説明

基板処理装置および基板処理装置の洗浄方法

【課題】処理チャンバ内で基板表面に向けて電子ビームを照射して所定の基板処理を行う際に汚染物質が発生する基板処理装置において、処理チャンバから汚染物質を良好に、しかも低コストでクリーニング除去する。
【解決手段】電子ビーム照射を停止している間、オゾンガス供給ユニット48Bにより処理空間41aにオゾンガスが初期充填された後に循環ファン49aが作動してクリーニング用流路(給排気流路)の両端部を処理空間41aに連通してなる循環経路に沿ってオゾンガスが循環する。この循環流動するオゾンガスによって処理チャンバ41内に付着した汚染物質が分解されて処理チャンバ41の内壁面全体がクリーニング除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理チャンバ内で基板に電子ビームを照射して所定の基板処理を行う基板処理装置、特に処理チャンバ内をクリーニングする技術に関するものである。なお、基板としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(電界放出ディスプレイ:Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の各種基板(以下、単に「基板」という)が含まれる。
【背景技術】
【0002】
基板の表面に電子ビームを照射する技術は多方面で利用されているが、そのひとつとして半導体装置の製造工程における層間絶縁膜の改質技術がある。半導体装置の層間絶縁膜として熱CVDやプラズマCVDにより形成されたシリコン酸化膜が従来多用されていたが、配線間容量を低減するために、有機シリコン酸化膜あるいはシリコンを含まない有機膜などの低誘電率膜、いわゆるLow−k膜の採用が進んでいる。この低誘電率膜を製造する際に加熱処理のみでは十分な強度が得られないため、電子ビーム照射と加熱処理を組み合わせて層間絶縁膜を硬化させる基板処理技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
この特許文献1に記載の装置では、真空チャンバの内部に半導体ウエハを支持する載置台が設けられる一方、真空チャンバの天井部に電子ビームを発生させるための電子ビーム照射機構が設けられている。そして、未処理の半導体ウエハが載置台上に載置されると、次のようにして半導体ウエハ上の層間絶縁膜に対して硬化処理が施される。つまり、排気管を通じて真空チャンバ内を排気するとともに、ガス導入管から窒素ガス等の所定の雰囲気ガスを導入し、真空チャンバ内を所定の圧力、例えば1.33〜66.5KPa(10〜500Torr)程度に減圧する。そして、載置台に組み込まれたヒータによって半導体ウエハを所定温度に加熱しつつ、電子ビームを半導体ウエハに照射する。これによって、半導体ウエハ上の層間絶縁膜が硬化する。
【0004】
【特許文献1】特許第4056855号公報(図1)
【特許文献2】特開2002−25914号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来装置では、真空チャンバ内を減圧した状態で硬化処理が行われるため、硬化処理中に発生する汚染物質は真空チャンバ全体に広がり、常温の真空チャンバ内壁に凝縮してしまう。その結果、次の半導体ウエハに対して硬化処理を施す際に、凝集体が脱ガスやパーティクル、もしくはパーティクル源として真空チャンバ内に存在することとなり、清浄な硬化処理を行うことが困難であった。さらに、電子ビーム照射機構自体への汚染蓄積もあり、照射強度が低下して結果的に処理効率が低下していた。そこで、チャンバ内をクリーニングするために、例えば特許文献2に記載のプラズマクリーニング技術を特許文献1に記載の装置に組み込むことが提案されている。
【0006】
しかしながら、上記プラズマクリーニング技術を採用した装置では、真空チャンバ内を大気圧に戻して硬化処理済の基板をチャンバから搬出した後に、真空チャンバ内を再び排気して真空状態とし、さらに酸素ガスなどを導入してプラズマを発生させる必要がある。そのため、減圧までの時間や、プラズマエネルギーの消費、酸素ガスの消費が、クリーニングが終了するまで連続し、クリーニング時間やランニングコストが非常にかかっていた。
【0007】
また、真空チャンバ内を減圧した状態で硬化処理を行う基板処理装置では、硬化処理を行うたびに汚染物質が真空チャンバの内壁面に付着するため、クリーニング頻度が多くなってしまう。このことがランニングコストの増大を招く主要因のひとつでもあった。
【0008】
また、上記したように特許文献1に記載の装置に特許文献2に記載のプラズマクリーニング技術を適用する場合には、本来の装置構成に加えて別途プラズマ発生源を装備する必要がある。そのため、装置の複雑化、フットプリントの増加、イニシャルコストのアップ等の問題も発生していた。
【0009】
さらに、真空チャンバ内壁全体をプラズマによってクリーニングすることは事実上困難であり、チャンバ内壁全体を良好にクリーニングすることができる技術が要望されていた。
【0010】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、処理チャンバ内で基板表面に向けて電子ビームを照射して所定の基板処理を行う際に汚染物質が発生する基板処理装置において、処理チャンバから汚染物質を良好にクリーニング除去することを第1の目的とする。
【0011】
この発明は上記した処理チャンバからの汚染物質のクリーニング除去を低コストで行うことを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明にかかる基板処理装置は、上記第1の目的を達成するため、基板処理を行うための処理空間を有する処理チャンバと、処理空間内に配置された基板の表面に向けて電子ビームを射出する電子ビーム発生手段と、処理空間に連通されて処理空間にオゾンガスを供給するオゾンガス供給手段とを備え、電子ビーム照射を停止している間に、オゾンガスを供給して処理チャンバ内をクリーニングすることを特徴としている。
【0013】
また、この発明にかかる基板処理装置の洗浄方法は、処理チャンバの処理空間に配置された基板の表面に対して電子ビーム発生手段から電子ビームを照射しながら基板を電子ビーム発生手段に対して相対移動させることで電子ビームが照射される電子ビーム照射領域を走査させて基板表面に所定の処理を施す基板処理装置において処理チャンバ内を洗浄する洗浄方法であって、上記第1の目的を達成するため、電子ビーム照射を停止している間に、オゾンガスを処理チャンバに供給して処理チャンバ内をクリーニングすることを特徴としている。
【0014】
このように構成された発明(基板処理装置および基板処理装置の洗浄方法)では、基板処理を行うための処理空間に対してオゾンガスが供給されて処理空間全体に行き渡る。そして、基板処理を行う際に発生して処理チャンバ内に付着した汚染物質がオゾンガスによって分解されて処理チャンバからクリーニング除去される。
【0015】
ここで、処理空間に対して給排気流路の各端部を連通して循環経路を形成するとともに、その循環経路に沿ってオゾンガスを循環させて処理チャンバ内をクリーニングするように構成してもよい。この場合、オゾンガスが循環経路に沿って循環するため、少量のオゾンガスによってクリーニング除去を効率的に行うことができ、その結果、ランニングコストを効果的に低減させることができる。
【0016】
また、オゾンガス供給手段により処理空間にオゾンガスを初期充填した後に、循環駆動部によりオゾンガスを循環経路に沿って循環させるように構成してもよい。このように未使用オゾンガスを最初に処理空間に導入することでクリーニング除去効率を高めることができる。
【0017】
また、処理空間または給排気流路に対して排気経路を連通し、当該排気経路を介して循環経路を排気してもよく、この排気経路または循環経路上にオゾン分解手段を設け、排気経路や循環経路に沿って流通するガスに含まれるオゾンガス成分を酸素に分解してもよい。このようにオゾンガス成分を分解した上で装置外部に排出することができ、環境負荷を抑制することができる。
【0018】
さらに、本発明については、処理空間内に配置された基板の表面に向けて電子ビームを照射して所定の基板処理を行う基板処理装置全般に対して適用可能であるが、例えば次のように構成された基板処理装置に適用することができる。この基板処理装置は、電子ビーム照射領域に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、基板への電子ビーム照射によって発生する汚染物質を除去可能な除去手段とを備えている。このように構成された基板処理装置において、ガス循環手段は、電子ビーム照射を行っている間に、汚染物質を不活性ガスと一緒に排気ガスとして処理空間から給排気流路に排気し、当該排気ガスから除去手段によって汚染物質を除去することで得られる処理ガスを処理空間に供給してもよい。この装置では、電子ビーム照射を行っている間、処理空間から給排気流路に排気された排気ガスから処理ガスを得るとともに、その処理ガスを処理空間に供給している。このように循環経路を、(1)電子ビーム照射を行っている間において処理ガスの循環供給経路として用い、(2)電子ビーム照射を停止している間においてオゾンガスの循環供給経路として用いることができ、循環経路の多機能化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、電子ビーム照射を停止している間に、オゾンガスを処理チャンバに供給し、当該オゾンガスによって処理チャンバ内に付着した汚染物質を分解して処理チャンバからクリーニング除去している。したがって、処理チャンバの内壁全体を効率よく、しかもほぼ完全にクリーニングすることができる。
【0020】
また、給排気流路の両端部を処理空間に連通してなる循環経路に沿ってオゾンガスを循環させると、少量のオゾンガスを利用してクリーニング処理を効率的に実行することができ、オゾン発生時に使用する酸素量およびオゾンガス発生のためのエネルギー消費量などを削減することができ、ランニングコストを効果的に低減させることができる。また、循環経路の汚染物質も同時に分解除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(基板処理システムの概略構成)
図1はこの発明にかかる基板処理装置の一実施形態である電子ビームキュア装置を装備した基板処理システムを示す図である。この基板処理システムは、複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)から取り出した未処理基板Wに対して加熱処理および硬化処理を施した後に基板Wを常温に冷却してFOUPに戻すという一連の処理を実行する。すなわち、基板処理システムは搬送ロボット室1を中心として当該搬送ロボット室1の周囲に、ロードロック室2と、ホットプレート3と、2つの電子ビームキュア装置4A、4Bと、コールドプレート5と、ロードロック室6が配置されている。また、搬送ロボット室1と、ロードロック室2、ホットプレート3、電子ビームキュア装置4A、4B、コールドプレート5およびロードロック室6との間にはシャッター72A、73、74A、74B、75、76Aがそれぞれ配置されている。
【0022】
このロードロック室2はローダ用であり、FOUPに対して基板Wの搬入出を行う搬送ロボット8に対向する側面にローダ用開口(図示省略)を有している。また、ロードロック室2には、ローダ用開口を開閉するシャッター72Bが設けられている。この実施形態では、ロードロック室2は大気雰囲気であり、シャッター72Bを開いた状態で搬送ロボット8がFOUPから未処理基板W、つまり表面に未硬化状態の層間絶縁膜(図6中の符号F)が塗布された基板W、あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)により成膜された基板Wをロードロック室2に搬入可能となっている。一方、シャッター72Aが開いた状態で、搬送ロボット室1に配置された搬送ロボット11はハンド(図示省略)をロードロック室2に移動させて未処理基板Wを受け取り、搬送ロボット室1に搬送する。
【0023】
この搬送ロボット室1は窒素ガス雰囲気に調整されており、その内圧は大気圧となっている。この点に関しては、ホットプレート3およびコールドプレート5も同一である。一方、電子ビームキュア装置4A、4Bについては電子ビーム照射中に大気圧または若干陽圧に調整されたアルゴンガス雰囲気に保たれている。この点については、後で詳述する。
【0024】
未処理基板Wを受け取った搬送ロボット11は基板Wをホットプレート3、電子ビームキュア装置4A(または4B)およびコールドプレート5に、この順序で搬送する。一方、基板Wが搬送されてきたホットプレート3、電子ビームキュア装置4A(または4B)およびコールドプレート5はそれぞれ加熱処理、硬化処理および冷却処理を実行して層間絶縁膜Fを硬化させて所望特性(低誘電率膜で、かつ十分な強度)を付与する。なお、ホットプレート3およびコールドプレート5の構成および動作については従来から周知であるため、ここでは説明を省略する一方、電子ビームキュア装置4A、4Bは本発明の基板処理装置に相当するため、後で詳しく説明する。
【0025】
上記のようにして層間絶縁膜Fに所望特性が与えられると、搬送ロボット11はコールドプレート5から基板Wを搬送ロボット室1に取り出す。そして、シャッター76Aが開いた状態で、搬送ロボット11は基板Wを保持したハンド(図示省略)をアンロード用のロードロック室6に移動させて基板Wの搬出を行う。この実施形態では、ロードロック室6も、ロードロック室2と同様に大気雰囲気であり、シャッター76Bを開いた状態で搬送ロボット8がロードロック室6に基板Wを取り出し、FOUPに収納可能となっている。
【0026】
(電子ビームキュア装置の構成)
図2は本発明にかかる基板処理装置の一実施形態である電子ビームキュア装置を示す断面図である。また、図3はバージボックスを下方から見た斜視図および部分拡大底面図である。また、図4は図2に示す電子ビームキュア装置の電気的構成を示すブロック図である。さらに、図5は図2に示す電子ビームキュア装置でのガス供給系統を示す図である。電子ビームキュア装置4A、4Bはともに同一構成であり、以下のように構成されている。
【0027】
電子ビームキュア装置4A(4B)は電子ビーム発生ユニット40A、40Bから射出される電子ビームを基板Wの表面Wfに向けて照射して層間絶縁膜を硬化する装置であり、次のように構成されている。この電子ビームキュア装置4A(4B)には、硬化処理を実行するための処理空間41aを有する処理チャンバ41が設けられている。この処理チャンバ41の搬送ロボット側(図2の左手側)の側壁には、搬送ロボット11(図1)のハンドが挿入可能な形状を有する基板通過口41bが設けられるとともに、この基板通過口41bに対してシャッター74A(74B)が設けられている。そして、搬送ロボット11による基板Wの搬入出時には、電子ビームキュア装置全体を制御する制御ユニット42からの開指令に応じてシャッター74A(74B)は上方に移動して基板通過口41bを開放する。逆に、後述するように硬化処理を施す際には制御ユニット42からの閉指令に応じてシャッター74A(74B)は図2に示すように下方に移動して基板通過口41bを閉じている。
【0028】
処理チャンバ41の処理空間41aには、基板Wを保持可能なステージ44が移動方向Xに移動自在に、しかも上下方向Zに昇降自在に設けられている。このステージ44の上面には、球状のプロキシミティボール(図示省略)が複数個設けられており、各ボールの球面頂部で基板Wの裏面を支持可能となっている。これにより基板表面Wfを上方に向けた水平状態で基板Wはステージ44の上面から僅かに浮いた状態で支持される。こうして支持された基板Wの周縁部を取り囲むようにピンが複数本だけステージ44の上面から突設されて基板Wの水平方向における位置ずれを防止している。また、この実施形態では、ステージ44にはヒータ45が内蔵されており、制御ユニット42からの動作指令に応じてヒータ45が作動することで基板Wを裏面側から加熱して基板温度を硬化処理に適した温度、例えば350〜400゜C程度まで昇温可能となっている。なお、基板Wの温度の均一性が厳しく要求されない処理用途の場合、プロキシミティボールを無くしてステージ44上に基板Wを接触載置するようにしてもよい。
【0029】
このように構成されたステージ44はステージ駆動ユニット46に接続されている。このステージ駆動ユニット46はステージ44を上下方向Zに昇降駆動する昇降駆動部46aと、昇降駆動部46aおよびステージ44を一体的に移動方向Xに駆動するリニア駆動部46bとを有している。そして、制御ユニット42からの移動指令に応じてリニア駆動部46bが作動すると、昇降駆動部46aおよびステージ44が一体的に移動方向Xに駆動されて基板Wを所定の基板移動範囲MRに渡って往復移動させることが可能となっている。このように本実施形態では、ステージ44とリニア駆動部46bが本発明の「移動手段」として機能している。
【0030】
また、制御ユニット42からの昇降指令に応じて昇降駆動部46aが作動すると、ステージ44が昇降して基板Wを搬送高さ位置(図2の破線高さ位置)と処理高さ位置(図2の1点鎖線および実線高さ位置)に位置決め可能となっている。なお、この実施形態では、基板Wの搬入出を行う際には、図2の破線に示すように、ステージ44を搬送ロボット室1側(同図の左手側)に移動させるとともに搬送高さ位置に下降させている(搬送ポジション)。そして、硬化処理を行う際には、処理高さ位置まで上昇させた後にステージ44を反搬送ロボット室1側(同図の右手側)に移動させる。そして、硬化処理終了後には、上記とは逆の動作を行ってステージ44を元の搬送ポジションに移動させる。
【0031】
この実施形態では、処理チャンバ41内で、上記のようにして基板移動範囲MRを移動する基板Wの表面Wfを上方側から覆うようにパージボックス47が配置されている。このパージボックス47は図3に示すように直方体形状を有しており、移動方向Xと直交する幅方向Yの長さLyは基板Wの外径より大きく、移動方向Xの長さLxは基板Wの外径の2倍以上となっている。このため、基板Wが移動方向Xに移動している間、基板Wはパージボックス47の下面プレート47aと常に対向しており、基板表面側の雰囲気APは下面プレート47aにより規制される。つまり、基板表面Wfと下面プレート47aの間に形成される基板表面側雰囲気APは処理空間41aに比べて大幅に小さくなっており、しかも周囲から遮断されている。なお、基板表面Wfと下面プレート47aとの距離は1〜10mmに設定される。また、上記実施例においては、パージボックス47の移動方向Xの長さLxは基板Wの外径の2倍以上となっているが、パージボックス47と排気ユニット49による電子ビーム照射領域IRにおける雰囲気が管理されるのであれば基板Wの外径より小さくしても良い。
【0032】
このパージボックス47の内部には、図2に示すように、幅方向Yに延びる中空室47b〜47dが移動方向Xに並設されている。これらのうち中央の中空室47cは電子ビーム照射用の中空室であり、中空室47cに電子ビーム発生ユニット40A、40Bの一部が取り付けられている。本実施形態では、電子ビーム発生ユニット40A、40Bはともに同一構成を有しており、幅方向Yに150mmのスキャン幅で電子ビームを走査可能となっている。そして、この実施形態では、下面プレート(プレート部材)47aに対して基板表面Wfの反対側(図2の上方側)において上記2つの電子ビーム発生ユニット40A、40Bが幅方向Yに千鳥配列されて略300mmのスキャン幅で電子ビームを幅方向Yに走査可能となっている。なお、上記実施例においては、300mmのスキャン幅を2個の電子ビーム発生ユニット40A、40Bを配列することで本発明の「電子ビーム発生手段」を構成しているが、300mmのスキャン幅を有する1個の電子ビーム発生ユニットで構成すようにしても良い。
【0033】
各電子ビーム発生ユニット40A、40Bは、電子放出部材であるフィラメントから電子ビーム(図7中の符号EB)を射出する電子銃(図示省略)を有している。この電子銃のフィラメントは真空容器40aの収容室40bに収容されている。また、真空容器40aには、電子通路40cが収容室40bから電子ビームEBの射出方向(この実施形態では下方向)に延設されている。そして、収容室40bと電子通路40cの連通部の周囲には、電磁偏向レンズとして機能する筒状の電磁コイルが設けられており、電子銃から射出される電子ビームEBを幅方向Yにスキャン可能となっている。また、電子ビームEBのスキャンに対応して電子通路40cは円筒形状の収容室40bとの連通部を境に、その先端へ向けて扇状に拡大している。すなわち、電子通路40cは幅方向Yの幅のみが徐々に拡大しており、移動方向Xの幅は一定となっている。したがって、電子通路40cの先端は幅方向(スキャン方向)Yを長手方向として細長く延びている。そして、電子通路40cの後端部が処理チャンバ41の天井中央部に取り付けられるとともに先端部がパージボックス47の中空室47cに取り付けられて電子ビーム発生ユニット40A、40Bが処理チャンバ41に対して固定配置されている。
【0034】
このように構成された電子ビーム発生ユニット40A、40Bでは、電子銃から出射された電子ビームEBは電子通路40cを通過するとき、電磁コイルによってその射出方向Yが偏向される。これにより、電子ビームEBの射出軸線が幅方向(スキャン方向)Yに沿って移動する。そして、電子ビームEBは真空容器40aの先端に設けられた窓部40dに達する。
【0035】
各窓部40dは電子銃から射出された電子ビームEBを真空容器40aの外部へ射出するための構成要素であり、真空容器40aの先端(電子通路40cの端部)において、幅方向(スキャン方向)Yに延設された矩形形状に仕上げられている(図3(b)参照)。また、各矩形状窓部40dは同図(a)に示すようにパージボックス47の下面中央部に形成された電子ビームEB照射用の矩形状の開口部47eに対向しており、窓部40dから射出された電子ビームは開口部47eを通過して基板表面Wfに向けて照射される。なお、この実施形態では、同図(b)に示すように、2つの窓部40dは電子ビーム発生ユニット40A、40Bと同様に千鳥配列されている。
【0036】
また、パージボックス47の中央中空室47cの上面にはアルゴンガス供給ユニット48Aが接続されており、制御ユニット42からの指令にしたがってアルゴンガス供給ユニット48Aが作動することで中央中空室47cに未使用のアルゴンガスが供給される。この中央中空室47cの下面には、開口部47eを取り囲むようにガス供給口47fが複数個穿設されているため、上記のようにして供給されたアルゴンガスは電子ビームEBをその側方から周囲を取り囲みながら、対向する基板表面Wfに向けて吐出される。これによって、基板表面Wfと下面プレート47aの間に形成される基板表面側雰囲気APのうち電子ビームEBが基板表面Wfに向けて照射される電子ビーム照射領域(図7の符号IR)はアルゴンガス雰囲気となる。このように、本実施形態では、アルゴンガス供給ユニット48Aが本発明の「不活性ガス供給手段」として機能している。
【0037】
また、この実施形態では、パージボックス47の中央中空室47cの上面には、上記したアルゴンガス供給ユニット48A以外に、オゾンガス供給ユニット48Bおよび窒素ガス供給ユニット48Cが接続されている。これらオゾンガス供給ユニット48Bおよび窒素ガス供給ユニット48Cは後述するように処理チャンバ41内をクリーニングするために設けられており、制御ユニット42からの指令にしたがってオゾンガス供給ユニット48Bが作動することで中央中空室47cに未使用のオゾンガスが供給され、また制御ユニット42からの指令にしたがって窒素ガス供給ユニット48Cが作動することで中央中空室47cに窒素ガスが供給される。
【0038】
パージボックス47には上記した中央中空室47cを挟み込むように上流側中空室47bと下流側中空室47dが設けられる。また、図5に示すように、両中空室47b、47dに対して排気用配管43aの一方端が接続されている。各排気用配管43aの他方端は循環ファン49aと接続されており、制御ユニット42からの動作指令に応じて循環ファン49aが作動すると、パージボックス47および各排気用配管43aを介して電子ビーム照射領域IRの周囲が排気される。すなわち、各中空室47b、47dの下面には、排気口47gが複数個穿設されており、基板表面Wfと下面プレート47aの間に形成される基板表面側雰囲気APのうち電子ビーム照射領域IR以外の領域、つまり非照射領域(図7中の符号NIR)と、各中空室47b、47dとが相互に連通されている。このため、循環ファン49aが作動すると、非照射領域NIRが排気口47g、中空室47b、47dおよび排気用配管43aを介して処理チャンバ41から排気されて基板表面Wfに電子ビームEBを照射した際に発生する汚染物質をアルゴンガスとともに上記基板表面側雰囲気APから確実に取り除くことができ、基板表面側雰囲気AP外への汚染物質の拡散を防止することができる。
【0039】
また、図5に示すように、排気用配管43aの一部は分岐しており、その分岐配管43bには排気ファン401が接続されており、制御ユニット42からの動作指令に応じて排気ファン401が作動すると、パージボックス47、排気用配管43aおよび配管43bを介して処理空間41aが排気されて装置外部に設けられた排気系に排出される。このように、本実施形態では、排気用配管43aおよび分岐配管43bが本発明の「排気経路形成部」として機能しており、排気用配管43aおよび分岐配管43bにより形成される排気系路上にオゾンキラー402が本発明の「オゾン分解手段」として設けられている。すなわち、排気用配管43aから分岐配管43bが分岐する分岐位置と排気ファン401との間で分岐配管43bにオゾンキラー402が設けられている。そして、制御ユニット42からの動作指令に応じてオゾンキラー402が作動することで排気ガス中に含まれるオゾンガス成分を酸素に分解する。このため、後述するようにクリーニング用のオゾンガスがそのまま排気系に送り出されるのを効果的に防止することができる。なお、オゾンキラーとしては、加熱ヒータ、触媒、活性炭などが使用できる。
【0040】
また本実施形態では、図5に示すように、排気用配管43aの反パージボックス側端部は循環ファン49aの吸入口に接続されている。また、この循環ファン49aの吹出口側には、配管43cを介して流路切替ユニット49bが接続されている。この流路切替ユニット49bは循環ファン49aから送られてくるガスの流路を処理ガス用流路とクリーニング用流路に切り替える機能を有している。以下、処理ガス用流路とクリーニング用流路とに分けて説明する。
【0041】
制御ユニット42からの動作指令に応じて流路切替ユニット49bが処理ガス用流路を選択すると、循環ファン49aから送られてくる排気ガスは配管43dを介して分解処理ユニット49cのインレット側に送り込まれる。この分解処理ユニット49cは加熱ヒータと触媒とを有しており、循環ファン49aから送られてきた排気ガスを加熱ヒータによって加熱した後、高温となった汚染物質を触媒によって水分と二酸化炭素に分解する機能を有している。したがって、分解処理ユニット49cから送り出される排気ガスはアルゴンガスと水分と二酸化炭素を含むガスとなっている。
【0042】
この分解処理ユニット49cのアウトレットに対して配管43eを介して2つの吸着塔49d1、49d2が並列接続されており、複数のバルブを組み合わせてなる吸着塔切替ユニット49d3(図4参照)を制御ユニット42が制御することによって、2つの吸着塔49d1、49d2の一方が選択的に分解処理ユニット49cと接続可能となっている。すなわち、制御ユニット42からの指令に応じて吸着塔切替ユニット49d3が作動して一方の吸着塔が分解処理ユニット49cと循環フィルタ49eに接続されると、選択された吸着塔に対して排気ガス(アルゴンガス+水分+二酸化炭素)が送り込まれ、当該吸着塔により水分と二酸化炭素が吸着されて処理ガス(アルゴンガス)が生成される。こうして生成された処理ガスは配管43f、循環フィルタ49eおよび配管43gを介して処理チャンバ41の天井端部から処理空間41a内にパージされる。なお、本実施形態では、分解処理ユニット49cと吸着塔49d1、49d2の組み合わせが本発明の「除去手段」に相当するが、排気ガスから汚染物質を取り除くための構成はこれに限定されるものではなく、他の方式により汚染物質を取り除く構成を採用してもよい。
【0043】
非選択の吸着塔では吸着保持している水分および二酸化炭素を放出させて吸着性能を回復させるための再生処理が実行される。このように、一方の吸着塔で処理ガスを生成している間に、その処理ガス生成と並行して残りの吸着塔では再生処理を行って次の処理ガス生成に向けての準備を行うことができる。このように吸着塔の切替によって処理ガス(アルゴンガス)による処理空間41aのパージを連続的に行うことができる。
【0044】
一方、制御ユニット42からの動作指令に応じて流路切替ユニット49bがクリーニング用流路を選択すると、循環ファン49aから送られてくる排気ガスは配管43hおよび43gを介して処理空間41aに送り込まれる。したがって、後述するようにオゾンガス供給ユニット48Bからオゾンガスを処理空間41aに充填した後に、クリーニング用流路を選択した状態で循環ファン49aを作動させると、オゾンガスがクリーニング用流路(配管43a−循環ファン49a−配管43c−配管43h−配管43g)で処理空間41aに供給される。
【0045】
このように、本実施形態では、複数の配管により処理空間41aからガス成分を排気するとともにガス成分を処理空間41aに供給する給排気流路が形成されており、この給排気流路の両端部が処理空間41aに連通されて処理空間41aと給排気流路によりガス成分の循環経路が形成されている。このように本実施形態では、複数の配管43a、43c〜43hが本発明の「循環経路形成部」として機能している。また、循環ファン49aが上記した循環経路に沿ってガス成分を循環させる本発明の「循環駆動部」として機能している。
【0046】
また、この実施形態では、処理チャンバ41の底面部には、図5に示すように、配管43iの一方端が接続されている。この配管43iの他方端は配管43aと接続されており、処理空間41aのうち基板表面側雰囲気APを除く雰囲気を排気可能となっている。つまり、基板表面側雰囲気AP以外の雰囲気が配管43iを介して循環経路に排気可能となっている。このため、上記のようにして処理空間41aにパージされた処理ガスの一部やオゾンガスは配管43iを介して循環経路に戻される。なお、この実施形態では、電子ビーム照射を行っている間、電子ビーム照射領域IRに対してフレッシュなアルゴンガスを供給するとともに、循環経路に沿って処理ガスを処理空間41aにパージしているため、アルゴンガス供給により処理空間41aの内圧を高めていくが、アルゴンガス供給に相当する量の処理ガスはシャッター74A(74B)と処理チャンバ41の隙間から排出されて処理空間41aの圧力はほぼ大気圧あるいは若干陽圧に保たれている。
【0047】
次に、上記のように構成された電子ビームキュア装置4A(4B)の動作について説明する。この実施形態にかかる電子ビームキュア装置4A(4B)は電子ビームを基板に照射して硬化処理を所定回数実行する毎にオゾンガスによる処理チャンバのクリーニング処理を実行する。ここでは、硬化処理について説明した後で、クリーニング処理について説明する。
【0048】
(電子ビームキュア装置における硬化処理)
図6は図2の電子ビームキュア装置による硬化動作を示すフローチャートである。また、図7は電子ビーム照射領域の近傍を模式的に示す図である。電子ビームキュア装置4A、4Bはともに同一構成であり、各装置の動作も同一である。したがって、この実施形態にかかる基板処理システムでは、ホットプレート3による加熱処理を受けた基板Wはこれらの電子ビームキュア装置4A、4Bの一方に搬送されて以下の硬化(キュア)処理を受ける。なお、ここでは、電子ビームキュア装置4Aにおける動作について説明する。
【0049】
電子ビームキュア装置4Aでは、基板Wが搬送されてくるまでシャッター74Aは閉じたままであるが、処理空間41aの内圧が大気圧あるいは若干陽圧となるように圧力調整されている。そして、制御ユニット42はメモリ(図示省略)に記憶されているプログラムにしたがって装置各部を以下のように制御して搬送ロボット11によりホットプレート3から搬送されてくる基板Wに対して硬化処理を施す。なお、処理空間41aの内圧は大気圧より若干高く調整されてもよい。
【0050】
ホットプレート3から電子ビームキュア装置4Aに基板Wが搬送される前に、シャッター74Aが開成されて基板通過口41bが開放状態となる(ステップS1)。そして、搬送ロボット11はホットプレート3から取り出した基板Wを基板通過口41bを介して処理チャンバ41に搬入してステージ44に載置する(ステップS2)。そして、基板Wの搬入完了後にシャッター74Aが閉じられる(ステップS3)。このようにして搬入された基板Wの表面Wfには未硬化状態の層間絶縁膜Fが形成されており、次に説明する硬化処理(ステップS4〜S6)を受けることで硬化して所望特性が付与される。なお、図7では、層間絶縁膜Fのうち未硬化状態の部位を白抜きで、硬化処理中の部位を梨地で、また硬化処理後の部位を斜線で示している。
【0051】
ステップS4では、アルゴンガス供給ユニット48Aがアルゴンガスの供給を開始して中央中空室47cおよびガス供給口47fを介して基板表面側雰囲気AP、特に電子ビーム照射領域IRおよびそれを取り囲む範囲にアルゴンガスが吐出されてアルゴンガス雰囲気が形成される。この実施形態では、電子ビーム照射領域IRを大気圧あるいは多少陽圧に調整している。また、これと同時、あるいは前後して循環ファン49aの作動が開始されて基板表面側雰囲気AP、特に電子ビーム照射領域IRの周囲が排気口47gおよび中空室47b、47dを介して排気され、この排気ガスは配管43aにより処理チャンバ41の外側空間に案内される。排気ガスは上記したように循環経路に沿って分解処理ユニット49cおよび吸着塔49d1(または49d2)を通過して処理ガスとなり、循環フィルタ49eを介して処理空間41aに戻される。なお、この実施形態では、ヒータ45への通電は基板搬入より前に開始されて基板Wの加熱が開始されて予め所定温度に昇温されているが、ヒータ45の作動タイミングはこれに限定されるものではなく、基板Wや層間絶縁膜Fの種類などのプロセス条件に応じて任意に設定することができる。
【0052】
上記のようにして電子ビーム照射の前準備が完了すると、電子ビーム発生ユニット40A、40Bからの電子ビームの射出が開始され、ステージ44が駆動されて基板Wのスキャンが開始されて電子ビームによる層間絶縁膜Fの硬化処理が開始される(ステップS5)。すなわち、ステージ44は搬送ポジション(図2の破線位置)から上昇されてパージボックス47の下面プレート47aの近傍に位置決めされるのに続いて(+X)方向、つまり図2の左手側から右手側に移動して基板Wが電子ビーム照射領域IRを通過する。また、ステージ44の移動動作に連動して電子ビーム発生ユニット40A、40Bが前もって作動して安定した電子ビームを基板表面Wfに向けて射出する。このため、図7に示すように、基板表面Wに形成された層間絶縁膜Fのうち電子ビーム照射領域IRに位置する部位(同図の梨地部分)に対してアルゴンガス雰囲気で電子ビームが照射されて硬化する。この電子ビーム照射は基板Wの移動中に連続的に行われて層間絶縁膜F全体が硬化する。
【0053】
また、上記のようにして電子ビームを基板表面Wf上の層間絶縁膜Fに照射することで、有機物や炭化水素などのガス状の汚染物質が発生するが、電子ビーム照射領域IRから流れてくるアルゴンガスとともに排気口47g、中空室47b、47dおよび配管43aを介して処理空間41aから排出される。したがって、汚染物質は基板表面側雰囲気AP、つまりパージボックス47の下面プレート47aと基板表面Wfに挟まれた比較的狭い空間から処理空間41aに拡散することなく、基板表面側雰囲気APから効率的に強制排出される。その結果、(1)汚染物質が処理空間41aに拡散して処理チャンバ41の内壁面やステージ44などに付着して脱ガスやパーティクルの発生源となるという問題、(2)基板表面Wfや層間絶縁膜Fに再付着するという問題、(3)電子ビーム発生ユニットの開口部に汚染蓄積し照射強度が低下するという問題などが発生するのを効果的に防止することができる。
【0054】
また、上記のようにしてアルゴンガスと一緒に汚染物質が排気ガスとして処理空間41aから外側空間に排出されるが、この排気ガスが分解処理ユニット49cおよび吸着塔49d1(または49d2)を通過して排気ガス中の汚染物質が除去される。こうして処理ガス(アルゴンガス)が生成されて処理空間41aに供給される。このように循環ファン49aの作動により循環経路に沿ってアルゴンガスが循環するが、このガス循環動作は電子ビーム照射の間連続して行われる。
【0055】
上記のように基板Wの移動により電子ビーム照射領域IRが基板表面Wfの全面に対してX方向に走査する、つまり基板表面Wf全体が電子ビーム照射領域IRを通過して基板Wが基板移動範囲MRの下流側エンドに達すると、ステージ44の移動を停止して基板移動を完了させる。この基板移動完了をトリガーとして(ステップS6)、先に電子ビーム発生ユニット40Aの作動を停止して(ステップS7)、電子ビームの照射を停止し、次にアルゴンガスの供給および排気ユニット49による排気動作が停止される(ステップS8)。また、アルゴンガスの供給および排気ユニット49による排気動作が停止されるとともに、ステージ44が上記したステージ動作と逆の動作により搬送ポジションに戻る(ステップS9)。なお、予定された全ての基板の処理が終われば、このタイミングでヒータ45を停止してもよい。このように本実施形態では、基板WをX方向に往復移動させているが、そのうち往路移動時のみに電子ビーム照射を行って層間絶縁膜Fを硬化させているため、短時間で、かつ効率的に硬化処理を実行することができる。もちろん、復路移動(図2の右手側から左手側への移動)中においても往路移動中と同様にして硬化処理を実行してもよく、層間絶縁膜Fの種類や厚みなどのプロセス条件に応じて適宜選択することができる。また、プロセス条件に応じて往復移動を複数回行ってもよい。
【0056】
上記のようにして硬化処理が完了すると、シャッター74Aが開成されて基板通過口41bが開放状態となる(ステップS10)。そして、搬送ロボット11は硬化処理済の基板Wをステージ44から受け取り、処理チャンバ41から搬出し(ステップS11)、コールドプレート5に搬送する。この基板搬出後にシャッター74Aが閉じられ(ステップS12)、次の基板Wが搬送されてくるのを待つ。
【0057】
(電子ビームキュア装置におけるクリーニング処理)
ところで、この実施形態にかかる電子ビームキュア装置では、上記したようにして電子ビーム照射時に発生する汚染物質を分解処理ユニット49cおよび吸着塔49d1(または49d2)により除去するように構成しているが、汚染物質を完全に除去することは難しく、僅かではあるものの、処理チャンバ41の内壁面に付着することがある。そして、硬化処理を繰り返す毎に徐々に蓄積されていく。そこで、本実施形態では、上記した硬化処理を所定回数実行する毎に図8に示すクリーニング処理を実行して処理チャンバ41の内壁に蓄積した汚染物質をオゾンガスにより分解して除去する。以下、図8および図9を参照しつつクリーニング処理について説明する。
【0058】
図8は図2の電子ビームキュア装置におけるクリーニング動作を示すフローチャートである。また、図9はクリーニング動作を模式的に示す図である。電子ビームキュア装置4A、4Bはともに同一構成であり、各装置におけるクリーニング動作も同一であるため、ここでは、電子ビームキュア装置4Aにおけるクリーニング動作について説明する。
【0059】
クリーニング処理を実行するため、制御ユニット42は流路切替ユニット49bを制御して循環ファン49aから送られてくるガスの流路をクリーニング用流路に切り替える(ステップS21)。また、制御ユニット42はオゾンガス供給ユニット48Bを制御してオゾンガスの供給を開始させる(ステップS22)。これにより、オゾンガスが中央中空室47cおよびガス供給口47fを介して処理空間41aに供給され、時間経過とともに処理空間41aがオゾンガスに満たされていく。こうしてオゾンガスが大気圧下で処理空間41a全体に充填されて処理チャンバ41の内壁面に付着する汚染物質がオゾンガスにより分解される。
【0060】
また、充填完了(ステップS23で「YES」と判定された)後、制御ユニット42はオゾンガス供給ユニット48Bによるオゾンガスの供給を停止するとともに、循環ファン49aを作動させる(ステップS24)。この循環ファン49aの作動開始とともに、処理空間41a内のオゾンガスは図9に示すようにクリーニング用流路(配管43a−循環ファン49a−配管43c−配管43h−配管43g)で処理空間41aに供給される。同図の太線で示すように、クリーニング用流路(給排気流路)と処理空間41aで構成される循環経路に沿ってオゾンガスが循環することとなり、循環ファン49aの作動開始後においては循環流動するオゾンガスによって処理チャンバ41の内壁面がクリーニングされる。また、処理空間41aに供給されたオゾンガスは配管43iを介して上記クリーニング用流路に戻されるため、オゾンガスは処理空間41全体に均等に流通することとなり、処理チャンバ41の内壁面全体をクリーニングする。
【0061】
循環流動するオゾンガスによるクリーニング処理が所定時間だけ実行されたことを確認する(ステップS25)と、制御ユニット42はオゾンガスによる汚染物質の分解により処理チャンバ41の内壁面から汚染物質が除去されたと判断してオゾンガスおよびオゾンガスに分解された汚染物質を循環経路から排出する。すなわち、制御ユニット42は窒素ガス供給ユニット48Cを作動させて窒素ガスを処理空間41aに向けて供給するとともに、排気ファン401の作動を開始させる(ステップS26)。これにより循環経路に存在しているオゾンガスおよびオゾンガスに分解された汚染物質が窒素ガスにより装置外部にパージされる。この排気時に配管43bを介して排気される排気ガス中の含まれるオゾンガス成分については、オゾンキラー402によって酸素に分解されて窒素ガスとともに排気系に排出される。
【0062】
すべてのオゾンガスを循環経路からパージした(ステップS27)後に、制御ユニット42は窒素ガスの供給を停止させるとともに、両ファン49a、401を停止させる(ステップS28)。こうして、クリーニング処理を完了する。
【0063】
以上のように、本実施形態では、電子ビーム照射を停止している間に、クリーニング用流路(給排気流路)の両端部を処理空間41aに連通してなる循環経路に沿ってオゾンガスを循環させ、循環流動するオゾンガスによって処理チャンバ41内に付着した汚染物質を分解して処理チャンバ41からクリーニング除去している。したがって、処理チャンバ41の内壁全体を効率よく、しかもほぼ完全にクリーニングすることができ、クリーニング処理後に実行する硬化処理を良好に行うことができる。また、このように1回のクリーニング処理によって処理チャンバ41内を良好にクリーニングすることができるため、クリーニング頻度を抑制することができる。その結果、クリーニング処理により硬化処理を中止する時間が短くなり、基板処理装置の稼動効率を高めることができる。
【0064】
また、オゾンガス供給ユニット48Bにより処理空間41aにオゾンガスを初期充填した後に、循環ファン49aによりオゾンガスを循環経路に沿って循環させるように構成しているため、未使用オゾンガスを最初に処理空間41a全体に導入しているため、クリーニング除去効率をさらに高めることができる。
【0065】
また、オゾンガスを循環してクリーニング処理を実行するため、少量のオゾンガスを利用してクリーニング処理を効率的に実行することができ、オゾン発生時に使用する酸素量およびオゾンガス発生のためのエネルギー消費量を削減することができ、ランニングコストを効果的に低減させることができる。また、本実施形態では大気圧状態でオゾンガスによるクリーニング処理を実行しているため、減圧工程を必須とする従来のクリーニング処理に比べてクリーニング時間やランニングコストを大幅に短縮することができる。
【0066】
(その他)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、不活性ガスとしてアルゴンガスを用いているが、アルゴンガス以外の不活性ガス(例えばキセノンガスや窒素ガス等)を用いてもよいことはいうまでもない。また、パージ用ガスとして窒素ガスを用いているが、他のパージ用ガス、例えば圧縮空気などを用いてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、処理空間41aにオゾンガスを供給しているが、クリーニング用流路(給排気流路)にオゾンガスを供給することでオゾンガスを循環経路に沿って循環させてクリーニング処理を行うように構成してもよい。また、上記実施形態では、排気用配管43aから分岐配管43bを介してオゾンガスを含むガスを排気するように構成しているが、処理空間41aから直接オゾンガスを含むガスを排気するように構成してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、流路切替ユニット49bによりクリーニング用流路と処理ガス用流路とを切り替えているが、このような切替機構を設けることなく、クリーニング処理時もオゾンガスを処理ガス用流路を流通させるように構成してもよい。ただし、クリーニング処理時においては、分解処理ユニット49cの加熱ヒータ(図示省略)は停止させてオゾンガスの分解を防止する必要がある。なお、クリーニング処理の終了後においては、加熱ヒータを作動させてオゾンガスを酸素に分解し、排気系に排出される排気ガスにオゾンが含まれるのを防止してもよい。この場合、分解処理ユニット49cの加熱ヒータが本発明の「オゾン分解手段」に相当する。
【0069】
また、上記実施形態では、電子ビーム照射領域IRを取り囲むように電子ビームEBと略平行にアルゴンガスを吐出するとともにアルゴンガスと汚染物質を一緒に排出して非照射領域NIRの雰囲気を管理し、これによって基板表面側雰囲気APの雰囲気管理を行っているが、次に示す基板表面側雰囲気APの管理態様を採用してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、2つの電子ビーム発生ユニット40A、40Bを用いて基板表面Wfに対して電子ビームを照射しているが、電子ビーム発生ユニットの個数や配置などについては任意である。また、上記実施形態では、電子ビーム発生ユニットを固定配置するとともに基板Wを基板移動範囲MRの間でX方向に移動させているが、両者をともに移動させたり、基板を固定するとともに電子ビーム発生ユニットおよびパージボックスを一体的に移動させることで基板をX方向に相対移動させてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、基板表面Wfに向けて電子ビームを照射して未硬化状態の層間絶縁膜Fを硬化する電子ビームキュア装置に対して本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、基板表面に向けて電子ビームを照射して所定の基板処理を施す基板処理装置全般に本発明を適用することができる。
【0072】
また、層間絶縁膜の誘導率(k値)を現在のk=3程度から更に下げたk=2.2〜2.4の膜、即ち、Ultra Low−k膜を得るためLow−k膜中に空孔を発生させるようポロジェン(Porogen)等の有機物をLow−k膜中に導入し、これに電子ビームを照射し、ポロジェンを分解・ガス化して空孔を得ると同時に、水素などの末端基をガス化し、より強固な膜を得る基板処理方法にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般の表面に電子ビームを照射して所定の処理を実行する基板処理装置および基板処理方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の一実施形態を装備した基板処理システムを示す図である。
【図2】本発明にかかる基板処理装置の一実施形態である電子ビームキュア装置を示す断面図である。
【図3】バージボックスを下方から見た斜視図である。
【図4】図2に示す電子ビームキュア装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】図2に示す電子ビームキュア装置でのガス供給系統を示す図である。
【図6】図2の電子ビームキュア装置の硬化動作を示すフローチャートである。
【図7】電子ビーム照射領域IRの近傍を模式的に示す図である。
【図8】図2の装置におけるクリーニング動作を示すフローチャートである。
【図9】図2の装置におけるクリーニング動作を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0075】
4A、4B…電子ビームキュア装置(基板処理装置)
40A、40B…電子ビーム発生ユニット
41…処理チャンバ
41a…処理空間
43a、43c〜43h…配管(循環経路形成部)
43b…分岐配管(排気経路形成部)
44…ステージ(移動手段)
46…ステージ駆動ユニット(移動手段)
46b…リニア駆動部(移動手段)
48A…アルゴンガス供給ユニット(不活性ガス供給手段)
48B…オゾンガス供給ユニット
49a…循環ファン(循環駆動部)
402…オゾンキラー(オゾン分解手段)
EB…電子ビーム
F…層間絶縁膜
IR…電子ビーム照射領域IR
W…基板
Wf…基板表面
X…移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理を行うための処理空間を有する処理チャンバと、
前記処理空間内に配置された基板の表面に向けて電子ビームを射出する電子ビーム発生手段と、
前記処理空間に連通されて前記処理空間にオゾンガスを供給するオゾンガス供給手段とを備え、
前記電子ビーム照射を停止している間に、前記オゾンガスを供給して前記処理チャンバ内をクリーニングすることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
給排気流路の両端部が前記処理空間に連通されて前記処理空間と前記給排気流路によりガス成分の循環経路を形成する循環経路形成部と、前記循環経路に沿ってガス成分を循環させる循環駆動部とを有するガス循環手段をさらに備え、
前記オゾンガス供給手段は前記循環経路にオゾンガスを供給する請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記オゾンガス供給手段は前記処理空間にオゾンガスを供給可能となっており、
前記ガス循環手段は、前記オゾンガス供給手段により前記処理空間にオゾンガスが初期充填された後に、前記循環駆動部によりオゾンガスを前記循環経路に沿って循環させる請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理空間または前記給排気流路に連通されて前記循環経路を排気するための排気経路を形成する排気経路形成部と、
前記循環経路または前記排気経路に沿って流通するガスに含まれるオゾンガス成分を酸素に分解するオゾン分解手段とをさらに備え、
前記オゾン分解手段によりオゾンガス成分を酸素に分解し、装置外部に排出する請求項2または3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記電子ビーム照射領域に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、
前記基板への前記電子ビーム照射によって発生する汚染物質を除去可能な除去手段とをさらに備え、
前記ガス循環手段は、前記電子ビーム照射を行っている間に、前記汚染物質を前記不活性ガスと一緒に排気ガスとして前記処理空間から前記給排気流路に沿って排気し、当該排気ガスから前記除去手段によって前記汚染物質を除去することで得られる処理ガスを前記処理空間に供給する請求項2ないし4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
処理チャンバの処理空間に配置された基板の表面に対して電子ビーム発生手段から電子ビームを照射しながら前記基板を前記電子ビーム発生手段に対して相対移動させることで前記電子ビームが照射される電子ビーム照射領域を走査させて前記基板表面に所定の処理を施す基板処理装置において前記処理チャンバ内を洗浄する洗浄方法であって、
前記電子ビーム照射を停止している間に、オゾンガスを前記処理チャンバに供給して前記処理チャンバ内をクリーニングすることを特徴とする基板処理装置の洗浄方法。
【請求項7】
給排気流路の各端部を前記処理空間に連通することで循環経路を形成し、前記循環経路に沿ってオゾンガスを循環させて前記処理チャンバ内をクリーニングする請求項6記載の基板処理装置の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−129823(P2010−129823A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303847(P2008−303847)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】