説明

基板収納容器及び基板収納体

【課題】板ガラスや液晶表示装置等に用いるカラーフィルタ基板を傷、破損から守り、保管、輸送に有効な基板収納容器を提供する。
【解決手段】複数基板を積み重ねて構成した積重体を収納するための収納容器であって、前記積重体を、基板を水平とした状態で載置可能な支持面を備えた支持台と、前記支持台に載置された積重体の上面全域に均一な押圧力を作用させ、前記積重体を前記支持台に押し付け固定する押圧手段と、前記支持台上に、前記支持台に載置された前記積重体を包囲するように脱着可能に取り付けられた第1の蓋体と、前記第1の蓋体を包囲するように脱着可能に取り付けられた第2の蓋体とを有することを特徴とする基板収納容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイのカラーフィルタや薄膜トランジスタ(TFT)等に用いるガラス基板などのように、表面に機能層を備えた基板を運搬、保管等のために収納する収納容器並びにその基板収納容器に基板を収納した基板収納体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタに用いるガラス基板のように、表面に機能層を備えた基板は、その表面で機能層を損傷したり、汚したりすることなく、運搬及び保管することが重要である。そこで、これらの基板の運搬、保管には、基板を1枚ずつ挿入する溝を備えた樹脂製のケースを用いていた。しかしながら、このケースでは、基板間に隙間を生じさせた状態で基板を収納するため、収納効率が悪いという問題があった。そこで、複数のガラス基板と合紙とを交互に重ね、斜め積みパレット上に斜め積みした包装形態(特許文献1参照)、複数のガラス基板とガラス基板の縁部に接触する枠状の離間部材とを交互に重ね、斜め積みパレット上に斜め積みした包装形態(特許文献2参照)、ガラス基板を1個ずつPETフィルムで密封し、これらを積み重ねる包装形態(特許文献3参照)、ガラス基板を1個ずつ、凹凸加工した内壁を有するラミネートフィルムからなる袋状体で包装し、それをケースに詰める包装形態(特許文献4参照)等が提案されている。
【0003】
しかしながら、これらにはいずれも問題があった。すなわち、特許文献1,2に示すように斜め積みする方法では、ガラス基板を傾斜した受け面に立てかけるようにして斜め積みした後、ガラス基板の高さ方向の1箇所或いは2箇所をバンド等で受け面に押し付けるように締め付けることで固定しているが、その際、ガラス基板の下部領域を受け面に必要な押圧力で押し付け、固定することが困難である。これは、次の理由による。すなわち、ガラス基板を斜め積みした際、各ガラス基板はその下端が斜め積みパレットの載置面に乗った状態で保持されているため、ガラス基板の下部領域を傾斜した受け面に押し付け、固定しようとすると、そのガラス基板の自重によって斜め積みパレットの載置面に強く押し付けられた状態となっているガラス基板下端縁を載置面上で滑らせて動かさなくてはならず、その際の摩擦力が大きいため、ガラス基板の下端縁を動かすことが困難である。ガラス基板のサイズが小さく、荷重が小さい場合か、重ね合わせた枚数が少ない場合には、斜め積みしたガラス基板の適当な位置をバンド等で締め付けることにより、ガラス基板の下部領域は十分に固定されておらず、輸送中の振動などによってガラス基板が動き、損傷を生じることがあった。更に、特許文献2に示す枠状の離間部材を用いた方法では、離間部材の厚さが、5mm程度と大きく、このため、積載量が少なくなり、しかもガラス基板のサイズが大きい場合には端縁のみを離間部材で拘束した構造ではガラス基板に自重によるたわみを生じ、この点からも損傷を生じることがあった。
【0004】
特許文献3、4に示すように各ガラス基板を、PETフィルムで密封するとか、ラミネートフィルムからなる袋状体で包装する包装形態では、ガラス基板の包装に多大な工数がかかり、包装コストが高くなるという問題がある。また、PETフィルムや包装体で包装したガラス基板を、単に積み重ねるか、或いはケースに詰めているのみであるので、運搬中にガラス基板が動くことがあり、その際にガラス基板とそれを包装しているPETフィルムやラミネートフィルムと擦れ合って、ガラス基板の機能層に損傷を与えるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−351449号公報
【特許文献2】特開2000−203679号公報
【特許文献3】特開2003−237833号公報
【特許文献4】特開平11−1205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、液晶ディスプレイのカラーフィルタや薄膜トランジスタ(TFT)等に用いるガラス基板などの基板を、大量に且つコンパクトに収納すると共に輸送中に動くことがないように拘束でき、基板を損傷することなく運搬、保管を行うことの可能な収納容器並びにその基板収納容器に基板を収納した構造の基板収納体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の発明は、複数基板を積み重ねて構成した積重体を収納するための収納容器であって、前記積重体を、基板を水平とした状態で載置可能な支持面を備えた支持台と、前記支持台に載置された積重体の上面全域に均一な押圧力を作用させ、前記積重体を前記支持台に押し付け固定する押圧手段と、前記支持台上に、前記支持台に載置された積重体を包囲するように脱着可能に取り付けられた第1の蓋体と、前記第1の蓋体を包囲するように脱着可能に取り付けられた第2の蓋体とを有することを特徴とする基板収納容器である。
また、第2の発明は、第1の発明の基板収納容器に基板を収納した基板収納体である
【発明の効果】
【0008】
本発明の基板収納容器によれば、複数の基板は水平に積み重ねられており且つその上面全域に均一な押圧力を作用させているので、基板サイズが大きい場合でも、或いは収納枚数が多い場合でも、各基板がその全域において均一な圧力で締め付けられ、このため、固定が確実で運搬中などに基板が動いて損傷を生じるということがない。また、従来、バンド等によって局部的に締め付ける場合には、局部的に押圧力の大きい部分が生じ、その部分に損傷を生じるおそれがあるが、本発明では基板全域に均一な押圧力を作用させることができるので、単位面積当たりの押圧力を小さく設定しても、基板を動かないように拘束でき、この点からも基板の損傷を防止できる。
【0009】
また、本発明では、支持台上に載置された積重体を包囲するように第1の蓋体を脱着可能に取り付け、第1の蓋体の天板を荷重支持板として作用させることにより、第1の蓋体で荷重支持板を兼用することで構造を簡単としながら、第1の蓋体によって積重体を覆って、基板に対するごみ、ほこり等の付着を防止できるといった効果が得られる。更に前記支持台上に、第1の蓋体を包囲するように第2の蓋体を脱着可能に取り付け、第1の蓋体にごみ、ほこり等が付着されることなく、第2の蓋体を取り外して工場内に搬入すれば、工場内にごみ、ほこり等を同伴することがなく、工場内を清潔に保てるという効果が得られる。本発明では、蓋部のみを二重構造としたことにより、基板収納体の外寸高さが必要以上に高くならず、大量の且つサイズの大きい基板をコンパクトに収納すると共に、基板に損傷を生じることなく安全に運搬、保管することができ、基板の運搬コストを下げることができる。
【0010】
また、前記支持台をパレットにしておくことにより、フォークリフト等を用いた運搬が容易となる効果が得られる。
【0011】
積重体の上面全域に均一な押圧力を作用させる押圧手段として、エアバッグを用いることにより、広い面積に容易に均一な押圧力を作用させることができると共にエアバッグに供給する空気圧の調整で容易に押圧力を調整できるという効果が得られる。
【0012】
また、前記エアバッグと積重体の間、及び前記積重体と支持台の間のいずれか一方もしくは双方に、平坦な補強板材を配置しておくことにより、基板をその平坦な補強部材で支持或いは押圧することができ、基板の損傷を一層防止できるという効果が得られる。
【0013】
また、前記積重体の側面と蓋体の側板との間に挿入するクッション材を備えることにより、クッション材によって積重体の動きを更に拘束することができるという効果が得られる。
【0014】
積重体の上面全域に均一な押圧力を作用させる押圧手段としては、エアバッグを用いたものに限らず、弾性板材を用いたものにすることもでき、弾性板材を積重体の上面に配置し、弾性板材を荷重支持板によって加圧して弾性変形させ、弾性板材を介して積重体の上面全域に均一な押圧力を作用させることにより、基板が動かないように拘束できる。
【0015】
本発明の基板収納体は、基板と合紙とを交互に積み重ねた積重体を、本発明の基板収納容器に収納した構成のものであり、この構成により、基板を合紙で保護した状態で収納し、基板に損傷を生じることなく安全に運搬、保管することができる。
【0016】
ここで、前記合紙を樹脂の発泡シートとすることにより、樹脂の発泡シートの適度な柔らかさが基板を良好に保護でき、基板の損傷を一層防止できる。
【0017】
本発明の基板収納体で収納の対象とする基板は任意であるが、機能層を備えたガラス基板とすることが好ましく、これにより、運搬中に損傷を生じやすい機能層を備えたガラス基板を、損傷を生じることなく安全に運搬できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】基板収納体の概略断面図である。
【図2】基板収納体の概略斜視図である。
【図3】パレットに基板の積重体を載置した状態を示す概略側面図である。
【図4】パレットに基板の積重体を載置した状態を示す概略斜視図である。
【図5】基板の断面構造を説明する概略断面図である。
【図6】積重体の一例を示す概略断面図である。
【図7】積重体の一例を示す概略断面図である。
【図8】第2の実施形態に係る基板収納体の概略断面図である。
【図9】第3の実施形態に係る基板収納体の概略断面図である。
【図10】第4の実施形態に係る基板収納体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る基板収納容器に基板の積重体を収納して形成した基板収納体の概略断面図であり、図2は、図1の基板収納体の概略斜視図であり、また、図3は、パレットに基板の積重体を載置した状態を示す概略側面図であり、図4は、パレットに基板の積重体を載置した状態を示す概略斜視図である。基板収納体1は、多数の基板を合紙と交互に積み重ねて形成した積重体2を基板収納容器10内に収納したものである。
【0020】
本発明において、収納の対象とする基板3は、液晶ディスプレイのカラーフィルタや薄膜トランジスタ(TFT)等に用いるガラス基板などであり、その代表的な構造を図5に概略的に示す。
【0021】
図5において、基板3は、ガラス板等の基板本体3aの片面に、機能層3b(例えば、カラーフィルタ用の基板の場合には、ブラックマトリックス、着色画素、ITO電極などを備えた層)を備え、更にその上に、保管、運搬中等における損傷を防止するための保護膜3cを形成している。
【0022】
保護膜3cは容易に形成でき且つ容易に除去可能な材料で作られるものであり、水溶性の樹脂(例えば、ポリビニルアルコール)が用いられることが多い。膜厚は、10〜20μm程度が好適に用いられる。
【0023】
通常、機能層3b、保護膜3cは、基板本体3aの周縁の数mmを除いた全領域に形成されている。本明細書では、機能層3b及びその上に保護膜3cを形成した領域を有効領域という。
【0024】
基板3の平面サイズは、特に限定されず、例えば、幅1800mm×長さ2000mmの大きいサイズとすることも可能である。また、基板の厚さも制限されるものではないが、0.3〜1.0mm程度が好適に用いられる。
【0025】
本発明では、基板3を多数枚積み重ね、積重体2を構成して収納するが、この際、各基板3の機能層3b、保護膜3cを保護することができるよう、各基板3間に合紙を挟んでいく。合紙を挟み込む形態は特に限定されず、少なくとも基板3の有効領域を覆う位置に合紙が存在するようにすればよいが、好ましい形態としては、図6に示すように、基板3よりも長い合紙4Aを、その両端が基板3よりも外に延び出すように配置する形態、或いは図7に示すように、二つ折りした状態で基板3とほぼ同一サイズとなる合紙4Bを、二つ折りした状態で基板3の間に挟み込む形態を挙げることができる。
【0026】
図6に示す形態では、合紙4Aの端部が基板3の外側に延び出しているので、合紙を剥がす際には、この延び出している部分をつかめばよく、合紙をつかむための機構を簡単とすることができると共に確実につかむことが可能となる。
【0027】
また、図7に示す形態では、合紙4Bが二つ折りとなっているので、輸送中に基板3の保護膜3c(図5参照)が吸湿してそれに接している合紙の片4Baに接着してしまったとしても、上側の片4Bbは接着しておらず、このため、合紙4Bを剥がす際に、上側の片4Bbを吸着パッド等で容易に吸着保持して持ち上げることができ、その一片を、合紙を確実に剥がすことの可能な手段(例えば、ニップロール等)にくわえさせることで、合紙を基板から確実に剥がすことができる。
【0028】
合紙4A、4Bに用いる材料は、基板3を保護しうるものであれば任意であり、紙、樹脂シート等が用いられる。特に好ましい材料としては、独立気泡を有する樹脂の発泡シート、例えば、株式会社JSP製の商品名「ミラマット」を挙げることができる。独立気泡を有する樹脂の発泡シートは、適度なやわらかさを有するので、基板表面の機能層3bの保護が確実であり、且つ通気性がないので保護膜3cが吸湿することを防止できる。合紙4A、4Bの厚さは、あまり薄いと保護効果が低下し、一方あまり厚いとコスト高となると共に嵩張るという欠点を生じるので、これらを考慮して、0.25〜1mm程度に選定することが好ましい。
【0029】
収納容器10は、第1の蓋体5及び第2の蓋体7を有し、蓋部分が二重構造である。収納容器10は、積重体2を支持する支持面11aを備えた支持台としてのパレット11と、パレット11上に載置された積重体2を包囲するように、パレット11に脱着可能に取り付けられる第1の蓋体5と、更に第1の蓋体5を包囲するように、パレット11に脱着可能に取り付けられる第2の蓋体7とを備えている。蓋体5により密閉されることは、防湿において非常に有効である。
【0030】
パレット11の支持面11aは、積重体2を、基板3が支持面11aに対して平行となる状態で支持可能なよう、基板3の面積より大きい面積に作られている。
【0031】
パレット11の上面の複数箇所に、第1の蓋体5及び第2の蓋体7を、パレット11に対する所定位置に位置決めするため、第1の蓋体5の側板5bの内面または第2の蓋体7の側板7bの内面に嵌合する突起11bが形成されている。なお、パレット11に対して第1の蓋体5または第2の蓋体7の位置決めする手段は突起11bを用いたものに限らず、適宜変更可能である。
【0032】
第1の蓋体5は、パレット11に取り付けた状態で支持面11aに平行となる天板5aと、支持面11aに垂直となる4面の側板5bを備えた箱状のものである。
【0033】
第1の蓋体5の天板5aは、後述するように、エアバッグ17によって積重体2の上面に押圧力を作用させた際の反力を支持する荷重支持板として作用するものであり、第1の蓋体5はその反力に耐えうる剛性を備えた構造としている。
【0034】
また、第1の蓋体5は、パレット11に対してその反力を支えうる強度を備えた連結手段で連結可能である。本実施形態では、第1の蓋体5をパレット11に対して必要な強度で連結できるため、複数のパチン錠13を用いている。パチン錠13はワンタッチで開閉できるので、作業性がよいと共に大きい引張力に耐えることができる。なお、第1の蓋体5をパレット11に連結する連結手段はパチン錠に限らず、ボルト、ナットを用いたもの、連結ピンを用いたもの等任意である。
【0035】
第2の蓋体7は、第1の蓋体5と同様の箱状の形状であり、パチン錠13によってパレット11に脱着可能に取り付けられる。パチン錠13はワンタッチで開閉できるので、作業性がよいと共に大きい引張力に耐えることができる。なお、第2の蓋体7をパレット11に連結する連結手段はパチン錠に限らず、ボルト、ナットを用いたもの、連結ピンを用いたもの等任意である。
【0036】
パレット11の支持面11a上には、平面精度の高い補強板材15が置かれ、その上に積重体2が載置されている。そして、積重体2の上には平面精度の高い補強板材16が置かれ、その上にエアバッグ17が配置されている。
【0037】
エアバッグ17は、内部に加圧エアを供給することにより膨らみ、上面位置が第1の蓋体5の天板(荷重支持板)5aで拘束されることにより、積重体2の上面全域を補強板材16を介して均一に押圧できるように配置されている。
【0038】
従って、エアバッグ17とそれを支える天板5a等は、積重体2の上面全域に、均一な押圧力を作用させ、積重体2を支持面11aに押し付け、固定する押圧手段を構成する。
【0039】
また、エアバッグ17には、第1の蓋体5をパレット11に取り付けた状態で、エアバッグ17内に加圧エアを供給できるよう、第1の蓋体5の外側に延び出すようにエア供給用チューブ19が連結されており、その先端には弁20が取り付けられている。
【0040】
積重体2の上下に配置される補強板材15、16は積重体2の基板を極力、平坦な状態で支持或いは押圧することができるよう設けたものである。補強板材15、16としては、平面精度に優れた軽量な板材が用いられ、具体的には、ハニカムパネル或いは発泡体をコアとしFRP板をスキンとした積層板等を用いることが好ましい。補強板材15、16は積重体2の全面を支持或いは押圧できるよう、基板3と同一もしくはそれよりも大きい面積のものが用いられる。補強板材15、16の平面精度としては、表面粗さは、100μmRmax程度以下、平面度は、最小曲率半径が700m程度とすることが好ましい。
【0041】
次に、収納容器10に積重体2を収納する方法を説明する。図3、図4に示すように、パレット11上に補強板材15を乗せ、次いでその上に基板3と合紙とを交互に積み重ねて積重体2を形成する。なお、別の場所で積重体2を形成しておき、それをパレット11上に載置するようにしてもよい。
【0042】
パレット11上に積重体2を載置した後は、その上に補強部材16及びエアバッグ17を乗せ、その上から第1の蓋体5をかぶせ、第1の蓋体5をパレット11に連結手段により固定する。
【0043】
その後、エアバッグ17に連結されているエア供給用チューブ19にコンプレッサ等の加圧エア供給装置(図示せず)を連結して、エアバック17に加圧エアを供給する。これにより、エアバッグ17が膨らんで、積重体2の上面を補強板材16を介して押圧し、積重体2をパレット11に押し付けて固定する。
【0044】
なお、積重体2の高さが不足し、エアバッグ17で積重体2に押圧力を付与できない場合には、補強板材16とエアバッグ17との間に適当なスペーサを挿入しておけばよい。
【0045】
この際、エアバッグ17が積重体2の上面全域に均一な押圧力を作用させるので、基板サイズが大きい場合でも、また収納枚数が多い場合でも、各基板3をその全域において均一な圧力で締め付けて固定することができ、運搬中などに基板が動いて損傷を生じることがない。
【0046】
エアバッグ17の押圧力は、そのエアバッグ17に供給するエア圧力を調整することで、所望の値に調整できる。エアバッグ17は、基板全面に均一な押圧力を作用させているので、単位面積当たりの押圧力を小さく設定しても、基板が動かないように拘束でき、この点からも基板の損傷を防止できる。
【0047】
エアバッグ17に所望圧力の加圧エアを供給した後は、弁20を閉じ、加圧エア供給装置を取り外す。その後、第2の蓋体7を配置して、第2の蓋体7をパレット11に固定し、その状態で所望の場所に運搬し、また保管する。また、第2の蓋体7と第1の蓋体5との隙間にスペーサを挿入してもよい(図示しない)。これらの運搬、保管の際にも、エアバッグ17は加圧エアが封入された状態に保たれるため、エアバッグ17が積重体2の上面に均一な押圧力を作用させ続けており、基板3がずれて損傷を生じるということがない。
【0048】
なお、収納容器10に基板を収納する際には、パレット11を水平状態とし、基板を水平にした状態で積み重ねていくが、形成した収納体1を運搬する際には、パレット11を水平状態に保つ場合に限らず、必要に応じ、パレット11を傾斜させるとか、垂直に立ててもよい。この場合でも、基板3が全面に渡って均一な圧力で締め付けられ、パレット11に押し付けられているので、基板3が動くことはなく、基板3に損傷を生じることなく安全に運搬することができる。
【0049】
開梱に当たっては、第2の蓋体7を外し、所望の場所に搬入する。第2の蓋体7により、ごみ、ほこり等の付着が防がれており、基板を使用する工場内等の清浄さを要求される場所に搬入してもトラブルを生じることがない。次に、エアバッグ17の空気を抜いた後、第1の蓋体5をパレット11から取り外し、エアバッグ17、補強板材16を取り外した後、積重体2の上面側から基板3、合紙4を交互に取り出せばよい。
【0050】
本実施の形態によれば、大きいサイズの基板を多数枚積み重ねて形成した積重体を、基板を損傷することなく安全に運搬することができる。
【0051】
次に、第2の実施形態に係る基板収納体について説明する。
第1の実施形態では、積重体2内の基板3の固定に、積重体2の上面に配置したエアバッグ17による押圧力のみを利用しているが、必要に応じ、積重体2の側面と第1の蓋体5の側板5bとの間に適当なクッション材を配置することも可能である。図8は、第2の実施形態に係る基板収納体21を示す。図8において、第1の実施の形態で説明した構成要素と同一の機能のものは、同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0052】
基板収納体21は、積重体2の側面と第1の蓋体5の側板5bの間にクッション材としてエアバッグ23を挿入し、且つ加圧エアを封入して積重体2の側面を拘束している。この構成により、運搬中における基板3のずれを一層確実に防止できる。
【0053】
次に、第3の実施形態に係る基板収納体について説明する。
上記実施形態では、積重体の上面に均一な押圧力を付与する押圧手段としてエアバッグ17を用いたものを用いているが、押圧手段はこれに限らず、他の構造としてもよい。図9は他の構造の押圧手段を用いた基板収納体31を示す。図9において、第1の実施形態で説明した構成要素と同一の機能のものは、同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0054】
基板収納体31は、パレット11に載置された積重体2と第1の蓋体5の天板5aの間に、ゴム、スポンジ、樹脂発泡体等で形成された弾性板材33を圧縮した状態で配置している。すなわち、弾性板材33は、圧縮しない状態では、天板5aと補強板材16との間隔よりも厚い厚さを有しており、補強板材16の上に弾性板材33を乗せ、その上から第1の蓋体5の天板5aを押し当て、適当な加圧手段で第1の蓋体5をパレット11に向かって押し付け、その状態でパレット11に連結することにより、天板5aが弾性板材33を加圧して弾性変形させ、それにより、弾性変形した弾性板材33が積重体2の上面全域に均一な押圧力を作用させることができる。
【0055】
次に、第4の実施形態に係る基板収納体について説明する。
図10は他の構造の押圧手段を用いた基板収納体41を示す。図10において、第1の実施形態で説明した構成要素と同一の機能のものは、同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0056】
基板収納体41は、積重体の上面に均一な押圧力を付与する押圧手段としてバネ体43を用いる。パレット11に載置された積重体2と第1の蓋体5の天板5aの間に、複数のコイル状のバネ45と鋼性板材47とからなるバネ体43を配置する。すなわち、圧縮しない状態では、バネ45は、天板5aと補強板材16との間隔よりも長く、補強板材16の上に、バネ45を介して第1の蓋体5の天板5aに連結された鋼性板材47を乗せ、適当な加圧手段で第1の蓋体5をパレット11に向かって押し付け、その状態でパレット11に連結する。これにより、バネ対43が積重体2の上面全域に均一な押圧力を作用させることができる。鋼性板材47の形状は、均一な押圧力を作用させることができれば、板状に限らず枠状でもよい。
【0057】
更に、上記実施形態ではいずれも、第1の蓋体5の天板5aを、エアバッグ17や弾性板材33を支える荷重支持板としているが、エアバッグ17や弾性板材33を支える荷重支持板は、必ずしも第1の蓋体5の天板5aの形態とする必要はなく、単に平板上の荷重支持板を用い、この荷重支持板を連結用の棒、パイプ、平板等を用いてパレット11に連結する構造としてもよい。
【0058】
なお、本発明において、押圧手段が積重体の上面全域に均一な押圧力を作用させる構成としているが、請求項の記載における「上面全域」とは、必ずしも厳密な意味での上面全域に限らず、多少は全域より少ない領域であっても、その領域に均一な荷重を加えることによって基板を動かないように拘束できるものであればよく、具体的には、上面全域の80%程度以上の領域を意味するものとする。
【0059】
以上に、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明は実施の形態に示す構造に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
1………基板収納体
2………積重体
3………基板
3a………基板本体
3b………機能層
3c………保護膜
4………合紙
5………第1の蓋体
5a………天板
5b………側板
7………第2の蓋体
10………収納容器
11………パレット
11a………支持面
11b………突起
13………パチン錠
15………補強板材
16………補強板材
17………エアバッグ
19………エア供給用チューブ
20………弁
21………基板収納体
23………エアバッグ
31………基板収納体
33………弾性板材
41………基板収納体
43………バネ体
45………バネ
47………鋼性板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数基板を積み重ねて構成した積重体を収納するための収納容器であって、
前記積重体を、基板を水平とした状態で載置可能な支持面を備えた支持台と、前記支持台に載置された積重体の上面全域に均一な押圧力を作用させ、前記積重体を前記支持台に押し付け固定する押圧手段と、
前記支持台上に、前記支持台に載置された積重体を包囲するように脱着可能に取り付けられた第1の蓋体と、前記第1の蓋体を包囲するように脱着可能に取り付けられた第2の蓋体とを有することを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記押圧手段が、前記支持台に載置された積重体の上面に向かい合うように前記支持台に連結して設けられた荷重支持板と、前記荷重支持板と前記積重体との間に配置され、前記荷重支持板に支えられて前記積重体の上面全域に均一な押圧力を作用させるエアバッグを有することを特徴とする請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記押圧手段が、前記支持台に載置された積重体の上面に配置される弾性板材と、前記弾性板材の上面に配置された荷重支持板と、前記荷重支持板が前記弾性板材を加圧して弾性変形させ、前記弾性板材を介して積重体の上面全域に均一な押圧力を作用させるように前記荷重支持板を前記支持台に連結する連結手段を有することを特徴とする請求項1記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記押圧手段が、前記支持台に載置された積重体の上面に配置される鋼性板材と、前記鋼性板材の上面に配置される複数のバネと、前記バネの上面に配置された荷重支持板と、前記荷重支持板が前記バネを加圧して圧縮させ、前記バネおよび前記鋼性板材を介して積重体の上面全域に均一な押圧力を作用させるように前記荷重支持板を前記支持台に連結する連結手段を有することを特徴とする請求項1記載の基板収納容器。
【請求項5】
前記第1の蓋体の天板が、前記荷重支持板として作用することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項記載の基板収納容器。
【請求項6】
基板と合紙とを交互に積み重ねた積重体を請求項1から請求項5のいずれか1項記載の基板収納容器に収納して形成した基板収納体。
【請求項7】
前記合紙が、樹脂の発泡シートであることを特徴とする請求項6記載の基板収納体。
【請求項8】
前記基板が、機能層を備えたガラス基板であることを特徴とする請求項6又は請求項7記載の基板収納体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−26010(P2011−26010A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200784(P2010−200784)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【分割の表示】特願2005−155170(P2005−155170)の分割
【原出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】