基板搬送装置および基板処理システム
【課題】 基板搬送装置において、パーティクルによる基板の汚染を極力防止する。
【解決手段】 ピック本体115には、拡散防止部材としての拡散防止カバー121が装着されている。拡散防止カバー121は、摺動ブロック123とリニアガイド119とが擦れることによって発生し、落下してくるパーティクルを受け止める底壁部121aと、この底壁部121aから略垂直に立ち上がる側壁部121bとを有する。側壁部121bは、底壁部121aと同様にパーティクルを受け止めるとともに、パーティクルが外部へ飛散しないように封じ込める。
【解決手段】 ピック本体115には、拡散防止部材としての拡散防止カバー121が装着されている。拡散防止カバー121は、摺動ブロック123とリニアガイド119とが擦れることによって発生し、落下してくるパーティクルを受け止める底壁部121aと、この底壁部121aから略垂直に立ち上がる側壁部121bとを有する。側壁部121bは、底壁部121aと同様にパーティクルを受け止めるとともに、パーティクルが外部へ飛散しないように封じ込める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送装置および基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)に代表されるFPDの製造過程においては、真空下で被処理体であるガラス基板等の基板に、エッチング、成膜等の各種処理が施される。FPDの製造には、基板処理室であるプロセスチャンバを複数備えた、いわゆるマルチチャンバタイプの基板処理システムが使用されている。このような基板処理システムは、基板を搬送する基板搬送装置が配備された搬送チャンバと、この搬送チャンバの周囲に設けられた複数のプロセスチャンバとを有している。そして、搬送チャンバ内の基板搬送装置によって、基板が各プロセスチャンバ内に搬入され、あるいは、処理済みの基板が各プロセスチャンバから搬出される。基板の搬送には、通例、ピックと呼ばれる基板を支持する支持部材を複数有するフォーク状の基板保持具が使用される。
【0003】
近年、生産効率を上げるため、FPD用の基板の大型化が進んでおり、それを保持する基板保持具も大型化している。大型の基板を基板保持具に保持した状態で旋回等の動作を可能にするためには、搬送チャンバも大型化せざるを得ない。しかし、真空状態で基板を搬送する真空搬送チャンバの場合、大気圧に抗するだけの機械的強度を保つ必要があり、大型化は限界に近づきつつある。そこで、特許文献1では、搬送チャンバの大型化を回避するとともに、駆動機構への負担を軽減する目的で、ベース上をスライド可能に設けられた複数の第1の支持部材と、この第1の支持部材上にスライド可能に設けられた複数の第2の支持部材とを有する基板保持具が提案されている。この特許文献1の基板保持具は、2段階のスライド機構によって、基板の受け渡しに必要なストロークを確保しながら、搬送チャンバ内では第1及び第2の支持部材を退避させて基板保持具をコンパクトに収容できるため、搬送チャンバの大型化を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−4661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように基板保持具にスライド機構を採用する場合、真空容器の内部で部材と部材を摺動させる動作が行われるため、摺動部位でパーティクル等の汚染原因物質が発生しやすくなる懸念がある。従って、基板保持具の摺動部位でパーティクル等の汚染原因物質が発生しても、基板へ付着させないようにする予防措置を講じておく必要がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板搬送装置において、パーティクル等の汚染原因物質による基板の汚染を極力防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の視点の基板搬送装置は、基板を支持して搬送する基板搬送装置であって、第1の部材と、該第1の部材に対してスライド可能に設けられて基板を支持する第2の部材と、
前記第2の部材をスライドさせるスライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材と、
を備えている。
【0008】
また、本発明の第2の視点において、基板搬送装置は、複数の支持部材を有する基板保持具によって基板を支持して搬送する基板搬送装置であって、
前記支持部材は、本体と、
該本体に対してスライド可能に設けられて基板を支持する可動部材と、
前記可動部材をスライドさせるスライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材と、
を備えている。
【0009】
本発明の第2の視点の基板搬送装置において、拡散防止部材は、前記本体において、前記可動部材のスライド方向に直交する方向に張り出して設けられている。また前記拡散防止部材は、前記可動部材の側面の一部分または全部を覆うように設けられている。また、前記拡散防止部材は、底壁部と、該底壁部から立設され、前記可動部材の側面の一部分または全部を覆う側壁部を備えている。前記可動部材は、基板を支持する支持面を有する支持部と、該支持部から両側下方へ向けて垂れ下がる一対の折曲側板部とを備え、前記拡散防止部材は、前記折曲側板部の少なくとも下端を外側から覆うように近接して設けられている。また、前記本体は、前記可動部材をスライド可能に案内するガイド部材を備えており、前記本体の長手方向に、該ガイド部材の長さ以上の長さで前記拡散防止部材が設けられている。さらに、前記ガイド部材の端部を囲むように、一対の囲繞部材が前記本体上に設けられている。
【0010】
また、本発明の第3の視点において、基板搬送装置は、
複数の支持部材を有する基板保持具によって基板を支持して搬送する基板搬送装置であって、
前記基板保持具を水平方向にスライド可能に支持するスライドベースと、
前記基板保持具をスライドさせるスライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材と、
を備えている。
【0011】
本発明の第3の視点の基板搬送装置において、前記拡散防止部材は、前記スライドベースにおいて、前記基板保持具のスライド方向に直交する方向に張り出して設けられている。また、前記基板保持具は、前記スライドベースとの間をスライド可能に連結する連結部材を有している。また、前記拡散防止部材は、前記連結部材の側面の一部分または全部を覆うように近接して設けられている。また、前記スライドベースは、前記連結部材をスライド可能に案内するガイド部材を備えており、前記スライドベースの長手方向に、該ガイド部材の長さ以上の長さで前記拡散防止部材が設けられている。
【0012】
本発明の基板搬送装置において、前記拡散防止部材の内壁面に、吸着材層を備えている。この場合、前記吸着材層は、粘着性部材により構成されていてもよいし、吸液性部材により構成されていてもよい。
【0013】
本発明の基板処理システムは、上記いずれかの基板搬送装置を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の基板搬送装置によれば、スライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材を備えているので、スライド部位で発生するパーティクル等の汚染原因物質をこの拡散防止部材で受け止め、外部への拡散を防止できる。従って、基板の搬送に用いる基板搬送装置が発生源となる基板へのパーティクル等による汚染を予防し、信頼性の高い基板処理が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】真空処理システムを概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の真空処理システムの平面図である。
【図3】第1の実施の形態の搬送装置において基板保持具を退避させた状態を示す斜視図である。
【図4】第1の実施の形態の搬送装置において基板保持具を進出させた状態を示す斜視図である。
【図5】第1の実施の形態の拡散防止カバーを備えた支持ピックの断面図である。
【図6】変形例の拡散防止カバーを備えた支持ピックの断面図である。
【図7】支持ピックの長手方向における断面図である。
【図8】囲繞部材の配設例を説明する図面である。
【図9】吸着材層を設けた拡散防止部材の断面図である。
【図10】吸着材層を設けた拡散防止部材の別の例の断面図である。
【図11】第2の実施の形態の搬送装置において基板保持具を退避させた状態を示す斜視図である。
【図12】第2の実施の形態の拡散防止カバーを備えた支持ピックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明の一実施の形態の基板搬送装置および該基板搬送装置を備えた基板処理システムを例に挙げて説明を行なう。図1は、基板処理システムとしての真空処理システム100を概略的に示す斜視図であり、図2は、各チャンバの内部を概略的に示す平面図である。この真空処理システム100は、複数のプロセスチャンバ1a,1b,1cを有するマルチチャンバ構造をなしている。真空処理システム100は、例えばFPD用のガラス基板(以下、単に「基板」と記す)Sに対してプラズマ処理を行なうための処理システムとして構成されている。なお、FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【0017】
真空処理システム100では、複数の大型チャンバが平面視十字形に連結されている。中央部には搬送チャンバ3が配置され、その三方の側面に隣接して基板Sに対してプラズマ処理を行なう3つのプロセスチャンバ1a,1b,1cが配設されている。また、搬送チャンバ3の残りの一方の側面に隣接してロードロックチャンバ5が配設されている。これら3つのプロセスチャンバ1a,1b,1c、搬送チャンバ3およびロードロックチャンバ5は、いずれも真空チャンバとして構成されている。搬送チャンバ3と各プロセスチャンバ1a,1b,1cとの間には図示しない開口部が設けられており、該開口部には、開閉機能を有するゲートバルブ7aがそれぞれ配設されている。また、搬送チャンバ3とロードロックチャンバ5との間には、ゲートバルブ7bが配設されている。ゲートバルブ7a,7bは、閉状態で各チャンバの間を気密にシールするとともに、開状態でチャンバ間を連通させて基板Sの移送を可能にしている。また、ロードロックチャンバ5と外部の大気雰囲気との間にもゲートバルブ7cが配備されており、閉状態でロードロックチャンバ5の気密性を維持するとともに開状態でロードロックチャンバ5内と外部との間で基板Sの移送を可能にしている。
【0018】
ロードロックチャンバ5の外側には、2つのカセットインデクサ9a,9bが設けられている。各カセットインデクサ9a,9bの上には、それぞれ基板Sを収容するカセット11a,11bが載置されている。各カセット11a,11b内には、基板Sが、上下に間隔を空けて多段に配置されている。また、各カセット11a,11bは、昇降機構部13a,13bによりそれぞれ昇降自在に構成されている。本実施の形態では、例えばカセット11aには未処理基板を収容し、他方のカセット11bには処理済み基板を収容できるように構成されている。
【0019】
これら2つのカセット11a,11bの間には、基板Sを搬送するための搬送装置15が設けられている。この搬送装置15は、上下2段に設けられた基板保持具17aおよび17bと、これら基板保持具17a,17bを進出、退避および旋回可能に支持する駆動部19と、この駆動部19を支持する支持台21とを備えている。
【0020】
プロセスチャンバ1a,1b,1cは、その内部空間を所定の減圧雰囲気(真空状態)に維持できるように構成されている。各プロセスチャンバ1a,1b,1c内には、図2に示したように、基板Sを載置する載置台としてのサセプタ2が配備されている。そして、各プロセスチャンバ1a,1b,1cでは、基板Sをサセプタ2に載置した状態で、基板Sに対して、例えば真空条件でのエッチング処理、アッシング処理、成膜処理などのプラズマ処理が行なわれる。
【0021】
本実施形態では、3つのプロセスチャンバ1a,1b,1cで同種の処理を行ってもよいし、プロセスチャンバ毎に異なる種類の処理を行ってもよい。なお、プロセスチャンバの数は3つに限らず、4つ以上であってもよい。
【0022】
搬送チャンバ3は、真空処理室であるプロセスチャンバ1a,1b,1cと同様に所定の減圧雰囲気に保持できるように構成されている。搬送チャンバ3の中には、図2に示したように、搬送装置23が配設されている。そして、搬送装置23により、3つのプロセスチャンバ1a,1b,1cおよびロードロックチャンバ5の間で基板Sの搬送が行われる。
【0023】
搬送装置23は、上下2段に設けられた搬送装置を備え、それぞれ独立して基板Sの出し入れを行うことが出来るように構成されている。図3及び図4に、フォーク状の基板保持具101を有する上段の搬送装置23aの概略構成を示した。図3は基板保持具101を退避させた状態を示し、図4は基板保持具101を進出させた状態を示している。搬送装置23aは、主要な構成として、スライドベース111と、スライドベース111に対してスライド可能に設けられた基板保持具101とを有している。基板保持具101は、スライドベース111上を図示しない主駆動機構によってスライド可能に設けられたピックベース113と、このピックベース113に設けられた「第1の部材」としての複数(図3,4では3本)のピック本体115と、このピック本体115上を図示しない副駆動機構によってスライド可能に設けられた「第2の部材」としての複数(図3,4では3本)の可動ピック117と、を有している。ピック本体115と可動ピック117は、支持部材としての支持ピック118を構成している。各可動ピック117は、それぞれのピック本体115を基準にして前方へ延伸した進出状態と該進出状態から退避した退避状態との間でスライド動作が可能に設けられている。また、可動ピック117は、図示しない連結部により同期して前後へ進退動作を行うように構成されている。
【0024】
ピックベース113は、櫛歯状に設けられた複数のピック本体115を確実に固定し、スライドベース111と可動式に連結できるものであればその構成は問わない。また、ピックベース113とピック本体115との連結構造も任意である。
【0025】
基板Sは可動ピック117上に支持されて搬送動作が行われる。上記図示しない主駆動機構と副駆動機構は連動しており、スライドベース111上でピックベース113(つまり、基板保持具101全体)を第1のストロークで前方へ進出させる動作と連動して、ピック本体115上で可動ピック117が第2のストロークで前方へ進出するようになっている。従って、可動ピック117上の基板Sは、進出時には、図3中の矢印で示す方向に、第1のストロークと第2のストロークの合計量で移動し、例えばプロセスチャンバ1a、1b、1cのいずれかとの間で基板Sの受け渡しが行われる。基板保持具101及び可動ピック117を退避させる場合、基板Sは進出時とは逆方向(図4中の矢印で示す方向)に、第1のストロークと第2のストロークの合計量で移動する。
【0026】
ピック本体115の上面115aには、ガイド部材としてのリニアガイド119が設けられている。可動ピック117は、このリニアガイド119と係合する係合部材(ここでは図示を省略)を有しているため、リニアガイド119によって直線方向に案内されつつ進退可能になっている。ピック本体115には、上記リニアガイド119と係合部材との摺動により発生する可能性があるパーティクル等の汚染原因物質(以下、単に「パーティクル」と記すことがある)を受け止め、拡散を防止するための拡散防止カバー121が設けられている。
拡散防止カバー121の詳細な構成については後述する。
【0027】
図3及び図4では上段の搬送装置23aについて説明したが、下段の搬送装置(図示省略)も上段の搬送装置23aと同様の構成を有している。そして、上下の搬送装置23は、図示しない連結機構によって連結され、一体となって水平方向に回転できるように構成されている。また、上下二段に構成された搬送装置23には、ピックベース113およびスライドピック本体115のスライド動作や、スライドベース111の回転動作および昇降動作を行なう図示しない駆動ユニットに連結されている。なお、スライドベース111上でピックベース113をスライドさせる主駆動機構と、ピック本体115上で可動ピック117をスライドさせる副駆動機構とは、互いに独立して駆動する構成でもよい。
【0028】
ロードロックチャンバ5は、プロセスチャンバ1a,1b,1cおよび搬送チャンバ3と同様に所定の減圧雰囲気に保持できるように構成されている。ロードロックチャンバ5は、大気雰囲気にあるカセット11a,11bと減圧雰囲気の搬送チャンバ3との間で基板Sの授受を行うためのものである。ロードロックチャンバ5は、大気雰囲気と減圧雰囲気とを繰り返す関係上、極力その内容積が小さく構成されている。ロードロックチャンバ5には基板収容部27が上下2段に設けられており(図2では上段のみ図示)、各基板収容部27には、基板Sを支持する複数のバッファ28が設けられている。また、ロードロックチャンバ5内には、矩形状の基板Sの互いに対向する角部付近に当接して位置合わせを行なうポジショナー29が設けられている。
【0029】
図2に示したように、真空処理システム100の各構成部は、コンピューターとしての機能を有する制御部30に接続されて制御される構成となっている(図1では図示を省略)。制御部30は、CPUを備えたコントローラ31と、ユーザーインターフェース32と記憶部33とを備えている。コントローラ31は、真空処理システム100において、例えばプロセスチャンバ1a,1b,1c、搬送装置15、搬送装置23などの各構成部を統括して制御する。ユーザーインターフェース32は、工程管理者が真空処理システム100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、真空処理システム100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成される。記憶部33には、真空処理システム100で実行される各種処理をコントローラ31の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記録されたレシピが保存されている。ユーザーインターフェース32および記憶部33は、コントローラ31に接続されている。
【0030】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース32からの指示等にて任意のレシピを記憶部33から呼び出してコントローラ31に実行させることで、コントローラ31の制御下で、真空処理システム100での所望の処理が行われる。
【0031】
前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピューター読み取り可能な記憶媒体、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどに格納された状態のものを利用できる。あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0032】
次に、以上のように構成された真空処理システム100の動作について説明する。
まず、搬送装置15の2つの基板保持具17a,17bを駆動させて、未処理基板を収容したカセット11aから基板Sを受け取り、ロードロックチャンバ5の上下2段の基板収容部27のバッファ28にそれぞれ載置する。
【0033】
基板保持具17a,17bを退避させた後、ロードロックチャンバ5の大気側のゲートバルブ7cを閉じる。その後、ロードロックチャンバ5内を排気して、内部を所定の真空度まで減圧する。次に、搬送チャンバ3とロードロックチャンバ5との間のゲートバルブ7bを開いて、搬送装置23の基板保持具101により、ロードロックチャンバ5の基板収容部27に収容された基板Sを受け取る。この際、スライドベース111に対してピックベース113(基板保持具101の全体)がスライドするとともに、各ピック本体115に対して各可動ピック117がスライドすることにより、可動ピック117が進出又は退避し、基板Sの受け渡しが行われる。
【0034】
次に、搬送装置23の基板保持具101により基板Sを保持した状態で、ピックベース113及び可動ピック117のスライド動作と、スライドベース111の回転動作および昇降動作の組み合わせにより、プロセスチャンバ1a,1b,1cのいずれかに基板Sを搬入し、サセプタ2に受け渡す。プロセスチャンバ1a,1b,1c内では、基板Sに対してエッチング等の所定の処理が施される。次に、処理済みの基板Sは、上記と同様のスライド動作によって、サセプタ2から搬送装置23の基板保持具101に受け渡され、プロセスチャンバ1a,1b,1cから搬出される。
【0035】
そして、基板Sは、前記とは逆の経路でロードロックチャンバ5を経て、搬送装置15によりカセット11bに収容される。なお、処理済みの基板Sを元のカセット11aに戻してもよい。
【0036】
次に、図5〜図10を参照しながら、本発明における拡散防止部材の詳細な構成について、基板保持具101に装着される拡散防止カバー121を例に挙げて説明する。まず、拡散防止カバー121が装着される基板保持具101の構成について説明する。図5は、図3に示す退避状態でピック本体115と可動ピック117とが重なり合った部分の支持ピック118の横断面を示している。基板保持具101のピック本体115は長尺な中空の角筒状をなしている。ピック本体115の材質としては、軽量で、かつ大型の基板Sを載置した状態で荷重による撓みがなるべく生じないように、高い剛性を有する材質として、例えばCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などが用いられている。なお、ピック本体115は、例えば中実な板状でもよい。
【0037】
可動ピック117は、その横断面が逆U字形をなす長尺な板材である。可動ピック117は、基板Sを支持する支持面117aを有する支持部117bと、支持部117bから折曲してその両側下方へ袴状に垂れ下がる一対の折曲側板部117cとを備えている。折曲側板部117cは、可動ピック117を軽量化しながら機械的強度を維持する目的で設けられているが、本実施の形態では、拡散防止カバー121とともにパーティクルを封じ込める作用も有している。可動ピック117の支持部117bと、一対の互いに対向する折曲側板部117cとによって形成される空間に、ピック本体115が挿入されている。可動ピック117は、ピック本体115と同様の材質で構成されている。
【0038】
上記のとおり、ピック本体115の上面115aには、その長手方向にリニアガイド119が設けられている。また、可動ピック117の支持部117bの下面117dには、係合部材としての摺動ブロック123が設けられている。摺動ブロック123は、リニアガイド119と係合しながら摺動し、ピック本体115に対する可動ピック117の進退方向及び進退ストロークを規定している。このように、リニアガイド119と摺動ブロック123と図示しない副駆動部とは、可動ピック117をスライドさせるスライド手段を構成している。
【0039】
ピック本体115には、拡散防止部材としての拡散防止カバー121が装着されている。拡散防止カバー121は、底壁部121aと、この底壁部121aから略垂直に立ち上がる側壁部121bとを有する。また、拡散防止カバー121は、底壁部121aから略直角に折曲して形成された固定部121cを有している。底壁部121aと側壁部121bとは断面L字形をなしている。拡散防止カバー121の材質は、ピック本体115に装着できるものであれば特に限定されるものではなく、例えばアルミニウム等の金属や合成樹脂等を用いることができる。拡散防止カバー121は、例えば螺子や接着剤等の固定手段(図示せず)により、固定部121cにおいてピック本体115に固定されている。なお、拡散防止カバー121の固定方法は特に限定されることはなく、例えば、着脱自在に設けてもよいし、溶接などによりピック本体115と一体に設けてもよい。
【0040】
拡散防止カバー121の底壁部121aは、支持ピック118の長手方向と直交する方向(ピック本体115及び可動ピック117の横断方向)に略水平に張り出している。底壁部121aは、摺動ブロック123とリニアガイド119とが擦れることによって発生し、落下してくるパーティクルを受け止める作用を有する。図5では、摺動ブロック123とリニアガイド119との摺動部位(スライド部位)で発生したパーティクルが、拡散防止カバー121の底壁部121aに落下して受け止められるまでの軌跡を模式的に破線の矢印で示している。
【0041】
拡散防止カバー121の側壁部121bは、ピック本体115の側面115b及び可動ピック117の折曲側板部117cと略平行に、かつ、折曲側板部117cの少なくとも下端を覆うように該折曲側板部117cに近接して設けられている。拡散防止カバー121の側壁部121bは、底壁部121aと同様にパーティクルを受け止めるとともに、パーティクルが外部へ飛散しないように封じ込める作用を有する。この目的のため、図示のように、ピック本体115の底面115cからの可動ピック117の支持面117aの高さをH1、拡散防止カバー121の側壁部121bの上端の高さをH2、可動ピック117の折曲側板部117cの下端の高さをH3とした場合、H1>H2>H3となっている。つまり、ピック本体115の側面115bと拡散防止カバー121の側壁部121bとの間に、可動ピック117の折曲側板部117cの下端が挿入されている。そして、可動ピック117の折曲側板部117cと、拡散防止カバー121の側壁部121bとの間隔は狭く形成されており、パーティクルが外部へ拡散できないような隘路を形成している。このような構造にすることによって、拡散防止カバー121で受け止められたパーティクルが舞い上がって拡散防止カバー121の外側へ飛散することを防止できる。すなわち、摺動ブロック123とリニアガイド119との摺動部位と、外部の基板搬送空間との間に隘路を形成して、可動ピック117をスライドさせることによって発生したパーティクルが基板搬送空間へ拡散することを防止することができる。
【0042】
なお、拡散防止カバー121は、底壁部121aと側壁部121bとを有する形状でなく、例えば図6に示したように、断面が円弧状をなす湾曲した形状を有する拡散防止カバー121Aとしてもよい。この場合も、拡散防止カバー121Aの上端部は、可動ピック117の折曲側板部117cに近接して設けられ、拡散防止カバー121Aで受け止めたパーティクルを内側に封じ込める構造になっている。
【0043】
図7は、可動ピック117を退避させた状態の1本の支持ピック118の長手方向における断面図である。図示のように、拡散防止カバー121は、ピック本体115の長手方向において、リニアガイド119が延在している範囲をカバーできるように、リニアガイド119よりも長く配設されている。先に述べたように、可動ピック117は、摺動ブロック123がリニアガイド119と係合しながら摺動することによって進出・退避する。従って、最もパーティクルが発生しやすい摺動ブロック123の移動範囲をカバーできるように拡散防止カバー121を配設することによって、摺動部位から落下するパーティクルを受け止めることができる。なお、図7では2個の摺動ブロック123を有する構成を図示したが、摺動ブロック123は1個でも3個以上でもよい。
【0044】
本実施の形態の基板保持具101では、摺動ブロック123とリニアガイド119との摺動部位で発生したパーティクルを外部へ拡散させずに封じこめるために、図8に示すように、さらに、一対の囲繞部材125a,125bを設けてもよい。一対の囲繞部材125a,125bは、ピック本体115の上面115aに立設された平面視U字型をなす壁であり、リニアガイド119の基端部119aと先端部119bを前後から囲むように互いに対向して配設されている。上記のとおり、可動ピック117は、摺動ブロック123がリニアガイド119と係合しながら摺動することによって進出・退避するため、進出動作ではリニアガイド119の先端部119b側へ向けて、また、退避動作ではリニアガイド119の基端部119a側へ向けて、それぞれパーティクルの飛散が生じやすい。一対の囲繞部材125a,125bは、摺動部位で発生したパーティクルを受け止め、ピック本体115の先端部側もしくは基端部側へ落下することを防ぐ作用を有する。囲繞部材125a,125bで受け止めたパーティクルは、側方から落下しても拡散防止カバー121で受け止めることができる。従って、拡散防止カバー121は、一対の囲繞部材125a,125bの両方をカバーできる範囲でその下方に設けることがより好ましい。このように、本実施の形態の基板保持具101では、拡散防止カバー121、及び必要に応じてさらに一対の囲繞部材125a,125bを備えることによって、スライド機構の摺動部位で生じたパーティクルを効果的に封じ込め、外部への拡散を防止している。なお、囲繞部材125a,125bはどちらか片方のみを配設してもよい。
【0045】
パーティクルの封じ込め効果をさらに増強させるための構成について、図9及び図10を参照しながら説明する。図9は、拡散防止カバー121の底壁部121aの内面と、側壁部121bの内面に、吸着材層としてパーティクルを吸着する粘着性シート131を設けている。粘着性シート131は、例えば粘着性を有する合成樹脂等の材質で構成することができる。粘着性シート131によって、拡散防止カバー121内に飛翔もしくは落下して来たパーティクルを吸着して捕捉することができるので、外部へのパーティクルの拡散をより確実に防ぐことができる。
【0046】
また、図9では、拡散防止カバー121の内面だけでなく、ピック本体115の側面115b及び退避状態でこの側面115bと対向する可動ピック117の折曲側板部117cの内面にも、粘着性シート131を設けている。上述のとおり、可動ピック117はピック本体115に対してスライド可能に設けられているため、可動ピック117を最大限進出させた状態では、ピック本体115の側面115b及び可動ピック117の折曲側板部117cの内面の大部分は、互いに対向せずに、外部に対して露出した状態になる。また、進出状態では、可動ピック117の下方には拡散防止カバー121が存在しない。そのため、仮に、スライド機構の摺動部位で発生したパーティクルが、可動ピック117の折曲側板部117cの内面に付着していると、それが落下もしくは飛散してパーティクル汚染を引き起こす可能性がある。また、可動ピック117を進出させた状態ではピック本体115の側面115bが露出するため、該側面115bに付着したパーティクルがあると周囲に飛散しやすくなる。図9に示すように、ピック本体115の側面115b及び可動ピック117の折曲側板部117cの内面に粘着性シート131を配備することによって、これらの表面に付着したパーティクルを吸着してしっかりと捕捉し、落下や飛散することを防止できる。なお、粘着性シート131は、配設対象となる壁面の全体を覆うように設けてもよいし、一部分にのみ設けてもよい。
【0047】
図10は、拡散防止カバー121の底壁部121aの内面に、吸着材層として吸液性シート133を設けている。吸液性シート133は、例えばスポンジなどの多孔質素材や繊維素材などの液体吸収能力・液体保持能力に優れたに材質より構成することができる。摺動ブロック123とリニアガイド119との摺動部位には、円滑なスライドを可能にするため潤滑油(グリース)などを注入することがある。その潤滑油がスライド動作に伴って微小な油滴となって周囲に飛散し、基板Sの汚染を引き起こすことがある。吸液性シート133は、拡散防止カバー121内へ落下してきた潤滑油の微小な油滴を吸収し捕捉する。また、吸液性シート133は、可動ピック117の折曲側板部117cの内壁面、あるいはピック本体115の側面115bを伝って流下してきた油を吸収し捕捉する。
【0048】
吸液性シート133は、液体を吸収し、保持する能力に優れるため、一旦捕捉した油を封じ込め、外部への拡散を防止する。その結果、油による基板Sの汚染を効果的に防止できる。図10では、拡散防止カバー121の底壁部121a以外の側壁部121bの内面や、ピック本体115の側面115b及び可動ピック117の折曲側板部117cの内面には、図9と同様にパーティクルを吸着する粘着性シート131を設けている。このように、吸着材層として性質の異なる粘着性シート131と吸液性シート133を組み合わせて配備することによって、パーティクル等の汚染原因物質による基板Sの汚染をさらに確実に予防できる。もちろん、拡散防止カバー121の側壁部121bの内面や、ピック本体115の側面115b及び可動ピック117の折曲側板部117cの内面にも、吸液性シート133を配設してもよい。なお、吸液性シート133は配設対象となる壁面の全体を覆うようにもうけてもよいし、一部分にのみ設けてもよい。
【0049】
上記粘着性シート131や吸液性シート133は、例えば両面粘着テープ等によって固定し、定期的に交換することによって、それ自体が汚染原因物質の発生源となることを防止できる。
【0050】
[第2の実施の形態]
次に、図11及び図12を参照しながら、本発明の第2の実施の形態にかかる基板搬送装置について説明する。まず、本実施の形態の拡散防止カバーを適用可能な搬送装置200の概略構成について、外観斜視図である図11を参照しながら説明する。図11では、搬送装置200の構成を明らかにするため、拡散防止カバーを装着していない状態を示している。図11に示すように、搬送装置200は、基板保持具205がスライドベース201から吊り下がっている構造となっている。搬送装置200は、主要な構成としてスライドベース201と、連結スライダ203を有してスライドベース201に対してスライド可能に設けられた基板保持具205と、スライドベース201を支持する複数のフレーム(図11では2つ)207を備えている。なお、図11は基板保持具205を退避させた状態を示している。この搬送装置200は、図1及び図2の真空処理システム100において、第1の実施の形態の搬送装置23の代わりに使用できるものである。なお、搬送装置200は、スライドベース201及び基板保持具205を多段例えば上下2段に有するものであってもよい。
【0051】
スライドベース201は長尺な板状をなし、その長手方向に沿って両端にスライド部201aを有している。なお、各スライド部201aにはガイド(図11では図示省略、図12を参照)が形成されている。スライドベース201は、上方を横断するように配設された2つのフレーム207に固定され、これらによって支持されている。搬送装置200は、図示しない駆動機構によって、2つのフレーム207と一体になって昇降及び旋回できるように構成されている。
【0052】
基板保持具205は、上記一対の連結スライダ203,203(図11では片側のみ図示)と、これらの連結スライダ203に固定されてスライドベース201に対してスライド可能に設けられたピックベース209と、このピックベース209に設けられた複数(例えば3本)のピック本体211と、各ピック本体211上を図示しない副駆動機構によってスライド可能に設けられた可動ピック213と、を有している。連結スライダ203は、ピックベース209に固定されているとともに、スライドベース201のスライド部201aと係合することにより、基板保持具205全体を吊り下げている。そして、連結スライダ203は、スライド部201aと係合しながら、図示しない主駆動機構によってピックベース209(つまり、基板保持具205)をスライドさせる。
【0053】
ピック本体211と可動ピック213は、支持部材としての支持ピック215を構成している。各可動ピック213は、それぞれのピック本体211を基準にして前方(図11の矢印Fの方向)へ延伸した進出状態と該進出状態から後方(図11の矢印Bの方向)へ退避した退避状態との間でスライド動作が可能に設けられている。また、可動ピック213は、図示しない連結部により同期して前後へ進退動作を行うように構成されている。
【0054】
ピックベース209は、櫛歯状に設けられた複数のピック本体211を確実に固定し、スライドベース201と可動式に連結できるものであればその構成は問わない。また、ピックベース209とピック本体211との連結構造も任意である。
【0055】
基板Sは可動ピック213上に支持されて搬送動作が行われる。上記図示しない主駆動機構と副駆動機構によって、スライドベース201に対してピックベース209(つまり、基板保持具205全体)を第1のストロークで前方(図11の矢印Fの方向)へ進出させるとともに、ピック本体211上で可動ピック213を第2のストロークで前方へ進出できるように構成されている。従って、可動ピック213上の基板Sは、進出時には、前方に、第1のストロークと第2のストロークの合計量で移動し、例えばプロセスチャンバ1a、1b、1cのいずれかとの間で基板Sの受け渡しが行われる。基板保持具205及び可動ピック213を退避させる場合、基板Sは進出時とは逆方向(図11の矢印Bの方向)に、第1のストロークと第2のストロークの合計量で移動する。
【0056】
図12は、拡散防止部材としての拡散防止カバー221を装着した状態の搬送装置200におけるスライドベース201及び支持ピック215の長手方向に直交する方向の断面を、図11の矢印Bの方向から見た拡大図である。拡散防止カバー221はスライドベース201に装着されている。つまり、本実施の形態では、スライドベース201が「第1の部材」であり、連結スライダ203を含む基板保持具205が「第2の部材」である。拡散防止カバー221は、上壁部221aと、この上壁部221aから略垂直に垂下する側壁部221bとを有する。上壁部221aと側壁部221bとは断面L字形をなしている。拡散防止カバー221の材質は、第1の実施の形態と同様である。拡散防止カバー221は、例えば螺子や接着剤等の固定手段(図示せず)により、スライドベース201に固定されている。なお、拡散防止カバー221の固定方法は特に限定されることはなく、例えば、着脱自在に設けてもよいし、溶接などによりスライドベース201と一体に設けてもよい。
【0057】
拡散防止カバー221の上壁部221aは、スライドベース201の長手方向と直交する方向に略水平に張り出している。図12に示すように、ピックベース209に固定された一対の連結スライダ203,203は、それぞれがスライドベース201の左右のスライド部201aに凸設されたガイド201bと係合している。そして連結スライダ203は、ガイド201bに沿ってスライド移動することによって基板保持具205全体を水平にスライドさせる。拡散防止カバー221は、連結スライダ203とガイド201bとの摺動部位(スライド部位)で発生するパーティクルが、外部の搬送空間に拡散しないように作用する。すなわち、拡散防止カバー221の上壁部221a及び側壁部221bは、連結スライダ203の外側の上面203a及び側面203bとそれぞれ略平行に、かつ、連結スライダ203の少なくとも上部を覆うように近接して設けられている。拡散防止カバー221の上壁部221aと連結スライダ203の上面203a、及び拡散防止カバー221の側壁部221bと連結スライダ203の側面203bとの間隔は、ともに狭く形成されており、パーティクルが外部の基板搬送空間へ拡散できないような隘路を形成している。
【0058】
なお、拡散防止カバー221は、連結スライダ203との間で隘路を形成できる形状であればよく、例えば連結スライダの形状が湾曲している場合には、拡散防止カバーも断面が円弧状をなす湾曲した形状とすることができる。
【0059】
本実施の形態では、さらにスライドベース201の左右に形成されたスライド部201aを遮蔽するように、補助カバー223が配設されている。補助カバー223は、連結スライダ203の内側の側壁面203cと平行に、かつ近接して設けられている。補助カバー223は、連結スライダ203の移動によってガイド201bとの間で発生したパーティクルを受け止め、スライドベース201の下方の基板S上に落下することを防止する。
【0060】
また、拡散防止カバー221及び補助カバー223は、図示は省略するが第1の実施の形態と同様に、スライドベース201のガイド201bの形成範囲をカバーできるような長さで設けられている。また、第1の実施の形態と同様に、拡散防止カバー221は、その内壁面に、粘着性シートや吸液性シートにより構成される吸着材層を設けてもよい。
【0061】
また、搬送装置200の各支持ピック215のピック本体211には、第1の実施の形態と同様の構成の拡散防止カバー121が設けられている。この拡散防止カバー121の構成と作用は第1の実施の形態で説明したとおりである。なお、本実施の形態では、支持ピック215の拡散防止カバー121の装着は任意であり、設けなくてもよい。
【0062】
本実施の形態における他の構成及び作用は、第1の実施の形態と同様である。
【0063】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。当業者は本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を成し得、それらも本発明の範囲内に含まれる。例えば、第2の実施の形態において、スライドベース201のスライド部201aに拡散防止カバー221を設けたように、第1の実施の形態のスライドベース111のスライド部にも拡散防止カバーを設けても良い。また、上記実施の形態では、真空状態で基板Sの搬送を行う搬送装置23を例に挙げて説明したが、拡散防止カバー121,221は、大気圧状態で基板の搬送を行う搬送装置15にも適用可能である。
【0064】
また、拡散防止カバー121,221を備えた本発明の基板搬送装置は、FPD製造用のガラス基板を搬送対象とする搬送装置に限らず、例えば太陽電池用の基板など各種用途の基板を搬送対象とする搬送装置にも適用できる。
【0065】
また、本発明の基板搬送装置の構成は、上下2段に配備されたスライド方式に限らず、1段構成でも3段構成でもよい。また、上下2段に配備された第1の実施の形態のスライド式の搬送装置23において、上段の搬送装置23aのみについて拡散防止カバー121を設けることもできる。
【符号の説明】
【0066】
1a,1b,1c…プロセスチャンバ、3…搬送チャンバ、5…ロードロックチャンバ、100…真空処理システム、101…基板保持具、111…スライドベース、113…ピックベース、115…ピック本体、115a…上面、115b…側面、117…可動ピック、117a…支持面、117b…支持部、117c…折曲側板部、117d…下面、118…支持ピック、119…リニアガイド、121…拡散防止カバー、121a…底壁部、121b…側壁部、121c…固定部、123…摺動ブロック、S…基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送装置および基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)に代表されるFPDの製造過程においては、真空下で被処理体であるガラス基板等の基板に、エッチング、成膜等の各種処理が施される。FPDの製造には、基板処理室であるプロセスチャンバを複数備えた、いわゆるマルチチャンバタイプの基板処理システムが使用されている。このような基板処理システムは、基板を搬送する基板搬送装置が配備された搬送チャンバと、この搬送チャンバの周囲に設けられた複数のプロセスチャンバとを有している。そして、搬送チャンバ内の基板搬送装置によって、基板が各プロセスチャンバ内に搬入され、あるいは、処理済みの基板が各プロセスチャンバから搬出される。基板の搬送には、通例、ピックと呼ばれる基板を支持する支持部材を複数有するフォーク状の基板保持具が使用される。
【0003】
近年、生産効率を上げるため、FPD用の基板の大型化が進んでおり、それを保持する基板保持具も大型化している。大型の基板を基板保持具に保持した状態で旋回等の動作を可能にするためには、搬送チャンバも大型化せざるを得ない。しかし、真空状態で基板を搬送する真空搬送チャンバの場合、大気圧に抗するだけの機械的強度を保つ必要があり、大型化は限界に近づきつつある。そこで、特許文献1では、搬送チャンバの大型化を回避するとともに、駆動機構への負担を軽減する目的で、ベース上をスライド可能に設けられた複数の第1の支持部材と、この第1の支持部材上にスライド可能に設けられた複数の第2の支持部材とを有する基板保持具が提案されている。この特許文献1の基板保持具は、2段階のスライド機構によって、基板の受け渡しに必要なストロークを確保しながら、搬送チャンバ内では第1及び第2の支持部材を退避させて基板保持具をコンパクトに収容できるため、搬送チャンバの大型化を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−4661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように基板保持具にスライド機構を採用する場合、真空容器の内部で部材と部材を摺動させる動作が行われるため、摺動部位でパーティクル等の汚染原因物質が発生しやすくなる懸念がある。従って、基板保持具の摺動部位でパーティクル等の汚染原因物質が発生しても、基板へ付着させないようにする予防措置を講じておく必要がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板搬送装置において、パーティクル等の汚染原因物質による基板の汚染を極力防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の視点の基板搬送装置は、基板を支持して搬送する基板搬送装置であって、第1の部材と、該第1の部材に対してスライド可能に設けられて基板を支持する第2の部材と、
前記第2の部材をスライドさせるスライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材と、
を備えている。
【0008】
また、本発明の第2の視点において、基板搬送装置は、複数の支持部材を有する基板保持具によって基板を支持して搬送する基板搬送装置であって、
前記支持部材は、本体と、
該本体に対してスライド可能に設けられて基板を支持する可動部材と、
前記可動部材をスライドさせるスライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材と、
を備えている。
【0009】
本発明の第2の視点の基板搬送装置において、拡散防止部材は、前記本体において、前記可動部材のスライド方向に直交する方向に張り出して設けられている。また前記拡散防止部材は、前記可動部材の側面の一部分または全部を覆うように設けられている。また、前記拡散防止部材は、底壁部と、該底壁部から立設され、前記可動部材の側面の一部分または全部を覆う側壁部を備えている。前記可動部材は、基板を支持する支持面を有する支持部と、該支持部から両側下方へ向けて垂れ下がる一対の折曲側板部とを備え、前記拡散防止部材は、前記折曲側板部の少なくとも下端を外側から覆うように近接して設けられている。また、前記本体は、前記可動部材をスライド可能に案内するガイド部材を備えており、前記本体の長手方向に、該ガイド部材の長さ以上の長さで前記拡散防止部材が設けられている。さらに、前記ガイド部材の端部を囲むように、一対の囲繞部材が前記本体上に設けられている。
【0010】
また、本発明の第3の視点において、基板搬送装置は、
複数の支持部材を有する基板保持具によって基板を支持して搬送する基板搬送装置であって、
前記基板保持具を水平方向にスライド可能に支持するスライドベースと、
前記基板保持具をスライドさせるスライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材と、
を備えている。
【0011】
本発明の第3の視点の基板搬送装置において、前記拡散防止部材は、前記スライドベースにおいて、前記基板保持具のスライド方向に直交する方向に張り出して設けられている。また、前記基板保持具は、前記スライドベースとの間をスライド可能に連結する連結部材を有している。また、前記拡散防止部材は、前記連結部材の側面の一部分または全部を覆うように近接して設けられている。また、前記スライドベースは、前記連結部材をスライド可能に案内するガイド部材を備えており、前記スライドベースの長手方向に、該ガイド部材の長さ以上の長さで前記拡散防止部材が設けられている。
【0012】
本発明の基板搬送装置において、前記拡散防止部材の内壁面に、吸着材層を備えている。この場合、前記吸着材層は、粘着性部材により構成されていてもよいし、吸液性部材により構成されていてもよい。
【0013】
本発明の基板処理システムは、上記いずれかの基板搬送装置を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の基板搬送装置によれば、スライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材を備えているので、スライド部位で発生するパーティクル等の汚染原因物質をこの拡散防止部材で受け止め、外部への拡散を防止できる。従って、基板の搬送に用いる基板搬送装置が発生源となる基板へのパーティクル等による汚染を予防し、信頼性の高い基板処理が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】真空処理システムを概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の真空処理システムの平面図である。
【図3】第1の実施の形態の搬送装置において基板保持具を退避させた状態を示す斜視図である。
【図4】第1の実施の形態の搬送装置において基板保持具を進出させた状態を示す斜視図である。
【図5】第1の実施の形態の拡散防止カバーを備えた支持ピックの断面図である。
【図6】変形例の拡散防止カバーを備えた支持ピックの断面図である。
【図7】支持ピックの長手方向における断面図である。
【図8】囲繞部材の配設例を説明する図面である。
【図9】吸着材層を設けた拡散防止部材の断面図である。
【図10】吸着材層を設けた拡散防止部材の別の例の断面図である。
【図11】第2の実施の形態の搬送装置において基板保持具を退避させた状態を示す斜視図である。
【図12】第2の実施の形態の拡散防止カバーを備えた支持ピックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明の一実施の形態の基板搬送装置および該基板搬送装置を備えた基板処理システムを例に挙げて説明を行なう。図1は、基板処理システムとしての真空処理システム100を概略的に示す斜視図であり、図2は、各チャンバの内部を概略的に示す平面図である。この真空処理システム100は、複数のプロセスチャンバ1a,1b,1cを有するマルチチャンバ構造をなしている。真空処理システム100は、例えばFPD用のガラス基板(以下、単に「基板」と記す)Sに対してプラズマ処理を行なうための処理システムとして構成されている。なお、FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【0017】
真空処理システム100では、複数の大型チャンバが平面視十字形に連結されている。中央部には搬送チャンバ3が配置され、その三方の側面に隣接して基板Sに対してプラズマ処理を行なう3つのプロセスチャンバ1a,1b,1cが配設されている。また、搬送チャンバ3の残りの一方の側面に隣接してロードロックチャンバ5が配設されている。これら3つのプロセスチャンバ1a,1b,1c、搬送チャンバ3およびロードロックチャンバ5は、いずれも真空チャンバとして構成されている。搬送チャンバ3と各プロセスチャンバ1a,1b,1cとの間には図示しない開口部が設けられており、該開口部には、開閉機能を有するゲートバルブ7aがそれぞれ配設されている。また、搬送チャンバ3とロードロックチャンバ5との間には、ゲートバルブ7bが配設されている。ゲートバルブ7a,7bは、閉状態で各チャンバの間を気密にシールするとともに、開状態でチャンバ間を連通させて基板Sの移送を可能にしている。また、ロードロックチャンバ5と外部の大気雰囲気との間にもゲートバルブ7cが配備されており、閉状態でロードロックチャンバ5の気密性を維持するとともに開状態でロードロックチャンバ5内と外部との間で基板Sの移送を可能にしている。
【0018】
ロードロックチャンバ5の外側には、2つのカセットインデクサ9a,9bが設けられている。各カセットインデクサ9a,9bの上には、それぞれ基板Sを収容するカセット11a,11bが載置されている。各カセット11a,11b内には、基板Sが、上下に間隔を空けて多段に配置されている。また、各カセット11a,11bは、昇降機構部13a,13bによりそれぞれ昇降自在に構成されている。本実施の形態では、例えばカセット11aには未処理基板を収容し、他方のカセット11bには処理済み基板を収容できるように構成されている。
【0019】
これら2つのカセット11a,11bの間には、基板Sを搬送するための搬送装置15が設けられている。この搬送装置15は、上下2段に設けられた基板保持具17aおよび17bと、これら基板保持具17a,17bを進出、退避および旋回可能に支持する駆動部19と、この駆動部19を支持する支持台21とを備えている。
【0020】
プロセスチャンバ1a,1b,1cは、その内部空間を所定の減圧雰囲気(真空状態)に維持できるように構成されている。各プロセスチャンバ1a,1b,1c内には、図2に示したように、基板Sを載置する載置台としてのサセプタ2が配備されている。そして、各プロセスチャンバ1a,1b,1cでは、基板Sをサセプタ2に載置した状態で、基板Sに対して、例えば真空条件でのエッチング処理、アッシング処理、成膜処理などのプラズマ処理が行なわれる。
【0021】
本実施形態では、3つのプロセスチャンバ1a,1b,1cで同種の処理を行ってもよいし、プロセスチャンバ毎に異なる種類の処理を行ってもよい。なお、プロセスチャンバの数は3つに限らず、4つ以上であってもよい。
【0022】
搬送チャンバ3は、真空処理室であるプロセスチャンバ1a,1b,1cと同様に所定の減圧雰囲気に保持できるように構成されている。搬送チャンバ3の中には、図2に示したように、搬送装置23が配設されている。そして、搬送装置23により、3つのプロセスチャンバ1a,1b,1cおよびロードロックチャンバ5の間で基板Sの搬送が行われる。
【0023】
搬送装置23は、上下2段に設けられた搬送装置を備え、それぞれ独立して基板Sの出し入れを行うことが出来るように構成されている。図3及び図4に、フォーク状の基板保持具101を有する上段の搬送装置23aの概略構成を示した。図3は基板保持具101を退避させた状態を示し、図4は基板保持具101を進出させた状態を示している。搬送装置23aは、主要な構成として、スライドベース111と、スライドベース111に対してスライド可能に設けられた基板保持具101とを有している。基板保持具101は、スライドベース111上を図示しない主駆動機構によってスライド可能に設けられたピックベース113と、このピックベース113に設けられた「第1の部材」としての複数(図3,4では3本)のピック本体115と、このピック本体115上を図示しない副駆動機構によってスライド可能に設けられた「第2の部材」としての複数(図3,4では3本)の可動ピック117と、を有している。ピック本体115と可動ピック117は、支持部材としての支持ピック118を構成している。各可動ピック117は、それぞれのピック本体115を基準にして前方へ延伸した進出状態と該進出状態から退避した退避状態との間でスライド動作が可能に設けられている。また、可動ピック117は、図示しない連結部により同期して前後へ進退動作を行うように構成されている。
【0024】
ピックベース113は、櫛歯状に設けられた複数のピック本体115を確実に固定し、スライドベース111と可動式に連結できるものであればその構成は問わない。また、ピックベース113とピック本体115との連結構造も任意である。
【0025】
基板Sは可動ピック117上に支持されて搬送動作が行われる。上記図示しない主駆動機構と副駆動機構は連動しており、スライドベース111上でピックベース113(つまり、基板保持具101全体)を第1のストロークで前方へ進出させる動作と連動して、ピック本体115上で可動ピック117が第2のストロークで前方へ進出するようになっている。従って、可動ピック117上の基板Sは、進出時には、図3中の矢印で示す方向に、第1のストロークと第2のストロークの合計量で移動し、例えばプロセスチャンバ1a、1b、1cのいずれかとの間で基板Sの受け渡しが行われる。基板保持具101及び可動ピック117を退避させる場合、基板Sは進出時とは逆方向(図4中の矢印で示す方向)に、第1のストロークと第2のストロークの合計量で移動する。
【0026】
ピック本体115の上面115aには、ガイド部材としてのリニアガイド119が設けられている。可動ピック117は、このリニアガイド119と係合する係合部材(ここでは図示を省略)を有しているため、リニアガイド119によって直線方向に案内されつつ進退可能になっている。ピック本体115には、上記リニアガイド119と係合部材との摺動により発生する可能性があるパーティクル等の汚染原因物質(以下、単に「パーティクル」と記すことがある)を受け止め、拡散を防止するための拡散防止カバー121が設けられている。
拡散防止カバー121の詳細な構成については後述する。
【0027】
図3及び図4では上段の搬送装置23aについて説明したが、下段の搬送装置(図示省略)も上段の搬送装置23aと同様の構成を有している。そして、上下の搬送装置23は、図示しない連結機構によって連結され、一体となって水平方向に回転できるように構成されている。また、上下二段に構成された搬送装置23には、ピックベース113およびスライドピック本体115のスライド動作や、スライドベース111の回転動作および昇降動作を行なう図示しない駆動ユニットに連結されている。なお、スライドベース111上でピックベース113をスライドさせる主駆動機構と、ピック本体115上で可動ピック117をスライドさせる副駆動機構とは、互いに独立して駆動する構成でもよい。
【0028】
ロードロックチャンバ5は、プロセスチャンバ1a,1b,1cおよび搬送チャンバ3と同様に所定の減圧雰囲気に保持できるように構成されている。ロードロックチャンバ5は、大気雰囲気にあるカセット11a,11bと減圧雰囲気の搬送チャンバ3との間で基板Sの授受を行うためのものである。ロードロックチャンバ5は、大気雰囲気と減圧雰囲気とを繰り返す関係上、極力その内容積が小さく構成されている。ロードロックチャンバ5には基板収容部27が上下2段に設けられており(図2では上段のみ図示)、各基板収容部27には、基板Sを支持する複数のバッファ28が設けられている。また、ロードロックチャンバ5内には、矩形状の基板Sの互いに対向する角部付近に当接して位置合わせを行なうポジショナー29が設けられている。
【0029】
図2に示したように、真空処理システム100の各構成部は、コンピューターとしての機能を有する制御部30に接続されて制御される構成となっている(図1では図示を省略)。制御部30は、CPUを備えたコントローラ31と、ユーザーインターフェース32と記憶部33とを備えている。コントローラ31は、真空処理システム100において、例えばプロセスチャンバ1a,1b,1c、搬送装置15、搬送装置23などの各構成部を統括して制御する。ユーザーインターフェース32は、工程管理者が真空処理システム100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、真空処理システム100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成される。記憶部33には、真空処理システム100で実行される各種処理をコントローラ31の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記録されたレシピが保存されている。ユーザーインターフェース32および記憶部33は、コントローラ31に接続されている。
【0030】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース32からの指示等にて任意のレシピを記憶部33から呼び出してコントローラ31に実行させることで、コントローラ31の制御下で、真空処理システム100での所望の処理が行われる。
【0031】
前記制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピューター読み取り可能な記憶媒体、例えばCD−ROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどに格納された状態のものを利用できる。あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0032】
次に、以上のように構成された真空処理システム100の動作について説明する。
まず、搬送装置15の2つの基板保持具17a,17bを駆動させて、未処理基板を収容したカセット11aから基板Sを受け取り、ロードロックチャンバ5の上下2段の基板収容部27のバッファ28にそれぞれ載置する。
【0033】
基板保持具17a,17bを退避させた後、ロードロックチャンバ5の大気側のゲートバルブ7cを閉じる。その後、ロードロックチャンバ5内を排気して、内部を所定の真空度まで減圧する。次に、搬送チャンバ3とロードロックチャンバ5との間のゲートバルブ7bを開いて、搬送装置23の基板保持具101により、ロードロックチャンバ5の基板収容部27に収容された基板Sを受け取る。この際、スライドベース111に対してピックベース113(基板保持具101の全体)がスライドするとともに、各ピック本体115に対して各可動ピック117がスライドすることにより、可動ピック117が進出又は退避し、基板Sの受け渡しが行われる。
【0034】
次に、搬送装置23の基板保持具101により基板Sを保持した状態で、ピックベース113及び可動ピック117のスライド動作と、スライドベース111の回転動作および昇降動作の組み合わせにより、プロセスチャンバ1a,1b,1cのいずれかに基板Sを搬入し、サセプタ2に受け渡す。プロセスチャンバ1a,1b,1c内では、基板Sに対してエッチング等の所定の処理が施される。次に、処理済みの基板Sは、上記と同様のスライド動作によって、サセプタ2から搬送装置23の基板保持具101に受け渡され、プロセスチャンバ1a,1b,1cから搬出される。
【0035】
そして、基板Sは、前記とは逆の経路でロードロックチャンバ5を経て、搬送装置15によりカセット11bに収容される。なお、処理済みの基板Sを元のカセット11aに戻してもよい。
【0036】
次に、図5〜図10を参照しながら、本発明における拡散防止部材の詳細な構成について、基板保持具101に装着される拡散防止カバー121を例に挙げて説明する。まず、拡散防止カバー121が装着される基板保持具101の構成について説明する。図5は、図3に示す退避状態でピック本体115と可動ピック117とが重なり合った部分の支持ピック118の横断面を示している。基板保持具101のピック本体115は長尺な中空の角筒状をなしている。ピック本体115の材質としては、軽量で、かつ大型の基板Sを載置した状態で荷重による撓みがなるべく生じないように、高い剛性を有する材質として、例えばCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などが用いられている。なお、ピック本体115は、例えば中実な板状でもよい。
【0037】
可動ピック117は、その横断面が逆U字形をなす長尺な板材である。可動ピック117は、基板Sを支持する支持面117aを有する支持部117bと、支持部117bから折曲してその両側下方へ袴状に垂れ下がる一対の折曲側板部117cとを備えている。折曲側板部117cは、可動ピック117を軽量化しながら機械的強度を維持する目的で設けられているが、本実施の形態では、拡散防止カバー121とともにパーティクルを封じ込める作用も有している。可動ピック117の支持部117bと、一対の互いに対向する折曲側板部117cとによって形成される空間に、ピック本体115が挿入されている。可動ピック117は、ピック本体115と同様の材質で構成されている。
【0038】
上記のとおり、ピック本体115の上面115aには、その長手方向にリニアガイド119が設けられている。また、可動ピック117の支持部117bの下面117dには、係合部材としての摺動ブロック123が設けられている。摺動ブロック123は、リニアガイド119と係合しながら摺動し、ピック本体115に対する可動ピック117の進退方向及び進退ストロークを規定している。このように、リニアガイド119と摺動ブロック123と図示しない副駆動部とは、可動ピック117をスライドさせるスライド手段を構成している。
【0039】
ピック本体115には、拡散防止部材としての拡散防止カバー121が装着されている。拡散防止カバー121は、底壁部121aと、この底壁部121aから略垂直に立ち上がる側壁部121bとを有する。また、拡散防止カバー121は、底壁部121aから略直角に折曲して形成された固定部121cを有している。底壁部121aと側壁部121bとは断面L字形をなしている。拡散防止カバー121の材質は、ピック本体115に装着できるものであれば特に限定されるものではなく、例えばアルミニウム等の金属や合成樹脂等を用いることができる。拡散防止カバー121は、例えば螺子や接着剤等の固定手段(図示せず)により、固定部121cにおいてピック本体115に固定されている。なお、拡散防止カバー121の固定方法は特に限定されることはなく、例えば、着脱自在に設けてもよいし、溶接などによりピック本体115と一体に設けてもよい。
【0040】
拡散防止カバー121の底壁部121aは、支持ピック118の長手方向と直交する方向(ピック本体115及び可動ピック117の横断方向)に略水平に張り出している。底壁部121aは、摺動ブロック123とリニアガイド119とが擦れることによって発生し、落下してくるパーティクルを受け止める作用を有する。図5では、摺動ブロック123とリニアガイド119との摺動部位(スライド部位)で発生したパーティクルが、拡散防止カバー121の底壁部121aに落下して受け止められるまでの軌跡を模式的に破線の矢印で示している。
【0041】
拡散防止カバー121の側壁部121bは、ピック本体115の側面115b及び可動ピック117の折曲側板部117cと略平行に、かつ、折曲側板部117cの少なくとも下端を覆うように該折曲側板部117cに近接して設けられている。拡散防止カバー121の側壁部121bは、底壁部121aと同様にパーティクルを受け止めるとともに、パーティクルが外部へ飛散しないように封じ込める作用を有する。この目的のため、図示のように、ピック本体115の底面115cからの可動ピック117の支持面117aの高さをH1、拡散防止カバー121の側壁部121bの上端の高さをH2、可動ピック117の折曲側板部117cの下端の高さをH3とした場合、H1>H2>H3となっている。つまり、ピック本体115の側面115bと拡散防止カバー121の側壁部121bとの間に、可動ピック117の折曲側板部117cの下端が挿入されている。そして、可動ピック117の折曲側板部117cと、拡散防止カバー121の側壁部121bとの間隔は狭く形成されており、パーティクルが外部へ拡散できないような隘路を形成している。このような構造にすることによって、拡散防止カバー121で受け止められたパーティクルが舞い上がって拡散防止カバー121の外側へ飛散することを防止できる。すなわち、摺動ブロック123とリニアガイド119との摺動部位と、外部の基板搬送空間との間に隘路を形成して、可動ピック117をスライドさせることによって発生したパーティクルが基板搬送空間へ拡散することを防止することができる。
【0042】
なお、拡散防止カバー121は、底壁部121aと側壁部121bとを有する形状でなく、例えば図6に示したように、断面が円弧状をなす湾曲した形状を有する拡散防止カバー121Aとしてもよい。この場合も、拡散防止カバー121Aの上端部は、可動ピック117の折曲側板部117cに近接して設けられ、拡散防止カバー121Aで受け止めたパーティクルを内側に封じ込める構造になっている。
【0043】
図7は、可動ピック117を退避させた状態の1本の支持ピック118の長手方向における断面図である。図示のように、拡散防止カバー121は、ピック本体115の長手方向において、リニアガイド119が延在している範囲をカバーできるように、リニアガイド119よりも長く配設されている。先に述べたように、可動ピック117は、摺動ブロック123がリニアガイド119と係合しながら摺動することによって進出・退避する。従って、最もパーティクルが発生しやすい摺動ブロック123の移動範囲をカバーできるように拡散防止カバー121を配設することによって、摺動部位から落下するパーティクルを受け止めることができる。なお、図7では2個の摺動ブロック123を有する構成を図示したが、摺動ブロック123は1個でも3個以上でもよい。
【0044】
本実施の形態の基板保持具101では、摺動ブロック123とリニアガイド119との摺動部位で発生したパーティクルを外部へ拡散させずに封じこめるために、図8に示すように、さらに、一対の囲繞部材125a,125bを設けてもよい。一対の囲繞部材125a,125bは、ピック本体115の上面115aに立設された平面視U字型をなす壁であり、リニアガイド119の基端部119aと先端部119bを前後から囲むように互いに対向して配設されている。上記のとおり、可動ピック117は、摺動ブロック123がリニアガイド119と係合しながら摺動することによって進出・退避するため、進出動作ではリニアガイド119の先端部119b側へ向けて、また、退避動作ではリニアガイド119の基端部119a側へ向けて、それぞれパーティクルの飛散が生じやすい。一対の囲繞部材125a,125bは、摺動部位で発生したパーティクルを受け止め、ピック本体115の先端部側もしくは基端部側へ落下することを防ぐ作用を有する。囲繞部材125a,125bで受け止めたパーティクルは、側方から落下しても拡散防止カバー121で受け止めることができる。従って、拡散防止カバー121は、一対の囲繞部材125a,125bの両方をカバーできる範囲でその下方に設けることがより好ましい。このように、本実施の形態の基板保持具101では、拡散防止カバー121、及び必要に応じてさらに一対の囲繞部材125a,125bを備えることによって、スライド機構の摺動部位で生じたパーティクルを効果的に封じ込め、外部への拡散を防止している。なお、囲繞部材125a,125bはどちらか片方のみを配設してもよい。
【0045】
パーティクルの封じ込め効果をさらに増強させるための構成について、図9及び図10を参照しながら説明する。図9は、拡散防止カバー121の底壁部121aの内面と、側壁部121bの内面に、吸着材層としてパーティクルを吸着する粘着性シート131を設けている。粘着性シート131は、例えば粘着性を有する合成樹脂等の材質で構成することができる。粘着性シート131によって、拡散防止カバー121内に飛翔もしくは落下して来たパーティクルを吸着して捕捉することができるので、外部へのパーティクルの拡散をより確実に防ぐことができる。
【0046】
また、図9では、拡散防止カバー121の内面だけでなく、ピック本体115の側面115b及び退避状態でこの側面115bと対向する可動ピック117の折曲側板部117cの内面にも、粘着性シート131を設けている。上述のとおり、可動ピック117はピック本体115に対してスライド可能に設けられているため、可動ピック117を最大限進出させた状態では、ピック本体115の側面115b及び可動ピック117の折曲側板部117cの内面の大部分は、互いに対向せずに、外部に対して露出した状態になる。また、進出状態では、可動ピック117の下方には拡散防止カバー121が存在しない。そのため、仮に、スライド機構の摺動部位で発生したパーティクルが、可動ピック117の折曲側板部117cの内面に付着していると、それが落下もしくは飛散してパーティクル汚染を引き起こす可能性がある。また、可動ピック117を進出させた状態ではピック本体115の側面115bが露出するため、該側面115bに付着したパーティクルがあると周囲に飛散しやすくなる。図9に示すように、ピック本体115の側面115b及び可動ピック117の折曲側板部117cの内面に粘着性シート131を配備することによって、これらの表面に付着したパーティクルを吸着してしっかりと捕捉し、落下や飛散することを防止できる。なお、粘着性シート131は、配設対象となる壁面の全体を覆うように設けてもよいし、一部分にのみ設けてもよい。
【0047】
図10は、拡散防止カバー121の底壁部121aの内面に、吸着材層として吸液性シート133を設けている。吸液性シート133は、例えばスポンジなどの多孔質素材や繊維素材などの液体吸収能力・液体保持能力に優れたに材質より構成することができる。摺動ブロック123とリニアガイド119との摺動部位には、円滑なスライドを可能にするため潤滑油(グリース)などを注入することがある。その潤滑油がスライド動作に伴って微小な油滴となって周囲に飛散し、基板Sの汚染を引き起こすことがある。吸液性シート133は、拡散防止カバー121内へ落下してきた潤滑油の微小な油滴を吸収し捕捉する。また、吸液性シート133は、可動ピック117の折曲側板部117cの内壁面、あるいはピック本体115の側面115bを伝って流下してきた油を吸収し捕捉する。
【0048】
吸液性シート133は、液体を吸収し、保持する能力に優れるため、一旦捕捉した油を封じ込め、外部への拡散を防止する。その結果、油による基板Sの汚染を効果的に防止できる。図10では、拡散防止カバー121の底壁部121a以外の側壁部121bの内面や、ピック本体115の側面115b及び可動ピック117の折曲側板部117cの内面には、図9と同様にパーティクルを吸着する粘着性シート131を設けている。このように、吸着材層として性質の異なる粘着性シート131と吸液性シート133を組み合わせて配備することによって、パーティクル等の汚染原因物質による基板Sの汚染をさらに確実に予防できる。もちろん、拡散防止カバー121の側壁部121bの内面や、ピック本体115の側面115b及び可動ピック117の折曲側板部117cの内面にも、吸液性シート133を配設してもよい。なお、吸液性シート133は配設対象となる壁面の全体を覆うようにもうけてもよいし、一部分にのみ設けてもよい。
【0049】
上記粘着性シート131や吸液性シート133は、例えば両面粘着テープ等によって固定し、定期的に交換することによって、それ自体が汚染原因物質の発生源となることを防止できる。
【0050】
[第2の実施の形態]
次に、図11及び図12を参照しながら、本発明の第2の実施の形態にかかる基板搬送装置について説明する。まず、本実施の形態の拡散防止カバーを適用可能な搬送装置200の概略構成について、外観斜視図である図11を参照しながら説明する。図11では、搬送装置200の構成を明らかにするため、拡散防止カバーを装着していない状態を示している。図11に示すように、搬送装置200は、基板保持具205がスライドベース201から吊り下がっている構造となっている。搬送装置200は、主要な構成としてスライドベース201と、連結スライダ203を有してスライドベース201に対してスライド可能に設けられた基板保持具205と、スライドベース201を支持する複数のフレーム(図11では2つ)207を備えている。なお、図11は基板保持具205を退避させた状態を示している。この搬送装置200は、図1及び図2の真空処理システム100において、第1の実施の形態の搬送装置23の代わりに使用できるものである。なお、搬送装置200は、スライドベース201及び基板保持具205を多段例えば上下2段に有するものであってもよい。
【0051】
スライドベース201は長尺な板状をなし、その長手方向に沿って両端にスライド部201aを有している。なお、各スライド部201aにはガイド(図11では図示省略、図12を参照)が形成されている。スライドベース201は、上方を横断するように配設された2つのフレーム207に固定され、これらによって支持されている。搬送装置200は、図示しない駆動機構によって、2つのフレーム207と一体になって昇降及び旋回できるように構成されている。
【0052】
基板保持具205は、上記一対の連結スライダ203,203(図11では片側のみ図示)と、これらの連結スライダ203に固定されてスライドベース201に対してスライド可能に設けられたピックベース209と、このピックベース209に設けられた複数(例えば3本)のピック本体211と、各ピック本体211上を図示しない副駆動機構によってスライド可能に設けられた可動ピック213と、を有している。連結スライダ203は、ピックベース209に固定されているとともに、スライドベース201のスライド部201aと係合することにより、基板保持具205全体を吊り下げている。そして、連結スライダ203は、スライド部201aと係合しながら、図示しない主駆動機構によってピックベース209(つまり、基板保持具205)をスライドさせる。
【0053】
ピック本体211と可動ピック213は、支持部材としての支持ピック215を構成している。各可動ピック213は、それぞれのピック本体211を基準にして前方(図11の矢印Fの方向)へ延伸した進出状態と該進出状態から後方(図11の矢印Bの方向)へ退避した退避状態との間でスライド動作が可能に設けられている。また、可動ピック213は、図示しない連結部により同期して前後へ進退動作を行うように構成されている。
【0054】
ピックベース209は、櫛歯状に設けられた複数のピック本体211を確実に固定し、スライドベース201と可動式に連結できるものであればその構成は問わない。また、ピックベース209とピック本体211との連結構造も任意である。
【0055】
基板Sは可動ピック213上に支持されて搬送動作が行われる。上記図示しない主駆動機構と副駆動機構によって、スライドベース201に対してピックベース209(つまり、基板保持具205全体)を第1のストロークで前方(図11の矢印Fの方向)へ進出させるとともに、ピック本体211上で可動ピック213を第2のストロークで前方へ進出できるように構成されている。従って、可動ピック213上の基板Sは、進出時には、前方に、第1のストロークと第2のストロークの合計量で移動し、例えばプロセスチャンバ1a、1b、1cのいずれかとの間で基板Sの受け渡しが行われる。基板保持具205及び可動ピック213を退避させる場合、基板Sは進出時とは逆方向(図11の矢印Bの方向)に、第1のストロークと第2のストロークの合計量で移動する。
【0056】
図12は、拡散防止部材としての拡散防止カバー221を装着した状態の搬送装置200におけるスライドベース201及び支持ピック215の長手方向に直交する方向の断面を、図11の矢印Bの方向から見た拡大図である。拡散防止カバー221はスライドベース201に装着されている。つまり、本実施の形態では、スライドベース201が「第1の部材」であり、連結スライダ203を含む基板保持具205が「第2の部材」である。拡散防止カバー221は、上壁部221aと、この上壁部221aから略垂直に垂下する側壁部221bとを有する。上壁部221aと側壁部221bとは断面L字形をなしている。拡散防止カバー221の材質は、第1の実施の形態と同様である。拡散防止カバー221は、例えば螺子や接着剤等の固定手段(図示せず)により、スライドベース201に固定されている。なお、拡散防止カバー221の固定方法は特に限定されることはなく、例えば、着脱自在に設けてもよいし、溶接などによりスライドベース201と一体に設けてもよい。
【0057】
拡散防止カバー221の上壁部221aは、スライドベース201の長手方向と直交する方向に略水平に張り出している。図12に示すように、ピックベース209に固定された一対の連結スライダ203,203は、それぞれがスライドベース201の左右のスライド部201aに凸設されたガイド201bと係合している。そして連結スライダ203は、ガイド201bに沿ってスライド移動することによって基板保持具205全体を水平にスライドさせる。拡散防止カバー221は、連結スライダ203とガイド201bとの摺動部位(スライド部位)で発生するパーティクルが、外部の搬送空間に拡散しないように作用する。すなわち、拡散防止カバー221の上壁部221a及び側壁部221bは、連結スライダ203の外側の上面203a及び側面203bとそれぞれ略平行に、かつ、連結スライダ203の少なくとも上部を覆うように近接して設けられている。拡散防止カバー221の上壁部221aと連結スライダ203の上面203a、及び拡散防止カバー221の側壁部221bと連結スライダ203の側面203bとの間隔は、ともに狭く形成されており、パーティクルが外部の基板搬送空間へ拡散できないような隘路を形成している。
【0058】
なお、拡散防止カバー221は、連結スライダ203との間で隘路を形成できる形状であればよく、例えば連結スライダの形状が湾曲している場合には、拡散防止カバーも断面が円弧状をなす湾曲した形状とすることができる。
【0059】
本実施の形態では、さらにスライドベース201の左右に形成されたスライド部201aを遮蔽するように、補助カバー223が配設されている。補助カバー223は、連結スライダ203の内側の側壁面203cと平行に、かつ近接して設けられている。補助カバー223は、連結スライダ203の移動によってガイド201bとの間で発生したパーティクルを受け止め、スライドベース201の下方の基板S上に落下することを防止する。
【0060】
また、拡散防止カバー221及び補助カバー223は、図示は省略するが第1の実施の形態と同様に、スライドベース201のガイド201bの形成範囲をカバーできるような長さで設けられている。また、第1の実施の形態と同様に、拡散防止カバー221は、その内壁面に、粘着性シートや吸液性シートにより構成される吸着材層を設けてもよい。
【0061】
また、搬送装置200の各支持ピック215のピック本体211には、第1の実施の形態と同様の構成の拡散防止カバー121が設けられている。この拡散防止カバー121の構成と作用は第1の実施の形態で説明したとおりである。なお、本実施の形態では、支持ピック215の拡散防止カバー121の装着は任意であり、設けなくてもよい。
【0062】
本実施の形態における他の構成及び作用は、第1の実施の形態と同様である。
【0063】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。当業者は本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を成し得、それらも本発明の範囲内に含まれる。例えば、第2の実施の形態において、スライドベース201のスライド部201aに拡散防止カバー221を設けたように、第1の実施の形態のスライドベース111のスライド部にも拡散防止カバーを設けても良い。また、上記実施の形態では、真空状態で基板Sの搬送を行う搬送装置23を例に挙げて説明したが、拡散防止カバー121,221は、大気圧状態で基板の搬送を行う搬送装置15にも適用可能である。
【0064】
また、拡散防止カバー121,221を備えた本発明の基板搬送装置は、FPD製造用のガラス基板を搬送対象とする搬送装置に限らず、例えば太陽電池用の基板など各種用途の基板を搬送対象とする搬送装置にも適用できる。
【0065】
また、本発明の基板搬送装置の構成は、上下2段に配備されたスライド方式に限らず、1段構成でも3段構成でもよい。また、上下2段に配備された第1の実施の形態のスライド式の搬送装置23において、上段の搬送装置23aのみについて拡散防止カバー121を設けることもできる。
【符号の説明】
【0066】
1a,1b,1c…プロセスチャンバ、3…搬送チャンバ、5…ロードロックチャンバ、100…真空処理システム、101…基板保持具、111…スライドベース、113…ピックベース、115…ピック本体、115a…上面、115b…側面、117…可動ピック、117a…支持面、117b…支持部、117c…折曲側板部、117d…下面、118…支持ピック、119…リニアガイド、121…拡散防止カバー、121a…底壁部、121b…側壁部、121c…固定部、123…摺動ブロック、S…基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持して搬送する基板搬送装置であって、
第1の部材と、
該第1の部材に対してスライド可能に設けられて基板を支持する第2の部材と、
前記第2の部材をスライドさせるスライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材と、
を備えている基板搬送装置。
【請求項2】
複数の支持部材を有する基板保持具によって基板を支持して搬送する基板搬送装置であって、
前記支持部材は、本体と、
該本体に対してスライド可能に設けられて基板を支持する可動部材と、
前記可動部材をスライドさせるスライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材と、
を備えている基板搬送装置。
【請求項3】
拡散防止部材は、前記本体において、前記可動部材のスライド方向に直交する方向に張り出して設けられている請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記拡散防止部材は、前記可動部材の側面の一部分または全部を覆うように設けられている請求項3に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記拡散防止部材は、底壁部と、該底壁部から立設され、前記可動部材の側面の一部分または全部を覆う側壁部と、を備えている請求項4に記載の基板搬送装置。
【請求項6】
前記可動部材は、基板を支持する支持面を有する支持部と、該支持部から両側下方へ向けて垂れ下がる一対の折曲側板部とを備え、
前記拡散防止部材は、前記折曲側板部の少なくとも下端を外側から覆うように近接して設けられている請求項5に記載の基板搬送装置。
【請求項7】
前記本体は、前記可動部材をスライド可能に案内するガイド部材を備えており、前記本体の長手方向に、該ガイド部材の長さ以上の長さで前記拡散防止部材が設けられている請求項6に記載の基板搬送装置。
【請求項8】
前記ガイド部材の端部を囲むように、一対の囲繞部材が前記本体上に設けられている請求項7に記載の基板搬送装置。
【請求項9】
複数の支持部材を有する基板保持具によって基板を支持して搬送する基板搬送装置であって、
前記基板保持具を水平方向にスライド可能に支持するスライドベースと、
前記基板保持具をスライドさせるスライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材と、
を備えている基板搬送装置。
【請求項10】
前記拡散防止部材は、前記スライドベースにおいて、前記基板保持具のスライド方向に直交する方向に張り出して設けられている請求項9に記載の基板搬送装置。
【請求項11】
前記基板保持具は、前記スライドベースとの間をスライド可能に連結する連結部材を有している請求項9又は10に記載の基板搬送装置。
【請求項12】
前記拡散防止部材は、前記連結部材の側面の一部分または全部を覆うように近接して設けられている請求項11に記載の基板搬送装置。
【請求項13】
前記スライドベースは、前記連結部材をスライド可能に案内するガイド部材を備えており、前記スライドベースの長手方向に、該ガイド部材の長さ以上の長さで前記拡散防止部材が設けられている請求項12に記載の基板搬送装置。
【請求項14】
前記拡散防止部材の内壁面に、吸着材層を備えている請求項1から13のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
【請求項15】
前記吸着材層は、粘着性部材により構成されている請求項14に記載の基板搬送装置。
【請求項16】
前記吸着材層は、吸液性部材により構成されている請求項14に記載の基板搬送装置。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の基板搬送装置を備えた基板処理システム。
【請求項1】
基板を支持して搬送する基板搬送装置であって、
第1の部材と、
該第1の部材に対してスライド可能に設けられて基板を支持する第2の部材と、
前記第2の部材をスライドさせるスライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材と、
を備えている基板搬送装置。
【請求項2】
複数の支持部材を有する基板保持具によって基板を支持して搬送する基板搬送装置であって、
前記支持部材は、本体と、
該本体に対してスライド可能に設けられて基板を支持する可動部材と、
前記可動部材をスライドさせるスライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材と、
を備えている基板搬送装置。
【請求項3】
拡散防止部材は、前記本体において、前記可動部材のスライド方向に直交する方向に張り出して設けられている請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記拡散防止部材は、前記可動部材の側面の一部分または全部を覆うように設けられている請求項3に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記拡散防止部材は、底壁部と、該底壁部から立設され、前記可動部材の側面の一部分または全部を覆う側壁部と、を備えている請求項4に記載の基板搬送装置。
【請求項6】
前記可動部材は、基板を支持する支持面を有する支持部と、該支持部から両側下方へ向けて垂れ下がる一対の折曲側板部とを備え、
前記拡散防止部材は、前記折曲側板部の少なくとも下端を外側から覆うように近接して設けられている請求項5に記載の基板搬送装置。
【請求項7】
前記本体は、前記可動部材をスライド可能に案内するガイド部材を備えており、前記本体の長手方向に、該ガイド部材の長さ以上の長さで前記拡散防止部材が設けられている請求項6に記載の基板搬送装置。
【請求項8】
前記ガイド部材の端部を囲むように、一対の囲繞部材が前記本体上に設けられている請求項7に記載の基板搬送装置。
【請求項9】
複数の支持部材を有する基板保持具によって基板を支持して搬送する基板搬送装置であって、
前記基板保持具を水平方向にスライド可能に支持するスライドベースと、
前記基板保持具をスライドさせるスライド部位と外部の基板搬送空間との間に隘路を形成する形状をなし、前記スライド部位で発生した汚染原因物質が前記基板搬送空間へ拡散することを防止する拡散防止部材と、
を備えている基板搬送装置。
【請求項10】
前記拡散防止部材は、前記スライドベースにおいて、前記基板保持具のスライド方向に直交する方向に張り出して設けられている請求項9に記載の基板搬送装置。
【請求項11】
前記基板保持具は、前記スライドベースとの間をスライド可能に連結する連結部材を有している請求項9又は10に記載の基板搬送装置。
【請求項12】
前記拡散防止部材は、前記連結部材の側面の一部分または全部を覆うように近接して設けられている請求項11に記載の基板搬送装置。
【請求項13】
前記スライドベースは、前記連結部材をスライド可能に案内するガイド部材を備えており、前記スライドベースの長手方向に、該ガイド部材の長さ以上の長さで前記拡散防止部材が設けられている請求項12に記載の基板搬送装置。
【請求項14】
前記拡散防止部材の内壁面に、吸着材層を備えている請求項1から13のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
【請求項15】
前記吸着材層は、粘着性部材により構成されている請求項14に記載の基板搬送装置。
【請求項16】
前記吸着材層は、吸液性部材により構成されている請求項14に記載の基板搬送装置。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の基板搬送装置を備えた基板処理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−119327(P2011−119327A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273161(P2009−273161)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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