバルブ8に過硫酸および高温高濃度硫酸が供給されて、それらの混合液が処理液としてミキシングバルブ8からノズル3に送られ、その処理液とともに、処理液供給配管9に残っている冷めた処理液がノズル3から吐出される。このとき、ノズル3はホームポジションに配置されたままであるから、ノズル3から吐出される処理液は、プリディスペンスポッドに受け取られる。
【0030】
その一方、ウエハWがスピンチャック2に保持されると、スピンチャック2によるウエハWの回転が開始され、ウエハWが所定の回転速度(たとえば、500〜1000rpm)で回転される。そして、ウエハWがスピンチャック2に保持されてから一定時間(処理液供給配管9に残っていた処理液をノズル3からすべて吐出させるのに十分な時間)が経過すると、アーム6が旋回して、ノズル3がホームポジションからウエハWの上方に移動され、ノズル3から吐出される処理液のウエハWの表面への供給が開始される(ステップS3)。これにより、処理液供給配管9に残っていた冷めた処理液がウエハWの表面に供給されるのを防止することができる。
【0031】
ウエハWの表面に供給される処理液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、その供給位置からウエハWの周縁に向けて、ウエハWの表面上を拡がりつつ流れる。これによって、ウエハWの表面全域に高温の処理液がむらなく行き渡り、ウエハWの表面に形成されているレジストが高温の処理液の強い酸化力によって剥離されて除去されていく。
なお、ウエハWに処理液が供給されている間、ノズル3は、ウエハWの回転中心上で停止させていてもよいし、アーム6を所定の角度範囲内で繰り返し揺動させることにより、ウエハWの上方で往復移動させてもよい。アーム6を所定の角度範囲内で繰り返し揺動させる場合、それに伴って、ウエハWの表面上で、ノズル3からの処理液の供給位置をスキャン(移動)させることができる。そのため、ウエハWの表面の全域によりむらなく処理液を供給することができる。
【0032】
処理液の供給開始から所定時間(たとえば、30〜120秒間)が経過すると(ステップS4のYES)、過硫酸供給バルブ14が閉じられ、過硫酸循環バルブ16が開かれる(ステップS5)。また、高温高濃度硫酸供給バルブ22が閉じられ、高温高濃度硫酸循環バルブ24が開かれる(ステップS6)。これにより、ミキシングバルブ8への過硫酸および高温高濃度硫酸の供給が停止されて、ノズル3からウエハWの表面への処理液の供給が停止される。
【0033】
その後は、ノズル3がホームポジションに退避された後、図示しないDIW(deionized water)ノズルから回転中のウエハWの表面にDIWが供給されて、ウエハWの表面に付着している処理液が洗い流される。そして、DIWの供給が予め定める時間にわたって続けられると、DIWの供給が停止された後、スピンチャック2によるウエハWの回転速度が所定の高回転速度(たとえば、2500〜5000rpm)に上げられる。このウエハWの高速回転により、ウエハWに付着しているDIWが振り切られて乾燥される。この処理が予め定める時間にわたって行われると、スピンチャック2によるウエハWの回転が停止され、ウエハWが静止した後、その処理済みのウエハWが搬送ロボット(図示せす)によって搬出されていく。
【0034】
以上のように、この基板処理装置1では、低濃度硫酸の電気分解により生成される過硫酸とその低濃度硫酸よりも高温かつ高濃度の高温高濃度硫酸とが混合され、この混合液がウエハWの表面に供給される。過硫酸と高温高濃度硫酸が混ざり合うと、高温高濃度硫酸が過硫酸で希釈されることによる希釈熱が生じ、この希釈熱および高温高濃度硫酸が有する熱により、その過硫酸および高温高濃度硫酸の混合液(処理液)は、高温高濃度硫酸の液温である120℃以上の高温に一気に昇温する。そして、その高温の処理液が昇温後直ちにノズル3からウエハWの表面に向けて吐出されることにより、ペルオキソ二硫酸を高濃度に含む処理液をウエハWの表面に供給することができる。そのため、レジストの表面が高ドーズのイオン注入により変質していても、ペルオキソ二硫酸の強酸化力によって、そのレジストを基板から良好に剥離して除去することができる。
【0035】
なお、混合液としての処理液における過硫酸の濃度は、10〜150g/lとなるように調整されることが好ましい。従来用いられていたSPM(硫酸:過酸化水素=5:1)では、その濃度が2〜5g/l程度であることから、このようにした場合、レジストとの反応性がより高く、レジスト除去処理に要する時間をさらに短縮することができる。また、より高ドーズのイオン注入処理が行われた後のウエハWの洗浄など、ウエハW上のレジストとのより高い反応性が求められる場合には、過硫酸の濃度は、30〜150g/lとなるように調整されることがより好ましい。
【0036】
また、過硫酸および高温高濃度硫酸の混合液である処理液は、過酸化水素成分を含まず、硫酸系成分のみからなるので、レジスト除去処理に使用した後に適当な再利用処理を施すことにより、それ以降のレジスト処理に再利用することができ、また、レジスト除去処理に一度使用した処理液を廃液する場合に、その廃液処理が簡単である。
図3は、昇温試験の結果を示すグラフである。
【0037】
DIWと濃度96wt%の硫酸とを体積比3.6:1で混合して得られる温度40℃、濃度4mol/lの低濃度硫酸に、温度約120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸を体積比2:1〜1:4で混合し、それぞれの混合液の液温(到達温度)を調べる試験(昇温試験)を行った。
温度40℃、濃度4mol/lの低濃度硫酸に、温度約120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸を体積比2:1で混合した場合、その混合液の液温は、約125℃まで昇温した。
【0038】
温度40℃、濃度4mol/lの低濃度硫酸に、温度約120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸を体積比1:1で混合した場合、その混合液の液温は、約140℃まで昇温した。
温度40℃、濃度4mol/lの低濃度硫酸に、温度約120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸を体積比1:2で混合した場合、その混合液の液温は、約160℃まで昇温した。
【0039】
温度40℃、濃度4mol/lの低濃度硫酸に、温度約120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸を体積比1:3で混合した場合、その混合液の液温は、約160℃まで昇温した。
温度40℃、濃度4mol/lの低濃度硫酸に、温度約120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸を体積比1:4で混合した場合、その混合液の液温は、約155℃まで昇温した。
【0040】
図3(a)には、これらの結果がクロスハッチングを付した棒グラフで示されている。
また、DIWと濃度96wt%の硫酸とを体積比3.6:1で混合して得られる温度80℃、濃度4mol/lの低濃度硫酸に、温度約120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸を体積比2:1〜1:4で混合し、それぞれの混合液の液温(到達温度)を調べる試験(昇温試験)を行った。
【0041】
温度80℃、濃度4mol/lの低濃度硫酸に、温度約120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸を体積比2:1で混合した場合、その混合液の液温は、約140℃まで昇温した。
温度80℃、濃度4mol/lの低濃度硫酸に、温度約120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸を体積比1:1で混合した場合、その混合液の液温は、約160℃まで昇温した。
【0042】
温度80℃、濃度4mol/lの低濃度硫酸に、温度約120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸を体積比1:2で混合した場合、その混合液の液温は、約200℃まで昇温した。
温度80℃、濃度4mol/lの低濃度硫酸に、温度約120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸を体積比1:3で混合した場合、その混合液の液温は、約200℃まで昇温した。
【0043】
温度80℃、濃度4mol/lの低濃度硫酸に、温度約120℃、濃度96wt%の高温高濃度硫酸を体積比1:4で混合した場合、その混合液の液温は、約180℃まで昇温した。
図3(b)には、これらの結果がクロスハッチングを付した棒グラフで示されている。
以上の結果から、高温高濃度硫酸の液温が120℃であれば、過硫酸(この試験では、過硫酸に代えて濃度4mol/lの低濃度硫酸を用いている。)が40℃であっても、過硫酸と高温高濃度硫酸との混合液が120℃以上に昇温することが理解される。また、過硫酸の温度が高いほど、過硫酸と高温高濃度硫酸との混合液が高温に昇温することが理解される。
【0044】
この発明の一実施形態の説明は以上のとおりであるが、この発明は、他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、濃度4mol/lの低濃度硫酸を電気分解して過硫酸を生成するとしたが、過硫酸の生成に使用される低濃度硫酸の濃度は、4mol/lに限らない。ただし、濃度2〜11mol/lの低濃度硫酸は、硫酸イオンの存在量が0.5〜2.0mol/lと高いため、このような濃度の低濃度硫酸を過硫酸の生成に用いることにより、ペルオキソ二硫酸の生成効率の向上を図ることができる。また、硫酸濃度4〜8mol/lのものであれば、硫酸イオンの存在量が1.5〜2.0mol/lとより高いので、ペルオキソ二硫酸の生成効率をより高くすることができる。
【0045】
また、硫酸とDIWとをミキシングバルブで混合して低濃度硫酸を作製し、この低濃度硫酸を過硫酸生成槽12に供給する構成が採用されて、そのミキシングバルブにおける硫酸とDIWとの混合比が変更可能とされることにより、過硫酸の生成に使用される低濃度硫酸の濃度を変更可能としてもよい。
さらに、前述の実施形態では、ミキシングバルブ8において、過硫酸供給配管10からの過硫酸と高温高濃度硫酸供給配管11からの高温高濃度硫酸が1:1の体積比で混合されるとしたが、たとえば、過硫酸供給配管10および高温高濃度硫酸供給配管11の途中部に流量調整バルブを介装して、ミキシングバルブ8における過硫酸と高温高濃度硫酸との混合比を変更可能としてもよい。
【0046】
また、高温高濃度硫酸の液温が120℃である場合を例にとったが、ヒータ21の発熱量を制御するためのコントローラを設けて、高温高濃度硫酸の液温を変更可能としてもよい。そして、この基板処理装置1が酸素プラズマによりアッシングされた後のレジストをウエハWの表面から除去するために用いられる場合に、高温高濃度硫酸の液温が120℃よりも低温に設定されてもよい。
【0047】
また、ミキシングバルブ8と過硫酸供給バルブ14との間にヒータが介装されて、このヒータにより、ミキシングバルブ8に供給される過硫酸が補助的に加熱されてもよい。過硫酸を加熱することにより、過硫酸と高温高濃度硫酸との混合液である処理液の液温をより高温とすることができる。なお、処理液の液温としては、120〜200℃が好ましく、120〜180℃がより好ましい。180℃を超えると、水蒸気などのガスが多量に発生し、処理液とレジストとの接触効率が下がるためである。
【0048】
さらに、前述の実施形態では、低濃度硫酸の電気分解により過硫酸を生成する構成を取り上げたが、他の実施形態として、低濃度硫酸にオゾンガスをバブリングさせて、硫酸イオンを酸化させることにより、ペルオキソ二硫酸を含む過硫酸を生成する構成が採用されてもよい。具体的には、図1に示す陽極17および陰極18に代えて、図4に示すように、過硫酸生成槽12の底部にオゾン溶解手段としてのバブラー31を配置し、オゾンガス供給バルブ32を介してバブラー31に供給されるオゾンガスを、過硫酸生成槽12に貯留されている低濃度硫酸にバブリングさせることにより、ペルオキソ二硫酸を含む過硫酸を生成する構成が採用されてもよい。
【0049】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す基板処理装置におけるレジスト除去処理を説明するための図である。
【図3】昇温試験の結果を示すグラフである。
【図4】この発明の他の実施形態に係る基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 基板処理装置
2 スピンチャック
3 ノズル
8 ミキシングバルブ
12 過硫酸生成槽
17 陽極
18 陰極
31 バブラー
32 オゾンガス供給バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持手段と、
硫酸を用いて過硫酸を生成する過硫酸生成手段と、
前記過硫酸生成手段により生成される過硫酸と前記過硫酸生成手段により用いられる硫酸よりも高温かつ高濃度の硫酸とを混合させる混合手段と、
前記混合手段により混合された過硫酸と硫酸との混合液を、基板からレジストを除去するための処理液として、前記基板保持手段に保持された基板に向けて吐出する吐出手段とを含むことを特徴とする、基板処理装置。
【請求項2】
前記過硫酸生成手段は、硫酸を電気分解するための電気分解槽を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記電気分解槽は、ダイヤモンドで形成された電極を有していることを特徴とする、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記過硫酸生成手段は、硫酸にオゾンを溶解させるオゾン溶解手段を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板保持手段は、1枚の基板を保持しつつ回転させるものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
硫酸を用いて過硫酸を生成する過硫酸生成工程と、
前記過硫酸生成工程で生成される過硫酸と前記過硫酸生成工程で用いられる硫酸よりも高温かつ高濃度の硫酸とを混合させ、その混合液を混合後直ちに、基板からレジストを除去するための処理液として、基板に供給する供給工程とを含むことを特徴とする、基板処理方法。
【請求項7】
前記過硫酸生成工程で用いられる硫酸の濃度は2〜11mol/lであることを特徴とする、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記供給工程において、前記混合液における過硫酸の濃度は10〜150g/lであることを特徴とする、請求項6または7に記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−66464(P2008−66464A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241798(P2006−241798)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】