説明

基板検査装置および検査条件設定方法

【課題】基板表面のパターンの情報が事前に得られなくても、基板に適した検査条件を選択することができる基板検査装置および検査条件設定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板1上のパターンの検査可能な全てのピッチについて回折光を撮影可能とする、照明部2または撮像部6の光軸と基板1の法線とのなす1以上の仰角を算出する仰角算出部304と、仰角算出部304により算出された全ての仰角に照明部2および撮像部6を固定した状態で回転ステージ100を回転させて、撮像部6により取得された基板1の画像に基づいて、該画像の輝度が所定の条件を満たす基板1の基準位置からの回転角度を探索し、その中から検査用の方位角を選択して設定する方位角設定部301とを有する基板検査装置50を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体ウエハやフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」という。)等の基板の表面を検査する基板検査装置および検査条件設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハやFPDで行われるフォトリソグラフィ工程では、基板にレジスト膜を塗布し、パターン状に露光してエッチングすることでパターンを形成している。当該工程において、基板に傷や異物の付着、レジスト塗布ムラ、露光不良などが発生した場合には、パターン不良となり、集積回路またはFPDとして正常に動作しなくなってしまう。そのため、基板表面の欠陥の有無についての検査が一般的に行われる。
【0003】
近年、基板サイズは大きくなる一方で、問題とする異物や傷のサイズはパターンの集積化に伴って小さくなっている。したがって、高分解能で高速な検査が行えるような検査装置が要求されている。当該要求に対応すべく、従来、高分解能化に有利な1次元撮像素子と一軸ステージを用いて2次元画像を取得する基板検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−286483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板からの反射光は、正反射光・回折光・散乱光に大別されるが、それぞれに特徴があるため、検出したい欠陥の種類に応じて観察に用いる光を選択する必要がある。一般に、欠陥の種類が、パターン形状の変化となる露光不良や、大きい範囲の膜厚変化であるレジスト塗布ムラなどの場合には、パターンからの正反射光や回折光を用いた検査が適している。また、異物や傷などの微小な凹凸の場合には、正反射光や回折光を排除し、基板からの散乱光を用いた検査が適している。
【0005】
ここで、回折光の出射方向はパターンの周期性に基づくため、検査条件、すなわち照明の入射角度や撮像角度や基板の向きは、事前にパターンの設計情報から求めるか、または、全ての出射方向を測定して求めることとなる。そして、回折光の出射方向を求めた後に、検査条件を適正に設定することで、回折光を用いた検査、または、回折光を除去して散乱光を用いた検査を行う。
【0006】
しかしながら、パターンの設計情報は事前に得られないことが多く、全方向を測定するには多大な時間がかかるという不都合があった。また、照明系を移動させて、または、基板を回転させて測定しても、測定可能なパターンのピッチや方向に制限があり、装置の性能を充分に活かした検査条件を適切に選択することができなかった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、基板表面のパターンの情報が事前に得られなくても、基板に適した検査条件を選択することができる基板検査装置および検査条件設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、表面に周期的なパターンを有する基板を載置するとともに、該基板を法線回りに回転させる回転ステージと、該回転ステージ上に載置された前記基板の表面に所定の波長域を有する照明光を照射する照明部と、該照明部により前記基板の表面に照射された照明光の基板における回折光を撮影する撮像部と、該撮像部による前記基板の撮影条件を設定する撮影条件設定部とを備え、該撮影条件設定部が、前記基板上のパターンの検査可能な全てのピッチについて前記回折光を撮影可能とする、前記照明部または前記撮像部の光軸と前記基板の法線とのなす1以上の仰角を算出する仰角算出部と、該仰角算出部により算出された全ての仰角に前記照明部および前記撮像部を固定した状態で前記回転ステージを回転させて、前記撮像部により取得された前記基板の画像に基づいて、該画像の輝度が所定の条件を満たす前記基板の基準位置からの回転角度を探索し、その中から検査用の方位角を選択して設定する方位角設定部とを有する基板検査装置を採用する。
【0009】
本発明によれば、回転ステージに所定のピッチのパターンを有する基板を載置して照明部から照明光を照射すると、基板において回折された結果発生した回折光が、照明光の波長と、パターンのピッチと、照明光の光軸と基板の法線とのなす仰角と、回折次数とに基づいて定まる複数方向に射出される。したがって、照明部および撮像部の仰角を固定しても照明光の波長域の広がりによって、基板上のパターンの全てのピッチについて、いずれかの次数の回折光を撮影することができる。
【0010】
そこで、仰角算出部により全てのピッチについて回折光を撮影可能な1以上の仰角を算出し、算出された全ての仰角に照明部および撮像部を固定して回転ステージを回転させて、方位角設定部により画像の輝度が所定の条件を満たす角度を探索して、その中から検査用の方位角を選択することにより、回折光を撮影可能な検査用の方位角を短時間で設定することができる。
これにより、基板表面のパターンの情報が事前に得られない場合や照明光の波長域が変動した場合にも、その基板の検査に適した方位角を撮影条件として設定し、短時間で検査を行うことができる。
【0011】
上記発明において、前記撮影条件設定部が、前記方位角設定部により設定された1以上の方位角について、前記照明部および/または前記撮像部の仰角を変化させて、前記撮像部により取得された前記基板の画像に基づいて、該画像の輝度が所定の条件を満たす仰角の中から検査用の仰角を選択して設定する仰角設定部を有することとしてもよい。
仰角設定部により、照明部および/または撮像部の仰角を変化させた画像の輝度が所定の条件を満たす角度を探索して、その中から検査用の仰角を選択することにより、基板の検査に適した仰角を撮影条件として設定し、短時間で検査を行うことができる。
【0012】
上記発明において、前記仰角算出部は、θdを1回目の撮影時の前記撮像部の仰角、θiを1回目の撮影時の前記照明部の仰角とした場合に、sinθd−sinθiが装置のとりうる最大値となるようにθdおよびθiを求めることとしてもよい。
このようにすることで、回折光を撮影可能なピッチの範囲を広げることができる。
【0013】
上記発明において、θdを前記撮像部の仰角、θiを前記照明部の仰角、mを回折次数、λを前記照明光の波長、λを前記照明光の最長波長、λを前記照明光の最短波長、pを前記パターンのピッチとした場合に、(1)式を用いて検査可能な全てのピッチを撮影するのに必要な撮影回数nを算出する撮像回数算出部を備えることとしてもよい。
1/(λ/λ−1)+1≧n>1/(λ/λ−1)・・・(1)
(1)式に示される回折の一般式を用いることで、回折光を撮影可能な基板のパターンのピッチpを算出するとともに、全てのピッチを撮影するのに必要な撮影回数nを撮像回数算出部により容易に算出することができる。
【0014】
上記発明において、前記仰角算出部は、θdを1回目の撮影時の前記撮像部の仰角、θdをn回目の撮影時の前記撮像部の仰角、θiを1回目の撮影時の前記照明部の仰角、θiをn回目の撮影時の前記照明部の仰角、λを前記照明光の最長波長、λを前記照明光の最短波長とした場合に、(2)式を用いて前記照明部または前記撮像部の仰角を算出することとしてもよい。
sinθd−sinθi=(λ/λn−1(sinθd−sinθi)・・・(2)
(2)式に示される回折の一般式を用いることで、全てのピッチについて回折光を撮影可能とするn回目の撮影時の前記撮像部の仰角θdまたは前記照明部の仰角θiを容易に算出することができる。
【0015】
本発明は、表面に周期的なパターンを有する基板の表面に所定の波長域を有する照明光を照射し、該照明光の前記基板における回折光を撮影する際の撮影条件を設定する検査条件設定方法であって、前記基板上のパターンの検査可能な全てのピッチについて前記回折光を撮影可能とする、照明光軸または撮像光軸と前記基板の法線とのなす1以上の仰角を算出する仰角算出工程と、該仰角算出工程により算出された全ての仰角に前記照明光軸および前記撮像光軸を固定した状態で前記基板をその法線回りに回転させて取得された前記基板の画像に基づいて、該画像の輝度が極大値となる前記基板の基準位置からの回転角度を探索し、その角度の中から検査用の方位角を選択して設定する方位角設定工程とを含む検査条件設定方法を採用する。
【0016】
本発明によれば、基板表面のパターンに関わらず、基板からの回折光を撮影可能な撮影条件を設定することができ、基板表面のパターンの情報が事前に得られない場合や照明光の波長域が変動した場合にも、その基板の検査に適した方位角を検査条件として設定し、短時間で検査を行うことができる。
なお、上記発明において、方位角を変化させた画像の輝度が所定の閾値以下となる基板の基準位置からの回転角度を探索し、その中から検査用の方位角を選択して設定することとしてもよい。
【0017】
上記発明において、前記方位角設定工程により設定された1以上の方位角について、前記仰角を変化させて取得された前記基板の画像に基づいて、該画像の輝度が極大値となる仰角の中から検査用の仰角を選択して設定する仰角設定工程を含むこととしてもよい。
仰角設定工程により仰角を変化させた画像の輝度の極大値を探索して、その中から検査用の仰角を選択することで、基板の検査に適した仰角を検査条件として設定し、短時間で検査を行うことができる。
なお、上記発明において、仰角を変化させた画像の輝度が所定の閾値以下となる仰角を探索し、その中から検査用の仰角を選択して設定することとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、周期性パターンの情報が事前に得られなくても、基板に適した検査条件を選択することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明の第1の実施形態に係る基板検査装置について、図面を参照して説明する。
基板検査装置50は、図1に示すように、基板1が載置され、基板1の法線回りに回転する回転ステージ100と、回転ステージ100を一方向に搬送する一軸ステージ7と、基板1の表面に照明光を照射する照明部2と、基板1からの回折光を撮影する撮像部6と、これらを制御する制御装置60を備えている。
【0020】
照明部2は、照明部2全体を基板1と照明部2の光軸の交点を回動軸として円弧状に回動させる不図示の回動部材に設置されている。照明部2は、その光軸と基板1の法線とのなす仰角(以下、「入射角度」という。)がθiとなる向きに配置され、回転ステージ100上に載置された基板1の表面に所定の波長域を有する照明光を照射するようになっている。
撮像部6は、基板1からの回折光を結像する結像レンズ4と、基板1の一次元画像を取得するラインセンサ5とを有している。撮像部6は、撮像部6全体を基板1と撮像部6の光軸の交点を回動軸として円弧状に回動させる不図示の回動部材に設置されている。撮像部6は、その光軸と基板1の法線とのなす仰角(以下、「撮像角度」という。)がθdとなる向きに配置され、照明部2により基板1の表面に照射された照明光の基板における回折光を撮影するようになっている。
【0021】
制御装置60は、図2に示すように、ラインセンサ5により取得された一次元画像を蓄積して二次元画像を生成する画像入力部11と、画像入力部11により生成された二次元画像に画像処理を施す画像処理部12と、回転ステージ100を回転駆動させる回転ステージ駆動部8と、照明部2の光軸の向きを動かして入射角度θiを変化させる入射角度駆動部9と、撮像部6の光軸の向きを動かして撮像角度θdを変化させる撮像角度駆動部10と、撮像部6による基板1の撮影条件を設定する撮影条件設定部30と、これらを制御する制御部13とを備えている。
【0022】
撮影条件設定部30は、条件設定モード時の撮像回数を求める撮像回数算出部305と、条件設定モード時における入射角度θiおよび撮像角度θdを算出する仰角算出部304と、検査用の方位角を設定する方位角設定部301と、検査用の仰角を設定する仰角設定部302と、設定された撮影条件を記憶する条件記憶部303とを備えている。
撮影条件設定部30は、制御部13からの命令に基づいて、回転ステージ100の回転角(基板の方位角)φ、照明部2の入射角度θi、および撮像部6の撮像角度θdについて適切な値を選択し、それを回転ステージ駆動部8、入射角度駆動部9、撮像角度駆動部10に選択した値を設定するようになっている。
つまり、撮影条件設定部30において、方位角設定部301、仰角設定部302、仰角算出部304、撮像回数算出部305は、条件設定モード時にのみ動作し、ここで決められた検査条件が条件記憶部303に記憶される。そして、通常の検査モード時においては、方位角設定部301、仰角設定部302、仰角算出部304、撮像回数算出部305は動作せずに、条件記憶部303に記憶された条件を読み出すだけでよい。
【0023】
撮像回数算出部305は、照明光の最短波長λおよび最長波長λとを用いて、条件設定モード時の撮影回数を算出するようになっている。なお、最短波長、最長波長は、ラインセンサ5で撮像した時に十分画像を構築でき、検査可能な光量となる範囲として決定してもよい。
仰角算出部304は、基板1上のパターンの検査可能な全てのピッチについて基板1からの回折光を撮影可能とする、入射角度θiおよび撮像角度θdを算出するようになっている。
【0024】
方位角設定部301は、仰角算出部304により算出された全ての入射角度θiおよび撮像角度θdに照明部2および撮像部6を固定した状態で回転ステージ100を回転させて、撮像部6により取得された基板1の画像に基づいて、該画像の輝度が所定の条件を満たす、すなわち、本実施形態では回折光により検査を行うので極大値となる基板1の基準位置からの回転角度を探索し、検査用の方位角として設定するようになっている。
【0025】
仰角設定部302は、方位角設定部301により設定された1以上の方位角について、照明部2および/または撮像部6の仰角を変化させて、撮像部6により取得された基板1の画像に基づいて、該画像の輝度が所定の条件を満たす、すなわち、本実施形態では回折光により検査を行うので極大値となる仰角を検査用の仰角として設定するようになっている。
【0026】
上記構成を有する基板検査装置50において、まず、通常の検査モード時の動作について以下に説明する。
まず、制御部13に対して、不図示の操作部や通信ラインなどから検査開始の命令が入力されると、制御部13は撮影条件設定部30に対して、基板に合わせた検査条件の設定を指示する。撮影条件設定部30は、基板1に適した検査条件、すなわち方位角φ、入射角度θi、撮像角度θdを条件記憶部303から読出し、回転ステージ駆動部8、入射角度駆動部9、撮像角度駆動部10にそれぞれ出力する。制御部13は、撮影条件設定部30からの条件設定の完了報告を受けると、一軸ステージ7に駆動開始を指示するとともに、ラインセンサ5に撮像開始を指示する。
以上により、適切な検査条件による基板1の画像が画像入力部11により得られ、これが画像処理部12により欠陥の抽出と分類が行われ、画像処理部12から不図示のモニタや通信ラインへ検査結果が報告される。
【0027】
次に適正な検査条件を設定する条件設定モードにおける手順について述べる。
まず、制御部13は、ラインセンサ5に対して撮像開始指示を出し、撮像条件設定部30に対して現在の基板1について条件設定要求の指示を出力し、条件設定モードであることを知らせる。撮像条件設定部30では、要求に従って方位角φ、仰角(入射角度θi、撮像角度θd)の順に次のステップに沿って検査条件を求める。この手順について、図6に示すフローチャートに従って以下に説明する。
【0028】
<第1ステップ>
まず、方位角設定部301が、回転ステージ駆動部8に対して一定回転速度で回転し続けるように指示する。一方で、撮像回数算出部305が以下の(1)式を用いて撮像回数nを算出する(S1)。
1/(λ/λ−1)+1≧n>1/(λ/λ−1)・・・(1)
初期条件となる入射角度θiと撮像角度θdは、(sinθd−sinθi)が基板検査装置50の取りうる最大値となるように設定しておく(S2)。このように、回折の式に基づいて、装置が検出可能な基板上のパターンの最も小さいピッチに対応させることで、回折光を撮像可能なピッチの範囲を広げることができる。このような条件にて画像入力部11により得られる画像は、1ラインごとに基板1の方位角φが変化した方位角変化画像となる(S3)。そこで、ラインでの平均輝度値を求めると、図3に示すように、方位角φに対する基板の輝度値変化を示す方位角輝度変化曲線が得られる。ここまでで、1回目の方位角変化画像が得られたことになる。
【0029】
<第2ステップ>
次に、撮像回数n≧2の場合、方位角設定部301では、入射角度をθiに、撮像角度をθdに変更して(S2)、2回目の方位角変化画像を取得する(S3)。ここで入射角度θiと撮像角度θdは、以下の(3)式に従った値とする。
sinθd−sinθi=(λ/λ)・(sinθd−sinθi)・・・(3)
以降、第2ステップを撮像回数がnになるまで繰り返すのだが、この時の入射角度θiと撮像角度θdは、以下の(2)式に従うように設定すると良い。
sinθd−sinθi=(λ/λn−1(sinθd−sinθi)・・・(2)
【0030】
上記の第1ステップと第2ステップの動作内容について、具体例を挙げて以下に説明する。
例えば、入射角度と撮像角度が基板1の法線に対して同じ側で同角度となる、すなわちθd=−θiとなる基板検査装置において、入射角度θi=70°、撮像角度θd=−70°、照明光の波長を400nmから700nmとする。この場合、図7に示すような範囲の基板1に形成されたパターンのピッチが、1回目の撮像時の方位角変化画像に捉えられる。ここで、p1は最短波長λ=400nmにおけるピッチを、p2は最長波長λ=700nmにおけるピッチを、mは回折光の次数を示す。ここで明らかなように、1回目の方位角変化画像には372nmから426nmの間にピッチを持つパターンからの回折光が検出されないことになる。
【0031】
次に、2回目の画像取得時に、(3)式によりθd=−θi=32.5°に設定され、このとき、図8に示すピッチ範囲が画像に捉えられる。つまり、2回目の撮像時において、1回目に撮像できなかったピッチ範囲を補間していることがわかる。
上記の例の場合には、2回の方位角変化画像の取得により、装置が捉えられる最小のピッチを含んだパターンに対して漏れなく回折光を捉えることができた。なお、一般的には、ステップ2およびステップ3を(1)式で求めたn回繰り返せば、漏れ無く回折光を捉えることができる。
【0032】
<第3ステップ>
ここまででn枚の方位角変化画像から、n個の方位角φに対する基板1の輝度値変化を示す方位角輝度変化曲線が得られている。そこで、回折光観察の場合には、曲線が極大値を取る複数の方位角を最適方位角として条件記憶部303に記憶する(S5)。図3の例では、極大値の数、すなわち9個の方位角が最適方位角として選択されることになる。このようにして方位角設定部301の動作は完了する。
【0033】
<第4ステップ>
次に、入射角度θiおよび撮像角度θdによる回折光への影響を調べるため、仰角設定部302が、入射角度θiまたは撮像角度θdを一定速度で変化させるように入射角度駆動部9または撮像角度駆動部10に駆動指示を行う。例えば、入射角度θiを固定し、撮像角度θdを0°から80°で移動させると、画像入力部11から得られる画像は1ラインごとに撮像角度θdが変化した仰角変化画像となる(S6)。そこで、ラインでの平均輝度値を求めると、図4に示すように、撮像角度θdに対する基板の輝度値変化を示す仰角輝度変化曲線が得られる。以上の動作を、第3ステップまでで得られた方位角全てについて行う(S7、S8)。
【0034】
このようにして得られる仰角輝度変化曲線から、例えば、極大値で閾値Bを超えた位置を最適仰角として選択し、条件記憶部303に記憶する。図4の例では、閾値Bを超えた数、すなわち3個の仰角が最適値として選択されることになる。これにより、仰角設定部302による動作は完了し、制御部13は画像取込の終了をラインセンサ5に命じ、検査条件の設定動作が完了する(S9)。
以上により、回折光観察のための最適方位角と最適仰角が得られる。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る基板検査装置50によれば、仰角算出部304により全てのピッチについて回折光を撮影可能な1以上の仰角を算出し、算出された全ての仰角に照明部2および撮像部6を固定して回転ステージ100を回転させて、方位角設定部301により画像の輝度の極大値を探索して、その中から検査用の方位角を選択することにより、回折光を撮影可能な検査用の方位角を短時間で設定することができる。
また、仰角設定部302により、照明部2および/または撮像部6の仰角を変化させた画像の輝度の極大値を探索して、その中から検査用の仰角を選択することにより、回折光を撮影可能な検査用の仰角を短時間で設定することができる。
これにより、基板表面のパターンの情報が事前に得られない場合や照明光の波長域が変動した場合にも、その基板の検査に適した方位角および仰角を撮影条件として設定し、短時間で検査を行うことができる。
【0036】
なお、上述した基板検査装置50において、最適方位角と最適仰角が得られなかった場合には、撮影条件設定部30が入射角度θi=撮像角度θdとなる角度を最適仰角と設定することにより、正反射光での観察を検査条件として設定することができる。
また、照明光の中心波長と波長幅を、例えば干渉フィルタ等の入れ替えにより変更できるようにしておけば、ポリクロを使った波長の最適化をより廉価な構成で実現することもできる。
また、仰角の選択方法として、欠陥箇所が予め分かっている場合には、欠陥箇所と正常箇所との輝度差が大きい角度を選択することとしてもよい。
【0037】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について以下に説明する。
本実施形態に係る基板検査装置が第1の実施形態と異なる点は、回折光または正反射光での観察ではなく、散乱光での観察を検査条件として設定する点である。以下、本実施形態に係る基板検査装置について、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0038】
方位角設定部301は、仰角算出部304により算出された全ての仰角に照明部2および撮像部6を固定した状態で回転ステージ100を回転させて、撮像部6により取得された基板1の画像に基づいて、該画像の輝度が所定の閾値以下となる基板1の基準位置からの回転角度を探索し、検査用の方位角として設定するようになっている。
仰角設定部302は、方位角設定部301により設定された1以上の方位角について、照明部2および/または撮像部6の仰角を変化させて、撮像部6により取得された基板1の画像に基づいて、該画像の輝度が所定の閾値以下となる仰角を検査用の仰角として設定するようになっている。
【0039】
上記構成を有する基板検査装置70において、散乱光での観察を検査条件として設定する際の詳細な手順について以下に説明する。
前述の第2ステップまでは第1の実施形態と同様であり、第2ステップにて得られた複数の方位角輝度変化曲線に対し、図3のような閾値Aを設定し、これを下回る方位角範囲を最適方位角とする。
次に、ここで求めた方位角で、前述の第4ステップと同様に、仰角輝度変化曲線を取得するが、この場合の入射角度θiはパターンからの回折光を極力減らすために、ほぼ水平に近い角度、例えば、θi>80°で固定しておき、撮像角度θdを0°から90°に変化させて仰角輝度変化曲線を得るようにする。
このようにして得られた仰角輝度変化曲線を図5に示す。最適仰角としては、明るさを確保するために、例えば閾値Cを下回る最大の角度を選択し、条件記憶部303に記憶する。
以上の動作により、散乱光での観察に対する最適方位角と最適仰角が設定される。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る基板検査装置70によれば、輝度が所定の閾値以下となる方位角および仰角が撮影条件の候補として選択され、これら候補の中から検査用の方位角および仰角が設定される。これにより、回折光を除去した検査条件とすることができ、散乱光による基板の検査を行うことができる。
【0041】
なお、本実施形態において、最適方位角として閾値Aを下回る方位角範囲を設定すると説明したが、この方位角範囲の中心付近の位置を方位角としてもよい。
また、仰角輝度変化曲線を求める際の照明光は、方位角輝度変化曲線を求める際の照明光と同一でなくてもよく、ある程度波長幅の狭い照明光を用いた方が回折光の除去のためには望ましい。
【0042】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、前述の各本実施形態において、複数の最適方位角と最適仰角は、さらに輝度や角度の大きさなどから優先順位付きで条件記憶部303に記憶され、優先順位の高い順に読み出されることとしてもよい。
また、以上の例において、入射光やラインセンサ5に入る光の偏光を変えることのできる偏光可変素子を照明部2および撮像部6に用意した場合、仰角や波長の選択を行う際に偏光による変化の著しい仰角や波長を選択してもよい。これにより、基板の欠陥検出感度を向上させることができる。
さらに、方位角変化画像は、全周360°について取得する必要はなく、180°以上であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の各実施形態に係る基板検査装置の概略構成図である。
【図2】図1の制御装置の機能ブロック図である。
【図3】方位角と輝度の関係を説明するグラフである。
【図4】仰角と輝度の関係を説明するグラフである。
【図5】仰角と輝度の関係を説明するグラフである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る検査条件設定方法のフローチャートである。
【図7】回折光を撮影可能な基板表面のパターンのピッチを説明する図表である。
【図8】回折光を撮影可能な基板表面のパターンのピッチを説明する図表である。
【符号の説明】
【0044】
1 基板
2 照明部
4 結像レンズ
5 ラインセンサ
6 撮像部
7 一軸ステージ
8 回転ステージ駆動部
9 入射角度駆動部
10 撮像角度駆動部
11 画像入力部
12 画像処理部
13 制御部
30 撮影条件設定部
50,70 基板検査装置
60 制御装置
100 回転ステージ
301 方位角設定部
302 仰角設定部
303 条件記憶部
304 仰角算出部
305 撮像回数算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に周期的なパターンを有する基板を載置するとともに、該基板を法線回りに回転させる回転ステージと、
該回転ステージ上に載置された前記基板の表面に所定の波長域を有する照明光を照射する照明部と、
該照明部により前記基板の表面に照射された照明光の基板における回折光を撮影する撮像部と、
該撮像部による前記基板の撮影条件を設定する撮影条件設定部とを備え、
該撮影条件設定部が、
前記基板上のパターンの検査可能な全てのピッチについて前記回折光を撮影可能とする、前記照明部または前記撮像部の光軸と前記基板の法線とのなす1以上の仰角を算出する仰角算出部と、
該仰角算出部により算出された全ての仰角に前記照明部および前記撮像部を固定した状態で前記回転ステージを回転させて、前記撮像部により取得された前記基板の画像に基づいて、該画像の輝度が所定の条件を満たす前記基板の基準位置からの回転角度を探索し、その中から検査用の方位角を選択して設定する方位角設定部とを有する基板検査装置。
【請求項2】
前記撮影条件設定部が、前記方位角設定部により設定された1以上の方位角について、前記照明部および/または前記撮像部の仰角を変化させて、前記撮像部により取得された前記基板の画像に基づいて、該画像の輝度が所定の条件を満たす仰角の中から検査用の仰角を選択して設定する仰角設定部を有する請求項1に記載の基板検査装置。
【請求項3】
前記仰角算出部は、θdを1回目の撮影時の前記撮像部の仰角、θiを1回目の撮影時の前記照明部の仰角とした場合に、sinθd−sinθiが装置のとりうる最大値となるようにθdおよびθiを求める請求項1または請求項2に記載の基板検査装置。
【請求項4】
θdを前記撮像部の仰角、θiを前記照明部の仰角、mを回折次数、λを前記照明光の波長、λを前記照明光の最長波長、λを前記照明光の最短波長、pを前記パターンのピッチとした場合に、(1)式を用いて検査可能な全てのピッチを撮影するのに必要な撮影回数nを算出する撮像回数算出部を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板検査装置。
1/(λ/λ−1)+1≧n>1/(λ/λ−1)・・・(1)
【請求項5】
前記仰角算出部は、θdを1回目の撮影時の前記撮像部の仰角、θdをn回目の撮影時の前記撮像部の仰角、θiを1回目の撮影時の前記照明部の仰角、θiをn回目の撮影時の前記照明部の仰角、λを前記照明光の最長波長、λを前記照明光の最短波長とした場合に、(2)式を用いて前記照明部または前記撮像部の仰角を算出する請求項4に記載の基板検査装置。
sinθd−sinθi=(λ/λn−1(sinθd−sinθi)・・・(2)
【請求項6】
表面に周期的なパターンを有する基板の表面に所定の波長域を有する照明光を照射し、該照明光の前記基板における回折光を撮影する際の撮影条件を設定する検査条件設定方法であって、
前記基板上のパターンの検査可能な全てのピッチについて前記回折光を撮影可能とする、照明光軸または撮像光軸と前記基板の法線とのなす1以上の仰角を算出する仰角算出工程と、
該仰角算出工程により算出された全ての仰角に前記照明光軸および前記撮像光軸を固定した状態で前記基板をその法線回りに回転させて取得された前記基板の画像に基づいて、該画像の輝度が極大値となる前記基板の基準位置からの回転角度を探索し、その角度の中から検査用の方位角を選択して設定する方位角設定工程とを含む検査条件設定方法。
【請求項7】
前記方位角設定工程により設定された1以上の方位角について、前記仰角を変化させて取得された前記基板の画像に基づいて、該画像の輝度が極大値となる仰角の中から検査用の仰角を選択して設定する仰角設定工程を含む請求項6に記載の検査条件設定方法。
【請求項8】
表面に周期的なパターンを有する基板の表面に所定の波長域を有する照明光を照射し、該照明光の前記基板における回折光を撮影する際の撮影条件を設定する検査条件設定方法であって、
前記基板上のパターンの検査可能な全てのピッチについて前記回折光を撮影可能とする、照明光軸または撮像光軸と前記基板の法線とのなす1以上の仰角を算出する仰角算出工程と、
該仰角算出工程により算出された全ての仰角に前記照明光軸および前記撮像光軸を固定した状態で前記基板をその法線回りに回転させて取得された前記基板の画像に基づいて、該画像の輝度が所定の閾値以下となる前記基板の基準位置からの回転角度を探索し、その角度の中から検査用の方位角を選択して設定する方位角設定工程とを含む検査条件設定方法。
【請求項9】
前記方位角設定工程により設定された1以上の方位角について、前記仰角を変化させて取得された前記基板の画像に基づいて、該画像の輝度が所定の閾値以下となる仰角の中から検査用の仰角を選択して設定する仰角設定工程を含む請求項8に記載の検査条件設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−281922(P2009−281922A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135522(P2008−135522)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】