説明

基板洗浄装置および基板洗浄方法、ならびに記憶媒体

【課題】基板の端面を含む周縁部に付着した付着物をスポンジ状ブラシにより効果的に除去することができる基板洗浄装置を提供すること。
【解決手段】基板洗浄装置1は、基板Wを回転可能に保持するスピンチャック3と、スピンチャック3に保持されている基板Wを回転するモーター4と、スピンチャック3に保持されている基板Wに洗浄液を供給する洗浄液供給機構10と、洗浄時に基板Wの端面を含む周縁部に接触する、スポンジ状樹脂からなるブラシ21およびブラシ21をウエハWに接離させる接離機構27を有する洗浄機構20と、ブラシ21を保持するブラシ保持機構23とを具備する。ブラシ保持機構23は、ブラシ21に接触してブラシ21の形状を所定の形状に変化させるブラシ形状変化部材23bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の端面および周縁部をブラシ洗浄する基板洗浄装置および基板洗浄方法、ならびに記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスやフラットパネルディスプレー(FPD)の製造プロセスにおいては、被処理基板である半導体ウエハやガラス基板に付着したパーティクルやコンタミネーション等を除去する洗浄処理が行われる。このような洗浄処理を行う装置としては、基板をスピンチャックに保持し、基板を回転させた状態でウエハの表面に洗浄液を供給してウエハの表面を洗浄する枚葉式の洗浄装置が知られている。
【0003】
このような洗浄装置の洗浄処理においては、洗浄液として用いられた酸やアルカリの薬液が洗浄処理の過程で基板周縁部に残存し、そのまま乾燥して付着物となることや、洗浄によって除去された物質が基板の周縁部に再付着することが生じる。かつては、基板の周縁部は製品として使用されないため、このような基板周縁部の付着物に対して特別な対策がとられていなかったが、デバイス等の微細化が進み、このような基板周縁部の付着物が基板搬送機構の基板支持アーム等に付着することによる悪影響が顕在化するようになってきた。このような悪影響を防止する技術として、基板の周縁部にスポンジ状のブラシを当接させて周縁部の付着物を除去する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2)
【0004】
しかしながら、基板周縁部、特に基板端面には、強固に付着している付着物も存在し、単にスポンジ状ブラシを当接させただけでは除去することができない場合が生じる。
【特許文献1】実開平5−79939号公報
【特許文献2】特開2007−165794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、基板の端面を含む周縁部に付着した付着物をスポンジ状ブラシにより効果的に除去することができる基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供することを目的とする。
また、そのような方法を実施するためのプログラムを記憶した記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点では、基板の端面を含む周縁部をブラシ洗浄する基板洗浄装置であって、基板を回転可能に保持する基板保持機構と、前記基板保持機構に保持されている基板を回転する基板回転機構と、前記基板保持機構に保持されている基板に洗浄液を供給する洗浄液供給機構と、洗浄時に基板の端面を含む周縁部に接触する、スポンジ状樹脂からなるブラシと、前記ブラシを基板に対して接離させる接離機構とを有する洗浄機構と、前記ブラシを保持するブラシ保持機構とを具備し、前記ブラシ保持機構は、前記ブラシに接触して前記ブラシの形状を所定の形状に変化させるブラシ形状変化部材を有することを特徴とする基板洗浄装置を提供する。
【0007】
上記第1の観点において、前記ブラシは、円筒状の小径部と前記小径部に連続する円筒状の大径部とを有し、前記小径部の周面で基板の端面を洗浄し、前記大径部の前記小径部との接続面により基板の裏面または表面の周縁部を洗浄するものとすることができる。この場合に、前記ブラシ形状変化部材は、所望の洗浄が実現されるように前記接続面を所定の状態に変化させるようにすることができる。
【0008】
前記ブラシ形状変化部材の前記ブラシに接触する接触面はすり鉢状をなすようにすることができるし、円錐状をなすようにすることもできる。また、前記ブラシ形状変化部材の前記ブラシに接触する接触面は前記ブラシの回転軸に対して非対称の形状をなすようにすることもできる。
【0009】
さらに、前記ブラシ保持機構に保持された前記ブラシに圧縮力を加えるブラシ圧縮機構をさらに有してもよい。その場合に、前記ブラシ保持機構は、前記ブラシ形状変化部材で形状が変化された前記ブラシを上方から押さえる押さえ部材を有し、前記ブラシ圧縮機構は、前記ブラシ形状変化部材と前記押さえ部材とでブラシを狭持した状態で前記ブラシ形状変化部材または前記押さえ部材の少なくとも一方を移動させるアクチュエータとを有する構成とすることができる。
【0010】
さらにまた、前記洗浄機構は、前記ブラシを回転させるブラシ回転機構を有し、基板を洗浄する際に、前記ブラシ回転機構により前記ブラシを回転させながら基板の端面を含む周縁部を洗浄するようにすることができる。
【0011】
本発明の第2の観点では、基板に洗浄液を供給し、スポンジ状樹脂からなるブラシを、回転されている基板の端面を含む周縁部に接触させて洗浄する基板洗浄方法であって、ブラシ形状変化部材を前記ブラシに接触させることにより、前記ブラシの形状を所定の形状に変化させ、形状が変化した前記ブラシを基板の端面および周縁部に接触させて基板を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法を提供する。
【0012】
上記第2の観点において、前記ブラシを回転させながら、回転されている基板の端面を含む周縁部に接触させて洗浄することが好ましい。この場合に、前記ブラシは、円筒状の小径部と前記小径部に連続する円筒状の大径部とを有し、前記小径部の周面で基板の端面を洗浄し、前記大径部の前記小径部との接続面により基板の裏面または表面の周縁部を洗浄するようにすることができる。そして、前記ブラシ形状変化部材は、所望の洗浄が実現されるように前記接続面を所定の状態に変化させることができる。
【0013】
前記ブラシを回転させながら、前記小径部の周面で基板の端面を洗浄し、前記大径部の前記小径部との接続面により基板の裏面または表面の周縁部を洗浄する場合において、前記ブラシ形状変化部材の前記ブラシに接触する接触面はすり鉢状をなすようにすることができるし、円錐状をなすようにすることもできる。また、前記ブラシ形状変化部材の前記ブラシに接触する接触面は前記ブラシ形状変化部材の前記ブラシを支持する支持面が前記ブラシの回転軸に対して非対称の形状をなすようにすることもできる。
【0014】
さらに、前記ブラシを圧縮して硬化された状態として基板を洗浄するようにすることができる。
【0015】
本発明の第3の観点では、コンピュータ上で動作し、基板洗浄装置を制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記基板洗浄方法が行われるようにコンピュータに処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板の端面を含む周縁部にブラシを接触させて洗浄する際に、スポンジ状のブラシを用い、ブラシ保持機構を、ブラシに接触してブラシの形状を所定の形状に変化させるブラシ形状変化部材を有する構成としたので、被洗浄基板に付着した付着物の付着状態等に応じてブラシの形状を適切に変化させて、適切で効果的な洗浄を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。図1は本発明の一実施形態に係るウエハ洗浄装置を示す概略構成図、図2はその内部の平面図である。
【0018】
このウエハ洗浄装置1はチャンバ2を有し、このチャンバ2の中には、被洗浄基板である半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)Wを水平状態で真空吸着により吸着保持するためのスピンチャック3が設けられている。このスピンチャック3は、軸3aを介してチャンバ2の下方に設けられたモーター4により回転可能となっている。また、チャンバ2内には、スピンチャック3に保持されたウエハWを覆うようにカップ5が設けられている。カップ5の底部には、排気および排液のための排気・排液管6が、チャンバ2の下方へ延びるように設けられている。チャンバ2の側壁には、ウエハWを搬入出するための搬入出口7が設けられている。なお、軸3aとカップ5の底部およびチャンバ2の底部との間には流体シール8が設けられている。
【0019】
また、このウエハ洗浄装置1は、さらに、洗浄液を供給する洗浄液供給機構10と、ウエハWの端面を含む周縁部をブラシ洗浄する洗浄機構20とを有している。
【0020】
洗浄液供給機構10は、カップ5の上方に設けられた表面側洗浄液ノズル11aとスピンチャック3に保持されたウエハWの裏面側に設けられた裏面側洗浄液ノズル11bとを有し、これら表面側洗浄液ノズル11aおよび裏面側洗浄液ノズル11bには、それぞれ表面側洗浄液供給配管13aおよび裏面側洗浄液供給配管13bが接続されている。これら表面側洗浄液供給配管13aおよび裏面側洗浄液供給配管13bの他端は共通の洗浄液供給源12に接続されている。そして、洗浄液供給源12から表面側洗浄液供給配管13aを介して表面側洗浄液ノズル11aからウエハWの表面中心付近に洗浄液が供給され、裏面側洗浄液供給配管13bを介して裏面側洗浄液ノズル11bからウエハWの裏面に洗浄液が供給される。表面側洗浄液供給配管13aおよび裏面側洗浄液供給配管13bには、それぞれバルブ14a,14bが介在されている。洗浄液としては、純水や薬液等を用いることができる。
【0021】
洗浄機構20は、ウエハWの端面を含む周縁部を洗浄するためのスポンジ状樹脂からなるブラシ21と、ブラシ21を回転可能に支持する回転支持部材22と、ブラシ21を保持するブラシ保持機構23と、ブラシ21を保持する保持力またはブラシ21を圧縮する圧縮力を与えるためのシリンダ24と、ブラシ21を回動させるための回動アーム25と、回動アーム25の回動軸となる回動シャフトを内蔵するシャフト部26と、回動シャフトを回転させて回動アーム25を回動させる回動機構および回動アーム25を昇降させる昇降機構を内蔵する回動・昇降部27とを有している。ブラシ保持機構23は、ブラシ21を上方から押さえる押さえ部材23aと、ブラシ21の下面に接触してブラシ21の形状を所定の形状に変化させるブラシ形状変化部材23bとを有している。
【0022】
図3は、洗浄機構をさらに詳細に示す断面図である。回転支持部材22は、鉛直方向に延びる円筒状をなし、その内部にシリンダ24のピストン24aが鉛直方向に貫通して延びている。このピストン24aにはブラシ21の中央に鉛直方向に延びるブラシ支持軸21aが接続されており、ブラシ支持軸21aの下端はブラシ形状変化部材23bの中央に固定されている。また、押さえ部材23aは回転支持部材22の下端面に固定され、ブラシ支持軸21aと押さえ部材23aの間はフリーとなっている。したがって、シリンダ24のピストン24aを退入させることにより、ブラシ形状変化部材23bがブラシ支持軸21aとともに上昇し、ブラシ21は押さえ部材23aとブラシ形状変化部材23bに挟まれた状態で保持される。また、この状態からさらにシリンダ24のピストン24aを退入させることにより、ブラシ21が圧縮される。すなわちシリンダ24がブラシ圧縮機構として機能する。なお、押さえ部材23aおよびブラシ形状変化部材23bの両方を移動させてブラシ21を保持または圧縮してもよい。また、シリンダ24の代わりに他のアクチュエータを用いてもよい。
【0023】
回動アーム25は水平に延びる角筒状をなし、その先端部分に回転支持部材22が回転可能に設けられている。すなわち、回転支持部材22は、回動アーム25に取り付けられた一対のベアリング31a,31bにより回転可能に支持されている。回転支持部材22の中央部にはプーリー32が外嵌されており、このプーリー32にベルト33が巻き掛けられている。このベルト33は、回動アーム25の内部空間を水平に延びている。また、回動アーム25の内部には、その底板に固定されるようにブラシ回転用モーター34が設けられており、ブラシ回転用モーター34の回転軸34aにはプーリー35が取り付けられていて、上記ベルト33はプーリー35に巻き掛けられている。したがって、モーター34を駆動させることによりベルト33を介して回転支持部材22が回転され、これにともなってブラシ21が回転される。
【0024】
回動アーム25の基端部分には、鉛直に延びる回動シャフト38が、回動アーム25内の上下に設けられた一対の固定部材39により固定されている。回動シャフト38はシャフト部26を通って回動・昇降部27まで延びている。
【0025】
回動・昇降部27は、シャフト部26の下方に連続する筐体41と、その内部に設けられた回動機構42および昇降機構45とを有している。回動機構42は、回動用モーター43を有しており、その回転軸が回動シャフト38の下端に接続されており、回動用モーター43を回転駆動することにより、回動シャフト38に固定された回動アーム25が回動するようになっている。また、昇降機構45は、回動シャフト38をベアリング47を介して回転可能に支持する支持部材46と、筐体41の底部から鉛直上方に延び、支持部材46が螺合するボールネジ48と、筐体41の底板に固定され、ボールネジ48を回転させる昇降用モーター49と、筐体41内に鉛直に設けられ、支持部材46をガイドするガイド部材50とを有している。すなわち、昇降機構45はボールネジ機構によって回動シャフト38を昇降し、これにともなって回動アーム25を昇降するようになっている。
【0026】
図4は、ブラシ21を拡大して示す断面図である。ブラシ21は、円筒状をなす小径部21bと、小径部21bの下方に連続する円筒状をなす大径部21cとを有している。そして、小径部21bの周面がウエハWの端面洗浄部として機能し、大径部21cの上面すなわち小径部21bの接続面がウエハWの裏面周縁洗浄部として機能する。
【0027】
上述したように、ブラシ21は、その下面がブラシ形状変化部材23bに接触しており、ブラシ形状変化部材23bにより、ブラシ21が所望の洗浄を行えるようにその形状が変化される。すなわち、ブラシ形状変化部材23bは、例えば図4(a)に示すようにすり鉢状を有しており、この形状のブラシ形状変化部材23bによりブラシ21を支持した状態で、押さえ部材23aで押さえてブラシ21を保持した状態にすると、ブラシ21の形状が変化し、スポンジ状のブラシ21の外周部が内周部に比べてより圧縮されることとなり、外周部が内周部よりも硬くなることから、図中Aで示す部分の洗浄力が高くなる。したがって、部分Aの洗浄力を高くしたい場合には、このようなすり鉢状のブラシ形状変化部材23bを用いることにより効果的な洗浄を行うことができる。また、図4(b)に示すように、シリンダ24によりピストン24aを移動させてブラシ21に保持力以上の圧縮力を加えて行くと。ブラシ21が全体的に硬化し、より洗浄力が上昇する。
【0028】
また、図5に示すように、ブラシ形状変化部材23bを円錐状にすると、この形状のブラシ形状変化部材23bをブラシ21の下面に接触させた状態で、押さえ部材23aで押さえてブラシ21を保持した状態にすることにより、ブラシ21の形状が変化し、スポンジ状のブラシ21の内周部が外周部に比べてより圧縮されることとなり、内周部が外周部よりも硬くなることから、図中Bで示す部分の洗浄力が高くなる。したがって、部分Bの洗浄力を高くしたい場合には、このような円錐状のブラシ形状変化部材23bを用いることによりウエハWに対して効果的な洗浄を行うことが可能となる。
【0029】
また、図6、図7に示すように、回転軸に対して非対称形状のブラシ形状変化部材23bを用いれば、ブラシ21を回転させることにより洗浄性の異なるブラシ部位がウエハWに連続的に接触することとなり、ウエハWに対して効率的な洗浄を行うことが可能となる。具体的には、図6では一方側が平坦で、他方側が外側に向けて低くなる形状を有しており、部分Cの圧縮度合いが低くなり、その部分が交互にウエハWに接触することとなる。図7では斜めに切断した形状を有しており、部分Dから部分Eに向けて圧縮度合いが直線的に変化するのでウエハWの洗浄度合いがリニアに変化する。
【0030】
なお、図4〜7において、実際には、ブラシ21の形状を変化させる際にブラシ形状変化部材23bとブラシ支持軸21aが干渉しないように、これらの配置が設定される。
【0031】
ブラシ21は、上述したようにスポンジ状の樹脂からなり、ポリビニルアルコール(PVA)を好適に用いることができる。ブラシ21に適用可能な他の樹脂としては、ポリエチレン(PE)を挙げることができる。また、ブラシ支持軸21a、押さえ部材23aおよびブラシ形状変化部材23bは、ある程度の剛性が必要であるため、金属や硬質樹脂を用いることができる。ただし、金属はウエハWに対するコンタミネーションとなるおそれがあるから、硬質樹脂、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)やポリエチレンテレフタレート(PET)等が好ましい。
【0032】
制御部30は、図8のブロック図に示すように、コントローラ61と、ユーザーインターフェース62と、記憶部63とを有している。コントローラ61は、基板洗浄装置1の各構成部、例えばモーター4、シリンダ24、ブラシ回転用モーター34、回動用モーター43、昇降用モーター49等を制御する。また、ユーザーインターフェース62はコントローラ61に接続され、オペレータがウエハ洗浄装置1を管理するためにコマンド等の入力操作を行うキーボードや、ウエハ洗浄装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなる。また、記憶部63もコントローラ61に接続され、その中にウエハ洗浄装置1の各構成部の制御対象を制御するための制御プログラムや、ウエハ洗浄装置1に所定の処理を行わせるためのプログラムすなわち処理レシピが格納されている。処理レシピは記憶部63の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクのような固定的なものであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、コントローラ61は、必要に応じて、ユーザーインターフェース62からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部63から呼び出して実行させることで、コントローラ61の制御下で、所定の処理が行われる。
【0033】
次に、このようなウエハ洗浄装置1によりウエハWの洗浄処理を行う処理動作について説明する。
【0034】
まず、被洗浄基板の付着物の付着状態等に応じてブラシ21が所望の洗浄が行えるように、ブラシ形状変化部材23bの形状を選択し、ブラシ形状変化部材23bと押さえ部材23aとの間にブラシ21を狭持した状態でブラシ21を保持する。例えば、上述の図4〜7のいずれかの形状のブラシ形状変化部材23bを用いる。
【0035】
この状態で、モーター4を駆動させてスピンチャック3とともにウエハWを所定の回転数で回転させ、洗浄液ノズル11から洗浄液を供給しつつ、ブラシ回転用モーター34により、回転支持部材22とともにブラシ21を回転させる。そして、ブラシ21を回動アーム25をスピンチャック3上のウエハWに向けて回動させてブラシ21の小径部21bの外周をウエハWの端面に押しつけるとともに、昇降機構45により回動アーム25の高さ調節をしてブラシ21の大径部21cの上面をウエハWの裏面周縁部に押しつけ、ブラシ洗浄を開始する。
【0036】
例えば、ウエハWの裏面周縁部の中心側に入った部分により付着物が付着している場合には、図4に示すようなブラシ形状変化部材23bにより、ブラシ21の外周部を圧縮してブラシ21の形状を変化させ、ブラシ21の部分Aを硬化させてその部分の洗浄力を強化させることにより、効果的な洗浄を行うことができる。
【0037】
また、ウエハWの端面近傍により付着物が付着している場合には、図5に示すようなブラシ形状変化部材23bにより、ブラシ21の中央部を圧縮してブラシ21の形状を変化させ、ブラシ21の部分Bを硬化させてその部分の洗浄力を強化させることにより、効果的な洗浄を行うことができる。
【0038】
さらに、図6、7に示すような回転軸に対して非対称形状のブラシ形状変化部材23bを用いれば、ブラシ21が非対称に圧縮された状態でその形状が変化し、ブラシ21を回転させることにより洗浄性の異なるブラシ部位がウエハWに連続的に接触して、ウエハWが効率的に洗浄される。
【0039】
上記いずれの場合にも、シリンダ24によりブラシ形状変化部材23bをさらに上方へ移動させて、ブラシ21に圧縮力を与えることにより、ブラシ21全体の硬度が上昇し、通常の状態よりも洗浄力が上昇し、ウエハWの端面および裏面周縁部に強固に付着していた付着物も除去することができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、上部を小径部とし、下部を大径部としたブラシを用いてウエハの端面と裏面周縁部を洗浄した例を示したが、図9に示すように、上部を大径部21b′とし、下部を小径部21c′としたブラシ21′を用い、ブラシ21の上面をブラシ形状変化部材23b′に接触させ、下面を押さえ部材23a′で押さえることにより、ウエハ端面と表面周縁部を洗浄するようにすることもできる。
【0041】
また、ブラシ形状変化部材としては、上記実施形態に示した形状に限らず、所望の洗浄が得られるようにさらに種々の形状をとることが可能である。
【0042】
さらに、上記実施形態では、ウエハの端面および裏面周縁部を洗浄する洗浄機構のみを説明したが、ウエハの表面を洗浄する適宜の洗浄機構を有していてもよい。さらに、上記実施形態の装置に限らず、ウエハの表裏面を洗浄する洗浄装置またはウエハの裏面を洗浄する装置に本発明を適用することもできる。
【0043】
さらに、ブラシの保持機構についても上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、予めブラシ形状変化部材と押さえ部材で狭持された状態のブラシを用意しておき、それを装置に装着するようにしてもよい。
【0044】
さらにまた、上記実施形態では、被処理基板として半導体ウエハを適用した場合について示したが、これに限るものではなく、例えば液晶表示装置用ガラス基板に代表されるフラットパネル表示装置用基板等、他の基板にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板洗浄装置を示す概略構成図。
【図2】本発明の一実施形態に係る基板洗浄装置の内部を示す平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る基板洗浄装置に設けられた洗浄機構をさらに詳細に示す断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る基板洗浄装置に設けられた洗浄機構のブラシおよびブラシ形状変化部材の一例を拡大して示す断面図およびブラシを圧縮した状態を示断面図。
【図5】本発明の一実施形態に係る基板洗浄装置に設けられた洗浄機構のブラシおよびブラシ形状変化部材の他の例を拡大して示す断面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る基板洗浄装置に設けられた洗浄機構のブラシおよびブラシ形状変化部材のさらに他の例を拡大して示す断面図。
【図7】本発明の一実施形態に係る基板洗浄装置に設けられた洗浄機構のブラシおよびブラシ形状変化部材ブラシ支持部材の別の例を拡大して示す断面図。
【図8】本発明の一実施形態に係る基板洗浄装置に設けられた制御部の構成を示すブロック図。
【図9】ブラシの他の構成例を拡大して示す断面図。
【符号の説明】
【0046】
1;ウエハ洗浄装置(基板洗浄装置)
2;チャンバ
3;スピンチャック
4;モーター
5;カップ
6;排気・排液管
7;搬入出口
10;洗浄液供給機構
11;洗浄液ノズル
12;洗浄液供給源
20;洗浄機構
21、21′;ブラシ
21a;ブラシ支持軸
21b、21c′;小径部
21c、21b′;大径部
22;回転支持部材
23;ブラシ保持機構
23a;押さえ部材
23b;ブラシ形状変化部材
24;シリンダ
25;回動アーム
26;シャフト部
27;回動・昇降部
30;制御部
61;コントローラ
62;ユーザーインターフェース
63;記憶部
W;半導体ウエハ(基板)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の端面を含む周縁部をブラシ洗浄する基板洗浄装置であって、
基板を回転可能に保持する基板保持機構と、
前記基板保持機構に保持されている基板を回転する基板回転機構と、
前記基板保持機構に保持されている基板に洗浄液を供給する洗浄液供給機構と、
洗浄時に基板の端面を含む周縁部に接触する、スポンジ状樹脂からなるブラシと、前記ブラシを基板に対して接離させる接離機構とを有する洗浄機構と、
前記ブラシを保持するブラシ保持機構と
を具備し、
前記ブラシ保持機構は、前記ブラシに接触して前記ブラシの形状を所定の形状に変化させるブラシ形状変化部材を有することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
前記ブラシは、円筒状の小径部と前記小径部に連続する円筒状の大径部とを有し、前記小径部の周面で基板の端面を洗浄し、前記大径部の前記小径部との接続面により基板の裏面または表面の周縁部を洗浄することを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記ブラシ形状変化部材は、所望の洗浄が実現されるように前記接続面を所定の状態に変化させることを特徴とする請求項2に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記ブラシ形状変化部材の前記ブラシに接触する接触面がすり鉢状をなすことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記ブラシ形状変化部材の前記ブラシに接触する接触面が円錐状をなすことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記ブラシ形状変化部材の前記ブラシに接触する接触面が前記ブラシの回転軸に対して非対称の形状をなすことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記ブラシ保持機構に保持された前記ブラシに圧縮力を加えるブラシ圧縮機構をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
前記ブラシ保持機構は、前記ブラシ形状変化部材で形状が変化された前記ブラシを上方から押さえる押さえ部材を有し、前記ブラシ圧縮機構は、前記ブラシ形状変化部材と前記押さえ部材とでブラシを狭持した状態で前記ブラシ形状変化部材または前記押さえ部材の少なくとも一方を移動させるアクチュエータを有することを特徴とする請求項7に記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄機構は、前記ブラシを回転させるブラシ回転機構を有し、基板を洗浄する際に、前記ブラシ回転機構により前記ブラシを回転させながら基板の端面を含む周縁部を洗浄することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の基板洗浄装置。
【請求項10】
基板に洗浄液を供給し、スポンジ状樹脂からなるブラシを、回転されている基板の端面を含む周縁部に接触させて洗浄する基板洗浄方法であって、
ブラシ形状変化部材を前記ブラシに接触させることにより、前記ブラシの形状を所定の形状に変化させ、形状が変化した前記ブラシを基板の端面および周縁部に接触させて基板を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項11】
前記ブラシを回転させながら、回転されている基板の端面を含む周縁部に接触させて洗浄することを特徴とする請求項10に記載の基板洗浄方法。
【請求項12】
前記ブラシは、円筒状の小径部と前記小径部に連続する円筒状の大径部とを有し、前記小径部の周面で基板の端面を洗浄し、前記大径部の前記小径部との接続面により基板の裏面または表面の周縁部を洗浄することを特徴とする請求項11に記載の基板洗浄方法。
【請求項13】
前記ブラシ形状変化部材は、所望の洗浄が実現されるように前記接続面を所定の状態に変化させることを特徴とする請求項12に記載の基板洗浄方法。
【請求項14】
前記ブラシ形状変化部材の前記ブラシに接触する接触面がすり鉢状をなすことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の基板洗浄方法。
【請求項15】
前記ブラシ形状変化部材の前記ブラシに接触する接触面が円錐状をなすことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の基板洗浄方法。
【請求項16】
前記ブラシ形状変化部材の前記ブラシに接触する接触面が前記ブラシの回転軸に対して非対称の形状をなすことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の基板洗浄方法。
【請求項17】
前記ブラシを圧縮して硬化された状態として基板を洗浄することを特徴とする請求項11から請求項16のいずれか1項に記載の基板洗浄方法。
【請求項18】
コンピュータ上で動作し、基板洗浄装置を制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項11から請求項17のいずれかの基板洗浄方法が行われるようにコンピュータに処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−3738(P2010−3738A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159033(P2008−159033)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】